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2005年12月

 目次
・機械の保守点検
・関西人の名古屋界隈事情---  香嵐渓 ---

◆ 機械の保守点検 ◆

 木工機械を良い状態で使っていくには、日常するべき保守作業が沢山あります。今月は地味ではありますが、私が普段していることを書いてみます。これらの作業の中には、機械が好きである程度理解できる人でないと無理だと思われるものもありますし、これから木工を始める方には関係のないことと思われるかもしれません。しかし、家具作りを本格的にしたいと思われる方には、大なり小なり避けて通れないことです。大きな家具工場なら、個々の機械の責任者、あるいは保守契約をしている機械屋さんが行うのかもしれませんが、ひとりの工房では掃除から保守まで全てこなさねばなりません.。その反面、自分の好みに合わせて調整できる利点もあります。

鋳物製定盤などの油ひき
 手押鉋、自動鉋、昇降盤、バンドソウ、ルーターテーブルなど、鉄に人や材料が直接触れるところは、毎日か少なくとも週一回は防錆潤滑剤CRC5-56をスプレーして、布で磨いています。防錆目的はもちろんですが、材料のすべりをよくすることは無駄な力が要らないことにつながり、安全にも一役買うはずです。また、鋳物は磨耗しやすいので、それを少しでも防ぎたいというわけです。CRC5-56を使う理由は特にありませんが、機械屋さんもこれを勧めますし、使っている工房が多いこと、入手のしやすさ、手ごろな価格など、何の問題も感じていないからです。他にもいいスプレーがあると思いますのでお好みのを使ってください。
 手押鉋盤では、さらにシリコンスプレーを使うことがあります。シリコンスプレーは、鉄表面の温度を急激に下げるために、湿気の多い時期など、錆をよびやすくなる懸念がありますので、防錆剤のCRC5-56と併用しています。

給油・グリスアップ
 自動鉋の定盤昇降部や、角ノミ盤の俗に”カミソリ”と呼ばれる可動部は、毎日点検し、油気がないようなら、機械油を差します。ただ、油が多すぎると、ゴミが付着しやすく、逆効果になることもあるので、適量が大切。だいたい、二週間に一度程度、油を差すことが多いように思います。
 昇降盤や自動鉋の軸受け部などにはグリスを注入する穴があいた突起が出ています。ここからカー用品店で買ったグリスガンを使ってグリスを注入します。グリスがどこかからはみ出すほど入れないと不安になるものですが、これもまた、入れすぎはゴミを付着させることになるようで、はみ出た余分はふき取っておくべきです。2ヶ月〜半年に一度程度と、頻度は少ないです。

手押鉋、自動鉋の刃の交換
 手押については、材料がバタつくようになれば危険ですから、早い目に交換します。当方はHSSの刃で、月に一度程度交換しています。刃物を痛めやすい材を削った時はすぐ交換することもあります。自動鉋は、ローラーで強引に材を送る機械ですので、それほど神経質ではありませんが、3ヶ月程度で交換することが多いです。遠心ブロックと呼ばれる、刃の位置が自動的に決まるような機械だと交換が楽なんですが・・・、古い機械ですので、セッティングゲージを使って刃を交換しています。

手押し鉋の刃の交換
 機械のメーカーによって、交換やセッティング方法は違うはずです。特に中古で機械を買った場合は取扱説明もないので、できれば製造メーカーにその機種固有のやりかたを聞くべきです。というのは、私は手押鉋で間違った方法でやっていたのですが、たまたま営業に来られた機械屋さんに間違いを指摘され、以下のような方法に変えました。
 ウチの手押は三枚刃ですが、その三枚の刃を同じ高さにセットするということがどんなに難しいことか、交換したことがない人にはわからないと思います。しかし正確に刃をセットしないと、精度がよくて綺麗な加工ができないのです。それで、お役に立つかどうかわかりませんが、ウチの手押し刃の交換調整法を具体的に書いてみました。すでに工房をお持ちの方にはあたりまえのことだと思いますが・・・。

 ウチの手押では、手前の定盤とカッターヘッドの写真の部分が同一平面になるようにセットすると刃高を調整するのに適した位置にヘッドを固定できるように設計されています。最初はカッターヘッドを固定するレバーでセットするものと思っていましたが、それは間違いで、単にボルトをまわしやすくするためのヘッドの固定であり、刃のセッティングにはこの方法ではじめて正確にセットするわけです。
 最初は全てのボルトを少し緩め、簡単に回るようにしておきます。そして順番に刃を抜き、バネをなくさないようにしながら、念入りに掃除をします。次に専用のマグネットベース(機械屋さんで購入、結構高い)一個で、カッターが回らないように固定し、新しい刃を入れ、両端近くを二個のマグネットで押さえ、刃を後方テーブルと同じ高さにします。この時、マグネットの下にゴミがないか、あるいは、刃がコツコツとマグネット平面に当っているか、充分に確認します。そして、ボルトを少し回して、刃を仮固定します。

 このようにして、全ての刃を交換した後、正確に平面が出た調整用角材を置いて、カッターヘッドを手で回し(機械後ろのベルトを動かす)、この木にコツコツとどの刃も同じように当ることを両端と中央、計3箇所で確かめます。ここでうまく当らない場合は、再度セッティングをやりなおします。
 全ての刃が同じ高さになったら、中程度の力でボルトを中央から両端へ向かって締めます。一つの刃だけ力いっぱい閉めるのではなく、回転させながら、全ての刃を同じような力で締めないと、カッターヘッドのひずみで、刃高がそろわないことがあるのです。最後に力強くボルトをしめます(本当はトルクレンチを使って、適性トルクで締めたい)。そして最終点検をします。写真のように調整用角材を置き、カッターの刃で動く距離を見て、全ての刃が同じ距離動くことを確認します。

ボルトを締める過程で刃高が狂うこともあって、全ての刃が同じ高さにセットするのは実に大変な作業で、うまくいかないときは半日ぐらいかかることもあります。この状態ではボルトの締め付けによって刃が少し出ているので、ほんの少し後方テーブルを上げることによって、段差のない平面加工ができるようになります(小型の手押鉋盤では、後方テーブルが動かせないものもある)。なお、交換が終わってもいきなり木材を削ってはいけません。万が一ナイフの締め付け不良が合った場合、刃物が飛び出して、大変な事故になるからです。刃物が飛んで来ない所に立って、スイッチを入れ、回転させ、安全であることを確かめてから、作業をします。 蛇足ですが、この作業に使うスパナは、高くても良いものを使ってください。安物スパナを使って、ボルトの頭をナメテしまうと、特殊な部品であるために入手が困難ですし、高額な費用がかかります。

自動鉋の刃の交換
 これまた厄介のひと言。「自動の調整ができれば、機械屋として一人前」というくらい難しい作業だそうです。特に中古の機械では、セッティングゲージはあっても、純正品ではないことが多く、ウチの場合も、アルミ泊を貼り付けたりしてゲージの高さを調整し、なんとか逆目のでにくい位置に持っていっています。それでもなかなかうまくいかず、正直なところ、いい機械に交換したいです。この交換方法を紹介するのは大変なので、今回は省略。

刃の研磨
 精度が要求され、高速で回転する刃物ですから、手で研磨することは不可、当然プロの研磨屋さんに頼むことになります。最初は近所の機械屋さんに出していましたが、どうも切れ味がよくないので、今は電話帳でみつけた研磨屋さんに直接持ち込んでいます。刃の角度も、機械によって、奨励される角度があるので、まずはそれを試します。私の場合、手押50度、自動鉋48度です。通常手押しは45度ぐらいで研磨することが多いようですが、ウチの機械は50度で設計されていると聞き、試してみたら、たしかに50度の方が良かったです。

横切り盤の移動テーブルのベアリング掃除
 最もよく使う横切り盤、左右10個ずつの玉が入ったリニアベアリングによってスライドするテーブルを持っています。この部分にゴミがたまると、動きが悪くなるので、充分に注意します。今は一週間に一度、ベアリングとレール部分を潤滑剤を含ませた布で拭いています。どうしても動きがおかしい場合は、分解掃除をしていますが、これは大変な作業で、半日ぐらい余裕がある時にします。

丸鋸刃の交換
 交換作業自体それほど難しいことではありませんが、これまた研磨屋さんが大切。以前、ある研磨屋さんに出したチップソウが、出す前よりも切れない状態で帰ってきたことがあり、それ以降、この研磨屋さんには出さないことにしました。忠実に、最初の角度で研磨してくれるところを探す必要があります。オリジナルの角度で、丁寧に研磨されたチップソウは、新品同様、時にはそれ以上の切れ味になることさえあります。また、鉋盤も同様ですが、研磨に出している間も仕事ができるように替刃は必要です。

その他
 Vベルトのゆるみチェックや異常回転音時のチェックなどは当然です。ボルトやイモネジなどが知らない間に緩むこともありますので、可動部のガタには充分注意します。この辺りのことは、機械を扱う人の繊細さや適性が問われる部分です。
 定盤と鋸刃の平行や丸鋸回転軸の精度チェックなどは、機械屋さんの領域かもしれませんが、私は調整しています。たとえば、手押し鉋の台の少しのヒネリが気になった時、アルミ缶を切ったスペーサーを挟んでなんとかしましたし、昇降盤の刃とフェンスの平行も、私の好みに合わせて調整しました。自動鉋の送りローラーやチップブレーカーなどの位置調整等は実に難しいですが、自分でナントカまずまずの位置までもってきてはいますが、残念ながら満足できる状態ではありません。

 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 香嵐渓 --- ◆

 全国的に知られた紅葉の名所が、名古屋近郊にあります。「香嵐渓」です。愛知万博があった長久手の東、足助町という山間の町にある名所ですが、紅葉の時期には、強烈な渋滞があって、その方が有名なほど。地の利を生かして、朝7時過ぎに家を出、瀬戸を通り、有料道路グリーンロード経由で約1時間。8時ごろに着くと、11月上旬ということもあり、駐車場はガラガラでした。「早起きは三文の得」というようですが、たしかに得したような気分・・・、だが駐車料金1000円、そんなものかなあ。

 まだ緑の多い木々の中に赤や黄色の紅葉や銀杏、朝日に映えて、実に美しかった。以前は紅葉を見に行くことなどあまり興味がない方でしたが、年でしょうか、「また今年も紅葉が見れたなあ、あと何回見れるんやろ・・・」というような、若い頃とは違った気持ちで風景を眺めている自分に気がつきました。まだ本格的な紅葉ではなかったので、12月上旬、人が少なくなった頃にまた来てみたい。

 香嵐渓は紅葉だけではなく、中に三州足助屋敷があって、その中にいろんなお店があったり、奥の方の橋を渡った対岸にわらぶき屋根の茶屋では、囲炉裏端であゆの塩焼きや田楽などを食べることができるなど、ほっとできる日本的エンターテイメントが用意されているのです。朝ということもあり、味噌田楽と栗ぜんざいを囲炉裏の火の端でいただき、体があたたまりました。余談ですが、この茶屋の隣には「木工館」があり、話をお聞きすると、足助町の私設で運営は民間のいわゆる第三セクター方式で運営され、今は香嵐渓内の私設で使う家具や什器を作っているとのことでした。

 午前11時頃、帰る頃には、人が来る来る来る。8時には人気のなかった道が、まるで大都会。「こりゃあ、かなわん」と早々に退散しました。帰り道ではこれから香嵐渓に向かう観光バスや自動車の大渋滞。「早起きしてよかったなあ」としみじみ思いました。いいところですが、超早起きして行かれることをおすすめします。


2005年11月

 目次
・第五回木工教室作品展、速報
・スウェーデンの白樺の容器
・関西人の名古屋界隈事情---  フィフティープラス ---

◆ 第五回木工教室作品展 、速報◆

 恒例の教室展の紹介です。今年は作品数こそ前年を下回りましたが、大きな作品が大きく、初めてギャラリーと工房の二つの部屋を使って展示をしました。昨年もたいへ見応えはあったのですが、今年は生徒さん達のパワーがよりアップしているのを実感しています。個々の作品紹介は、来年一月の更新に合わせて行う予定ですが、とりあえずスナップを何点か掲載しました。最終日には、偶然ですが、スウェーデンからラモンさんという民藝作家が来られ、貴重な白樺の皮をつかった小箱作りを実演してくれました。

ギャラリーでの展示

工房での展示風景


◆ スウェーデンの白樺の容器 ◆

 忙しい時に、いろいろとイベントが重なるのが不思議ですが、以前から日本に行くのでウチを訪問したいと連絡があった、スウェーデンの民藝品作家で、民藝協会のラモンさんという方の来訪が、偶然、教室展の最終日に重なりました。彼にお願いし、スウェーデンの民藝品である、白樺の皮を使った容器の製作を実演してもらいました。
 白樺の皮を一年に一度だけ剥ぎ取り、それをレザークラフトのような感じで、ムースの角で作ったナイフやハンコで装飾をいれ、組み合わせる切込みを入れ、外側を作ります。その中に白樺の皮を反対向きに入れて筒が完成。底と蓋は、針葉樹などを楕円形に切って、きつくはめ込み、木釘を打って、作るのだそうです。右下写真の完成品は、その上に亜麻仁油に黒色顔料を混入した油で塗装してあります。
 プラスチックの容器がなかった時、スウェーデンではどの家庭でも、このような容器を使って、小麦粉やコーヒーなどを保存していたということです。結構、密閉性がよいのには驚きました。

 教室展の次の日から二日間、ウチで、日本の鉋の研ぎと組手を実習してもらいました。流石にもともとクラフトマンであり、理解は速く、研ぎもキザミも上手かったです。この旅行で、日本各地の民藝とその製作環境を見てまわるそうで、一日は木曽方面を案内して別れました。たいへん貴重な国際交流であったと思います。

 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- フィフティープラス --- ◆

 ある生徒さんから、「50歳以上限定で、とても安くJRの切符が手にはいる会があるそうですよ」と聞いていました。調べてみたら、それはJRが募集している「フィフティープラス、50+」という、無料で会員になれる、そして会報も無料でもらえるということがわかり、早速入会したわけです。そしたら、9月ごろの会報で、「限定企画、東京往復、500円キオスク利用券付き、一万円少々・・・」というのが目に入りまして、「こりゃ安い、すぐに申しこまな・・・」

 二ヶ月も先のスケジュールなどわかりませんが、とにかく夫婦で申しこんだんです。二人分の東京往復がなんと23000円ちょい!。細かい字の注意書を読んだつもりでした。利用できる列車の時刻は時間帯は決まっていますが、その正確な発車時刻はJRが決めるということであります。そして10月10日頃、その切符が届きました。が、ナント、ナント、名古屋発6時20分のひかり。

 かくして、夫婦で5時前に起床し、始発の次の電車に乗って名古屋駅へ。どうも14号車が、そのような格安切符お目当て団体専用らしい。若い人は3人ぐらいいたけど、シニアの人の朝早起きに目をつけたんでしょうか。無事乗車を果たし、出発したものの、シニア女性のパワフルな会話が東京まで続きました。幸い、買ったばかりのMP3プレーヤーを持っていたので、音楽でパワフル会話の影響を少しは抑えられたのはラッキーでしたが・・・。

 8時過ぎに東京着、新宿でJRを降り、ドトールでコーヒとサンドイッチを食べて、新宿御苑へ。日帰りの東京旅行なので、たいしたところは行けませんが、今回初めて行った新宿御苑にはおどろきました。プラタナスの並木や広大な芝生、流石に東京。私的には、NYのセントラルパークよりこっちの方が上でした。あとは築地や下町の向町付近を見てたら、もう夕方。東京駅前にできた丸善の大きな本屋で帰りの新幹線まで時間をつぶし、大丸地下で弁当を買い込み、キオスクでビールとシウマイを買っても二人で1000円の利用券の範囲でした。

 19時半ごろ、プラットホームへ行くと、朝見た連中がぞろぞろと14号車付近におられます。やっぱり14号車は格安お目当て団体専用でした。若い3人の女性はディズニーランドのお土産をいっぱい持ってはりました。そして、帰りもシニア女性のパワフルな会話は続いたのでした。なんてパワフル。また、あることに気づきました。行きも帰りも14号車は、車掌さんの”切符拝見”がなかったんです。そう、14号車は特別扱いでした。

 フィフティープラス、なかなか上手いこと考えたもんです。ビジネスマンが名古屋発6時20分の新幹線ひかりを使うことはまずないでしょう。その点、シニアは朝に強いのだ。また、若い人が、一日ディズニーで遊ぶためにもグーッ。そういうわけで、本当に破格の安さではありますが、裏を返せば、それは早朝の新幹線ひかりの空席を埋めるための企画でもあるようです。

 「またこの切符使いますか?」と聞かれると、「ウーン安いけど・・・、折角新幹線で行くんやったら、時間にしばられず、ゆったり行きたいなあ」と答えるでしょうね。「格安無料には、必ず理由がある」というわけです。


2005年10月

 目次
・第五回木工教室作品展
・木工機械の安全使用について
・関西人の名古屋界隈事情---  ゴミの違法投棄 ---

◆ 第五回木工教室作品展 ◆


昨年の展示会の様子

 今年も「展示会情報」にありますように教室作品展を行います。時間をかけ楽しみながら作られた作品には、荒いところも多々ありますが、作者の思いがこもった作品が多く、昨年は結構見応えがありました。今年は椅子など脚物が多そうです。お近くに来られることがありましたら、お立ち寄り下さい。

 毎年感じることですが、素早く、「パンパン」と作った作品は、どうしても「持ち味」が少なくなるようです。逆に、「こんなに時間かけて作っていいのん?」とこちらが心配するような作品には、なんとも言えないオリジナルな味が備わるようです。作品は本当に正直です。

◆ 木工機械の安全について ◆

 木工の現場で指の切断や材料が飛んでの内臓破裂など、痛ましい事故の話を時々耳にします。日本だけではなく、木工機械の安全使用について進んでいると言われる欧州でも事故は稀なことではないらしいのです。

 私の教室でも基礎コースの中頃から移動テーブル付丸鋸盤を使用しますし、応用コースではほとんど全ての大型木工機械を使うことになります。仕事ではない楽しみのための木工であり、絶対に大きな事故は避けたいと思っています。幸い今まで5年半、木工機械による大きな事故を起こさずに来ました。私の工房での機械の使い方が、良いとは全く思っておりませんが、趣味で木工をやっておられる方、あるいは仕事として木工をしておられる方達の安全に、少しでも参考になればとレポートしてみました。中には「この方法は危険だ」というものがあるかもしれません。安全については最大限の努力をしたいので、率直なご意見やアドバイスをお聞かせいただければ幸いです。

木工機械の安全

 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- ゴミの違法投棄 --- ◆

 工房のある所は、今も開発が進行中の地域です。「名古屋のチベット」とも呼ばれたり、療養所や隔離病棟を持つ病院が近くにあったりで、ひと昔前は山の中だったことをうかがわせます。また、1キロほど南には今は稼動していない名古屋市の塵処理場があり、近くのスポーツランドはその残土を埋め立てたところに建った所だということです。そのせいでしょうか、前々から不要な物を捨てに、良からぬ方が時々来られます。

 ある朝のこと、犬の散歩に行こうと、工房から出た途端、目が点に。大きなビニール袋に入った缶やペットボトルなど6袋と大きな軽量米びつの本体とその段ボウル箱、その他、ビン類などがドッサリと捨ててあったんです。近くにコンビニがあるので、そこで買った弁当や飲料のゴミを車の窓からポイ捨て、これは無数にあり、その度通報しても仕方がないので、朝か夕方コンビニまで運んでます。一度は現行犯で文句を言ってお持ち帰りいただきましたが、なかなか犯人を特定することは困難。しかし、今回のようにドッサリと捨てられては、簡単に処理もできず、かといって放置しておけば見苦しいだけではなく、他の投棄も招く恐れがあるので、仕方なくカミさんと二人で、夜にそのゴミを家に持って帰り、徹底的に分別し、通常のゴミ回収に出しました。面白いことに、そのビニール袋の中から、なんと、国民健康保険関係の通知書が出てきたんです。今回は通報しませんでしたが、サスペンス番組ファンの家内、「ゴミの中にヒントが隠されているというのはホントやね!」といたく感激してました。そのハガキは、今後のために当方で保管してます。おそらくは、数年間一人暮らしをした若い男性が引越をすることになり、捨てるのに困った物を車で15分ほどのこの辺りに来て、深夜に捨てたものでしょう。

 またある日、工房の土手に、ポーンと自転車が捨ててある。見ると防犯登録がしてあったので、電話したら、ナント名古屋空港の向こう側、江南市の自転車だった。自転車屋さんから、持ち主に連絡が行き、その方がウチに電話をしてきて、一週間預かった後、ちゃんと引き取りに来られ、これはめずらしく、一件落着。江南市近くの学校に通う生徒さんの仕業でしょうかねえ。

 ゴミを捨てる人が居れば、善意で拾って下さる方もおられます。近くの公園で、夜花火の音がしていたと思ってましたが、翌朝見ると、「ようもこんなにゴミちらかしたな」と呆れるほどの散らかり様。缶チュウハイ、ビール、弁当、雑誌、花火、アイスクリーム、ありとあらゆるコンビニ食料が、公園のほぼ一面に散乱状態。さすがに、これには手も足も出ず、朝は帰りましたが、なんと、夕方犬の散歩で通ってみると、何もなかったかのようにゴミが姿を消していました。こういうときはなんかホットして、「まだまだ捨てたもんやない」とか思ってしまいます。他にも毎朝、空き缶やゴミを回収しているシニアの方も複数おられるようです。

 捨ててあるゴミの中で、簡単そうに見えて処理しにくいのが雑誌類。中学生でしょうか、見るのも辛いようなエロ本を溝に捨てはります。自分も子供の頃に同じような経験があるので、「若い子や、しょうがないか。昔のバチや」と片付けるのですが、平凡パンチの昔と違って、今は強烈すぎ。少々脱線しましたが、雑誌類を溝に捨てると、水を吸ってとても重たくなるんです。水がない場合でも、雨が降ると処置なし。少しずつ、生ゴミに入れるしかなく、これも大変困ります。

 わからんでもないんですわ・・・、捨てる気持ち。自転車500円、石油ストーブ500円、リサイクル法に該当するパソコンなど4000円以上もかかるんです。ゴミ出しの時間にも間に合わない仕事をしている方も多いでしょう。でも人目につかない深夜、コソッと自分の住むところと関係のない場所にゴミや不要物を捨てる、そういう卑怯なことは許せません。そんなことをここで書いても無駄でしょうが、「仕方ないわ」と思いつつ工房周囲に捨てられるゴミに毎朝ピリピリしている私でした。


2005年9月

 目次
・2005カペラゴーデン
・「責任者出て来い!」は通用しない?
・関西人の名古屋界隈事情---  野球中継 ---

◆ 2005カペラゴーデン ◆

 7月に行ってきましたカペラゴーデンのサマーセミナー、それをまとめてみました。今回は、やや冷静なレポートですが、お楽しみいただければと思います。

カペラゴーデン2005


◆ 「責任者出て来い!」は通用しない? ◆

 先日、仕事で使っているコピー&プリンターのトナーがなくなり、送料無料のアマゾンで注文しました。海外の木工書など、今までもよくアマゾンで買っているので、安心して注文したわけです。

 ところが、届いたのはなんと全く別の品、カメラ用ミニ三脚が入っていました。「トナーより高いものなら、儲けモン」などと、よからぬ考えもよぎりましたが、ほとんどオモチャの三脚で、これは実用にならない安物。さて「これはこまった」、文句を言おうと、アマゾンのHPで連絡先を探しまわったのですが、どうしても電話番号が見つかりません。NTTのタウンページで検索しても電話番号がでてきません。明らかに先方のミスのこのような場合でも、アマゾンのHPで、通常の返品処理をしなければならないのです。

 故人生幸郎師匠でしたか、「責任者出て来い!」というフレーズをよく聞きました。しかし、アマゾンでは文句を言う相手はいないのです。あくまでバーチャル。しかし、私達個人の通販では、オンライン通販のガイドラインがあって、責任者やその連絡先電話番号まで公開しているのです。ちょっと調べてみたらアマゾンという会社は徹底した秘密主義で有名らしい。

 「1500円以上送料無料」で、海外の木工書を探すにもとても便利なアマゾン。このために日本の洋書専門書店がバタバタ倒産し、競争相手が少なくなったせいでしょうか、最近はアマゾンで洋書を注文しても、何ヶ月も待って一方的にキャンセルされることが多くなりました。私としては、バーチャルなアマゾンよりも、書店のオジサンの顔が見れる、責任者がはっきりしている書店が好きなんですが・・・、アマゾンの便利さと安さに、ついその誘惑に負けてしまうのです。

 でも今回のことで、アマゾンという会社の不気味さをより実感してしまいました。これから、洋書の購入はどこにしましょうか?


