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2007年12月
目次
・2007年ユニバーサル技能五輪国際大会ショートレポート
・関西人の名古屋界隈事情--- 伊那ローメン&あんかけスパ ---
◆ 2007年ユニバーサル技能五輪国際大会ショートレポート ◆
昨年ストックホルムのCM校を訪問した折、学校の先生が「技能オリンピックの審査員として、来年日本のヌマズに行きます」と言っていたのがこの大会。沼津は遠いが、一度ぜひ見てみたいと思いました。大会本部に問い合わせたところ、「見学は自由ですよ」ということで、初日に日帰りで見てきました。なお、大会の詳しいことは下記を参考にしてください。
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朝10時の会場を待つ、人人人。 小学校、高校などの校外学習が多い。 若い人に見てもらうことはいいことだと思うが、 単に会場をグルグル回る子供達も多くて、 本当に興味のある人だけ来てほしいと思った。 ただ、会場が広いせいか、開場後の混雑は、 思ったほどではなかった。 |
ストックルムCM校の生徒さん 先生が「日本とスウェーデンが隣どうしというのは 不思議な縁だ」と言っていたと思う(英語で?)。 その通り、左側は日本人参加者の場所であった。 各選手は、フェンスを挟んで、見学者から近い位置 で作業をする。競技よりも、一般の人に見てもらう のが狙いのようだ。 |
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前日の9時、ヨーイドンで、道具の展開を開始 したという。欧州からの人の道具箱に対する 思い入れ、考え方の違いが興味深い。 道具箱は、単なる整理箱ではなく、作業を自分流に 能率よくこなすためのツールであるようだ。 |
台湾からのエントリー 突板を用いての家具作りは、アジア勢には不利? 韓国やベトナム等、アジアからの選手もがんばって いました。目前の原寸図を見ながらの作業。 |
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隣の建具の会場 作業台は、支給された日本製。左のX脚の台 も全員に支給されているようだ。 材料は、斜めになった部材も含め、この形で支給 されたとのこと。 |
やはり、各自が持ち込んだ道具箱が興味深い。 家具・建具では、スライド丸鋸が、定尺切断用に 一人一台配置されていた。メーカーはまちまち。 支給されているか、持ちもまれているかはわから なかった。 |
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突き板の加工は、欧州勢の方が有利に見えた。 彼は持ち込んだアルミ合金のプレートを用いた 突き板切断用ジグで、正確な切断をしている。 |
建具の選手 斜めの部材にアリ組みする過程で、全選手が 手加工をしていた。 頭に登山用LEDランプを付けて手元を照らし 材の向う側には手鏡を立てて、裏側を見て、 必死に弓鋸を押す選手。 |
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木工機械の多くは、FESTO社とFLDER社製。 日立工機の名前もあったが、この欧州二社 の製品が目立っていた。 大型木工機械はFELDER輸入元ホルツテクニカが 全面的に支援。日本の大メーカーではなく、 小さな輸入元がこのような活動をされたことに 拍手を送りたい。会社のスタッフの方から、 大変ご苦労があったと聞きました。 |
家具と建具の会場は隣り合わせで、一部機械 も共同使用。 建具の課題は、事前に発表されず、当日加工 された材料とこの図面が与えられたようだ。 |
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家具製作競技の課題は事前に発表されたよう。 支給されたランバーコア合板にタモの突き板を 張るところからスタート。 中の抽斗は包みアリで組み、棚板の突き板は 四方留めのようなパターンが指定されている。 |
金具は、日本でも入手できる写真のヒンジ使用。 この手の金具は位置の微調整が難しく、評価に 差が出やすいところ。 なお、家具も建具も主材料は柾目のタモ。 |
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---見学を終えて---
家具の製作競技、なんとなく花がありました。カッコいいです。50代半ばの私が見ても憧れる部分がありましたので、若い人なら、もっと憧れるでしょう。しかし、職業となるとかなり違う側面があることを充分にわかっていないと、「家具製造」の現場が誤解されるかもしれないとも思いました。
各国でたった一人選ばれ、沼津に来た選手ばかりですから、その技術レベルは、大変高いはずです。そんな彼らにとって、今回の課題を四日間で作るのは、それほど無理なことではないと思います。突き板の扱いに慣れていない私でも、互角とは言わないまでも、やれると思いました。若かったら出てみたかったです(年齢制限は22才だそうです)。
実際に見たことはないのですが、国内の選抜大会の方が、高度な技術を要求されたのではないでしょうか?各国からの審査員は、その国の選手達とよく相談をしていましたので、厳密な競技というのではなく、各国トップレベルの選手の技を、一般の人に見てもらうということが本来の目的のように感じました。
建具の課題は、洋風出窓のような感じで、全員が手加工でアリを刻んでいました。そのように指定されていたかどうかはわかりませんが、機械をよく使う家具に比べ、一般の方の注目度は高かったです。やはり手鋸でギコギコする風景は、わかりやすく、目をひきます。方や、家具の突き板の加工は、ある程度の知識がないと、見学者にはわかりにくかったでしょう。
家具と建具のとなりには、通路をはさんで大工の技を競う会場がありました。大きな建物を作る大工さん、彼らの使う道具は、大きな材木を切るために小型で、道具の方を動かします。それに比べ、比較的小さな材木を扱う、家具や建具の製作では、大変立派な木工機械を沢山使います。この辺りが、家具木工という世界の、なんと言うか、とっつきやすそうで、実はハードルの高い部分ではないかと思った次第。ウン百万、ウン千万の家を作る大工さんの設備投資は、数万円の椅子を作る木工家の設備投資額とそれほど変わらない、もしくは家具の方が設備費が高額な場合も多いでしょう。余談ですが、趣味の木工では、大工さんが使う小型電動工具を家具作りに使う工夫、それが大切だと思います。
今度機会があれば、技能五輪の国内大会を見てみたいと思いました。曲りなりにも木工で独立し、さらにこの歳になると、他の方の製作風景を見させていただく機会は大変少ないのです。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 伊那ローメン&あんかけスパ --- ◆
以前から、伊那にはローメンという、焼きそばのような、焼きそばではない、麺料理があると聞いていた。そして、伊那ローメンズクラブという団体まであって、ローメンの普及につとめているらしいという情報が入った。麺類好き&B級グルメ好きの私としては、絶対に食さねばならない麺である。
それが、ようやく実現した。諏訪大社を見にいった帰り、杖突峠から高遠に出、そこから伊那に入って、生徒のKさんから「川沿いに看板がありますよー」と聞いていたので、川沿いのパーキングに車を入れ、店に向かったのが、生憎午後4時頃。その辺りの店は夜がメインで、少々場違いであった。「また、食いはぐれたよー」と伊那ICへ向かう途中、カミさんが伊那北駅の近くの中華料理屋さんで「伊那ローメン」の文字を発見。幸い店もやっているようだ。
注文して出てきたのがコレ。
テーブルの上に、食べ方が書いてありました。
1、ソースを3、4周
2、ゴマ油を3、4周
3、七味唐辛子をふりかける
4、好みで、酢をかける
その通り、酢までかけて、食べてみました。ウーン、評価がむつかしい。食べた人によって評価が分かれると聞いてはいた。蒸した麺の食感は変わっている。ただ、ソースや油をかなりかけたことで、温度が下がって、ちょいと惜しいかなと思った。ローメンのパンフレットを見ると、ローメンには「焼きそば風」と「スープ風」があるらしく、汁物ファンの私としては、次回、スープ風を食してから、あらためて評価したいところ。
一方、名古屋には「あんかけスパ」という名物スパがある。近所の喫茶店兼レストランの「ダン」はその名店だという。残念ながら11月末で閉店された。そこのあんかけスパをお店が閉まる前にと食べてきた。
これが結構いける。スパゲッティという感じではなく、細めの焼きうどんに、デミグラスソースベースのあんかけをかけた麺料理という感じ。写真は一番安い、スパと野菜を炒め、目玉焼きを乗せたもの。これがなかなか美味かった。工房建設中は、時々晩飯でお世話になったレストラン。もっと通っておけばよかったと後悔。有名な味噌煮込みうどんより、私的には好みだったのに。
2007年11月
目次
・第七回木工教室作品展
・関西人の名古屋界隈事情--- ギャラリー雑感 ---
◆ 第七回木工教室作品展 ◆
作品展が終ったばかりで、写真の整理が全くできていませんが、とりあえず会場の各コーナーの写真を紹介します。今年は初日二日目と終日雨が降り、引出が動かなくなったりしました。しかし最終の日曜は、朝から気持ちのよい秋晴れとなり、固かった引出も動きだしました。
天候が良くなかったにもかかわらず、250名ほどの方に見ていただくことができました。また、初日に木工雑誌「週末工房」の方が来られ、取材をされました。12月刊行予定の「週末工房8」で、この展示会の様子が紹介されるのではないかと思います。
今年の作品数は、卒業生作品を含め、約100点、うまくまとめた作品が多く、レベルアップしているように思いました。一年に一度のこの作品展を目指して物作りをしている生徒さんも多く、趣味であっても、こうして一年間の成果を他の方に見ていただく機会を作ることは、とても大切だと感じています。
また来秋も作品展をするつもりです。お楽しみに。
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◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- ギャラリー雑感 --- ◆
名古屋はちょっと足をのばせば、山間の里に行くことができる。近郊には雑木林に囲まれた山里の民家のギャラリーがあったりする。山間部でなくても、古い町並みの中の古民家を改造した、カフェやギャラリーも多い。たぶん、大阪や東京よりは多いと思う(根拠はありません)。
先日、とあるギャラリーに初めて行った。知る人ぞ知る、ギャラリーで、木戸を開けて中に入るのに、ちょっと緊張した。広い室内、その中に、作品が実にゆったりと置かれている。もしも私が展示したら、5倍ぐらいの作品を並べるであろう。定評あるギャラリー、贅沢に空間をとった展示、なんとなく「コレはええもんでっせ」と展示物が語りかけてくる。がどうも私はこういうのが苦手なのである。
多分、自分の好みは一般的ではないと思うけど、すました顔をして、作品が並べられているのがあまり好きではない。ある程度緊張感は必要だと思うが、雑然としていても、人間味や温かさが感じられる方がいい。
20年以上前に大手スーパーに就職した時、挨拶の練習をさせられた。30度と45度の発砲スチロールの板を背中に当てられ、おじぎの練習をしたり、笑顔と真顔の切替練習なんてのもした。その時は「あほくさー」と思ってたけど、これって、とても大切なことやと今は思う。アメリカやカナダではごく普通のレストランでもチップを払わねばならない。けど、チップのおかげだろうか、日本よりも店員さんの態度がフレンドリーなことが多かった。ビール一本持ってきてもらって1ドルを渡すのだが、感じのいい女性が、にこやかに笑ってサンキューと言ってくれると、鼻の下をのばしているわけではないが、ホットする。
話が脱線したが、この老舗のギャラリー、お店に入った時から出る時まで、店員さんから一言の挨拶もなかった。そのためだろうか、閑散とした展示からは、何か冷たい光線が発せられているように思えた。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と言ってほしいわけではない。笑顔だけでもいいから、温かい「何か」がほしかった。
他人のことはきびしく見るが、自分のこととなると甘くなりがちだ。自分の展示会では、そのようなことがないよう、気をつけたいと思った。
2007年10月
目次
・展示会の秋
・CAD選びで迷う
・関西人の名古屋界隈事情--- 野球中継 ---
◆ 展示会の秋 ◆
「芸術の秋」でしょうか、10月は家具関係の展示会が山盛りです。
手考会は、東京でプロ・アマ関係なく、手道具を中心とした木工を楽しむ会で、江戸指物の技法を使った作品が多いと思います。鉋やノミなど、伝統的な刃物を使った木工は、とてもレベルが高く、機械加工中心の木工屋さんにも参考になることが多いのではと思います。私も小さな引出箱をひとつ出品しています。
木の仕事展は、関西や三重で活躍する木工関係のプロの会「木の仕事の会」、その有志のグループ展です。大阪心斎橋というメジャーな場所での展示会ですから、この時期に大阪に行かれるかたは立ち寄られてはいかがでしょう。
10月の最後は、ウチの教室展です。毎年10月末の三日間、今年は平日しか来れない人のために、金曜だけ夜8時までオープンします。木工の技術は大切ですが、”自分が作りたい形”をできるだけ生かしたいと思いながら、教室をやっています。今年は、どんな展示会になるか、私自身も楽しみにしています。
◆ CAD選びで迷う ◆
CADとはコンピューターで書く製図のことですが、近年立体的な3D画像などがインテリア業界などで広く使われるようになり、個人の小さな家具屋・木工屋さんも、CADについてもある程度知っておくことが必要になってきたように思います。それで、ちょっとCADの現状と、本当に必要な機能等について考えてみました。何分専門的な知識に乏しく、誤解や思い込みも多々あるかと思いますが、お許し下さい。また、この場では、各ソフトのダウンロード先や製作会社への直接リンクは掲載しませんので、必要な方は検索サイト等で探してみてください。
現在私はAutoSketch-R6という数年前までAutodesk社が販売していた簡単なCADを主に使っています。同社が日本でこのソフトの販売を中止する時、AutocadLTに格安で移行することができたのですが、私は当時AutocadLTに馴染めず、移行しませんでした。ですが、いつまでもこのAutoSketchを使っていくわけにはいきませんし、教室でも生徒さん達が気軽に使えるCADを探しています。まず、個人の小さな家具屋がCADを使うメリットは何かと考えておきたいと思います。これらの項目は、CADソフトを選ぶ際のチェック項目でもあります。
2DCADを使う利点
欠点
3DCADの利点
欠点
2DCADソフトについて
まずは2DCADをどうするかということになります。フリーソフトで定評のあるのはJWCAD(windows版はJWW)でしょう。日本では建築関係で、ある意味標準となっているソフトですが、マウスを酷使する操作に慣れが必要なことと、基本的に線で構成されるCADで、私は少々使いにくいように感じています。ただ、JWCADは将来にわたって、フリーソフトであり続けると思います。というのは、パソコン通信の時代に生まれたJWCADは、作者と広いユーザーとの協力・信頼関係の中で、地道に育ってきたソフトだからです。だから、JWCADを一通り使えるようにしておくことは、意味があると思います。
その他のフリーソフトではLiliCADが発展したSakraCADが私にはとっつきやすかったです。また、最近DJ!!standardというCADが出ています。このCADは年賀状の宛名印刷ソフト、”年賀じょうず”(現在は有償化した”はがき作家”)を作った会社のソフトで、初めての方に馴染みやすいでしょう。ただ、将来有償化したり、無償版はより機能が制限される可能性はないとは言えません。
初めての方に2DCADはどれにしたらよいかと聞かれると困ります。編集可能な図面データをやりとりするには、JWCAD形式のファイル、もしくはAUTOCAD形式のファイル(DXF,DWGファイル)を読み込めたり、書き出したりできることが大切だと思いますが、単なる図面であればPDFファイルへ出力すれば誰にでも簡単に図面ファイルを渡すことができます。それよりも、「操作に慣れること」が一番大切であると思います。私が長年Autosketchを使っているのは、操作に慣れていて、図面作成に集中できるからです。一つのCADを徹底的に覚えれば、それが一番使いやすいということになります。それだけに、どれにするか、迷いますね。とにかく、無料のJWCADか、SakraCADを触ってみて、相性の良い方を使ってみては如何でしょうか?あるいは、2DCADですと1万円ぐらいからありますので、評価版などをダウンロードして、自分で試すのが一番かと思います。まずは、簡単な椅子などの図面をとにかく書いてみて、自分に合っているものを選ぶとよいと思います。
しかしながら、世界標準ともいえるAutocadを使うことは、データの交換や将来へのデータ蓄積の点からも意味があると言えそうです。またインテリアデザイン界ではVectorWorksを使っている方も多いそうで、これらのような、その分野でメジャーなCADに最初から取り組むことも、資金があればですが、いいかもしれません。これらのCADのフル機能バージョンは3DCADの機能も充実していますので、将来3DCADを目指されるのであれば、導入するメリットはより大きくなると思います。
3DCADソフトについて
正直なところ、2Dのメリットに比べ、3Dのメリットは個人の工房ではあまりないように思います。金型製作などで使われる3DCADは3DCAD/CAMと呼ばれ、図面に連動してNC工作機械を動かす”CAM”にこそ意味があるわけですが、古典的とも言える基礎的木工機械しか持たない我々にはそのメリットはまずないと思われます。また3DCADは、無料で使えるフリーソフトがほとんどなく、CATIAなどのハイエンド3DCADは300万円以上するもので、とても個人で使える代物ではありません。
結論から言いますと、3DCADに投資をするメリットがそれほどない小さな木工・家具屋では、SketchUPを使いこなすのが一番と思います。GoogleSketchUPなら無料ですし、ビデオのチュートリアル(指示に従って進めていくだけで基本的な操作が学べるように作られている演習)が充実していて、直感的な操作方法と合間って、少し練習すれば椅子ぐらいのモデルはすぐに作ることができると思います。無料版はAutoCAD形式など他のファイル形式での出力ができないこと、印刷が荒いことが問題ですが、モデル作成についてはまったく同等の機能があります。なお、8時間の使用期限があるものの、有償版SketchUP-Proの試用版で、前述の欠点を一時的に補うことは可能ですし、高解像度で印刷するだけれあればSketchUP Viewerというフリーソフトが日本語版でも配布されており、これを使えば有償版と同等に印刷することはできます。
SketchUPで作成、Viewerで出力した例
SketchUPで弱いと思うのが、二次元での図面出力。一方、国際的に広く使われているAutoCADが優れている点は、原寸モデルを作っておけば、いろんな角度から、また任意の尺度で図面が出力できることではないかと思います。ですから、SketchUPをとことん使いこなすには、覚え易いSketchUPでモデルを作り、それをDWG形式(Autocadの3Dファイル)で出力し、図面加工が得意な他のソフトで印刷する方法があると思います。AutoCADのフルバージョンは100万円近い値段ですから、とても手がでませんが、AutoCADに一番近いといわれているIntelliCAD、これは10万円以下で購入できます。しかし、私が試用版に様々なDWGファイルを読み込ませてみたところ、うまく読み込めなかったこともあり、完璧にAutocad互換というわけにはいかないようでした。
近年大手自動車会社の多くが、CATIAというCAD/CAMソフトを採用してから、CATIAに対する関心は非常に高くなりました。ただ、これを個人で入手することは不可能に近いですし、そもそも、我々が入手する意味はないように思います。そんななか、PowerSHAPE-eというソフトを見つけました。フル機能の有償版PowerSHAPEは150万円ほどする本格的CAD/CAMソフトで、CATIAを使っている方にお聞きしたところ、かなり近い操作性のようです。PowerSHAPE-eはその無償版で、独自のファイル形式でしか保存ができません。このソフトは、使うのは無料ですが、それで作った仕事をCAMなどで使える他のファイル形式に変換する際に手数料が必要になる、独自の販売戦略がとられています。大きな会社でしか買えない高価なCADソフトは自宅では使うことができません。それでPowerSHAPE-eという無償版を用いて自宅で仕事をし、それを有償版で使える形にする、あるいは手数料を払ってファイル変換するというものです。このPowerSHAPE-eで、SketchUPで作った3DモデルをDWGファイルに変換して読み込めば、即座に三面図が描けますし、ソリッド化(SketcUPは基本的にはワイヤフレームもしくは面構成の3D)してレンダリング(実物のように見せる装飾)することも可能です。
CADが初めての方は、2Dではなく、最初から3Dをやった方がよいという意見があります。そうかもしれませんが、3DCADを使うのは、2Dに比べ比較にならないほどハードルが高いです。ですから、3DCADを独学で修得しようとするなら、チュートリアル等のヘルプが充実しているソフトを選ぶことはとても大切です。その点、SketchUPやPowerSHAPE-eは独学でも習得しやすいよう、かなり親切な説明やチュートリアルが備わっていますので、比較的ハードルが低いと言えるでしょう。
SketcUPで作成、PowerSHAPE-eで読み込み自動作成したスツールの三面図
(画像で出力できないため、スクリーンショットでの紹介)
まとまらない話になってしまいましたが、それは私自身が迷っている証拠です。CADに時間をかけるより、簡単な手書きの図で、どんどん物作りをするのが本筋と思いつつ、CADに無駄な投資をせずに、どこまでやれるかを探っています。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 野球中継 --- ◆
野球に特に興味があるわけではないが、阪神が勝つと、なぜか機嫌がいい、情けない隠れ阪神ファンである。残念ながら、怒涛の8連敗で、今年の阪神はほぼ終ってしまったけど、それまでは実に力のこもった試合をしてくれていた。だが、だがである。名古屋のTVでは、甲子園の阪神中日戦とか、これだけ盛り上がっていても、野球中継がないことが多いのだ。たとえ、放送があったとしても、今年は熱のこもった長い試合が多かったのに、8時50分でバッサリと終るのだ。かと言って、衛星放送など契約する気は全くない。
仕方なく、パソコンの画面でGoo野球のLiveを見る。この画面、ご存知だろうか?なかなかよくできているが、よく見るとまさに昔懐かしい「野球盤」である。その画面をかじりつくように見て、2時間3時間も椅子に座っていると・・・、実に疲れる。でもこれしかない。ラジオも関西での試合をあまり放送しないのだ。「画面が全然動かない、どうしたんだ、インターネットの故障か?」と心配していたら、翌日足を踏んだとかで、岡田さんと原さんが睨み合いをしたと知った。そういうことは、ちっともわからない。
どっちが良いというのではないが、関西に比べ、名古屋の野球ファンは冷静だと思う。関西は阪神で盛り上がりすぎかもしれない。たとえば、熱狂的阪神ファンのラジオのパーソナリティーは、阪神が勝った翌日は「六甲おろし」を大声で歌いまくり、負けた日は30秒も無言であったりするのだ。ところが名古屋では中日が勝ったあくる日もわりとアッサリした放送なのだ。
なんやかんや言っても、阪神の試合を見ながら、ビールを飲むというのは、私の夏の楽しみの一つである。ですんで、各放送局のお偉いさん方にお願いです。どうかどうか、阪神の試合はどこかのチャンネルで放送していただきますよう、心からお願い申し上げます。
2007年9月
目次
・木のバーチカルブラインド
・建築資材の値上げラッシュ
・関西人の名古屋界隈事情--- ミッドランドスクエア素通り ---
◆ 木のバーチカルブラインド ◆
先日、二つ目を作った木のバーチカルブラインドの製作過程をレポートしてみます。窓ガラスの清掃時にも簡単に取り外せませんし、火災予防の観点からも不安がありますので製作依頼には応じておりませんが、何かの参考になれば幸いです。
1、薄板の作成
今回50枚ほどの薄板(約2mm)を作りました。今回は意図して板目勝ちで木取ってみましたが、模様の面白さはあるものの、どうしても目切れが多くなるために、プレーナーで端が破損するケースが多かったです。特に希望がないかぎり、柾目で木取りされることをおすすめします。
厚さ35mmのタモ材の平面と厚みと直角を整えます。これを1.6mmの組子用縦引き丸鋸刃をつけたテーブルソウで、約3mmほどにスライスしていきます。一回ごとに手押しで平面を整えますから、木の半分くらいを粉にしていることになります。この作業は少々恐いですが、プレーナーでこのような薄板を削ることができるのであれば、バンドソウでスライスしてもかまいません。ただし、バンドソウの精度が良くない場合、材料の無駄は多くなるかもしれません。
材料の長さは仕上寸法よりも10cm以上長くします。プレーナーで端が破損したり、ハナ落ちしたりするからです。最初マキタの小型自動鉋で削りましたが、チップブレーカーやプレッシャーバーがないために端の破損が多く、結局は大型自動鉋に12mmの合板で作った板を台として固定、その上に蝋を塗って滑らせて、2.5mmまで削りました。それでも10%程度は端が巻き込まれて破損したりしました。超仕上鉋があれば、苦労はないと思いますが、手鉋で仕上をするかどうかはお望みで。私は今回は「手抜き」です。
その後、目的寸法にカットし、所定の位置に穴をあけます。
2、回転機構のパーツ作成
薄板をぶらさげ、回転させるためのパーツは、ホームセンターで入手した直径12mmのヒノキの丸棒から作りました。長さを正確に切断し、写真のようなジグを作って、丸鋸で薄板をはめる溝を切り、ネジ止め用穴をあけます。それを45度回転させて、回転用真鍮棒の入る穴をあけます。こういう作業は、どのようなジグを工夫するかが腕の見せ所となります。写真のジグに丸棒を入れ、上からは小さなクサビを入れて固定して、加工しています。また何度も丸鋸で切り込み作業をしますので、安全性と精度を高めるために、スポンジバネをつかった押さえジグを併用しています。
下の穴をあけ、丸鋸で溝を入れた後、45度回転させて、上の穴をあける。
固めのスポンジと丸棒二本で加工材をフェンスに軽く圧着させるジグ。
3、回転ベース
厚さ12mmの板に12.7mm(1/2インチ)の穴を正確に32mm間隔で開けます。回転連動バーには直径3mmの穴を同様に32mm間隔であけます。32mmはヨーロッパのノックダウン家具で使われるピッチで、ウチの長穴加工機であけ易いピッチなのです。このような機械がない場合、32mm離れた所に位置固定用丸棒を差し込んだジグを作り、コマ送り方式で正確に穴をあけます。ただし、穴の数が多くなると誤差が大きくなりますので、時々位置を修正します。
回転と丸棒が抜け落ちない役目をするL型金具を50mmの真鍮釘の頭を取って曲げて作りました。これらを机の上で組み立てていくわけですが、50個を落ちないように組み立てるのは大変です。
数が多いので結構手間がかかる。
50個を穴に通すのは至難の技?
