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2009年12月

目次
・卓上角ノミ盤
・関西人の名古屋界隈事情--- 四季桜と銀杏の街 ---

◆ 卓上角ノミ盤 ◆

 角ノミ盤は比較的安全な機械で、手でホゾ穴を掘るのに比べ格段に能率が上がります。教室では手ノミによる穴掘り練習の後自由に使ってもらっています。刃のサイズは9.5mmと6.5mmで間に合うことが多く、この二つの角ノミ刃を頻繁に交換しながら使っていました。しかし、角ノミ刃の交換と調整は手間がかかるうえ、角ノミドリルの軸に傷がついて精度が悪くなったりしやすく、写真のような昔売られていた日立のドリルスタンドと角ノミオプションを使い、そこにマキタのサッシルータ4401の移動ベースを併用し、6.5mm専用とし、右のプロ用角ノミ盤と併用してきました。余談ですが、マキタのサッシルータ4401は実売6万円以内で今も販売されており、モーター部はトリマ本体として活用でき、工夫次第で本体は角ノミ移動ベースと利用できますので、結構重宝しています。

このようなDIY向けドリルスタンドを20年以上も使っていますと、流石にガタが大きくなり、新しい機械に交換することにしました。プロ用の角ノミ盤をもうひとつ買うことも考えましたが、ウチは趣味の木工教室ですので、生徒さんが自宅でも使えるような卓上タイプにすることにしました。いろいろ物色しましたが、支柱が丸棒ではなく、左右にブレがないタイプの方がよいのではと思い、リブロスデルムントが扱っているデルタとほぼ同じタイプの卓上角ノミ盤(定価42000円)にしました。その導入と工房での使用状況に合わせた改造等のレポートです。

注文翌日に代引で届きました。大きなダンボール箱に、分厚い発泡スチロールにサンドイッチされた状態で、重さは50kgぐらいです。一人で持ち上げるのは腰に悪そうなので、その場で開封し、本体や部品を別個に取り出し、防錆油を灯油で拭きながら、組み立てました。この作業、機械が好きな人には楽しいですが、そうでない人には苦痛かもしれません。同社から大型木工機械を購入される方は、到着時に機械好きで力持ちの助っ人を頼んでおくことをおすすめします。

 さて、一番の心配は、この角ノミ盤に、今まで使っていたサッシルータの移動テーブルをうまく組み込めるかということでした。写真でおわかりのように、奥行きは充分余裕がありますが、高さに少々無理がありました。6.5mmの刃ですとどうにか入りました。さらに少しでも上下動の幅を広げたいので、上死点のビスを抜き、支柱上部に穴をあけて、大きめのワッシャーを固定、これをストッパーにしました。これで約1cm稼動範囲が上に伸びました。6.5mmより大きな角ノミ刃を使う場合、別売のライザーブロックを組み込めば6cmアップできますので、9.5mm角ノミ刃も問題なく使えることと思います。

 あと切りくずを吹き飛ばすブロアーがあれば便利です。それで大型角ノミ盤の機構を真似て、モーター上部の空冷用ファンのカバーに穴をあけ、ホースを取り付け、風を送ってみることにしました。風はあまり強くはありませんが、穴の周りの木屑は取り除くことができ、便利になりました。

その他、生徒さんが機械を下げすぎて、刃先を移動ベースにぶつけないよう、サッシルータの支柱の穴に角材を立てて、これ以上下がらないようにしています。

まだ使いこんでいないですが、現時点での使用感は下記のとおりです。

 二年ほど前にスポークシェーブの手押鉋、この度は卓上角ノミ盤を導入しました。どちらも中国製です。他に10年ほど前に買ったナカトミ産業の木工旋盤もあります。それらを使ってみて、中国製の機械はだんだんと良くなっていると感じます。しかし「設計図から部品を作り、それを組み立てただけ」という感は否めません。たとえば、角ノミ盤の上下動のスライド部分、これがスムースではありません。使っているうちに馴染んでくると思いますが、日本製の木工機械では、このあたりの調整が丁寧にされており、それがあたり前のようです。日立とマキタの卓上角ノミ盤を実際に使ったことがありませんが、角ノミを使う時にほしい左右移動ベースを別途用意することを考えると、これらの機械も候補に入れてよいのではと感じました。

関西人の名古屋界隈事情 --- 四季桜と銀杏の街 ---

 紅葉の季節が一番好きだ。散りゆく寂しさが赤や黄色の葉の色をより美しく感じさせるのかもしれない。愛知県で紅葉の名所というと香嵐渓が全国的に有名だが、他にもちょっと変わった紅葉の名所がある。工房から車で40分ほど、瀬戸市の北東に小原村というところがある。ここでは四季桜という秋に花をつける桜と紅葉が合わせて見れるという。生徒さんから情報を聞いて、行ってきた。確かにこのシーズンに桜の山を見ることができるなんて、不思議な感じ。これから四季桜をPRしていこうという小原村の意気込みが感じられた。名古屋市内中心部からでも一般道で一時間ほど。香嵐渓ほど恐ろしい渋滞に会ううこともなさそう。

次は銀杏。一宮の西南方向に祖父江町があり、その街の航空写真を新聞やテレビで見たことがある。そこへ自転車を車に載せて行ってきた。こちらは歴史を感じる。街のいたる所に銀杏の木が茂っており、まばゆいばかりの黄色の葉が空を埋めている。観光というより、地元のお祭りのような素朴な感じもよかった。自分は赤のもみじよりも黄色の銀杏の方が好きかも。

紅葉の美しいこの時期にウチの犬ポアロが寿命を終えた。今年はそれでいっそう美しく見えたのかもしれない。


2009年11月

目次
・第九回木工教室作品展レポート
・展示会の写真撮影に思う
・関西人の名古屋界隈事情--- カレー煮込うどん ---

◆ 第九回木工教室作品展レポート ◆

 一年で一番大きな行事「木工教室作品展」無事終了しました。初日二日目と快晴で暑いほどの好天、それに比べ最終日は午後から寒冷前線通過で荒れましたが、心配したほどの雨量ではなく、撤収や打上もほぼ予定どおり行うことができ、ほっとしました。毎年のことですが、見学にこられるお客さんの多くは、生徒さんのお知り合いで、トータルの人数は多くなくても、滞在時間が長いので、結構賑わいました。今回は1000枚の案内状を印刷、生徒さんを通じて配ったり、知り合いのお店に置いてもらったりしました。中日新聞の展示会の欄で3行ほど案内が掲載され、朝日新聞では、担当の方から、内容の問い合わせがあり、展示内容まで案内がされていたようです。このせいか、新聞を見られて来られた方が例年よりも多かったようです。昨日終わったばかりで、展示物も半数が残った状態。また、疲れがどっと出まして、今月は作品展のスナップ写真を紹介し、簡単なレポートとさせていただきます。新年には全作品をアルバムにして掲載する予定です。

◆ 展示会の写真撮影に思う ◆

 教室展に限らず、名古屋の合同展示会でも、おそらく他の展示会でも大抵展示会の撮影の可否についての議論がよくあります。主催者側と見る方の温度差といいますか、写真撮影についての考え方の差がとても大きいように思います。特にインターネットが普及し、ブログでお店の美しい料理写真が多数掲載されたりするのと同様、主催者側にとっては無神経と感じるような行為が見られることが多くなりました。写真撮影について、どう考えればよいか、少し考えてみました。

 まず第一に「展示会は、作品を見る機会」であるということです。作品をじっくりと見、好みの作品があれば、それをじっくり観察するのが本来の目的です。それをせず、ただバシャバシャと写真を撮ることは、作品の写真をデジカメの中に納めるだけが目的になっているわけです。撮った画像をどのように利用するかは大きな問題ですが、私は作品もよく見ないで、ただ写真を撮る、その行為に嫌悪感を感じます。気に入った作品があって、それについて関係者と話をし、少なくとも名前と連絡先・職業を名乗った上で、「記念に写真を少し撮っていいですか?」と聞かれれば、自然と「どうぞ」となることもあるでしょう。

 「展示会なんだから、どんどん撮影OKにしたら・・・」といわれる方もおられます。私も以前は、撮影禁止にしない方がよいと考えていました。見に来られた方が、記念に写真を撮っていかれる、それを公開されてもある意味PRになると思っていました。しかし、今は違います。特にデジタル画像になってから、複製、転送、転載が非常に簡単になっていますから、撮影者と違う第三者、第四者が、その画像をどのように使うかわかりません。また、その行為がゆっくり作品を見たいという方にとって迷惑となる場合もあります。

 展示会での写真撮影は、「撮影お断り」の表示がなくても、控えるべきだと思います。撮影したいなら、事前に主催者に、撮影者、日時、目的、使用範囲等について連絡し、許可を得てから撮影するべきです。携帯電話での写真撮影は目立ちませんが、やはりこのような姿勢が大切。

 主催者側として展示会に参加すると、上記のようなことがよく見えてきます。お客さんは作品を見ますが、主催者側は見学者がどういう方かを見ています。話が苦手な方もおられるでしょうが、展示会へ出向いた時、できれば簡単に挨拶をして話をされると、見学がずっと楽しく有意義なものになることでしょう。同業者を嫌がる方も時にはおられるでしょうが、ほとんどの方は職業と名前を聞くと安心して見てもらえる気になるものです。どうせ出かけるなら、いい出会いを作ってください。デジカメのメモリーの画像を増やすより、もっともっと大切なことと思います。

関西人の名古屋界隈事情 --- カレー煮込みうどん ---

 名古屋メシの代表格、味噌煮込みうどん。ところが、春日井市の味噌煮込みのうまい店では、ほとんどカレー煮込みうどんもメニューにあるのだ。その話を大阪の友人にしがら、「カレーうどんとどう違うの?」と聞かれた。詳しくはわからないけど、私的には全く違うものだ。やはり硬めの生麺から煮込んだあつあつの鍋ででてくる。味噌煮込みうどんのカレー風味という感じかも。春日井の「岡崎屋」、「まるたや」、「手打ちうどんちから」など。味噌煮込みうどんより私は好きかも。うどん好きの方、一度カレー煮込みもお試しください。今月は超短で終わり。


2009年10月

目次
・第九回木工教室作品展
・2DCADを選ぶ
・関西人の名古屋界隈事情--- 彼岸花 ---

◆ 第九回木工教室作品展 ◆

第九回木工教室作品展
10月30日(金) 13:00〜18:00
10月31日(土) 10:00〜18:00
11月1日(日) 10:00〜17:00
宮本家具工房ギャラリーにて
名古屋市守山区平池東801

恒例となりました木工教室作品展、今年は9回目となり、100点以上の作品が、ギャラリーと工房に並びます。お近くに来られる機会がありましたら、お気軽にお越しください。またページ上部でも案内しておりますが、東京の「手考会」へも私は出品させていただいております。会期も長いですし、関東の方はぜひお出かけください。

 木工教室作品展と手考会、技術レベルや目指す方向に違いはありますが、「売るための展示会」ではないところは共通しています。一方、街のギャラリーやデパートなどの商業施設での展示会は、その内容や姿勢に違いはあっても、最終目的はやはり「売ること」です。売ることが前提なら、製作時間や材料費のこと、また後日の注文に備え、同じ物を作ることを求められる場合が多いのです。「売るためではない展示会」では、そのような縛りがありません。ですから「自分が作りたい物」が多く出品され、作者の個性や好みが素直に表現されることになります。もちろん自己満足のみに陥る可能性も高いわけですが・・・。

 日本ではプロとアマチュアをはっきりと区別したがる傾向があるように思います。私は、その差はあるとしても、区別する必要はないと考えています。高度な木工手仕事の展示会であり、プロが楽しみに作った作品も登場する「手考会」、アマチュアが自分の作りたいものや家族の要望に応じて作った極めて私的な家具が並ぶ「木工教室作品展」、どちらも貴重な展示会です。どうぞ楽しんでください。

◆ 2DCADを選ぶ ◆

 家具を作る時、特に複雑な箱物や椅子では、図面を正確に書かないと製作に移れないことがあります。教室では、縮尺1/5や1/10で方眼紙に三面図を書いてもらったり、生徒さんによってはCADで図面を書いたりしています。私自身は、アイデアスケッチ-->(模型を作る、省略することもある)-->寸法を考えた作図-->製作という順番で作ることが多く、製図に以前からCADを使ってきました。最初はDOS版のJWCADで、一晩かかってダイアルアップ回線で1MBほどのプログラムをダウンロードした思い出があります。その後、米国のCAD事情を見るようになって、Autodesk社のAutoSketchを長年使ってきました。現在もAutoSketchR6をメインで使っていますが、何分1999年のプログラムであり、パソコンのOSが変遷している昨今、いつまで使うことができるかわかりません。このようなわけで、新たに教室でおすすめする2DCADを探してみることにしました。

 CADというのは「慣れが80%以上」だと思います。どんなCADであっても、その操作を覚え、慣れてしまえば、強力なツールになります。いくら高価で評判のよいCADであっても、操作に慣れていなければ、宝の持ち腐れです。また、慣れるまでの努力が無駄にならないよう、将来的にもそのCADが使え、データが死んでしまわないようなCADを選ぶ必要があります。CADとの相性が悪く、操作で慣れることが極めて困難な場合には、他の親しみやすいCADを選んだ方がよい場合もあります。

 以上のようなことを考えながら、価格が10万円以下、できれば無料〜1万円くらいで、使える2DCADを探してみました。メーカーや販売店へのリンクは避けておりますので、必要な場合は検索サイトで調べてみてください。また、試用版という無料の評価ソフトのインストールでは、コンピューターの深いところまで入り込んで、具合を悪くしたり、完全なアンインストールができない場合もありました。このようなソフトの使用は自己責任でお願いします。

(余談)フリーソフトについて
フリーソフトとは著作権は放棄していないが個人的な使用であれば無料で使えるソフトという意味です。フリーソフトを業務用として使う場合には、そのソフトの使用許諾をよく確認する必要があります。「タダほど恐いものはない」というほど恐くはありませんが、使用に関して何の保障もありません。有料ソフトが手厚く保障されているかと言えば、おおいに疑問で、フリーソフトとほとんど変わらないサポートしか得られない会社が多いというのが私の印象です。むしろ、広く使われているフリーソフトの方が使い方に関してもアドバイスも得やすく、実質的なサポートは優れている場合があります。

1、私の望むCAD

2、使ってみたCAD各論

JWW:(JWCADウインドウズ版)
 日本の小規模建築現場では最も使われている?フリーソフトで、将来的にも長く使えるソフトだと思う。このソフトを使ったCAD講習会も多く開かれており、フリーソフトの枠を超えて「国民的CADソフト」といえる。直線主体のCADで、操作にはマウスを多用する。たとえば、ズームはマウスをクリックしながらズルズルしたり、右クリックでグリッドに配置したりと、慣れれば便利かもしれないが、私は相性がよくなかった。しかしながら、メーカーのCADでさえ、JWWのファイルが読めることが必要条件なほど普及しているので、パソコンがあればインストールして、読み込んで印刷できるくらいには習熟しておいた方がよい。

AR_CAD:
システムハウス福知山というソフト会社が作成、無料で配布している2DCADソフト。JWWよりもオブジェクト指向で、四角などの形を全体として認識し変形したりできる。操作も比較的なじみ易いので、フリーソフトの中では、私の好みにあった。このようなソフトを無料で配布している会社に感謝々。ただ将来もずっと無料で有り続けるかどうかは?。CAD使用中、画面下部に一行広告が表示されることがある。ひとつの図面の中に、縮尺の異なる図面を表示できるエリアを作ることができるのは便利だ。

SakraCad:
LiliCADというフリーソフトの後継CADで、複数ページを作成することができるようにバージョンアップされたもの。軽いソフトでありながら、メーカー製CADに劣らない機能を持っている。個人で開発されているようなので、これからどうなるか楽しみでもあり、不安材料でもある。とにかく、一度使ってみて、好みに合うかどうか判断するとよい。

他にも多くのフリーソフトがあります。一度「Vector」や「窓の杜」などのサイトを見られてはどうでしょうか?以下は有料のCADソフトです。海外のCADソフトは3Dが主流で、2DCADのみのものは少なくなっています。

AutoCAD、AutoCADLT:
CADシェアNo.1、世界的にCADと言えば、AutoCADを指すらしい。AutoCADは100万円近く、LTでも20万円ほどで、個人で気軽に買えるソフトではない。さらに、DOS時代からのソフトのためかコマンドが複雑で、習得が難しい。米国で建築を学んでいる娘の話だと、学生は学生専用サイトから、無料でアカデミック版をダウンロードでき、新バージョンを次々にダウンロードしながら継続して使っているらしい。実際の仕事でも、モデリングはSketchupや後述するRhinocerosを使い、最後はAutoCADに読み込んで、レイアウトしているとのこと。教育関係の方ならアカデミック版がかなり安く手に入るので使ってみては?

IntelliCAD:
米国非営利団体のIntelliCAD Technology Consortiumによってソースコード及びブランドが管理されているCADソフトウェアで、AutoCADとのコマンド及びデータの互換性が高く、アプリケーション開発会社がAutoCADに代わるプラットフォームとして利用できるように開発が行われている、AutoCADライクなCAD。ベーシック版なら価格は3万円台で手が届く範囲か。使ってみた感じはAutoCADそのものであるが、AutoCADで作成された図面を読み込んでみたら、うまく表示できないこともあった。だから、AutoCAD習得のために使うなら、現時点では本家AutoCADの方が良いかも。将来はJWWみたいな入手しやすい標準CADとなるか???。

Rhinoceros:
日本では「ライノ」と短く呼ぶ人が多い。ライノは動物のサイのこと。3Dの比較的使いやすいCAD。この評価版は、25回まで保存や印刷ができ、使用期間に制限はない。25回が終わっても、操作の練習や既存ファイルの読み込みはできるので、3DCADを覚えたい人は重宝しそう。価格は20万円ほどするが、それでもAutoCADよりはかなり安い。日本のShadeと似ている画面だけど、操作性はライノの方が優れていると思った。

TurboSketch:
キャノンの関連会社が販売しているCADで、TurboSketchは3D機能のない2D専用CAD。価格は1万円ほどで、入手しやすい。実はAutoSketchの後継CADとして、一番期待したのだが、操作感やシンプルさがどうしてもAutoSketchに及ばない。慣れれば問題ないのかもしれない。かなり販売暦の長いCADなので、AutoCADが性に合わない人は、一度試してみては。3Dのスタンダード版も数万円であり、比較的安価なソフトである。

VectorWorks:
インテリア関係の方では、これをメインで使っている方が多いという。何度か異なるバージョンの評価版を入手して使ってみたことがあるが、ツールがメチャ多くて、どうも馴染めない。3D図面が書けないのは仕方がないとしても、2D図面でも書くのが難しかった。このソフトがもともとはMAC用だったことに原因があるかもしれない。インテリア関係で仕事をしたい人は見逃せないCADだと思う。価格も20万ほどで、3Dが書けるCADとしては高い方ではない。

Ashlar-Vellum−Graphite:
これが抜群に使いやすいという方がおられ、実際の使い方を見せてもらった。シンプルな画面で使いやすそう。同社のサイトから評価版をダウンロードし使ってみた。直線メインのCADではあるけれど、作図アシスト機能が便利で、CTRLキーとシフトキー(MACではオプションキー)を押しながらドラッグすれば、補助線が引けたりとなかなか便利。もともとMAC用CADで、ホイールによるズームイン・アウトができないのは残念。ソフトはMAC用とWindows用のハイブリッドCDで供給されるようで、どちらでも使えるのはよい。値段は約7万円(実売5万円台)と安くはないが、使い勝手の独特の良さがあって、切り捨てられないCADになりそう。極めつけは、ひとつの画面の中に、縮尺の違う詳細図を配置できることで、さらにこの図面は元の図面とリンクしており、どちらを変更してもそれが反映される。これは便利だと思う。しかし、印刷が慣れないと難しく、また線の太さなどもデフォルトの設定では使い物にならないなど、初期設定に慣れが必要だと思った。

3、これから使っていくCADは?

 これを決めるのが本来の目的だったけど、実はまだ決まっていない。それほどAutoSketchに慣れてしまっている。けれど2D図面を素早く描くということに関しては、Ashlar-Vellum-Graphiteの操作性は大変興味深かった。けれど7万円である(^^;)。よく考えてみると、Ashlar-Vellum-Graphite(以下グラファイト)の作図アシスト機能は、どこかで見たことがある。そうだ、Sketchupである。

次の図は、グラファイトの作図中の図。左の直線を5分割し、その点にマウスを置き、それから右にずらせ、新たな直線を引こうとして、自動的に交点が表示されたところ。

スケッチアップで同じようなことをしてみた。左の500mmの直線を右クリックして分割を選び、マウスを上下すると分割数が変わる。それで適当に分割したところ(分割点は表示されていない)。直線が簡単に分割できるのも似ている。その分割点にマウスを置いてから右に移動すると、その水平位置をアシストしてくれ、鍵上の直線んお右端との交点をアシストしてくれているのがわかる。

 それ以外にも、グラファイトで直線を適当に引き長さを数字で打ち込めばその長さの直線を描くことができ、スケッチアップとまったく同じである。スケッチアップで補助線を引くのはメジャーツールを使えば簡単。ひょっとしたら開発者は同じではないかと思うほど、似ている部分が多いと感じる。

 では、スケッチアップで2D図面は書けるのか?もちろん可能だが、もともと3Dモデリングソフトなので、注意が必要。まず、メニューバーのカメラから「平行投影」にチェックを入れる。そして、センターホイールはズームのために回してもよいが、クリックしてはいけない。画面が傾いたりするが、画面表示ボタンを押して「正面」や「平面」にすればOK。印刷は「ページにあわせる」のチェックを外し、「モデル範囲を使用」にチェックを入れ、縮尺を設定すれば、図面と同じサイズで印刷できる。有償のSketchupPROなら、印刷は簡単にできるのだろう。

4、とりあえずの結論

 フリーソフトをうまく使うことは小さな工房にとっては大切だ。有料のソフトを買っても、AutoSketchのように、販売元がやめてしまうこともある。日本ではかなりのシェアを持つJWW(JWCAD)、そしてGoogleが提供しているGoogleSketchup、この二つは当面は安心して使えると思う。ただ、新しいバージョンになって機能が制限されたりすることがあるので、フリーソフトに限らず、古いバージョンも捨てないで持って置いた方がよい。GoogleSketchupの有償版SketchupPROは、図面出力に優れたLayout機能を持っているらしいけど、この評価版をインストールしたら、元のGoogleSketchupが使えなくなったことがある。当面AutoSketchが使える間は使いながら、遊び半分でGoogleSketchupによる2D図面の作成をやっていきたい。また、リンクする詳細図が挿入できるグラファイトも捨てがたく、安く購入できる機会があったら購入も検討したい。

個人的な主観が多いですが、報告は以上です。ここで紹介しましたCADソフトは、Autosketchを除き、全てフリーソフトや無料の評価版として入手可能です。興味のある方はご自身で好みや使い勝手を確かめてください。

関西人の名古屋界隈事情 --- 彼岸花 ---

 昨年、知多半島半田のサイクリングロードを走りに行った時、牧場の牛の匂いがする田舎の道を東に走って行って、偶然彼岸花の群生地に出会った。人がかなり居て、有名な場所であると知った。そのときは小雨が振り出したので、中心部から西側しか見てなかったが、鮮やかな彼岸花の赤い絨毯が続く土手の風景がとてもよかった。

 去年の印象が良く、今年も教室が終わった次の日の午後、曇り空の半田市運動公園へと向かった。そこから自転車に乗って東へ約5km。ピークを過ぎてやや白みがかった印象ではあるが、彼岸花の群生地が川沿いの土手に続いていた。今回は、昨年見ていなかった東半分も見ることができた。東半分の方がメジャーな感じ。

 童話で有名な新美南吉の記念館や生家の近く、彼岸花と合わせて見学すれば、ゆったりとした時間が楽しめると思う。これほど長い距離で、彼岸花が群生しているのは、本当に珍しいのではないだろうか。約2キロの土手に200万本の彼岸花だとか。