 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 野球中継 --- ◆

 当方、自他共に認めざるを得ない、阪神ファンです。そんなに野球が好きではないけど、タイガースの試合だけはどうしても見てしまう、どちらかというと隠れ阪神ファンでしょうか。ところが、今年は宿敵の巨人が弱い。巨人にだけは負けないという阪神魂が好きなんですが、今年は逆。巨人は阪神にだけは負けないという気合がひしひし。やっぱり、強くて憎たらしい巨人でないと、どうも調子が狂います。

 中日も嫌いではない。どちらもアンチ巨人のお仲間やけんね。しかし、トップ争いとなると、やっぱり中日に負けたくない!そう、8月31日、甲子園で雨の後の頂上決戦である。昼間工房で作業をしながら、「今日は6時半に作業を終えて、7時からビール飲みながら野球中継見るぞ」と計画をたててました。

 さて、7時に缶ビールをプシュッと開けて、テレビのリモコンで野球中継を・・・、探すが「これは巨人VSヤクルトか」、中日の試合が名古屋で見れないはずはないしなあ・・・・さてさて・・・・。どうも阪神戦がテレビに出ないので、新聞で確認すると。ナント、ナント、NHK衛星放送でやってるウウウウ。

 NHK殿、完璧に一本取られました。完全な負けです。ウチはNHKの電波状況が非常に悪くてノイズばかりで見るに耐えない画質。だから、そろそろ地上波デジタルにしなければと思ってましたが、まさか、地元名古屋で、中日阪神戦を、衛星放送でしか放映しないとは思いませんでした。

 大阪ではどこの局が放映していたんでしょうか?まさか大阪でもNHK衛星でしか見られないなんてことないよね?そんなことしたら、黄色い縞模様の気の荒い連中が黙ってないような気がする。名古屋の人は、これでも文句言わんのかなあ?どうなんやろ?、どうですやろ?


2005年8月

・三度目のカペラゴーデン
・「責任者出て来い!」は通用しない?
・関西人の名古屋界隈事情---

◆ 三度目のカペラゴーデン ◆

 名古屋で木工教室をはじめる、その大きなキッカケになった、スウェーデンの辺境の地にある工芸学校カペラゴーデン、いつまでも気になって仕方がなかった。それで、7月11日からの二週間の椅子製作サマーセミナー、”Chair Life"に参加してきました。この記録は後日まとめる予定ですが、まずは簡単に帰国後の印象を。

 94年の一回目は感激の中年おじさん、98年の二回目は教室開始前のカミさんと訪問滞在、そして今回は木工教室をしている立場での参加ということになります。やはり3回目となると、いろいろなことが冷静に見えてくるようです。

 昨年だったでしょうか、カペラゴーデンが「地球ポカポカ家族」という番組に登場、また雑誌「リヴィングデザイン」でも数ページにわたって紹介されたため、かつては知る人が少なかったのに、今年は日本人がメチャ多いのでした。たとえば、最初のテキスタイル初級コースは、ナント11人中8人が日本人・・・。私の参加した椅子コースは私を含め、日本人が4人でした。

 94年の時は、気張っていたのでしょうか、「日本人がいない方がいいなあ」と思っていました。今回、正直なところ、無理せずに日本語で話しができる仲間がいると随分気が楽だと思いました。3割ぐらいまでなら、日本人が居た方が、いいなあという気がします。まだ充分に記録を書ける余裕がありません。来月以降をお楽しみに。


講義をするキャレ先生


相変わらず、毎日美味しい食事


近所の教会にある創始者カール・マルムステンのお墓

◆ 高野山クラフトキャンプ ◆

 いわゆるクラフトフェアというものに参加するのは98年以来7年ぶり、真夏の高野山へ教室の仲間3人と行ってきました。海外から帰って、まだ時差ボケも治らない状態での参加であり、私はスプーンなどの小物展示とオリジナルブレンドワックス販売、同行の生木の加藤さんが足ふみロクロ実演をし、他の二人が自宅で作った小物を並べたという感じでした。
 高野山の山上、そのなかでも非常にマイナーな場所にあって、一般のお客さんがたくさん来るという催しではなく、メインはクラフトマンの夏休みキャンプ交流会。審査が多くなったクラフトフェアの中で、ここは誰でも気軽に安く参加でき、アットホームな運営がされています。フォルクローレというんでしょうか、民族音楽愛好家の演奏や伝承の、数少ない場でもあるようです。二日目、急な豪雨に一時ビショビショになりましたが、私は元々アウトドア好きですので、二日間のクラフトキャンプ生活を多いに楽しみました。

 有名な松本クラフトフェアなどのに比べ、一般の人に作品を見てもらうという側面は正直弱いですが、日常は工房にこもっているいろんな分野の製作家が集まる、貴重な交流の場を提供している側面はその分強いと思いました。悪く言えば、皆さん「売る気がない」わけですが、「楽しもう」という姿勢99%、楽しい場でした。帰りには、ボランティアのスタッフによって、タイヤの泥落としサービスまであって、本当に頭が下がりました。こういう地味な催しは、ずっと続いてもらいたいです。スタッフのみなさん、どうもありがとうございました。


高野山もやっぱ暑いなあ


前のガラスのお姉さん達と仲良く(^^)足ふみロクロ実演

 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 焼肉屋退散 --- ◆

 今もあるんでしょうか、梅田東通の「かっぱ」という焼肉屋さん。勤めている頃、毎週ぐらい行っていたのではないでしょうか。そんなわけで、今でも焼肉、ホルモンは好きなんです。んで先日、家族で「帰国祝いに焼肉いこか!」ということになりました。ところがあいにく水曜で、いつものお気に入りの店はやっていない。そこで、最近近所にオープンした、高級料亭のような焼肉屋さんを一度試そうということになりまして・・・・。

 私は以前からよく「店の外で、カッコつけに火を焚いているような店はアカンでえ」と言っているらしい。嫌な予感。その店は黒塗りの壁で店の周りに漁火のように、炎がメラメラと燃えておるのでした。「まあ、近所やし、ダメモト(ダメで元々の略)で入ってみようや」。で、店内に。ちょっと浜崎あゆみ風な店員さんが「予約のお客さまでしょうか?」。半ズボンでビーチサンダルで来てるのに、それはないやろ。奥へ入って、店長らしき人に相談して「こちらへどうぞ」。「あの、椅子席がええんやけど」。また店長に相談。そんで、薄いベールのようなカーテンをめくって、6人のブースへ入る。ここはスナックちゃいまっせ。

 「いらっしゃいませ、お飲み物は何にいたしましょうか?」と男性アルバイトと思われる店員さん。私、どうも気配を察し、「よう考えてから注文するので、ちょっと待っといて」。不安的中、メニューを見て、目が点に。焼肉店でありながらコース主体、おまけに一番安いコースで一人4500円、ひぇー。「ご注文はお決まりでしょうか?」と聞かれ、もう恥じも外聞もない、「一品のカルビ、一人前何グラムあるのん?」と聞く私。「えーと、5キレくらいです」。ちなみにカルビ一人前1500円。

 もう迷う必要はない。そのために、オシボリにも手をつけず、飲み物の注文もしなかったのだ。家族からも賛同の声があがり、「このお店、初めてでコース主体とは思ってなかったんですわ、すんませんが、キャンセルして出ますわ」と、私にしては極めて丁重に言葉を選び、5分で退散した次第。

いやはや、自分はやっぱり煙モクモクで、服が臭くなるような、焼肉店が合っているようです。


2005年7月

 目次
・木工教室レポート---鉋の刃の出し入れ
・椅子が帰ってきました
・「週末工房」No.3について
・関西人の名古屋界隈事情--- ついに万博初体験 ---

◆ 木工教室レポート---鉋の刃の出し入れ ◆

 木工教室で初めて入られた方に、同じことを繰り返し教えていますと、自然と間違いやすいポイントというか、失敗しやすいことが見えてきます。気が向いた時に、そういうことを書いていきたいと思います。内容は初心者向けですが、経験者の方も、少しは参考になることがあるかもしれません。「上手にできた!」話よりも、失敗した話の方がタメになるわけで、「失敗談」あるいは「勘違い」を中心に話をしたいと思います。

 「刃を抜く時は逆に叩けばいいですかー?」と、鉋の台を裏返して刃先を叩こうとした方がいて、大声で「ダメや!」と怒鳴ったことがありました。信じられないでしょうが、鉋を初めて触った方は台を叩いて抜くとは思わないようです。また、刃を入れる時、全力でガンガン叩く人もいます。一応、教科書的な説明は次のとおりです。

「鉋の刃を入れる時は、大きな刃と小さな刃の裏側(まっすぐな面)を合わせ、だいたい刃先を同じ位置にしながら、玄翁で軽く両方の刃を叩いて、入れます。この時、軽く5〜6回叩いて刃がでるくらいがよく、無理に叩くと台が割れることがありまーす。」

 下の写真では、赤丸のところを、刃と同じ直線上で、軽く叩くのですが、玄翁で叩くことがまともにできる人は意外と少ない。「軽く叩く」と言っても、人によって、蚊の鳴くような叩き方から、ゴンゴン叩く方までおられるわけで、台を割らないよう、やや控えめな回数を言っています。玄翁の平面と仕上用丸面の違いがなかなかわかってもらえない、あるいは玄翁を短く持って手首のスナップで叩くことも、初めての人には難しいようです。また玄翁の平面で叩くことができずに、角で叩くので、刃の上部がギザギザになっている人も・・・。やさしく玄翁の平面で叩くことができれば、そんなに刃は痛まないのですが・・・。

 軽く5〜6回叩いても全然刃が出そうにない場合、刃を抜いて、木と触れる面に鉛筆をこすりつけた後、刃を入れては黒くなった台をノミの刃を立てて慎重にこすりながら、様子をみます。決して急がないように。刃が斜めになるときは、出ている方から軽く横に叩きます。これでも治らない時は、押さえ溝や、刃先が斜めになっていないかを点検します。

 刃を抜く時は「刃を手で包むように鉋を持ち、台頭上部両側を、刃と平行に交互に叩いて抜きます」と教えますが、これもトラブルが多い。上の写真で黄色丸の所を叩くわけですが、端を叩きすぎて、木の角がささくれだってきたり、台頭下部を叩いてしまい、大切な台下面が膨らんだりすることも。

 なぜ両端を叩くかというと、「台を割らないため」だといいますが、だからと言って、両端をただきすぎて、大切な直角を確保する側面をつぶしては何にもなりません。だから上図では左右の黄色丸の間のいろんな場所を刃と平行に叩くのがよいように思います。しかし、実際には玄翁のコントロールが難しいことも多いらしく、台頭でトゲがささるようにササクレ、ガタガタになっている方も見受けられます。

 「木工は力仕事」と思われている方も多いですが、実は反対で、非常に繊細な手加減が必要です。次のような方、充分にご注意下さい。

 話は変わりますが、以前、ある生徒さんから「どうして日本の道具は買ったままでは使えないのですか?」と質問されました。よく考えてみると、ホント不思議です。「最初にどんなに調子が良くても、いずれ使っているうちに狂うので、それが直せないようでは、道具を最後まで使い続けられない」と、それらしい理由を言ってはいますが、誰でも使えるように進歩させていく、そういう努力を日本の道具屋さんはしてこなかったということは言えるかもしれません。そういう意味では、金属製洋鉋は、面白い。

 上の写真はスタンレー社のポピュラーな低アングルブロックプレーンという鉋です。刃を出すにはレバーをゆるめ、Aで左右の傾きを調整しながら、Bで刃の出方をネジで調節、そしれレバーを締めて刃を固定します。そういうと簡単なように思いますが、薄い鉋屑を出すように調節するのは、日本の鉋以上に難しいように感じます。でも荒削り用、面取り用としては初心者に扱いやすいかもしれません。特筆すべきは、刃口の調整が可能なこと。ネジを緩めレバーを左右に動かせば刃の前の金属プレートが移動して、刃口のスキマを、自由にコントロールできるのです。昔の洋鉋は日本と同じように叩いて刃を調整していたようですので、これは進歩ですよね。でも私は、この洋鉋をほとんど使いません。慣れてしまえば、日本の鉋は軽くてよく切れて研ぎ易く、実に使いやすいのです。洋鉋のような金属台の鉋もいずれは台が狂うはず。その時、台直しは大変ではないでしょうか。


◆ 椅子が帰ってきました ◆

 一年以上、各地を回っていた”Amstack”が帰ってきました。スタッキングチェアは構造的に無理をしている部分が多いので、長い巡回の間にホゾが緩んだりしないか心配でしたが、構造的には全く劣化しておらず、安心しました。お恥ずかしい話ですが、第一回のチークの椅子はホゾが緩んでいたところがあって冷や汗をかきました。外見では、鞄や靴が擦れてできたと思われる汚れが二箇所ほどあったのと、ナイロンテープの位置が少しずれていたところがありましたが、座網の緩みはなく、ナイロンテープの座面はこれからも使いたいと思います。
 この椅子のデザインは、ボーエモーエンセンの椅子をイメージしながら、作りやすさや材料入手のしやすさなどを考慮しつつ、スタッキング可能な構造を取り入れたオリジナルです。アーム高は60cmと低めで、高さ70cmのテーブルの下に入るようにしています。座り心地もよく、私自身たいへん気に入っておりますし、お使いいただいている方にも好評です。ニ脚以上でご注文を受けております(標準仕様2脚で15万円、3脚以上は割引有)。


◆ 「週末工房」No.3について ◆

 半年に一回の木工雑誌「週末工房」、回を重ねる度にパワーアップしているようです。今回は、「木の質感に頼った作品が多い」など、きびしい意見をお持ちの、暮らしの中の木の椅子展審査員の長さんや島崎さんのコメント、墨付けについての細かい話、アマチュアではありながら本職顔負けの江戸指物藤田さんの紹介、三段抽出箱の詳しい製作記事等、他にもテンコ盛の内容に驚きました。ライフスタイルとしての木工よりも、技術の方によりスポットを当てている点が今までの木工雑誌と違っているように思います。ただ、あまりにカバー範囲が広く、この先どうなるか不安もありますが、日本では今までにないような木工雑誌になる可能性を感じます。私は最後の方で抽出箱の構造等について、総論的な記事を書かせていただきました。木工をはじめて間もない方には少々むつかしいとは思いますが、いつかは役に立つ内容かと思います。


 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- ついに万博初体験 --- ◆

ついに行ってきました、万博へ。もちろん夕方5時からの半額狙いです。

 どうやっていくか調べていたら、ご近所の方が、「いっぱい民間駐車場がありますよ」とのこと。インターネットで調べていたら、そういうゲリラ駐車場の詳細な地図まで載せた案内ページがあって、びっくり。ワテもゲリラPを利用することにしました。ゲリラPとは競馬場とか野球場の周りで、タオルを振ったりして客を呼び込んでいる、そういう私設のゲリラの様に出没する臨時駐車場。万博の主催者側は認めていないようですが、もちろん法的には問題ないらしい。

 万博周辺道路の交通規制が誤解されているようですが、幹線道路は全然規制はありません。名古屋方面から万博に向かい、万博会場が目の前に見えるところで高架道路を下りて右折、県道に入ると、下痢P、失礼、ゲリラPが並んでます。夕方5時からというのに2500円の看板が多く、「もっと安いとこ、ないかいな?」と探していたら、通り過ぎてしまった。コンビニでUターンし、2000円の看板に妥協してゲリラPへ。バイト君に2000円払って駐車したら、なんと西口が目の前。「得した!」と思ったら、小さな川を越えるために、Uの字型に800mほど歩かねばなりませんでした。なんぼゲリラPからの入り口とはいえ、正式に徒歩や自転車で来場される方もおられるわけで、この「徒歩用入り口」、もうちょっと綺麗にしてほしいと思いました。


(手前は西口にある障害者専用駐車場、フェンスの向こうが小川、その奥にゲリラP)

 さて、入り口ゲート付近はドエライ人。2300円の夕方5時〜券を買ってイザ出陣。セキュリティーチェックで結構時間がかかる。その間「待つ」ということに慣れていない、おじいさんが我先に進む光景を見て、もはや嫌な気分。「もうちょい待たんかい!」と心の中で叫ぶが、年取ったら同じようになるかもしれません。

 私のモットーは「人類は麺類」。今日の目的は、アジアンヌードルである。朝のテレビ番組でやっていた、シンガポール館のラクサという、ココナッツミルク入りスープ麺をまず食べに行く。発砲スチロールの容器に入った麺が1000円はちと高いが、ビールはもっと高いので辛抱。伸びきったようなブツブツの麺はイマイチやったけど、スープは美味かった。次々とアジア各国のパビリオンを見た。やっぱ、アジアの小さい国のパビリオンがいいでっせ。中でもイエメン館が家族みんなのお気に入り。全然万博用の作りではなく、まさに現地のみやげ物屋。オジサン達もまさにイエメン。やる気がないようなあるような・・・、なんとも言えない、いたってナチュラルなムード。二階へ行くと、「コーヒールンバ、モカマタリ」でおなじみ、日本人が一番好む、モカの最高品種、モカマタリが300円だったので、それをゲット。特別に凄いわけではないけど、好きな味でした。

 一時間ほどでアジアを見てしまったので、まあ歩いてみようとテクテク。グルーリと回ってマンモスの頭も見ました。それから、カナダ館の行列が少なかったので入ったけど、私はカナダの自然や人々をモチーフにしたアート感覚の映像を見ても、何も面白くなく、30分缶詰になったのがもったいないと感じた次第。年なのか、バーチャルな世界はどうもゴメンですわ。それでアフリカ方面へ。夜は10時までなんやけど、パビリオンは9時には終わるんやね、これが意外と早い。幸い、アフリカ地区の奥の方のパビリオンで、「OSUSUME」と書かれた、アフリカ料理を発見。ビールも600円でまずまず。早速注文し、アフリカのごっついオジサンから、紙皿にテンコ盛の鳥モモ、ビーフ、トマトなど、アフリカ風な定食をいただきました。夫婦二人で充分な量で1100円は安い。日本にはない、結構いけるお味。ああ満腹。万博での食事は、「ゆっくり食を楽しむ」というわけにはいきませんが、アジアやアフリカのパビリオンで現地の方が料理しているのを食べるに限るように思います。

 さすがに夕方からだと時間が短い。9時を過ぎるとなんとなく、帰るムードになり、西口付近へ向かう。ズボンがズレ落ちそうな修学旅行の男子生徒、そういう学生君ほど、お土産をドッサリ買っていたりして、微笑ましい。連れが最後に「ソフトクリーム食べたい」と抹茶ソフトを買ってきた。そしたら、なんと、前を歩く中年のご婦人3人連れ、全員抹茶ソフトを持ってはった。抹茶ソフト強し

 あとは流れるように出口へ。夕方5時〜9時30分で2300円。安くはないが、涼しくて一度行ってみたい方にはおすすめのナイトコースではありました。「また行くのん?」と聞かれれば「ウーン、機会があればね」という感じ。


2005年6月

 目次
・クラフトフェア
・国際関係ギクシャクに思う
・関西人の名古屋界隈事情--- 万博未経験談 ---

◆ クラフトフェア ◆

 2000年1月に教室を始めてから今年で6年目、最初から在籍されている生木木工の「木生」のKさんが発起人になり、先月愛知万博に合わせて行われた瀬戸のクラフトフェアに店をだしていました。その様子は、ユーモアたっぷりに下記のページでご覧になることができます。この催しは今年限定とのことで、来場者数や出展者数はさほど多くありませんでしたが、アットホームなよい催しであったように思います。私も教室をはじめる前には、丹波や舞鶴のクラフトフェアに毎年お世話になっていましたので、楽しそうな生徒さん達の様子を見て羨ましく思ったり、また生徒さん達がそのような催しに出展するようにまで成長したんだと、しみじみ思ったりしました。それで実は、昔の楽しみをもう一度と、7月下旬の高野山クラフトキャンプにエントリーしています。