4、取り付けて完成
あとは窓枠にあわせて切断し、回転機構が圧迫されないようにスペーサーを入れて窓枠に固定し、薄板を短い真鍮ネジで固定して完成です。どこか一つの丸棒に回転用の真鍮棒を差し込んでおけば、全体が90度回転して、光の量を調整できます。
当然ですが、横のブラインドよりもゴミはたまりにくい。
◆ 建築資材の値上げラッシュ ◆
ウチで扱っている亜麻仁油はカナダ産ですが、カナダはバイオ燃料用穀物の増産で、今まで休耕地などで栽培されてきたアマなどの価格が上昇しているとのことで、亜麻仁油も値段が上がっています。荏胡麻も大幅に値段があがりましたし、植物油の通販を開始してから、10年間以上価格を変更していなかったのに、このところの急激な価格上昇に輸入元も戸惑っているようです。そんな中、石油製品の値上がりのため、「PIボンドも10〜15%の値上げを予定しています」とメーカーからの連絡がありました。木材、塗料、接着剤、建築資材は、どんどん値段が上がる気配です。でも不必要に買いだめをしても劣化しますから、おとなしく、状況を見ているのが一番だと思います。
下表は油メーカーから送付されてきた資料の一部です。石油価格高騰の影響が、こんなところにも表れてくるんですね。
2006年作付面積 | 2007年作付面積 | 増減% | |
麦合計 | 26387 | 23759 | -10.0 |
春小麦 | 20273 | 17080 | -15.8 |
菜種 | 13276 | 14831 | 11.7 |
大麦 | 9540 | 10812 | 13.3 |
休耕地 | 10710 | 8045 | -24.9 |
オート麦 | 4751 | 5682 | 19.6 |
ドラム麦 | 4350 | 4950 | 13.8 |
エンドウ豆 | 3485 | 3565 | 2.3 |
コーン | 2786 | 3511 | 26.0 |
大豆 | 3059 | 2931 | -4.2 |
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- ミッドランドスクエア素通り --- ◆
「元気な名古屋?」を象徴するビル”ミッドランドスクエア”が完成して久しい。こういう晴れがましい場所は敬遠しているが、先日名駅で時間をつぶさねばならなくなり、ちょっとだけ歩いて来た。しかし、私の興味はこのビル本体ではなく、工事中に不通となっていた地下通路である。
以前、名古屋の超マイナーな地下街として中経ビル、第二中経ビルのことを書いた。その頃は、ミッドランドスクエアが工事中であり、名駅方面から中経ビルに至る地下通路は塞がれており、まさにマイナーな地下街として、孤立していたのである。そのマイナーな地下街へ、名駅から地下通路が開通したら・・・、いったいどうなってしまうのか?と心配していた。
美しい近代的なビル、それはそれでいいが、そんなんばっかりでは面白みがない。大阪は梅田より難波、それより新世界、はたまた天下茶屋。東京は新宿や渋谷より神田界隈、それよりも浅草、根津、谷中・・・。どうも大資本の大きくてきれいなビルには魅力を感じない性格なのだ。名古屋では大須や名駅西側がそんな場所だと思うけど、そこまでディープでなくても、ちょっと一息つける、普段着で行ける場所が、ビル街でも必要だと思う。
この頃の商業ビルができると、まずブランドショップが入る。ミッドランドは当然そうだし、最近のデパートも同じ。一階は「こんなん誰が買うねん?」と思うような、超高級ブランドショップのオンパレード。先日、実家のある神戸に行ったけど、大丸も一二階はブランドショップメインに変わっていた。そんなにブランド売れるのかなあ???。ヴィトンのハンドバッグが数十万円なのに、椅子が「7万円です」と言うと「高いですね」と言われる。ヨーロッパのブランドは実にうまい世界戦略を展開している。その多くは女性がターゲットだから、手作り家具屋も女性をターゲットにしないとね。
話が横道にそれてしまったが、ミッドランドスクエアの超キレイで明るい地下街、ガラス張りの飲食店を見ながら奥のガラスの扉を開けると、そこに中経ビルへの地下通路が待っていた。人気が多くて華やいだ雰囲気のミッドランドスクエア地下街とは、ガラス戸一枚隔てただけで人気がない中経ビル地下街は、全く空気が違っていた。そこには前と変わらないマイナーな地下街があったのである。地下通路が再開通後も閉店している店は多いが、安い中華の店「ラーメン亭」は健在だった。中経ビルを抜けて、道路に出ると、向側に山道具の「駅前アルプス」がある。この辺りの雰囲気は、秋葉原の山道具屋さん付近と似ているかもしれない。
それにしてもミッドランドの人出と中経ビルの人気のなさの差には驚いた。今の子供達が、美しいビルに、若くてきれいなお母さんに連れられ、キレイなレストランで食事をする。そういうのに慣れてしまったら、この先いったいどういう人生を送るのだろう。何の根拠もないけど・・・、マイナーなビル、個人の商店街、ちょっとゴミゴミした場所、変なおっちゃんのいる町、そういう一昔前の街や風景を知らないと、将来「危うい」人間が多くなるような気がする。
2007年8月
目次
・木材加工用機械作業主任者技能講習から
・関西人の名古屋界隈事情--- ラーメンブームの後 ---
◆ 木材加工用機械作業主任者技能講習から ◆
7月上旬、名古屋市内の「木材会館」で行われた「木材加工用機械作業主任者技能講習」を受講してきました。丸鋸盤などの据え置き型の木工機械を5台以上持つ事業所では、この講習を受講し、木材加工用機械作業主任者の資格を得た人を選任しなければならないことなっています。一人の工房や木工教室では、このような講習に参加する義務はないと思われますが、機械の台数や規模から見れば、同等の注意義務はあると言えますし、法的な安全に対する義務を知っておくことは、木工教室であっても大切ですので、お願いして参加させていただきました。実務経験が3年以上あれば、各都道府県の「林業・木材製造業労働災害防止協会」(林災防と略称するようです)に問い合わせをすれば、詳しいことがわかると思います。愛知県では年3回講習が行われ、受講料は二日間で一万円です。最後に試験があり、それに合格すれば顔写真入り修了証をもらえます。作業現場ではこれをたえず携行しなければならないそうです。
講習は全て講義で実技はありません。テキストに沿って木工機械の安全な使用方法について説明を受けます。ですので、やはり3年ぐらい実際に木工機械を使った経験がないと、講義の内容を理解するのは難しいのではないでしょうか。今回一日半の講義をされた講師の先生は、長年製材業に携わっておられる方で、現場のことをよく知っておられ、また安全に対する熱意の感じられる方でした。二日目の午後は厚生労働省の方(だと思う)が、関係法規の解説をされました。淡々と法律を読まれる講義は、もともと法律のような読みづらい文章が苦手な私には少々つらかったです。最後に、3択25問の試験があります。運転免許の学科試験とよく似た感じで、簡単ではありますが、講義を受けていないと合格点を取るのは難しいように思いました。
写真は、配布されたテキストです。講義を受けずにこれを入手するのは困難かと思いますが、念のため発行元に問い合わせたところ「各都道府県の林災防に問い合わせてみてください」ということでした。テキストは全275ページ、帯のこ盤、丸のこ盤、かんな盤、面取り盤、ルータについて、各々の構造の解説や安全装置、安全な使用についての注意などが、図を交えて、かなり詳しく解説されています。また後の方には、事故の事例や、関係法規についての解説があり、木工関係者は、一度見られるとよいと思います。
この講習の内容は、このような場で簡単に紹介できるものではありませんが、私が以前から疑問を持っていた反発(キックバック)防止装置や接触防止装置について、法的な規制はどのようなものか、それがわかりましたので紹介したいと思います。ただ、あくまで私の解釈であり、法的に正しいかどうかについて責任はもてませんので、下記厚生労働省のホームページを参考に、読まれた方ご自身の判断・解釈をお願いします。
このページに右側のメニューから「所管の法令、告示・通達等」を選び、法令検索、労働基準、安全衛生、その中の・木材加工用丸のこ盤並びにその反ぱつ予防装置及び歯の接触予防装置の構造規格と・手押しかんな盤及びその刃の接触予防装置の構造規格を主に参考にしてください。その中では、木工機械作業現場で生じた事故の約半数を占める「丸のこ盤での事故」を防ぐための「反発防止のための割刃」と「接触防止装置」、それに「手押し鉋盤の接触防止装置」設置の三つの義務があるということは最低限知っておくべきことだと思います。
1、丸のこ盤の反発防止装置について
以前聞いていたものよりも、ヨーロッパの規格を取り入れたのでしょうか、より実際に即したものになっていました。横切り専用丸鋸など、反発が起こりにくいものには設置義務はありませんが、いわゆる縦びきでは、反発を防止する「割刃」(スプリッター)を設置する義務があります。
割刃の形状は「丸のこ刃の出ている部分の後ろ半分の三分の二以上にわたって、のこ刃の先端との間げきが12mm以内で沿う形状のもの」と規定されています。ただし、溝突きなどの加工に支障がでないよう、割り刃の上端が、のこ刃の「谷」(刃底)の高さまでは削ってよいと、テキストを読むと補足がありました。文ではわかりにくいので、ウチの機械を例にとって説明します。
写真の割刃は、納入時は今よりも高く、そのままでは溝加工はできませんでした。それで、上部を削って、直径255mmの刃よりも少し低くなるようにしています。このような改造は、法規上も許されていると私は理解しています。
また、誤解されることが多い割刃の厚みについての記述ですが、「割刃の厚さは、丸のこの厚さの1.1倍以上で、かつあさり幅より薄いこと」とされています。「丸のこの厚さ」とは、のこ身の厚さを指しています。ですので、次のように書くとわかりやすいかと思います。
丸この(のこ身)の厚さの1.1倍 =< 割刃の厚さ < あさり幅(切れる幅)
これわかるでしょうか、要するに「のこ身より厚くて、実際に切れる幅よりも薄い割刃を、丸のこ刃の後方に沿って設置しないさい」ということなんです。
ただ、大変残念なことに、昇降盤とか傾斜盤とか呼ばれる、小さな工房家具屋さんがよく使う木工機械、もう日本で作っているところはないそうですし、中古の機械では、このような規格の割刃を鋸の高さと連動して上下させる機構を持たせることは実際には不可能に近いと思われます。大手電動工具メーカーが発売している丸のこ盤を見ても、割刃と接触防止装置が組み合わされているタイプがほとんどで、割刃は丸のこ刃よりもかなり高くなっています。このため、溝突きなど、材を切リ落とさない加工では、いちいち割刃を外さねばならないのです。これが割刃が付けられている製造現場が少なくなっている原因の一つだと思います。三日月型の割刃などは日本の機械で付いているのを見たことがありません。能率を落とさずに、法律の求める安全基準を満たすには、高価で入手しにくいヨーロッパ製木工機械を購入するしかないのが現状かもしれません。ぜひ、技術のある日本の木工機械メーカーさんに頑張ってほしいと思います。
2、接触予防装置
講習を受けて、現場で実現がより難しいなと感じたのが接触予防装置です。以下が法律の規定です。
歯のうち割刃に対面している部分及び送給する加工材の上面から8mmまでの部分以外の部分を覆うことができ、かつ、その下端をテーブル面から25mmを越える高さに調整して使用できることができない構造であること。
これも、文から理解するのは難しいのですが、安全カバーの下端は、テーブルから25mm以下であり、材の上端から8mm以下であるというのです。このとおりに解釈すれば、25mmを超える厚みの材を切断することはできないことになります。ただし、これは固定式の場合で、可動式の場合は、安全カバーの前面が材に接していればよいとのことです。
これをウチの写真で説明しますと、写真のアクリル製の安全カバーは上下に自由に動く「可動式」です。そして、前の部分が材に接していますし、透明なカバーを通して刃先を見ることができます。これなら、法的にOKだと、解釈しています。でも、普段、邪魔なので、安全カバーは取り外しています。
3、手押しかんな盤の安全装置
刃の接触予防装置についてはも可動タイプと固定タイプに分かれて説明されています。どちらも、テーブルとのすきまが8mm以下となるようにしなければなりません。日本では半回転する可動式が一般的ですが、私が自作しているような木製の固定タイプも、図入りで取り上げられており、私自身が好んで使ってきた木製安全カバーは法的にも問題がないことを確認しました。
丸のこ盤の割刃や安全カバーに比べ、手押しかんな盤の安全カバーは固定式であれば、対応はしやすいと思います。ウチ固定安全カバーは、9mmの合板の両端に5.5mmの合板を接着し、刃にカバーが接触しないようにした板に長穴をあけて、ノブで位置を固定する方法です。テーブルとのすきまは全くありません。これなら簡単に作ることができます。最近、小さな手押しかんな盤を併用し始めましたが、それについている回転式の安全カバーは、意外に使いにくく、私自身はこの手製安全カバーの方が格段に使いやすいと感じています。また、写真にあるような、押し板も、使用を推奨されています。
最後に一言
以上、簡単に書きましたが、他にも沢山の法的規定があります。たとえば、「手押しかんな盤のテーブルと刃先のすきまは3mm以下にしなければならない」とか、割刃の材質についても規定があります。しかし、木工機械使用者が簡単に対応できる規定はそれほど多くはないと感じました。それだけに、現在日本の木工機械メーカーの多くが廃業したり、製造を中止していることが残念でなりません。
最近入会させていただいた「木の仕事の会」のメンバーの方に丸のこ盤の割刃と安全カバーの装着状況をお聞きしたところ、日本製の中古木工機械を使っておられる方が多く、ほとんどは入手された時から、どちらの安全装置も「付いていない」、また「付けるけることができない」状態だったようです。前にも書きましたが、木工機械での事故の半数は、丸のこ盤、それも縦切り作業での事故が多い現状ですし、さらに指を切った程度の比較的軽くて届けられていない事故の数を加えると、丸のこ盤で事故をなくすことができれば、木工機械による事故をかなり減らすことができると思われます。この点、ヨーロッパ製のアーテンドルフの丸のこ盤などは、割刃があっても通常の木工作業には全く支障がないように作られていますし、安全カバーもSUVA社など使いやすいタイプを発売しています。これなどは、使用者が独自に安全装置を作る際の参考になるのではないでしょうか。
米国で人体がふれると丸のこが瞬時にストップして最小の怪我ですむという安全装置が開発され、日本でも取扱をする会社があるようです。ただし、この装置では反発による重大な事故を防ぐことはできませんので、やはり割刃の装着は必要になります。また、そのコストや、非常停止したのこ刃の交換費用など、ランニングコストもかなりの額になると思われます。
また、法律に関して、私の率直な感想を書きますと、これらの法律は木工機械を使う人の安全を確保することは当然ですが、それと同時に不備があれば、事業主の方にペナルティーを課すという側面もあるように感じました。たとえば家具工場で指を切るような事故が起こった時、労災保険を使わずに、個人の保険で治すように会社からお願いされることがあると聞いています。労災保険は怪我した方には支払われますが、もし事業者が上記のような木工機械使用に関する法律に違反している部分があれば、罰則金を払わされることがあるということでした。それだけではなく、悪質な場合には、懲役を含み実刑も課せられることがあるそうです。
木工を楽しむにしろ、仕事とするにしろ、怪我をしては何にもなりません。「法律がこうだから」というのではなく、身近にできる安全対策があれば、すぐに取り入れ、実施の難しいような対策も、それを目指していくことが大切ではないかと思います。まずは、丸のこ盤と手押しかんな盤の安全対策を再考してみて下さい。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- ラーメンブームの後 --- ◆
ちょっと前まで「ラーメンブーム」はすごかった。テレビ番組でも、毎日のようにラーメン屋さんが紹介されたりしていたように思う。ここ名古屋でも、ラーメンブームに乗っかって、至るところに新しいラーメン屋さんができた。お隣の春日井市でも「春日井ラーメン祭り」というイベントを3年間ぐらい続け、ラーメンで町おこしをしていた。また、近所の尾張旭市には「尾張旭ラーメン街道」というのがあって、印場駅から四軒家の交差点に向かって数軒の有名ラーメン店が並んでいた・・・、ラーメン街道というほど立派ではなかったけど。
先日、尾張旭の以前行ったラーメン屋へ行ったら閉まっていた。ウチから近い春日井のあるラーメン店も閉店。そう、ラーメン店の閉店が続いているのだ。ざくっと計算してみて、尾張旭市では、私が知る限り、ここ一年ほどの間に5店以上が閉店している。他を見ると、春日井市で4店、瀬戸市でも4店、守山区でも3店がここ一年ほどの間に閉店しているのだ。
その多くは、個人経営のお店である。ラーメンブームに少し遅れて、大手の外食産業やラーメンチェーンが、郊外に広大な駐車場を持つラーメン店をどんどんオープンしたのだ。普段食べるラーメンだから、毎回凝った店を選ぶ人はそれほど多くない。車が幅をきかす名古屋圏では、車で行きやすい、広い駐車場を持つロードサイドのラーメン屋の方が便利なのは間違いない。個人のお店で、そんな駐車場まで確保するのは大変だろう。
外食産業としてのラーメン屋さんは、緻密な経営戦略をたて、売り上げアップを図る。わかりきったことだが、売上を上げる方法は二つしかない。「客数を増やす」ことと「客単価を上げる」ことだ。したがって、まずは派手な看板やうたい文句で客を呼ぶ。また中華そば290円という格安店もある。格安店であっても、サイドメニューを増やすことで、客単価を上げることができる。ウーン、こういう大手の経営戦略との競争に打ち勝つには、個人ではよほど味に特徴があったり、評判がないと、無理だと思われる。結局、残っているお店は、前からやっている老舗と呼ばれるようなお店である。この状況、我々のような手作り家具屋の現状とよく似ているかもしれない。
さて、一人のお客に戻って、メニューを見てみると・・・。数年前まで、ラーメンは500円程度のものが多かったと思う。ところが、ラーメンブーム以降、ラーメンの平均的値段は650円〜700円程度になってしまった。この間、物価上昇はあまりなかったので、うまく客単価アップ作戦に乗せられたという気がする。ラーメンは、庶民の味ではなく、こだわりの高価なラーメンに変身をされたわけである。
そんななか、名古屋のほとんどの人が学生時代からお世話になっているという「スガキヤ」は、今でも同じ姿勢を貫きつつ、静かに、そして着実に、繁盛している。最近、スガキヤは割箸を全廃し、おなじみの先割れスプーンを新型にすると発表した(写真)。旧型は私には食べにくいと感じていたので、まだ使ったことはないが、新型は期待できる・・・だろうか?