 彼岸花を見てからの帰りは一般道を通ることにする。今夏セントレアから一般道で帰ったことがあり、そのとき東海市付近の155号線が、制限70kmの自動車専用道路になっているのを発見。要するに無料の高速道路。知多半島有料道路は自動車数は多いが、セントレアラインはとても少ない。その理由がわかったように思った。セントレアから23号線に入るまで、高速道路を使わなくてもあまり時間が変わらないのだ。あんな美しい道路を作らなくても、この155号線を上手く活用すれば、結構良いアクセスラインができたのではないだろうか。


2009年9月

目次
・昨年と今年の旅行記を公開
・水性ウレタン塗装
・関西人の名古屋界隈事情--- パーキングエリアでの小さな出来事 ---

◆ 昨年と今年の旅行記を公開 ◆

 昨年2008年夏にバンクーバーとサンフランシスコ・サンルイスオビスポ等を旅した時の簡単な旅行記と、今年8月に行ってきました東北の山旅の記録を公開しました。木工ネタというわけではないのですが、私の旅の記録として、こちらにも残すことにしました。興味のある方は見てください。

西海岸の旅2008

東北の山旅2009

◆ 水性ウレタン塗装 ◆

 最近、教室で行う塗装方法で、水性ウレタン塗装がお気に入りです。作品を濃い茶色に着色したいという方がおられたので、水性顔料入りウレタン塗料をホームセンターで買ってきてもらって使ったことや、「何も塗っていないような塗装がしたい」という方に、ワックスではなく、水性ウレタン塗料を試してもらったことで、普通にホームセンターで売られている水性ウレタン塗装を見直すことになりました。また名古屋での展示会でお会いしたキャピタルペイントの方から、水性ウレタン塗料のサンプルをいただき、自分でも使ってみて、私の好みにかなり合うという印象を得ました。水性塗料についての知識や経験はあまりないのですが、私の使用感等を少し紹介したいと思います。

水性ウレタン塗料とは

 ホームセンター等で売られているのは、油性ウレタンニスをエマルジョン化して水の中に分散させたものと思われます。マヨネーズのようなものと考えてください。油性塗料を小さな粒にして、水の中に均一に浮かべたもの。塗装後まず水分が蒸発し、次に隣り合う油性塗料の粒がお互いにくっついて、塗膜を形成するのだそうです。ですから、水性という名前ではありますが、本来の性質は油性です。ただし、最近は水そのものを溶剤として使った塗料もあるようです。

水性ウレタン塗装の長所・短所

長所

・揮発性有機溶剤の含有量が油性塗料と比較し、格段に少ない。(油性では50%以上、水性では5%〜15%)
・匂いが少ない(ほとんどしない?)。室内でも無理なく塗装ができる。
・不燃性であり、油性ペイント特有の黄変もない(多少あるものもある)。
・使用後の刷毛は水で洗うことができ、水中に保存すればよい(腐敗を防ぐため、水を時々交換する必要はある)
・水であるため、無垢の木に表面に馴染みやすい。
・希釈も水でよく、簡単である。
・乾燥が速い。

短所

・塗料の値段が高め。
・気温や湿度の影響をうけやすい。
・水で木肌が荒れる。

使ってみて

 ウレタンニスというと「テカテカ」のイメージがありますが、水性ウレタンを水で薄めて塗れば、オイルフィニッシュのように膜を作らないで、自然な感じの仕上がりになります。無塗装に近い風合いが好きな場合、水性ウレタンニスの”つや消し”タイプを用いれば、何も塗っていないような仕上がりになります。しかし、水をかけてみると、ちゃんと防水性があるのがわかります。

 このように、塗膜を形成しない塗装方法のひとつとして、水性ウレタンニスは使えると感じています。また、水で刷毛が洗えることや溶剤が不要なことのメリットは大きく、塗料自身が多少高くても、トータルコストは安くなるように思います。何より、10人近い生徒さんがいる場所での塗装で、嫌な匂いがでないことはとてもありがたいです。木肌が荒れるという欠点も、”水引き”と考えて、下塗り後丁寧に研磨することで、問題がないと感じています。

 今使っている塗料は、キャピタルペイントの水性塗料の「ワンダー」と「フレッシュアクア」です。ワンダーは値段が手頃で使いやすいので、下塗りに使っています。乾燥後研磨し、フレッシュアクアのつや消しを塗っています。半つややつや有りも使ってみましたが、私の腕ではムラが出やすく、自然な感じに仕上がるつや消しタイプが気に入っています。乾燥時間は二時間ほどで、一日で3回以上塗装でき、充分に仕上げることができます。他社からも優れた水性ウレタン塗料が多数発売されているようですので、いろいろ試してみてください。なお、刷毛選びは大切です。必ず水性塗料用を使ってください。定評ある刷毛メーカー(○好とか大塚刷毛など)のいいものを使うとよいでしょう。

関西人の名古屋界隈事情 --- パーキングエリアでの小さな出来事 ---

 前々から高速道路では、大きなSAよりも、トラックの運ちゃんが食事をするような小さいPAが好みである。先日、あるPAで、かけそばを食べていると、近くのテーブルであんチャン風のちょっと恐そうな運ちゃんが定食を食べていた。その運ちゃんが、食べ終わって食器を洗い場のところへ持って行った時、大きな声で「ご馳走さまでした」と丁寧に食後の挨拶をした。それを聞いた厨房のおばちゃんが、「お粗末さま、気をつけて運転してね」と嬉しそうに返した。

 私も食べた後「どうも」と小さい声では言う。でも「ご馳走さま」は作っている人にとって、とても嬉しい言葉ではないか。そう思って、別の機会に少し大きめの声で「ご馳走さんでした」と関西弁で言ってみた。そしたら「お粗末さま、お気をつけて」と嬉しそうに言われ、こちらもいい気分になった。

 パートで働いているPAの食堂の人達、毎日ハードな運転をしている運ちゃん、その間に阿吽の呼吸というか、家庭的な一言が何か心をほっとさせるのかもしれない。観光客で混雑するSAよりも、名もないPA好みはまだまだ続きそうである。


2009年8月

目次
・トリマー選び
・関西人の名古屋界隈事情--- 鳳来寺山 ---

◆ トリマー選び ◆

 ウチは手加工重視の木工教室ですが、適材適所で機械や電動工具を使うことも大切だと考えています。比較的入手しやすい電動工具の中で、応用範囲が広く、手軽なのがトリマーではないでしょうか。教室で多くの方が使うので、ビット交換の手間を省く意味でも、複数のトリマを使用していますので、それらの特徴や使用感について書いてみました。

 入手しやすいトリマでは上の写真のようなのを使っています。下段右は日立M6,中央はマキタ3701、左はマキタ3707FC,上段はホームセンターで3980円で売られていたもの。このほかに、ビルテックスがありますが、これについては後ほど詳しく書きます。

日立M6
木工を始めた頃、20年以上前に買ったもの。流石に軸にガタが来て、自分で中を開けて修理したこともあるが、今だに現役。中を開けた時、モーターの回転する鉄心にドリルでいくつか穴が掘って回転バランスをとってあることを発見。「そこまでやっているんだ」と感心したことがあります。今も同じような加工をしているかどうかはわかりません。電子制御もなく、太くて重いですが、回転精度は良好で、テンプレートガイドのガタのなさはこれらの中では一番すぐれています。

マキタ3701
持っておられる方は多いのではないでしょうか。マキタの電動工具の中でもロングセラーの筆頭?。上記M6は20年以上前の購入ですが、これは5年ほど前に買ったもの。M6とよく似ていますが、テンプレートガイドをはめると、少しガタがあります。またプラスチックベースの動きがM6より硬いです。

マキタ3707FC
マキタの新型トリマ。細身で軽く、ソフトスタートと負荷フィードバックによる回転数維持機能が備わっています。LEDライトも付いていますが、あまり効果はないかも。手の小さい人におすすめ。回転数が20000程度に抑えられていて、静かで使いやすい。トリマベースを動かすためのゴムローラーが付いていますが、上手く働くとは言い難い。

ホームセンターで買った安物
値段につられ買ってみたものの、予想以上の粗悪な作りにびっくり。ビットをしめるための軸のレンチをはめる並行であるべき溝が平行でなく、ビットを固定できなかったことから始まり、トリマベースの平面が大きく狂っていたり、半年ほどでスイッチが壊れたり・・・。不燃ゴミ行き待機中です。典型的「安物買いの銭失い」。値段の魅力にまどわされず、せめて有名メーカーの廉価タイプを購入すべきです。

その他国産機種
使ったことがありませんが、トリマについてはリョービも良さそうです。ラック&ピニオンで刃の出方調節が簡単そう。電子制御のついたTRE-55は、プロで使っている方も多いようです。

ビルテックス、FR192N

 スペイン製の結構大きなトリマ、2年ぐらい前に購入。太くて重く、女性にはどうかなと心配していたのですが、実際に使ってもらうと、この大きさや重さは逆に安定感につながっているようです。変速を含む電子制御の3点セット装備で、電源コードも長い(約5m)のが最初から付いています。このコードは三菱製のソフトタイプで、アメリカ製ルーターのようにゴワゴワしたコードではなく、使いやすいです。

詳しく見ていきましょう。

ベースはアルミダイキャスト製で、底面には薄いベークライトが貼ってあります。これはラックアンドピニオンのついたアームで本体に固定されており、写真では下側の二重ネジの中側が固定ネジ、外側がピニオンギアになっていて、スムースに移動でき、調整も簡単です。写真の上のバーはトリマミング用ベアリングガイドで、これは本体に直接ネジで固定され、調整ができるようになっています。この構造が優れているのです。刃の出方を調整しても、ベアリングとのクリアランスは一定なのです。また、ベアリングはネジで微調整でき、左端の小さなネジで固定する構造です。ストレートガイドなども付属するのですが、多くの加工はこのベアリングガイドを使うのが便利です。

 次の写真は付属品とオプションです。これらの他、1/4インチコレット、8mmコレット、ダブテール加工用テンプレートなども入手可能です。

左上の三つはオプションで買った、ベアリングを外して付けるストレートガイドやコーナートリミングガイドです。その他は標準付属品です。付属しているビットはちょっと変わったビットで、上部が30度の斜めになっていて、フラッシュトリミング用と思われます。私はそれをはずして、通常は直径15mmほどのストレートビットを装着しています。これで6mmx6mmの段欠きなどを行います。ストレートガイドもかなりしっかりしたもので、それを裏返すと円定規として使えるようになっています。

 ビルテックスのトリマは33000円ほどで、国産の電子制御トリマより一万円ちょっと高いですが、以上のようにとてもよくできています。おそらく6mm軸のビットを中心に使われるのでしたら、軽量ルーターと同等以上の働きをすると思います。二台目のトリマを考えられている方は、検討されてはいかがでしょうか?私はTOOLS-GRさんから購入しましたが、扱っておられるお店は他にもあることと思います。

関西人の名古屋界隈事情 --- 鳳来寺山 ---

 長雨で外に出て気分を変えることがなかなかできないので、ストレスがたまる。それで、雨の少ない日に、前々から行って見たかった鳳来寺山に行ってきた。豊川ICで降りて、一般道をかなり走る。山に入っていくのではなく、平地のまま山里へ向かう感じ。ようやく山らしくなってきたら、そこが鳳来寺の入り口だった。ラジオで流れる、「仏法僧(ブッポーソウ)」の鳥の鳴き声が有名かも。

 ところが、あいにくの雨。有名な石段もぬれて危なそう。無理をしてもいいことはない。本堂まで登るのはあきらめ、仁王門とその上の傘杉まで行くことにする。湿気100%で蒸し暑い中を登る。鬱蒼とした杉林の中、落ち着いた仁王門があって、その上には写真ような石像があった。長年雨に打たれ、苔むした貫禄のあるお姿である。が、眉がつながっていて、なんとなく「両津」巡査のような風貌にも見えた(失礼お許しください)。

 門からちょっと登ると、目指す大木があった。新日本名木百選に選ばれた傘杉、「目通り周囲7.5m 樹高60m、傘下37m、推定樹齢800年」と案内看板に書いてあった。近寄るといっそう大きく見える。奈良の大神神社のような荘厳な感じは、名古屋近辺ではないムード。天気がよければここから本堂に行きたい。が、今日はここで引き返し、ドライブウェイを使って、本堂へのアプローチを試みた。

 知らなかったが鳳来寺さんは有名なロッククライミングゲレンデらしい。山のあちこちに、巨大な岸壁がある。岩登りをしていた学生の頃なら、心が躍ったことだろう。山上の駐車場からは雨の中を歩いて10分ほどで本堂であった。残念ながら、本堂はコンクリート製で、ちょっとガッカリ。でも、雨の雲が流れる中、本堂からの眺めはすばらしかった。

 帰り道、駐車場近くの売店の前に、大八車が置いてあった。子供の頃に、近くの友達の家は、こんな車に野菜を積んで行商をしていた。やがてそれがミゼットに変わるのだ。雨にぬれたこの車、なかなか美しい。無駄のない、機能的なデザインだと思う。

 期待せずに行った鳳来寺山、とてもよかった。晴天の日だったら、こんなに印象は良くなかったかも。時には雨もいいもんです。


2009年7月

目次
・削り、研ぎ、台直し
・道具店の役割
・関西人の名古屋界隈事情--- 犬山城 ---

◆ 削り、研ぎ、台直し ◆

 木工教室で話をすることの中で、やっぱり「削ることに関するトラブル対処法」が一番多い。教えている私も削りで苦労することがしばしばあり、これは永遠の課題です。上手く削れない原因や解決策を指導する時、ほとんどは同じ事の繰り返しです。今月はその毎回言っていることをまとめて書いてみます。ある程度鉋が使えないと理解できないですし、また文章で伝わるような内容ではないのですが、何かのお役にたてば幸いです。なお、私は鉋至上主義ではなく、サンドペーパーはもちろんスクレーパーやキャビネットスクレーパーも使います。しかし、これらの道具は鉋である程度の平面削りができていないと、よい結果にならないのです。ぜひ、鉋の刃を研ぎ、台を調整できるようになってください。

1、削り方について

 真っ直ぐに削る場合、材の端から端まで、水平に削らなければ不具合がでます。ところが、下図のように削っている方が結構おられます。最初から削っているつもりが、端から少し内側から削っています。また最後は鉋の台尻が図のように少し下がったり、逆に上がったりして、端が3mmほど残ることがよくあるのです。これに気づいていないと、削っていくうちに両端は凹面となり、少し内側は刃が材に当たらなくなってくるのです。それで、「削れません」ということになります。まずは、まっすぐに削れるように体で覚えてください。指先の感覚はひじょうに鋭いので、板を撫でてみれば、端がわずかに高いことがわかります。そういう感覚を身につけることも大切です。

 要点は、削り始めは材のかなり前の方から鉋を引き、刃が材に当たったことを確かめること。また、最後は台頭の方をしっかり押さえ、刃が材から抜けた瞬間に、鉋をそこで止めるようにすることです。

 また、一箇所だけを削るのではなく、全体を削るようにします。ほとんどの人はクセがあって、水平に削っているつもりが、斜めに削れたりします。ガムシャラに削るのではなく、数回削っては厚みを測定するなどして、自分のクセを知り、それを修正するように鉋をかけましょう。平面に削ることができると、曲面や斜めの面も上手く削れるようになります。

2、研ぎ

 研ぐのが嫌いな人が沢山おらるようです。しかし、研ぎと仲良しにならないと、ちゃんとした仕事はできません。丸刃ではなく、真っ直ぐに研いだ刃で、早い目に研ぐ癖をつけることにつきます。ところが、「丸くなっています(丸刃になっている)」と指摘しても、それがわからない方が多いです。丸刃であっても、ゆるい丸刃はそこそこ切れますが、一見真っ直ぐに研げていて、先だけ小さく丸いのが困ります。拡大した模式図を書くと下図のような感じです。

 図でわかるでしょうか?刃先より下側に材にあたる部分があります。このような刃では、上から力をかけて材に刃をめり込ませると切れるのですが、鉋を引くだけでは、切れません。また、刃を台からかなり出さないと切れないわけで、逆目を生じる原因ともなります。

 ではまっすぐに研ぐのはどうすればよいでしょうか?教室ではどうにもならないときにジグを使って研ぐことはあります。しかしジグでは本来の研ぎにはならないのです。しのぎ面全体を砥石に沿わせ、地金と鋼をいっしょに研がないと、砥石が目づまりしやすく、しのぎ面が光るだけで、正しく研げないのです。地金に含まれる雲母が砥石の目詰まりを防いでいるという話を聞いたことがありますが、詳しい理由は知りません。初心者には、新品の鉋でしのぎ面が真っ直ぐな鉋、その平面を損なわないように慎重に研ぐのが一番近道でしょう。狂ってしまったしのぎ面は、横研ぎでもかまいませんから、なんとか30度の角度に真っ直ぐ研ぐよう、これだけは各自で格闘してもらうより他ありません。「教えてもらう」ではダメで、「試行錯誤しながら、体で覚える」しかないところです。研ぎに限らず全てに同じことが言えますが、「教えてもらう」のと「自分でわかる」の差はとても大きいです。

 他に気をつけなければならないのは、「砥石を頻繁に平面に直す」、「刃先が斜めにならないように、注意する」、「鋭角に研ぎ過ぎないように注意」などでしょうか。一般に、力を抜いて軽く研ぐ方が、よい結果がでることが多いようです。

3、台直し

 うまく削れない原因は研ぎに加え、台の不具合も大きくに関係します。台を正しく直すためには、知識だけではなく、かなり経験が必要です。ですが、できるだけ、要点がわかるように書いてみます。

台の下面を完全な平面にする

 台直し鉋で平らにするのが望ましいですが、大きく狂っている場合は、サンドペーパを厚いガラス板に180番程度のサンドペーパーを貼り付け、ガラス板から台が大きくはみ出ないように注意して、静かに前後運動をして修正するのが速いです。専用の鉋台直し機も販売されていますので、それを利用してかまいません。力を入れすぎると、台が凸面になったりします。静かに前後運動をしても、わずかですが、台は凸面になることがほとんどです。うまく平面になったかどうかは、厚いガラス板に鉛筆やマジックを塗りつけ、その上で台をこすってやれば、全体に薄く汚れがつくようになればOKです。小鉋であれば、これでそこそこ削ることができるでしょう。なお、サンドペーパーで台を修正した後、台直し鉋を使う場合には、刃先が痛まないように研磨粒をふき取っておきます。

刃を出して、さらに台を調整する

 削る状態に刃を出して、最終的な調整をします。この過程は、台直し鉋が必要です。まずは、上記の工程で、やや凸面になっている台の中ほどを少し削って平面にします。それと、刃に押されて出てくる部分(下図矢印)を刃を削らないように、手や当て木を使ってガードしながら、注意深く削ります。

 板を削ってみて、最初は刃が材に当たるのに、すぐに削れなくなるのは、ここが膨らんでいるからです。そして、下刃定規を刃をいためないようにあて(教室では3mmのプラスチック板を木で挟んだもので、刃が出ているときの定規として使っています)、刃のすぐ台尻側に光がもれないように、調整します。鉋のベテランが台を見て「刃口が当たっていない」というのはここに光が見える場合のことで、「要点がわかっていない」ことを意味します。刃口と刃先の差で削る厚みが決まるわけですが、刃口よりも高い部分があったら全く削れないのです。

 あとは、このままの平面でもいいわけですが、それだとすぐに刃口が減って、削れなくなります。それで、私は刃口の1cmほどと台尻1cmほどを残して、その間を少し削っています。同様に台頭の方も少削って、食いつきをよくします。この辺りの調整は、人それぞれに好みがあることでしょう。完璧な平面であれば、それでよいと言われる方もいます。ただし、完璧な平面にするのはとてもむつかしく、通常はわずかな凸になります。それを台直し鉋で修正する感じでしょうか。

4、削ってみる

 刃幅いっぱいに透けて見えるような鉋屑がでればOK。ですが、いきなりこのように削れるわけではありません。木の表面には凸凹があるので、最初は高い所しか削れません。それがしだいに連続してきて、美しい鉋屑が出るようになります。たとえば、自動鉋で削った板をよく調整した手鉋で削ると、最初はブーという音がして、スプーンカットの山の部分だけが削れてきます。それくらい、微妙な調整が必要です。しかし、実際には、順目と逆目が同居している木も多く、逆目でも大きなモゲなく削るための、さらなる工夫や努力が必要になります。

 私自身難儀するような木はあります。また板目よりも柾目の方が難しい場合が多いようです。逆目方向できれいに削る方法は、よく切れる刃であることはもちろんですが、理論的には「切削角を大きくすること」と「一度に削る量を少なくすること」です。切削角を大きくするには、裏金を効かせたり、仕込み角の大きな鉋を使います。たとえば、台直し鉋では決して逆目で失敗することはありません。また、逆目用の替刃鉋を使う手もあります。一度に削る量を少なくするには、刃口を埋めて、0.5mm以下のわずかな隙間とし、よく台を調整して、わずかに刃を出して削ることができるようになっていなければなりません。

 削る方向も大切です。単に方向だけではなく、鉋の頭をどちらに傾けるかによっても、うまく削れたり、失敗したりもします。横ずりでは失敗は少ないのですが、安易に考えていると、ボコッと大きなモゲを作ってしまうこともあります。本当に難しいです。そして、削る時は、力一杯引くのではなく、最初は、変にひっかったりしないか、注意しながら鉋を引きます。もし、カツンときたら、無理せずに、鉋を回して削りをやめます。そして、さらに調整をして、カツンとこないように削ってゆくのです。このように注意しても満足に削れる保障はありません。でも、大きな逆目ボレを起こしてひどい目にあうことは格段に少なくなります。

 研ぐタイミングについて、よく言われるのが「粉がふくようになったら研ぐ」です。鉋屑ではなく、白いフケのような粉が出だしたら、研がないといけないということです。私が思うには、これでは遅いです。鉋に上から力を入れずに引いてみて、鉋が滑って削れないようだったら、研ぐ方がよいように思います。できれば2000番ぐらいの中砥で、小さな返りが出たら、仕上砥石にかける、そんな感じがよいでしょう。慣れれば、一分間で実用上は充分な切れ味まで研げるようになります。

◆ 道具店の役割 ◆

 上のような道具の基本的な研ぎや仕立ては、皮肉なことに木工の中で一番独学が難しい分野ではないでしょうか?弟子入りし師匠から教わる方もおられるかもしれませんが、教わることはまずなくて、「これではダメだ」と怒られ、望ましい研ぎは兄弟子や師匠の道具を見て、自分のとどこが違うかを見て、覚えたのだと思います。そんな状況でも、道具を購入する店の主人のアドバイスや研ぎの教えは、若い職人さん達にとって、とてもありがたいようです。

 今はインターネット全盛の感があります。ネットで道具を買う人も増えてきたようです。しかし、量産品の電動工具と違い、日本の伝統刃物を通販で購入するのはおすすめしません。幸いまだ日本の都市には、伝統刃物の老舗がいくつかあります。そのような小さな個人の店を、不特定の方が見ているこの場で紹介するのは差し控えたいと思います。ですが、木工を目指す人は、知人や友人に聞いたりして、ぜひお近くでそのような店を探してみてください。「紹介」というのは、紹介する方、される方、双方に責任とリスクがあります。

 小さな個人の鍛冶屋や道具を作る職人さんは、一度に沢山作るわけにはいきません。コツコツ作っておられます。そのような職人さんと道具店は長い付き合いで、ある程度まとめて道具を仕入れ、必要とする職人さんに販売してきました。店は適正な利益を得、職人さんは安定収入を得、お客は店主から道具の選択や使い方を学んだのです。また道具のことを教えてくれる面倒見の良い道具店主に出会うことは、一生の宝となり得ます。職人さんにとっては、全国の工房や大工さんの仕事の情報源でもあり、時には店主は職人さんを見込んで就職を斡旋したりもします。雇い主にとっても、信頼できる道具店主の目で見た職人さんなわけですから、全く知らない人を雇うよりも、安心感があるはずです。