せと創作市場

 ところで、15年前くらいまではクラフトフェアと言えば、「松本」ぐらいしか知られていませんでしたが、現在は毎月どころか、毎週どこかで、クラフトフェアが行われているくらい、各地で行われています。しかし、その中身というか姿勢は多種多様で、出展される方は「どういう目的を持って行われている催し」なのかを事前に知っておく方がよいと思います。例えば、地方自治体のいわゆる「町おこし」的催し、主催者も出展者も利潤追求型のいわゆる「フリマ」、創作家の作品発表の場を主目的にした「作品展示型クラフトフェア」、ギャラリーオーナーが主催する「個展変形型」などなど・・・。

 フリーマーケットを略してフリマというらしいですが、今はフリマ専門業者が存在するくらい、実態はかなりプロ化した催しであることが多いように思います。フリマで売上を追求するとなると、本人の作品だけでの出展には限界があり、次第に海外の安い雑貨を並べたり、他のフリマで仕入れた物を並べたり・・・、いつかはそういう状況になっていくのは自然のなりゆきです。手作りの品物を、手間賃と材料費、そして出展費やその他の経費も考慮に入れて値段をつけて並べたら、それほど売れるわけではありません。売れないと不安になり、損を覚悟で安い値段で売れば、それに目をつけるのは素人さんではなく、フリマのプロだったりします。

 「楽しむための木工」なら、売り上げは二の次。作者相互、あるいは作り手と使い手のコミュニケーションが自然な形でできる「作品展示型クラフトフェア」が望ましいように思います。


◆ 国際関係ギクシャクに思う ◆

 木工を楽しむためのページなので、政治的な話は場違いと思い、避けて来ました。しかし、最近の報道を見ていますと、どうも良くない方向に向かっている、そんな危機感を感じることがあります。「そんなこと、別にあんたが心配せんでもええがね」と言われる方もおられるでしょうが、本当の意味での野党がほとんどなくなってしまった今、ややもすると政府代表の思い通りに事が進んでしまう危うさを感じてしまうのです。周囲の国との関係がギクシャクし、日本の主権を守る必要性みたいな議論が出てきたり、あれだけ議論になった自衛隊の海外派遣がもうニュースにもならないようになってしまったり。こういうことについて、私はただ単に新聞やテレビのニュースを見たり読んだりするだけで、本当の実態というのは皆目わかりません。

 私達の親の世代は戦争体験者です。神戸の空襲の話もよく聞きました。「真っ黒コゲの死体がいたるところに転がっていた」とか「焼夷弾の直撃で防空壕の前に立っていた人がなくなった」とか、もっともっと悲惨な話もいっぱい聞きました。また実際に中国に軍隊として行っていた親戚は、お酒が入ると戦争の話になり、「日本軍は、それはそれはヒドイことをしていた。上官の命令に逆らえばこっちの命が危なかった」などと話ていました。マスコミからではなく身内から聞いた先の戦争の話は、とてもそれを美化できるような内容のものでは決してありませんでした。学園紛争の頃、運動をしている学生が「歴史はあとから事実を曲げて作られる」というようなことをよく言っていましたが、昨今の政府官僚の発言を聞くと、「彼らが言っていたのは間違いではなかった」と思わずにはいられません。

 学園紛争のあと、見事に政治無関心教育が行われたのでしょうか、「反戦運動」という言葉をほとんど聞かなくなりました。先月「自衛隊に入ろう」を歌ったフォーク歌手の高田渡さんが亡くなられ、また長い間続いた「春一番コンサート」が終わったとか。良くも悪くも、60年代、70年代のフォークソングには、強いメッセージがこめられていました。また、古臭いと言われるでしょうが、「禁じられた遊び」「哀愁」などの名作映画は、悲しく美しいストーリーに乗せて、強烈な反戦メッセージを観客に与えました。

 前にも書いたのですが、サラリーマン時代に米国のある学会に参加したことがあり、その中で有名な学者さんが講演の最後に次のような言葉をスライドで提示して、締めくくったのです。

The man who makes the change.
The man who knows the change.
The man who doesn't know the change.

解釈が間違っているかもしれませんが・・・、人間には三種類ある。「変化を起こす人」「変化が起こっていることを知っている人」「変化が起こっていることすら知らない人」。どのような人になるかは個人の自由だが、少なくとも「変化が起こっていることすら知らない」人になってもらいたくない。というような内容だったと思います。この言葉がとても重要に思える昨今です。


 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 万博未経験談 --- ◆

 そろそろ万博の話が出るのでは・・・と期待されているみたいですが(そんなことはないか)、まだ行ってません。人の多いのは苦手なのと、やっぱり高いしなあ。しかし、カミさんはすでに二回も行ってまして、また生徒さんの中には、会場近くに住んでいる方や会場の食堂でアルバイトしている方もいるので、いろいろ情報が入ってます。そんなわけで、無責任ながら、人から聞いた万博関連の話です。ただし、話の内容には責任は持てませんので、「行ったら、そんなんと違うかったでえ」という文句は言わないでいただきたい。

万博は良かった?
 どうも、じわじわ評価があがっているみたい。「行かんかった方が良かった」という声はまだ聞いていません。人気のパビリオンを見なくても、小さな国のパビリオンを見てまわるだけでも楽しいらしい。けど、娘は「マンモス、やっぱ良かった」と言ってました。

混んでる?
 最近、夜5時からの半額狙いの人が多いらしい。だから、午前中から普通に出かけるのがいいという意見あり。ただ、会場は広いので、メチャ混雑というほどではないらしい。10万人ぐらいは問題なさそうです。

グッドタイミングはいつ?
 名古屋の夏は蒸し暑いし、残暑もきびしい。そうすると・・・、梅雨の時期か?。みなさん、この時期に集中するかもしれない。ウーン4月頃に行った方、正解でした。もう人の少ないいいタイミングはないかも。

アクセスは?
 地下鉄東山線経由では藤ヶ丘駅からのリニモが混雑するので、JR名古屋から万博エクスプレスを使って反対側の八草からリニモを使うのがいいみたい。ただ往復で結構交通費がかかるので、3人以上なら、自動車で行って3000円の公式駐車場に車をとめ、無料のシャトルバスで往復するのが結局は安いという意見あり。誰かに車で送ってもらう方法は、周辺の駐車規制の関係で、行けたとしても警備の人に注意されたりして嫌ーな気分になる可能性が多いので、やめたほうが無難。

ゴハンは?
 コンビニおにぎりでも弁当箱に詰めれば持ち込みOK。水筒で水も持ち込めます。私的には、会場でめずらしい物を食べてみたい。高いらしいけどね。アルバイトさんの話では、大きな食堂はイマイチで、小さな各国のレストランやテイクアウトの方がよさそう。

その他? 
名古屋は暑い。これからの会場は灼熱地獄を覚悟。帽子は絶対必要と思う。特に、髪の薄い方(^^;)、紫外線対策必須です。

このままでは会期中に行かない可能性がでてきました。近くにいても、キッカケがないと、なかなか行けないものです。二ヶ月ほど前に書いたJR名古屋駅近くの笹島サテライト、入場無料なので、単にエスニックな食べ物を食べたいとか、手軽に子供さんを遊ばせるにはいいみたいです。


2005年5月

 目次
・卓上スライド丸鋸
・木工関連書籍
・関西人の名古屋界隈事情--- 今年のお花見ランキング ---

◆ 卓上スライド丸鋸 ◆

 久しぶりに電動工具を買ってしまいました。写真の卓上スライド丸鋸です。工房を建ててくれた大工さんと話をしていた時、「留めは造作丸鋸で切ってる?」と聞くと、「スライド丸鋸で一発や。最近は、深さまでぴったり決まるのがH社からでてるらしいで」。その機械をある展示会で見て気に入り、ネットの安いところで6万円少々で手にはいることがわかり、買ってしまったのです。

一応買った理由は次のとおり。

 実際に使ってみると、いろいろ問題を感じました。まだ慣れていないこともあるでしょうが、正直恐い。この機種に限らず、スライド丸鋸全般に言えることですが、テーブルソウよりもよりも危険な機械のように思います。特に充分に木の動きを知っていないと危険です。幅広板を切断する際等、木材内部の力によって起こる刃の締め付けによってキックバックが起こると、突然丸鋸が手前に戻ってきますし、上下方向に簡単に刃が降りるので、「うっかり指を切ってしまう」などという、恐ろしいことが起こる可能性を感じます。また、ハンドルのボタンスイッチが握った途端にONなんてこともありそうで、ヨーロッパの機械のように二段階でスイッチが入るような仕掛けもほしいと感じました。

 肝心の精度ですが、フェンスの直角や鋸の角度など、再調整は必要ですが、かなりの精度(0.2mm以下ぐらいかな?)です。下の写真は試しに墨線の右側を切っているのですが、刃を実際に当ててセッティングすればOKでした。付属のレーザーマーカーは切る目安になる程度。写真では表面を2mm程度だけを切っているのですが、このような使い方ですと、実質スライド幅の23cmしか切ることはできず、写真の位置以上切ることはできません。「一尺一発切断」とPRされていますが、溝はこのとおりにはいかないです。

 合板で大きなベッドを作り、この機械をラジアルアームソーのように使う工夫をしないと本当の評価はできないとは思いますが、現時点での私的な結論は下記のとおりです。

 この機種は、丸鋸が左右45度傾斜、レーザーマーカー、手もとライト、二段階の切り込み深さストップ、1mmほどのチョイ切込みストップ、など等、超盛りだくさんな機能を持っています。それでいて最安値で6万円少々の価格と約10kgの軽量、「これで文句あるか?」という感じ。もちろん、本体は必要なところ以外は、アルミではなく合成樹脂でできていますので、ちょっと頼りない感じはしますが、性能を考えるとお値打ちとは言えると思います。


◆ 木工関連書籍 ◆

木工ブームの第二段階に入ったのでしょうか、最近木工関連本がいくつか出版されています。その中から二冊買ってみましたので紹介します。

木工手道具入門  週末工房編集部偏  誠文堂新光社  2000円(+税)  ISBN4-416-30506-0

 木工手道具を使いこなすのは本当に難しい。まして、それを本で習得するのはほとんど無理だとは思う。しかし、この本はある程度研ぎをやった人にとっては、かなり参考になるのではないか。プロはどうしているのかが知りたい人は多いと思うが、かなりの部分それが紹介され、伝わると思う。初心者にはちょいハードルが高すぎるが、本格的な木工、特に指物を目指している人にとって、最近の本の中ではおすすめ。友人のアマチュア木工家Oさんも登場してます。姉妹本に「電動工具偏」があるのですが、こちらはややカタログ的要素が多いように思います。

はじめての家具作り  加藤晴子著  株式会社 山海堂 1700円(+税)  ISBN4-381-07982-5

 題名からは初心者向けの本と思ってしまいますが、どうしてどうして、なかなか本格的。内容は職業訓練校で教えられる家具製作技術に近い。引出付テーブルの製作過程を通じて、プロレベルの作り方、注意点・考え方がしっかり解説されていてびっくりしました。研ぎや穴掘りから、比較的入手しやすい小さな電動工具まで取り上げてあり、バランスもよい。著者は女性だという、お父さん族の私も頑張らねば・・・。

他にもいろいろ木工書が出版されています。一度大きな書店に足を運んでみてはいかがでしょうか。


 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 今年のお花見ランキング --- ◆

 正直、あまり花を見て感動することの少ない方ではありますが、今年は花好きなカミさんといっしょに何箇所か花見に出かけました。

 「高遠城址の桜は日本一」と言われるらしい。高遠とは伊那の高遠、南アルプス北沢峠の登山口に近い。その超有名なところに出かけてみました。観光バスで遠くから、お客がようさん集まるのか、有料駐車場も満杯に近く、城址公園は雨だというのに大阪梅田の地下街みたいでした。もちろん、日本一の桜ですから、それは美しい・・・ですが、あまりに人が多いのと、「花見するぞ!」というオジサン・オバサン(私もその一人ではある)のパワーに圧倒され、桜も霞んでみえました。公園の入園料も結構高かったなあ。

 工房から3kmほどのところに尾張旭城址があり、桜の名所というほどではないが、手ごろな花見場所。コンビニおにぎりと缶ビールを持って、一時間のご近所花見をしてきました。駐車場も無料、もちろん入るのも無料で、結構なことですが、綺麗な桜の木の下には、決まって、青いビニールシートが。花は綺麗けど、花見の場所を確保するシートだけでなく、そういう根性が嫌やね。新入社員に「花見の場所、とってこい」と命令するような上司にだけはなりたくないですな。「あんた、もともと上役にはなれんよ」と言う声が背後から聞こえてきそうではありますが。

 最後は以前にも紹介したことがある「東谷山フルーツパーク」。今年は少し開花が遅かったのか、満開の最高の時に行きました。説明無用、写真を見てもらえれば、今年はここが最高であったことがよーくわかることでしょう。

 花ご専門の方が、「大阪造幣局の桜はいいよ」とおっしゃってましたので、来年の課題は造幣局の通り抜けかも。


2005年4月

 目次
・様々な木工交流
・恥ずかしいお話
・関西人の名古屋界隈事情--- 笹島サテライト&金シャチ ---

(リンクページを追加、削除、修正しました)

◆ 様々な木工交流 ◆

 3月下旬、なぜか人と会う機会が集中しました。皮肉なことに、暇な時は超ヒマ、逆に忙しい時ほど行事が集中するんです。これらの交流は私的なことなので、ネタにはしにくいのですが、海外の方の話からひとつ。

 3月30日、スウェーデン人で今はドイツでクラシックギターを作っているトビアスさん夫婦が京都・大阪の観光の合間に寄ってくれました。後で聞いたところ、日本に行く前に「woodworking tool japan」などのキーワードで検索していて私のHPを見つけたそうです。それから、メールでかなりいろいろと話をしました。彼はスウェーデンやカナダでギター製作を学び、ドイツでギター製作会社に勤め、マイスターの資格を取り、最近独立したそうです。
 今までドイツのマイスター制度を「とてもすばらしい制度だ」と思っていたのですが、彼曰く「本当のマイスターもいるが、そうでない人もいる。ある人は安い労働力として3年間、窓やドアを作り続け、技術なんかほとんど教えてもらわかなった。それからさらに何年も同じように働くか、有名な”ジヤーニーマン”として三年間、各地の工房を放浪修業するかで、やっとマイスターの試験を受けることができる。そのうえ、資格を得るためには莫大なお金が要る」らしい。また「マイスターの資格を与える組織には事務仕事しかしない”オフィスマン”が沢山いて、彼らの給料を若い人のお金で養っているんだ」。「日本にはこのような”オフィスマン”がいるのか?」と逆に質問されました。ウーン、日本にもようさんいるよなあ・・・。国内では良い面が強調して伝えられる傾向があるようです。実際には問題が多いこともあるんだと、学んだ次第。


(I 'm sorry to mask the face for security)

 メールでかなり突っ込んだ話をしていたこともあり、また私の会話能力の不足もあって、実際に会うと、そんな難しい話はしませんでした。でも、メールのやりとりを通じて、彼の人となりがわかっていたので、安心して彼らを迎えることができました。そうなんです!、メールでどういう方なのか、時には人格までわかるんです。例えば、「木工の仕事を探しています。明日貴工房を見学したいのでご都合は如何ですか?」とメールがあり、「人を雇う気も力もありませんが、それでよければどうぞ」と返事を出し、翌日心つもりをして待っていても誰も来なかったとか、あるいは質問メールの最後に「急いでいますので、早めに返事をお願いします」と書いてあったので、ムカつきながらも急いで返事を書いたのに、お礼のメールはおろか何の返信もない(別にお礼や返事はいらないけど・・・)、等々。反対に、メールで非常に印象が良いと、こちらもいつも以上に、ハッスルしたりします。先日おじゃまさせていただいたKAKUさんも同じようなことをおっしゃてました。
 愚痴が多くなってしまいましたが、いろんな人と知り合いになることは、とてもいいことだと思います。機会があれば、今度はドイツへ行ってみたいと思いますが、私のメチャクチャな英語をもう少しちゃんとしないと・・・。

◆ 恥ずかしいお話 ◆

一応、私も注文家具屋の端くれ、恥ずかしい話はしたくないのですが・・・。

5年〜10年前に作って、自宅ダイニングで使っている椅子が、かなりガタが来ているのです。木やホゾがやせ、「胴突きが切れている」状態です。自分の椅子ですからトラブルにはなりませんが、お客さん所に収めたモノなら、クレームになるか、「アソコのはダメや」と評価されてしまう。今後のために、原因を考えてみました。

  1. 乾燥があまい
    人工乾燥材だからと安心して使っていた
  2. 材の使い方が好ましくなかった
    木の収縮をよく考えて木取りをする
  3. 組む前の木殺しが不十分
    効果がどれくらいあるかわからないが、充分にホゾ穴周りを木殺しすることは、やっぱり重要ではないか
  4. ホゾ先に逃げがない
    私は細い部材を多く使うのでホゾをぎりぎりまで入れることが多い。さらに充填性のボンドを使うと、ホゾ先の空間が皆無となり、木が縮んだとき、ホゾを押し上げることになる?
  5. ホゾがきつ過ぎる
    しっかり作りたいために、ほぞをきつく作る傾向にある。度が過ぎると、クランプによる加圧では不十分となることもありそう
  6. 軽い塗装
    オイルフィニッシュやワックスよりも、ウレタンでシールするような塗装の方がやはり乾燥には強い

 まずは除湿機による簡易乾燥室を作るなどして改善してみようと思います。あるいは、発想の転換をして、緩んでも組直しやすい構造にすることもいいかも。というのは、一度緩んでから組みなおした椅子は、今度はかなりしっかりするんです。
 日本の大手家具メーカーの椅子は、過去にそういうクレームを山ほど経験していると思うので、例外はあるでしょうが、非常に強いという印象です。30年以上前の新婚時代に買ったダイニングチェアー、椅子の張りはボロボロですが、ホゾはそれほど緩んでいない。こういう良いところは見習わなければなりません。反省。

 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 笹島サテライト&金シャチ --- ◆

 いやはや、愛知万博であります。当然、これを話題にしたいところですが、そこがそれ、元関西人のへそ曲がり。わざと日の当らない方面の話をしてしまうのであります。

 ある日の新聞に、愛知近辺の催し会場への人出データが載っていました。それによると、愛知万博4万6000人、笹島サテライト会場3万人、セントレア8万6000人(航空機利用者含む)・・・。なな、ナント、あの「世界の万博」と名駅近くの「ポケモンパーク」を足してもセントレアに適わない?!?。セントレア強!、なんせ入場料無料やけんね。そしてJRと名鉄にはさまれた三角地帯の笹島サテライトで3万人、結構やるやん。

 名古屋以外の方は、あまりご存知ないでしょうが、名古屋駅から徒歩10分ほどのところに笹島サテライト会場というのがあって、子供にはポケモン館、若者にはエンターテイメント館、カップルには観覧車、おっさん連には世界の料理とビール、(注:もっと他にもいろいろある)、という、ややわけのわからない入場無料の催しがあるのです。「どうせ無料やし、子供だましやろうな」と思って出かけましたが、予想に反し、なかなかのモンでした。ショボイ感じはしないし、エスニックな食べ物屋や多いし、会場もわりに美しい、ちょっと万博に行った気になって得した感じ。観覧車も近くで見るとかなりな大きさ。今度はもうすこし暖かくなってから、ケバブでビールを飲みたい。「愛地球博」より、「あたしゃ無料博」やね、4600円はちょい高おまっせ。

 上の写真でおわかりのように、トビアス夫妻が来た時、あまり動きたくないので、名古屋城へ連れていきました。入場料が特別で1000円、ひぇー。いつもは500円なのに・・・。どうやら、金の鯱が、まだ地上にあり、それが金シャチドームという会場で展示され、触れるらしい。「しょうがないな、トビアスに特別プレゼント」と言って、入場券を買いました。
 私は初めての名古屋城。大阪城と同じで、コンクリートでエレベーター付。あんまりありがたくないけど、「戦争で焼けたのやから、仕方がない」と思いつつ、東京大空襲では昨年の巨大津波の犠牲者と同程度の10万人が一晩で亡くなったというのを思い出し、「爆弾を落とした国と一番親しいとは、うまく飼いならされてきたのかな」などとゴチャゴチャ考えてしまいました。

 アホな話にもどりますが、天守閣を降り、大道芸があったりする広場の奥に、金シャチドームはありました。中には様々なパネルで、金シャチの運命を紹介してあり、ぐるぐる回った末に、雄雌二体の金シャチがデーンと置かれ、そこを一列でナデナデしながら通るのでありました。トビアスの奥さんも「幸運をもらうんやね」などと、関西弁ではなく英語で、ニンマリしながら、触ってました。私的には、思ったほど大きくなかったけど、触って腹は立たなかったなあ。ああ、これで、正真正銘の名古屋人かしら・・・と、感慨深いものがありました。

 おすすめというほどではありませんが、笹島サテライトと金シャチ、どうか期待せずに行ってみてください。「期待は裏切られる」けど、「期待せずに行くと、きっと期待以上」ですよ。こんなことを言うと、絶対に期待するやろうなあ。


2005年3月
 目次
・次に鉋を買うなら・・・
・板目と柾目
・関西人の名古屋界隈事情--- 中部国際空港 ---

◆ 次に鉋を買うなら・・・ ◆

 写真の鉋は私が普段比較的よく使う鉋です。左上から仕上の寸八、小鉋、豆平、木口用一枚刃、面取り鉋、中央で縦に並んでいるのが際鉋(左、右)、右側上から、台直し二丁、反り台、豆平、小鉋、四方反り、反り台鉋というところ。最初からこんなに必要ではありません。ウチの生徒さんも刃幅50mmほどの小型の平鉋一丁で始めてもらっています。しかし鉋一台では無理がありますので、鉋に慣れてきたら次のような順で他の鉋の購入をすすめています。

  1. 小鉋
    面取り、木端、木口削り、曲面の外側削り等々、一番活躍するのではないでしょうか。片手でも持ちやすい大きさの二枚刃がよいと思います。
  2. 台直し
    真っ先に買ってほしい鉋ですが、慣れないうちは台の調整が難しいことも多く、ガラス板とサンドペーパーで代用する方がよいかもしれません。しかし、木工を続けるなら絶対必要です。本来は、台直しの台を直すためにもう一丁台直しがいりますが、まずは一丁で。
  3. 際鉋
    逆目対策で、左右、二丁必要ですが、使用頻度は格段に右(左ききの人は左)が多いので、だいたいは右一丁で間に合うでしょう。裏金の調整は難しいので、一枚刃でもよいと思います。
  4. 面取り鉋
    ちょっと高いですが、綺麗な面取りをするにはこれが必要。刃が切れなくなったら、左右に少し動かすと新しい刃の部分で削ることができます。