2007年7月
目次
・KERVルーターテーブル
・関西人の名古屋界隈事情--- 新聞他雑感 ---
◆ KERVルーターテーブル ◆
木工を始めてから二十数年、教室をスタートしてから8年目、機械や道具が故障したり不調になったりすることが多くなりました。自作のルーターテーブルもそのひとつ。この頃、何となく、うまく削れないなあと思って、定規をあててみたら、ルーターの重みのせいでしょうか、中央部が0.5mm以上下がっていました。以前からその傾向はあったので、3年ほど前LeeValleyToolsからスチール製のルータートップを購入し、ルーターテーブルとして、時々使っています。が、教室の皆さんに使ってもらうには、問題がありました。それは「錆」です。夏場など、汗の多い人が使うと、すぐに錆がでるのです。昇降盤や手押鉋なども同様で、夏場は防錆剤を持って一日に何度も定盤を拭くほどですが、これらは代用の機械がないので仕方ありません。ルーターテーブルは複数あればより便利ですので、新たに一つ作ることにしました。
最初はベークライトの厚板を入手し作るつもりだったのですが、オフ・コーポレイションさんが販売されているKERVルーターテーブルが値段も手ごろで良さそうに見えました。アルミの鋳物製トップは、木よりもしっかり平面が出ているでしょうし、錆の問題もありません。ベークライトや天板の合板、金具などを買うことを考えると、二万円弱の価格は安いように思えたのです。早速注文し、届きました。箱には台湾製の文字があります。今までの経験から、台湾製はかなり信頼できるように思います。
組立は簡単でしたが、高さが足りないので、写真のような脚を作りました。テーブルトップの高さをいくらにするか迷ったのですが、作業台と同じ高さ、86cmにしてみました。以前は95cmほどあったので10cm低くなりますが、テーブルソウなども高さ85cm程度の物が多いようです。ルーターの取り付けは、4つの金属爪と位置決め用金具を二重に使う、わかりやすい方法です。しかし、爪がプランジルーターの高さ調整用レボルバーに当たったりするので、結局、3つの爪で取り付けることにしました。強度的にはそれで充分でしょうし、高さ調整のためにジャッキで下から支える構造ですので、全く強度的な問題はありません。
写真は、そのジャッキ部分です。車のジャッキでいいですが、私は高さが調整できるサブローラーを使っています。なお、ルーターの支柱内にあるバネは抜いています。そうしないと重さとバネの力が加算され、持ち上げるのに倍以上の力が要るのです。マキタの3612Cなどは、このようにバネが外せるかどうか知りませんが、ルーターテーブル専用にルーターを購入される場合は、バネが外しやすい構造の方が望ましいです。
教室で使うので、集塵機は必須です。先週1140Wの集塵機を連動させたら、ブレーカーが飛びました。かなり電力消費量の多いルータに1000W以上の集塵機を連動させるのは無理があります。それで、写真のような400Wほどの小型集塵機を脚部に組み込みました。集塵力は弱いですが、これでブレーカーが落ちることはないでしょう。というのは、この組み合わせで今まで問題なく使ってきましたので。
さて、使用感はどうでしょうか。思いつくまま、箇条書きで買いてみます。ただし、使われる方の事情によって、評価は変わると思いますので、参考程度に見て下さい。
まだ一ヶ月ほどしか使っていませんが、このルーターテーブル、充分使えると思います。20mm厚の合板を買って、10mmのベークライト板を埋め込み、フェンスを作って・・・と、ルーターテーブルの自作は、結構な手間・時間・経費がかかります。作ること自体を楽しみたいのであれば話は別ですが、ルーターテーブルが早くほしい方には、良い選択枝のひとつであると思います。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 新聞他雑感 --- ◆
名古屋へ引越てきた当初、読みなれていた毎日新聞をとっていた。ところが、広告がほとんど入らない。別に広告がほしいわけではないが、あまりに少ないと、地元の生活情報が入らないのである。それで中日新聞にしたら、毎日毎日、膨大な量の広告だ。調査によると名古屋市内での中日新聞のシェアは85%を越えているらしい。恐ろしい、けど名古屋では新聞と言えば「中日新聞」を指すほど。だから、前に住んでいた京都南部のように、「ウチの新聞取ってください」と、朝日が来たり、読売が来たり、毎日が来たり・・・することはない。当然のことながら、「奥さん、半年タダにするから」というゴリ押しみたいな営業さんも来ないので、平和と言えば平和です。
その中日新聞の記事、私はわりと気に入っている。今のところ、妙な偏りはないように感じるし、社説なども賛同できる論説が多い。政治には詳しくない方だが、どんな法案でも通る現在の強引な与党体制には危機感を感じるのに比べ、全県レベルでも80%近いシェアを持つ中日新聞は、意外と真っ当である。余談だが、東京新聞は中日新聞傘下ということだ。また、学生時代によく読んだ登山雑誌の「岳人」、これも中日新聞社の発行である。結構有名で実績がある。
こちらに来て驚いたのが、雨の日の新聞。ちゃーんと、薄いポリ袋に入って届くのだ。この袋、犬の散歩で使うウンコ袋に丁度良い。今はどこの地域でも、このような袋に入っているのでしょうか?少なくとも、前に住んでいた京都ではこんなサービスはなかった。また、新聞販売店さんが、古新聞とダンボールを月に一回、各家庭をまわって回収してくれる。コレは結構便利で助かっている。
そして時々驚くのが、写真の小冊子、清水屋の広告兼割引券の手帳、「きてみて帳!」である。
清水屋というのは、春日井市に本拠がある、地元百貨店というかスーパー。ここの特売セールの折込広告がこの「きてみて帳」なのだ。分厚いこの冊子は、一枚ずつ切り離せる、お買い得商品割引券の集合体で、これを手に「何か安い物ないか」と買い物に行く・・・のだろうか?
この冊子が小さな紙袋に入れられ、新聞に挟まってやってくる。不思議とその日は他の広告が少ない。中日新聞の間に何か関係があるかどうか、知らないが、これは不思議である。タダ単に、大量の広告といっしょに挟みにくいだけかもしれない。ウチのカミさんは、これが嫌いである。普通の広告のように、廃品回収に出すために積んでおくのが難しいし、これを手にとって買い物に行くのも小恥ずかしいというが、評判がいいから続いているのだろう。他の地域でもこういうの、あるんでしょうか?
2007年6月
目次
・新ブランド小型手押鉋の使用感
・関西人の名古屋界隈事情--- 茶店の禁煙席 ---
◆ 新ブランド小型手押鉋の使用感 ◆
デルタ木工機械の日本代理店でよく知られているリブロスデルムンドさんから、Spokeshaveという新しいブランドの木工機械が発売されました。詳しい事情はわかりませんが、米国製木工機械で有名なデルタ社がブラックアンドデッカー社に買収され、世界のデルタブランド木工機械の販売網が混乱しているらしいのです。それで、デルタの機械を作っていた中国の工場から、別のブランド名で輸入販売を開始されたということです。
工房では中古の300mm手押鉋盤を使っていますが、生徒さん達が将来自分で家具を作っていくためには、手の届く価格の小型木工機械に慣れておくことも必要ですし、またメインの機械が故障した時のためのサブマシーンとしても購入しました。手押鉋としては一番安い150mmのタイプ、本体69000円+送料、代引手数料、消費税です。なお、他に台が箱型になり、ラック&ピニオンでフェンスが移動できる同じタイプと、幅200mmまで削れる重さが200kg近いタイプもラインアップされています。
このタイプは95kgのダンボール箱一梱包で届きました。パワーゲート付トラックと運転手さんと助手二人で、荷物を作業場まで降ろしてくれます。「お届け先に降ろすだけ」の輸送契約ですから、「二階に上げてください」などと無理な注文はできません。余談ですが、台が箱のタイプは、上部本体73kgと台とモーターの二梱包、最も大きなものは上部本体と、台、それにモーターという3つの梱包になるということでした。とにかく100kg内外の荷物を運び、そして組み立てることができる人手と工夫が必要になります。
箱を開けると、発砲スチロールのクッションに寝かされて、本体が横たわり、その上にモーターや脚部が入っていました。鋳物の定盤部分は、すべてベタベタに油が塗られ、ビニールシートで覆ってありました。組立の説明書は日本語で、わかりやすく書かれていました。説明書にしたがって組み立てます。一番の難所は、73kgの本体を裏向けに角材の上に置き、脚部をつけて、ひっくり返すところです。卒業生の方一人に手伝ってもらいましたが、それでもちょっと危ない作業でした。その後は、モーターやフェンスなどを取り付けて一応完成です。ただ、これから刃物のセッティングや本体可動部の調整が必要になります。
前後ともテーブルは高さを変えることができます。日立やマキタの小型自動鉋兼手押鉋は後方テーブルの高さは固定なので、この点はすぐれていると思います。後方はネジを回す方式、前テーブルは、レバーを上下させる方式で、ネジ式に慣れた私にはちょっと違和感がありました。俗に「カミソリ」と呼ばれる、テーブルの昇降可動部分は最初は動きが悪く、慎重に再調整をしました。
垂直フェンスの支持機構は、やや剛性が甘くて、調整に手間取りました。フェンス下部を浮かすのではなく、後方テーブルに載せるようにしないと、垂直がうまく決まらないようです。またフェンスを前後に移動すると再調整が必要でしたが、この辺りは日本の小型木工機械も弱く、調整機構を含めて考えると、この機種の方が優れていると思いました。
多分、苦労されるのが刃のセッティングだと思います。別売のセッティングゲージを買えば、もう少し楽かなと思いますが、私は手元にあるマグネットセッティングブロックで次のようにしてセットをしました。
書くと簡単だけど、実際はかなり難しい。要は、後方テーブルの高さと刃先の高さが一致するようにセットするわけです。この際、多くの日本の機械のように、バネで刃を押し上げるタイプの方がセットしやすいように思います。細い板バネが手に入ったら、刃高調整ネジをとりのぞき、バネでセットするようにするつもりです。
気にいらなかったのは安全カバー。カバーと台のスキマがかなり大きく、指が入るどころか、薄い板は下にもぐってしまうのです。そこで、カバーの軸の根元を切断して、1cmほど低くしました。それでもまだスキマが大きいので、ヨーロッパ式カバーを自作しようと思っています。
一応使えるようになって二週間。刃先がウチの手押しよりも鋭角なので、よく切れる感じはします。しかし、刃口に鋼が入っていないためか、刃口の幅が4cmほどあり、ウチの大きな手押しの3cm(これはかなり狭い)に比べるとちょっと恐い感じがします。
さて、自宅で家具を作るために初めて手押し鉋を買われる時、日立やマキタから出ている100Vの小型木工機械とどちらにするか迷われることと思います。私は昔日立のP-50(現在は製造されていない150mm手押と自動鉋盤、重量約80kg)というタイプの小型自動鉋+手押鉋を使っていましたので、それとの印象の比較を買いてみます。今の軽量機種とは違うと思いますが、参考になれば幸いです。
この手押鉋 | 古い日立の手押・自動鉋盤 | |
重量 | 95kg(手押のみ) | 80kg(自動150mmを含む) |
価格 | 6万9千円 | 買値で15万円ぐらいだった |
モーター | 誘導 | ブラシモーター |
入荷時の姿 | 定盤以外はバラでダンボール箱入 | すぐに使える状態で木枠梱包 |
後ろテーブル | 可動 | 固定 |
前テーブル | レバー上下による調整 | ネジ式 |
音 | 比較的静か | かなりカン高い音 |
刃物交換 | ヘッド固定装置がなくやや困難 | マニュアルどおりにすれば簡単 |
フェンス | 太い六角棒でスライドする構造 | 金属アングルとボルトで固定 |
フェンスの調整 | レバー | ボルトとレンチ |
試運転まで | 組立と調整を自分でやる | 木枠をはずすだけで使える |
加工精度 | まずまず | まずまず |
振動 | モーターの振動がやや気になる | 高回転だが、ブレは感じなかった |
機械のでき | ビスなど、やや不安な材料もある | 不安を感じるような部材はなかった |
集塵ポート | 付属(直径100mm) | 無し(オプション) |
アフターサービス | * 下記参照 | サービス網が多く安心。 |
補足説明 | * お客様ができればお客様の方でやっていただき、そのパーツを 取り寄せるようにしています。ただ、当方の方で修理、乃至は故障の チェックすることもあります。(リブロスデルムンドさんより) |
中国製木工機械は、ホームセンターなどにはかなり前から入っていましたが、木工機械という、どちらかというとローテクの分野ですから、これからますます中国製が多くなってくると思われます。私も値段の安さに釣られ、中国製のボール盤や旋盤など買いましたが、ボルトの頭がつぶれたり、可動部分の仕上が悪くて動きが悪かったりしました。またモーターの回転バランスが取れていないのか、振動が多い機種が多いようです。
この手押鉋盤は、定盤の仕上など、かなりいい線いっています。しかし、国産に比べると鋳物の品質がやや劣るように思いますし、小さなイモネジ等の品質もあまり良くはありませんでした。ウチにあるデルタのバンドソウには"Made
in America"の文字が入っていて、「最近のデルタバンドソウよりいい」とよく言われます。このSpokeShaveブランドが最近のデルタと同じなのか違うのか、よくわかりません。多分、本体はそのままで、ネジなどパーツ部分の品質が少し劣っているのではないかと想像しています。
鉋盤やテーブルソウなどでは、何より回転精度が要求され、それは安全にもつながります。国産木工機械メーカーが製造をやめていく中、これから、どんな機械を買えばいいのでしょうか?私や少々高くても、「ここぞ!」という機械には、信頼のできる精度よい機械を買うべきだと思います。精度が高く、剛性のある機械の使用感を知っていれば、安い中国製機械を使う場合でも注意すべき点が見えてくるのではと思います。
この機械は組み立てて使用するまでのハードルがかなり高いです。ですから、ある程度の木工機械の使用経験があり、機械を修理する能力のある方におすすめします。木工機械初心者の方は、日立やマキタから軽量タイプの自動鉋と手押鉋盤が出ていますので、それらを購入される方が、少々高くはなりますが、よいと思います。
教室ではこの手押鉋盤とマキタの2012NB自動鉋をペアとして使っています。マキタの2012NBはとてもよくできていますが、やはり何人もの生徒さんが使うには、無理があり、比較的小さな部材の分決め専用としました。個人で椅子作り等に使われる場合、このペアでほとんど問題はないと思います。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 茶店の禁煙席 --- ◆
学生時代、カッコつけて、喫茶店のことを「茶店」、「さてん」ではなく「ちゃみせ」と言ってました。名古屋では、そんな言い方は聞いたことがありません。多分、正しく「きっさてん」と呼ぶのだと思います。私らの頃は、「ちゃみせでチャーでもしょうか?」というのが、勉強しないで遊びほうけている学生の定番文句でありました。ああ、また昔話をしてしまった。昔話が多くなると、歳だそうです。じゃ、やめよ。
話は変わりますが、ナント、愛知県は「人口あたりの喫茶店密度日本一」だそうだ。詳しいデータは知りません。こういう統計は、数字マジックの部分があるので、実感と異なる場合が多い。私も名古屋に8年ほどいますが、とりたてて喫茶店が多いと感じたことはありません。名古屋で喫茶店というと、「モーニング」が有名らしい。「らしい」というのは、私自身はほとんど行ったことがないので、その実態を知らないのであります。先日、近所の喫茶店が新聞で紹介されていました。その店の売りは「寿司モーニング」。ナント、朝コーヒーを頼むと、いなり寿司と巻き寿司がついてくるらしい。想像するだけで、なんかグッときます。
また話が変わりますが、最近は喫茶店へ入るとまず「おタバコはお吸いになられますか?」とたずねられる。現在私は煙草を吸わないので、以前は「禁煙席」を希望してました。ところがです、どうも禁煙席へ行くと、環境がよろしくない。どうよろしくないかというと、人口密度が高く、やたらと奥様連のでかい話声が聞こえるわけです。私は、喫茶店でボケーッと、週刊誌のどうでもよいような記事を読みながら、リラックスしたい。ところが、大きな声で、どうでもええ話を強制的に聞かされると、ムカムカしてくる。流石に大人なので、「静かにして下さい」とは言いません。それよりも静かな店、静かな席へ移る方が・・・。
ある日、午後の喫茶店における禁煙席とは、奥様達のおしゃべりのための席であると気づいた。確かに、喫煙席を見渡すと、静かな窓際だったりするのだ。それから、迷わずに喫茶店では喫煙席を選んでいる。もちろん煙草の煙は避けたいので、できるだけ、人から離れたところに座る。もちろん、後から喧しいお客さんが入ってくることもあるが、禁煙席に比べるとはるかに快適なことが多いのである。多分、店のオーナーにとっても、長時間おしゃべりしているグループのお客はちょっと迷惑。でも邪険にもできない。んで、どちらかというと店の奥まった席などに集める作戦だと思われます。
外国人はレストランなどに行っても、かなり席の位置にうるさい。ホテルでも、チェックイン後部屋を見て気にいらないので、返金してもらっているのを何度か見たことがある。喫茶店も、安いドトールなどのコーヒースタンド店を除き、環境を買っている部分があると思う。この頃は、喫茶店でゆっくりしたい時、少々高いけど、ホテルの喫茶店を使うこともある。そこまでいかなくても、コーヒー一杯700円ぐらいしてもいいから、ゆったりと一時間ぐらい静かに過ごせる環境の喫茶店がいい。
グダグダ講釈をたれましたが、ただ単にオッサン臭くなったということかも。
2007年5月
目次
・豆鉋の製作
・小型自動鉋2012NBの第一印象
・関西人の名古屋界隈事情--- 流通業界 ---
◆ 豆鉋の製作 ◆
先月の英国南部木工ツアーの際、訪問先へのお土産に、豆鉋を数個作り持参しました。その過程をレポートしました。数枚の写真や簡単な説明で伝わるようなものではないですが、南京鉋より豆鉋の自作は簡単です。なお、今回紹介した鉋では刃物屋さんで小さい刃を購入しましたが、私用には電動鉋用のハイス鋼の刃を切ったものも作っています。
(参考文献:「木工具・使用法」 秋岡芳夫監修、吉見誠 述 創元社)
仕上鉋と比べると大きさがよくわかります。
勾配はこのようにして決めますが、分度器でもかまいません。刃の角度は楢などの堅木では、8.5寸とか9寸勾配(約40度)がよいとされています。
台の下面に、刃先の線を入れ、そこから刃の角度の線を引きます。その線に刃の裏をあてて、刃の厚みを写し取ります。その線とほぼ直角にこっぱ返し側の線を入れます。羽口の厚さは4mm程度にしました。次に台の上面に、スコヤを使って写真のように線をひきます。さらに刃幅を写し、3mm内側に線を入れて、掘り込むエリアを確定します。あとは注意深くV字型に掘り込んでいきます。この際、ノミは木の繊維を断ち切る方向では叩き、繊維に平行な方向は手で押す程度にします。なお、このような小さい鉋は固定が難しいので、穴などの加工が終わってから切断して仕上がり寸法にします。
押さえ溝が一番難しいところ。それで、写真ように刃と同じ形、厚さの木の板でダミーを作り・・・
それを掘り込んだところにあてて、刃の厚みを写し取ります。あとは、回し引きや畦引き、あるいは金鋸等を使って、慎重に溝をほります。仕上は薄刃のノミで行いました。オルファのミニ鋸も役に立ちます。
穴が下面まで達したら、こちらからも薄いノミを入れて、きれいにします。溝の調整や羽口の切り方は、なかなかうまく写真がとれませんでした。既製品の鉋を良く見て、真似ることが一番かと思います。
できあがった豆鉋。ロンドンのマーチンさんから、「頂いた豆鉋、小さい鉋が必要な作業で作っている」とメールをもらいました。お土産でなくても、自分で作った道具には、既製品とは違った愛着がわきます。お時間のある時に、一度作ってみられては如何でしょうか。
◆ 小型自動鉋2012NBの第一印象 ◆
教室用に写真の自動鉋を導入しました。評判や日本製という安心感からマキタの2012NBにしました。購入前に予想していたメリットは次のようなことでした。
総じて評判がよかったのですが、あえて問題点を指摘すると
今回買ったのは替刃式ですが、別途パーツを買えば研磨式に変更可能です。小型の研磨機を買って研磨式に変更するかもしれません。
以上、第一印象でした。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 流通業界 --- ◆