 ではアマチュアの場合はどうでしょうか?実は伝統的な刃物を購入するのは、確実にアマチュアの割合が増えています。たとえば大工さんの現場では電動工具のみ使って仕事をしている方も多く、これからはアマチュアが伝統刃物の職人さんを支えていく可能性があるかもしれません。しかし、アマチュアは道具のことをよく知りません。頭の知識ではない、経験に裏づけされた生きた知識に乏しいのです。ですから、アマチュア木工家は、良い道具店と知り合い、馴染みになることの意義がより大きいのです。

 私の知る限り、アマチュアだからと言って、値段を高く取るような道具店はありません。教えを受けるつもりで道具店に行ってみることをおすすめします。そのお店が気に入れば、道具はそのお店だけで買うことです。値段がどうとかブランドがどうとかより、店主を信頼して、揃えていけばよいのです。ネットでも、そのような頼りになる道具屋さんを見つけることはできるでしょう。発見したら、ぜひ一度店に顔を出してみてください。どんな人かわからないのに、メールで質問され、まともに答える方が不自然というものです。顔を見、一対一で話をし、それでこそ宝となる繋がりができてきます。

どうか皆さん、よい出会いがありますように。

関西人の名古屋界隈事情 --- 犬山城 ---

 親しいアメリカ人がやってきたので、名古屋を拠点に名古屋周辺の観光をした。ブログで書いたように京都の保津川下りを楽しんだ後、奈良・大阪を回ったという。そして名古屋でちょっと休憩。その間名古屋周辺の観光をということで、犬山城へ向かった。

 犬山城は数年前行った時からお気に入りである。ホンマもんの木のお城なのだ。松本、犬山、彦根、姫路が現存するお城で国宝となっている。すべて行ったことがあるのが、ちょっとウレシイ。犬山城は、小さいけど、木曽川を見下ろす、天守閣からの眺めは特筆モノ。「ちょっと危ないんでないかい?」と思うほど、手すりが低くて、最上階の外側を一周するのは、高所恐怖症の方には無理かもしれない。この眺めはすばらしいけど、天守閣の中での飲食は禁止されており、長居はできません。

 お城のすばらしさは、実際に行って実感してください。それで、別の話。いっしょにいった娘が、お城の庭にある土産物店で「カキ氷」を食べようと言い出した。私達夫婦だけでは、そんなことはしないが、店に入ってみた。もちろんカキ氷を注文したけど、カミさんがトコロテンを食べてみようと言い出したので、トコロテン300円也をゲット


(ちょっと食べてから撮影。量はもう少し多い。)

 店に中のベンチに座って食べようとして壁を見ると、どうもここのトコロテンは名物らしいのだ。それもハシ一本で食べるのが伝統的だと書いてある。「一本で食べれるのかよう?」と思ったけど、不思議に一本で食べることができた。二杯酢のさわやかな酸味とツルットした喉越しで美味い。実は私、トコロテンは苦手だったけど、ここのはとても美味いと思った。たぶん黒蜜が苦手だったのだろう。

 食べ終わってから、アメリカ人が「なぜ、トコロテンにミッキーマウスなんだ?」と面白がっている。そういえば、確かに。

 余談。これを「ところてん、心太」と書いてあると思っていた。パソコンて”tokoroten”と打って変換キーを押すと「心太」と変換された。ところてんは「心太」の振り仮名だった。漢字を知らない自分が恥ずかしい。

 犬山城のあとは、名古屋へ向かって犬山街道を下る。その途中で田県神社へ寄った。ご存知の方も多いと思うけど、田県神社のご神体は「ぽこチン」である。年に一度、そのご神体や小さな木製ぽこチン模型を持って豊年祭りが行われるのだ。奥宮にはもっと沢山の、「ご神体」があり、ナント、拝むところにある綱が下がっている鈴まで「ぽこチン」になっている。そして、右には二つの大理石の球を撫でて、賽銭を投入すると「チーン」と鳴る、小さな祠がある。ほとんど吉本新喜劇の世界。だけど、お祭りは本当に真面目なものらしい。絵馬には、不妊症に悩む女性の願いが多く目についた。子宝、子孫繁栄の神さんである。

外国の人に中には、日本の銭湯がダメな方が多いという。意外に日本人はあけっぴろげが好きなのかもしれない。奥ゆかしい外国人は、この「ぽこチン神社」失礼、「田県神社」を見て、どうに感じるのだろうか。


2009年6月

目次
・ひとつだけの家具展の作品紹介
・関西人の名古屋界隈事情--- 刈谷ハイウェイオアシス ---

◆ ひとつだけの家具展の作品紹介 ◆

 東桜会館という名古屋の人も知らないような会場での「ひとつだけの家具展」、終わってみると、どうしてどうして、なかなか良い場所でした。快い広さで時間までゆっくり動いているような場所でした。そこで20名の仲間が展示をしたのですが、会場に来ることができなかった方に、私の作品をいくつか詳細に解説してみたいと思います。会期中来場された方達にお話した内容です。

私の展示全景です(右端の抽斗箱と丸テーブルの後ろにあるスツールは別の方)。また額の絵は、娘の絵で、私のではありません。この中で皆さんが一番よく見ておられたのが、下の大きなキャビネットです。

 数年前に作ったものですが、工房から出たことがありませんので、一応「初見せ」ということになります。これは、「Solid Wood Cabinet Construction」というドイツの家具学校での作品を集めた本を見て、一度挑戦してみたいと思って作りました。扉の波模様は、ルーターにディッシュカービングビットをつけて、簡単なジグを使いながら、根気良く波模様を削りました。その後平面部分のみ鉋をかけています。各部材は、本ザネで少し余裕を持たせて組み合わせてあり、見えないサネが垂直方向に二本入っています。扉のラッチは、チークの丸棒に小さなスロットをあけ、スプリングを仕込んだ丸穴に納め、飛び出さないように後から1mmの針金をスロットに通しています。ヒンジはブラッソ製L型ナイフヒンジです。
 4杯の抽斗は、手加工のアリで組んでいまして、両側の波模様から、取手は水面をすすむ船をイメージし、栃の珍しい杢入材で作ってあります。円弧模様は3mmのビットをつけたトリマーコンパスで溝を掘り込み、3mmの細いブラックウォールナット材を曲げながらはめ込みました。主材はバーチ材、塗装はワックスのみです。留めは、2cm間隔で小さな正方形のサネを多数入れて接合しています。製作後数年が経過し、少し歪がでていますが、色はやや飴色となり、より渋い感じになっています。

 上の小机は、今回の展示会直前に作ったものです。木工を目指し始めた頃に知り合った三ツ橋さんという大分在住の木工家知人が、ジェームスクレノフの「A Cabinetmaker's notebook」の訳本(注)を最近出されたのです。以前からオリジナルの英語本は持っていましたし、一応目を通していたつもりでした。しかし、三ツ橋さんの訳によって、彼が本当に何を言いたかったのか、初めて知った気がしました。どちらかというと、私は「木の質感に頼らない」作品を好んでいます。ですが、この本から、木という二つと同じ物がない、素材から出発し家具を作り始めることの意味を再認識し、長年材木置き場で眠っていたシウリ桜の板で、この小机を作ろうと思ったのです。シウリ桜の渋い色を、明るい良質な楢を脚部に使うことで引き立たせたつもりです。シウリ桜は、サンプルでもらったオリオ2によるオイルフィニッシュ+ワックス、脚部は白色顔料入りオイルを塗りました。白色顔料入りオイルは、オイルのよる色が濃くなる現象を相殺し、木そのままの色を保持するために使われます。抽斗は両側から引き出せるようにしていまして、ストッパーはつけません。取手の材はシマ黒檀で、前板を貫通して差し込まれています。シウリ桜の天板はブックマッチで、アリ桟を板ハギ時に慎重に組み込んで反り止めとしています。

 去年の神戸の展示会にも持っていった丸テーブルです。BWの脚は、ボルトを二本抜くだけで、簡単に二つに分離できます。そのために貫の片側をアーチ状に削っています。天板は、表裏使用可能です。ということは、見えない反り止めが入っているということ・・・。このことに気がつく方はほとんどおられませんでした。実は天板の裏側に流れ星の絵を描いているのですが、あまりに下手で、見せるのはやめておきます(^^)。頑丈なテーブルではありませんが、簡単に折りたため、荷物の隙間に入ります。

 これも今回の展示会直前に作りました。「厨子ですか?」と何度か聞かれましたが、そんな立派なものではなく、単なる「思い出の箱」です。普段は両側に花などが飾ってあり、縦格子の引き戸を左右に開けると、親父の写真とか入っていてもいいなという軽い気持ちです。冗談半分・本音半分で、「自分が入るんです」と説明していました。自分が入るなら、格子に紙をはらないでほしい。戸が締めてあっても、中から家族の様子が見えますから・・・。余談はさておき、材はブラックチェリーとヒバで、鉋仕上げの無塗装です。直前にパッと思いついて作ったものですが結構気に入っています。

 蛇足ですが・・・。展示会には、家具を求める方だけではなく、木工愛好家や家具インテリアを学ぶ学生さんも沢山見に来られました。中には「見て勉強しよう」という姿勢を通り越し、展示品はどのように見てもよいと勘違いされている方もおられました。出展仲間の搬出入の様子を見ていますと、作品を丁寧に養生し、傷をつけないよう実に注意深く扱っています。小さなかすり傷はもちろん、塗装表面の曇りさえ、商品価値を下げることになるからです。特に木工愛好家の方は、「人の作品を見て勉強させてもらう」という姿勢で、「触らずに見るだけ」が原則と思います。気に入った作品があれば、作者やギャラリーの方と話をし、「扉を開けもいいですよ」とか許されてから、注意深く触れてほしいものです。また、写真撮影については、まずよく作品を見、可能なら作者と話をし、そのうえで「記念に撮らせてもらえますか?」と許可を得て撮るのが筋です。展示会という場は、見学者が作品を見る場であると同時に、作者やギャラリーの方は、見学者がどのような人であるかも見ています。少々気難しいことを書きましたが、展示会を通じて心地よい人の輪を広げてください。

(注)「木の家具 制作おぼえがき」 三ツ橋修平訳註 発行:中井書店 定価1890円(税込)

関西人の名古屋界隈事情 --- ハイウェイオアシス ---

 以前から、「刈谷ハイウェイオアシス」という言葉はよく耳にしていたし、1号線を通る時など、意外な場所に観覧車があるのを遠くで見たことが何度かある。先日、刈谷方面に用事があった際、ゆっくり立ち寄ってみた。愛知県の方は、よく知っておられるでしょうが、初めて見たおっちゃんのレポート。

 一般道から駐車場に入ると、大きな観覧車と赤い派手な建物が見える。建物の一階は地元の野菜や魚などを売る、今流行りの産直マーケット。結構にぎわっている。個人的には結構商売上手という感じ。渥美半島の道の駅などに比べ、値段はそれほど安くない。二階は食堂街。実はここに来る前、久々見つけた「横綱ラーメン」で昼食を済まして来たのだが、ナント、このフロアで一番広い面積を占めているのは「横綱ラーメン」だった。どおりで同じ匂いがただよっていたわけ。他にもいろんなお店があって、結構繁盛している。三階はギャラリーになっていて、絵の展示会が行われていた。

 写真は「デラックストイレ」。テレビで何度か見たことがある。もちろん男子トイレしか見てないが、名前ほどデラックスではない。男子トイレの場合は、便器の前がガラスになっていて、中庭が見えるだけだ。利用者が多いせいか、ちょっとくたびれかけているという印象。デラックスと期待せずに行くのがベター。

 観覧車の西側には、銭湯と足湯があり、ちょっとしたヘルスセンター(今は死語?)になっている。そして、西側には広大な公園が隣接しており、その北側は子供用乗り物がある遊園地。その前には、下の写真のようなお子様遊び用噴水があったりして、「ここはどこなん?」と思う。

 子供連れにはいいかもしれないけど、自分にはどうもしっくりこなかった。最近の郊外にある巨大ショッピングセンターの管理されたバーチャルな街並みのように、こういうところで遊ぶ子供が将来どうなるかと思う。危険かもしれないけど、単なる野山や崖、海辺、川原、裏山の秘密基地、そんな自分の子供時代の良いところばっかり思い出す。でも、深く考えなければ、「ドライブの途中に立ち寄るには、とても面白い場所」と言えるかも。


2009年5月

目次
・木工家ウィーク2009・NAGOYA(終了)
・METABOの新テーブルソウ
・関西人の名古屋界隈事情--- サイクルトレイン ---

◆ 木工家ウィーク2009・NAGOYA ◆

終了いたしました。ご協力ありがとうございました。 

METABO社の新テーブルソウ試用

 欧州の木工機械を多数輸入販売しているテクノトゥールズさんから、METABO社の新しいテーブルソウ(TKHS 315M)が発売され、さらに円高差益還元で期間限定のとても魅力的な価格になっています。このテーブルソウは、カタログで見ると、アマチュア木工家に適しているのではないかと思い、「一度使ってみたいのですが・・」と申し出ていましたところ、同社のご好意で、二週間ほどウチの工房に置いていただけることになりました。そこで、その試用感を簡単に書かせていただきます。METABO社製 TKHS 315Mのカタログはココを見てください。

 この機種の魅力は、何と言っても価格です。円高差益還元の一環として、期間限定で、販売価格が税別85,000円(定価135,000円は据え置き)という安さなのです。別売付属品の価格も、右サイド延長テーブル 35,000円 スライドテーブル 28,000円 丸のこ刃T48 7,000円 丸のこ刃T80 12,000円と安くなっています。

 このテーブルソウをワンボックスやトラックではなく、WVゴルフで持ってこられました。横にして、ギリギリですが、全て入っていました。でも重いので最低二人いないと下ろせないでしょう。工房に入れて組み立てた瞬間、「大きい!」と思いました。カタログ写真から想像していたより1.5倍ぐらい大きい感じです。それにオプションのサイドテーブルを装着すると写真にようになります。

この大きさ、おそらく欧州での合板の標準サイズである、1.2mx2.4mのパネルを切断するためだと思われます。後方テーブルも大きくて、長さ3mぐらいの材を割るのは全然問題ないと思います。標準で縦引き刃が付いていることからも、この機種は建築用材の加工を大きな目的としたもののように思います。

 持って来ていただいたのは100V仕様でした。モーターは二馬力の誘導モーターでダイレクトドライブです。ですので、100Vでは電圧降下が激しく、通常のコンセントからの給電では無理があります。このため、200Vから変圧器で100Vに落とした電源を使ってテストをしました。100Vでは最高回転になるまで5秒ほどかかりました。200V仕様なら、この点問題はないと思います。

 手前の小さなスライドテーブルはオプションですが、建築材を能率よく定尺切断を行うためのものと割り切った方がよいと感じます。まだ試してはいませんが、本体付属のパイプのスライドレールを使ったマイターゲージの方が、1m以内の比較的短い材の切断には適しているように思います。

 鋸刃は直径315mmという大きなサイズがついています。ダイレクトドライブのため、写真のようにモーター本体が邪魔になり、回転軸を充分に上げることができません。このため、切断高さを確保するために大きな刃が付いているのでしょう。試しに私が持っている直径250の刃をつけてみましたが、割り刃は、それに合わせて低くすることができませんでした。フランジを見て精度を心配したのですが、鋸刃自体の回転ブレは少ないようでした。写真の下のハンドルで刃の高さ、上のノブで鋸刃の角度を変えます。スイッチは、欧州基準でしょうか、安全のため、すぐに入らないようになっています。

 実際の製作で本格的に使ったことがありませんが、このテーブルソウは大工さんが現場に持ち込み、建築材の加工をするのに最適な機械のように思います。逆に0.1mm単位の精度を要求されるような、たとえばホゾ加工などには残念ながら適していないように思います。またこのモーターは欧州の220〜240Vでの使用を前提としたもののようですから、日本で使用する場合も、単相200Vで運転するのが正解でしょう。ご存知の方も多いと思いますが、ほとんどの住宅には200Vが来ていますので、配電盤のエアコン用ブレーカーなどを少し変更するだけで、単相200Vは簡単に使えるようになります。サブロクの合板を大量に切断したり、ウッドデッキ作りなど、精度がそれほど要求されない場面には最適な機械であると思います。


関西人の名古屋界隈事情 --- サイクルトレイン ---

 車に自転車を積んでサイクリング出かけるのは楽しいけれど、必ず元の場所に戻って来なければならない。しかし、もしも電車に自転車を積んで戻って来れるなら・・・。折り畳み自転車はその点有利だけれど、実際には結構重い。そんなことを思いながら、サイクリングコースを探していると、大垣辺りに「サイクルトレイン」があるらしい。

 客数減少により、近鉄から移管されたという養老鉄道養老線がそれだ。この路線、南は桑名から大垣へ、そこでスイッチバックして、揖斐まで計57.5kmの路線。全線単線で、各駅停車のみ。そして桑名駅を除くすべての駅から、混雑する時間をのぞき、自転車を電車内に持ち込める。これをサイクルトレインと呼んでいるのだ。

 4月のある日、カミさんと自転車を積んで桑名へ。七里の渡しに近い公園の駐車場に車をおいて、自転車で桑名の町をぶらついてから、桑名からひとつ目の駅、「播磨駅」へ向かう。実は朝、本日自転車を持ち込めるか確かめたくて、播磨駅に電話をかけたのだが誰も出なかった。その理由がわかった、無人駅なのである。駅の階段横に作られたスロープを通って、プラットホームへ行く。電車は一時間に二本程、時間があるので、コンビニおにぎりで軽く腹ごしらえをする。そして、自転車マークのあるところへ行って電車を待つ。

 やがてやってきた電車に、どうなっているのか想像しながら乗り込むと・・・、ごく普通の電車だった。自転車が倒れないようにしなければならないから、どうしても立っていることになる。でも、今日は5つほど先の多度までだ。多度駅は多度大社への参拝の基点となる駅で大きい。だから、駅員さんが常駐している。そこで運賃一人300円を払って、駅を出た。自転車の持ち込みは無料である。

 あとは緩い登り坂を多度大社まで行き、今度は取って返して、揖斐川沿いに快適な追い風に乗って、桑名の七里の渡しへと帰り着いた。サイクルトレインはごく普通の電車やったけど、こういうサービス、とてもありがたい。養老鉄道のHPには、サイクリングやハイキングのコースも案内されているし、また利用したい。揖斐から谷汲山へ行くのも楽しそう。

 帰ってから、サイクルトレインで検索してみたら、意外と沢山あるようだ。近畿だと、近江鉄道、信楽高原鉄道、三岐鉄道、そして養老鉄道など。三重、滋賀、岐阜に多い。このあたりは、電車の利用は学生さんが多いのだろう。もっと電車に乗って、廃線にならないようにしたいもの。サイクルトレイン、ありがとう。


2009年4月

目次
・木工家ウィーク2009・NAGOYAについて
・研磨機を入れましたが・・・
・関西人の名古屋界隈事情--- 渥美半島 ---

◆ 木工家ウィーク2009・NAGOYAについて ◆

 昨年6月、私達は第一回木工家ウィーク名古屋を開催、私は電気文化会館での木工家30人展のお世話をしました。今年もぜひ第二回を開催したいと準備をしてきました。残念ながら、30名以上の展示会を、手頃な価格で開催可能な会場が見つからず、今年は、「ノリタケの森ギャラリー」(25名)と「東桜会館」(20名)に分かれ、それぞれが特色のある展示会を行うことになりました。また、名古屋の中心、栄のテレビ塔の地下街「パークスクェア」では、土日に「小さな椅子100脚展」も開催することになりました。その後、会期中の5月16日(土)に建築家中村好文さんの講演会(有料)が決まり、さらにショップでの展示会や地域の交流会などの企画も加わって、木工界では前代未聞と言えるような大きな企画となっています。

 正直なところ、私は「木工家」という言葉にまだ馴染めませんし、また小さな工房で家具を作っている人たちにこのような大きな行事が必要かどうかについても疑問を感じています。しかし、そんなことを心配するより、「まずは集まってやってみよう」という、実行委員の皆さんの意欲と献身的な努力でここまでたどりつきました。ですので、兎に角、5月12日〜17日の週は、名古屋に来ていただいて、展示会を見、交流をしていただきたいと思っております。

 今回私は東桜会館での「ひとつだけの家具展」のお世話をしています。東桜会館は、名古屋栄の中心部にあるNHKから東へ500mほどのところにあるのですが、繁華街から流れてくる人が少ない傾向にあります。でも、立派なビルの一階にある、美しくて広いギャラリーなんです。さらにここは会議室もあるので、17日の午後には、出展者の一人である丸山さんが、「森と木と、家具の移ろい」というテーマで話をしてくれます。また、北欧椅子の模型で、知る人ぞ知る、浜田さんのミニチュア椅子も展示されるのです。木工はもちろん、家具、インテリアに興味のある方、こだわった一品物の家具を探しておられる方には、必見の会場となること間違いなしです。

 「ひとつだけの家具展」のPR等、手前味噌の話になってしまいましたが、もちろん他の企画も魅力充分です。5月には、名古屋でお会いしましょう。私は会期中ほとんど東桜会館に居ると思いますので、見かけたら声をかけてください。  

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公式パンフレットは、下記のアドレスよりPDFファイルでダウンロードしていただけます。
(原紙サイズそのまま印刷していただけるよう、若干ファイルサイズが大きくなりますので、ナロー回線をご使用のかたはご注意ください。)

公式パンフレット表紙/紙面サイズA3、ファイルサイズ1.4M
http://www.woodworkers.jp/file/wwn2009a.pdf

公式パンフレット中面/紙面サイズA3、ファイルサイズ1.5M
http://www.woodworkers.jp/file/wwn2009b.pdf

研磨機を入れましたが・・・

 前々から研磨機の導入、ずっと考えていました。迷いに迷っていたのです。というのは、知人の木工家さんの多くは、「研磨は研磨屋さんに任せた方がいい」といいますし、木工機械販売店の人さえ「売るのは売りますが、安い研磨機はどうしても不満が出るみたいです。毎日使わないとコツを覚えられないみたいだし、錆びさせてしまうこともあるらしいですよ」と。

 今まで車で20分ほどの所にある研磨屋さんへ、月に一回ほど、持ち込んでいました。営業さんに毎週来てもらうほど、研磨に出すわけではないし、平日は出かけることも多いので、自分で持ち込み、持ち帰っていました。その方が、研磨角などの指定が確実にできることもあったからです。出していたのは、300mmの手押鉋の刃3枚、400mm自動鉋刃3枚、150mm手押鉋刃二枚です。研磨代は一枚500円〜700円で、トータルでは一年間で3万円ぐらいでしょうか。ただ、それに持ち込み・持ち帰りのガソリン代や手間がかかりますので、年4万円ぐらいかかっていたことになるでしょう。

 研磨機の選定です。オークションで中古が安く手に入ることもあるようですが、私はどうもオークションと相性が悪いのです。一度不要になった自転車をヤフーオークションに出したことがあるのですが、突然何の理由もなく、ヤフー側からオークションの出品を取り下げられたことがあるのです。全く初めてで、悪い評価も何もないのに。また、ヤフーでは毎月定額の参加費が必要なのも納得いきません。かと言って、他のオークションで中古の研磨機を見ることはあまりありません。安いと言っても、私が求めているような研磨機は、7万円〜8.5万円ぐらいで落札されているようでした。送料や砥石の交換代などを含めると結構な値段となりそうです。

 さて、新品で候補を選んでみますと、マキタ9804(実質約8万円)、日立のGK130(14万弱)の二機種になります。マキタは安いのですが、刃を自分で左右に動かさねばならず、日立は、数万円高いけど、ハンドル付スライド機構が装備されています。結局次のような要素を考えながら、選ぶことにしました。

 結局、性能に不安は残るものの、一番安いマキタで行こうかという考えにかたまってきました。でも不安が・・・。それでマキタ9804を検索してみたら、この機種をお使いの下記ホームページを発見したのです。