 以上の鉋があれば、直線的な家具を作るのは大丈夫ではないでしょうか。曲線加工ではと反り台や南京鉋がいります。反り台よりも南京鉋の方が使用できる範囲が広くて使いやすいように思います。

 鉋を買うとき、安物は避けたいもの。私自身は、二枚刃の鉋なら、裏金も鋼と地金で作られた鉋を選びたいです。このような鉋は下の写真のように、刃先が二層になっています。安物の鉋では裏金が単なる鉄板でできているものが多く、これでは逆目がとまりません。地金のついた刃を、職人がきっちり仕込んだ鉋、それが2000円ぐらいで買えるはずはありません。手間賃やお店のマージンを考えれば、小鉋でも最低5000〜6000円すると思います。


◆ 板目と柾目 ◆

 先日、ある生徒さんがタモの板を選ぶ時、柾目の板を好んでいたのを見て、二年前のロシア人の木工実習のことを思い出しました。ウチの工房で行われたこの実習、材料費もちゃんと頂いているので、上質な柾目のタモ材を用意していたのです。ところが製作後、実習の感想を聞くと、あるロシア人の職人さんが、「もっとダイナミックな木目の木で作りたかった」と言ったのです。

 日本人は障子を見慣れているためか、はたまた、真っ直ぐな線が好きなのか、柾目を良しとする方が多いようです。しかし、海外の方には、どうも板目や複雑な木目を好む傾向にあるように思います。北欧の家具というと「白木でシンプル」というイメージがあり、この辺り日本人の好みと共通しているようです。イギリスのオーク材アンティーク家具などは豪快な木目がいいようで、これは日本人のケヤキ好きとの共通点があるかも。

 柾目の板は、一般的には収縮や反り等の狂いは少ないですが、板の両側が芯側と表側になるため、乾燥が不十分だと長手方向に狂いが出る場合もあります。木目に面白みがないことがない場合が多く、柾目の鉋がけは板目よりも逆目が起きやすいこともあります。
 板目の板は、幅方向の収縮が大きく、また乾燥にしたがって、木裏が凸になるように反ります(人工乾燥材では室内の湿度によっては逆に動くこともある)。このために「木の動き」を充分に留意した構造にする必要があります。しかし、木目ははっきりとダイナミックで、鉋かけの方向もわかりやすいかも。

 どちらが好きかということも大切ですが、私的には、適材適所で、如何に材料を無駄なく使うかをより重視したいと考えています。昔から、職人さんの間で言われてきた、「見付に柾」とか「カマチは柾、鏡板は板目」などは、材の物理的性質と材料を無駄なく使うための原則なんだと、再認識しています。


 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 中部国際空港 --- ◆

 「セントレア」と言うのは、関西人の私としては、ちょい恥ずかしい。先日「南セントレア市」の名前が問題になっていたけど、こんな恥ずかしい住所を書くのは私も絶対嫌ですよ。「関空」、「成田」、そして「中空」・・・、中空はアカン、中身がない空しい響きや。「名空」は前名古屋空港になってしまうし、「愛空」もイマイチやし、なんかいい短縮呼び名がないものか。

 開港当初から、どえらい人が見物に押し寄せているらしい。「まるは食堂3時間待ち」とか、そんな状態、飛行機から降りた本当の利用者は、どう思うんやろ。聞くところによると、食べ物の値段もそれほど高くなく、人気があるとか。昔の伊丹空港なんか、食べ物が高くて、とても空港で食べる気にはならなったのに比べるといいとは思うが、飛行機に乗らない人が食堂を占拠してしまうのは、なんとかしてほしい。

 関空の時、また成田の時、こんなフィーバーがあったやろか。開港前に特にPRがあったとは思えない。どうして開港前からも名古屋人が多数空港見物に出向いたのか、これは大いなる疑問です。成田は、成田闘争という闘争の場であったために、観光ムードではなかった。関空はというと、関西人はわざわざ高いお金を出して空港まで行かない。名古屋人は、派手な結婚式で有名なように、新しい物好きな傾向があるのかもしれない。JR名古屋駅にタワーができた時も半年ぐらい、ドエライフィーバーしたらしい。

 「名古屋が熱い」と言われる。たしかに、大阪や神戸はなんとなく、元気がないようだ。しかし、熱いのはトヨタだけではないか。全てがトヨタで回っている、そんな妙な感じもする。万博もトヨタの近くだし、空港もトヨタである。もうすぐJR名古屋駅前にトヨタ本社ビルができる。名古屋で走っている車のほとんどはトヨタである(ウソ、けど半分以上という感じ)。

 そのトヨタさんが、空港に銭湯を作ったという。世界のトヨタが、空港に銭湯か・・・、ウーン意外にやるな。名古屋人だけでなく、日本人のお風呂好きをよく知っているのだ。こういう泥臭い商売が、世界のトヨタの基本かも。

ああ、突然ひらめきました。世にも稀な銭湯、銭湯レア・・・、セントウレア、セントレア


2005年2月

 目次
・ヤマハのフォークギターFG180
・腰痛に苦しんだ一月
・関西人の名古屋界隈事情--- 銭湯 ---

◆ ヤマハのフォークギターFG180 ◆

先月は腰痛で教室以外の活動はほとんどできず、木工関連情報がありません。そんなわけで、ギターの話です。

 写真のフォークギターはヤマハのFG180というモデルで、高校一年の時、アルバイトで貯めたお金で、買ったものです。定価18000円を、小さな町のレコード店に天井からぶらさがっていたもので、16000円にしてくれました。当時は一日8時間ぐらい弾いていた記憶があります。その後、JamesTaylorのファンになり、来日した彼がピックガードをはずしていたのを真似て、ピックガードをメリメリと剥がしてしまいました。このギター、マニアの間では超有名な「赤ラベル」と呼ばれるヤマハの初期のフォークギター。その中でも当時から名器とウワサがあった「イチハチ」です。これしか知らなかった当時は、そんなにいいギターと思っていなかったので、3年後4万円のK-YAIRIを買った時、従兄弟に貸出しました。その従兄弟があまり弾かないとのことで数年後に戻ってきた時、とんでもなくよく鳴るようになっていたのです。

 サラリーマンになってから、オベーションや憧れのマーチン等、海外の有名ギターを入手し、やがて弾かない時期が長く続きました。そして昨年、国産の手工ギター、スミさんのギターを手に入れ、またギターを楽しんでいます。これらの高級なギターに比べ、このFG180は、その音量で、また独特の持ち味で、負けていないどころか、優れているところが多々あるのです。オークション等でもこのギターは8万円以上で取引されているようです。音程はイマイチなところがあったり、ネックも反り易いので半音低めにチューニングしていますが、前へ前へと出る音は、おそらくどのギターよりも大きいでしょう。弦のビビリ音も、倍音を多く含んだ音色とあいまって、なかなかいい味を出しています。

 高級なギターの多くは表面板がスプルース単板(無垢)でできているのですが、これは合板です。合板ゆえでしょうか、補強のためについているブレーシングと呼ばれる桟のような部材が極端に細く削ってあるそうで、そのために大きな音がでるようです。サイド、バック、ネックはマホガニー。材料は高級ではありませんが、40年近くたった今、製造当時よりもよく鳴っていることに驚きます。良質な合板のギターは安物単板ギターよりはるかに良い見本です。
 TV番組でYairiギターの矢入さんが、「名器というのは、何よりもまず数十年たってもトラブルが起きない、強さを持っている」というようなことをおっしゃってました。本当にそう思います。初めからよく鳴っていても、年月を経たとき、壊れてしまっていては、名器にはなりません。まず長い年月、使い続けていける、しっかりした作りであることが、名器となるための一番の必要条件だというわけです。

 恥ずかしいながら、今ウチで使っている昔私が作ったダイニングチェアー、多くはホゾが緩んだりして、ガタがきています。数十年使うには、一度分解して強力な接着剤で組み立てをやり直す必要があります。その原因は、木の収縮、乾燥やホゾ組みの甘さ、木工ボンドのやせ等々、それらをコントロールできなかった私自身の木工のレベルの低さです。これから作る椅子は、このFG180を見習いたいものです。

◆ 腰痛に苦しんだ一月 ◆

 昨年末29日にクシャミでギックリ腰となり、大晦日にスタッドレスタイヤの交換で無理をしたのか、より悪化し、お正月に病院の時間外診療を二度も受けるという、ヒドイ腰痛で悩まされました。なんとか木工教室は実施できたものの、まだ本調子ではありません。21歳の時、椎間板ヘルニアの手術をして、腰痛には詳しいはずでしたが、今回再度腰痛について考えさせられました。木工をされている方は、冷えた工房で無理をしたりして腰痛の方も多いでしょうし、予備軍の方も多いと思います。そんな方々にお役に立てばと、腰痛予防や対策について自分の経験を書いてみます。

ギックリ腰になったら・・・
 たとえ動くことができても、少々大げさなくらい、最低3日は安静にすること。この時無理をすると、長引くだけでなく、手術が必要になることもあります。痛みの激しい急性期は、筋肉やじん帯等に炎症が起こっていることもあるので、患部を温めることはしないで、むしろ冷やす方がよい場合があります。温めた方がよいか、冷やした方がよいか、痛みの減る方向で臨機応変に。

 痛みがひどい場合、できれば大きな病院の整形外科を受診してください。痛みが長く続く場合、大腸癌などの重篤な内臓疾患の可能性もありますので、X線、MR、血液検査などがすぐに行える、ある程度の規模の病院を最初に受診されるのがよいと私は思います。重い疾患ではないことがわかれば、あとは好みに合わせて、鍼、整体、指圧など、東洋医学的治療も、よいでしょう。軽いものは痛み止め薬で痛みを軽減することで筋肉が硬直するのを和らげることができます。相性があるようですが、鍼で効果的に痛みが抑えることもあるそうです。
 数日たって、痛みがましになってきたら、安静にしつつも、無理のない範囲で、膝をかかえるなど、腰痛用ストレッチをします。この時期は充分に温めた方がよく、お風呂なども効果があるようです。

腰痛の予防
・とにかく、冷えないようにすること。カッコ悪くとも、パッチ(ズボン下)を早めに着用し、腰の不安を感じたら、臀部にカイロを貼って温める。ウチのカミさんの昔からの対処法ですが、これは効くようです。
・無理のない体勢で、腹筋、背筋を鍛える。
・歩く。私のようにどこに行くにも車が一番悪いかも。
・体の筋肉を一日一回は緩めるようにする。近頃の銭湯のジェットバスや電気風呂は効果があるように思う。
・腰痛予防の体操(本やいろんなサイトで紹介されている)を行う。
・心的ストレスや怒りが腰痛の原因であるという説もある。

書いている本人が一番予防方法を怠っていたわけです。木工家のみなさんも、どうかご用心を。

 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 銭湯 --- ◆

 神戸の下町で生まれた私、当時元町の三越近くにあった「摂津湯」という銭湯に毎日通っておりました。ここは神戸港の荷役の人達が多く、モンモンを背負った方もようさんおられ、兄はそんな方に熱い湯をかけて怒られたりしたそうです。その後、神戸市西部へ転居してからは、家に風呂があるので、銭湯とは無縁の生活に。しかし、元来大浴場が好きなのか、名古屋に来てからは、近くのスーパー銭湯に時々足を運んでおります。

 尾張旭では温泉みたいで人気の「やまとの湯」、近くでは少々設備が古いけど春日井の夜景が美しい「竜泉寺の湯」、これらは純然たる銭湯ではなく、いわゆるレクレーション施設的なスーパー銭湯。工房建設時に毎日通った「春日井温泉」は生活に根ざした銭湯です。広くて美しいスーパー銭湯はもちろんいいけれど、なんとなく落ち着きがないとも言える。一方春日井温泉は実に落ち着いた下町の銭湯。

 正月から上記腰痛に悩まされ、一番手軽に実行できる、銭湯通いを再開。春日井温泉にはかなり強力な電気風呂があるので、それとジェットバスでこりかたまった腰の筋肉をほぐす作戦。春日井温泉はごく普通の町の銭湯の顔をしている。一回券は380円だが10回券を3300円で購入。まずは、寝風呂で背骨の両側の筋肉にジェットをあてる。その間、電気風呂に人がいないかチェック。ここの電気風呂、刺激が強烈でファンがいるようである。夜同じ時刻に行くと、同じような面々がじっと電気風呂に入っていたりする。空いていたら、私の番。電極の間にソロリソロリとお尻を入れる。段々ビリビリしてくる。どうしても奥までお尻を入れられない。やや危険を感じるぐらい、強烈な電気刺激、ウーン。そこでじっと我慢の10分。あとは体を洗って、泡風呂で熱くなって、外の露天風呂で体を冷やす。ここの露天風呂は、面白い。銭湯の外壁の内側が垂直な庭になっており、そこに滝があって、下の滝つぼには大きな鯉が沢山泳いでいるのだ。私より少し年配の方が多く、皆さん、肩こりや腰痛で悩まされているのか、同じようなお風呂の入り方である。

 銭湯通いは健康にとてもよいと思う。神戸元町にいたころ、家族で銭湯に行き、「首までつかって50数えなさい」と母親に言われながら、顔が真っ赤になるまで体を温めていた。工房建設中は、毎日春日井温泉で冬でも汗がでるほど温まっていた。家のお風呂ではこうはいかない。特にウチのお風呂は、壁ではなくガラス一枚のお風呂、冬はまるで露天風呂のような寒さ。ただせさえ、体が硬直する寒い冬、一日に一度は、身体の芯から温まって、体中の筋肉を緩めるのはとてもいい。

 今温泉ブームだけれど、日本には昔から「湯治」という自炊で長期間温泉で生活する治療法がある。日常から離れ、温泉でのゆったりとした生活を一ヶ月もすれば、腰痛なんか簡単に治るのではないでしょうか。それが無理なら、近所の銭湯で時々のんびりと手足を延ばしてみては如何でしょう。


2005年1月

・2005年度展示会、木工教室作品展
・「週末工房2」
・関西人の名古屋界隈事情--- ETC嫌いもついに・・・ ---

◆ 2005年度展示会、木工教室作品展 ◆

 恒例の作品展ですが、今回は作品が少ないので、作品細部の写真を多くしてみました。家具をひとりで作っていますと、どうしても安全で楽な我流に流れてしまいます。そこで、去年後半、小さな図面をたよりに、カールマルムステン流のキャビネット作りをできるだけ忠実にしてみました。私自身の作品は少ないですが、実際には教室で多くの生徒さん達の作品にかかわっています。そこで、今年からこれらの作品も見ていただけるようにしました。木工教室の活動記録として、これから毎回残していこうと考えています。

2005年度展示会

木工教室作品展2004

◆ 「週末工房2」 ◆

 誠文堂新光社から、半年に一度の木工専門誌、「週末工房2」が発売されています。編集部の方から、”はじめてテーブルを作る時のアドバイス”をと依頼をいただき4ページの記事を書いております。やや個人的好みにかたよった内容ではありますが、書店でこの本を目にされましたら、一読していただければ幸いです。また、昨年10月に東京で行われました「手考会、作品展」の様子も紹介されており、私の扇形卓上小引出箱の写真も載っています。

 この雑誌、内容は「週末工房」という名前より、前の「木工房」の方が合っていると思うのですが、ぜひ細く長く続いてもらいたいと思います。地味でよいですから、雑誌に煽られるような内容ではなく、プロ・アマを問わず、木工に関係している人の情報源、あるいは交流の場になればと思います。

 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- ETC嫌いもついに・・・ --- ◆

ETCにはそっぽを向いていた私ですが、次のような理由で、導入してみました。

 要するに、割引が利用でき初期投資が一年未満で解消されると判断したわけです。「安い」に敏感に反応する関西人的性格の私、「ETC反対!」と言いつつ、恥ずかしいと思いつつ(^^;)、軽自動車にETCをつけました。イドサワという通販ショップで、P社ETC車載機がセットアップ料金込みで9000円、送料600円、計9600円也。

 実際に使えるまで結構手間と時間がかかりました。まずクレジットカード会社にETCカード(年会費無料)を申請。約一週間で届きました。通販で本体購入&セットアップ。代金を振り込み、車検証をFAX。ETC車載機の取り付けは自分でしたのですが、結構大変でした。電気に弱い方は業者任せが無難。私はヒューズから電源をとったのですが、カーショップで売っている分岐ヒューズがバカ高いので、今あるヒューズのプラスチック部分を削って、電線を半田付けした次第。もちろん、本体との間には1Aのヒューズをかましてます。
 「やっと割引が使えるぞ」と思ったら、5万円の前払いをするにはインターネット上で申し込んでから郵便でIDなどが届くまで約一週かかりました。いやはや、疲れます。思い立ってから、どんなに急いでも、二週間はかかるなあ。

 そんで、使ってみた感想は・・・、エヘヘ、便利でおます。もともと、セッカチな私、料金所での待ち時間がうっとしい。それがスイーッと通れますわ。でも、これは魔物でっせ。お金を払わないので、日本の高い高速料金の実感がないんでやんす。これ危ない、ワナや。

 軽自動車の高速代は普通車の2割引。それに前払いで約14%引き。それに深夜の3割引が加われば・・・、これはかなり安いでっせ。高速を利用するなら、軽自動車や。確かに不安はあるけど、スピードが出ないので左車線を80〜90キロで走ることになり、かえって安全という見方もできそう。軽自動車でETCゲートを通っているはあまり見かけたことがない。それもエエ気分でした。

まとめ

以上、ETC導入顛末でした。


2004年12月

・テフロンフライパン用木製ヘラ
・OZONEでの椅子展感想
・関西人の名古屋界隈事情--- 居酒屋 ---

◆ テフロンフライパン用木製ヘラ ◆

 最近のフライパンはほとんどがテフロン加工。このため、金属製のヘラというかコテが使えないので、長い間付属の木製ヘラを使っていました。しかし老朽化が激しいのと、「何本かあった方が便利」と家族からオーダーがありまして、重い腰を上げました。今まで使ったことがなかったクルミ材があるので、どんな木が知りたくもあり、クルミ材で作ってました。

 写真の右3本が今回作ったクルミ材のヘラ。中ほどの柄が曲がったやつは10年以上使ってきたプラム材のスプーン、その左はチェリー材のスプーン。左端は、カナダで買ったメープル材のトングです。どれも料理等で実際に使用しています。

 バンドソウと南京鉋が使えれば、短時間で作ることができますが、手鋸、ナイフ、サンドペーパーでも、それほど時間はかかならいと思います。私は一本30分で作ることができました。「30分で作って1000円で売ると商売になるなあ」と独り言を言ったら、生徒さんの一人が「そんなん300円で沢山売ってますよ」とのこと。でもまあ、自分で作ったクルミ材のヘラということで何となく愛着があります。バンドソウで大まかに形を整え、刃を多めにだした南京鉋で形を整え、あとは仕上の南京鉋をかけておわり。無塗装。サンドペーパーを使うと、洗って乾燥した時にザラザラするので、できれば鉋で仕上たいところ。

 余談ですが、下のトングはカナダで26ドルで買ったもの。バーニングペンでサインをいれてあってカッコいい。目切れのないよう注意して木取りをし、鉋で整えれば、この値段だと充分にやっていけるかもしれません。私を含め手作り家具屋は、家具は作るけど、意外とキッチン関係の木製品を作っていないように思います。椅子や机は金属やプラスチックでも使えるけど、フライパン用ヘラとしては、安全性を考えると、木製以外は考えられないのではないでしょうか。


◆ OZONEの椅子展-感想- ◆

 終わった展示会の話で恐縮ですが、新宿のリヴィングデザインセンターOZONEで11月に行われた椅子をメインにした催し、椅子好きの私にはとてもよかった。特に大好きなウェグナーさんの椅子やテーブルに思う存分触れたり座ったりできたのは最高でした。今まで多くの書物や展示会で彼の作品を見てきましたが、今回、じっくりと見させていただいて、あらためて、日本の家具と違うなあと感じてしまいました。どちらがいいとか悪いというのではなく、目指しているものが違うと感じてしまいました。感じた点をいくつか書いてみます。

いつか、この人の椅子やテーブルを越える物を作りたいですが、それはなかなか大変なことだと、あらためて思ってしまいました。

 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 居酒屋 --- ◆

 当方お酒は弱い方というか、缶ビールひとつで満足してしまう、超安上がりな人間です。「一晩飲み明かした」なんていう話を聞くと、「それだけ飲めるのはウラヤマシイ」のひと言。許容量をオーバーしたら、グデングデンになったり寝てしまったりするのではなく、気分が悪くなってゲーゲーするタイプなのでありますが、それでも、必ず晩飯の前にビールかお酒がちょっとほしいのです。やや西洋カブレの傾向がある私ですが、「居酒屋は日本が世界に誇るべき文化」などと、多少オーバーですが、思っとります。それで最近、各地の居酒屋情報を集め、足を運びだしました。

 そのきっかけは先日、東京で親しい刃物屋さん達と行った本所の小さな古い居酒屋。「まぐろ」「こはだ」と「豚肉と野菜のの煮込み」などを注文、それで一杯やったわけですが、「こんな古めかしい小さな店でどうして、こんないい中トロがでるの?」「この生っぽい、肉厚のこはだ、ええがな!」と実に旨いのでありました。こんなお店が名古屋にもあったらなあ・・・。というわけで、インターネットで名古屋の居酒屋を調べてみると、多くの方が「日本の居酒屋としてあるべき姿」とか書いている、伏見の御園座近くの「大臣」(仮名)という明治時代から続く老舗居酒屋を発見、先日大須に真鍮ネジを買出しにいったついでに寄ってきました。

 インターネットで調べていたから発見できたようなものの、実際のお店は暖簾がでているだけで、知らない人は素通りするような入り口。そこそこ広い店内には、55歳以上の男性客99%、そのウチ半数は一人で飲んでいるようでした。相席は当たり前、空いた席に座り、まずは「お酒」と注文。店主とおぼしきオジサンが大鉢に入った煮物などを小皿にとって、台の上に50個ぐらい並べている、それを勝手に取ってくるらしい。おかずを自由に取る「めしや」の居酒屋版やね。店の奥には冷蔵ケースにはいった刺身も並んでいて、オーダーもできるようでしたが、ほとんどのお客さんは、仕事が終わって、家に帰る、その「つかの間の楽しみ」みたいな感じで、220円の安いお皿3つぐらいで二合ぐらい飲んですぐに帰るような雰囲気、私も「イカの煮付け」「キザミアナゴ」「ヌタ」なんかを取って、飲み始めました。