初めて流通業という言葉を聞いて時、トラックに代表される輸送業のことだと思ってました。ところが縁あって流通業で働くことになった時、それは主に「スーパーマーケット」を指す言葉だと知ったわけです。お客相手の客商売ではなく「なるほど、流通業か」と、実際に働いてみて納得したのでした。毎朝、舞午後、トラックがやってきて、カゴ車(食品の入った箱がつまったパイプ製の大きなコンテナ)を下ろしていきます。私が担当していた部門で、少ない時で朝5杯、午後3杯ぐらい、多いときは、10杯、とか20杯もドーーンと荷物が来ます。荷受担当のバイト君が、それを売り場に持って、置いてあるわけです。それをパートさんやアルバイト君達を使って陳列するわけですが、試験の時期になるとバイト君は来ないし、パートさんも3年周期ぐらいで辞めたりするわけです。そうなると、一人か二人で、これらの荷物を開店までにかたづけないといけない。実に体力勝負、まさに「荷物を流通させている」という実感がありました。
今では日本最大になったその会社、当時の会長さんが書いた本、家訓にもとづいたという「大黒柱に車をつけよ!」という本を、昇格試験のために読みなさいと言われ、読みました。要するに、お店の大黒柱をドーンと同じ場所に置いていてはだめで、大黒柱をお客さんの方に動かすような、腰の軽さ、機敏さが必要だということでした。その家訓のおかげでしょうか、この会社は地代の高い駅前ではなく、繁華街から遠く離れた安い土地を大きく確保して、巨大ショッピングセンターを作りつづけ、世界でも屈指の流通グループになったのでした。私が働いていた頃、こんなに大きく立派な会社になるとは、夢にも思いませんでした。あの頃の株を持っていたら、結構儲かったかもしれない。
話は横道にそれました。ウチの家でも毎日の食事は、ほとんどこの会社の店舗で買っています。歩いてもいける距離にあって、大変便利で、ありがたいことです。しかし、ふと周辺を見渡すと、名古屋ドーム前や熱田には超というほど、巨大な複合店舗ができ、ダイエーや、サティーもこの会社系列となり、遠出をしても、例えば、松本でも、高岡でも、もうほとんどどこでも、Jのつくスーパーが目に入ります。
20代の頃、カミさんの実家がある、豊中岡町で8年ほど暮らしてました。阪急電車を降りて、岡町商店街を歩いて、自宅へ帰るのですが、それはそれは賑わっていました。途中に神社があり、たこ焼き屋があり、レコード屋、本屋、小さな食品スーパー、人気のある精肉店などなど。なかなかいい感じだったのです。ところが、この商店街も、今はちょっと横に入ると空き店舗が目立ち、勢いがなくなっています。
名古屋は車が便利な所なので、無料駐車場のある大規模店舗に、より人は集まるようで、「大須」を除き、ほとんどの商店街は火が消えたような状態ではないでしょうか。その点、車が不便な東京は、まだまだ駅前商店街に魅力があるように感じます。下北沢や巣鴨など、なかなか魅力的に見えます。でも次第に周辺から大手資本の流通業界に攻められてきているとか。
どこもかしこも、こんな風に、なっていくんでしょうか?巨大なビル、それを可能にする大きな資本、その資本を有する会社の戦略、そんな巨大な力に、我々の生活パターンを決められていくのでしょうか?。今やテレビの料理番組はセールスと連動しているようです。私がまだ流通業の仕事をしていた時、テレビで「マシュマロ」ダイエットとかなんとかの話があったらしく、突然マシュマロが売り場から消えたことがありました。つい先日は納豆がそうでしたし、なんか末恐ろしい。私も毎日お世話になっている巨大流通業、それは便利なんですが、「流通業が市場支配力を持つ」ことが目的だった時代は終わり、今は完全にそうなっているように見えます。本当は、「ユーザーが市場を変えていく」力を持ちたいのですが・・・。
2007年4月
目次
・ロンドン等の木工紀行
・関西人の名古屋界隈事情--- お休み ---
◆ ロンドン等の木工紀行 ◆
教室の休みを利用して、ロンドンや地方の木工関係の学校・工房を訪ねてきました。まだ写真も整理できていない状態ですが、とりあえず、どんな所を訪問してきたのかを報告します。近日ロンドン紀行としてまとめる予定です。なお、今回は以前私の木工教室におられた、現在ロンドン駐在の橋本氏と、3つの工房そして、家具関係二つの博物館を訪問しました。
マーチン氏の工房
"Furniture and Cabinet Making"という雑誌の120号で見かけたカーブしたキャビネット、その紹介記事で知った方。彼のホームページを見るとわかりますが、ロンドンのナショナルギャラリーの椅子等、世界レベルの家具を作っておられる方です。ですが、たいへん気さくに私達の見学を受け入れていただき、感激しました。
Buckinghamshire Chilterns University College
数年前、国立高岡短期大学(現在は大学になっている)で行われた英国人講師によるセミナーに来られた先生の紹介により訪問しました。家具作りだけではなく、修復や椅子張り、金工、陶芸、など、多岐にわたる物作り、それも大変レベルの高い学校です。そんば世界的な学校で、生徒さん達を前に、私の木工教室作品展や私の作品を大講義室で紹介することになりまして・・・、実に冷や汗をかきました。
デヴィッド・チャールズワース氏の工房と教室
長年購読しているFurniture and Cabinet Making誌によく記事を書いておられ、素敵な工房でプライベートな木工教室をされている方です。工房があるのはロンドンから車で数時間もかかる、海岸線はそれこそ「地の果て」みたいなところに近い、ハートランドという小さくて美しい村でした。
博物館では、
家具の博物館として有名なGeffrye Museum
スウェーデンの木工家のお勧めで、一風変わった小さな博物館Sir John Soane's Museum
その他、有名どころのV&A museum、博物館と言えばの大英博物館、現在美術のTate Modern、定評のある美術館National Galleryなども訪問しました。このように、沢山の場所を効率よく見て回れたのは、現地に詳しい橋本氏の力によるものです。橋本さん、どうもありがとうございました。
2007年3月
目次
・木工機械の安全装置について
・関西人の名古屋界隈事情--- 関西風うどん・そば ---
◆ 木工機械の安全装置について ◆
楽しみのための木工教室では、何よりも安全が優先される(製造現場でも同じと思う)。たとえばウチでは、上手に切れなくても、テーブルソウで危ないカットをするよりは手で切ってもらうのが本筋だと考えている。手鋸は、いろんな場面で自由に使え、慣れればきわめて便利で速い道具だ。当て木を使うなど、工夫すれば、機械に劣らない正確な切断をすることも可能。とはいえ、ある程度効率よく家具を作るに、丸鋸盤などの木工機械を使う場面は多い。先日、教室で木工機械の安全について話をした際、恥ずかしいながら、私自身が日本の安全装置についての規則を詳しく知らないことに気がつき、少し調べてみた。
社団法人産業安全技術協会のホームページがある。「検定」の中の「法令や規則」にすすみ、そこの「構造規格」というページに割刃や接触予防装置についての具体的な記述が記載されている。そこから抜粋して少し引用をさせていただいた(著作権や版権等、問題がありましたら、すぐ削除しますので、ご連絡下さい)。
(割刃及び歯の接触予防装置の取付け方法)
第六条 木材加工用丸のこ盤は、反ぱつ予防装置として設ける割刃(以下「割刃」という。)及び歯の接触予防装置が、それらの縦断面の縦方向の中心線を含みそれらの側面と平行な面と丸のこの縦断面の縦方向の中心線を含みその側面に平行な面とが常に同一の平面上にあるように取り付けられているものでなければならない。
2 木材加工用丸のこ盤は、割刃が対面する丸のこの歯の先端との間隙が十二ミリメートル以内となるように取り付けられているものでなければならない。
(形状)
第十四条 割刃は、第三十一条の規定により表示する標準テーブル位置における丸のこのさか歯の部分の三分の二以上にわたつて、当該丸のこの歯の先端との間隙が十二ミリメートル以内で沿う形状のものでなければならない。
2 割刃は、その横断面が刃形等加工材を送給するにあたつて抵抗が少ない形状のものでなければならない。
(厚さ)
第十八条 割刃の厚さは、丸のこの厚さの一・一倍以上でなければならない。
接触予防装置とは要するに安全カバーのことであり、割刃とは主に縦引き時に材料が内部の力のバランスが崩れて、鋸刃を締め付けるのを防ぐ、鋸刃の後方に配置される板のことである。割刃はスプリッターとも呼ばれ、反発は欧米で言うこところのキックバックである。安全カバーは、手が刃に触れるのを防ぐのが目的であり、割刃はキックバック(反発)によって材が飛んで内臓を損傷したり、あるいは材を押さえていた手が鋸に引き込まれるのを防ぐ、重要な働きをする。
上記規則は難しい表現で、私自身正しく理解できていないのかもしれない。が、疑問に思うのは厚さの項目だ。鋸刃の12mm後ろに、厚さの1.1倍の割刃がついていて、材を軽く送ることができるのだろうか?チップを含まない、本体の厚みを指しているのかもしれないが、よくわからない。
規則のことはとりあえず置いといて、ウチの工房の機械を見てみる。
日本製の昇降盤。中古で主にホゾ加工や溝突き、段欠き加工に使用。割刃やカバーはないし、簡単につけることはできない。教室では、横切り定規を使用して、ホゾの胴付き切断等に使い、縦引きフェンスを使っての縦引きや溝突・段欠き等は単独では禁止にしている。やはりキックバックによる事故に対する不安があるからだ。
今は製造されていないULMIAのテーブルソウ。主に横切りで使用。通常はこの三日月型割刃をつけている。鋸の厚みは3.0mm、割刃の厚みは2.6mmである。また、高さは鋸刃よりも約3mm下げてセットしている。
上記テーブルソウ用の割刃。左は縦引き用(厚さ2.6mm)で上の安全カバーが付けられる。右は薄刃用で厚さ1.6mm。
このように集塵ホース接続可能な接触予防装置を簡単につけることができる。ただし、低いカットでは横切り定規と干渉するので、通常はつけていない。これをつけると刃先が見えにくくなる欠点もあるが、リップフェンスを使っての縦引き時の安心感は大きい。
生徒さんは使わない、オーストリア製のテーブルソウ。割刃が一種類しか付いていなかったので、削って鋸刃よりも低くセットできるようにした。上記ULMIAの割刃よりも頑丈で、パネルの切断時など、切れた材が刃を横から押したりする場合、それを抑制してくれるようだ。
これにも集塵ホース接続可能なガードを簡単に取り付けることができる。取り付け・取り外しは、ネジを抑えてカバーを垂直にするだけなので、手間はかからない。集塵ホースはつけたことがないが、端を1mm切り落とすなど、木屑が上や横にも飛ぶ場合にはとても有効だと思う。
さて、多くの工場や工房を見たわけではないが、日本製の木工機械で、割刃が付いているのを、私は見たことがない。木工の職業訓練校でさえ、多くの場合、外しているか、取り付けが困難だろう。実際、安全衛生規則には「作業に支障をきたす場合はつけなくてもよい」と解釈できる但し書きがあるし、「反発の恐れがない横切り盤を除く」などと書かれている。しかし、日本製機械には、鋸刃と連動して高さが変わる、割刃を簡単に取り付けることができる機構がないのが、一番の理由ではないだろうか。指欠損など、痛ましい事故の多くは、溝突きや段欠きなどで起きている。三日月型の割刃でそのような事故が防げるとはいえないかもしれないが、鋸刃後方にある手が何かのキックバックで戻され、刃に接触するような事故はある程度防ぐことができるかもしれない。実際、使用してみると、小さな三日月型割刃があるのとないのとで、かなり安心感が違う。材を途中から切り込むような切断をしない限り、この三日月型割刃はまったく邪魔にならないので、常時つけて作業をすることができるのだ。余談だが、インターネットのビデオで見たFESTO社の手持ちの丸鋸には三日月型割刃がついていて、パネルを途中からでも、切り初めは割刃が引っ込み、切れ目ができると出てくる優れ物だった。でも日本での価格はあまりに高い。
安全カバーについては、やはり邪魔になることが多かったり、刃先を目で確認しにくかったりで、ウチでもつけていない。でも、これがあると安心感があることは確かなので、これから、なんらかの方法でつけることができないか、考えてみようと思う。より高価な木工機械では、安全カバーは、割刃と別に独立した支柱から、アームが伸びて支持されているものが多いようだ。そうでないと、作業に応じて、つけたりはずしたりが簡単にはできないのかもしれない。
次に手押し鉋盤を見てみよう。
今使っている自作カバー。木端削りの時は、写真のように板とのスキマを5mmぐらいにして固定し、作業をする。
幅広の板の場合は、90度回転させて、全面オープンすることができる。多くの場合、安全作業のため、押板を併用している。
ところが、ヨーロッパの機械をみると、安全カバーは、刃を全て覆うタイプなのである。カペラゴーデンで見た実際の装置はかなり複雑な機構を持ち、板削りの場合はパンタグラフのように上下して厚みに応じて可動し、木端し削りの場合には、カバーが手前に自動的に移動する優れものだった。カバーを90度回せば、簡単にフルオープンに。日本ではSUVAMATICという安全装置が発売されているが、装置だけで20万円ほどもするので、オイそれとは買えない。
日本で入手可能なスイス製安全カバー
パンタグラフ方式ではなく、上下可動スタイルで自作をしてみた。SUVA社のは、上下と前後にスムースに動くのだが、両方は難しいので、まず上下方向のみ可動で、前後は手動にしてみた。
木端削りの幅を決めるのは今までと同じ手動で、上下方向には二重にしたステンレスパイプでスライドするようにし、高さは30mm程度のスポンジばねで浮かした。
材を送り込むと、板が少し持ち上がって、手押鉋盤の刃の上を通る。
材が半分ほど後方テーブルにうつったら、スムースにそちらに力を移して、引っ張るように手押し鉋をかける。
これでいけるとおもったけれど、ブログにも書いたように、多い人で一ヶ月に二回、少ない人だと一年に一回ほどしか手押し鉋に触らないという教室の現状では、機械講習の時におこなった作業のやり方を変えるということの方がリスクが大きいと気がついた。それで、残念ながら、元の手動カバーにもどしている。というのも、手押し鉋では危ない場面は今までなかったので、難しい機構よりも簡素なカバーでよいのかもしれない。
割刃と安全カバーだけではなく、刃物の形状そのものが「危険」と深いかかわりがある。例えば、刃数の少ない四角形の溝切りカッターやS字型のカッターなど、キックバックを起こすと、とんでもない力で材が飛んだりする。このように刃物形状はとても重要だが、また別の機会に。
以上、安全作業について、少しでも参考になれば幸いです。なお、ここで紹介した自作の装置、安全性には何の保障もありません。参考にして作られ、それを使用される場合、あくまで自己責任でお願いします。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 関西風うどん・そば --- ◆
何度か「関西風うす味のうどんが恋しい」と書いたと思う。「人類は麺類」と思っている私、オバQの小池さんよろしく、カップ麺も大好き。しかしながら、名古屋で買う「緑のたぬき」はちょっと味が濃いように思っていた。そしたら、先日カミサンが関西へ行った時、スーパーで関西と文字が入ったカップ麺を買ってきてくれた。大きな文字で、「うまいつゆ」とまで書いてある!。
食べてみたら、やはり、やはり、関西のカップ麺は、名古屋のよりうす味で、昆布、カツオの出汁がよく効いた(化学調味料?)、好みの味でした。地元で美味しいといわれるうどん屋さんへ行っても、ちょっと塩辛いと感じることが多い昨今、助かりました。
ところが、もうひとつ、嬉しいお店発見。それもメチャ近く。
先日近くのスーパー、ジャスコ守山店を一人で買い物していたら、「家族亭」という看板が目に入りました。大阪、京都、神戸、はたまた東京にもある、どうと言うことはないけど、良心的な感じのする、関西風のそば、うどんのチェーン店。大阪梅田の阪急ファイブの近くや阪急沿線など、かなり前からいろんな所にあるのでよく行きました。しかし、どういうわけか、東海地方ではほとんどお店を見かけない。ホームページを見てみたら、なんと、愛知県では、ウチの近くのこのお店だけ!!!。いっしょに店にいたお客さんが「東京に居た時はよく利用したんですよー」などと、店員さんに声をかけておられたので、ご贔屓にしている方も多いかもしれません。手ごろな昼の「そば弁当」、あるいは、「にしんそば」と「かやくご飯」など、どーーんと食べる感じではないけど、関西風なうす味のうどんやそばを食べたい時に重宝します。これから時々通って、採算がとれるようにしてあげないと、店が出ていっては困ります。んで、家族亭さんとはなんの関係もございませんが・・・、「関西風うす味麺類がお好きな方、ぜひご利用下さーい」。
2007年2月
目次
・集じん機新規購入レポート
・猪谷六合雄スタイル
・関西人の名古屋界隈事情--- なぜか大神神社 ---
◆ 集じん機新規購入レポート ◆
週三日の教室の日、毎朝工房の床をカミさんが掃除をしてくれる。バンドソウ用と兼用の、9800円で買ったREXONの安い集じん機を使っているのだが、流石に使用頻度が高いためか、ホースは破れてくるし、先端のブラシはもちろん、床に触れるプラスチックまで磨耗してしまい、床に傷がつくようになった。それで、急いで新しい集じん機を買うことにした。
木工教室なので、できれば大きな集塵装置を設置して、集中的な集じんをしたいところ・・・、だがそれだけの予算はないし、絶えず大きな動力集じん機が回っているのも好きではない。それで小さな集じん機を各所に配置している。今回の新規購入で、100V仕様は5台目。
カミさんから「床が痛むよ」と言われ、事前にあまり評判を調べず、わりと簡単に「まあいいか」とネットで買うことに。ただ、使用頻度が高いことと、今までの集じん機が、すぐにフィルタの目つまりで吸引力が低下していたので、日立工機の「自動チリ落とし機構」が良さそうように思えた。それで、下の写真にような新型を購入した次第。
買い値は3万円代後半で、私としてはかなり奮発したつもり。どんなスタイルかはあまり気にしなかったのだが・・・、届いてみて、予想以上にガンダムな雰囲気に驚いた。このごろの日立工機の電動工具、どうも、やたらとロボットチック。元来、私は機能を伴なわないデザインにはどうも抵抗があり、よりガンダムみたいな新型ルーターも、変速機能付でいいと思いつつ、購入に踏み切れないでいることを忘れていた。やっぱり、どうもこのスタイルに馴染めない(^^;)。
とりあえずスタイルは置いといて、使い勝手はどうか?強弱切替や連動コンセントは便利。ホースも38mm系と25mm系の二つが付属していて、掃除から小型電動工具の集じん用にも使いやすいようになっている。肝心の自動チリ落とし装置は、動いていることはなかなかわからないが、たしかに目詰まりはしにくいようである。数日連続して使っても吸引力が落ちるようなことはなかった。ただし、やはりフィルタに細かい粉塵は付着しており、これは他の掃除機等で時々掃除してやる必要はあると思う。音は静かというわけではないが、弱ではかなりひかえめ。
ホースが斜めに出ているのは、サイクロン効果を高めるための配置と思うが、定置使用で曲がりにくい方向にホースを伸ばさねばならない時など、不便かもしれない。また、「ポリ袋集じん」はゴミを取り出す際には便利そうだが、木屑なら必要ないように思う。電源スイッチ(強弱切替)が、防塵対策のビニールで覆われているのはいいのだが、横についていて押しにくい。本体の真上にスイッチがある方が、本体が動かないので押しやすいと思う。
この機種に限らず、最近の電動工具の電源プラグは、「ポッキンプラグ」という、アース端子のパイプが折れ曲がるタイプがついていることが多い。実際にアースをとっているユーザーは少ないだろうが、製造者責任の関係から、感電事故を少しでも少なくするためにアースを取れる構造にしたいのだろう。ポッキンプラグは両者のニーズを満たす「画期的な発明」とも言えるが、実態を反映しない「極めて日本的な解決策」のように思える。なんども抜き差しして、折れ曲がるパイプが取れかけた時、逆に感電する恐れはないだろうか?。個人的な意見だが、頻繁にプラグを抜き差しする場合は、折ってしまった方がよいと思う。
まだ電動工具との連動など、充分に使いこなしてはいないし、集塵という目立たない仕事でもあり、この製品の印象を早期に判断するのは無理があると思うが、「この機種でないとダメ!」と言える要素は今のところ見つからない。掃除をするカミさんは、マキタのDIY用集塵機M440の方が、軽くて使いやすいと言う。私も、フィルタが目詰まりしやすいことを除いては、M440のシンプルさが好ましいと思う。
日立工機の電動工具を信頼し使用する方は少なくないと思うが、最近のガンダムというか、フィギアっぽいデザイン、なんとなならないものだろうか?