小梅枝銘木店

 失礼を承知でメールで質問をしましたところ、すぐに丁寧な返事をいただいたうえ、9804で研磨をされている動画をYouTubeにアップしていただいたのです。これを見て「9804で行けそうだ」と思いました。

 すぐに注文し、マキタ本社から直送されてきました。30kg少々ですが、大型木工機械同様、木枠に収められています。

何本もの釘を抜き、本体を取り出し、脚部を補強した台の上におきました。こんな感じです。

 さて、期待に胸躍らせながら、マニュアルどおりに研磨をしてみましたが、どうも、イマイチ。刃の位置決めに使うプラスチックのゲージがひ弱すぎるのではないかと考え、次のような刃の位置決めジグをMDFで作りました。なお、上の二本の青いプラスチックの物は付属のゲージです。

 また刃が出すぎて固定に不安が残るため、刃の出を指定より5mm短くしました。ところが、このためでしょうか、荒研ぎと仕上げ研ぎの角度があまり変化しなくなってしまったのです。今はとりあえず、仕上げ研ぎの角度を荒研ぎよりも2度多くしています。これで、何とかそこそこの研磨ができるようになったのですが、やはり、私の求める直線の精度にはなりません。どちらかというと、中央部が、ほんのわずかですが、多く研磨されるのです。押さえ板を曲げてみたり、いろいろしたのですが、原因は解明できていません。それよりも、本体スライド部の剛性が不足しているように感じます。

 満足とはいきませんが、とりあえず、研ぎができたので、機械からはずして裏をアーカンサスの油砥石で研ぎました。

 それから、研磨角で切れ込みを入れた板に二枚ずつ乗せて、表を同様に油砥石で研ぎ上げました。この油砥石による手研磨で、とても鋭い刃がつくようになりました。

まとめです。残念ながら、今のところは下記のようにしか言えませんが、慣れてきたら評価が変わるかもしれません。

 一人でやっているような小さな工房では、やっぱり研磨は外注する方が得策だと思います。ただし、ウチのような教室で、大きく刃がこぼれてしまったときなど、自分ですぐに研磨できる安心感はあります。

(謝辞)
小梅枝銘木店、小梅枝様、貴重なご意見、情報をいただき、ありがとうございました。

関西人の名古屋界隈事情 --- 渥美半島 ---

 3月中旬の暖かい日、一年ぶりに渥美半島の先端、伊良子岬周辺のサイクリングをしてきた。ウチから渥美半島へは、東名で豊川ICへ行き、そこから地道を約1時間半、合計で3時間近くかかる。はっきり言って不便。高速道路が通っている知多半島に比べると名古屋からは本当に遠い。しかし、その分、広大で、のんびりとした時間の流れがあって、私の好みの場所になっている。

 去年、初めて来たとき、偶然入った「みなみ食堂」で食べた、大アサリや、地元で取れた貝づくしの品の美味しさが忘れられない。早速、お店に行って腹ごしらえをしようとするが、「本日定休日」。平日しか休めない私、火曜日定休のお店が多いのを忘れていた。ショック。仕方なく、近所の同じようなお店で昼飯を食べるが、「みなみ食堂」がよけいに美味しく思えてくる。

 お腹の準備も整ったので、岬の道の駅に車を置いて、自転車で右回りに走りだす。岬から10km近く続く海岸沿いの一直線。気持ちよし。風の通り道で、ちょっとスウェーデンのエーランド島に似ているかもしれない。

大きな風車や火力発電所を過ぎ、やがて漁港を取り巻くように、海上の堤防上を走る。普段見ることができない風景、そしてアサリ漁の遠浅の海で働く地元の人達。福江町は、江戸時代、伊勢参りの人が集う宿場だったという。立派な遊郭であったという建物も見ることができた。

 半島を山越えし、太平洋側へ。ここからは、有名な景勝地。恋路ヶ浜は、本当にカップルが多い。若いということは、何よりも価値があるなあ。写真は、海岸沿いの自転車専用道路。

終点には灯台があるが、去年見ているので今回はパス。36キロほど走って快い疲労感。こんなに走ることができる健康に感謝々。

 帰りに、半島中ほどにある道の駅「めっくんハウス」へ立ち寄る。今回もカミさんが安い地元野菜を沢山買い込んだ。同じ建物内の麺食堂で「生桜えびかき揚げそば」を食べる。これがまた安くてウマかった。

二回目もさらに好感度アップの渥美半島、でも人によって好みは違うので、行かれる方は、どうか期待せずに行ってください。


2009年3月

目次
長穴加工機について
・関西人の名古屋界隈事情--- 新聞の運勢欄 ---

◆ 長穴加工機について ◆

日本の木工現場で見かけない機械のひとつが長穴加工機です。呼び名も決まってなくて、”長穴加工機”の他、”横穴ドリル”、”モータイザー”などと呼ばれているようです。ホゾ用の長穴を掘ったり、等間隔のダボ穴をあけるための専用機械で、欧州の家具工房には大抵あります。スウェーデンでは、角のみ盤はなくて、これがある学校が多かったです。最近、木工機械を輸入販売されている二三の会社がこのような長穴加工機を取り扱いされるようになり、入手しやすくなりました。今日はこの機械について、ホゾ穴をあける作業とともに、簡単に紹介します。どう呼べばよいかわかりませんが、ここではとりあえず、”長穴加工機”とさせていただきます。

長穴加工機は材を水平に固定し、ドリルやビットなどの切削刃物を装着したモーターを前後左右・上下に動かし、正確に穴をあけることができます。この機械は、墨線を正確に切るというのではなく、数字で設定して切削することが多いです。このため、慣れないと使いにくい面があります。刃物を遠隔操作しますので、木工機械としては角のみ盤と同様、比較的安全な機械と言えます。ウチの機械はドイツ製から9年程前に輸入したものですが、残念ながら、この会社(ケレ)は現在ありません。

写真は小さなサイドテーブルの脚部のホゾ穴を掘っているところです。ホゾの厚みは8mm、幅は15mm、深さは7mmと20mmです。刃物は直径8mmのハイスエンドミルを使っています。輸入時に機械のオプションで買ったライツ製の穴ほりドリルは少々長すぎて使いにくいため、現在は安い金属加工用ハイスエンドミルを使っています。少しバリが出ますが、後で糊溜を作るためにも面取りを施しますので、問題はありません。回転数は3000rpmと1500rpmの2スピード。エンドミルには3000rpmが適しています。ホゾ穴の深さは、前後方向移動距離を制限するストッパーで設定します。

回転軸の中心の定盤からの高さを、ハンドルを回すことによって上下することができます。重さで動かないように、時計のメモリのような周囲の穴にハンドル先端が入って、確実に固定できます。穴をひとつ移動すると、回転中心が0.1mm上下するように設計されており、さらにハンドル中央のデジタルカウンタで0.1mmまで再現できます。写真では見えにくいですが、数字は9.0で、エンドミルの回転中心が定盤から9mmの高さであることを示しています。

ホゾ穴の横方向の位置は、墨線で決めています。下のようなマーキングツールを使って、基準となる端から、等しい位置にホゾの両側の線を入れます。マツイのケガキゲージはこのような場面にはとても便利です。ステンレス尺にストッパーを付ければ同様に使うことができます。ホゾの厚みはケヒキで入れます。

墨を入れた材を固定します。この偏芯クランプがとてもよくできていて、一度位置をセットすれば、次からは簡単確実に固定できます。少々反った材でも定盤に密着させることができ、加工精度が上がります。写真では何も見えませんが、鉛筆の線に合わせて、ドリルが左右に移動する距離をセットしています。ドリルの高さは上記のように9.0mmにセットされていますが、位置を確認しミスを防ぐため、ケヒキを併用しています。複数材の同じ位置に穴があけられるように、マグネットブロックで位置決めをしています。

全体を見るとこんな感じです。手前の白いプラスチック板は3mmのスペーサーで関係ありません。

この機械の欧州での使用目的は、主にダボ穴加工です。この機械は写真のような穴空きパイプとストッパーを利用して、16mm、22mm、25mm、32mmの4種類の間隔でダボをあけることができます。

長穴加工機は、値段もかなりしますので、誰でも導入できる機械ではありません。しかし、工夫をすれば、ルーターで同じような加工をすることは可能です。以前は簡単なジグとプランジルーターで同様の加工をしていました。このような長穴のホゾ穴は、ホゾを丸くするか、ホゾ穴をノミで四角にするかしなければなりません。ですが、角のみとは違い、深さが正確に決まります。細い材に深いホゾ穴を掘る時には、この方が有利です。また、サネを使ったホゾ組にはとても威力を発揮します。同じような長穴を掘ることができるハンディーな電動工具”ドミノ”が発売されていますが、位置決めの精度や剛性の高さ、広範囲に使えるメリットなどから、この長穴加工機にとって代わることはできないと思います。

アマチュアとして、純粋に木工を楽しむには、このような大型木工機械を使わない製作方法を選ぶのが賢明です。ケヒキやシラガキを使い、正確にマーキングをして、それを鋭い刃物で切り込む、このような指物的技法を使うことで、大きな木工機械に負けない精度を得ることができ、歪の少ない組み立てが可能になります。一方、プロとして木工をされておられる方には、長穴加工機はルーズテノンやダボによる接合を高精度に行うことができるとても便利な機械となります。アラレ組や段欠き加工などにも重宝しますし、このような機械の存在を知っておくことも意味があるのではないでしょうか。

関西人の名古屋界隈事情 --- 新聞の運勢欄 ---

 割りと運勢とか占いが好きだ。お金を払って運勢を見てもらったことは一度しかないが、新聞やテレビで見ることができる、気楽な運勢欄をよく見る。テレビの占いは本当にたいたことがなくて単なる遊びだ。占いコーナーがあるのは、視聴率が少し上がるからだという。

 愛知県は中日新聞の独壇場。デパートは松坂屋がダントツだというのも名古屋の特徴なので、地元びいきが根底にあるのかな(根拠なし)?その中日新聞の朝刊、テレビ番組表の下に、今日の運勢が載っている。松雲庵主さんという方が、十二支の運勢を毎日書いているのだが、これがなかなか味わい深い。毎朝、自分の干支である「巳年」と、子供たちの干支の「戌」「申」を見ている。単なる運勢ではなく、人生訓や慰めの言葉、さらには自己実現にいたるまで、とても役に立つ。興味のある方は、このリンクで毎日見ることができるはず。

 先日の松雲庵主さんの運勢は、特に意味深かった。原文のまま書くのは控え、自分流に書くと、
「山や川、森などは自分のものとは思わないのに、人は自分のものと思うから苦しむ。そのことに気づいて吉運来る」というような文章であった。

「そうやそうなんや!」。自分は自分の思い通りに人が動くと思い込む傾向がある。そんなうまくゆくはずはなく、ストレスがたまる。しかし人は自分のものではないとわかっていれば、思い通りにならなくて当然。なんかホットする。

 木工も同じかもしれない。こうあってほしいと思う材が、削ってみると、思わぬ欠点が見えて当初の計画どおり使うことができない・・・なんて、よくある。しかし、その方があたりまえなんだと知っていれば、心は安泰。焦ってもしかたがない。なるようにしかならない。そんな風に考えていれば、木の欠点を魅力的に使うアイデアも生まれてくるだろう。

 今月は、なんかオッサン臭〜い話になってしまった。屁こいて寝よ(関西でよく使うフレーズ、健康にもよろしい)。


2009年2月

目次
・またまたルーター購入
・充電式小型掃除機
・FineWoodworkingの記事から
・関西人の名古屋界隈事情--- 近鉄特急 ---

◆ またまたルーター購入 ◆

 円高です。1ドル90円ほどになると、「安く個人輸入ができる」という誘惑に勝てません(^^)。それで、前々から同じタイプのルーターがほしいと思っていましたので、買ってしまいました。アメリカでしか販売されていないマキタのルーターセットです(手前のベースと右上のプランジルーターのセット)。今回の購入先はTOOLKINGですが、他のお店でも購入できると思います。一ドル91円換算で、PayPalを使って支払い、送料込の総額は約28000円でした。クレジットカード番号を各お店で打ち込むよりも、PayPalを利用した方が安全なように思いますし、アメリカ国内での通販はPayPal利用が多くなっているようです。クレジットカードの場合は、住んでいる場所の確認が要求され、結局買えないことがあると聞いたことがあります。余談ですが、輸送業者DHLは高いけど、楽しいです。荷物がどの場所でどのような状態にあるか、分単位で克明にわかるのです。今回4日間で到着、今までで最速でした。

 個人輸入では輸送中の破損や故障の際、自分で交渉するか直す覚悟が必要です。少々高くても、国内の輸入販売店などを利用する方が安心ではあります。今回も、固定ベース上部のプラスチックのインチメモリのついたリングの爪が割れていました。使用上差し支えはありませんが、こういうことはよくあります。

 写真左上は、前々から使っているDハンドルタイプ。ルーターの老舗ポーターケーブル社の製品を手本に作られたと思いますが、実際に使ってみると、静かさ(世界一静かなルーターと評されたことがある)と精度の良さはかなり気に入っています。ダブルナットを付属レンチで回す時に滑りやすいとか、電源コードの品質が劣るなどの弱点はありますが、それを上回る長所があると感じています。

 今回は、プランジベースと固定ベースの二つのベースと本体一つのセットを購入しました。使用目的で頭に浮かぶのは、アリ溝の加工です。正確にアリ溝を掘るためのジグをセットし、最初はプランジルーターで少しずつ、目的の深さより0.5mmぐらい浅く掘っておき、次にアリ加工用ビットをつけた固定ベースのルーターで最終仕上げというわけです。一台のルーターで加工すると、複数のアリ溝を掘る場合に、微妙に深さが変わったりします。その点、同じ直径のベースがついたルーターが二台あれば、一度ジグや定規をセットするだけで、荒堀から最終寸法まで、複数の加工をスムースにこなせます。

 二台のルーター、ベースは同じとは言え、センターは正確に合っているわけではありません。ユーザーが自分でセンターを合わせられるように、プラスチックのベース板を多少動かせるようになっています。それで写真の、以前買ったTREND社のセンター調整用コーンを使いました。

 これを、次の写真のように、ポーターケーブル社の規格のテンプレートガイドをセットして、それに円錐をぴったりあわせ、ガタがないようにベースプレートを調整するわけです。このような専用調整具がなくても、テンプレートガイドの内径に近いストレートビットやドリルを使って正確に調整することはできるはずです。センターを正確に出していないと、二台のルーターを使って加工する意味がなくなります。

 前にも書きましたが、日本では考えれられないほど、電源コードの皮膜、ゴムでしょうか塩ビでしょうか、品質が悪いです。写真のDハンドルルーターは3年ほどしか使っていませんが、コードの根元付近はすべてヒビ割れが入って、中のコードが見えています。とりあえずは、黒のビニールテープで巻いていますが、お粗末です。ぜひ改善してほしいところですが、残念ながら、今回入手したルーターのコードも全く同じコードでした。1年ほどでヒビ割れてくることでしょう(涙)

 個人輸入したルーターの問題点は、電圧とビットがインチサイズということです。電圧に関しては、私自身は今まで問題が発生したことはありませんが、50ヘルツの東日本では状況は違うかもしれません。ビットについては、この機種ではmmサイズのコレットはないようです(入手可能な情報がありましたら、教えてください)。現在では、6.35mmと12.7mmのインチサイズのビットを国内で定常的に扱っている販売店がありますし、ウチでは以前から大型ルーターでは12.7mmのインチサイズのビットを、トリマーは6mmのビットをメインに使っていますので、不都合はありません。

◆ 充電式小型掃除機 ◆

 今月は商品紹介ばかりで申し訳ありませんが・・・、ハンディータイプの掃除機を買いました。グラインダー周囲や、台直しをするガラス板に張ったサンドペーパーの周りとか、手軽に掃除をしたいことがよくあるのです。

 何人かの生徒さんから、「マキタの充電掃除機、便利ですよ」と聞いていました。また近所のお寺で法事があったとき、お堂の裏には同じ掃除機が置いてありました。仏像の周りで使うんでしょうか?今回買ったのは、一番高い9.6Vのタイプです。

 購入前に評判を聞いていたためでしょうか、正直なところ、それほどでもありませんでした。100Vの掃除機に比べれば、格段に吸引力は弱いです。しかし、親戚からもらったコンセントに差し込むタイプのハンディー掃除機よりも強かったです。ゴミパックは使い捨ても可能なようですが、今は何度も使えるタイプを使用しています。でもすぐに一杯になるので、床の上のゴミをバンバン吸うには無理があります。

 付属の充電器では充電にとても長い時間(一時間近く)かかりました。しかし、使わなくなった同じマキタのニッケル水素用充電器では5分ほどで充電できるようです。これはラッキーでした。

 あれば便利ですが、差し迫っていなければ、買う必要はないと思いました。基本は家庭用です。 

◆ FineWoodworkingの記事から ◆

 読まれた方もおられると思いますが、最新のFineWoodworking誌の記事で、18のジョイント(接合方法)について強度テストを行った結果が載っています。雑誌をお持ちでなくても、このURLで無料お試しサービスによってオンラインでも読めると思います。「驚きの結果」と書かれているように、私も全く予想外の結果でした。詳しく引用できませんが、最も強度があったのは下図のようなHalf LAPジョイントだったとか。

 他にも、弱いと予想された留めのイモ付けが意外に強かったり、ビスケットやドミノなどの接合が予想より弱かったりと、なかなか興味深いです。最近の接着剤の性能向上もあると思いますが、各接合の壊れ方を見ると、木目に沿って割れることによる破損が多いという共通点があったと思います。Half LAPジョイントが強かったのは、木目が直角に長く広く交差し、圧着されていることによるではないでしょうか。

 著者も最後に書いていますが、この結果を鵜呑みにせず、使用目的・外観・経年変化など、多方面から見た特徴を知って、使う接合方法の選択をすべきだと思います。しかし、「ホゾが一番強い」という先入観も、一度検証してみる必要があるかもしれません。

関西人の名古屋界隈事情 --- 近鉄特急 ---

 今月はネタがなく、一度は「お休み」にしたものの、毎月何書かねばという呪縛がありまして・・・。

 昨年末から個人的な用事で、大阪に出向くことがしばしば。一人なので車ではなく電車でとなるわけだが・・・、名古屋と大阪間、速いのはもちろん新幹線。これが高い。エクスプレスカードを持っているので少しは安くなるけど、それでも片道6000円近い。のぞみの正規料金は、なんと6410円なのだ。安いのはないかと探すと、新幹線のひかりとこだまの自由席が使える一週間前購入が条件の「早割」というのがあった。これなら片道4250円である。しかし、一週間も前から切符を買うなんて、ようしません。で、チケットショップではと覗いてみるけど、売り切れが多いのだ。よってあてにはならない。先日は大阪に行った時、JR大阪駅南すぐの梅田地下街でこのチケットを4500円で購入できてラッキーだった。なんと言っても新幹線は速い。1時間弱で名古屋。京都・米原・岐阜羽島と各駅停車のこだまでも66分。うっかり寝過ごす可能性があるので、缶ビールを飲んで寝るのはちょい危険。流石に景色が飛ぶように流れていく。

 ところが、大阪でも難波に行くなら、近鉄特急という手がある。毎時0分発の特急は、なんと大阪の鶴橋までノンストップなのだ。料金はというと、チケットショップで安く買えば平均価格3200円。値段的には最強、新幹線の約半額。メリットは、ノンビリしていること(^^)。ノンストップ特急とは言え難波まで二時間少々。大阪のミナミに行くなら、地下鉄の分を考えると結構速いかも。普通のスピードだから、景色が飛んでいくのではなく、沿線の人々の生活が自然と目に入ってくる。

 先日は、時間に余裕があったので、名古屋発10時の近鉄特急を使った。席の30%ぐらいしか埋まっていない。採算は??。名古屋を出、やがて青山など緑の多い美しい風景の中を電車は進む。近所の家の親子だろう、若い母親に手をひかれた一才ぐらいの子供が、親子ともどもこちらに手を振っている。自分の子供が小さかった頃の記憶が頭にうかび、ちょっぴり幸せ気分になった。こちらも手を振ろうとするが、間に合うほど特急は遅くはない。このような光景が、一度ではなく、三度もあったのである。

 新幹線の風景は飛ぶようだ。おそらく、近所の人も新幹線には手を振らないだろう。しかし近鉄特急は、人間的な速度で、沿線の人にも親しみを持たれているという感じた。往復はしんどいだろうけど、時間に余裕があるなら、近鉄特急、おすすめです。缶ビールを飲んで寝てしまっても、名古屋は終点で安心です。


2009年1月

目次
・恒例の年頭展示会
・関西人の名古屋界隈事情--- すがきや味噌煮込みうどん ---

◆ 恒例の年頭展示会 ◆

 昨年10月に行いました第8回木工教室作品展の作品を一覧にしました。100点以上となり、大変見応えがあります。趣味の作品ではありますが、ご高覧いただければ幸いです。

作品展2008

昨年一年間に私が作ったモノを紹介します。教室がメインとなった今、数は少ないですが、自分で気に入った作品がいくつかできました。

2009年度展示会

関西人の名古屋界隈事情 --- すがきや味噌煮込みうどん ---

 名古屋生まれの人に「スガキヤ」って知ってると聞くと、「あたりまえやんけー」(なぜか大阪弁)と怒られるほど、スガキヤは名古屋の人の心身に深く浸透しているようである。代表格のスガキヤラーメンは、スーパーのフードコートなどによくあり、白いスープで魚介系の匂いがする安いラーメンであるが、子供の頃からのからのファンという人も多い。

 残念ながら、私はスガキヤラーメンがあまり好きではない。が、スガキヤのインスタント味噌煮込みうどんは、冬に重宝している。神戸の実家でもこれ便利とかで、毎年お歳暮には「スガキヤ味噌煮込みうどん5食入りパック」を10袋ダンボール箱につめて送っている。

 昨年末の12月、いつものように近くのジャスコへ行き、スガキヤ味噌煮込みうどん5食入りパックを買おうとするが・・・、ない。そんなバカな!!!。売り場に並んでいるのは、ナント、他社の味噌煮込み5食入りだった。私は名古屋生まれではないから、そんなにスガキヤに入れ込んでいるわけではない。けれど、名古屋で「スガキヤ味噌煮込みうどん5食入りパック」が買えないなんて、それはないやろ。

 30代にスーパーで7年間ほど働いていたことがある、その時も、突然売れ筋商品の取扱中止があって、お客さんの対応に苦労したことがあった。たとえば、商品部からの指示で、ボンカレーを取扱中止にし他社のレトルトカレーで売り場を埋めたことがある。この時は、近くのJR駅職員さんや、タクシーの運ちゃんに、売り場でコンコンと説教された。「即席カレーはボンカレーでないとあかんねや!!」

 大手スーパーでは店の担当者が仕入れをするのではなく、商品部がメーカーや問屋と条件を交渉して仕入れを行う。商品部員は数値で管理され、利益をいくら上げられるかで成績が決る。だから、仕入れ値段の安さや売り上げ数に応じたリベートを強引に要求することがある。その結果商談が決裂し、「売り場からの商品撤去」となる。表向き「お客様第一主義」ではあっても、実体は「会社第一主義」だ。大手スーパーの力が強くなった昨今、メーカーへの圧力は以前より格段に増しているだろう。

 我々消費者は、そんなお客のニーズを無視した商品選びをする店舗に対抗するには、他の店で買うしかない。というわけで、近くの名古屋発祥のスーパーへ行ってみたら、ちゃーんと「スガキヤ味噌煮込みうどん5食入りパック」が売り場に並んでました。やれやれ。