 前に座っているオトウさんは、どうも教育関係者らしく、文庫本を広げながら、目が開いているのか閉じているのかわからない酔った顔で、しきりに携帯電話で、知り合いの先生に「こないだの講演、ありがとうございました。とても好評でした」などと連絡しまくり。文庫本も岩波文庫風で、「正しい教育者の時間外」を感じさせるものでした(^^)。次に入ってきた作業着のオジサン、現場監督でしょうか、まずビール、小皿を三枚ほど前に置いて、それからお酒二合。ウーン、これも正しい日本の働くオトウさんの帰宅前のお姿。ひさびさです、こういうオトウさん達の姿を見たのは。「やっぱいいなあ、日本のオトウさん」というほど、いいものではないけど、何かしみじみとしたものがありました。

 そうそう、言い忘れておりましたが、この店で単に「お酒」というと大きな木樽から、正味二合の大きな徳利にいれた美味しい燗酒がでてきます。あまり飲めない私には、これはちょいオーバーな量。しかし、ここで残して出るわけにはいきません。もう一枚、「ジャコおろし」の小皿をとって、40分ぐらいで二合、あけました。ウーン、私にはちょいスピードオーバーか、不吉な予感。一人で飲むとそんなに時間はかせげません。本日のお会計1680円を払い、一時間弱で店を出、めったにこない伏見の某ラーメン屋を訪問した後、家に向かいました。でも、なんか、気分がすぐれないなあ・・・。駅を降り、なんとか改札を通ったあと、予感的中。暗い路地でおいしいお酒をドブに流して、本日終了。ああ、もったいな。


2004年11月

・第4回木工教室作品展速報
・関西人の名古屋界隈事情--- 気象予報 ---

◆第四回木工教室作品展速報◆ 

 曇りや雨の日が続く天気ではありましたが、今年も教室作品展が無事終わりました。毎年、来場者はそれほど多くはありませんが、作品を前にお話をしていると一時間などあっというまで、展示会場に人がおられないことはほとんどありませんでした。運営・準備やPRにご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

 木工教室開設後5年目にあたる今回、「筆箱」、「スツール」、「引出箱」といった基礎コースの作品はもちろん、応用コースでの独創性に富んだ作品も含め、70点を越える作品が集まりました。展示準備では、全作品を展示するのが困難なほどの数で、やむをえず基礎コースのスツールや筆箱は集合陳列にしました。主催者が言うのはおかしいかもしれませんが、結構見応えがあったと思います。一年に一度、多くの人に作品を見ていただき、第三者の印象や評価を知ることができるこのような展示会は、より優れた作品を作り出すためにとてもよい機会になると思います。来られた方がどのような作品に興味を示されるか、またこちらから、木工として見るべきポイントを教えてあげたり、そういう交流が大切だと実感しています。

 なお、今回から各作品の記録を残していこうと思います。作者の皆さんの同意が得られれば、2005年度展示会として新年にHP上で公開する予定です。

 屋外では教室の加藤さんが恒例の足ふみロクロの実演および体験会を行いました。今年は念願の竹を使った「ポールレース」で、ゴムにくらべ、格段にいい感じでした。さらに、末松さん製作の日本式手回しロクロを、奥様と共同で回されるという、電気が普及する以前の夫婦ロクロ加工スタイルを復元されました。

 明治時代の中ごろまで、下写真のような移動式ロクロを使い、山を夫婦で渡り歩きながら、現地で挽き物加工をして器を作る、「木地師」という職業が全国にあって、政府の保護も受けたようです。また、産業革命以前のイギリスでは、森に入って、木を切り、細い木は蒸して曲げ、少し太い木は、四つに割って、シェービングホースとドローナイフで大まかに木取りをした後、足ふみロクロで、丸く加工し、太くて柔らかい木から、座をとり、ウィンザーチェアを作ったと聞きます。電気がなくても、人力、風力、水力をうまく使って、昔の人は木工品を作ったんですね。加藤さんの足ふみロクロも遊びの道具ではありません。足ふみロクロで作った彼の「木の器」がクラフトマーケットなどで売れているのです。練習次第で、人力は意外に実力があるようです。

一応削れます・・・(^^;)。

(写真撮影:深尾英邦、宮本良平  転載はご遠慮下さい)

 ◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 気象予報 --- ◆

 今年は本当に台風が多かった。各地で深刻な被害が多発しました。そして新潟の地震。地震の予知は難しいと思いますが、台風や大雨の予知は、ある程度は可能なはず。それが予想もしない地方で、想像を超える被害がでた。なんとかならなかったのか?

 明石海峡が目前に見える神戸市西部に、社会人になるまで住んでおりました。海が近いということは、それだけ、風が強いということ。毎年やってくる台風は、とても恐く、50歳を越えた今でも、私は暴風にたいしてある種のトラウマがあるんです。叩きつけるような風に雨戸が飛びそうになり、親父が出張で不在、おばあちゃん、おかあちゃん、おにいちゃんと4人で、必死に雨戸を押さえたことを鮮明に覚えてます。台風が去った後、近所には屋根が飛んだ家がいくつもあったのです。

 あの頃、「台風が来る」というと、前の夜からおとうちゃんは、板を十字にして大きな釘で、雨戸に打ち付けたりしておりました。テレビやラジオは、通常の番組を中止し、どのチャンネルを回しても、首からマイクをぶら下げた、堅物そうな気象庁のおじさんが、台風の進路や風力等について、「いかにも恐そう」な表情で、登場していました。文字放送とか、気象予報士など、ない時代です。子供ながら、「これから恐ろしい台風がやってくるんや!」というような緊迫感と覚悟があったように思うなあ。よく停電したので、何度かロウソクでお風呂に入ったのも、今となっては懐かしい。

 さて、この頃、気象予報士の資格をもった、「お天気おじさん」とか「お天気お嬢さん」が、台風の時も、「これから深夜にかけて、風雨が強まりまーす。台風の進路にあたる地域にお住まいの方は、今後の進路に充分ご注意くださーい」とか軽ーく、さわやかに言っておられます。そして、台風がさった後、「台風が予想よりも東よりのコースを進んだ理由は、太平洋高気圧の勢力が強く、そのまわりを回るように進んだからでーす」などと、解説されておられます。

 ん、んん、ちょい待てよ。気象予報士は、「予報士」とちゃいまっか。過ぎてしまった天気の解説なんか意味ないじゃん(なぜか関東風)。堅苦しい顔の気象庁のおっさんよりも、かわいい女性の気象予報士の方が、さわやかではある。しかし、それでは緊迫感がないのとちゃうか?。「気象予報士は、自分の予報に責任を持て!」とは言いませんが、少なくとも責任を肩に感じてしゃべってほしいと思う。アメダスの画面、衛星画像の解説、そんなもん、ちょっと勉強したら、誰でもわかります。それよりも「このアメダスのデータからは、この地方にどの程度の降水量をもたらし、流域の被害予想はコレコレです」というような、少しオーバーでもよいから、被害予想をしてほしいんや。それって無理やろか。

 インターネットで「伊勢湾台風」を検索してみたら、沢山のHPがでてきました。この台風、なんと死者・行方不明者は5000人を超え、阪神・淡路大震災を起こるまで戦後最大の記録だったそうです。今年の名古屋は台風の直撃はなく、幸い被害は少なかった。しかし、これだけ、情報があって、頭のエライ方が多いのだから、被害予想というか、その辺をもうちょいしっかりしてもらいたいと思う。今回の台風による災害、素人考えではありますが・・、もうすこし予報がしっかりしていれば、被害を少なくできたのではないでしょうか。ニュースを聞き漏らしていたかもしれませんが、豊岡や舞鶴に豪雨被害が出そうというような報道はなかったと思うのです。

以上、台風が恐い、神戸生まれの名古屋人でした。


2004年10月

・第4回木工教室作品展と手考会作品展
・就労契約
・関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋人気質 ---


◆第四回木工教室作品展と手考会作品展◆ 

 今でも「文化の秋」と言うかどうか知りませんが、秋は展示会のシーズンです。私の教室でも、上記案内のとおり、第4回木工教室作品展を10月29日、30日、31日に行います(29日の平日を追加しました)。教室では基礎的技術の修得はもちろん大切ですが、まずは「楽しむこと」を第一に考えています。スキマがあったり、鉋がうまくかかっていない作品もあるでしょうが、時間をかけて作った作品には、量産品にはない存在感と価値があります。さらに、自己満足で終わらない作品を作るために、多く人に見ていただきたいと思います。作品についての感想など、ぜひお聞かせ下さい。


 これに先立ち、「手考会」の初めての作品展が東京で行われました。「手考会」とは、東京の建具職人さんの工房で、刃物屋さんに集う研究熱心な職人さんや木工愛好家が、伝統的な手道具を使い、指物的木工を愛好している会です。優れた手道具の使い手である師匠に学びながら作られる作品は、レベルの高いものが多いです。最近はご無沙汰していますが、私も年に数回参加しておりましたので、一つ作品を出品しております。関東方面の方には、本格的な指物木工に触れるいいチャンスではないでしょうか。「本当にいいものは、機械だけで作ることはできない」、それがよくわかる展示会です。

◆就労契約◆

 「木工を仕事にしたい」という相談がよくあります。たいていは「木工をやりたいのなら、それを職業にする必要はない。趣味木工の方が、時間的制約もなく、すばらしい作品を作ることができる。収入を得るための手段として木工業はいいとは思えない」と答えています。でも木工をやりたいという気持ちの強い方の中には、今の仕事をやめて”憧れ”の木工家の工房に入る方もおられます。希望に満ちて入る人、しかし彼らを雇う側の姿勢には、かなり大きな幅があります。
 私は30才の頃、甘い転職をして半年で破綻した経験があります。この時に痛切に思ったことは、「書類で就労契約を交わすべきだった」ということです。少し場違いかもしれませんが、最低限、確認しておきたい事項等について書いてみたいと思います。雇う側にとっても、労働条件を決めておくことは、安心できるはずです・・・、普通の人ならば。「そんな堅苦しいこと言わないでも、食べるくらいはなんとかなるよ」と言われ、実際は「半年間タダ働きで米だけを支給された」というような笑えない話もあります。書類による契約や覚書をいやがるようなところへは、よほどのメリットがない限り、入らない方がよいと思います。

 こういう点を働く前に確認するのは実際には難しいかもしれませんが、職場に入る前しかそのチャンスはありません。ぜひ文書による条件の確認をお願いします。口約束はないのと同じです。

 その他、授業料無料の木工塾もあるようです。このような雇用関係にない工房でも、実際には小物の木工製品を大量に作る仕事をさせられる場合もあり、充分事前調査をしておくべきかと思います。授業料は無料であっても、食費と生活は自分持ちですから、大切な蓄えはあっというまになくなります。

ちょっと暗い話になってしまいましたが、これから「木工を仕事に」と考えておられる方の参考になれば幸いです。


◆関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋人気質 ---◆

 休憩時間、お茶を飲みながら、意味があるようなないような、関西弁でいうところの「しょうもない」話をすることが好きである。ある日、名古屋人気質の話になった。テレビ番組で、名古屋と大阪の繁華街に、タダのティッシュの箱を置いて様子を見るというようなのがあったらしい。それによると、大阪では人通りの多い繁華街でドンドンとティッシュを持ち帰る、それに比べ名古屋では表通りではなくならないけど人気のない裏通りではすぐにティッシュがなくなったとか・・・。

 「東京で安く泊まる」とか、「一番安く東京にいける方法」、そういう細かいお金にまつわる話題が好きである。大阪人は「これパチモンのローレックスや」とか言ったりして、「ニセモノを安く買った」ことが自慢になったりするおもろい人種で、私もこの手の人間です。これに比べ、名古屋人は、そういうバカらしい話には興味がないらしい。ホンマはめちゃ気にしてると思うけど・・・。

 ある販売スペシャリストの方が、「東京は理屈、大阪は値段で売ればよい。けれど名古屋人は最後まで買うかどうかわからない」と言われてました。最近知り合った自動車の営業さんも、「大阪から名古屋に転勤してきた営業の同僚、大阪に戻りたいと泣いてはります」と。大阪人は「もっとまけてえな」と散々値引き交渉はするけど、「よっしゃ」と言うたら、あとは金払いがいいらしい。一方名古屋では、契約して納車、残金の支払い時になって、「もうちょっとなんとかならん?」と言うたりするのだという。
 あくまで個人的感覚ですが、東京人は値札を見て気に入ったら買う。ややこしい値引き交渉なんかしない。関西は値引きというか、店員さんとの話や人間関係を楽しむところがある。大阪日本橋の電気屋街で値引き交渉をすると、時には「よその店で買うて!」と突っぱねられることもある。名古屋はどうか。ある名古屋生まれの方は、「自分の中に予算があって、それはトップシークレットだ」とおっしゃてました。やっぱり名古屋は商売がやりにくい土地柄かも。

 神戸生まれの関西人の私、商売の関係ではあっても、ヨコの人間関係であってほしい。「売ってやる」「買ってやる」ではなく、「同じ仲間や」みたいな意識を持つことができるような関係がほしい。そうすれば、気持ちよく売り買いができる。神戸という町は、昔から田舎から出てきた人の集まりのようなところがあったらしい。私の祖父は九州熊本の農家出身、祖母は播州の農家の娘、どちらも長男長女ではなく、町へ出てきて奉公しながら、神戸での生活を築いたという。だから、神戸はよそから来た人に比較的フレンドリーな町なのだと実家の母は言う。一方、名古屋は昔からの土地で長く続いてきた家が多いようで、京都に似て、やや閉鎖的かもしれない。武家の家系が多いのか”禅宗”が多いところも、庶民の宗教”浄土真宗”が多い神戸と異なるようだ。

 あるホームページで、全国の男女別県民性について書かれていました。それによると、名古屋の女性は、「地味で忍耐強く、経済観念が発達しているが、意外にミーハー願望がある」という。そして男性については「つきあい難さ日本一。本音も言わず、おだてにものらない。お金に細かく、貯蓄を愛する生活堅実派」となってました。ホンマかいな。


2004年9月

 目次
・刃研ぎジグ
・ルーターテーブル用スチール天板
・関西人の名古屋界隈事情--- 映画館 ---

◆刃研ぎジグ◆ 

 私自身、刃物を研ぐ際にジグを使うことはありませんが、生徒さんの丸くなってしまったノミやシノギ面が極端に長くなって鋭角になった鉋の刃を修正する時など、ジグがほしい場面があり、写真のジグを購入してみました。カナダの通販からですが、日本の木工通販経由でも入手できるようです。角度微調整機能が有名でお持ちの方も多いと思いますが、ジグを使うことの是非や、必要な場面について書いてみました。

 写真では、3mmほどの厚さの洋鉋の刃をセットしています。ジグとコンビで使う角度設定具は意外と便利でした。角度定規は自作可能ですが、角度を変えていくつも準備するのは手間ですし、ジグを購入されるならセットで買われた方がいいと思います。洋鉋の刃は、厚みが薄く一定しており、このようなジグに固定するには最適です。一方、日本の刃物は厚さが均一ではなく、裏面が少し凹面になっているので、角度を正確に再現するのは洋鉋のように上手くはいきません。研ぎは何度も繰り返して行うものですから、毎回研ぐ角度を正確に再現する必要があるのですが、ジグを使うと毎回刃の角度が微妙に変わってしまうのです。だから、本当にシビアな、仕上鉋のような極めて薄い鉋屑を出すような場合には、ジグを使うことはマイナスになります。

 実際にノミを研いでみたのですが、ジグが邪魔で、刃先の方に力を入れて研ぐことがむつかしく感じました。私は刃先の真上から指で押さえるように研ぐのですが、これがやりにくいのです。またどうしても、前に研いでいた角度と同じというわけにはいきません。このジグを使い続けるには、「鋭角に荒砥ぎした刃物をこのジグを使って刃先だけ30度の研ぐ」という研ぎ方になると思います。やはり刃が長い、厚さの均一な洋鉋の刃向けのものであると思います。また、刃先が斜めにならないように研ぐのにも、力の入れ方にかなり気を使いました。

 いろんな工房を訪問しましたが、今までジグを使って刃物を研いでいるところは見かけたことがありません。知人の元家具職人の方も「ジグだけは使いなさんな」と言われます。日本の刃物は地金が厚く、刃物自体が角度を決めるジグになるのです。時間はかかるかもしれませんが、刃物自体がジグになるような、要するに「まっすぐに研ぐ」という方法を習得する方が結局は近道です。砥石の面が平面であることの大切さ、刃先まで砥石に当っていることを見極めること、刃先に力が入るような研ぎ方、完璧な裏、等々、そういうポイントが身についている人は、通常の研ぎではジグは不要でしょう。

 慣れれば大抵はジグなしで研げるのですが、刃研ぎジグがあれば便利だと思われるのは次のような時ではないでしょうか。

 通常、ジグは大まかに刃先角度を決める時に使います。ですから、高価なジグではなく、ホームセンターで売っている安価なジグでも、充分ではないでしょうか。刃の両側から挟みこむタイプの方が広い刃に対応できるメリットもあります。また丸刃になる癖のある人は、ジグを使うとジグにずっと頼ることになります。どうか、自分で角度を保持できるように練習をしてください。横や斜めに研いだり、持ち方を変えたりして、試行錯誤をするうちに自分に適して持ち方・研ぎ方がわかるようになります。皮肉なようですが、初心者の方ほど、ジグを使わない方がよいと思います。

 参考までに、教室にこられているAさんがお作りになったノミ用のジグを紹介します。このジグの特徴は刃の裏を基準面として固定できることです。地金が斜めになっているノミでも金具で引っ張りあげるように固定しますから、刃の裏面はジグの上部の基準面に密着します。ジグから15mm刃先を出せば、刃先角が30度になるように設計されています。ステンレスのブロックから作られたこのジグはかなり重量があり、力を入れずに平らな砥石の上を動かせばOK。金属や機械加工の超専門家が製作されたジグですが、ご本人は「ダイヤモンド砥石で刃先の角度を決めるだけです」とおっしゃっていました。


◆ルーターテーブル用スチール天板◆

 

 今使っているルーターテーブル(写真右)は中学校で使われなくなった机の天板を使ったものですが、ルーターの重みで中央のプレートがやや下がる傾向がありました。それで、前々から良さそうと思っていたVeritasののスチール製ルーターテーブルトップをカナダから買ってみました。重いので上のジグなどとともに船便で取り寄せたのですが、それでも送料が60ドル以上かかってしまいました。大きいので荷物が二個口になっていたのです。私が通販で油を送る時は「一円でも安く」と工夫するのですが、そういう気遣いはしてもらえないようです。

 このスチール板の”売り”は「わずかに中央が凸になっている」ということです。定規をあててみると、長手方向に中央部が約1mm盛り上がっていました。しかし短手方向はほとんど真っ直ぐです。脚部は、取扱説明書のとおりに作っています。付属の1/2インチの丸棒をビットのようにコレットに固定し、これをテンプレートの穴に差し込むようにルーターを置き、両側から取り付け金具ではさみ、位置を決めて固定します(写真下左)。ルーターをテンプレートの中心に何度も調整できるこの方法は、ネジ止めでは真似のできないことです。

 約5kgのルーターをぶら下げても、流石にこの板はまだ上に凸の状態でした。そこに真っ直ぐなフェンスをクランプで固定すれば、ほぼ平面になるようで、中央が凹むということはまずなさそうでした。テーブル中央の赤いインサートは、下部が偏芯円となっており、回すことでしっかりと天板に固定できます。ただ、写真に写っている針金を曲げただけのインサート取り外し用レンチの具合が悪く、これだけは作り直した方が良さそうです。

 まだ本格的に使っていませんが、「センター位置調整ができること」、「重いルーターでも凹まない構造」、「スチール板で薄いことから短いビットでも大丈夫」というようなメリットがあるようです。取り付け金具を含め、鉄工所等で作ってもらうとかなりの値段になりそうですから、送料を含めてもそれほど高いとは思いません。またスチール板の穴あけや段欠き加工、ボルトの埋め込みなど、自作はちょっと難しいようです。しかし、今まで使っていた学校机の天板ルーターテーブルもかなり使い勝手がよかったので、それで充分という気もしています。

 

 

◆関西人の名古屋界隈事情--- 映画館 ---◆

 「映画館」という言い方からして古いみたい。もうかれこれ20年ぐらい、映画館へ行ったことがないような・・・。薬屋の営業職で四国を回っていた時、高松小さな映画館で、「楢山節考」を見て、暗ーい気分になったのが真剣に映画館で映画を見た最後かもしれない。子供と「東映まんが祭り」を見たことはあるが・・・。学生時代は、神戸元町にあった元映(今はない)や三宮のビック(今もあるんかなあ?)で、3本立ての名画をみたりと結構映画は好きだったのだ。社会人となり、家庭を持ちながらも転職を繰り返していた私には、ゆっくり映画を見るような精神的な余裕はなかったと思う。震災で壊れた、三宮の新聞会館大劇場なんか、中学生の頃からよくいった。2000人ぐらい入るような大劇場が満員で、「卒業」を立ち見したこともあったなあ。

 さて、先日娘が「華氏911を見に行こう」と言うので、三人で行くことに。名古屋近郊には、パチンコ屋さん併設の○○コロナ、とか、ショッピングセンターにひっついた○○シネマ、などという、施設があるらしい。インターネットで調べ、車で30分ほどのショッピングセンターにあるAシネマに行くことにしたのである。理由はレイトショー(最終上映をこう呼ぶらしい)は1200円、そしてナント、片方が50歳以上の夫婦はペアで2000円だという(^^;)。喜んでいいのやら、悲しんでいいのやら・・・・、いつの間に50歳を越えてしもたんや(涙)。私の映画人生は20代から51歳までタイムスリップ!。いやはや、いやはやである。余談だが、スキー場も55歳になれば、一日券が半額のシニア割引のあるところがあるそうな。喜ぶべきか???。