◆ 猪谷六合雄スタイル ◆
20代の頃は山スキーに結構熱を入れていた。大学でスキーを教わった先生から、「銀メダルをとった猪谷千春は有名やけど、実はそのお父さんが偉かったんや」とよく話に聞いていたので、ベースボールマガジン社から出版されていたお父さんの猪谷六合雄(いがやくにお)のスキーをメインにした自伝「雪に生きる」上下を読んだ。スキーよりも、彼の放浪とも言える人生にとても興味を持った。各地の雪深い山奥で、何度も小屋を建てて移り住んだことや、71歳で運転免許を取得し、それからキャンピングカーをいくつも製作し、スキー場でも宿ではなく、雪に埋もれた車の中で寝ていたという。彼に憧れる部分があって、戸隠の彼の定宿だったスキーロッジへに泊まったり、志賀高原丸池で猪谷記念館となっている小屋も見学したことがある。
写真は私が持っている彼に関する本。下の「猪谷六合雄スタイル」は、INAX出版が2001年に出した本で、昨年末神戸の本屋で偶然見つけた。小屋、スキー道具、キャンピングカー作りなどを、息子さんの話などを交えながら、多数の写真で紹介していて興味深い。格好優先ではない、生き方に根ざした家具とか内装とか、そういうことの参考になるかも?。上段の自伝的な「雪に生きる」は、現在入手困難かも。
「雪に生きる(上下)」 猪谷六合雄著 ベースボールマガジン社
「猪谷六合雄」 高田宏著 リブロポート
「猪谷六合雄スタイル」 INAX出版
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- なぜか大神神社 --- ◆
新年、何かと多忙で、例年ほど初詣に行けなかったが、ある生徒さんからすすめられた豊橋の砥鹿神社には行った。そこは巨木が茂り、奈良の神社を思わせる荘厳さが・・・。でも、やはり三輪山(みわさん)と呼ばれる奈良桜井にある大神神社に行きたくなり、一月下旬に参拝してきた。ここのご神体は、高さ467mの円錐形の三輪山。
渋滞があったりして、11時半ごろ到着。お腹が減ったので、不謹慎にもお参りする前に神社の入り口左手の素麺屋さんへ直行。立派な古いお屋敷のお庭で、寒い中、焚き火にあたりながらいただく、温かい素麺の味は格別。神社にお参りすることより、この素麺が食べたくて行くのかも(^^;)。
お腹が一息ついたところで、いざ参拝。杉の巨木が両側に並ぶ参道を行くと、階段があって、しめ縄があって、拝殿、その向うにご神体の三輪山が見える。今年は暖かいけど、何となくキリリと身が引き締まる。拝殿前には杉の巨木が左右にあって、いい感じ。
拝殿から左手に5分ほど歩くと、狭井神社(さいじんじゃ)という、小さめの神社に着く。ここは病気を治す神様らしく、熱心に祈っておられる人も多い。神社の後ろには、神水の湧き出る薬井戸があり、そこでお水をいただく。そこから山をくだり、途中で見晴らし台に登り、大和平野を眺めて、最初の鳥居まで戻るのがいつものコース。
名古屋界隈事情なのに、奈良の神社の話で失礼しました。歳を重ね、段々と「和」を好むようになっているようで、今までどちらかと言えば洋風な家具を作ってきた私ですが、これからは「和」を感じるような物作りを、できればしたいなと思っている昨今です。
2007年1月
今年もどうぞよろしくお願いします。
目次
・教室作品展と恒例の展示会
・関西人の名古屋界隈事情--- 生まれ育った街、神戸 ---
◆ 教室作品展と恒例の展示会 ◆
昨年10月末に行いました、第六回木工教室作品展の作品を下記ページに掲載しております。個人的な趣味の作品ではありますが、見て楽しんでいただければ幸いです。
また、昨年私が作りました家具等を下記に掲載しました。毎年恒例となってはおりますが、来年は教室作品展に合流させていただくかもしれません。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 生まれ育った街、神戸 --- ◆
昨年末、神戸元町の山側、六甲山系「再度山」の登り口にある追谷墓地に墓参りをしてきた。ここは神戸市営の古くからある墓地で、異人館のある北野町からもすぐのところである。九州熊本から出てきた私の祖父は、肺病で若くして亡くなり、熊本にあった遺骨を、祖母と親父が分骨して、神戸で作った墓である。こんなに地の利がいいところなのに、なぜ墓地かというと、神戸は水害の多発したところで、今でも急なこの谷は、豪雨の際には水路となり、墓地以外には利用できないのだそうだ。神戸の震災の時、奈良から実家へ向かう途中で、墓を見に行ったのだが、意外にも墓石がずれていただけで、倒れている墓石は少なかった。六甲山系から流れ出る土砂でできた扇状地のような三宮は大変な被害だったが、500mほど離れているだけで、岩盤の上に直接建っているようなところは、被害が格段に少なかったのだろう。
話は横道にそれてしまったが、墓参りの後、元町界隈で食事やショッピング、待ち歩きを楽しんだ。私が生まれたのは、昔「南京町」といわれた元町中華街から西にちょっと行った元町どおりの南側である。幼稚園は神戸幼稚園、そして神戸市西部に転居後も、学生時代を通して、ずっと元町三宮はマイホームタウンであった。一人で孤独を楽しむしかなかったその頃、神戸駅から三宮まで、メインの商店街や高架下のマイナーなストリートを2往復ぐらいしていたように思う。だから、今でも道に迷ったりすることはないし、好きだったお店もいくつかは残っている。
温かい冬の日、ブラジル移民の出発点であった移民局のビルのそばをとおり、神戸港の景色を見ながら山の手の坂を下る。元町までの道に群愛飯店があったので、そこで昼食を食べることにした。ひさしぶりに実家の母もいっしょなので、海鮮汁そば、五目汁そば、天津飯、揚げそば、点心盛り合わせ、杏仁豆腐など、ちょっと豪華に注文した。そのどれもが、予想以上に、たいへん美味しかった。薄味でいて、しっかりと味があるスープ、具の海鮮類の新鮮さ、具沢山の天津飯の美味しいこと・・・。名古屋のお店を知らないだけかもしれないけど、名古屋でこの味は食べられないと思った。
三宮商店街を通って、品揃えの豊富な文具屋「ナガサワ」に行く。一時帰国中の娘が製図用品を買うためだが、ちゃんと揃っている。その後はぶらぶらと街を歩き、高架下の通りへ。昔と同じで、高架下商店街は、ちょっと怪しげではあるが、今でもしっかりと「舶来」の匂いがした。元町駅以西はより怪しげなムードが加わってくるのも昔と同じである。元町三丁目付近で元町通りへ戻る。明治屋をもっと庶民的にしたような、舶来食品の店がとても繁盛していた。小さなアウトドアショップでは、他所では見かけないグレゴリーのザックがおいてあったし、学生の頃よく行ったヤマハ元町店も、形を変えながらも、健在だった。
子供の頃から慣れ親しんだ街というのは、いいものだ。ただ、それだけではないように思う。名古屋の繁華街「栄」、そこでのショッピングは、結局百貨店巡りである。神戸ではそごうと大丸、ダイエーなどの大型店はあるものの、基本的には個人商店が軒を連ねているのだ。個人のお店には、オーナーが気に入って仕入れてきた商品が並んでいるが、大規模店ではバイヤーが見つけてきた物を店員さんが売っている。この違いは大きいし、おそらく港町神戸には伝統的に、ちがった海外からの仕入れルートがあるのだろう。それが、インターネットで海外の品が簡単に買える昨今であっても、魅力になっているように思えた。
学生の頃から30年も経ったけど、また震災という大きな出来事があったわけだが、それでも元町・三宮界隈は昔と同じ魅力が、形を変え、世代を超え、あったのである。もちろん、ハーバーランドとか、郊外のショッピングセンターに押されて、集客力はなくなっている。今回は車で行ったのだが、元町西側にある神戸市営の「花隈駐車場」は平日上限千円で駐車することができた。三宮の駐車場でも平日一日1500円らしい。これは、遠くからやって来る人にはとても便利だと思う。神戸に車で行かれる方は、ぜひ利用してみてください。
今年は、名古屋で魅力のある個人商店を、ぜひ見つけたい。ビルの乱立する東京・大阪にも、魅力的な個人商店が集まる商店街が沢山ある。ところが名古屋では、どうもイマイチ、そういうところが少ないように思う。どんなジャンルでもかまいかせんので、なにかいい情報がありましたら、よろしくお願いします。
2006年12月
目次
・接着剤で悩む
・関西人の名古屋界隈事情--- 味噌煮込みうどん ---
◆ 接着剤で悩む ◆
久しぶりに注文で大きいダイニングテーブルを作っています。自分の家で使うのと違い、注文をいただいたご家庭の方に満足して長い間使ってもらいたく、普段より慎重になっています。テーブルの命は天板、だから6枚の板をハギ合わせる接着作業には最も気を使いました。そんなことから、今月は私が使ったことがある接着剤等について、書いてみます。実は私、「接着作業」が、木工の作業の中では嫌いです。たぶん、私以外の木工家の方も、「接着が大好きだ」という人はおられないのではないでしょうか。「やり直しがきかない」「所定の時間内に圧着を完了しなければならないので、急がされる」という理由以外に、小さな工房ではプレスなどの強力な圧着装置を持っていないこともあるかもしれません。
さて、写真は今手元にある接着剤です。
他にも、ゴリラの顔がトレードマークの「ゴリラグルー」とか、魚の骨などを煮て作ったという「Fish glue」、日本のニカワ、防水性があるタイトボンドUとか、使ったことがありますが、ゴリラは二回とも、ほとんど使わない間に固まってしまい、湿気の多い日本では使いにくいそう。ニカワはいいけど、湯煎したりと手間がかかる・・・。なかなか理想の接着剤はないようです。正直なところ、接着剤選びに悩んでいます。それで、正直にダラダラとそれぞれの使用した印象などを書いてみます。何かの参考になるといいのですが・・・。
普通の接着作業で、ちゃんと作ってあれば、いわゆる木工ボンドでよい。「どこでも入手でき、安価で、可使時間も比較的長く、乾燥後は透明で、刃物をいためない」等々、ほぼ理想に近い。難点は、水に弱く、乾燥時に体積が減るのでスキマを埋めない、経年変化で痩せるなどでしょうか。特に一般用は樹脂分が45%程度しか入っていないので、強度が要求される椅子などでは避けた方がよいかもしれない。
それで今回樹脂成分が多いCH1500Nを買ってみたわけですが、ダンボール箱に入った20kgのボンドをどう取り出すかがまず難関。コニシの相談窓口に電話で聞いてみたが、「ヒシャクしかないです」というお答え。金属や木は避けて、柄もプラスチックでできている下の写真のようなヒシャク(100円ショップに売っているとのこと)でボンドをすくい、ホットドッグ店にあるの「ケチャップ入れ」や台所用密閉容器に小分けした。柄はネジになっているので、回して抜いて、先のお碗の部分はボンドの中に入れたまま、ビニール袋を閉じて保存したけど、次の時は手がボンドまみれになるかも。また、この量なら10年以上はありそう(涙)。粘度がかなりあるので、大面積に塗るのは苦手。ホゾ組には適していると思うが、20kg入りなのでおすすめしません。5kg包装があるコニシのCX10というのも持っていますが、あまりに粘度が高く、乾燥後の接着剤は透明ではないなど、使いにくい。
ウチで扱っているPIボンド。これは確かに強力で、ギャップは埋めてくれるし、防水性は優秀、刃物も痛めないし、弾力性もある。難点は二液を混合しなければならないことと、圧着完了までの時間が15分(事実上10分)以内厳守ということでしょうか。無駄がでやすいので、1平米あたり250gを標準に、接着面積から使う量を計算しておくとよい。板ハギでは、すばやく塗る工夫が必要。私は、まず接着面に適量をばらまき、それを薄い木の板にキザミを入れた、自家製のヘラで、手際よく広げてます。
楽器作りではよく使われているらしいタイトボンドは、私の使い方が悪いかもしれませんが、圧着時に動いたりするとかなり接着力が落ちるように思います。またはみ出したボンドは透明ではなく汚い感じ。一方、乾燥時間を長くしたものは、ラミネーションなど、圧着までの時間がかかる接着に使いやすい。新しいタイトボンド3は使ったことがありませんが、評判は良いようです。
カナダの2002GFは、薄茶色の接着剤で、結構使いやすくいい感じ。入手しやすければ、これをメインに使うかもしれない。メーカーの説明では「ギャップを埋める」、「はみだした接着剤はスクレーパーなどで取り除けば、塗装に影響を与えない」ということですが、この点は良さそうに思います。
接着剤の容器もこれまた難しい。写真の黄色や青のキャップの容器は、スウェーデンから送ってもらったもので、ボンドの中にハケを入れたまま蓋ができる優れもの。「ハトの水やり」の様に、大気圧を利用して、使った分だけ、低い方にボンドが出てくる仕組みだが・・・、実際には、ボンドの粘度が高いので、なかなかそううまくいきません。CH38を入れて使ってますが、入れるのは結構たいへん。
手前左の150円程度で売られている、逆さに立てる木工ボンドの容器は意外と使いやすい。後列の500ml入りは、ボンドを出すのに力が要って、ちょっと使いにくいかも。左上のホットドッグ店で見かけるケチャップ入れは、好みのサイズに穴が調整できて、使いやすそう。
ま
まとまりのない話になってしまいましたが、今だに悩み多い接着剤です。何かおすすめのボンドや便利な使い方、道具など、ご存知の方おられましたら、教えて下さい。まだ試していないのですが、ハネムーンタイプの二液性接着剤も面白いと聞いています。ですが、現時点での私の個人的な結論としては、ほとんどの場合通常の木工ボンドで良く、椅子のホゾなど、特に強度が要求される所や水気のあるところではPIボンドがおすすめというところです。
以下に主な種類の木工用接着剤について、原理や特徴などを書いてみました。詳しく調べて書いたわけではありませんので勘違いがあるかもしれません。どうか参考程度に見て下さい。
木工で使われる主な種類の接着剤
接着剤 | 種類 | 原理(独断ですが) | タイプ | 刃物を痛めないか | 強度 | 防水性 |
木工ボンド等 | 酢ビ | 蒸発、物理的結合 | 一液 | ◎ | ○ | △ |
タイトボンド | 酢ビ+樹脂? | 蒸発、物理的結合 | 一液 | △ | ○ | ○ |
PIボンド | 水ビ | 化学反応結合型 | 二液 | ○ | ◎ | ◎ |
エポキシ | エポキシ樹脂 | 化学反応硬化型 | 二液 | × | ◎ | ◎ |
ゴリラグルー | ウレタン樹脂 | 化学反応硬化型 | 一液 | △〜○ | ○ | ◎ |
ニカワ | 動物の骨など | 熱可塑、物理的結合 | 天然 | ◎ | ○ | ○ |
ごはん | 米 | 蒸発、物理的結合 | 天然 | ◎ | △ | × |
(追記)
半田市で木工をされている斎田さんから、以下のようなコメントをいただきました。私が経験の乏しいゴリラグルーについての内容ですので、ご本人の了解をいただき、こちらにも掲載させていただきました。
「接着剤で悩む」 のコーナーで、ゴリラグルーがほとんど使わないうちに固まってしまったと書いてありましたが、そんなことありませんよ。ゴリラグルーは湿気に反応して硬化するので、容器を逆さまにして保管することで固まるのを防ぐことができます。僕は板のはぎ合わせにゴリラグルーを使っていますが、毎回最後の一滴まで使いきっています。よかったら一度試してみてください。 あと、ゴリラグルーの強度が酢ビと同じ 「○」 になっていますが、「◎」 でもよいと思うのですが・・・・・。 |
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 味噌煮込みうどん --- ◆
今まで何度か名古屋名物「味噌煮込みうどん」について書いてきた。名古屋名物として知名度が高い「きしめん」は実は地元名古屋ではあまりメジャーではなく、名古屋名物の麺料理といえば「味噌煮込みうどん」なのである。その有名店は、山本屋総本店と山本屋本店。関西なら豚饅の「蓬莱本館」と「551蓬莱」、東京なら海苔の「山本山」と「山本海苔」などと同じく、たいへん紛らわしい。どちらの店も、うどん一杯が1800円〜2000円を越える値段なのだ。そのことをブログで書いたら、生徒の方二名から「私はアンチ山本屋で、味噌煮込みなら、伏見の御園座近くの五城です」という話を聞いた。薄味で透明な出汁を好む関西人の私としては、どうしても味噌煮込みうどんに価値を見出せずにいたので、地元の方が推薦される「五城」を訪れ、味噌煮込みうどんに個人的な最終結論を出したいと思っていた。
味噌煮込みうどんと鍋焼きうどんの違いは、前者が茹でていない生めんをそのまま鍋で煮ているのに対し、後者は一度茹でたうどんを鍋で煮込んだものだという。このため、味噌煮込みに使われるうどんは真水と小麦粉だけで作られ、塩分を含んでいない。全国的に知られたさぬきうどんはかなりの塩分を含んでいる。このためか香川県は脳血管障害の患者数が多いほどである。しかし、香川県にも「打ち込み汁」という家庭料理があって、生めんを野菜などといっしょに煮込むらしい。この際にやはり塩は使わないという。味噌味のメリットの一つは、塩辛いように見えて、実は塩分は少ないことである。
さぬきうどんとの違いは、名古屋の味噌煮込みうどんは、生煮えかと思うような、粉々した硬い生麺の感触をわざと残していることだ。だから、小麦粉を水で練って味噌汁に入れた「スイトン」とやや似ているように思う。あまりに硬いので、箸でつまんで持ち上げると、丸まったうどんの形がそのまま持ち上がってくるほどだ。一方さぬきうどんは、硬い歯ごたえを大切にしてはいるが、茹で上がった時の、透明なゼラチン状の小麦粉の食感を良しとしていると思う。
ある程度満足しようと思うと一食2000円ほどもする山本屋系列のうどんは、関西人の私にはどうしても理解ができなかったが、五城のそれは850円で、値段的には納得できるものだった。しかし、麺は山本屋のよりも太く、やはり硬い生煮えに近い状態。ただ、大きな鍋で具も多く、お値打ち感はある。同じテーブルで食べていた高齢のご婦人は、先にうどんや汁を食べ、残った具をググッと一気に食べてはりました。
さて、名古屋の味噌煮込みうどんファンには申し訳ないですが、再び「味噌煮込みうどんが食べたーい」とは思わなかったのであります。大阪には「はんなり」という表現があるが、透明な、昆布のきいた出汁に、はんなりとしたうどんが入っている「関西風うどん」、これに勝るものはないと関西人の私は思う。ただ唯一、私や家族が価値を認めるのは、皮肉にも、名古屋のラーメンの元祖、「スガキヤ」のインスタント「味噌煮込みうどん」。これは関西の実家も気に入っていて、年に何度か実家に送っているほど。冬の寒い日など、簡単な昼飯に重宝するとのこと。
以上、あくまで私の好みの問題です。他の地方から名古屋に移ってきた知人は、「味噌煮込みは時々ムショウに食べたくなるんですよね」と言っています。また、老舗の「山本屋総本店」は東京へも進出しているとのこと。食べてみたらハマル人は結構いるのかもしれません。
2006年11月
目次
・第六回木工教室作品展--速報--
・関西人の名古屋界隈事情--- 都電荒川線の旅 ---
◆ 第六回木工教室作品展--速報-- ◆
三日間、天候に恵まれた今年の作品展でした。個々の作品の紹介は新年のお楽しみということにさせていただき、スナップ写真を数点掲載しました。来られた方の数は150名程度ですが、身内やお知り合いの作品を前にして、長時間鑑賞されている姿を多数見かけました。これだけ滞在時間が長い展示会は滅多にないのではないでしょうか。私自身にとってもたいへん良い刺激になりました。
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南側 小物とスツールが主な、ギャラーでの展示 基礎コースの課題、筆箱、引出箱、スツール の他、皆さんのオリジナル作品が並んでいます。 |