2008年12月

目次
・安全に段欠き加工を行う
・関西人の名古屋界隈事情--- 忘年会 ---

◆ 安全に段欠き加工を行う ◆

 段欠き加工は額縁や箱物製作では必須の加工方法です。ケヒキや畦引鋸と際鉋を使って、手道具だけで加工することはできますが、木目に沿った長い鋸引きはかなり困難な作業で、さらにそれを美しく仕上げるのは木工初心者には無理だと思います。トリマやルーターで加工はできますが、10mm以上の大きな段欠きは、切削量が大きくなるため、少しずつ何度も削るなどの工夫と労力が必要になります。さらに、小さな額縁の材料などの保持しにくい材のルーターテーブルでの加工はかなり危険な作業となります。プロは、昇降盤やテーブルソウで、二回直角に切り込んで簡単に加工しますが、昇降盤での事故の多くは、溝突きや段欠きで起こっていることも事実です。

 ウチの教室では昇降盤による段欠き加工は禁止しており、多くの場合私が行っています。ですが、全てを自分で行ってもらいたいという気持ちから、何かいい方法はないかとずっと考えていました。今月は、生徒さん自信が安全に段欠き加工を行うためのジグを紹介してみます。まだ解決せねばならない点が多いのですが、安全のために参考になればと思いまして、とりあえず紹介します。

 木工教室の流れとしては、「手作業の延長として、電動工具を使う」という姿勢が自然です。それで、「ケヒキの線を丸鋸で切る」方向で考えてみました。要するに、段欠きするためのケヒキを入れ、それを何かに固定し、丸鋸で正確に切断するという方法です。最近買った充電式丸鋸は、小さく軽いため、手道具感覚で使えるので、電動工具が苦手な人にもそれほど違和感なく使えるのではないかと思います。

まず、加工材へ墨を入れます。 写真は2cm角の短い角材で、ケヒキで欠き取る部分のスジを入れました。

 それを作業台の端にあるバイスに台と同じ高さになるように挟んで固定し、左のようなジグを被せます。ジグは両側に丸鋸がずれないようにピッタリとフェンスを配置したもので一度切り込み、スリットを作ります。6つの丸穴は、ケヒキ線を見るための窓の役目をします。もちろん左右に分離してしまわないように両端の下側は角材を取り付けてあります。

 このように、丸穴から、スリットの左側がケヒキの線にピッタリ重なるように置いて、Fクランプで作業台に固定、そして丸鋸で必要な深さまで切り込みます。教室では手軽な充電式丸鋸を使っていますが、普通の丸鋸でかまいません。

こうして、切り込んだのがこの写真です。溝突きした状態です。これを同じようにもう一方の面から切り込めば、段欠き加工となります。切れ落ちた角材が刃と台の間に挟まれて向う側に飛ぶことがありますので注意は必要です。が、電池丸鋸では力が弱いので、キックバック等の力は弱いです。ごく少量の段欠きの場合は作業台に傷がつく場合がありますので、捨て板を併用します。

 できあがりはこんな感じです。昇降盤による加工に比べ、ケヒキ線に目でジグを合わせるため、精度は0.1〜0.2mmくらい悪いかもしれません。が、確実にジグをセットして加工ができ、また多少湾曲した材などの場合等では、このジグの方が精度よく加工が出来る場合もありそうです。

使用感と問題点は次のような点です。

何より、安心して加工できることの意味は大きいと思います。

関西人の名古屋界隈事情 --- 忘年会 ---

 工房準備中の1999年末、会社や学校の仕事をやめ、初めて暮らし始めた名古屋では、忘年会のお誘いが全くなかった。お酒は嫌いではないが、沢山は飲めない。ビール一本で充分、それ以上飲むと眠くなったり、気分が悪くなったりする。サラリーマン時代は、「飲み会」がどちらかというと嫌だった。お小遣いが減るからだ。お酒にお金を使うより、レコードやギター、木工・山やカヌーなど、遊びに使いたかった。しかし、意外にも、忘年会が全くないというのは寂しかった。それで、工房の設計をお願いした設計事務所の忘年会に無理に入らせてもらった。忘年会は、ひとつぐらいあってもいいものだと思う。

 さて、お酒の席では「細かい事を言うな、まあ飲んで飲んで・・・」というようなムードが支配的。会社員の時、「○○部長、忘年会に2万円ほど、お願いできませんでしょうか?」などと根回しし、役職や年齢、性別に応じて異なる会費をとったことはある。が、ふつう会計は基本的に割り勘だと思う。

 「割り勘」、なんとうまい言葉。響きは公平である。しかし、しかしである。現実は全然公平ではない!。お酒を水のように飲む人も、ウーロン茶2杯だけの人も、同じ金額なのだ。例えば、食事3000円にお酒5000円飲んで8000円の人と、食事3000円と飲み物1000円の4000円の人が同数いて割り勘だと会費は一人6000円となり、飲めない人が大酒飲みに2000円も進呈することになる。会計処理は簡単だが、こんなに理不尽なことが忘年会でついてまわる。

 聞いた話。外国から学生が日本に来て、夜焼鳥屋で宴会をすることになった。「日本では宴会の会計は割り勘。俺が少し面倒をみるから、一人2000円は出すこと」と念押しをして宴会を開き、終わりに2000円を集める時になって、「オレは、そんなに食ってないよー」と2000円を払わない学生がいて困ったという。日本の習慣に慣れていないとはいえ、この学生の気持ちはよくわかる。かといって、各人の飲む量をいちいちチェックするのは野暮だし不可能。そこで「飲み放題」が登場する。しかし、これとて、飲まない人間が大酒飲みを援助していることに変わりはなく、本質的解決にはならない。

 イギリスのパブ、ビール一杯から、現金引換え方式である。面倒ではあるが、明快会計だ。帰り際に「お金がない、困った」ということもない。自分的には、この方式がいい。いちいち買いにいくのが面倒なら、ビール代にプラス100円のチップを払ってもよいくらい。そう、チップは不便なようで結構理に適っている。

 また忘年会シーズンがやってきた。あまり飲めない方にも不利にならないよう、気をつけたいと思う。今のところ、リーズナブルな飲み放題を使うしか、いい方法が思いうかばないけど・・・。

 写真はこの話と関係なく、定光寺本堂前の紅葉。寺の奥には、徳川家康の九男、徳川義直の墓所があり、中国風の変わった建物や左甚五郎作という彫り物も見ることができる。有名なの香嵐渓もいいけど、定光寺の落ち着きもよい。高蔵寺から多治見へ抜ける愛岐道路の途中山手にある。


2008年11月

目次
・第八回木工教室作品展終了
・リチウムイオン電池の充電工具
・関西人の名古屋界隈事情--- BABY IN CAR ---

◆ 第八回木工教室作品展終了 ◆

 秋は展示会シーズンですが、今年は知人や私も関係する展示会が9月末から11月までほとんど毎週のように開催されています。そんな中、毎年10月最終週に開催しているウチの教室作品展が終わりました。写真数枚でごく簡単にレポートします。なお、個々の作品の写真は来年一月のHPにて公開する予定です。

 今年はプロの木工家の展示会もよく見ました。仲間の展示会で友人の作品を見る場合、その印象は一般のお客様が購買目的で見られるのとではかなり違います。ましてウチの作品展の場合、来場者の大半は生徒さんの家族や友人の方です。ですので、冗談半分「ここスキマあるやん!」などと文句を言われたとしても、基本的には好意的です。このため教室の展示会では自己満足な評価になってしまいがちです。この点、一般の方を対象とした販売目的の展示会であれば、その評価は大変シビアです。要は売れるか売れないかです。身銭を切ってまで手に入れたいと思わせる魅力がないと、販売には結びつきません。

 ウチの教室は「楽しむための木工教室」で、販売目的の製作はできません。しかしながら、木工教室ではあっても、自分の作品を厳しく見て、次につなげてほしいと思います。自己満足の終らず、見る人を感動させるような作品を目指してもらいたいと、自分に言い聞かせながら、思っています。

ギャラリーでの小物中心の展示
工房入口より左側の展示
中央のテーブルでの展示
工房入口より右手を見る
製作途中の作品もあります

 

リチウムイオン電池の充電工具

 リチウムイオン電池のドライバドリルとインパクトドライバを購入してからは、ほとんどそれしか使わなくなりました。パワーと持続力がまるで違うからです。ただし、慣れないと、パワーがありすぎてネジを潰したりすることがあり、従来のニッカドやニッケル水素のドライバの方が使いよい場合もあるでしょう。しかし、プロユースでは、リチウムイオンでないと使い物にならないと思います。

 教室ではインパクトの出番は少ないので、もう一台ドライバドリルを購入しました。同じモノだと芸がないので、ごくまれにですが、振動ドリルがほしいこともあるので、振動ドリルとドライバドリルが切り替えられるものを買いました(写真中央奥)。本体のみですので14000円ぐらいでした。また、サブロクのベニア板を切断する場合など、コードレスの丸鋸が便利ではないかと思いまして、写真の丸鋸も買ってみました。6月の名古屋の展示会でご一緒した山形の大江さんも、お使いになられているようですし、内装がお仕事の生徒さんも「これは便利」と言われていたものです。これも電池と充電器なしの本体のみの購入ですが、さすがにもうひとつ電池はほしいです。

 振動ドリルの機能はまだ実際に使っていませんが、丸鋸はよく使います。写真のような定規を作ってこれでサブロクを手軽に切断できます。丸鋸の刃が薄いので、切り代が約1mmというのも助かります。模型のモーターのようにやや頼りない軽い音ですが、コードがない気軽さは捨てがたいです。では、タモの無垢材など厚さ35mmの広葉樹を切れるかというと、かなり無理があります。切り代が少ないので、切断途中、材に挟まれて動かなくなってしまうことが多いようです。ただし、力がないので、キックバックにならずに止まってしまうのは、かえって安全です。無垢材の切断には充電ジグソーがよさそうですが、パワーが充分にあるか、気になります。お使いになっておられる方おられましたら、使用感を教えてください。

関西人の名古屋界隈事情 --- BABY IN CAR ---

 何時の頃からだろうか、「BABY IN CAR」とか「赤ちゃんが乗っています」などというステッカーを後ろに貼った車を見るようになった。時には「マタニティーママが乗っています」というのもあり、ヘソ曲がりな私は、「そやから、何やねん!」と、あまり印象はよくなかった。しかし、夏にアメリカで娘から聞いたのだが、このシールの本来の目的は違うらしいのだ。

 本当かどうなのか知らないけど、本来の意味は「事故の際、小さな赤ちゃんがシートの下等に入ってしまって、救助の人に見えないことがある。それを防ぎ、知らせる為」だという。「おお、そうか、そうなのか!!!」と、椎名さん風に妙に感心してしまった。

 今まで、「赤ちゃんが乗っています」のステッカーは、「赤ちゃんが乗ってるからゆっくり走るけど、後ろから煽ったりしないで!」というメッセージだと思っていた。自分は結構安全運転の方だと思うし、車間距離も結構とる方だ。しかし、このステッカーはどうも好きになれず、「そんなことより、もっと後ろを見て走らんかい!」と思ってしまう、あまりやさしくない方だったのだ。

 お詫び:
「BABY IN CAR」の皆様、間違っておりました。もちろん、これからも安全運転に勤めますが、このステッカーの本当の意味は、事故レスキューの為だったんですね。失礼いたしました。で、貼っておられる方は、皆さんご存知でしたでしょうか?


2008年10月

目次
・第八回木工教室作品展
・失敗から学ぶことは多い
・関西人の名古屋界隈事情--- 「名古屋走り」 ---

◆ 第八回木工教室作品展 ◆

 「秋空の下」とはいきませんでしたが、恒例となりました木工教室作品展が無事終わりました。足元が悪い中、見に来てくださった皆様、協力いただいた教室関係の方々、ありがとうございました。

 

失敗から学ぶことは多い

 木工教室も今年で9年目、作品展は8回目を迎えます。今まで多数の生徒さん達の作品作りに関わってきましたが、昔からよく言われている「失敗は成功の元」というか、失敗から学ぶことが本当に多いことを痛感しています。初心者に「定番」とも言えるような、失敗、勘違いをいくつか書いてみたいと思います。ベテランの方にはあたりまえのことかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。やはり鉋が多いですね。

1、鉋にカビが生えました

 道具箱に使った砥石といっしょに鉋を保管したり、ひどい時は水を吸った砥石の上に鉋を置いていた方も。当然、湿気をすって鉋は膨れ、台は狂い、ひどい場合は台にカビが生えて極彩色に・・・。水を使う砥石と道具は別保管が鉄則。

2、鉋を一日研いだのですが、刃がすぐにコボレマス・・・

 まじめな方によくあるパターン。そもそも刃を一日も研いだら、なくなってしまいます。柔らかい地金の方に力が入っていて、肝心の刃先が砥石に当たっていないので、いくら研いでも返りがでない。刃角10度程の超鋭角になっていた方もおられました。これでは刃がすぐに欠けるわけです。しのぎ面を砥石に当てて研ぐわけですが、その角度を保ちつつも、力は刃先に入るようにします。そうしないでしのぎ面全体に均等に力を入れて研ぐと、柔らかい地金がはやく減って段々と鋭角になります。これが難しい。刃先に力が入ってうまく研げば、5分も研げば、充分に返りはでるものです。熟練の職人さんは「仕事中の研ぎは一分間で!」と言われる方もおられます。

3、ケヒキがうまく使えません

切り込むことに力と気持ちが集中していて、ケヒキの本体を木端もしくは木口に確実(力は軽くてもよい)に当てて滑らせることができていない。あるいは、力が入りすぎて、ケヒキ本体が木に接せずに斜めになっている場合も多い。このような場合は、刃を引っ張ったり、押し込んだりする力が働いて、ケヒキで線を引いている間に刃の位置がずれることがあります。刃は軽く切り込みつもりで、本体をしっかりと木端なり木口にぴったりと押さえて滑らせてください。

4、鉋の刃が斜めに出ます

 刃と本体の間の”仕込み”具合を調整して、軽く刃を出していくだけでまっすぐに出るように調整するのがよいのですが、最初からそんなにうまく行きません。出ている方側から刃を軽く横から叩いて直します。直らない場合は、鉋の台がやせて、押さえ溝の奥に余裕が全くなくなっている場合があります。このような場合は、一分ノミ等で、少し溝の底をさらい、0.5mmぐらいは余裕があるようにします。それでも直らない場合は、刃先が斜めに研げていないか、鉋刃にスコヤをあてて、確認します。初心者が半年間ほど使った鉋の多くは、刃先が斜めに研げているように感じます。修正は刃先が出ている方に力が入るように研いで直します。

5、鉋身の上端がボコボコになってます

 玄翁で刃を叩く角度が悪い。刃を斜めから叩くので、大きなバリが生じたり、ひどい場合には地金が層に分かれたりします。金属の玄翁で叩けば、多少は痛むものですが、問題になるほどではありません。気になるほど大きくバリが出たりするときは、叩き方と刃の仕込みが堅すぎないかチェックしてください。

6、鉋の刃が両端しか出ません

 原因は二つ考えられます。台が反って中ほどが高い場合と、刃先が一直線ではなく両側が高くなっている場合です。前者は、サンドペーパーなどで手軽に台直しをした場合に多く、やはり台直しで、中ほどを削ってやる必要があります。後者は、中砥の修正がいい加減で、砥石の表面が凸になっているのが原因であることが多いです。

7、ケヒキやシラガキの線が見えません

 老眼がでてくる年齢の人はほとんど皆さんそうです。メガネの問題は大きいです。しかし、タモの柾目など木目と区別がつかない場合は、いろんな工夫をして、とにかく見えるように工夫します。光線を横から当てたり、水でぬらしたり、0.3mmのシャープペンシルでなぞったり、白の修正テープをはったり、ある程度の年齢の方は皆さん苦労しています。「全然見えません」と愚痴を言っても始まりません。

8、ノミで木口が垂直に削れません

 ノミの裏の刃先がダレている。このため、ノミが逃げていき、ホゾ穴などは奥が狭くなる。再度、ノミの裏を完全な平面にします。15mm以下のノミなら、よく平面を出した中砥での裏出しでかまいません。

9、うまく削れません、その1。

 二週間ぶりの教室で、前回と同じ状態の鉋はほとんどありません。刃が研げていて、台が狂っていないかは毎回チェックします。削り始めは刃が木に当たるのに、削りだすと刃が当たらなくなるのは、刃口より台頭のところが高いからです。この部分は、刃に押されて出てくることが多く、刃を出したままで、台直鉋で注意深く削るなどする必要があります。また、新しい鉋は長手方向よりも短手方向で狂うことが多いです。乾燥に伴ない、木表側が凹になりやすいのです。

10、うまく削れません、その2。自動鉋のままの方がよっぽどキレイです。

 交差木理や複雑な木目、節の回りなど逆目で木を削らねばならない場合はよくあります。それでも木目をよく見て、できるだけ順目で削ること。それと理屈では、「刃の出を少なくしてできるだけ少なく削る、切削角を大きくして、逆目がでないようにする」わけですが、手鉋に当てはめると、透けて見えるほどの薄い鉋クズになるようにして、かつ裏金をきかせて切削角を大きくすることにつきます。仕上削りでは、鉋屑が最初から出てくるようでは刃の出しすぎです。この辺は一番難しいところで、かなりのベテランでもしばしば苦労します。どうしても無理な場合は、教室では横ズリで慎重に削り、最後はキャビネットスクレーパーで仕上をすることがあります。
 自動鉋による削り肌はきれいに見えても小さなスプーンカットの連続です。それを平面にするには荒めのサンドペーパーで研磨せねばならず、大きなワイドベルトサンダー等でなければ平面を維持して研磨をするのは難しいですし、ペーパーの細かい傷が残っています。鉋で平面にしてからサンディングするのと違う結果になるのは当然です。

以上、思いつくまま書いてみました。これを読んで理解できる人はかなり経験豊富な人ですが、少しは参考になりましたでしょうか?

関西人の名古屋界隈事情 --- 「名古屋走り」 ---

 最近テレビで春日井市出身の俳優であり映画監督の奥田瑛二さんが、「やめよう、名古屋走り」と訴えかけている。「名古屋走り」とは何なのか。正式な定義(そんなものないか?)は知らないが、地元の生徒さん達との話しによると次のような悪い自動車運転の総称のようである。

 名古屋に来るまで、大阪は運転マナーが悪いと思っていた。実際、青信号での発信が一秒遅れたら、クラクションを鳴らされる。阪神高速の環状線なんか、300mほどの間に5車線ぐらい車線変更はせなあかんし、右側合流も頻繁にある。これに比べると、名古屋の昼間は、のんびりしている。けど、立派な紳士や奥様方が高級な車に乗って優雅に、かつ身勝手に運転をされているのにカチンとくることがある。大阪はセカセカしているけど、暗黙の了解みたいなルールがあって、意外に周りの車にも気を使って運転している人が多いように思う。いや、道路が狭いので、そうしないと走れないのだろう。

 名古屋走りの中でも私が一番メチャクチャやと思うのが、黄色〜赤信号で止まる車が極端に少ないこと。自分が運転していて、黄色が赤に変わったのに、「ああゴメンなさい」と心の中で叫んで交差点に入ってからバックミラーを見たら、後ろに5台程続いてくるのは日常茶飯事。これは注意した方がいい。若い頃に仕事で松山に行っていたが、そこでは「伊予の早曲がり」というのがあった。当時の愛媛県は一車線道路が多く、右折する車は、後続車に迷惑をかけないためにも予想以上に早い目に曲がる傾向があったのだ。私もレンタカーを運転していて、「エエーッ!!!」とびっくりするくらい、前の車との車間が30mぐらいで対向車線から右折されたことがある。しかし、「伊予の早曲がり」は「曲がるかもしれないぞ!」と予想がつく。これに比べ、赤信号突っ込みは、見通しの悪い交差点では予想がつかない。

 右折するために直進車の通過を待っている場合、赤信号になってから5台も6台も通られては、右折できる車が極端に少なくなる。だから、こんどは右折車が強引になる。そうすると、反対側の直進車の発信が遅れる・・・という悪循環が繰り返される。このパターンが、名古屋走りを象徴しているように思う。要するに、身勝手な「殿様運転」が多い感じだ。

 愛知県は交通事故死ワースト1を連続獲得しているという。名古屋の人が「名古屋走りをやめよう」と言わねばならないほど、切羽詰っているということだろう。自分も含め、「やめよう、名古屋走り」「やめよう、無理な赤信号突っ込み」である。


2008年9月

目次
・自動鉋入替
・FESTOOL丸鋸
・関西人の名古屋界隈事情--- 「冷やしたぬき蕎麦」 ---

◆ 自動鉋入替 ◆

 2000年春工房開設の際、中古の木工機械を5台まとめて購入しました。手押し鉋、自動鉋、昇降盤、角ノミ、集塵機です。中古木工機械を買うのはその時が初めてでした。そのうえ工房建設や教室運営開始など、ゆっくり品定めをする時間も経験もなかったのです。購入先の中古機械屋さんには、昔読んだ本の中に書いてあった「手押しだけはいいものを・・・」という文が頭にありまして、自分の好みや使用状況をよく考えずに、「手押しは定評のあるもの、自動は500幅であればいい」というふうに伝え、機種選定はお任せしていたのです。その頃、定評ある木工機械メーカーの名前すら知らなかったのです。

 数年前から自動鉋の調整や修理に時間を割くことが多くなりました。飯田工業のSP201という古い自動鉋です。送り込みのローラーがセクショナルと言って、5cmほどに分割されているタイプです。これは高さの異なる角材を同時に通す時などには良いのですが、ごく薄く削る時など、角材の角に歯車の型が残ったりしました。ローラーの押さえや位置を微妙に調整して使ってはいましたが、限界は見えていました。また、インバーターによる変速がない頃の機械のため、Vベルトを使った変速プーリーによる変速で、ベルトも二回交換したものの、ガタが大きく、送りの音が次第に大きくなっていました。調べてみたところ三木プーリーで同型の入手が可能なことが判明し、変速プーリーの交換を試しみましたが、抜くことさえできず、困って飯田工業に電話で相談してみました。「プーリーではなく、変速ギヤの磨耗による音ではないか」との指摘もうけました。またこの機種の製造年が昭和50年頃だということもわかりました。

 昭和50年と言えば、私がまだ大学生の頃、この機械は約33年前の機械ということになります。手押し鉋であれば、定盤のフライス加工とベアリングを交換すれば、もっと使えるかもしれませんが、自動鉋は木工機械としては構造が複雑で、33年もの間酷使された機械であれば、もう諦めた方がよいという結論に達しました。仮に70歳まで木工教室をすると過程する(^^;)と・・・、あと15年はこの機械では無理だなということもありました。それで、6月頃から自動鉋の入替を考え始めました。

 自分は一枚板にはあまり興味はなく、規格物の材木を使うことがほとんどです。実際9年間の間で500mmの幅いっぱいに削ったことは二度しかありません。もちろん幅が広い方がよいに決まってますが、400mmあれば今市場に出回っている材料には充分な大きさだと考えました。500と400では値段がかなり違うのです。また安い小型研磨機を買えば自分で研磨ができます。しかし自動昇降は絶対ほしいと思いました。というのは、教室ですので、いろんなサイズの板を削る際、毎回重い定盤を手動で上下するのは大変だったのです。

選定
 特に親しい木工機械屋さんもいませんので、まったく白紙の状態からインターネットなどで探し始めました。木工仲間の評判から、「桑原」は最高、「太洋」もいい、松岡もいい・・・というようなイメージになっていました。桑原は今も当時の技術者の方が、別会社で機械を作っておられるそうで、一応新品の値段を聞きましたが、やはり予算的に到底不可能でした。7月末、友人の木工家もよく使っている「松岡」の機械を置いてある中古機械屋さんを見つけ出向きました。そしたら、松岡の450mmと400mmがあり、さらに太洋の400が置いてありました。どの機械も通電して音を聞かせてもらいました。またローラーやベアリングのヘタリ具合も確認させてもらいました。実際に機械を見ていると、「東の桑原、西の太洋」と言われるだけあって、太洋のメカは惚れる部分がありました。押さえローラーのバネの強弱切替や、ローラーが急に落ちないようにオイルダンパーがついていること、また刃のセッティングの容易さも優れていると思いました。松岡も上下ローラーが駆動する機構をもっており、これも魅力的でした。「松岡か太洋」で非常に迷いました。太洋の方は建具屋さんで大事に使われていた機械で、かつデジタル表示が「寸」であるためか、値段も太洋にしては魅力的でした。そこで、再度機械屋さんに伺い、実際に削らせてもらいました。しかし、削ってみても正直なところ、どちらが優れているかわかりませんでした。迷いに迷いましたが、磨耗がより少なく、太洋さんも当時の技術者の方が一宮市でメンテナンスをしておられることの安心感等から、太洋に決定しました。なお、その太洋さんに聞いたところ、この機種は平成4年頃製造だということでした。