 夜8時のAシネマ、駐車スペースを探すのも難しいほど人がいる。そして、映画館へ入ると、「ええ、こりゃ、モントリオールの映画館のロビーといっしょやん」と思わずつぶやきました。映画を写すモニターが天井からぶら下がっており、チケット売り場の横には、ポップコーンと飲み物のお店、入り口横にはシネマグッズ、黄や青、赤のど派手な空間、どう考えても、これはアメリカやカナダの巨大ショッピングセンターの真似や。

 中段の指定席ゲット、そして入場。なぜかしら、お客の半分以上はポップコーンの入った大きな紙コップを持っている。と思ったら、ウチの娘もちゃんと同じように買ってました。サイズは小だという。ポップコーンの大はほとんどバケツでありました。まあ便秘には効くやろね。席にはちゃんとポップコーンをおく、ホルダーがあって、そこに小はきっちりはまります。大ははまらないので、小の方が安全。バケツのポップコーンをひっくり返したら大事ですよ。

 今時の映画館は小人数で見るのやということを知りました。小さなホールが複数あって好きな映画を選ぶんやね。知らんかった。そやからスクリーンが近いので、後ろの席の方が見やすいというのも知りました。中ほどの席でも端の字幕スーパーと絵を見るのが少々疲れました。なんか、知らない間に映画館の浦島太郎になっていた気分。

 最後に「華氏911」はどうだったか?入れ物の映画館は昔と全然違っていたけど、この映画のベースには私には馴染みやすい反戦思想がしっかりあって、見てよかったと思う。とくに政治に関心が少ない若い世代の人は見るべきだとおもった。最初からジーンとくる「禁じられた遊び」のようなストーリーのある映画ではないし、いささか反ブッシュの政治的偏りも感じられるが、マスコミで流される情報を鵜呑みにしてはいけないことはよくわかると思う。どの戦争でも、犠牲者は名もない若者や経済的弱者であり、ごく少数の「死の商人」である軍事産業とその関係者が私服を肥やすという構図だけは何時の時代も共通なのだ。アメリカ人犠牲者に焦点があたりすぎという感じはするが、このような映画を作ることができ、そして見ることができる自由な社会を大切にしたいと切に思う。



2004年8月

 目次
・木工師匠、Tage Frid
・ダボによる接合
・関西人の名古屋界隈事情--- 東海北陸自動車道 ---

◆木工師匠、Tage Frid◆

 アマチュア時代から今まで、最初の二年間ほど週一回木工の手ほどきを受けた後、海外の短期サマーセミナーに参加したり、いろんな工房を拝見させていただいたり、あるいは書物を手本として家具作りを続けてきました。木工教室で教えている現在でも、一番よく見ているのが、TageFrid氏の以下の本です。

Tage Frid Teaches Woodworking: Joinery Tools and Techniques ISBN 0-918804-03-5
Tage Frid Teaches Woodworking: Shaping, Veneering, Finishing ISBN 0-918804-11-6
Tage Frid Teaches Woodworking: Furniture Projects ISBN 0-918804-40-X
(現在は上二冊が合冊として販売されていますが、残念ながら三冊目は入手困難なようです)

 FineWoodworking誌の8月号を見ていたら、この著者Tage Frid氏が、数年アルツハイマーを患った後、2004年5月に亡くなられたという記事が目に入りました。彼は、デンマークから木工技術指導にアメリカに招かれ、ユーモアあふれる簡潔な教え方で卓越した合理的木工技術を多くの生徒に教え、また創刊当初からFine Wood Working誌の編集アドバイザーとしても活躍したようです。

 私が彼を知ったのは、インターネットが今のように普及する以前、rec.woodworkingというインターネットニュースのFAQで、おすすめの木工書として推薦されていた彼の本がきっかけでした。この本は図や写真が多く、英語も大変読みやすいもので、また今までの木工書では見たことがないような内容にとても興味を覚えたものです。例えば、”スキマができたときの直し方”とか、”ベルトサンダーでノミを研いでいる写真”、”テーブルソウでのアリ加工”、”薄板を接着して曲げるラミネーション”、”曲木のための蒸し器”、”さまざまな伸長式テーブル”、”木製車輪の作り方”、”タンブラードアの作り方”等々、プロレベルのデンマーク流家具作りの技術が、惜しげもなく公開されています。さらに、彼の本のいいところは、「ウソがない」というか、本の通りに作って、上手くできる確率がとても高いのです。日本の木工雑誌だけではなく、アメリカの木工雑誌の製作記事もかなりええ加減なものが多く、「初心者はもちろんプロレベルの人でもできない」あるいは「実際には上手くいかない」ような記事が多いのですが、彼の記事は、難しいところやその解決方法など、実際に即して正直に書いているように私には思えます。

 FineWoodWorking誌 No.146の80〜85ページに、”Professor Frid”と題する記事があり、彼の教え子の一人が書いたエピソードなどが紹介されています。それによると、彼の講義はデンマークの漫談を聞くような面白いもので、実際に道具を手にすると、あっと言う間に、完璧なタブテールを作る、職人肌の人だったようです。アリ組の接着ではクランプを使わずに当て木をして叩くだけ、型紙で椅子の脚のカーブを作るのに苦労していると「君の目でそれでよいと感じたら、それでOKなんだ」などなど、英語がもう少し読めたら、もっと面白そうな内容が他にも書かれています。彼は道具にはあまり興味がないようで、安物のノミを使い、今では世界的に有名な日本製のノコギリも、「繊細すぎる」と使わなかったようです。その一方で、自動鉋をかけた木の表面が如何に凸凹しているかを、写真で明快に示し、鉋がけ、もしくは丁寧なサンディングの重要性を説いています。

 私にとって、Tage Frid氏は、北欧の合理的木工の師匠。これからも彼の本からは多くのことを学ぶことになるはずです。外国ではどういうかわかりませんが、「どうか、ご冥福をお祈りします」。 

◆ダボによる接合◆

 日本で”ダボ”というと「安易な接合方法」というイメージがありますが、欧州ではハイレベルな家具などでも使われることが多い、大変一般的な接合方法です。最近は、ラメロに代表されるビスケットを用いたジョイントが、その使い方の容易さから、かなり広範に用いられるようになりましたが、どうしてもダボでないと無理な場面や構造はあります。今製作中のキャビネットで、ダボ接合を多用してみましたので、それを例として、ダボの使い方について書いてみます。

 ダボは「位置決め」が難しいために日本ではあまり普及していないと思いますが、以下のような方法があります。

  1. センターポイントを使う
    片方に穴をあけ、そこに中心に突起のある”センターポイント”という金属製のマーカーを入れて、相手の木に押し付け、位置をマークする方法。最近はホームセンターでセンターポイント入りのダボが売られているので、それを入手すればよい。位置がルーズになりやすいので、私はこの方法は使用しておりません。
  2. 釘を使う方法
    1.5mmぐらいの細いドリルでダボの中心となる穴をあけ、そこに頭を切り取った釘を入れ、センターポイントと同じように相手の木にマークを入れる方法。センターポイントと同様に位置決めが甘くなりやすいが、ケヒキなどを併用することによって、精度を高めることは可能。
  3. ダボ加工専用の機械、たとえば”横穴ドリル”を使う
    等間隔に、正確な位置に穴を開けるのには最高だが、日本ではこの種の機械は高価なうえに入手困難。
  4. 簡単な位置決めジグを使う方法
    ハンドドリル、ボール盤、ルーターなどを用いて、双方の木の同じ位置にダボの入る穴をあける方法。汎用性もあり、工夫次第ではかなり正確に穴をあけることができる。

 今回は、”4”の位置決めジグを使う方法の例をお見せします。単に穴をあける作業ではありますが、正確な墨入れや垂直な穴あけなど、注意深い作業と気配りが要求されますので、ある程度経験と知識がないと精度良い加工は難しいかもしれません。なお、私は横穴ドリルで元となる穴をジグにあけておりますが、ボール盤に位置決め用定規などを併用すれば、ほぼ同じ精度であけられると思います。

 正直なところ、私自身、納得のいくところまでダボ接合を使いこなしておりません。ここで示した例はあくまで参考程度に見てください。また、「こんないい方法あるよ」など、アドバイスがありましたら、ぜひよろしくお願いします。

8mmのドリルでジグに穴をあけ、それを注意深く材料に固定し、8mmの中心に突起のあるドリルを軽く叩いて、穴中心のマーキングをします。ここではジグをはずして、ボール盤で穴をあけましたが、ハンドドリルを用いてこのジグから直接穴をあけることは可能ですし、その方がよい結果が得られることもあります。この場合は、ドリルにスペーサーをはめるなどして、穴の深さが一定になるようにします。穴の深さはダボの長さより1mm強深くします。
ここでは、ジグの穴に直接ハンドドリルを入れて、10mmの板に6mmの穴をあけています。横方向の位置決めは、穴のセンターラインの墨をたよりにしています。
特に正確な位置決めや、木に反りがある場合、両側からジグを厚い合板で押さえるなどして、精度向上を図ります。
穴数が多いと接着は時間との戦いです。通常は片方にダボを入れ接着後、相手に接合します。ダボ穴の入り口は皿もみドリル等で、少し面を取っておきます。バリをなくし、また接着剤の逃げ場を作るためです。

◆関西人の名古屋界隈事情--- 東海北陸自動車道 ---◆

 二ヶ月ほど前、私が「これはワナや」と言うことが多いという話を書きましたが、今月はそんな冗談半分ではない真剣な話です。

 前々から、「東海北陸自動車道ってインチキや。あんなん高速道路ちゃうわ」と冗談半分によく言っておりました。かなりの区間が片側一車線の対面通行で、肝心なところは一般道を走ることになるからです。でも利用者はついつい「高い料金払てんねやから、飛ばさな損」とばかり、かなりのスピードを出すことに。「ここでもし正面衝突したら恐ろしいやろな」と通る度に思っていました。そうしたら、今回の悲惨な事故。その一週間ほど前にも同様の正面衝突事故があったばかり。事故関係者7名全員が死亡という痛ましい事故、トラックの過積載に原因があるというような報道が多い中、道路管理者・運営者の責任はないのでしょうか?

 あの事故のあった日、偶然私はカミさんと富山へ遊びに行くところでした。もともと高速代をケチって一般道を走る予定でしたが、ラジオではあの事故で通行止めが報じられておりました。「一般道もかなり混むやろな。41号へ逃げる方がいいかな?」などと思っていましたが、車はスイスイ走ります。そして事故地点の近くでは、東海北陸自動車道の渋滞を横目で見ながら、実に快調にドライブできたのです。なんと、私の車の前後にはほとんど車が走っていないのでした。

 山奥深く、そこに大きなトンネルを何本も掘り、予算が足らないせいか、片方一車線でフライング開通。そもそも、一般道がこれだけ快適に走るのに、こんなに費用がかかる道路を作る必要がどれほどあったのか。トンネルや高架橋の莫大な建設費用、それに比べれば山間部の細い道路の拡幅工事や防雪工事の費用はほとんど無視できるほど小さいものではないだろうか。

 北陸道でも開通直後の片側一車線対面通行があった時は大きな事故が多発したという。それでも東海北陸自動車道も同じように開通させた。欧米の人なら、絶対道路管理者に対する責任を追及すると思う。日本ではマスコミでさえ、この責任問題を口にしない。名古屋界隈事情ではありますが、日本全国にこういう危険な道路、いっぱいあるのとちゃうやろか。


2004年7月

 目次
・注文家具屋失格
・使い捨てスポンジ刷毛
・関西人の名古屋界隈事情--- ラーメン屋注意報 ---

◆注文家具屋失格◆

 6月中旬、東京の新木場にある、つき板で有名な「北三」を見学しました。世界各国から銘木と呼ばれるような貴重な木を仕入れ、世界に誇る切断技術で、コンマ何ミリという薄板を作りだし、それを合板に貼り付けたりして、様々な製品を作っている会社です。原木を置いてある千葉の広大な材木置き場には、それらをスライスしたつき板の膨大な在庫がありました。新木場の展示場には、直径70cm以上の丸太の0.3?mmの輪切りがあったり、私が毎日使っているような無垢の木の世界とはまた違う世界を見させていただきました。つき板を単に化粧板と考えると、「安い材を高級材に見せる」ことがメインとなってしまい、どこか嫌味に感じてしまいますが、そうではなく合理的な構造の表面材と考えると、あたりまえかもしれませんが、別の見方ができるように思います。

 無垢の木が本物で、つき板はニセモノ、そういう偏った見方をしていた時期があり、その頃は「無垢の家具」というだけで価値があると思っていました。でも無垢の家具は重いし、狂うんですよね。特に見た目より材料が沢山必要な、キャビネットでは、無垢でない方が具合がよい場面は多いと思います。注文を受けるのにあまり熱心ではない私のところにも、時々お客様が来られます。例えば「キッチンアイランドを作ってもらえますか?既製品にちょうどのものがないので・・・」とお若いご夫婦が来られたとき、まず「一品物の製作となりますと、最低でも半月ぐらいはかかります。材料費以外にどんなに安く見積もっても、2万円X製作日数程度は必要ですから、トータル30万円はかかりますよ」と申し上げる。「そんなにかかるんですか?」、でサイナラ。というパターンになるのがほとんどです。一方、つき板を使う家具、フラッシュの家具を専門に作っている会社で、ある程度の規格に収まる家具であれば、より短い納期でもう少しお安く作ってもらえるかもしれません。特に、キッチンのように水気を使い、手荒に扱われることの多い場所では、ドア交換なども容易な、ノックダウン式家具の方が、便利でよいように思ったりします。

 無垢の家具、特に椅子やテーブルはどうか?あるメーカーが作っている、節のある木を大胆に使った家具、これが売れているらしい。たしかに、木工屋の私でも、「結構ええやん」と心の中でつぶやいたり・・・。技術や設備は一人の工房よりはるかに優れていますから、木の質感を楽しめるこのシリーズ、かなりお値打ちではないかと思ってさえいます。
 椅子はどうか。これまた残念ながら、専門メーカーの作る椅子は、すわり心地や耐久性等、実用面では全て、いわゆる「手作り木工屋」の作る椅子より優れていることが多い。正直なところ、上に写真を載せている私のAmstackですが、カッコはいいけど、体格のいい若者が、グラグラとゆすりながら座ったら、半年ほどで壊れるのではないか(涙)。スタッキングを可能にするために、かなり無理をしているからですが、有名なシェーカー教徒の椅子なども、禁欲的な教徒が行儀良く座るから壊れないのであって、椅子の上に立って物を取ったりしたら、寿命は短いものと思います。

 「そんなんいうたら、ワシら木工屋はどうしたらええんや?」と文句を言われそうですが、同じ土俵で勝負しないようにするしかないのではと思います。材料をふんだんに使った民藝風、壊れそうなほど繊細なラインの家具、木のスプーンなど機械が使えない分野、天然木一枚板のテーブル・・・、まだ他にあるかもしれません。私が好きな北欧家具のようなシンプルなスタイル、実はこういうのを好まれる方の年齢層は低くて、購買力が弱い場合が多い。そして、モロに家具メーカーとバッティングする領域なんですね。また一枚板系は最近材木屋さんが乗り込んでますから価格面で対抗しにくい。民藝的な家具は、顧客確保に独特の人脈が必要そうで、新規参入は難しい?

 「家具作りを仕事にしたい」という方がまた最近よく来られます。家具作りは楽しい。でも、何度も言っていますが、職業としては慎重に考えてほしい。技術力のある日本の家具メーカーが、若い人たちがほしがっているデザインなりトレンドにうまくヒットした作品を作りはじめている昨今、その辺りの現状をよりしっかり見る必要があります。大手家具メーカーは、能率を上げるために基本的に分業制であり、一日同じ作業をするというような仕事内容にならざるをえません。中には少人数で、一つの家具を一人が最初から最後まで作る家具会社もあり、技術や経験を身につけるにはいい職場になるかもしれないけど、人間関係や雇用関係の不安定さを伴う場合が多い。もっともその前に、日本の家具メーカーは、大なり小なり安い外国製品に押されて、苦しい経営を強いられています。なかなか、全て満足な職場なんてありません。

以上、お客さんに「大手家具メーカー製のメリット」をアドバイスしている、注文家具屋失格者の戯言でした。

◆使い捨てスポンジ刷毛◆

 ウチではオイルを塗って仕上とする場合が多く、塗装の際には木っ端とスポンジで作った自家製使い捨て刷毛をよく使います。作り方をお教えするほど、難しいことはないのですが、何かの参考になればと思います。

 スポンジは、パソコンの箱のクッションや、椅子用スポンジの余りなど、捨てるものを利用しています。どんな硬さが良いかは、ホームセンター等で売られている使い捨てスポンジ刷毛を触って調べておくとよいでしょう。作り方は写真のとおり、実に簡単。スポンジをカッターで切って、切れ目を入れ、柄となる木の薄板を差込み、タッカーを打ち(机の穴の上などで)、裏に飛び出たピンを叩いて折り曲げ、ハサミで形を整える、それだけです。

 刷毛を洗うために溶剤を使うより、廃物利用の刷毛を捨てる方が、よいように思います。ただし、溶剤によってはスポンジが溶けてしまうことがありますので、植物乾性油のような、比較的乾燥が遅い塗料でしか使えません。



◆関西人の名古屋界隈事情--- ラーメン屋注意報 ---◆

 ラーメンブームもやや下火と思われる昨今、うちの近所では、一見「うまそうな」ラーメン屋がぞくぞくとオープンしています。それらの店に共通する点は、ロードサイド、黒いエプロン&バンダナ、「○○氏プロデュース」、サイドメニューの充実、高価格バリエーションメニュー、アルバイト&パートさんの元気よい接待、などなど。麺好きの私としては、近くにいくつもラーメン屋ができることは楽しみでもあり、一回は食べに行きました。

ところが、どうしても「ラーメン屋注意報」を出さざるを得ません。いや「ラーメン屋警報」が必要かもしれない。

 まず、これら後発の店の多くは、ラーメンブームに便乗、外食産業が時流に乗って作った店で、そもそも、「うまいラーメンを売りたい」ではなく、「儲けるために作る、うまそうなラーメン屋」なんです。流通業に一時期身を置いた人間ですので、やや専門的な言い方になりますが、要するに売り上げを上げるには「客数を増やす」か、「客単価を上げる」、この二つの方法しかなく、うまそうに見せてお客を呼び、店に入ってからは、なんとなくサイドメニューも注文してしまうようなワナが巧妙に仕組まれているわけです。そして、原価をできるだけ切り詰める。

 余談ですが、カミさん曰く、私はよく「これはワナや!」というらしい。「ワナ」発言が多いのは、高校時代に学園紛争があり、そのとき、訳もよくわからないまま、「受験体勢反対」、「ベトナムに平和を」とか、「成田空港建設反対」などと叫んでいる友達がいたりして、政治家やマスコミ・企業の言うことは鵜呑みにせず、その裏側に潜む戦略に気づかないといけない・・・、そういう思考回路が身についているからなんです。
 何にでも「ワナや!」と叫ぶのことは良いことは思いませんが、それにしても昨今の政治、あまりに批判勢力の力が弱く、政府の思ったとおりに進みすぎの危険性を感じてしまいます。私は昔で言う「ノンポリ」、どちらかというと政治無関心派ですが、ワナのような巧妙な仕掛けではなく、意図丸見えで、それでもスンナリと外国への派兵が決まってしまう、それはとても恐ろしいこと。なんとかせなアカンと思うこの頃です。

 すんません、脱線しました。ラーメンに話をもどします。外食産業が作った、一見うまそうなラーメン屋であっても、それなりに美味しければ結構です。しかし、味が評価できるレベルではないんです。好みの違いとかでは説明ができないほど、味がばらばらで具のハーモニーがない。さらにラーメンが少なめなので、ナントカご飯などをつけて、1000円ぐらいになってしまうんです。そう、この手のラーメン屋さんの目標は、客単価1000円です。このために、600円〜800円のラーメンと250円〜400円ぐらいのサイドメニューが、なんとなくオーダーしてしまうようになっているのです。例えば、私、入ったお店で、博多トンコツラーメン550円、替え玉100円、明太子ご飯300円、これで950円、消費税込だとちょうど千円ほど、見事にワナにはまってしまいました。食券制もこの手の店には多い。常連ならいざ知らず、券売機の前では5秒ぐらいに間にメニューを決定せねばならず、メッチャあせります。その時、後ろに人が並んでいたりすると、なおさらで、3秒ぐらいで決めなあかんと、気の小さい私なんか、冷や汗ものです。この時、なんとなくカッコつけて、一番安いラーメンではなくちょっと高いのを選んだり、サイドメニューも買ってしまうんですね。これもワナか?。

 結論ははっきりしています。美味しいラーメンは、夫婦+アルファぐらいで小さく商いをしている店でしか味わえません。味に好みはあるでしょうが、それでも主人が「これを食べてほしい」と作っているラーメンには、まず大きなハズレはありません。そういうお店は、仰山客が来ても対応できないので、あまりに大きな看板とか、回転ライト、垂れ幕などはいらないのです。そして、何台も入る広い駐車場を確保する余裕も必要性もないわけです。
 焼肉屋さんやパチンコ屋さんの敷地内、以前別の外食産業の店がラーメン屋になったところ、地代が高そうな交差点の近くなどに、いかにもうまそうな、いかにも老舗そうな、そういう垂れ幕や看板がかかっている店、要注意です。少なくとも私のようなワナ嫌い人間は入るべきではありません。カッコばかりで、心のこもってないラーメン、それを食べると、精神的ショックが非常に大きいのです。みなさん、ご用心を。


2004年6月

 目次
・「第四回暮らしの中の木の椅子展」選考委員講評会
・デルタバンドソウ、タイヤ交換
・充電ドリルドライバー
・関西人の名古屋界隈事情--- のぞみは望み?なのか ---


◆「第四回暮らしの中の木の椅子展」選考委員講評会◆

 5月13日新宿OZONEで上記椅子展の選考委員講評会があり、それに参加してきましたので簡単にレポートします(敬称はすべて「さん」に統一させていただきました)。耳で聞いたことを思い出して書いていますので、実際の発言内容と食い違う点も多々あると思います。この点、ご理解下さいますようお願いします。