別の角度から | ![]() |
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北東側 |
工房での展示 脚物と低いキャビネットが多い。 |
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土曜と日曜は、たいへんな盛況 半数は生徒さんのご家族や友人 |
アメリカ、ピーターコーンさんの学校で木工を 学んだと言う、木工フリークの方。 |
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熱気がこもって、扇風機を回しました。 |
二階から眺めるとこんな感じ | ![]() |
毎年、会場に私の挨拶文を掲載しているのですが、人数が多くて見ていただけなかった方も多く、ここにも書かせていただきました。
ご多忙ななか、第六回木工教室作品展にご来場くださいまして、まことにありがとうございます。回を重ねるごとに、作品の数・内容が豊富になり、今回も二つの部屋を使っての展示となりました。
当教室では、「楽しみながら作る」ということを大切にしています。その結果、自ずから、売ることを目的として作られる木工品とは違った趣が生まれます。技術的には未熟であっても、他人と競ったり自慢したりするのが目的ではなく、もちろん売ることなど念頭になく、黙々と自分の中の形を現実の物にしていく、そういう作品に私は段々と目が行くようになりました。
皆さんは、どのように感じられたでしょうか?スタッフや私に、率直なご意見ご感想をお聞かせいただけると、これからの励みになります。
どうか、ごゆっくり、作品と対話をしながら、展示会をお楽しみください。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 都電荒川線の旅 --- ◆
名古屋事情なのに、何で都電の話なの?と言われそうですが、先月東京での一日がなかなか良かったので・・・。
一度都電荒川線には乗ってみたいと思っていた。私が生まれた神戸元町の海岸通には当時市電が走っていて、西は須磨から、東は石屋川まで、時間はかかるが、均一料金で安く行けたである。子供の頃の風景として、市電は頭の中にある。もちろん今はないし、関西ではもう路面電車は残っていない。映画「三丁目の夕日」で、忘れていた懐かしさがぶりかえしたというわけではないが、現在の東京にまだ都電が一路線だけ残されているとなると、ぜひ見ておきたい。
前日、「手考会」の展示会を見て、その日は東陽町にできた新しいR&Bホテルに泊まった。R&Bとはリズムの名前ではなく、ルーム&ブレックファストらしい。マスコミを騒がせた東横インの成功を手本に、大手ホテルチェーンが作った、簡素で比較的安価なビジネスマン専用ホテルだという。チェックイン時の支払いは機械で自分でやるし、パジャマは自分で部屋に運ぶ、歯ブラシは用意されていない、というような、省スタッフホテルだ。だが、値段は7000円ほどで、とりたてて安いわけではない。無料の朝食も、内容はパンとジュース・コーヒーだけで、私は喫茶店のモーニングの方が好み。ただ、新しいので部屋は清潔、完全遮光カーテンのおかげでよく眠れたことはよかった。
このようなホテルの話を書いたのは、あまりに人間味がなかったホテルと下町を走る都電との格差を強調したかったのだ。イザ!地下鉄で三ノ輪駅へ。 そこから徒歩で都電の乗り場へと向かう。小さな短い商店街を抜けると、都電荒川線の三ノ輪駅があった。ごっつうええ感じ。乗り場でボケッと待っていると、中年のオバサンが「並んでおいた方が座れるよ」と、ハッキリは聞こえなかったが、そう言われたと思う。昨夜ホテルに入ってから一言も喋っていない私は、不意をつかれてしまい、咄嗟に返事ができなかった。こんなことは、名古屋、いや大阪でもあまりなかったように思う。
電車に乗って、運転手さんから400円の一日乗り放題切符を買う。一回券は160円なので、三回で元がとれる(^^)。路線図を見ると、「飛鳥山」というところに博物館が3つもあるらしいので、まずそこまで行くことにする。結構お客がいて、乗り降りが頻繁にある。「町屋」の駅は地下鉄とJRに連絡していて、便利そうだった。王子駅でもJRに連絡し、ほどなく飛鳥山へ。
飛鳥山公園に、渋沢資料館・紙の博物館・飛鳥山博物館があって、3つ回る入場券を買った。渋沢栄一という名前、社会で習ったことはあったが、こんなに日本の基盤になる会社をたくさん作った人だとは知らなかった。紙の博物館は渋沢氏が創業した王子製紙が作っている博物館のようだ。飛鳥山博物館は、この付近の古代の様子を再現しているのだが、私はイマイチ興味はわかなかった。公園内には渋沢栄一が使った迎賓館などがあって、「久しぶりに歴史の勉強をしたなあ」と言う感じ。
「次はどこ行こか?」と路線図を見ていると、「とげぬき地蔵」という名前が目に入った。テレビで聞いたことがあるような・・・。「庚申塚」という駅で降り、商店街を地蔵さんの方へ向かって歩く。その頃、やっと気がついた。ここは「おばちゃんの原宿」と呼ばれ、年配の方にターゲットにしぼった、日本でも数少ない大成功を収めた、超有名商店街だったのである。だんだんとシニアが増えていく。カメラ片手にシニアの買い物姿を撮っているシニアのおばさん、小さなアンプとスピーカーを地面に置き、ピックアップ付のギターをかかえて、古臭ーいフォークソングを弾き語りしている、80歳ぐらいのストリート(シニア)ミュージシャン、とげ抜き地蔵境内にある観音さんをガーゼで拭こうと長蛇の列をなすシニアな方々・・・。とはいえ、私もそのような方々に混じって、その場に溶け込んでいる自分を感じ、シニアに近い自分を認識した次第。商店街を抜けると巣鴨駅である。そこでUターンし、また都電へ向かう。
いよいよ、私の最大関心事、昼飯である。おばちゃんの原宿らしい、昼飯を食いたい。B級グルメ暦33年の私の嗅覚、視覚、直感、すべての感覚をとぎすませて店を探す。庚申塚に近いところで、一見普通の飯屋が、なんとなく繁盛している。ちょっとのぞいてみると、ウーン、初老の男女でほぼ満員、「ここや!」
空いたテーブルがなく、一番奥の調理場前に相席になる。何を食べようかと迷うほど、壁にいろいろ書いてある。おすすめは日替わり定食でナント450円。ここは奮発して、おすすめのお刺身定食にすることにした。金目ダイを含む3品のお刺身と煮付け竹輪と、味噌汁とゴハンで700円(値段ははっきり覚えていない)、それにまあいいかということで、小瓶のビール、へへ。前の工事関係者のオジサンは「とんかつ定食」、右のご夫婦は同じく刺身定食であった。普通のゴハンで丼飯ぐらいあるので、年配の方は「ゴハン半分」とか「ゴハン四分の1」などという注文が多い。これを聞いた右のご夫婦、「ゴハン四分の1って、ゴハンが四分の1の意味ですか?」とわけのわからない質問をしていた。昼間からビールを飲んで、お刺身食べて、お腹一杯で1000円ほど。ウーン、こりゃ流行るはずだわ。
値段を考えなくても充分に美味しいお刺身定食でありました。今度来た時もぜったいにここで食べよう。私のB級グルメ発掘能力は大したものである。店を出て、店の名前を携帯のメモにしたためた。ときわ食堂であった。帰宅後インターネットで調べたら、ここは結構有名で評判のよい、定食屋チェーンのようであった。お客さんはシニアが多いけど、学生さんや若いサラリーマンにもおすすめ。店員さんの対応もとても気持ちのよいもので、ある意味定食屋さんの理想形だと思った。
大満足の昼飯を終え、終点早稲田に向かう。早稲田で降りて、地下鉄早稲田まで歩くのだが、最短距離は大学構内である。早稲田大学なんて、もう来ることはないだろうから、教職員の顔つきをして大学構内を歩いて地下鉄まで行った。にわか天麩羅学生になった気分。しかし、若者の大学よりも、おばちゃんの原宿商店街の方が、やっぱり自分には合っていた。
同世代の方はもちろん、若い人にも、この商店街は楽しいのではないだろうか。渋谷、赤坂、新宿など、高層ビルが建ちならび、その高いテナント料を払えるのは個人ではなく、大資本系列のお店がほとんど。ところが、この商店街には、大資本を感じるようなお店はほとんどなく、すべてが個人商店であり、店主の心意気が伝わるような商いをされている。近い将来、郊外の大規模小売店とこのような個人の商店街がうまく両立するような時代が来るように思うし、ぜひそうなってほしいと思った。
2006年10月
目次
・第六回木工教室作品展
・手考会作品展
・手加工で格子作り
・関西人の名古屋界隈事情--- 弥勒山 ---
◆ 第六回木工教室作品展 ◆
案内状をトップに掲載していますが、今年も木工教室作品展を行います。何と六回目、いやはや、時の過ぎるのは速い。
日時:10月27日(金)〜10月29日(日)、AM10〜PM6(最終日は17時まで)
場所:名古屋市守山区吉根 宮本家具工房
(JR中央線、大曽根駅からガイドウェイバス乗車、西小学校前下車、手前に徒歩4分)
展示作品数は70以上になる予定で、今年も二つの部屋を使っての展示になりそうです。近くに来られる機会がありましたら、お立ち寄り下さい。
◆ 手考会作品展 ◆
日 時: 2006年10月7日(土)〜15日(日)
11:00〜19:00(最終日は16:00まで)
会 場: 角田ビル1階ギャラリー
東京都中央区東日本橋3−6−13
都営浅草線 東日本橋駅 B2出口 徒歩2分
都営新宿線 馬喰横山 A3出口 徒歩2分
◆ 手加工で格子作り ◆
上記の「手考会」に以前参加していたことから、毎年作品をひとつ出させていただいております。今年は何を作るか、かなり迷いましたが、復習のつもりで格子を作ってみました。伝統的な日本の道具を使う会ですので、機械加工はさけ、手加工で挑戦です。格子を作る過程の中には、いくつか大切なコツが含まれています。これらを少し紹介してみたいと思います。
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格子を形作る組子の「相欠き」を切る時、このようにして切り込む深さを決めます。真っ直ぐな小角材を小さなクランプで刃先から切り込みたい深さにセットすればそれでOK。このような細かい加工には厚さ0.2mmの鋸がおすすめです。 |
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これは端のホゾの部分ですが、相欠きでも同じです。同じ組子をハタガネで固定し、ケヒキや二丁シラガキで、切り込みを入れていきます。このわずかな切れ込みに、薄い鋸の刃を入れて、正確に切断します。 |
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私はまだまだ未熟なので、いきなり鋸の刃を入れるのは不安があります。それで、写真のようにシラガキの線をノミで注意深くなぞって、切り込みの幅を少し広げてみました。 |
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さらに、ノミでこのように横から斜めに1ミリぐらい切り取れば、そこに鋸刃を入れるのはたやすいでしょう。 |
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両側を鋸で半分の深さまで切れば、あとは細いノミを裏を上にして写真にように、左右に回すようにねじりながら木をバリバリと取ります。鋸で深さが決まっているので、そこまで掘ればほぼ深さが決まります。 |
手加工でこのような加工をするのは、技と手間がかかりますが、楽しいし意外に速いものです。一方、もしこれを機械で加工するとなると、機械やジグのセットに時間がかかります。でも一度セットすれば、加工自体は格段に速く正確に加工でき、同じ物を沢山作ることができます。売るために効率良く作るなら、「時間を節約でき均一に加工できる機械加工」ですが、「作る楽しさは手加工」にあると思います。楽しみで物を作るのと仕事で物を作る作業は、似ているように見えて、その本質は全くといっていいほど違います。趣味の家具作りと売るための家具作り、その違いも同様。
話が横道にそれましたが、この格子でお盆を作りました。展示会でご覧いただければ幸いです。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 弥勒山 --- ◆
名古屋でも、超蒸し暑い夏が終わり、さわやかな乾いた風が吹く季節が到来。日ごろから運動不足になりがちなので、週一回の簡単な山登りを再開。名古屋に来てから、盲腸破裂で緊急入院、あるいは椎間板ヘルニアと思われる100mも歩けなくなった強烈な腰痛など、結構寝込んだこともあったけど、いつも、元気に歩けるようになったときに、春日井の弥勒山を登って、「ああ、元気にさせていただいた」と安堵したり、感激したり。とにかく、折に触れ、お世話になっている山が、弥勒山だ。
春日井市の北部、岐阜県との県境に沿って437mの弥勒山はある。南側のふもとには春日井緑化植物園(月曜休み、入園無料)があって、小さな子供を連れた家族がのんびり遊んでいたり、小学校低学年の遠足に出会うこともしばしば。芝生の広場にあるログハウスには綺麗なトイレもあって、準備万端。そこから少し急な階段を登ると、「上手いこと道つけたな」と感心するほど、無理のない傾斜の、木立の中の道を登る。雑木林の神聖な空気を吸いながら、仕事のことや家族のことを思い巡らしながら登っていく。何度も同じ道を歩いているが、木と土と草と空、時にはトカゲやヘビ君を見ながら、木漏れ日の中を歩くのは、心と体を新鮮にする。中盤と終盤にちょっと急な登りがあるけど、一時間少々で頂上に。そこからは名古屋市全体が見渡せ、天気の良い日には北に御嶽山を望むことも。頂上でおにぎりやお菓子を食べ、往路を下山。ちょうど正午に植物園に降りた時は、温室のある建物一階のカフェで昼食をとることも。植物を楽しみながら、ゆっくり食事ができて、これまた結構。
弥勒山だけやない、近くの東谷山もなかなかいいし、森林公園もすばらいし。近所の小幡緑地も散歩にはもったいないくらいの広さ。車でちょっと走るだけで、こんだけゆったりと、お金をかけないで楽しめる場所があるのは本当にいい。大阪に居た時は、こうはいかなかったように思う。神戸は六甲山というすばらしい山があるけど、ちょい険しい。その点、弥勒山なら、もっと歳をとって足が弱っても登ることができると思う。そういう場所が身近にあるということは、本当にありがたい。
先日、親戚の葬儀が多治見であった。葬儀会場から歩いて火葬場まで行くのには驚いたけど、ご近所の山が天国とつながる場所であるように思えて興味深かった。前住んでいた京都南部、浄瑠璃寺近くの山は、頂上に村落で代々続いてきた墓所があった。歴史は苦手でよく知らないが、昔から近くの山というのは、天国に近い存在だったのだろう。弥勒山という名前の由来は知らないが、続く峰には「道樹山」という祠が建っている山があるし、宗教的な意味を持つことは間違いないだろう。
大学時代は山岳部で、北アルプスなど、高い山によく登った。その頃に弥勒山を登っても、全然面白くなかったに違いない。歳を重ねると、若いときには見えなかったものが見えてくるようである。これからもっと見えてくるものが増えるに違いない。楽しみだ。
2006年9月
目次
・プチ大工仕事の結果
・オービタルサンダー
・IKEA
・関西人の名古屋界隈事情--- またまたETC ---
◆ プチ大工仕事の結果 ◆
暑いなか、結構頑張りました。西側の材木置き場に雨と西日よけの壁、そして機械室との間の中庭に雨がかからないように屋根を作り、材木置き場を作ったのです。
材料はほとんど近所のホームセンターで調達。ツーバイフォー材よりも、日本規格の材木、根太、間柱、などの方がサイズが多く、使いやすいように感じました。柱は三寸角の4メートルの杉材。パネルはOSB。塗装は、サドリンクラシックのグレーアンバー色です。超暑かったけど、楽しかった。独立基礎でなら、自分で小屋を作るのは、それほど難しくはないように思いました。今度は、サウナハウスでも作ってみるかな???。
予想以上に高かったのは、ナミイタです。ポリカーボネートの2.7m物で一枚2200円ほど材料の中で一番高かったと思います。それに比べると材木は安すぎるかも。またホームセンターで2トントラックを無料で貸してくれるのはありがたかったです。トラックなら4m物の運搬が楽々だし、なんとオートマ車でした。今まで「ホームセンターにいい道具はない」などと悪口を書いていましたが、このようなDIYするには、とても便利でした。
どういうわけか、グレーの樋がどこのホームセンターにもなく、馴染みの近所の金物屋さんで購入。4mの樋を自分の車に積み、閉まらない後ろのハッチバックドアをロープで車体に固定して運びました。この方法で赤布をつければ、材木でも20枚までぐらいなら運べるかもしれません。
◆ オービタルサンダー ◆
教室ではあまりサンダーを使わないのですが、仕上鉋をかけてから塗装前のサインディング用にと、使いやすいオービタルサンダーを探していたところ、ボッシュの新型サンダーが目にとまりました。求めていたのは、「一般的な普通のサンドペーパーを使うことができ、集じん袋による簡易集じんができ、また速度が可変で、振動の少ないもの」でしたが、この新型は一応プロフェッショナルのタイプで、その条件をすべてクリアーしていたのです。
この機種はかなり安い(一万円前後)ので、逆に不安がありましたが、使ってみて「耐久性は不明だが、これはお買い得かも」という印象です。上級機種よりオービタルストロークが少ないことや、パッドがちょっと柔らかいと感じましましたが、サンドペーパーに集じん用穴をあけるプレートも付属しているし、軽くて使い易く、また、集じん機能もこのタイプにしてはとてもよく働くように思います。以前のボッシュ製品のような、使い捨て紙袋ではないところも気にいりました。。ヘビーな使用に適するかどうかはわかりませんが、仕上前の軽いサイディングには良い買い物だったと思います。使うのに慣れが必要なランダムオービタルサンダーやベルトサンダーに比べ、誰でも違和感なく使うことができそうです。
◆ IKEA ◆
8月上旬の最も暑い時期でしたが、千葉のIKEAを一人で見てきました。感想とともに、初めて行かれる方へのアドバイス?も書いてみました。
秋葉原から総武線に乗って「西船橋」へ、そこで結構待ち時間がありましたが、電車を乗り換え、「南船橋」に到着。駅の南側、迷いようもなく、開店間もないIKEAに。東京からは京葉線がメインルートのようですが、「車で買って持ち帰る」のが本来の姿らしい。入口右手には、独特の買物方法を解説したビデオ映像が流れており、奥には小さい子供をあずかる所がある。私は後から気づいたけど、初めての人は、まずビデオで学習し、手回り品はやや左奥にある、無料のロッカーに入れておくとよい。
「まずは二階のショールへ」と書いてあるので、二階に上がる。「この部屋の家具は全部で8万円です」などとブース毎に書かれている。「結構ええやん」と思えるような、椅子や家具が本当に安い。一人住まいの部屋なら、5万円もあれば必要な家具はだいたい揃うように思う。安いけど、チープではない、北欧ブームの今、カッコええと思う人は多いと思う。二階はこのように、蛇のようにクネクネ曲がりながら、広大な床面積をさらに長く長く歩いて見るわけである。それで、気に入った家具があったら、やたらとどこにでもおいてある、メモ用紙と短いエンピツでその商品番号やサイズなどを記入していく仕掛け。なんとなく、競馬好きのオジサン達が、短い赤鉛筆で小さく折ったスポーツ新聞に○印をつけているのと似ているように思う・・・のは私だけか?