搬入
「友引」の8月26日、機械の搬入です。800kgほどの機械を運び出すのはどうするか、二度目の経験なので、よくわかっていました。通称「ユニック」と呼ばれるトラック掲載のクレーンで吊り上げます。あとはリフターと呼ばれる強力なコロ付カートで運ぶのです。ですから、トラックから降ろすところに、設置場所と同じ高さに仮設の舞台を作っておけば、そこからは水平移動のみということになります。大きなトラブルもなく、無事に搬出・搬入を終了しました。

機械というのは、使いこなすまで時間がかかります。まだ新しい太洋の機械になれていません。音は静かで送りも安定していますが、集塵があまりうまく行かず、木屑が引出ローラーの方に入って少々困っています。なんとか送り出し側に木屑が入らないよう工夫する予定です。またデジタルカウンタの「寸」表示を「ミリ」表示に変更すべく、エンコーダーの交換を予定しています。それらが終ってから、この機械の評価をしたいと思います。

中古木工機械の購入について
これから工房を立ち上げる方の多くは中古木工機械の購入を検討されていることと思います。私自身、経験は豊富ではありませんが、思いつくまま、アドバイスを書いてみました。ご参考まで。

◆FESTOOL丸鋸◆

 アメリカに行ったこともあり、米国で販売されているFESTOOLの電動工具をいくつか入手しました。今月は丸鋸の使用感を短くレポートしてみます。国内では8万円以上ですが、米国では475ドル、5万円少々です。 先日材木置き場の壁を作った際に、使ってみました。1400mmのガイドレールを使ってパネルの切断や、段欠きなどの作業に使いました。

 集塵ポートには、マキタの小型連動集塵機のホースをつけています。刃の出方は写真のアルミフェンスを併用する場合は、5mm多くします。実際に切断するには、右手親指で安全装置を上に移動し、スイッチを入れて、本体を下げて刃を出します。このステップ、マキタの「ウィーン」という丸鋸になれていると、かなり手間です。モーターの回転音は「ウィーン」ではなく意外にも「ゴロゴロ」です。刃の幅は3mmほどあり、昇降盤並。すぐれているのは、刃後部に設置されている、三日月型の割り刃。途中から切り込む時は、引っ込んでくれる優れものです。手持ちの丸鋸で割り刃の効果はどれほどあるのかと疑問に思っていましたが、このようなパネルを切る場合、切断の終わりに材に挟まれるキックバックが、かなり少なくなるように感じました。これは予想以上。

ガイドレールを固定する専用のクランプも買いましたが、すべりどめのゴムテープがかなり効果的で、パネル切断などではクランプの必要性は感じませんでした。でも油断すると動くことがあるので、専用Fクランプは買った方がよいと感じます。

 大工仕事に使う場合、刃を出し入れする機構が便利なのか不便なのかわかりません。多分、日本製の丸鋸の方が、能率は上がるように思います。ただ、刃が引っ込むので使用後に丸鋸を置くのはとても便利で安心です。しかし、その分、ブレーキはありません。スイッチをはなしても長い間回っています。ウチにある他のドイツ製木工機械同様、この丸鋸も大変よく考えられています。しかし、実際の使用状況よりも、ややコンセプトに走りすぎているようにも感じました。

関西人の名古屋界隈事情 --- 「冷やしたぬき蕎麦」 ---

 8月で岐阜市へ何度か行く用があり、いつもの常で、昼飯のお店を探してみた。岐阜には結構高級な蕎麦屋さんがある。が、そんな中、「更科」という庶民的なお店の「冷やしたぬき蕎麦」というのが人気があるらしい。早速正午過ぎにお店に入ってみた。

 要は、甘く炊いたオアゲさんとテンカス・ネギ・ワサビを載せたブッカケ蕎麦。これは岐阜市民のソウルフードなのだそうだ。細い三角地帯に建つお店は両側から入ることができ、裏側である東口から店内に入ると、周囲の公共施設の職員さん達だろうか、昼休みの男性客でビッシリ。そのほとんどの方が、この冷やしたぬきダブルを頼んでいる。その熱気がすごい。

 ほどなく席に着き、私も皆さんと同じく「冷やしたぬきダブル」を注文。注文してから一分ほどで出てくる。すごい人気と客数なので、流れ作業で作っているのだろうか?いやはや、早い。驚きました。

 さて、お味の感想は?。ごく普通の小麦粉の多いゆで蕎麦に、甘いアゲがのって、テンカスが乗って、辛い目のお汁がかけてある、写真のマンマのお味。でも岐阜で育った方には、忘れられない味なのでしょう。関西人の私には、もうちょっと薄味にしてほしかったという印象。


2008年8月

目次
・20年経った机と椅子
・関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋はサウナ状態 ---

◆ 20年経った机と椅子 ◆

 アマチュア時代に叔父に頼まれて、机と椅子を作ったことがあります。甥っ子が作ったということだからでしょうが、大変気に入ってくれ、長年愛用してもらいました。叔父は数年前に老人ホームへ生活の場を移したために、最近は空き家に放置されていました。それが戻ってきたのです。

 これを作った頃は、本格的な木工技術を少しばかり知った嬉しさで、恐い物知らずでした。木はその頃値段も安くて好きだったカバ材で、大阪南港の材木屋さんで買ったと記憶しています。「乾燥してるよ」といわれ、その気になって、乾燥状態を心配もせずに作ったわけですが、たぶん天然乾燥材でまだまだ乾燥は甘かったのだと思います。貫のないシンプルな机で、抽斗は二つ、中に間仕切りの板を入れ、天板はアリ桟をソリ止めとし、それで脚部につながっています。仕上は、その頃好きだった、柿渋の二倍希釈4回塗りだったと記憶しています。

 叔父は、自分で茶室の一部を作るなど、大変機用な元設計屋さんです。そのままでは色が薄いと感じたのか、後から送った柿渋を、何度も自分で塗ったとのことでした。そのため、色ムラが激しく、よく言えば”アンティーク風”で、20年の歳月を感じます。しかし、何度も柿渋を塗ったということは、天板の木工ボンドが水で緩みやすい原因にもなったことでしょう。天板には典型的なハギワレが生じています。天板は、8mmのカッターで溝を掘り、雇いサネによる板ハギをするなど手間をかけていますが、実用面からは、ビスケットを併用したピーアイボンドによる板ハギの方が、断然強いと思います。

 アリ桟によるソリ止めはわりとよく効いているようです。コマ止めだったら、天板はもっと反っていたかもしれません。アリ溝を掘るのは苦労しました。手持ちの丸鋸に恐い4Pカッターをつけ、おおまかに溝を掘り、その後ルーターにアリビットをつけて加工したはずです。この頃、たぶん、アリをテーパーにはしていないと思います。それで、端の方の効きがちょっと甘いのかもしれません。

抽斗側板は、その頃安かったアガチスです。江坂の東急ハンズで、美しい縞模様が入ったアガチスの板が売り場にあり、全部買って帰りました。今はアガチスも高くなりましたが、鉋をかけると絹のような光沢があって、美しい木です。前板は「包み打ち付け」ですが、まったく問題がありません。苦労してアリで抽斗を組む必要性は、実用面からはあまりないのかもしれません。でも一度アリで抽斗を組むと、釘を打つことが悪いような気になってしまいます。ツマミは、マキタのドリルをつけるオプションのロクロで作りました。2つ作るのに、3つはダメにしたと思います。

 椅子は、今見ると、実に恥ずかしい。その頃、座り心地など、あまり考えていなかったです。直角のホゾ組みしか作ることができなかったのでしょう、座面は水平、背は垂直の後脚を少し斜めに削って、ほんの少しだけ斜めにしているだけです。座板は幕板に上から釘で止め、ダボで隠しています。ダボは繊維方向が違うので、長い間に必ず浮き出てきます。この椅子でも0.5mmほど飛び出していました。今なら、幕板の下側から木ねじで止めるか、コマ止めにすると思います。この椅子、重いですがガタはまったくありません。

 20年という時間を経て、自分が作った木の机と椅子が手元に帰ってくることは、まずないことです。この椅子と机は、木工を覚えて2年目ごろ、恐い物知らずに作ったものですが、若い頃の”勢い”を感じます。デザインと言えるほどのことは何ひとつありませんが、50年ほど前に初めて座った小学校の椅子と机、その雰囲気を漂わせているように思います。欠点もありますが、そのまま自分史の一部として、工房の片隅で何かの役にたてたいと考えています。

関西人の名古屋界隈事情 --- 名古屋はサウナ状態 ---

 実は7月末から10日間ほど、アメリカ西海岸に行っていた。いつもは木工の旅なのだが、今年は全くのプライベート旅行。バンクーバーで高校時代の友人に会い、サンフランシスコで30年前仕事で訪れた場所を再訪、また娘の住むサンルイスやモロベイの町を観光し、最後はヨセミテでキャンプをしてきた。めずらしく全部観光旅行である。写真を見て、少し涼しい気分になっていただけると嬉しい。

 さて8月8日に名古屋に帰ってきたが・・・、予想していたとは言うものの、ホンマにサウナ状態だ。寒いほど涼しいサンフランシスコをはじめ、アメリカ西海岸の乾燥した気候は木工にはとても良さそう。それに比べると、名古屋の夏の木工はかなりキビシイ。昨年私がちょっと精神的にも肉体的にもまいってしまい、半月ほど変になっていたとカミさんが言う。そんな状態で木工をしてもいいモノはできないし危ない。木工の作業現場にも冷暖房を完備すべきなのかもしれない。何となく、「40度の中、がんばっている」とか「仕事に熱中していたら暑さ寒さも関係ない」みたいな根性主義が木工現場の常のように思われているようだけれど、そろそろ、そういう縛りから脱却した方が身のためだと感じる、名古屋の夏だ。

皆さん、猛暑の中、無理をして体を壊さないよう、充分ご注意ください。


2008年7月

目次
・木ねじ関連余談
・関西人の名古屋界隈事情--- 守山PAの折込広告 ---

◆ 木ねじ関連余談 ◆

 木で家具を作っている人で「俺は金具を全く使わない」という方はまずおられないのではないでしょうか。釘や木ねじはとても便利なもので、うまく使ってあれば、金物を使ったからと言ってその家具の価値が下がるというものでは決してありません。展示会などで「釘を一本も使ってないのですか?」と質問をされる方は素人さんで、テレビ番組などで「釘やねじを使っていない」ことを最上と勘違いされている場合が多いようです。もちろん、江戸指物のような、極めて薄い板を組み合わせる細工で、金物を使いたくても使えない「職人の粋」を感じさせるような例外もあります。

 「木ねじ」と簡単に言いますが、経験豊富な方ほどその使い方は簡単ではないことを知っています。特に家具に多く使われる広葉樹は、針葉樹とちがって硬いため、下穴なしで木ねじを使うことは無理がある場合が多いのです。ご存知かと思いますが、一応木ねじを使う時の順序を書いておきます。

  1. 木ねじのサイズを選ぶ
    例えば9mm厚の板を木ねじで固定するような場合、木ねじの長さは、板厚の2倍〜3倍ぐらいが目安ですので、規格から長さ22mm〜25mmのネジを使うことなります。もちろん、要求される強度や木の割れやすさなどで、適宜変更します。直径2.7mm以下の木ねじはドライバーのサイズがNo1の小さいものになって使いにくいので、できればNo2のドライバーが使える直径3.1mm以上を使用します。なお、教室で常備しているのは直径3.1mmと3.5mm、長さは20mm〜38mm程度です。
  2. 下穴をあける
    材質によって下穴径を検討しますが、概ね呼び径の7割〜8割です。直径3.1mmなら、下穴径は2mm〜2.5mmぐらい。深さはネジの長さも材質で変わりますが、だいたい9割。しかし樫のような硬い木だと、ねじの長さをしっかり開けます。
  3. 首穴をあける
    これをご存知出ない方が意外と多いのです。下穴だけで木ねじを入れると、ねじの作用でとめる板が持ち上がってくるのです。木ねじの呼び径以上の穴をあけます。ガタツキをなくして留めたい場合は呼び径そのままですが、通常はプラス0.2mmぐらいの余裕がほしいです。3.1mmの木ねじなら3.2か3.3ですね。
  4. 皿もみ
    使用頻度の多い皿ねじを正しく使う場合、特に硬い広葉樹では皿キリによる皿もみが必須です。皿もみ用のビットは、安いものから高いものまでありますが、高くてもいいものを買ってください。安物では星型の穴になったりするからです。20年近く使っている皿キリは2000円ぐらいました。後に買った数百円の安いのは全然だめなんです。
  5. 木ねじを入れる
    適した大きさのドライバーを使い、ねじとドライバーが一直線になり、押す力を8割ぐらいのつもりで慎重にねじ込みます。硬いと感じたら、決して無理をせず、下穴を大きくするとか、木ねじにワックスや石鹸をぬるなりして、無理なく回るようにして、しっかりねじ込みます。

 さて、写真はウチで使っているドライバーです。上がNo1で2.7mm以下の小さな木ネジ用です。中段のがNo2で一番使用頻度が多いサイズ。下は「ヤンキー」と呼ばれていたらしいオートマチックドライバー。ネジ山を傷めやすい人には、オートマチックドライバーがおすすめ。押して回すからでしょうか。なお、ドライバーも安物はだめで、結局ネジを潰すことが多くなります。ベッセル社のドライバー、ビットは定評があります。

 多数のねじを手で回して入れるのはとても疲れますので、電動ドライバーも使います。でも、これをうまく使えない方が実に多いのです。特にインパクトドライバーはねじを潰す人が多く、一般的には強弱が切り替えられるドライバードリルがおすすめ。それも、ねじ山がつぶれる前に空回りするよう、せいぜい”4”ぐらいまでにセットするのをおすすめします。

 ここから余談です。左が数年前に買ったニッケル水素、右がもう少し古いニッカドです。どちらも、電池がすぐにバテます。充電しても、メモリー効果というんでしょうか、フルに充電ができません。値段は結構するのにどうも使い勝手がよくありません。

 ジャジャーン!、それで、ついに評判のリチウムイオンタイプを買いました。この機種については様々なサイトで評価が書かれています。ですので、買う前から性能は良さそうだと予想はしていました。しかし、実際に手にしてみて、正直驚きました。この軽さでこのパワー、電池もなかなかなくならない、ウーン、売れる理由がわかります。ただ、少々安いからと言ってバッテリーが使いまわしできないタイプを買ってはいけません。この機種はジグソー、丸鋸、蛍光灯、レンチなど、多くの充電工具とバッテリーが共通なのです。追加購入の場合に、本体だけを買えばいいわけです。インパクトなどは本体だけだと1万3千円少々で買えるので、結構安上がりです。その他にもLEDランプや先端リングが空回りして傷つけないなど、細かい工夫もしてあります。

余談その二です。

 日本では木ねじといえば、プラスがほどんどですが、欧州では今でもかなりマイナスが使われています。特に真鍮ネジはマイナスのものが多いようです。理由は、あくまで想像ですが、プラスのネジはある程度まではいい加減に回してもねじ込むことができます。しかし、ネジの回りが堅くなってきて無理をすると、ねじ山がつぶれるのです。ところがマイナスねじでは、ドライバーをねじと正確に一直線に保持して使わないと、ねじ込むことができないのです。堅くなって抜くことができないほどねじ込んでから頭がつぶれるのではなく、マイナスなら、それ以前に、ねじ込むことができません。また、マイナスねじでは、インパクトドライバーなどの電動工具を使うことが困難です。真鍮ネジならなおさらで、慎重な手作業の証ということも言えるかもしれません。

 次の写真は、数年前にカペラゴーデンの生徒さん達がウチに来た時、お土産としてもらった小箱についているヒンジです。彼らは真鍮の厚い兆番を両方の部材に、やや真鍮が飛び出すように埋め込み、真鍮の木ねじを入れた後、ヤスリでその高さを周囲の木とそろえるようにしています。そして、マイナスの溝は横方向にそろえられています。これは欧州だけかと思ったら、そうでもないようです。職業訓練校の教科書でも「マイナスの溝の方向をそろえるように」と書かれていました。

 溝の方向をそろえるためには、最高で90度、右か左に回さねばなりません。ねじ山のピッチが1.2mmだと0.3mmきつくなったり、ゆるくなったりすることになります。それでも、美しくするために、このようにそろえるのでしょう。このやり方がすべて良いというわけではありませんが、ここまで気を使って木ねじを使うのだということを、気持ちを新たにして、考えてみることも意味あることではないでしょうか。

(後日談)
 山形の大江さんから、木ねじについて次のようなコメントをいただきましたので、紹介します。

 HP拝見。木ねじの件は基本的に同意ですが、私はときに首穴はあけないで下穴のみでネジをもみこむことがあります。その場合は二材をクランプでがっち り密着させてから行ないます。首穴をあけないのは、ネジの頭だけでなく、螺旋を切ってある胴体の部分でも二材を締結したいからです。強度はそのほうがアップするように思います(とくに軟材の場合)。

 実際のところ、私も木ねじを使う場合は、接着剤を併用することが多く、この場合にはねじだけでは圧が不足するので、クランプで固定しておいてから木ねじを使うことがよくあります。こんな場合には、首穴をあけずにねじ込むことがよくあります。ご参考まで。

関西人の名古屋界隈事情 --- 守山PAの折込広告 ---

 一ヶ月前だろうか、こんなチラシが新聞といっしょに入っていた。このチラシの話は絶対に名古屋界隈事情にとっておこうと、そのチラシを保存していたのだ。 以前にも守山PAの話は何度か書いている。外から入れる扉があって、近所の人がよくきし麺を食べに行くという話である。その時は、なんとなく、裏情報のような感じで書いたのだが、このチラシではっきりした。「歩いて入れるパーキング!!」ということは、まったく公認の、全然問題ない、通路ということなのだ。

 たしかに守山PA、ちょっとしたお土産を買うのにも重宝するし、昼の定食類も魅力的なものが多いのだ。名古屋方面へ来られたら一度利用してみてください。


2008年6月

目次
・木工家30人展、終了
・関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋市内中心部駐車場事情 ---

◆ 木工家30人展、終了 ◆

 名古屋の中心部、栄・伏見エリアにある「電気の科学館」で6月3日〜8日行われた「木工家30人展」が終わりました。全体的なこと、記録写真、参加された方の声等は、下記公式ホームページをご覧いただき、ここでは昨年秋だったでしょうか、「合同展示会」を名古屋でやろうと声をかけはじめてから、開催までの経緯などについて、書いてみたいと思います。これはあくまで私的な感想・考えですので、勘違い等も多々あるかと思いますが、お許しのほど、よろしくお願いします。

木工家ウィーク 2008・NAGOYA

1、私の展示

 まずは私の展示の様子です。テーブルはアルダー材でできており、中央のベンガラと柿渋で赤く塗った部分が幕板内部に収納でき、小さなテーブルになります。各天板はアリ桟が反り止めとして入っており、その桟がL字型にしてあり、両側の幕板から差込み、スライドする構造です。斜めにせりあがる伸縮テーブルよりも簡単な構造ですが、すべる部分の加工には、気をつかいました。

 椅子4脚は、私の定番Amstackです。今回手前と右側のを新しく作りました。材は楢で、細いナイロンテープをピンと張った座面で軽く、意外とすわり心地や耐久性も良いものです。買っていただいた物は、革張りのものが多いのですが、私自身はこのような編んだ座が好きです。

卓上の小物は、東京の「手考会展示会」に出品したもので、見られた方もいらっしゃるかもしれません。「川」のイメージの引き出し箱、格子のお盆、桐とヒバの前面が丸い小箱です。

少々暗くいですが、奥にあるのは、数年前に作ってどこにも出品したことがなかったライティングビューローです。前の扉を開ける前に支持板を引き出さないと開けられない、ちょっとしたトリックを仕込んであります。外側の主材はホワイトバーチで、一部チェリーを併用、内部と裏はアルダーです。
(余談:このような家具は、ライティングデスク、あるいは単にビューローと呼ばれています。少し調べてみましたが、どうもライティングビューローと呼ぶのが正しいようです。ビューローはタンスの意味らしく、書き物ができるタンスというような意味でしょうか。)

 椅子に興味を持っていただいた家具店の方がおられました。仲間内ではライティングビューローのトリック的な面白さが受けていたようです。またテーブルの柿渋+ベンガラ色とアルダーの対比が美しく、テーブルのお値段もお二人の方から聞かれました。展示会前は、皆さんとのレベルの違いがあって、見劣りするのではないかと心配しましたが、会場の光線のおかげもあり、自分では結構見られたと思っています。何人かの方から、「あなたの家具のスタイルが好きですよ」と言われ、気をよくしました。こういう感想をいただくのも、このような展示会の大きな成果のひとつだと思います。最終日には、会場に来られた長大作さんにも椅子に座っていただいき、良い記念になりました。

 展示会全体の印象は、「技術の優劣ではなく、それぞれの個性が目立つ」というもので、それはとてもよいことだと思います。私のような、比較的アッサリした、それでいて一工夫してある家具が好きな方もおられましたし、もっと重厚で色の濃い家具を好まれる方、また女性の感性にピーンと響くような家具に注目されている方もおられました。隣はTanuCraftさんでは丁寧に作られた子供向けの家具や小物が並べられ、小さい子供をお持ちの方やご年輩の方に大変受けていました。繰り返しになりますが、「優劣ではなく個性」という展示になっていたことを私はとても嬉しく思います。

 展示方法については、私自身は「個人がやや曖昧」な展示だったかなと思うところがありました。搬入時点では31のブースにそれぞれの家具を置いたのですが、次の日の朝窮屈感を改善するため作品数や大きさに応じて配置を臨機応変に変更しています。これで全体としては美しくはなりましたが、「31人の展示会」というより「31人が持ち寄った家具の展示会」になった感がありました。どちらがよかったかはわかりませんが、この辺りのことは次回の検討課題かと思います。

2、開催までの経緯

 「どうして、こんな展示会が名古屋で?」と思われる方が多いのではないでしょうか。少し説明したいと思います。

 昨年春ごろ、工房「齋」の齋田さんが、桜井市のフソーさんでカネフサの方から、丸鋸刃のことなどを聞いて大変役にたったので、今度はカネフサ本社で勉強会をしませんかと、近隣の木工家さん達へ声をかけられました。それが谷さん達の名古屋丸善での「CHAIRS展」と時期が近かったので、谷さんから「カネフサでの勉強会を同じ時期に行って、夜は名古屋で木工家の集いをしませんか?」という話になり、昨年6月数十名の木工家が名古屋に集まり、一時間ほどの会合と、手羽先の山ちゃんで親睦会をしました。

 その後しばらく動きはありませんでしたが、齋田さんが秋頃、「独断ですが、来年のCHAIRS展の時期に合わせて電気文化会館のギャラリーを予約してきたので、合同で展示会をしましょう」と言い出したのです。準備期間が半年少ししかありませんし、どんなことになるかわかりませんが、8年間ほど一人で木工教室をやってきて、そろそろ横にも繋がりたいと思っていた私、ダメ元で話に乗ってみることにしました。会場の予約金の分担金がパーになってもよいという覚悟でした。そして、工房ろくたるの服部さんやKAKUさん、名嘉真さん、中村さん達が大阪の「木の仕事の会」の展示会場に集まり、GOということになったわけです。