 当日出席された選考委員は、木村さん、長さん、島崎さん、織田さんの四人、宮本さんは欠席でした。初めに、各委員から全般的な感想がありました。「技術レベルがあがり、”無難”な作品が多いのは良いが、反面面白みに欠ける感は否めなかった」というような発言が多かった。他に「過去の入選者の、見た目にはほとんど同じ作品が再入選しているのには首をかしげる(長さん)」とか、「私が教えている大学の学生の作品が9点も入っていて公平さに疑問を感じる方がいると思うが、私自身は工房へ入ったことがなく、作品を事前に知ってはいない。(織田さん)」というような発言もありました。
 その後、組み立て椅子の構造や動きがわかりにくいので、5脚ほどを会場から移し、それらの分解・組み立て実演がありました。長さんは、ある作品について「こんな面倒な組み立てを普通はやらない。製品としての椅子作りではこんな馬鹿なことに労力を使わないでほしい」というようなコメントもありました(笑)。

 質疑応答は少なかったのですが、出品者の一人から「リデザインについての考え方」を問う質問があり、このことには選考委員の方もさらなる議論の必要性を述べられていました。過去の入選作とよく似た作品がいくつかあったことから、選考委員の方が前々から「リデザイン」を叫ばれたことに対し、その意味する内容をもっと絞り込む必要を感じられたのだと思います。たとえば、接合部分等の細部の改良はリデザインとは言わず、一つの椅子をさらに良い物にする過程で、新しいテイストの椅子が生まれる、そういうのをリデザインと呼びたいというように私は受けとりました。

 参加者は今までに比べ、私のような年齢の参加者は少なく、20代、30代の方が多かった。また、参加者の様子からは、選考委員のおられる大学の教え子、あるいは教え子が別の教育機関で教えられ、その教え子(孫教え子?)というような教育的なつながりを感じる機会が多々ありました。

 最後に私の率直な感想を述べさせていただくと、皮肉っぽい言い方になりますが、「暮らしの中の木の椅子展」というよりも、「選考委員のための木の椅子展」という感じがしました。この椅子展に限らず、審査員が作品を選ぶコンペという選考方法では仕方がないかもしれませんが、「審査員の好みに合わせて作る」ことが入選するための条件ということを、より強く感じてしまいました。

◆デルタバンドソウ、タイヤ交換◆

 デルタ14インチバンドソウ、もうかれこれ10年近く使っています。この頃、なんとなく音や振動が大きくなったような気がして、この機会にゴムタイヤを交換することにしました。

 WoodCraftなどで最近は「ウレタン」のタイヤが売られているようですが、送料を考えるとそれほど安くはないため、デルタ日本代理店のリ○ロスさんで購入しました。純正パーツだから仕方がないと思うのですが、見た目は単なるゴム輪が一本3700円(涙)。
 最初BandsawHandbookを参考に取り付けましたが、妙に振動が出ました。よく見ると、ゴムの厚みが一定でないために振動が出ているようです。タイヤをはめる時、一箇所をクランプで固定してはめたために、クランプ近くではゴムが伸び、薄くなったようです。このため、再度はずして、痛いけど、手で引っ張りながら、タイヤをはめました。

 ウーン、正直なところ、タイヤ交換の必要性があったかどうか、よくわかりません。確かにリムが初期のように中高になってはいますが、古いタイヤでもまだいけたような気がします。バンドソウの振動を少なくするには、タイヤの外周の精度が大切ですが、それにはやや不安が残るゴムタイヤの精度、ところどころブツブツがあったり、タイヤ幅も不均一でした。もし、日本製のゴムタイヤで、14インチバンドソウに使えるような製品をご存知の方おられましたら、教えてください。

◆充電ドリルドライバー◆

 先日、10年選手のP社製充電ドリルドライバーが木工教室実施中についに昇天しました。以前からすぐに電池がなくなる傾向があったので、電池が悪いと思っていましたが、分解してみると、磨耗したブラシの小さな破片が見つかったので、ブラシがなくなったと思われます。ところが、この機種ではブラシの交換ができないのです。メーカーに補修を依頼した場合は、モーター交換になると思われ、古いモデルでもあり新規購入の方が妥当と判断しました。

 翌日の木工教室で電動ドライバーがないと困るので、日曜の朝大急ぎで9時に開店するホームセンターに行き、とりあえず安売りのR社のAC電源ドライバードリルを買いました。ややコードが短いですが、室内ではこれで充分使えそうです。しかし、一度コードレスに慣れてしまうと、コード付きがなんとも不便。それで、週明けに前々から買うならコレと決めていた、M社の電池スペア付充電ドライバーを通販で購入しました。充電器、スペア電池二個、本体で購入価格35200円でした。というわけで、写真の4つの電動ドライバーの印象をレポートします。

写真左から順にコメントします。

P社製充電ドライバドリル(今回昇天したもの)
 9.6Vで1.4kg。軽量でバランスがよく、使いやすい。個人で5年、教室で5年弱、計10年ほど使用。趣味の木工ならもっと長期間使えるだろう。ただし、電池のスペアは3年に一度程度購入しなければならなかった。

R社、電動ドライバドリル
 ホームセンターの安売り(3900円)。安心して使えると思うが、コードはあと1m長くしてほしい。ただし、充電タイプに慣れている私にはバランスが悪く感じた。下穴と締め付けのように、電動ドライバとドリルの二台がほしい場面はよくあるので、予算がない場合、AC電源タイプをひとつ持っておくのはよいと思う。電池トラブルの際にも重宝するだろう。

P社製充電ドライバドリル9.6V
 上のP社ドリルの電池が三つと充電器もあるので、それらを使える本体を追加購入した。近所の道具屋からの取り寄せ、13500円で購入。旧モデルよりもより持ちやすく、軽い感じがする。女性だけでなく、手の小さな男性にもおすすめ。ただし、ブラシ交換はできないので、プロユースなら、M社やH社等のブラシが簡単に購入交換でき、入手も容易な機種を選んだ方がよいだろう。

M社 充電ドライバドリル12V
 大工さん等本職むけの製品。外部からモーターのブラシが容易に交換可能で、フィードバック回転数制御機能をもっている。キーレスチャックのロックがややわかりにくい。グリップがやや大きく、女性には使いづらいかも。使用感と耐久性についてはこれから検証したい。12Vのハイパワーであるが1.6kgと少し重く、家具製作には9.6Vの軽いものでよいように思う。どちらかというと建築用。

 充電電池の寿命は意外と短い。このために充電工具のランニングコストがかなり高くなる。だからメーカーやお店は充電工具を売りたがる。しかし、コンセントが近くにない建築現場等では”コードレス”は必需だが、屋内で使う場合にはコード付AC電源の工具に慣れておく方が得策ではないか。また、ホームセンターで売られている格安製品は、壊れた時の補修部品入手や修理、また不満があった時の買い替え等で、逆に高くつくこともある。廃棄にコストがかかる昨今、多少高くてもブラシの入手が容易、かつ自分で交換可能な製品を選ぶことの大切さは知っておきたい。

◆関西人の名古屋界隈事情--- のぞみは望み?なのか ---◆

 5月中旬、久々の東京出張、といっても自営業の自腹出張。いつものように近くのJTBで「ぷらっとこだま、下さーい」と言うと、「行きも帰りも席がとれましぇーん!」と冷たい返事。「ひぇー、ぷらっとの切符が買えないなんて・・・」、予想しない事態におののき、一時パニックに陥った私でした。今回はカミさんと東京見物も兼ねての出張なので、どうしても指定席をとりたい(以前東京まで立ちっぱなしでブーイングの嵐だった)。そんで仕方なく、金券ショップで新幹線の指定席回数券を買って(10500円だったかな?)を買って、JRの駅で「のぞみ」の指定をとりました。

 ”ぷらっとこだま”というのは、飛行機との競合がない名古屋東京間では、唯一と言っていいと思うが、実用になる格安切符。その理由は”団体扱い”にある。だから、指定した列車にしか乗れない、乗り遅れたらパー。また名古屋駅と東京駅でしか降りることができない。全ての駅に停まるので東京まで3時間かかる。しかし、ドリンク券がついていて、私の場合、行きはコーヒー、帰りは缶ビールが飲めるのである。7900円という値段が安いか高いか、わからないけど、サラリーマンなら、これでちょっと出張費が浮くはずである。

今回、この「ぷらっとこだま」が買えなかった理由を推論すると・・・
1、5月中旬というと新入社員の研修時期であり、出張費を浮かそうとするサラリーマン一年生が多かった。
2、新幹線のダイヤ改正により、自由席回数券の値段が高くなって、うまみがなくなったために、ぷらっとの人気が高まった。
3、JRの陰謀により、ひかりやのぞみが使える東京名古屋間のぷらっと発券数を少なくし、運賃収入アップを狙った。
4、JTB、JR東海の旅行社サイドが、儲けの少ないこの商品の取扱をしたくない。
以上のような複数の可能性がありそう。

 それはともかく、私とカミさんは、生まれて初めて「のぞみ号」に乗りました(エヘエヘ)。正直、メチャ快適。ノースウェストのアメリカ便なんか、ホンマに窮屈やけど、これは余裕で脚が組める広さと静かさ。無神経と悪口を言われた車内販売も、今は非常におとなしい。子守唄のような小さな音楽を鳴らしながら、蚊の鳴くような声で「お飲み物は如何ですか?」と実にお上品。ようやくスウェーデンのX2000のような、静けさのある車内になったように感じた次第。一時間40分ほどで東京に着く、ホンマに速い。ぷらっととエライ違い。

 だが、待てよ、10500円-7900円=2600円。それに缶ビールもない。ウーン、JRの陰謀にまんまと引っかかったのか、悔しいような、それでいいような。泊まった神田のホテルで「近くに金券ショップありますか?」と聞いて、教えてもらったJR神田駅前の某金券ショップ、なんと同じ名古屋東京の指定席回数券が10070円で売っていた。これでは全然儲けないはずやけど、いろんな裏道があるんかなあ?。こうなると10070円-7900円=2170円。東京都内、名古屋市内は無料やから、400円ぐらい差し引くとその差1700円程度。これで一時間早くて缶ビールなし、しかし乗り遅れても心配ない。悩むなあ。

 とりあえず、次回東京に行く時は、行きはぷらっと、帰りは金券ショップの指定席回数券かなあ。名古屋と東京間の交通費が約一万円。これって、仕方ないんでしょうかねぇ????。安いとわかっていても、流石にこの年になると夜行バスは遠慮したい。JRの殿様商売に腹が立ちつつも、エキスプレスカード予約で安く便利に新幹線を利用しようと、クレジットカードの見直しをしている軟弱な私でした。


2004年5月

 目次
・NY木工事情、ちょびっと見て歩き
・大舘さんの本
・関西人の名古屋界隈事情--- 信州上田から蕎麦を考える ---

◆NY木工事情、ちょびっと見て歩き◆

 4月上旬、昨年に引き続き、NYとモントリオールに行ってきました。NYは二回目ですので、今回は木工関係の工房やショップを見てまわろうと準備をして出かけました。英語で日本の刃物や指物の本を書かれているToshio Odateさんにブルックリンの学校でお会いし、授業も拝聴させていただきました。知人の紹介でSOHOのど真ん中に工房をもつJimさん、またアーティストが集まるブルックリンDUMBO地区のビルに工房があるCityJoineryも訪問することができました。その他、カナダでの手作りディナーなどもレポートしました。

 現地にいる時は「NYは二回でもうええか」と思っていたのですが、帰ってくるとまた行きたくなるようなところがあります。大都会ではあるのですが、どこか田舎臭い、そこが自分には合うようです。NYの象徴みたいなミッドタウンはあまり興味がなく、ゴチャゴチャした生活観のある地域が面白い。東京では浅草方面、大阪では新世界あたり面白いと感じる私、NYの下町ブルックリンに滞在してNYにすむ様々な国籍の人のひたむきな生活を感じることが好きなようです。

NY・カナダツアー2004

◆大舘さんの本◆

 NYブルックリンでToshio Odateさんにお会いするまで、お名前を知っているだけで、著書をじっくり拝見したことはありませんでした。「日本の道具について書かれているのだから、日本に住む私は読む必要がない」と思い込んでいたのです。しかし、大舘先生の講義をお聞きし、また日本の道具についてのご意見を聞いて、アメリカで日本の道具、それも精神的な領域まで踏み込んだお話をされているのに驚き、あたらめて代表的な二冊の著書を購入してみました(日本のアマゾンで購入可能)。学校で教科書としても使われていた"Japanese Woodworking Tools"(ISBN 0-941936-46-5)、と"Making Shoji"(ISBN 0-941936-47-3)です。

 「ぜひ、これを日本語で出版してほしい」、これが正直な感想です。日本では職人の世界は閉ざされたものであり、その技術は秘伝みたいに扱われることが今でも多い。そのタブーをこれらの本は、打ち破ろうとしています。もちろん、本を読んだだけでシビアな鉋の研ぎと仕立てができるとは思いません。しかし、少なくとも、それを伝えようとした試みは、大変貴重です。時には、西部劇の中に登場する忍者を見た時のような、日本人としてちょっと恥ずかしいような感覚を持つ部分もありますが、日本に住む日本人以上に「日本であること」にこだわっておられるのは、アメリカに住んでおられて、その特異性や重要性に、我々よりはるかに早く深く気づいておられるということではないかと思います。

 障子の本にも、まったく電動工具は登場しません。全て日本の手道具のみで製作しておられます。幅46cm、長さ76cm、厚さ22mmの板を手鋸で二枚の薄板にスライスする写真は圧巻ですし、その板をご飯粒を練って作った糊ではぎ合せる。その際にもクランプ類は使わないで、角材と縄で圧着されている。その徹底した姿勢には、「参りました」という言葉しか出ません。

 ウチの教室でも、テーブルソウ、バンドソウ、ルーターが氾濫しています。しかし、これからの日本の木工では、大舘さんのような、もう消えて無くなりかけている、電動工具が登場する以前の職人スタイルで木を物に作りかえる、そういう姿勢が世界的視野で意味を持ってくるのは間違いないと思います。

 

 

◆関西人の名古屋界隈事情--- 信州上田から蕎麦を考える ---◆

  先月の「ムギタコーヒー」、今までになく好評でした(^^)。何人もの女性の方から、「思わず笑ってしまいました」とのご報告。女性がよく利用しているということでしょう。さて今月は名古屋から日帰り可能な信州上田の蕎麦の話からスタートします。

 麺類が大好物の私、たいてい一日に一食は麺類を食べていると思う。20代の頃から今まで、蕎麦→うどん→ラーメン→再び蕎麦というような流れで、最近また蕎麦に興味を持ち始めたのであります。蕎麦に嫌気がさしたのは、「あまりに高級」、「あまりに少量」というような、B級グルメの敵と思えるようなお店が多くなったからであります。どんなに美味しくても2000円以上もだして、目が点になるような、ザルの中央にちょこっと蕎麦が乗っている、そういうお店はあきまへん。

 ずっと前から、信州上田に「刃物屋」(仮名)という蕎麦屋があって、そこは並であってもスゴイボリュームだと、人づてに聞いていた。いつかはそれを食さねばと思っていたのでありますが、今年一月、実は上田に近いSUMIさんというギター工房に出向いてギターを買ってしまったのですが、そのついでに念願かなって「刃物屋」へ行くことができたのです。
 街の小さな食堂みたいな「刃物屋」の戸を開けると、若いお客さんが、もり蕎麦を食べていた。その蕎麦の量が尋常ではなく、ザルの周りに垂れ下がって、こぼれる寸前の状態であった。「ああ、これ大盛りやな」と思っていたら、私が注文した並がまさにそれでした。味は繊細ではないが、田舎風なモッチリした歯ごたえのある蕎麦で、並もり一枚で満腹になった。大盛りを注文していたら、どんな恐ろしい状態であったろう。値段は600円ぐらい、超お値打ちでありました。

 ところが、SUMIさんにその話をすると、「地元の人には、刃物屋派と、木笛派がいますよ」と言うのだ。なんでも近くにもう一軒、スゴイ量で美味しい蕎麦を出す木笛(仮名)という店があるらしい。ちなみにSUMIさんは木笛派だという。「ぜひ行かねば」と思っていた私、NYの工房を訪ねる準備に信州のMさんを訪ねることになり、3月上旬、この宿題を果たすことができた。
 蕎麦屋「木笛」は刃物屋よりも大きくて、広い駐車場があり、車が満杯でした。早速並んで並を注文。刃物屋とは趣の違う蕎麦が、やっぱり大量に盛られて、出てきました。隣のお客さんをまねて「かきあげ」も注文し、ウーン満足。

 刃物屋と木笛、どちらが好みかというと・・・、本当に両方に軍配があがってしまう。「刃物屋」の歯ごたえのある太い蕎麦、また食べたい。「木笛」のちょっと繊細なみずみずしい蕎麦もベリーグッド。どっちも実に捨てがたい。それが安い値段で「てんこ盛り!!」。

 さて名古屋の蕎麦はどうなのか。実は名古屋の蕎麦は、うどんの大阪に比べ、かなり美味しいと思っている。東京のメチャ少ない高級蕎麦屋ではなく、わりと量が多いし、蕎麦が美味しくて量が少ない店であっても、ランチメニュー等が工夫され、お値打ち感があるようになっている。しかし、しかしである。信州上田の「刃物屋」および「木笛」のインパクトには到底及ばない。「悪貨が良貨を駆逐する」の諺のように、超少量超高級蕎麦屋が幅をきかしつつある現在、蕎麦好きを自称する方は、ぜひ信州上田の「刃物屋」と「木笛」の蕎麦を経験されたい。・・・と、やや大げさな今月でした。


2004年4月

 目次
・タブテール
・アマチュア時代と考えが変わったこと
・関西人の名古屋界隈事情--- ムギタコーヒー(匿名) ---

◆タブテール◆

 日本語では「アリ組」、なぜアリと呼ぶかというような議論があるようです。西洋でも語源について様々な説があるようですが、私はそういうことには興味がないので、とりあえずタブテールは「鳩のシッポ」ということにしておきます。
 さて、欧米の高級家具では引出がタブテールで組まれているの写真などでよく見かけます。日本製でもメーカー製高級家具は機械加工によるタブテールになっていることようです。ところが、有名な民芸家具や木工家の作る引出の多くは釘を打った「包み打ちつけ」です。どうも西洋と日本では引出についての考え方や作り方がかなり違うようです。手道具でタブテールを加工するのは大変手間がかかります。私は使ったことがありませんが、タブテールジグやマシーンを使った場合でも、そのセッティングにとても時間がかかると聞きます。それでも欧米の家具ではこの組み手が高級な手作り家具の証として大切にされているということの理由を、私なりに考えてみました。

 

 引出を押し込んだ時に定位置でとまるように小さな木片などの”ストッパー”をつけますが、これが引出の後ろに設置してある場合、前板に力はかかりません。しかし、引出後ろのデッドスペースが大きくなるのと、無垢のタンスだど収縮によって引出が前に少し出てくる欠点があるため、引出の前板で止まる構造にすることがあります。この場合には、引出の全重量が前板一枚で一瞬にして止まるわけので、その時の衝撃力はかなりのものになります。したがって、釘と接着剤だけでは耐久性に不安があります。引出前板があたるストッパーをどこに設置するかですが、桟に薄板を貼り付けたりダボを入れたりするのは、あまりカッコよくありません。それでタブテール加工の前板の端を延長したり、延ばした両端を段欠きしたフレームに当てて止めるようにするなど、様々なやり方があります。この辺はクラフトマンの頭と腕の見せ所かもしれませんね。いずれにせよ、このような構造を機械のみで作るのはまず無理ですね。
 また、手加工のタブテールには機械加工では得られない繊細な美しさがあります。時間と手間のかかるタブテールを使って引出を組んでいるということは、高い技術を持った職人が作っているということの証だけではなく、「効率重視の工業的家具とは違う価値観」で作られた家具であるということを示しているのだと思います。見た目は同じような家具であっても、同じ土俵で勝負するものではないというような、一種の「誇り」ではないでしょうか。ただし、「手加工が機械加工より優れている」ということを意味しているのではありません。

 タブテールの加工自体は、それほど難しいものではありません。特に、片方を加工して、相手に形を移して加工する方法では、両方に墨を入れる日本的な組み手より簡単かも。ですから、時間と手間をおしまない、自分で作る家具には、そういう贅沢をしてみては如何でしょうか。裏が真っ直ぐでよく研げたノミを、ケヒキの線に入れて正確に加工する、その基本を修得していれば、少しの練習で美しいタブテールを作ることができるようになるでしょう。


◆アマチュア時代と考えが変わったこと◆

 ここ名古屋で工房を開くまで、要するにアマチュア時代ですが、日本の問屋制度をとても無意味で嫌なものと思っていました。道具でも塗料でも材木屋さんでも、大手はなかなか直接売ってくれないのです。製造元、問屋、小売、末端消費者という連鎖の構図は「悪」であるとさえ思っていました。が、独立して、いろんな業種の方との付き合いを経験して、この制度にはいいところもあると考え方が変わりました。ウチの通販でも、わざと製造元から直接購入せずに取引実績のあるウチを経由して納品したりするケースが時々あります。

 先日、集塵機用消音機を新規購入することにしました。インターネットでその製造元が名古屋近郊のS工業であると知り、メーカーに在庫と型番等を確認しました。注文と支払いは、ウチが取引のあるある工具販売店経由ということにし、販売店に注文を入れると二日後にメーカーから消音機が送られてきました。支払いは月末銀行振込です。
 その販売店は手数料をオンしていることでしょう。でも、もしS工業から直接購入することになった場合、S工業は代金の回収が心配ですし、かといって、小額の現金取引も邪魔くさいだけです。ところが取引のある販売店を通じることで、何の不安もなく、ただ梱包し発送するだけ。請求はいつもとおりに販売店へすればよい。もし直接購入するなら、私が工場へアポイントを取って出向くだけで半日はロスすることになります。それが販売店経由なら、電話で注文して、月末にオンラインで振り込むだけ。値段もリーズナブルで、もし個人で直接買ったら、おそらく一般小売価格になるでしょうから、もっと高くなったかもしれません。

 当たり前のことといわれそうですが、要するに大切なのはお金ではなく、信用(実績)だということです。アマチュアは当然実績がないから、まともに相手をしてもらえないこともあるでしょう。それは馬鹿にされているのではなく、実績がないだけなんです。それを背伸びして、無理をすると、よけいにおかしくなる。それが木工をやり始めた頃の私の姿でした。実績とは数字だけではなく、人と人のつながりができれば、自然とでてくるもののようです。