正直、かなり歩く。多分二キロぐらい歩いているのではないか。最初は感激するけど、最後は「もうええわ」という感じになってしまった。でも日本の他の量販家具店にはない、デザインの優れた家具が沢山あるのは事実。既存の家具量販店には脅威だと思う。けれど基本は大量生産。一品一品に心がこもったような類の家具ではないので、いわゆる「木工屋さん」達の家具とは競合しないかもしれない。塗装用着色オイルやワックスが手軽な値段で売られていたり、アルミ合金の家具金物などのパーツもあって、一瞬「買おうかな?」と思ったが、よく考えると、当面使う予定がないのでやめた。それに荷物を持って帰るのもシンドイ。そう、配達は基本的にしてくれないのだ。小物は自分で1000円の箱を買って宅急便で送ることはできるが、組立家具の配達料金はメチャ高く、「自動車で持ち帰り」が経営基本戦略のようである。店員さんに聞いたところ、今のところ通販の予定はないそうだ。もしも通販態勢が整って、オンラインで注文できるようになったら、木工屋への影響はかなり大きなものになるかも。というのは、写真では実物の質感はわからないので、ほとんどデザイン性だけで家具を選ぶようになるだろうから。
「もう、出たい」と思ったころ、ショールームが終わり、広いレストランが目の前に。メニューはかなりスウェーデン的。サーモンマリネやオープンサンド等、スウェーデンによく行った私、ここでも心が動くが、長蛇の列に並ぶのは嫌だし、結構値がはるのだ。朝人気がなかったのに、昼頃には小さい子供を連れた家族連れで、売り場もレストランも一杯だった。一人二人の子供は可愛いが、ガキタレ集団となるとウルサイのひと言。逃げるしかない。
レストランを横目で見て一階へ。最初はホームセンターの雑貨売り場風だが、後半は巨大な倉庫となる。ここでメモしてきた家具の組立前のパッケージを探して、自分でカートに載せて、レジへと進むのだ。その倉庫の棚は高さが10m近くあって、そんなところから箱を出してくるのは・・・、若い人にはいいかもしれないけど、この歳になると積極的にやりたいとは思わない。ウーン、この売り方が、他力本願的要素の強い方が多い、日本のお客さんに受け入れられるだろうか?私自身、ある程度の歳になり、安さも大切だけど、「気持ちよく買いたい」という思いが強くなっている。
そんなことを考えながら歩いていると、ずらっとならんだレジが見えてきた。ここを何も買わないで突破するのはちょっと辛い。買う物がない人は150円の黄色と青のビニール袋などを買っているようだ。が、それもほしいわけではない。買わないでスマートに出る方法は・・・、と考えて、結局「戻ればいいんや」と気がついた。それで人の流れを逆に歩くが遠いこと。しかし、店内のマップをよく見ると、近道がある。それを使っても、まだ遠いのであった。やっと入り口に戻ってきた時、レストランがすぐ近くに見えた。そう、レストランの中を通れば、簡単に入り口へ戻ることができる。したがって、二階のショールームだけを見て帰りたければ、レストランを通れば大丈夫。
もうすぐ横浜店、そして二年ほど先になるそうだが、神戸ポートピアランドの跡地に神戸店ができるそうな。30年ほど前にも一度IKEAは日本に上陸している。神戸の国道43号線沿い、小泉製麻のレンガ建ての工場跡地に、「イケアタウン」という名の家具ショップがあって、子供を連れて何度か行ったことがある。そこはそれほど大きくなく控えめな感じで私は気に入っていたのだが、今回見た巨大な倉庫と展示場のIKEAには、「IKEA流で買いなさい!」というようなプレッシャーを感じてしまった。若い頃なら、多分何度も足を運んだかもしれないが、53歳の今、巨大資本による大量生産の家具とその売り方に、イマイチ馴染めない自分を感じている。一例をあげてみる。一階の雑貨コーナーでは99円のデジタル時計が大きなカゴに満杯にされ、何箇所かで売られていた。北欧に私は「デザインと人間重視」というイメージがある。そのスウェーデンの優良家具企業IKEAにして、この売り方。ミスマッチを感じると同時に、これはIKEAという企業の姿勢をを端的に表しているかもしれないと思った。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- またまたETC --- ◆
あまり細かいお金のことを話すのは「お上品じゃない」と指摘を受けそうですが、関西人は好きなんですよ「安く買った」というような話が。そういうわけで、ETC割引にも目がありません(^^)。
工房に近い春日井ICからからカミさんの実家に近い吹田ICへ行くには、200km弱あるわけです。もちろん往きは6時〜9時の通勤割引を利用します。100km未満の名神八日市で一度おり、料金所を出てすぐ、右に一方通行の標識があるところで難なくUターンして再入場。残念ながら二回目以降は正規料金。というか、大阪近郊、大津ICから西は、通勤割引が効かない。ウーン、ショック。JHに電話して確認したところ、帰りに吹田ICから乗った場合、大津までは通勤割引対象外でありながら、やはり距離としてはカウントされるとのこと。したがって、大津から八日市までの間しか通勤割引にならないのであります。そんなん、損や。
しかし、時間帯によっては、大都市近郊の「早朝夜間割引」が利用できるのだ。例えば、吹田ICを22時に入り、いったん大津ででれば半額、またそこから乗って春日井ICを24時過ぎに出れば、そこまでは3割引の深夜割引適用となるわけ。そんなこと考えていたら、車で自由に移動できる楽しみが半減すると言う方もおられるでしょうが、結構な額でっせ、この割引は。
先日、松本に行きました。実は松本ICまでも200km弱なんです。春日井ICから入っていったん飯田ICでおりると100km未満で通勤割引OK。しかしそこから松本までは二回目になるために割引は適用されません、同じ車ならね。しかし、違う方が運転していれば(別のETCカードなら)、一回目ですから、割引が適用されるのです。というわけで、飯田で降りて、カミさんと運転交代(別にしなくてもいいけどね)、別のETCカードに差し替えて高速に入ったら、松本までも割引OKとなりました。メデタシ、メデタシ。
UターンしやすいICとそうでない所があるんです。中津川ICなどは、非常にしやすい。出口と入り口の間に待ち合わせ用の駐車場があって、全然問題なし。名神八日市も一方通行のUターン路があって、比較的しやすい。でも飯田なんかは、出てすぐのセンターライン上にあるポールの間をすりぬけねばならず、こんな場合は、ICから少し離れた所でUターンした方が安全かも。ただ、ICでは行き過ぎたりして戻らねばならない人のために、必ずUターンできる空間はあるようなので、よく見るとわかると思います。
日本の高速道路はホンマに高い。そやからというて強行突破する無法な輩には憤りを覚えます。正規の使用方法の範囲内でも、工夫次第で、かなり節約が可能になることは知っておいて損はないのではないでしょうか。
2006年8月
目次
・GoogleSketchup
・プチ大工仕事
・関西人の名古屋界隈事情--- 運転マナー ---
◆ Google Sketchup ◆
四月に紹介した3DモデリングソフトのSketchup、その後予想よりも早く、待望の"Google Sketchup"というフリー版が登場しました。GoogleMap上に自分で作った構造物を配置するためのソフトですが、使ってみると入出力関係などに違いがあるものの、ほとんど同じ機能が使えることがわかりました。これで8時間の制限にしばられずに試すことができます。今はもう手放せなくなっているSketchup、その続報です。
Google Sketchupは、下記のサイトからダウンロードすることができます。登録なども必要ありません。ただ、現在は英語版ですので、慣れるまでは日本語のお試し版をダウンロードし(ダウンロード先はGoogle等でお探し下さい)、ひととりの使い方を覚えたり、ヘルプファイルを読んでおかれるとよいでしょう。
ここでFree版をダウンロードし、インストールします。その後、コンピューターに詳しい方は、日本語版Sketchupのフォルダの中にある"Templates"フォルダの中身をFree版に移したり、ヘルプファイルなどもいつでも参照できるようにショートカットをデスクトップに登録しておくと便利。詳しい使い方等は、いろいろなページで紹介されているので、それこそ本家Googleで検索してみてください。
教室で教材として配布する、製作課題の図面を書いてみました。引出箱の内部構造は三面図では表現が難しく、図面では説明しずらかったのが、このような透視図だととてもわかりやすいです(工房ではA4もしくはA3の用紙に出力しています)。このような図の他、正面図や側面図、平面図などの2D図面、さらに断面を設定して、断面図も出力できますし、家具では必要ないと思いますが、太陽の影も表示できます。
さて、私の作成方法を簡単にレポートしてみます。Sketchupに限らず、CADの修得は、目標となる図面を決め、ヘルプを見たりしながら、とにかく完成させることにつきると思います。二度目以降は、大幅にかかる手間と時間が短縮されるはずです。
こんな説明ではわからないと思いますが、Sketchupのサイトには、教習用ビデオがあったりしますから、他の3Dソフトより格段に簡単に描けるようになると思います。慣れて来たら、よく使うコマンドをアルファベット一文字のショートカットキーに登録しておくと、より効率よく描くことができます。
フリー版が有料版よりも劣るのは、ファイルの読込・保存がSketchup形式でしかできないことと、斜めの線が細かいギザギザになる「ドラフト印刷」しかできないことです(上図は、作成した図面を日本語お試し版で読み込んで出力しています)。本格的に使う場合には、他のCADソフトへの書き出し、読み出しができる方がいいですし、図面も美しいものがほしいでしょうから、5万円ほどの有料版購入を検討されるとよいと思います。しかし、作図機能は、私が使った範囲では、全く同じでした。
今教室の夏休みを利用して、工房材木置き場の雨よけ壁を作っているのですが、その図を描くのにSketchupが非常に便利でした。ひょっとしたら、これからの図面は、まずSketchupで3Dを書き、それを2DCADソフトに読み込み、5分の1や原寸の図面にするようになるかもしれない・・・。今まで10種類以上、3DCADソフトを試しましたが、全て挫折していました。ところが、Sketchupは半日程度練習すれば、これくらいの図は描けたのです。真夏の暑い午後、無理して作業をしないで、扇風機にでもあたりながら、Sketchupの練習をしてみるのもいいのではないでしょうか。
◆ プチ大工仕事 ◆
ちょっとした雨よけ壁を作りたく、ホームセンターで買った材木を使って大工さんの真似事をしています。普段は家具用材ばかり扱っていますので、家具作りとの違いがよくわかります。扱う材木が大きいので、材を動かすのではなく道具を動かすこと、精度が10倍くらいアバウトでもいいこと、材木運びに体力がいる等々。また、いつもはあまり使わないスライド丸鋸や手持ちの丸鋸が大活躍しています。
買い求めた90X90の杉材、かなり生と思っていましたが、含水率計をあててみると針が振り切れました。最高ではなんと含水率30%強。実際にノミを入れてみても、ジワーと水が出てくるものもあり、ほとんど生木状態。ホゾの縦を大工さんの真似をして、丸鋸を縦に持って、フリーハンドで切ってみましたが、木が柔らかいためか、キックバック等の不安があまりありません(もちろん充分に気をつけています)。ノミを使っても、楢などに比べるとケーキにナイフを入れるように(ちょっと大袈裟?)切れます。写真は、生木の柱に、丸鋸で背割りを入れているところ。今は2mmほどのスキマですが、一年後には1cmぐらいになっているかも。
あらためて感じたのは、日本の大工道具の多くは針葉樹向けであること。刃の角度も、鋸も、針葉樹に最適。堅い広葉樹を加工する時、ちょっと無理をすると刃が欠けたりするでしょうが、針葉樹では材の方で逃げてくれる感じ。広葉樹の板をスライド丸鋸や手持ちの丸鋸で切断するのは、切断の最後にガンとキックバックうすることがあって大変恐いですが、杉ぐらいやわらかいとウーンと負荷がかかっていることはわかるけど多少の無理はきくようです。
時々、細かい組手の細工などから離れて、このようなプチ大工仕事をすると、体力は要りますが、さわやかな充実感があって、なかなかいいものでした。0.1mmを追いかけるような仕事ではなく、ある程度アバウトでよいということは、木工を楽しむための要素のひとつかもしれません。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 運転マナー --- ◆
名古屋に来た当初、「大阪に比べると名古屋は運転が穏やかやなあ」と思っておりました。大阪のセカセカした、ちょっと車間をとっていると、どんどん車が入り込んでくる、そんなセセコマシイ運転に比べると、名古屋の方は皆さん、悠々と運転されておられるように見えていた・・・というのは昔の話。今の感覚は、名古屋の運転、マナー悪いのんとちゃうか???
「名古屋走り」という言葉があるそうです。家族が最近行った免許証更新時講習では、「車線をまたいでどっちつかずの運転をする」「ウインカーを出さずに車線変更をする」「信号が赤なのに突っ込む」などの特徴を称して、「名古屋走り」というのだと説明されたということです。
たしかに、方向指示を出さずに車線変更をしたり、曲がったりする車、とても多いように思う。大阪だとそんなことをすると、まわりの車からブーイングのクラクションを鳴らされたりするが、名古屋はその辺は寛容というか静かやけど、それでよけいにそんな運転がはびこっているような気もします。
悠然と、走行車線と追い越し車線の間を走る車、これが多いんですわ。名古屋の道路は大阪に比べ、広い。そのせいか、そういう運転ができてしまうのかもしれない・・・。この理由を推論してみると
1、左折も右折もいつでもできるようにしている
2、後ろから抜かれるのが嫌で、二車線にまたがっている
3、車体感覚が鈍感
4、基本的にキープレフトだが、駐車している車がいたりするので、その分中央よりを走っている
5、周りは関係なし、俺は俺の道を行くタイプ
理由はよくわかりません。どれにしても、周囲の車への配慮が足らないことは確かなようです。
また名古屋は赤信号で突っ込む車が多く、大阪は赤信号で見切り発車が多いとのこと。だから、大阪人が名古屋へ来ると危険ならしい。私関西人ですが、確かに横の信号を見てますわ。横の信号が赤に変わったら、ブレーキを緩め、発車準備。そして青になったら、0.1秒たりとも遅れずに発車したーい。ところが、名古屋では「自分は殿様、赤でも行けるはず」と思い込んでいる車が多いようで、黄色で止まるどころか、赤でも走ってきます。これ危ないでっせー。特に一秒も無駄にしたくない、セッカチな大阪人にとっては危険このうえなし。
残念ながら、名古屋の運転マナーに対する私の評価はだんだん下がってきています。スーパーマーケットの出口で、「右折禁止」なのに、平気で後ろの車を待たせて右折する車、携帯電話をしながら強引に赤信号を突っ込んで右折する車とか・・・。一方、私も一度血が頭に上ると、運転が荒くなる傾向があり、人のことより、自分の運転を見直した方がいいとは思っております。さて、東京の運転マナーはどうなんでしょう?