 とにかく、初めての会なので、まずは実行委員とその知人に声をかけて、1月にはほぼ30人が集まりました。そして信州木工会で催事実績の豊富な小松さんにも加わっていただきました。その頃はまだ木工家ウィークという形は見えていませんでしたが、その後、木工家図鑑の出版に合わせてのフォーラム、また齋田さんが企画したラシックでの木のスプーン展がつながって「木工家ウィーク」という形になったのです。そして4月ごろでしょうか、椅子の太田さんにポスターなどのデザインを担当していただき、急激に形が見えてきました。

 服部さんの言葉を借りれば、「昨年は木工家が集まって親睦を深め、今年は木工家が各自の作品を持ち寄ってお互いに良い刺激を受け、交流をする」、まさにこれが今回の展示会のコンセプトだったと思います。

3、30人展を終えて

 平日で120〜150名、土曜は300以上、日曜は500?と推定合計1500名以上の方に見ていただけました。基本的に販売不可の会場にもかかわらず、参加していただいた皆さんは、とても協力的で面白い方ばかり。会期中に嫌なことは本当に皆無でした。フォーラムも盛会でしたし、スプーン展は予想をはるかに上回る売り上げだったとか。8日の木工家の集いでは100名ほどの木工家が集まり、こんな懇親会は初めてでした。

 一方、問題点も、はっきりしてきました。私的には、「販売不可」の会場だったことと、会期中に30人展の会場だけマスコミの取材が全くなかったことです。販売不可については悪いことばかりではなく、意欲的な作品が多数展示されるなど、良い側面も多かったので、参加された方の率直な意見をお聞きして今後方策を考えることになるでしょう。しかしながら、会期中にマスコミの取材がほとんどなかったことについては、取材依頼を担当した私として、ショックが大きかったです。

 その原因を個人的にいろいろ考えてみて、下記のように推論しました。

 まずマスコミというのは取材依頼があって取材をするのではなく、「マスコミ側の判断でなされる」というあたりまえの事実です。取材依頼ではなく、この行事の文化的な価値・意義について報道担当者に充分に知ってもらう必要がありましたが、残念ながらそのパイプがありませんでしたし、そのための努力も足りなかったと思います。
 そしてもう一点。百貨店などで木工家の展示会をする場合は、デパート側が何割かのマージンを取って行います。しかし、今回の30人展の場合は、木工作家が直接一般のお客様と触れ合う機会を目的としています。したがって、ある意味で、既存の商業施設にとっては面白くない企画だとも言えます。新聞社やテレビ局にとってデパートなどは大のお得意先。ですから、彼らの不利になるようなことを無償で取材し報道することは、義理に反することになります。そのような意味で何らかの力が働いたか、そうでなくても、無償の取材をし、それが営利につながることはマスコミ側としては、極力避けるのは当然かもしれません。木工家ウィークの行事の中で、丸善でのCHAIRS展とラシックでのスプーン展には、テレビや新聞の取材が入っているのです。

 30人展は実にすばらしい内容の展示会だったと思います。それがマスコミを通じて報道されず、広く一般の方に知っていただけなかったことは本当に残念でした。この先、このような展示会を続けていくには、木工家は既存の商業施設を通して販売をしてゆくのか、あるいは直接お客さんに販売してゆくのか、その姿勢をはっきりさせていく、あるいは商品構成を二段構えにする必要があるように思います。大企業に頼らない生き方を模索してきた私には、小規模な工房で作られる家具は直接ユーザーに販売されるのがよいとの考えがあります。新聞やテレビに頼らない、インターネットなどの自前のPR手段の活用は、これからますます重要になってくると思います。

 他にも細々とした反省点は多々ありますが、大勢の仲間と、一人ではできない大きな行事を行えたことは、とても大きな喜びをもたらしてくれるのだと実感しています。「同年代の仲間が少ない」と一年前は嘆いていたのが、展示会が終ってみると沢山のおっちゃん木工家の友達ができました。大きな展示会もいいですが、時には「おっちゃん木工家連」として小さな展示会を開くのも楽しいかもしれません。そのためには、教室の合間に新作を作らないといけません。これからも忙しくなりそうです。

◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 名古屋市内中心部駐車場事情 --- ◆

 30人展参加者のため、実は会場周辺や名古屋市内の駐車場マップを作成した。私一人で作ったのではないし、何かの問題があるかもしれないので、今のところ公開はしないが、その料金には大きな差があり、知らない人はものすごい損をすることがよくわかった。

 おそらく、名古屋市内ではコインパーキングが供給過剰になっている。ビルを建てるのは、現在ではリスクが大きすぎる。だから空地は、税金が払える程度の収入が確保できればよいということで駐車場になるのだ。個々の場所で戦略が異なる。「安く台数は多く長時間」か、あるいは「高くて短時間で高回転」かである。運悪く、後者の駐車場に長時間駐車したら、目の飛び出るような金額を払わねばならない。

 電気文化会館への搬入では、車は15分ぐらいしか荷受場に停められない。荷物を降ろしたら、すぐ近くの駐車場へ移す。幸いにも、電気文化会館のすぐ南側のパチンコ屋のあるビルが7階まで駐車場になっており、30分110円という安さだったのだ。高さ制限2.1mなので、ハイルーフのワンボックスは入らないが、ハイエースロングバンは大丈夫だった。ここなら、半日置いても1000円程度。参加者の皆さんご用達でありました。人気があるので時々満車のことがあるが、駐車台数が多いので、待ち時間は比較的短い。

 長期間の駐車はどうすればよいか。私的には、地下鉄「車道」駅のすぐ上にある大きなビルの駐車場、「桜通りパーキング」がおすすめ。24時間1200円で日数制限はない。地下鉄東山線、JR中央線「千種」駅にも徒歩5分程度で、非常に便利。赤萩の交差点の南西角のビルで、大きな看板があるので、すぐわかる。

 あと最近値段が急激に下がっている地域が、白壁、清水口、東片端、飯田町のあたり。日数制限はあるものの、一日700円というパーキングもめずらしくないらしい。栄の中心部へは、ちょっと距離があるが、一日名古屋市内で遊ぶには、いいだろう。

 最後に、信じられないような駐車場所の情報。とはいえ、名古屋市民ならたいていは知っている。

名城公園、市役所周辺の道路は、土曜日曜は交差点から5m以内など、道交法で禁止された所以外は駐車可なのだ。もちろん無料。これは皆さんご存知。でも土日が教室の私は利用できないと思っていたら、なんと平日でも午前8時〜11時だけが駐禁で、それ以外の時間帯は駐車できるのだというのだ。ええ、ホント、まさか???ということは、11時過ぎに車を置いて、地下鉄で栄に出て買い物をするなら、駐車料金は要らないジャン。でも常連さんで駐車できないことも多いとのこと。

名城公園周辺の無料駐車場所(横断歩道から5m以内は終日駐車禁止)
・大津通: 名城公園東側の大津通。片側4車線、土日・祝日には多数駐車有。
・大津通交差点と名古屋城お堀を結ぶ道路: 土日・祝日駐車可、平日も8時〜11時だけが駐禁。
・名城公園北側の道路: 土日祝日は駐車可。平日も8時〜11時だけが駐禁。

以上の情報は変更されている可能性があります。ご利用はあくまで自己責任でお願いします。名古屋市内中心部駐車場情報でした。


2008年5月

目次
・木工家30人展について
・スクレーパー
・関西人の名古屋界隈事情--- SA vs PA ---

◆ 木工家30人展について ◆

 名古屋の中心部、栄・伏見エリアにある「電気の科学館」で、6月3日〜8日まで「木工家30人展」が開催されます。微力ながら、実行委員の一人としてこの展示会に関わってきました。当初「木工家」という言葉に馴染めず、展示会の名前に異論をはさんだこともあるのですが、そんなことより一般の方にはあまり知られていない「木工を仕事としている」人達が、作品を持ち寄って集まる貴重な機会を持つことに意味があると思い、開催直前までやってきました。

 日本各地にはクラフトフェアと呼ばれる催しが沢山あります。私も何度か各地のクラフトフェアに参加してきました。しかし、主に屋外で開催されるクラフトフェアでは雨や朝夕の湿気など、家具には過酷な自然条件のため大切な作品を展示するのは躊躇されます。また、地域のPRや町お越しのイベントとなっている場合が多く、作品を見てもらうよりも「お祭り」の要素の方が大きいと感じていました。では、屋内で行われる今回の30人展はどのような展示会になるでしょうか?

 320平米の会場に、31コマの展示ブースが並びます。1ブースは2.7mX1.8m。デパートの催事場と違い、その場での販売はありませんが、自分にあった家具や木工品を作っている「木工家」さんを見つけるにはとてもよいチャンスかと思います。会場はそれほど広くありません。その割に作品が多数ならんでいて、ゴチャゴチャしているかもしれません。しかし、出展している人たちも、いろんな方と出会い、お話をお聞きし、刺激を受けることを楽しみにしています。ぜひ、会場に来て気軽に作者に声をかけてください。会場で目的の作者に会えなくても、連絡先がわかるパンフレットを配布予定ですので、来る価値大です。

 シーンとすまして見るような緊張感のある展示会もいいものですが、31人の木工家が大集合したアットホームな展示会もいいのではないでしょうか。土日は混雑すると思いますから、ゆっくり見たい方はぜひ平日見に来てください。

◆ スクレーパー ◆

 鉋でスカッと仕上げたい・・・、けれど、どうしても上手く削ることができないような難しい木はよくあります。硬い楢やカバ材なども、初めて鉋を持った方には、鉋できれいにかけることはかなり難しく、何度も刃を研ぎ、裏をチェックし、台を直し・・・、それでも無理な場合は、丁寧に鉋で横ズリをした後、キャビネットスクレーパーで仕上げてもらうことがあります。スクレーパーは日本流木工ではあまり登場しない道具ですが、複雑な木目を持つ堅木では、威力を発揮します。

 下の写真左上がキャビネットスクレーパー、その下の雲型のはスワンネックのスクレーパーです。右上は、ゼットソウの使わなくなった刃を削って作った自家製スクレーパーで、右下の白いプラスチック製ケースに入ったのがスウェーデン製の「BAHCO」と「SANDVIK」です。今はSANDVIK製は手に入らなくなりBAHCOになったようです。通販サイトの説明では「同じ品質」ということですが、私はSANDVIKの方が粘りがあって好きです。ゼットソウで作った自家製のスクレーパーはちょっと厚みが足らないようで、椅子の座ぐりの仕上などの湾曲した場所に使うことが多いです。

 キャビネットスクレーパーは、返りをつけたブレードが70度ぐらいに傾いて台についていて、面白い構造をしています。写真のように作業台の上において刃をセットします。このままですと刃は台と同じ高さですから削れません。次に表側中央についているネジ(写真下)を少しずつ右に回すと、刃がわずかに湾曲して、刃の中央部がほんの少し台より出ます。これで削るわけです。日本の仕上鉋で刃を少し中高に研ぐのとよく似ています。



 キャビネットスクレーパーは、ある程度平面が確保できますから、箱物や天板の仕上には適した道具です。ただし鉋のようには切れませんから、木口削りには適しません。仕上がりの状態は、鉋>スクレーパー>サンドペーパーという感じです。

 スクレーパーも鉋と同じで、使うより研ぐ(仕立てる)方が難しいのです。キャビネットスクレーパーの刃は40度ぐらいで研いであり、それよりやや角度が急になるように硬い金属で擦って返りを出すのです。これは、通常のスクレーパーの刃をつけることに習熟していないと、より難しいと思います。ですので、よく使われる四角いスクレーパーの刃の付け方を書いてみました。故TageFrid氏も彼の本の中で、「なかなか刃がつかないものだが、練習していればある日突然刃がつく!」と書いています。私の説明ではわからないと思いますが、あきらめずに頑張ってみてください。

用意するもの:スクレーパー、ノミ、油(椿油、ミシン油等)

まず、最初に完全に四角の断面を作っておきます。私は1000番ぐらいの砥石で、スクレーパーを垂直に立てて研ぎ、仕上砥でスクレーパーを寝かせて、バリをきれいにしています。この工程はヤスリで行う人もいるようです。この作業は、毎回するのではなく、次に解説する、「刃付け」をしても刃がつかなくなった時に、行います。多分10回ぐらいはノミによる「刃付け」作業だけで充分切れるでしょう。バーニッシャーと呼ばれる、丸い鋼の棒や超硬のドリルの刃なども使えますが、手の力があまり強くない私には、ノミの裏側の角で刃をつけるのが一番鋭い刃がつくように思います。なお安全のため、使わないノミを、刃を落として使っています。

  1. まず油を一滴たらし、刃をつける部分に指でのばします。
  2. スクレーパーを作業台に置き、ノミを写真のように、水平かつ返りを出しやすいように進行方向にノミの刃先が向いたように傾け、さらにノミの裏側手前の角がスクレーパーに当たるように少し前を浮かせます。ただし、絶対にスクレーパーの面に平行にノミをあてなければなりません。少しでも斜めになったら、刃がつくどころか、面取りをしてしまい、全く切れないことになります。
  3. 端から端まで擦ると、コツンと音がして、作業台にノミが落ちます。今度は次のように、前とは全く逆にこすります。すなわち、ノミの裏の向こう側の角をスクレーパーに当てて、返りが出やすいようにノミの刃先を手前に向けてこするのです。余談ですが、作業台にノミがおちて出るコツン音、これがリズミカルに聞こえると、スクレーパーが上手に使える証拠の音だと言う方もいます。
  4. これを二三回くりかえします。
  5. それをスクレーパーの表裏、上と下、と四つの角に行います。
  6. 次に、写真のように、スクレーパーの刃の部分を作業台から少し出して左手で押さえ、右手でノミを90度より本の少しだけ傾け、スクレーパーの角を手前に、二回か三回ぐらいこすって、返りをつけます。台からスクレーパーを出す量を加減することで、ノミを当てる角度が微調整できます。この時も、上側に返りがでやすいようにノミを構えます。
  7. これを4つのコーナー全てに行います。このようにして、小さくても鋭い刃(返り)がつくと、下の写真のように、粉ではなく、鉋クズのような削りかすがでます。刃が切れている時は、スクレーパーは木に対して70度ぐらいで削ることができますが、だんだんと寝かせないと切れなくなってきます。そうなってくると、粉が出て、スクレーパーも熱を持つようになります。そいしたら、またノミで刃をつけるのです。

 難しい木の仕上のほか、くの字型に凹んだような鉋がかからないところ場所や、組み立ててから、鉋がかかっていないところを発見した時などに、スクレーパーはとても重宝します。

◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- SA vs PA --- ◆

 道路公団が民営化された、そのいい影響のひとつが高速道路のサービスエリアSA・パーキングエリアPAだという。たしかに、この頃どこのSA・PAに行っても、トイレは美しいし、お店では地元の特産品が売ってあったりと楽しい。浜松や駒ヶ根など景色のいいSAは、もうすでに立派な観光地だ。また、SAに隣接する公園や観覧車、はまたた水族館などのあるSAもあって、いよいよ観光地化している

 しかし、私としては、SAの食事メニュー、値段の高さが気にかかる。SAは、観光バスも沢山くるし、たぶんテナント料金も高いのだろう。結構な値段である。かけそば一杯が500円もするところもある。ウーン、何か自分には合わない。

 というわけで私はSAを避けるようになった。そうPAがいいのだ。

 ウチの工房から歩いていける守山PA、きしめんで有名なんだそうだ。外から自由に入れる徒歩専用の入口もあって、近所の人もここできしめんを食べたりする。地元の名古屋名物も沢山売っている。たぶん春日井のサボテンアイスを売っているのは、ここだけではないだろうか。

 名古屋から大阪へ向かう時、多賀SAがちょうどいい距離。ここからは多賀大社へ歩いて行けるので面白いけど、総じて食事が高い。で、近くの黒丸PAを利用することが多い。黒丸PAには長距離トラックがずらーり。トラックの運ちゃん御用達の食事スポットなのだ。また、名古屋発着では素通りしがちな一宮PAも、実はプロドライバー御用達である。実質本位の美味しい食事メニューが豊富で安い。

 駒ケ岳が見える、中央道の駒ケ岳SA、本当に景色がいい。が、観光客がめちゃんこ多い。浜名湖が見える人気の浜松SAも超有名。スタバがあったりと、都会のような賑やかさ。こういう人気SAの近くのPAが意外な穴場。例えば駒ケ岳のひとつ北に小黒川PAがある。ここの食堂、結構いいっす。スジ入りラーメンなんか、パワフル運転手さんの人気メニューだし、伊那名物のソースカツどんやローメンの屋台もある。そう、有名SAの近くのPAがねらい目と思っている。もちろん、小さな子どもを含む家族などでは、楽しいSAの方がいい場合は多いので、臨機応変に。余談だが、浜松SA,多賀SAでは、FREESPOTという無線LANアクセスが無料で使える。ノートパソコンがあれば外出中のメールチェックに便利。 

 学生の頃、夜行列車に乗ってよく旅をした。早朝の駅の、立ち食い蕎麦の美味しかったこと。高級レストランの高い食事なんか比較にならないほど、美味しかった。SAのお盆にのったナントカ定食よりも、PAの、一見ショボイけど食べると美味しい蕎麦や丼、あの頃の立ち食い蕎麦の味を思い出すのである。


2008年4月

目次
・木工家30人展のお知らせ
・ホゾ、丸と四角
・ハンドタッカー
・関西人の名古屋界隈事情--- お花見サイクリング ---

◆ 木工家30人展のお知らせ ◆

 昨年6月、名古屋市内で木工を仕事としている人達が集まり、そこで「何らかの形で繋がっていこう」というムードが生まれたことがきっかけとなり、今年6月3日〜8日、名古屋で木工の合同展示会、「木工家30人展」という展示会を、電気文化会館(電気の科学館)で開催することになりました。また、以前からこの時期に展示会をされていた、同時期に開催される高橋さん、谷さん、村上さん達の「Chairs」展、工房「齋」の齋田さんが世話人をされる「木のスプーン展」などを総称して「木工家ウィーク 2008・NAGOYA」という名前の大きな企画となりました。詳細は以下はそのホームページでご覧いただけます。

木工家ウィーク 2008・NAGOYA

 「木工家」と言うには、ちょい恥ずかしい私ですが、皆さんに混じって木工家30人展に出展します。6月3日〜8日、お時間のある方は名古屋伏見の電気文化会館へお出かけ下さい。

◆ ホゾ、丸と四角 ◆

 久しぶりに椅子を5脚分作っています。在庫していた椅子が出ていってしまったので、部材加工をし、組立前のカタチで保存しておこうというわけです。さて、椅子は丈夫さが大切ですから、ホゾ組に気をつかいます。特に私の椅子は、細い部材にギリギリの深さまでホゾを入れることが多いため、角ノミではなく、ルーターや横穴加工機に直径8mm〜10mmのエンドミルをつけて、両端が丸いホゾ穴を掘ることが多いです。

 写真のようなホゾ穴の場合、ホゾを丸くするか、穴を四角くするか、迷うところです。どちらでも大きな差はないと思うのですが、日本ではあまり一般的でない両端が丸いホゾの特徴を書いておきます。

両端が丸いホゾ組の特徴

 難点は、ホゾを丸くする手間だと思います。私が見た北欧の木工学校に角ノミはありませんでした。ホゾ穴は、横穴ドリルで掘るのです。そして、ホゾは四角のホゾを、ヤスリでゴリゴリし、両端を丸にしていました。日本の木工だと、ホゾをゴリゴリするのはどうも気がひけますが、向うではあたりまえの作業のようです。
 私もホゾを丸くする場合、木工用ヤスリでまず8角にし、さらに角をとれば、ほぼ丸になります。後はナイフで根元の方を掃除してやればOK。この作業、慣れれば結構速いです。ただ、大量に加工する場合は、バンドソウを45度に傾け、ホゾの角を斜めに落とすなどして、スピードアップを図ります。

 ところが、今回のような二枚ホゾだと、ヤスリでゴリゴリがやりにくいのです。前の時は、中央部はナイフで時間をかけて加工したのですが、今回は、ホゾ穴を角にしてみました。ところが始めてみると、楢で硬いせいか、ノミでこの作業に結構時間がかかります。それで、最初に角のみで角を落とすことにしました。それなら、最初から角ノミを使った方がよかったわけですが、例えば角ノミだと30mmの部材に27mmまで穴を掘ることは困難です。角ノミのドリルの先を削るなどの工夫でうまくやれるかもしれませんが、それでも底の角はノミで掃除する必要があるでしょう。

 写真のように、ホゾ穴を角にしましたが、丸か角、どちらがよかったか、わかりません。おそらくは、ホゾを丸くする方が、このような場合には理にかなっているように思いました。しかし、たった5脚でも、ホゾを加工するのは手間がかかります。椅子を量産している現場では、機械加工だけで済ませるように段取りするでしょう。角ノミで掘った穴をノミでチョコチョコなんて、ホゾ穴が100も1000もあると、とてもやってられません。実際の量産現場では、このようなホゾをどのように加工しているか知りませんが、コペンハーゲンの工芸博物館で見た椅子のホゾ組模型では、面取り盤にカッターをつけて二方胴突きのホゾを作った後、両端はルーターで中ほどまで丸くし、根元は手で仕上げているように見えました。

 両端が丸のホゾ穴、ルーターとジグで加工できますが、効率はあまりよくありません。でも、先月試用記を書いた、ドミノカッターがあれば、両端が丸いホゾ穴は、入手しにくく大きな横穴加工機がなくても、簡単に穴を掘ることができます。しかし、椅子の場合は強度が優先されるため、サネではなくホゾを入れたい場合が多いと思います。この様な時にも、ホゾをヤスリでゴリゴリする経験は、役に立つのではないでしょうか。
 余談ですが、ドミノの機械、もうすこし安くならないものでしょうか。ドミノチップを使うだけではなく、様々な使い方ができる可能性を持った機械だと思いますので、米国での販売価格までいかなくても、10万円ぐらいになれば、ユーザーの底辺はもっと広がると思います。

◆ ハンドタッカー ◆

 簡単な椅子張りをする時、今はエアタッカーを使いますが、以前は写真のようなハンドタッカーを使っていましたし、安全面から教室では今もハンドタッカーを使っています。

 一番奥の、DIY向けの安い奴、力が弱いし、専用のピンが高い。それで、中央のプロ用という高いタッカーを買いました。ところが、これ案外使い物にならないのです。写真では見えにくいですが、広葉樹に打つと、必ず、最後まで入らない。それで、後から、玄翁で叩くという手間をかけていたのです。

 昨年でしたか、スウェーデン製のラピッドというタッカーなら、ピンがしっかり打ち込めるという評価をある工具ショッピングサイトを見ました。それが手前の銀色のヤツです。こいつの性能は上記二つと全く違いました。どんな木に打っても、完全にピンが入るのです。もちろん、エアタッカーのように、水平部までツラ一に入るほどの力はありませんが、後から玄翁で叩く必要はまったくありませんでした。値段は中央のプロ用というタッカーより同じか安いくらい。プロとして、1日に何脚も椅子張りをするのでなければ、エアタッカーは不要という感じです。

◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- お花見サイクリング --- ◆

 毎年恒例のお花見、今年はどこへ行こうか?。こういう時、インターネットはとても役に立つ。先日、日本の桜百選にも選ばれたという、名古屋北西にある「五条川」へ行ってきた。車に、折りたたみ自転車を二台積み、小牧市を通って大口町へ。ここは、木工家で知らない人はいない、「刃物のカネフサ」の工場がある町だ。五条川というとどんな川かと思っていたけど、町を流れる小さな川である。ただ、その両岸に、延々20kmも桜並木が続くという。

 大口町のアピタを起点に、北へ向かう。岩倉町の五条川の方が有名らしいが、ここ大口町のは、それほど人は多くなかった。幅2mほどの歩道・自転車道を走る。時々、車道を横切ったり、右岸と左岸が入れ替わったりするが、犬山市まで続いていた。今回は、ここで引返したが、そのまま行けば木曽川畔まで行けたのではないだろうか。風が強く、寒い日だったので、それだけで帰ったが、南方面の岩倉市まで行けば、本当に長い桜見のサイクリングだ。