 もちろん、問屋や販売店というような経路が、必要ないという場面もありました。以前、欧州製の木工機械を、輸入元から名古屋の機械屋さん経由で購入したことがあります。輸入元としては、搬入設置やアフターサービスの責任を直接とらないですむというメリットがあるようですが、実際のところその機械屋さんのメンテナンス係りの人は、ほとんどその機械についての知識がありませんでした。これなら、個人輸入で欧州から買って、直接海外メーカーの担当者とFAX等で情報のやりとりをした方がましだと思ったものです。


◆関西人の名古屋界隈事情--- ムギタコーヒー(匿名) ---◆

  新聞によりますと(古いフレーズやなあ)、東京に名古屋の「ムギタコーヒー(仮名)」が出店するらしい。ムギタコーヒーと言えば、名古屋で知らない人はいないほど、多くの店舗を持つ喫茶店チェーン。ウチの近所にも5店舗ぐらいあります。どこに行っても、駐車場は一杯でよう流行ってる。なんでこんなに流行るのか、いつも疑問でしたが、最近やっとわかってきたような・・・。

 コーヒー自体はそこそこ美味しい。コーヒーカップや店の名前は、なんとなく京都のイノダをまねているのではと思わせます。広くてウッディーな店内には、安物の椅子とテーブルが置かれ、ゆったりと禁煙席もなく、子供連れでも、奥さん連のやかましい会話もすべて許されるあたたかい?感じ。メニューはというと、とにかくボリューム勝負。先日TVでも紹介されたクロノワール(匿名)というのは分厚いスポンジの上に巻き巻きのソフトクリームがのった、甘い物が苦手な人が見たらひっくり返りそうな代物。単品ソフトクリームなんかも量が多くてコーンの上に立たないから、最初から皿に寝かせてあるらしい(妻談)。ウチの娘がすきなのは、でっかいビンに入ったシェイクで、カキ氷にいたっては体が冷えまくるほどすさまじいボリュームらしい。

 有名な名古屋のモーニングサービス。車通勤が多い名古屋では、渋滞を避けて早めに家を出、仕事場近くに着いてから、ゆっくり朝食をモーニングサービスで摂る、そういう事情があるとのこと。昼はランチタイム、午後は奥さん連のおしゃべりタイム、晩飯タイムは知らんけど、夜は深夜12時まで開店しているので若い人が安心して入れる。このように朝から晩まで名古屋人の生活にベッタリと浸透しておるのである。

 ウーン、たしかにこういう喫茶店、東京にはないから結構流行るかも。いや大阪にもないなあ。このムギタコーヒーに比べると、大阪や東京の喫茶店は、ちょい気取っているところが多いかもしれない。ムギタは、はっきり言って、気取ったところは全然ない。一応カッコがついていて、生活密着大衆路線。こういうタイプの喫茶店チェーンは、他にあるやろか。東京でルノワールというチェーン店がありますよね。あそこは営業マンご用達昼寝場所という感じがするけど、ムギタコーヒーで昼寝はできません。静かにコーヒーを味わってゆっくり新聞でも見よか・・・という場合、ちょっと辛いかも。

 世界の大都市「東京」で、名古屋のムギタコーヒーどう評価されるか、楽しみです。


2004年3月

 目次
・キャビネットスクレーパー
・禁断の果実(^^)
・関西人の名古屋界隈事情--- ライフスタイル ---


◆キャビネットスクレーパー◆

 スカッと鉋で仕上げたいとは思いますが、節周りの木目や見事な玉杢など、どちらから削っても逆目でどうにもならないことはよくあります。腕のある職人さんなら難なく仕上られるのでしょうが、教室で木工を始めて二年ぐらいの方だとまず無理です。だからと言ってサンドペーパーはあてたくない。一度サンドペーパーをかけるともう鉋をかけたくありませんし、粉も出ます。
 こんな時、このごろよく使っているのが写真のキャビネットスクレーパーです。通常の板状スクレーパーもよく使いますが、広い面積ですと手がいたくなりますし、板の端に近いとうまくつかえません。キャビネットスクレーパーは、鉋にスクレーパーの刃を仕込んだようなものですが、刃の出方の調節がとてもやりやすいグッドな構造になっています。

 バリをつけた刃を本体にセットし、平らな板の上に置いて、台と同じ高さに二つのネジでセットします。この状態では刃は出ていないので削れないのですが、写真中央のネジを少し回し、刃をわずかに湾曲させてやることで、刃が仕上鉋のようにやや中高に台よりほんの少し飛び出すのです。スクレーパーの刃の付け方さえマスターしていれば、これで容易に難しい木目の板を仕上げることができます。テーブルなどでは鉋による横ずりで大まかな平面を出したあと、仕上をこのキャビネットスクレーパーで行うこともいい方法のように思います。鉋ほど、光沢のある仕上にはなりません。幾分曇ったような仕上ではありますが、サンドペーパーによる仕上との中間という感じです。

 針葉樹には適さないと思いますが、ややこしい木目の堅木には、大変有効です。海外の多くの木工通販会社で扱っています。複雑な木目の木の仕上で悩まれている方は試される価値があると思います。工房で使用しているのはSTANLEY社製ですが、最近発売されたLeeVolleyToolsのキャビネットスクレーパーも評判がいいようです。


◆禁断の果実(^^)◆

 前々から「パソコン自作にだけは手をだしてはいけない」と思っていました。小学生の頃から半田コテを握って真空管ラジオなどを組み立てていたので、パソコンの自作やパーツ交換などに手を出すと、それに没頭し、木工がおろそかになると危惧していたわけです。ところが、旧式なパソコンが3台も遊んでいること我慢ができなくなり、それらを組み合わせてリナックス専用PCにしようとしたことから、大須でマザーボード・CPU・メモリを購入してしまった。ああ、ついに禁断の果実に手を出してしまった!!。

 電子部品を組み合わせて動くかどうかドキドキする、その感覚に予想通り酔ってしまいました。さらに悪いことに、パソコン完成が終点ではなく泥沼への出発点となってしまったのです。ウインドウズの独占状態が気に入らない私は、リナックスに慣れておきたいと思っていたのですが、リナックスに迂闊に手を出すべきではありませんでした。ウインドウズに比べまだまだ未完成ですし、コマンドを打って環境を適正化するような作業が不可欠。おかげで二月後半は、パソコンの前に座っている時間が極めて長くなってしまいました。ようやく、初心者向きと言われるVineLinuxと最近話題のCD一枚で立ち上がるKnoppixという二種類のリナックスをハードディスクにインストールしました。

 これから、リナックスが木工とどのように結びついてくるかわかりませんが、私の性格では、ある程度トコトンやるまでは次に移れないのです。できれば、リナックスで動く、3DCADソフトを見つけて、家具の三次元表示をやってみたいと、無理やり木工とリナックスを結びつけているのですが、残念ながら現状のリナックスは実務にはあまり適していないように思いますね。ただし、今後リナックスが幅を効かせてきたとき、この経験は役に立つ、そう信じて、パソコン前に座る時間が長くなっている自分を慰めているのでした。

 

◆関西人の名古屋界隈事情--- ライフスタイル ---◆

 本屋さんで雑誌を立ち読みすると、最近どうも「ライフスタイル提案型」の雑誌が目についてしまいます。男の書斎、ガレージ工房、欧風雑貨、アジアンテイスト、民芸調、・・・。「こういうのが幸せですよ」と思わされる、個人的にはそういうように感じてしまうのですが、ひねくれ者なんでしょうね。

 「パチもん」って言葉、ご存知でしょうか?関西弁で「偽モン」とか「盗作」などを意味する言葉ですが、もうすこし深い意味・背景があるようです。大阪人は「このローレックス、パチモンやねん」と嬉しそうに言ったりします。ニセ物やのに自慢げにいうんですね。ニセ物を肯定しているのではありませんが、なんとなくメジャーに背を向け、マイナーでありたいみたいな・・・、自己満足の世界ではありますが、こういう感覚、好きなんですわ。

 だから、ライフスタイルを提案されると、少々大げさですが、拒否反応が生じます。カントリー家具に少なからず憧れていた昔の自分を思い出すと恥ずかしいですが、今は「カントリー風」「シェーカー風」「北欧風」など「ナントカ風」な物や風潮には疑問符がつくようになってしまいました。やっぱり自分の住んでいるところ、あるいは生まれた所、親の生活、そういう身近なところから、自分のスタイルを作っていくことがホンマに大切やなあと思ってます。年でしょうかねえ。

 東京スタイルというのはあるような気がする。大阪スタイルもあるなあ、ほな、名古屋スタイルは?。しかし、最近名古屋が熱いような感じ。なんせ東京と大阪の間で、もうすぐ新中部国際空港が完成すれば結構活気がでてきそう。着陸料も安いし、市内へのアクセスもまあまあ。名古屋が日本の玄関になったら・・・、そのときは、東京スタイルでもなく、大阪スタイルでもなく、絶対に名古屋スタイルであってほしいと思う。

 聞くところによると、ルイヴィトンの売り上げは名古屋が日本一だという。そんなブランド志向より、名古屋流に徹してはどうか。「つボイノリオ」さんの歌で「名古屋はええよ、やっとかめ」という歌がある。著作権の問題があるかもしれないのでリンクの紹介はさけますが、Googleなどの検索サイトで検索すれば、名古屋の写真を背景にしてその歌を流しているサイトがみつかるはずです。めっちゃ面白いので、ぜひ一度聞いてください。



2004年2月

 目次
・接合方法について雑感
・関西人の名古屋界隈事情--- 初詣のはしご ---

◆接合方法について雑感◆

 正直なところ今月はあまり木工ネタがないので、木の接合方法について考えていることを書いてみました。本格的に木工をされている方でないと理解しにくい内容ではありますが、何かの参考になればと思います。強度のデータもなく、あくまで個人的な意見ですので、その点ご了解をお願いします。

 椅子を組む時に、ホゾだけでなく、ルーズテノン、ダボも使います。ルーズテノンとは、ホゾに相当する部分を別の木片から作り、通常ホゾを作る部材にも穴をあけてそこに差しこんで作るサネ入りのホゾのことです。ダボはご存知と思いますが、圧縮した木の丸棒(市販品もある)を両方の部材に穴を開けて、差込む接合方法です。日本的な木工ではホゾ以外はなんとなくダメなように教えられることが多いようですが、それぞれの利点を理解しておくことは重要です。

ホゾ
 精度よく作れば強度のある接合方法の代表選手です。ホゾ穴とホゾがぴったりと収まり、胴突き面が相手の部材を圧縮し、適量の接着剤が強固にホゾと穴を結びつけていれば最高です。生じやすい問題としては、ホゾと穴の精度が悪い、胴突きがつかない、などでしょうか。残念なことに角のみで開けるホゾ穴はそれほど精度がよくありません。穴の底はガタガタですし、ドリルの先端がかなり飛び出していることから、細い部材では充分な深さまでホゾ穴をあけることができないことがあります。ただしルーター等で端が丸い穴を開けることはできます。この場合、ノミで穴を四角にするか、ホゾの端を丸くするかですが、個人的にはホゾを丸くする方が速くて精度がよいようです。ホゾを丸くする場合は、木工やすり(カナダ製マイクロプレーンがgood)で角を45度に落とし、その後小刀等で、さらに角を落として根元を掃除しています。多数を加工する場合にはバンドソウで角を45度に落としています。
 ホゾの加工は大型木工機械がないアマチュアにはハードルが高いと思われます。ルーターでやってやれないことはないですが、楢など堅木では、かなり加工は困難が伴うという印象です。

ルーズテノン(Loose Tenon)
 ルーターやボール盤でもジグを工夫すれば穴の加工ができ、サネとなる木片も厚みと幅さえ決めることができれば作るのはそれほど難しくなく、小規模な工房におすすめです。ただし細い部材ではサネを納める縦穴の強度が心配になります。PIボンドなど隙間を充填できる強度のある接着剤を用いれば、ホゾとほとんど同等、あるいは穴の加工精度がよいこの方法の方が強度が勝っている場合もあるでしょう。穴の加工ですが、ルーターならスパイラルビット、ボール盤など2000回転程度の低速回転が可能な機械では、金属加工用エンドミル(HSS製4枚刃のロングが使いやすい)を使えば非常にきれいな穴があきます。この方法ではぎりぎりの深さまで確実に穴をあけることができますので、細い部材等で底糊の効果に期待することもできるでしょう。サネは、厚みと幅を決めた部材の木端を、厚みの半分の半径を持つラウンドオーバービットで両側から丸く加工します。6mm、8mm、10mmの三種類の加工ができれば、家具作りでは充分だと思います。斜めのホゾや、曲がった部材の接合、たとえば椅子後脚と背板等にもルーズテノンは威力を発揮します。

ダボ
 日本ではなぜか「低級」のイメージがある接合方法ですが、欧州の木工では多用されているようです。それは複数の穴を正確に双方に開けることが難しいことも原因ではないかと思います。横穴ドリルのようなダボ加工を得意とする木工機械が日本にはほとんどないのです。穴あけのジグを工夫したり、ルーターをうまく使うことによって精度よいダボ穴加工が可能になります。
 ダボ接合の強度は上記二つの方法に比べると劣ります。特に一度ゆるむと非常にもろい。しかしながら、それほど強度が要求されないところや大きな板物の接合には大変便利です。また幕板と脚など、三つの部材が一箇所で出会うような場合、ホゾ組を貫通するにダボによってもうひとつの部材を容易に接合することができます。
 問題はダボの入手で、業務用ダボは最低でも5000個ぐらいの単位でしか入手できません。かといって自分で作るのはかなり大変であり、リーズナブルな値段で気軽な数量のダボが入手できる環境がほしいところです。当方の通販でダボの小分けして販売することはできますので、ご要望がありましたら希望のサイズや数量をお知らせいただければ幸いです(注:あくまで参考としてお聞きするだけで、通販で扱うことを約束するものではありません)。

 最後に一般的なことですが、そのピッタリ度についてです。昔は、半分は叩いて入れるようなホゾがよいと思っていたのですが、このごろは少しゆるいぐらいでよいのではないかと考えています。もちろんガタガタではだめで、ピッタリができるようになってから、その精度でほんの少しゆるい目に作るのがよいと思うのです。叩かないと入らないホゾでは、接着剤を塗るともっと入りにくくなってハタガネが効かないことがあります。また接着剤の膜が全く形成されず、接着力が弱くなる場合もあるように思います。ホゾの厚みは穴マイナス0.1mm、幅はピッタリというところが理想ではないでしょうか。このことは昔から木工の教科書に書いてありました。その意味が最近やっとわかったような気がしています。

 

◆関西人の名古屋界隈事情--- 初詣のはしご ---◆

 一月は初詣を名目に名古屋界隈の神社をいろいろとまわりました。瀬戸の「深川神社」、小牧市の「田縣神社」、「大懸神社」、一宮市の「真清田神社」、豊川の「豊川稲荷」、そして最後は「伊勢神宮」です。なお、「熱田神宮」には昨年行っていますので、今年は除きました。

 まずは近場の神社ということで、瀬戸市の「深川神社」です。神社自体は人出もそれほど多くなく、アットホームな雰囲気でよかったですが、「瀬戸もの」で有名な町の、ちょっとわびしい街の姿にこちらも感傷的になりました。陶器産業が衰退しているとは聞いていましたが、お正月とは言え街の元気がなかったようです。

 さて、次は奇祭で有名な、田縣神社。まずは下の写真をご覧いただきたい。

 ポコチン好き変態おじさん???。ここのご神体は木で作った大きな男根。3月15日には毎年新調される3mほどの一物を奉納する祭りがあるらしく、新しい神体をかついで練り歩くとのこと。祭りの写真では、50cmほどの木製男根を触らせたり、リアルな絵を書いた大きな旗を振っていたり、これが神社の祭り?というようなすごさでした。

 田縣神社のちょっと北側に、大懸神社があります。ここは男の田縣神社と対をなす姫宮として位置づけられているようですが、境内には政治的な標語があったりして、田縣神社のおおらかさとは少し違った感じがしました。

 真清田神社は繊維の街「一宮」の象徴ともいえる神社。人出や露店も多く、カミさんは「ここが好み」とのこと。神社の前から続く広いアーケードも歩いてみましたが、まだ大資本が入っておらず、由緒正しい日本の商店街の姿がありました。それに活気もあります。名古屋圏で一宮は好きな町のひとつです。

 後日、名古屋ICから車で一時間少々、日本三大稲荷のひとつである「豊川稲荷」へ行きましたが、なんとそこは禅宗のお寺だったのです。「これはいったいどうなってるんだ」と思いつつ、複雑な気持ちで初詣。そういえば、歴史で「神仏合体」とかいう言葉を習ったような気がするなあ。本堂は総欅作りで、大工さんなど建築関係の方が毎年お参りに来るところらしいです。

 一月中旬には、前々から行ってみたかった伊勢神宮へ。車は高速代がかなりかかるので、近鉄の、それも特急はさけて、急行で行きました。外宮から内宮までも歩いたのでかなりハードな行程でした。小学校の修学旅行で伊勢参りをしてからなんと40年あまり、時の過ぎるのは速いなあ。伊勢神宮は、広い境内に樹齢何百年という樹木が生い茂り、大したものでした。でも、神殿に近寄れないばかりか写真撮影もできず、また賽銭箱の横で軍服のようなオーバーを来て黒い帽子をかぶった監視の人がいて、「お伊勢さん」と呼べるような親しみは感じられませんでした。内宮前の参道、おかげ横丁は大変な繁盛ぶり。黒い伊勢うどんと「すし久」というお店で「手こね寿司」をいただきました。

 というわけで、神社を沢山まわったわけですが、ほとんどの神社が時の権力者を祭っているのに対し、田縣神社はなんとポコチンがご神体。私はその素朴な信仰に、とても親しみを感じ、3月15日のお祭りにはぜひ出かけてみたいと思ったのでした。



2004年1月

 あけましておめでとうございます
写真は昨年末の大雪です。名古屋で12月にこんなに雪が降ったことはないそうです。

目次
2004年度展示会
・ニイチェア買いました
・関西人の名古屋界隈事情--- ふたたび寿司屋 ---

お知らせ

ホームページの容量がかなり限界に近くなってきました。当初「六畳一間の工房から」というタイトルではじめたこのホームページですが、名古屋に工房を開設してから5年目を迎え、現状に合わせてリニューアルせねばと思っております。とりあえずこれから書き込む資料等は新しいプロバイダのページに置き、今までのトップページからのリンクでこれまで同様に見ていただけるようにしました。これから少しずつ新しいページにシフトする予定です。今までどおりよろしくお願いいたします。

◆2004年度展示会◆

恒例の展示会です。昨年に作った作品を紹介します。

2004年度展示会

◆ニイチェア買いました◆

 木工屋で椅子作りは好きなのに・・・、ニイチェア買ってしまいました。ずっと前から知っていましたし、好きでした。意地を張って買わなかった。けど、買ってみて、すごさを再認識。部品は座布を含め、4種類で計7点とネジ、それだけです。体重の重みで左右に布を引っ張り、アームとの接合部が支点となって、上部も体重によって張られるのです。この椅子が定価19800円ですよ。ネットを探せばもっと安いところが見つかるでしょう。この値段なら、コピー商品が出回る余地はありません。耐久性は知りませんが、全てのパーツが交換できるそうです。安楽性の高い椅子は場所をとりますから、簡単に折りたためるニイチェアはとても便利。いやはや脱帽です。
 あまりテレビやビデオを見ないのですが、最近ボケーッと映画を見たりすることが心身のリフレッシュになるようで、意識して時々そういう時間を持つことにしています。この時、この椅子が活躍します。蛇足ですが・・・、先日レンタルビデオで見た「山の郵便配達」、自分の年齢や心境とダブルものがあり、久しぶりにしみじみ泣いてしまいました。

 

◆関西人の名古屋界隈事情--- ふたたび寿司屋 ---◆

 なんと恐ろしいことに、工房のほとんどとなりに、100円回転すし店が先日オープン。歩いて20秒、走ったら5秒、車だと遠回りで30秒かな。その「レインコート寿司」(仮名)は、おそろしく車が列をなすという噂でしたが、予想は完全に裏切られ、工事中より開店してからのほうが、静かなくらい。何のチラシも入れないソフトオープンは流石でした。近所に住む人間としては、これは高く評価します。

 開店直後は恥ずかしいので避けて、一週間ほどたったある日、カミさんと歩いて店に突入。といっても平日だったせいか、並ぶこともなく、ファミリーレストラン風の6人は座れる大きなテーブル席についたのです。テーブルの奥が回転ベルトに接しており、そこに流れて来た寿司を取って食べるわけです。回転ベルトは奥の調理場と往復しているらしく、通常の回転すしのようにベルト越しに店の職人さんが見えるというのではありません。要するにブラックボックスで作られた握り寿司がベルトコンベアに乗って運ばれてくる仕掛け。注文はマイクに向かって「エンガワひとつ!」などど頼みます。昔テレビ番組のコントで、「にぎり寿司自動販売機」なるものが登場し、お金を入れてボタンを押すと、機械の中に入っているおっさんが必死に握っているというのがありました。なんかそれに似ているような気がするなあ。お客が少ない時間帯であったとは思いますが、少々水気のない寿司が何回か回っていて、ブラックボックスの向こう側では、何度目かにそれは下げられ、なんらかの方法でネタを回すか、水気を取り戻すであろうと、想像してしまう私でした。

 昨年末、梅田で息子と会い、何年ぶりでしょうか、東通の「うさぎ寿司総本店(仮名)」へ。「今日は好きなもん一杯食え」などと言ってましたが、やっぱり習性で値段表をチェックしますね(^^;)。トロや鉄火などマグロ系は値段のわりに大変美味しかったです。赤だしもなかなかいけました。往年の繁盛具合とは違いますが、今でも一人3000円ぐらいで気楽に食べれるお店としてはいい感じでした。

 またつい先日、東京に行った折、インターネットのグルメサイトで評判の良かった、神保町の小さな寿司屋へでかけてみました。夜にいけなかったので昼に入ったのですが、小さなお店のカウンターの向こうで、かなり高齢のすし職人さんお二人が、忙しく動いている姿は一見の価値がありました。次回は夜、ゆっくり食べてみたい。

 やっぱり寿司屋って、職人さんの技とか心意気みたいな部分が重要なのではないでしょうかねえ。回転すしでも職人さん(アルバイトかもしれないけど)が目の前で必死に働いている、そういう姿が見えるお店はそこそこ美味しい。100円回転すしは食べ盛りの小さな子供をつれたファミリーにはいいかもしれませんが、我々の年代になると少々高くても「家では食べることができない味」、その道のプロが作ったものでないと満足できないようです。