 実は先日、自宅から3kmほどの尾張旭市の城山公園へ行ってきた。ここも桜が美しい。自転車だと、自動車では普段通ることがない道でも、平気で行ける。同じ街が、違って見えるのだ。この感覚、20代の頃ハマっていたカヌーでの川下とよく似ている。別に遠くの観光地に行かなくても、身近なところで、美しい所はいっぱいあるし、そこでゆったりと楽しそうな親子連れやカップルを見て、こちらもホノボノしたり。

 花好きのカミさんに影響され、花を見にいくことが多い。最近は、私の方が、それを楽しみにしている面もある。あと一週間ほどは、仕事を早めに切り上げ、身近な桜を見に行きたい。


2008年3月

目次
・ピーアイボンドによる板ハギ ---自分のやり方---
・ルーズテノン
・関西人の名古屋界隈事情--- 伊勢うどん ---

◆ ピーアイボンドによる板ハギ ---自分のやり方--- ◆

 通販でオオシカのピーアイボンドTP-111を扱っていますが、このボンドの使い方について書いたことがほとんどないことに気がつきました。それで今月は、このボンドについて感じていることや、実際にはどのように使っているかなど、まとめてみました。私の方法が正解というわけでは全くありません。集成材などに使われる、どちらかと言うと工場向きのボンドですので、個人の工房あるいは趣味で使っておられる皆さんは、それぞれに工夫されていることと思います。その中の一例として、参考にしてください。

TP-111の特性

製造元からの詳しいデータ等はこのページを参考にしてください。ここでは、使い方の要点や注意点を書いておきます。

板ハギ

準備

  1. まず充分に乾燥した材で、完璧なハギ面ができていること。これが実に難しい。妥協せず、充分にチェックを。
  2. 必要ならば、ビスケット等の穴加工をし、穴のまわりのバリなどを丁寧に取り除く。
  3. 板ハギに必要な資材を手元に集める。
    クランプ、当て木、水拭き用布、木槌とプライヤ(ビスケットを真ん中に寄せたり、失敗した時に抜くため)、厚手の紙(クランプにボンドが触れないよう)、ボンド、キッチン用デジタルハカリ、紙コップ、攪拌用の棒、塗布用のヘラなど。
  4. 加圧の予行演習
    特に複数枚を一度に板ハギする場合には、接着剤を入れたつもりになって、完璧な予行演習をしておくこと。

混合

  1. 必要なボンドの量を計算する。1平米250グラムを基準。例えば、厚さ2cm、長さ1mの板を4枚、板ハギするなら、必要量は
    250X0.02X1X4=20グラム
    ビスケットの穴への塗布は、一枚0.5gでだいたいよいのではないか。15枚のビスケットを使うなら8gプラスで合計28グラム。
  2. 余裕をみて、30グラムの主剤と30X0.15=4.5グラムの硬化剤を混ぜる。
    慣れないうちは、この1.5倍ぐらい混ぜておいた方がよい。蛇足だが、紙コップの重さは約5gなので、ゼロ点調整がリセットされた時にあわてないように。
  3. 主剤を30g入れ、硬化剤を4.5g入れる。硬化剤は、コップの壁面をつたわせずに、直接主剤の上に落とすようにコップを傾けて入れる。
  4. 塗布用の木片で作ったヘラでよく攪拌する。この時の時刻を記憶するか、コップに書いておく。


主剤はこのようなキッチン用容器に入れているが、
硬化剤は湿気を嫌うので、そのままに使っている。

塗布

  1. 双方の板のビスケットの穴の上部内側に、ヘラでボンドを入れる。
    ビスケットは目違いを少なくするための位置決め用と考えているので、ボンドの量にはそれほどこだわらないでよいと思う。
  2. ハギ面にボンドを塗る。本当は両面塗布したいところだが、今までの経験で、両面塗布だと時間がかかるし、ボンドの量も多くなりすぎるようだ。片面の場合、塗っていない場所が全くないように、充分チェックする。
  3. ビスケットを、ハギ面を上に向けた板の方に入れる。穴の中心に入るように木槌で叩いて入れる。
    ビスケットのサイズを間違えた等、すぐにプライヤで抜く。

加圧

1m以内で比較的薄い板は、写真のように、ベッセイのクランプを下二本、上3本で加圧。ダイニングテーブルのような厚くて大きい板は、Tバークランプ使用。どちらも、鉄部にボンドが直接触れないように注意(黒いシミがでます)。


ベッセイのコーナーブロックを真似て作ったスタンド



大きな板ではTバークランプが出番



この例ではビスケットの位置を加圧

複数枚の板ハギの場合、一枚目の塗布が終ったら、全ての板を並べて加圧。この方が、クランプヘッドの位置をいちいち調整しなくてよいし、ハギ面を痛めることもない。本来なら、この状態で30分間待つべき。だが、一時間で全て板ハギしたいので・・・、静かにクランプをゆるめ、次の板を接着・加圧を繰り返す。一時間で8枚ぐらいが限度かも。全ての板にボンドを塗布して、一気に接着する方法もあるが、予想以上に木部への接着剤の浸透が速く、不具合がでやすいような気がする。プレス機があれば、もっと楽に作業できると思うのだが・・・。

問題点等

最後に

 通常の接着作業では、いわゆる”木工ボンド”充分な場合が多いと思います。ウチでは、テーブルトップや水周りの接着にはもちろんですが、椅子などの大変強度が要求されるホゾ、手で開けた丸ホゾなどのスキマが多い場合に、ピーアイボンドを多用しています。また、チークやカリンなどの油気の多い木でも接着力がよいようですし、0度近い低温でも接着力が落ちにくいと言われています。「混合の手間がかかる」、「二液性で無駄が多い」、「使える時間が短い」などなど、使いにくい面も多々ありますので、このボンドの利点を理解して、適剤適所で使って下さい。 

◆ ルーズテノン ◆

 先日、ドイツ製ドミノカッターを試す機会がありました。”ドミノ”は、今一番ホットな電動工具。海外の雑誌でも「最近10年間で最も革命的なジョイント作成マシーン」という紹介されたり、日本の木工家の方でもすでに使っておられる方もあるようです。機械は革命的かもしれませんが、この接合方法自体は、米国でルーズテノンと呼ばれ、接合すべき部材の双方に、ルーターなどで長穴を掘り、その中に、平らで両側が丸いサネを入れた接合方法に他なりません。私は強度がさほど要求されない場合には、この接合方法をよく使っていますので、その利点と欠点をまとめてみました。

ルーズテノンの長所

欠点

 要するに、椅子の後脚との接合部など、極めて強度が要求されるところではなければ、能率よくホゾ組に近い強度が得られる便利な接合方法です。正確に加工できていないホゾ組などでは、より強度があることも多々あるでしょう。しかし、以前ルーズテノンを椅子の前脚に使った時、ここが緩むとトラブルがありました。原因は、側面(広い面)での強度の頼ることになるため、「ホゾの幅を効かす」ことが必要な場合には弱いのではないかと考えています。

 サネを作るのに結構手間がかかります。その点、ドミノはルーズテノンの欠点をかなり補うものであると言えそうです。高価な横穴ドリルに比べれば、20万円弱の機械で同等に、そして手軽に長穴が加工できるメリットは大きいと思います。圧縮されたサネが膨れて接着力が増すことも期待できそうです。ただひとつの問題点、もう少し価格が安ければいいのですが・・・。

 高価な本体を買う前に、ドミノチップだけ買って、手持ちのルーターで穴を掘り、ドミノによるルーズテノンを試してみるのもよいかもしれません。ルーズテノンの特性を体感することで、この高価な機械を買うべきかどうか判断材料になると思われるからです。


厚さ5mm〜10mmまでの6サイズのドミノチップ

◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 伊勢うどん --- ◆

 名古屋に来てから10年近くなるが、今だに大阪のうどんが恋しい。別に老舗のうどん屋さんでなくても、たとえば、関西でチェーン展開する太鼓亭のうどんは充分に美味しい。サラリーマン時代、よく昼に、カツどん定食や、天麩羅がついた太鼓定食でお世話になった。先日豊中の実家に帰った際、何年ぶりだろう、緑ヶ丘店でお昼を食べたが、やっぱおいしかった。一方、総じて、名古屋のうどんは、味が濃い。うす味でいながら、昆布だしが利いた、まったりしたうどん・・・、関西人にはこれが一番。でも、名古屋はそばの美味しい店が多いように思う。ウチの近所でも、江月・乾山・車屋など美味しい店がある。

 さて、毎年一度は、伊勢神宮へ行く。もともと神社好きなのだが、お伊勢さんは流石だし、おかげ横丁なども面白い。根拠ないけど、「千と千尋の神隠し」の最初に出てくる食べ物屋街、おかげ横丁と大きなショッピングセンターのフードコートを足して二で割った感じではないか。こういうところで食べていると豚になるのかなあ・・・。

 話は横道にそれたが、お伊勢さんに行くと、たいてい「すし久」で手こねずしを食べる。かつおのづけを、酢メシの上に乗せた桶盛りの寿司であるが、これが美味しい。人気店なので、昼時は込む。それで、時間差攻撃をすべく、参拝前にすし久の近くにある「岡田屋」で伊勢うどんを食べた。伊勢うどんは、見た目より、ずっとうす味で、これでもか!というくらい茹でた、ふわふわの柔らかくて太い、ぶっかけうどんである。うどんは、なんとなく、讃岐が代名詞みたいになっているけど、それとは正反対の、やわらかいうどん、伊勢うどんは、かなりの存在感なのだ。

 400円〜500円と安いのもよいし、よく茹でてあるせいか、腹にもたれない。このおかげで、参拝して後、2時ごろのお客が少なくなったころ、ゆっくりと「すし久」で手こね寿司を食べることができたのである。流石に、この歳でうどんと手こね寿司は、少々きつい。満腹になり、妖怪に「豚」にされるかと思い、恐かった^^。


2008年2月

目次
・安全な木取り作業
・トリトンのルーター
・関西人の名古屋界隈事情--- ETCマイレージサービス ---

◆ 安全な木取り作業 ◆

 最近のFWW誌に”Mill Lumber Safely”という記事がありました。ジグソウとバンドソウを有効につかって安全に製材する方法の解説なのですが、その方法はウチの教室で生徒さん達にやってもらっているのと、ほとんどと言ってよいくらい、同じでした。大きな家具工場では木取りを専門に行う職人さん達がおられるようですが、小さな工房で家具を作るには、もちろん一人で木取りから始めなくてはなりません。この作業には、荒い大きな材を扱う場合に特有な危険性があります。万が一、事故が起きると、木工教室に限らずプロの工房でも、大変な損失となります。今回は、ジグソウとバンドソウを使った木取り作業について、ウチのやりかたを簡単に書いてみました。ご参考になれば幸いです。

教室での木取り作業

当然ですが、最初に材を選びます。詳述しませんが、作る作品の必要な材料をひろいだし(部品表作成)、それを取るための材を選びます。その後、材を裏から表から、また木口や両サイドもよくチェックし、ブラシや掃除機をかけて、可能な限りホコリや砂をとります。また、危険な死に節や割れ、入り皮などがあれば、取り去ります。

次に、墨入れをします。幅で最低1cm、長さはできれば5cmくらい長い目に荒く木取りを、鉛筆などで木に書いていきます。慣れればごくわずかな線を入れるだけで大丈夫ですが、初めのうちは、切り代を5mm程度とった二重性で切断するラインを書きます。この際、「階段状」の木取りなどは極力さけ、単純な切断で、木取りができるように心がけます。

さて、ここからが、木取り作業の実技となります。

1、ジグソウでおおまかに切断する
 自動カンナを通す際、機械にもよりますが、大抵30cm以下は危険ですから、短い材は他の材と合わせるなどして、切断した部材が、最低35cmぐらいの長さは確保されるように注意します。

余談ですが、買ったときにあまり使えないと思っていたジグソウですが、今は木取りに大活躍です。ウチのマキタ製ジグソウ、20年近く使っているので、そろそろ買い替え時かな。ジグソウを買うとき、変速と、オービタル機構はついている方がよいと思います。一部の欧州製ジグソウには「オービタルは必要なし」としている高級機種もありますが、高速切断、曲線、仕上切断など、各目的に応じた切断を行うには、やはりあった方がよいと思います。ジグソウの刃を全て試したわけではありませんが、定評あるボッシュの刃が使え、電子制御とオービタル機構付きということで機種を選ぶのが無難かと思います。

 私は写真のような刃を使ってきました。左端はT111という安いタイプの高速切断用です。これはまさに「安物買いの銭失い」でした。振動も多く、切れ味も悪くて、堅木の切断には使う気になりませんでした。二番目のT101Bは、比較的入手しやすい仕上切断用で、切断面は美しいのですが、35mmを越えるような硬い板の切断は少々無理がありました。三番目のT101Dは、厚さ50mmほどの板まで切断でき、切断面は大変美しい私お気に入りです。ただ、アサリが少なく、荒材の切断では、刃がかみやすい傾向があるように思います。日本ボッシュさんに電話で製材用に適している刃をお聞きしたところ、写真のT144DFを薦められました。これは、アサリで切るタイプの高速切断用とのことで、実際大きな材の切断には、向いているようでした。ただし、切断面は粗いです。現在、木取り作業にはT144DF、仕上切断に使う場合にT101Dを用いています。

 話は元にもどりますが、ジグソウは比較的安全な電動工具です。幅の狭い刃が上下運動するだけなので、木が挟みこんでキックバックが起こっても、大きな事故になりにくいのです。しかし油断禁物。確実に上から押さえながら(馬鹿力ではなく、適当な力で確実に!)使うことが大切。それでも切り終わる時に反発をくらうことが多いので、ウチでは「最後の1cmは手で切ること」を原則としています。「荒い材の中央を丸鋸で一発切断・・・」は超危険。絶対にしないように。

2、バンドソウで大まかに縦びき
 シラタや割れなどを除き、できるだけ木目と平行にまっすぐな墨を入れ、フェンスを使わずでバンドソウで切断します。FWW誌では、平行な板を釘でうちつけ、フェンスを使って真っ直ぐ切断していましたが、バンドソウでの切断であっても、荒い材料はリップフェンスを使わないのが原則です。バンドソウの後方に補助ローラーを設置しておくと、長い材料でも一人で切断できます。慣れれば、2mくらいの材は全く問題なく一人で切断できます。

 バンドソウの刃は、12.7mm幅の3TPIのフック刃で、右左右左直という刃の配列を持った、カーボンスチール製ブレードを使っています。現在はLENOX社のブレードをまとめて個人輸入して使っているのですが、フナソーでほぼ同様の”13mm、3山の30m巻”をウチのバンドソウのサイズに切断・溶接してもらい使っていたことがあります。

3、手押鉋・自動鉋 
この次の工程で、手押鉋にかけるか、あるいはもうすこし小割してから平面を出すか、ケースバイケースです。反っている材は、小割してからの方が歩留まりがよくなりますが、癖のない材は、平面を出してから、小割する方が能率があがります。この辺りの判断は経験をつまないとできません。

FWWの記事では、次にバンドソウとフェンスを使って、幅と厚みを決めていますが、この辺りも、厚さのきまった材であれば、手押しカンナや自動カンナで行うほうがよい場合が多いでしょう。

 木工を始めて間もない頃はバンドソウがなく、木取りは手押し鉋からスタートしていました。日本の工房では、製材の最初に使う機械が手押し鉋だというところは、結構あるのではないでしょうか。これに比べ、欧州では「まずバンドソウ」です。日本では建具など、直線で構成された製品を作ることが多いことがその要因かもしれませんが、「まず平面ありき」ではなく、目的の部材に近い大きさまでバンドソウやジグソウで木取りをし、それから手押鉋や自動鉋で平面と直角を出すようにすると、効率も歩留まりもよくなる場合が多いように思います。

◆ トリトンのルーター ◆

 久しぶりに米国から電動工具を買いました。トリトンの新型ルーターです。今までトリトンというと、何となくアマチュア向けみたいな印象があって、買ったことがなかったのですが、米国でトリトンの新型ルーターの評判がとても良いようですし、教室では違う種類のビットをつけた、複数台のルーターが必要なことから、購入したわけです。
 蛇足ですが、 日本では1500W、6kg越の大型が5万円ほどで発売されています。今回買ったのは約2HPの中型です。6kg越えのルーターはルーターテーブル向きで、手持ちで使うには少々重すぎるように思います。Woodcraftで特価189ドルほどという値段にも惹かれました。送料が87ドルで、合計276ドル、約3万円です。しかし、日本国内の5万円ほどの価格は高いとは思いません。6mm、12mmなど、メートルサイズのビットが使えるスリーブが付いていますし、何と言っても、もしもの場合に修理を受けられる安心感があります。FESTOの日本国内価格と比べ、充分理解できる範囲の販売価格であるように思います。

 さて、到着したダンボール箱を開けると、写真のような頑丈なケースに入っていました。以前個人輸入したルーターでプラスチックのヘッド部分が破損していたことがありましたが、これなら安心だと思いました。多数のテンプレートガイド、フェンス、ルーターテーブル使用時の高さ調節用クランプ、ストレートビットなどが付属しており、これだけで充分に使えるという印象を持ちました。

 まだ実際に使っていませんので、詳しいレポートはできませんが、このルーターの特徴をいくつか紹介します。

 プランジタイプで、本体を最も下げると、コレットがベースよりも飛び出し、自動的にロックされます。このため、写真のようにスパナ一本で簡単にビットの交換が可能です。これは実に便利に感じました。

 このノブを、奥の黄色い部分を引きながら回すと、本体が上下します。プランジルーターで本体をダイレクトに上下するのに不安を感じた方おられませんか?これは回すと上下して、使いよいように思います。また、ノブ中央の黄色いボタンを押し込むと、通常のプランジルーターのように、ダイレクトに本体を上下移動することができます。

面白いと思ったのは、プランジルーターの本体を持ち上げているバネが簡単にはずせることです。ルーターテーブルでの使用時、通常はバネ+重さで本体を上に上げるために強い力が必要になるのですが、これはメリット大と思います。

 以上、いいことばかり書きましたが、実際に使ってみると、ややモーターの音が大きいこと、何となく動きにスムースさがないこと等、他のルーターの方が優れている点もありました。また機能満載のためでしょうか、操作に慣れが必要とも思いました。しかしながら、この価格を考えると、名古屋流に言えば「お値打ち!」という第一印象です。

◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- ETCマイレージサービス --- ◆

ETCの割引について何度か書いた。が、マイレージについては、今回が初めてだ・・・と思う。

 先週、マイレージポイント残高のお知らせハガキが届いた。3月末で消滅してしまうポイントがあるのだそうだ。要するに「100点以上のポイントがあれば、還元できるので、失効しないように、ポイントを還元しておきなさい」というお知らせである。

 ところがである。民営化の弊害だと思うが、道路会社が一本ではなく、ポイントが5つほどに別れているのだ。そして各会社のポイントは合算できないのだという。あまり乗らない名古屋高速、実家に帰った時に使う阪神高速など、小さなポイントは結局はパー(ゼロ)である。なんか損した気分!!。要するに使用頻度の少ない人はマイレージサービスを活用しにくいシステムなのである。

 気をとりなおし、ポイント還元の申込をしようと、インターネットに向かう。が、ハガキに書いてあるほど簡単ではなかった。私の場合、以前に登録をしていたので、比較的楽だったと思うけど、そうでない人はまず登録から始めねばならない。そしてIDと複雑なパスワードを打ち込むのだが゙(涙)、パスワードなど忘れている。「ジャン臭い!。もうどうでもええ!!」と気の短い私。端からカミさんが、昔の書類を見つけて来てくれ、パスワード発見、なんとか無事、目的を果たせた。

 もうちょっと歳をとったら、ポイント、パスワード、ID、インターネット、パソコン、等々、そういうのが鬱陶しくなるような気がする・・・、ではなく、もうすでにそうなっている。山を歩いたり、木を掘ったり、花を見たり、美味しい物を食べたり、単純で奥深い事がより好きになっているようだ。


2008年1月

目次
・恒例の展示会
・関西人の名古屋界隈事情--- 木工雑感2008 ---

◆ 恒例の展示会 ◆

昨年10月に行いました第七回木工教室作品展の作品を一覧にしました。また、現在発売中の「週末工房8」で、6ページにわたり、この展示会の様子がレポートされています。

第七回木工教室作品展、作品一覧
作品展2007

数は少ないのですが、昨年作りました作品を下記に掲載しました。

昨年度制作作品
2008年度展示会

◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 木工雑感2008 --- ◆

 木工教室を名古屋で2000年1月にスタートしてから、ナント8年が過ぎ、9年目突入である。46歳の時、勤めを辞め木工関係の仕事に専念したのだが、その頃は、まだ若いと思っていた。ところが、昨年末、「木の仕事の会」の忘年会に参加させてもらった時、驚いたというか、ある意味ショックだったが、私が一番年上だったのだ。「いつの間に、こんな年になったんや!」というのが正直なところ。参加されていた木工家の多くは30代半ばの方であった。

 教室スタート時、47歳だった。そして、ある程度教室が軌道に乗った時、すでに50歳半ばにさしかかっていた。カッコつけず、正直に言うと、50代半ばになった今、創作意欲、体力、知力、技、すべて鈍ってきたと感じている。個人差はあるだろうから、そうでない人もいるかもしれない。が、たぶん同年輩の知人木工家の多くは、大なり小なり同じ傾向にあると思う。

 今仮に、木工家として35歳で独立した人がいるとしよう。なぜ35歳に仮定するかというと、学校を出て就職をし、その仕事に疑問を持ち、人生を考え直す時期が、20代後半から30代前半の人が多いからだ。そして転退職、訓練校などを経て独立、仕事が順調に伸び、数年である程度の基盤を作ったとしても、彼自身がバリバリ家具を作って働ける期間は長くて10数年。その間、結婚や子育てがある。子どもに親の価値観を押し付けず、世間並みに学ばせていくには、良き伴侶の理解と協力なくしては不可能・・・と、思っている。

 唐突だが、この頃結婚は早くした方がよいと思うようになった。「やりたいことをやって自分の道を見つけるまでは・・・」というのもいいかもしれないが、自分の道など、いつまで待っても見えるかわからない。むしろ、「リスクはあっても、二人で力を合わせてやっていこう」というような、勢いが大切なのだと思う。親から完全に自立し、二人で協力して実生活を重ねていく中で、”自分の道”が見えてくることが多いのではないだろうか。

 昨年、スウェーデンの若い木工家さんの話を聞く機会があった。彼の話で興味深かったのは、「日本では木工家という、一人で家具を作って生活・活動している人が沢山いるのに驚き、感心した」と言われたこと。有名なマルムステンの学校で学んでいる彼が言うには、スウェーデンでは、日本のように個人で木工工房を開いて活動している人はとても少ないというのだ。

 一方、私の周りには、一人で仕事として木工をやっている方が沢山おられる。どのように生活を維持されているのかは知らないけど、それは大変立派なことだと思う。また個人の小さな工房で作られる家具に良さを見出し、買っていただけるお客さんが居るというのもとてもすばらしい。そういう木や手仕事を楽しみ、尊ぶ素地が日本にはあるのだろう。そのような、大袈裟に言えば、日本独特の文化みたいなところを大切にしていきたい。
 と同時に、良質な量産家具と共存できる、個人工房のありかたも考えていくことはもちろん必要だ。日本の老舗家具メーカーは、本腰を入れて無垢の家具を作りだしている。それらは結構魅力的だ。木工家の作る家具はIKEAに代表される超大量生産の安価な家具とあまり競合しないと思うが、大手家具メーカーの良質な家具と同じ土俵で戦えば、勝負は見えている。「量産品とは違う何か」がないと、個人工房で作る家具を買うメリットはほとんどないに違いない。

 今年は、近くの木工家さん達との交流や、時には連携をするようなことも視野に入れて、50代半ばの木工を楽しみたい。ウチの作品展を見ると、ある意味、「アマチュアの凄さ」が見える。教えている自分も、そういう部分を大切にした物作りをしていきたい。今年もよろしくです。


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