2006年7月
目次
・鑿
・ネット上のコミュニケーションについて思うこと
・関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋名物 ---
◆ 鑿 ◆
親しい刃物屋さんから、「いい鍛冶屋や職人がだんだん年を取っているから、手にはいる今のうちに買っておいた方がいいよ」と言われていたのと、木工教室で私の道具の多くが共通の道具となっていることもあって、手始めに「ノミの10本セット」をお願いしていたのです。それができてきました(^^)。
じゃーん、ちょいと値打ちのあるノミです
「裏、自分で押すよね?」と言われ、「ハア」とあいまいな返事をしていたのですが、届いたのは、ほとんど何もしていない真っ黒なノミ(写真下左)。有名な刃物ですから、ちゃんと作ってあるのですが、それでも10本の裏を押して、表を好みの角度に研ぐのは大変です。教室のある日、一日一本を目標に、生徒さん指導の合間に、やっつけることにしました。裏は安いダイヤモンド砥石で、だいたい平面にしてから金盤です。細いノミはダヤモンドの後、平面の出た中砥でやりました。
表を研ぐと言っても、刃先の角度が50度くらいあるのもあって、まずは好みの角度にしなければなりません。上の写真右のように、手回しグラインダーとクランプを使って、角度を決めてしのぎ面を凹面に削り(刃先までは削らない)、それからダイヤモンドの荒砥でほぼ形を整え、やっと中砥で刃先まで研ぎました。こう書くと簡単そうですが、実際はかなりハードな作業です。ようやく7本終わりました。まだ実際の加工には使っていませんが、これからが楽しみですが、幅の広いノミはあまり使わないような気がします。木工を始められる方、最初は決してセットで買わないように。当面は6mm、9mm、12mmか15mm、24mmぐらいと、鉋の溝調整用に3mmがあれば充分だと思います。ちなみにウチの教室では6,9,15mmの3本でスタートしています。
◆ ネット上のコミュニケーションについて思うこと ◆
インターネットに、MSDOS(フロッピーディスク時代のOS)に毛が生えたようなウィンドウズ3.1の小さなノートパソコンから、トランペットという有料の接続ソフトを使って、ダイアルアップでかろうじて接続していた・・・、遠い昔のことのようですが、実はそれほど前のことではありません。ダウンロードに時間がかかりつつも、絵のあるホームページを見ては感激していたものです。パソコン通信のような文字だけのコミュニケーションしかなかなかったので、それに画像が加わっただけで大変画期的なことでした。また、インターネットニュースというフォーラムみたいなコミュニケーションの場で、海外の木工仲間と知り合えたり、それはそれで実に面白く刺激的な体験でありました。
それから間もなく爆発的にインターネットが普及し、やたらと個人のホームページが多発した時期もありました。その頃、私は木工に関するホームページを立ち上げ、Yahooに登録したのです。木工のページとしては日本初?ではないかもしれませんが、かなり早いほうだったと思います。やがて、企業が、あるいは、IP産業と言われるような通販のサイトや商業的検索サイトが普及し、ネット人口も携帯電話並にウナギのぼり、そしてADSLや光ファイバーによる常時接続がごくあたりまえになりました。
そして今、個人のホームページは「ブログ」がメインになったようです。ブログとはウェブログ、要するにネット上に公開した日記ということです。ここには、見た人が感想を書いたり、あるいは自分のホームページへのリンクを書いたりと、アクセスが多いと個人の日記にとどまらず、網の目のようにつながりが増えていくようです。そんな中「ブロッガー」とよばれるような、アクセス数の極めて多い人達が注目されることもあります。例えば掲載した広告をクリックすると、それに対してお金が払われるようなシステムとか、紹介が商品の販売につながったり・・・、それで結構な収入を得ている方がテレビで紹介されたり。
先日、ひょんなことで、ネット関連の賞をもらったことがあるmixiとかいうサービスに加入しました。これは紹介者がないと入れない、あるていど、どんな人であるかがわかるような、セミオープンのコミュニティーです。私はこのサービスに入ってみて、今まで何となく感じていた「不安」というか「心配」が、私の許容できる限度を越えてしまったのです。人間の歴史の中で、毎日他人のやっていることを見ることができるような、そんな時代は決してなかったと思います。他の人の行動を見ることができたり、逆に私のプロフィールを見に来られた方の名前や回数がわかると、私のような気の小さい人間は、それが気になって仕方がなくなるのです。そこまで自分の行動を見られたくないし、他の方の個人的な日記や行動を見ることに長い時間をかけるのはマズイと思ったのです。それでこのサービスで、活動等を公開するのは当面やめることにしました。といっても当方50代ですから、年頃の方がパートナーや仲間を探す時など便利な側面はあるでしょう。
インターネットは一個人と大企業や組織が対等に存在することができる、弱者にとって大変都合がよい場であると考えています。そのメリットを生かしていかないと、インターネットの価値はないとさえ思います。ホームページにバナー広告を入れたり、あるいは手数料の入る商品紹介システムを導入することは、大きな組織の傘下に入るような気がして私は避けています。バナーやクリックで収入を得ることは、たとえそれが1円であっても、いずれは「個人と組織が対等」というインターネットの最も大切な部分を、壊していくのではないか。
また、体力も気力も旺盛な若い人達が、インターネット上のコミュニティーに入り込んでいくのは、何の根拠もありませんが、なんとなく危険なように感じています。クリックひとつの出会いもいいかもしれませんが、旅先やバイト先、あるいは友人の紹介での出会い、そういう実際の顔と顔が見えるつながりが全くなく、ネット上だけでのコミュニケーションだけの場合、それは非常に危ういと感じます。たぶん、歳をとって体が自由に動けなくなった時こそ、インターネットのコミュニティーは役に立つように思いますね。インターネットで名前を知っていただくことになった私ですが、この頃のネットコミュニケーションに何となく不安を感じているのです。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 名古屋名物 --- ◆
ある生徒さんが急に東京に就職することになって、「東京に行くまでに名古屋名物をぜーんぶ食べたい!」といかいう話になりました。「味噌煮込みうどん」「ひつまぶし」「天むす」「コメダ」「あんかけスパ」「手羽先」「台湾ラーメン」・・・など、皆さんから出ました。私は「ひつまぶし」、割りと好きなんですが、意外にも声が多かったのは「手羽先」でした。
名古屋には手羽先で有名な「山ちゃん」と「風来坊」という二つのお店があって、それぞれチェーン展開をしています。鶏の手羽先をから揚げにして、コショウや甘い味をつけたもので、確かにビールには合うのですが、失礼ながら、私はそれほど美味いもんとは思っておりませんでした。でも「名古屋に行ったら、○○の手羽先、食べたい」という人も多いらしい。ウチの生徒さんに聞いたところ、「山ちゃん派」と「風来坊派」に別れましたので、やはりかなり地元に根付いた名古屋名物かもしれません。
味噌煮込みは夏向きの食べ物ではありません。熱い土鍋で煮えたぎった味噌スープに中に針金のような、生かと思うような、堅いウドンが入ったものです。これが結構値段がはる。大阪人なら、「味噌とうどんだけやのに、なんで1000円もするんや?」と疑問を感じると思います。しかし、これはどうも慣れてくると、時々食べたいものらしく、昼食時、それも夏の暑い時に、背広を脱いで額に汗しながら食べているサラリーマンさんをよく見かけます。余談ですが、夏には「ころうどん」という冷たいうどんがおすすめです。要するに、冷たいうどんに濃い醤油出汁をかけた、ブッカケうどんです。
私のおすすめは、ひつまぶし。たいてい2000円ぐらいするので、ちょっと贅沢ではありますが、鰻丼をちょっと上品にしたような感じ。名古屋のウナギは、大阪と東京の中間でしょうか、柔らかいけど、香ばしく焼いている、そんなタイプで、私は名古屋のウナギが一番口に合います。ネギなどの薬味を添えて食べたり、ワサビをそえてお茶漬けにしたりと、夏バテ対策食として、なかなかいいのではないでしょうか。
「天むす」、「あんかけスパ」、「台湾ラーメン」は名古屋人でも好みが別れるようでした。天むすはえび天麩羅が入ったおにぎり、あんかけスパは、ドロッとした茶色のソースにつかったスパゲッティー、台湾ラーメンは「台湾のラーメン」ではなく名古屋独特のラーメンで、ニラや挽肉が入ったスパイシーなラーメンです。また有名な「きしめん」は意外と地元では食べる機会は少ないです。
以上、名古屋名物概論でした。
2006年6月
目次
・4度目のスウェーデン
・関西人の名古屋界隈事情--- 関空VSセントレア ---
◆ 4度目のスウェーデン ◆
5月下旬、四度目になりますが、スウェーデンへ行ってきました。5月はめずらしく第5週まであったために、教室の休みを利用して充電してきたというわけです。今回の一番の目的は、昨年秋にウチに来たラモン氏が関係している、Saterglantanというスウェーデンの民藝を主に教えている学校の一年で一番大きな作品展を見にいくことでした。ちょうどこの時期、各地の学校で卒業製作展などが行われるていたため、ストックホルムのカールマルムステン校とおなじみカペラゴーデンの展示会も、準備中ではありましたが、見てきました。この旅の記録は、スウェーデン旅行2006として公開しています。
旅を終えて、昨今話題によくのぼる「木工家による、家具作りという仕事の意義や将来性」について、多少、見方が変わったかなと感じています。日本の家具木工家の多くは、職業訓練校で勉強したり、あるいは木工職人として会社で働いた後、独立されています。このせいでしょうか、程度の差はあれ、その技術の基本は”インダストリアル”、すなわち工業的生産だと思われます。量産ラインでの家具製造に携わるための技術をベースに、もちろん手工具の基礎的技術は修得のうえですが、そのうえに立って個性ある家具製作や受注生産を営んでいる方が多いのではないでしょうか。そうだとすると、大きな会社の家具とバッティングすることになるのはごく自然な成行きかもしれません。
椅子をはじめとして、デンマークの椅子や家具を目標にされることが多いと私は思うのですが、デンマークの家具は”インダストリアル”であり、今度見てきたようなスウェーデンの家具は、より”手作り”の味を大切にしているように思います。デンマークの家具職人で、カペラに来ているある生徒さんも、同じことを言っていたので、これはある程度客観性があることではないかと思います。Saterglantanで泊まった部屋の、何気ない家具や、小さな置物、そういうものの温かみというかムードはとても素晴らしいものでした。工業的な物と対極にある、手加工の味、作り手の心が感じられる家具や小物、それは、日本の木工家がかかえる「量産品とのバッティング問題」とは無縁なものに感じられたのです。
ウチの生徒さんの一人である森井家具工房のブログ5月23日には、以下のような文が書かれています。これを読んで私もハッとしました。
---以下引用(抜粋)---
「作品とは、そもそもなんだろうかと思い、辞書をひいてみた。
[作品] 心をこめて制作したもの。と書いてあった。
はっとした。
芸術的なもの、とか、独創的なものという意味だろうと思っていた。
人と違ったもの、いままでにないもの、自ら考えたものが作品であると思っていた。
私は、作品展やギャラリーに行くと、自分の作るものとは雲泥の差だと思い、ぼーっと見ていた。
私には、その作品のこめられたこころを読むこころがなかったのではないだろうか。
---引用終---
スウェーデンで感じたことと、重なる部分があるように思います。純粋にこころをこめて製作したもの、作り手の気持ちが現れているもの、そういうものに人は心動かされるのでしょう。私もこういう方向の物作りをしていかないと・・・。思うのは簡単ですが、実行はなかなか難しいようです。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 関空VSセントレア --- ◆
今回の旅行、ストックホルムが基点だったので、一番早く着くフィンエアーに決めていました。ところが、なんと、フィンエアーが名古屋から飛ぶのは6月初旬から。しかたなく、関空発の航空券をとりました。コペンハーゲン経由なら、ルフトハンザが便利なんですが・・・。
関空発11時のフライトに間に合うには、ナント、春日井5時48分の電車にのり、名古屋6時16分発の新幹線に乗らないといけない。そして新大阪からは乗り換えの必要がない、関空特急「はるか」を使うしかないなあ。覚悟は決めました。自由席と乗り継ぎ割り引きで約7500円、高いけど、しゃあないかあー。
7分間の短い乗り換え時間のため、名古屋駅では新幹線のホームまでリュックを背負って小走り、セーフ。ところが、新大阪で「はるか」に乗ると、なんと指定席までも満席。ひぇー。しかたなく、連結器のあたりで立っていましたが、幸運にも天王寺で降りる人がいて、席ゲット。本当に運が良かったですが、多くの方は関空まで立ちっぱなし。「はるか」は指定席を取った方がよろしいようです。
この間、となりのオジサン達が「名古屋まで新幹線で1時間やろう、セントレアはそこから30分ぐらいやから、名古屋から飛ぶ方が便利なくらいや」とボヤいてはります。たしかに、特急とは名ばかりで、結構遅いし窮屈。おすすめはしません。やっと予定時刻に関空到着。プラットホームから階段を上がると、荷物用カートがあって一安心。でも出発ロビーは四階でした。エレベーターで移動せないけませんでした。
多少時間があったので、スタバでサンドイッチとコーヒーの朝食。席も空いていて、これはまずまず。セキュリティーチェックではパソコンは出さねばなりませんでした(セントレアはそのままでOK)。関空でグッドなのは、搭乗口近くに、無料で使えるコンピューター末端が置いてあり、その周りでは無線LANが無料で使えるのでした。携帯電話がないので、そこでスカイプして、「今から出発するわ」とウチへ最後の連絡ができたのです。
セントレアは、流石に新しい空港だけあって最新設備やし、アクセスも比較的よろしい。着いてから乗り込むのも同じ階で便利。しかし、問題点は国際便がちょい少ない。一方関空、美しいし空港だと思うけど、大阪中心部までやっぱ遠い。最近神戸空港ができたらしいけど、確かに神戸の人がここまで来るのは大変やと思う。伊丹なら、どっちも便利やったんやけどね。
そして、旅を終え、6月2日朝早く、関空に帰ってきました。急ぐ必要はないので値段重視、南海電車の”ラピート”ではない普通の電車で難波へ。難波のチケットショップで名古屋行き近鉄特急の回数券をゲットし、551(関西人ならミンナ知っている豚饅のお店)でブタマン四つをお土産に買って、合計4時間近くかけて、名古屋の自宅に戻りました。ストックホルムから帰ってきたのに・・・、551の紙袋を下げているなんて、なんか、大阪に行ってきたみたいで、いささか変な気持ちのする帰宅でした。ああ、名古屋から関空、やっぱり遠かった。
2006年5月
目次
・注文製作?--ケーキ作り用の板--
・「家具作りという職業について」後日談
・関西人の名古屋界隈事情--- 浜大津から京都 ---
◆ 注文製作?--ケーキ作り用の板-- ◆
家人からの注文で、ケーキを作る時に粉を練ったり延ばしたりする板を作ることになりました。毎週お茶の時間用に洋菓子を作っているので、どちらかというとセミプロ用です。本当は大理石の板が一番良いらしいのですが、重くて高価ですので、木で作ってみることにしました。要するに単なる板ですが、いろいろと気をつけるポイントもあるので、紹介してみたいと思います。
40cmX60cmほどの板を作るだけですが、無垢の板を使う場合、木の反りや収縮を考慮しなければなりません。一般的に幅広板の反り止めというと、アリ桟が頭に浮かびますが、注文主のご要望は「単なる板が良い」だったために、簡単な端ばめにしました。
木取り
今回は、緻密で堅いことが必要なので、在庫が少ないのですが、ハードメイプルを使いました。60cmほどの板を3枚切って、板ハギします。 写真ではボッシュの厚板切断用刃をつけたジグソウで切っていますが、横挽きの鋸で充分です。ジグソウでも切断が終わる時に刃が挟まれて刃を曲げたり、ガンと跳ねたりすることがあるので、最後の1cm程は手の鋸で切っています。大きな板をいきなり電動丸鋸で切るのは危険、ジグソウはこういうアバウトな切断に威力を発揮します。3枚の板を平面・直角を出し、厚みをそろえて板ハギします。水がかかることもありますので、PIボンドを使用し、ビスケットも併用しました。
端ばめ
凸部はテーブルソウで縦も横も加工しましたが、手持ちの丸鋸やルーターでも同様に加工できます。凹部の穴はルーターで掘りました。どちらもセンターに加工するために、両側から二度加工します。こうすることで、目違いは最小になります。なお、両端はノミや鋸で加工しています。
ここで注意したいのが、板の伸び。人工乾燥材で、今までの経験では1mで8mmほども伸びることがあります。今回は幅40cmなので、両端に5mm程度余裕があれば良しと判断しました。
端ばめは、中央を長くホゾにするなどして固定するのが望ましいのですが、今回は手抜きです。中央部10cmほどだけ接着剤を入れて、接着し、端には動きが許容できるように工夫し木のピンを入れました。もちろん、接着の前に両面鉋をかけます。ケーキ用なので、サンドペーパーではなく、鉋だけで仕上げています。接着後、必要な面取りをして完成です。今回は全くの未塗装です。粉が主なので、水でゴシゴシ洗うことがなく、濡れ雑巾で拭く程度です。
単純なボード作りの中にも、大切なポイントがいくつかありました。何かの参考になりましたでしょうか?
◆ 「家具作りという職業について」後日談 ◆
先月このテーマについて書いたら、思いもかけず反響がありました。特に工房悠杉山さんのブログでは、「職業としての家具作りについて」という連載で詳しくプロの立場で考察が継続されています。このようなこともあり、私も今度は、ユーザーの側から見た、大手家具メーカーの家具と木工屋、あるいは木工家の作る家具の違いを考えてみました。何分あまり深く考えない人間ですので、勘違いや間違いも多々あると思いますが、お許しをいただきますようお願いします。
項目 | 大手メーカーの量産品 | 小規模木工家の家具 | 私見 |
価格 | 低〜中、リーズナブル | 中〜高、比較的高い | 量産品と一品生産の差が納得できる? |
耐久性 | 社内規格やJIS規格(椅子) | 統一規格はない | メーカー製が優れていることが多いと思う |
材木 | 量産に適した均質な材 | クセのある木も使える | 木の個性やクセがメリットになるかは? |
加工方法 | 生産ライン。量産体勢 | 基本的に、一品生産 | 均質化とコストダウンは切り離せない |
塗装 | 着色、吹きつけ塗装が多い | オイル、漆など | 量産品では材の色合わせが困難なため着色が多い |
デザイン | 無駄のないデザインが基本 | 個性的ではある | 北欧の量産品に有名な椅子が多い事実もある |
”売り” | ブランド、信頼性 | 個性的、創造性、天然? | ブランドも木工家も、レベルの差は大いに有る |
保障 | メーカー独自の保障規定 | 生きている限り、一生保障 | 売却作品が多い木工家は保障が大変かも |
流通 | 販売店経由がメイン | 多くは製造直売 | 販売店の方が値引き交渉がしやすい? |
こんな簡単な表では確かなことはいえませんが、全ての項目に表と裏があります。例えば、「ブランド、信頼性」は、画一的的な側面が必ずありますし、均質な材木は、安定している反面、面白みに欠けます。また、木工家から購入する場合、作り手と使い手が直接、顔を合わせて話をします。これが楽しい人もいれば、もっとドライに買いたい人もいるわけです。木工家の家具を買う場合、まずその作り手と人間的に合うかどうかが、大きなファクターになります。もしも人間性がピッタリくる作り手なら、家具が少々やぼったくても、気性の合わない木工家のすぐれたデザインの家具を買うよりも、良い場合が多いのではないでしょうか。結局は人間関係が一番意味を持つように思います。これは販売店でも同様。木工家、あるいは木工屋の方が自分の家具をPRする際には、できれば、このような量産品と一品物のメリット、デメリットを説明し、納得してもらうことが、末永く付き合ってもらうために、大切だと考えます。
最近、ひさしぶりに椅子6脚を買っていただきました。「あなたの椅子がほしい」と言われることは本当に嬉しいことです。先月は家具作りという職業のマイナス面を書きましたが、収入の不安定さとは引き換えに、「やりがい」というか幸せなこともあることも事実です。その証拠に「食えないねえ」と言う木工家、お顔は幸せそうな人が多い。「食えない」といっても、食えないために死んだ木工家を私は知りません(^^;)。私の本音は、「食えない」といいつつも幸せに暮している、清貧な木工屋が理想なんです。
先月、ついに53歳になってしまいました。「いつの間にそんなオッサンになったんや」と自問するぐらい年月は速い。収入が少なくても、独身や夫婦だけなら、なんとでもやっていけます。が、子供が産まれ、それも高校以上になると、ある程度経済的な基盤が必要になります。「そんなん必要なし。俺の生き方を見習え!」というような、親の価値観を子供に押し付けることは、私の過去を思い起こすと決して望ましくないと思うのです。若くして木工家を目指して努力されている方は、そういう年齢までまだ時間があります。しかし、それほど若くはなくて家族がある方が木工に向けて転進される場合、たとて実力があっても、実績ができてくるまでに、「物入り」な時期に直面することになります。このあたりも、慎重に考えてほしいと思います。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 浜大津から京都 --- ◆
神戸で過ごした学生時代、その頃も”京都”という町は、ある種憧れでありました。JR京都駅南側の大手スーパーのお店、今は閉店してしまったのですが、そこで30才半ばに約3年間働いていたこともあって、京都はなんとなく懐かしいというか第二の故郷みたいな感覚があります。
先日、京都市内のある展示会を見るため、名古屋から車でかけることにしました。が、京都市内に自動車で乗り込むのはいささか不安があり、できれば周辺に車をおいて電車で町に入りたい。最初は京都南IC付近の駐車場をさがしていたので、アドバイスをもらいに近くにある京都陸運局まで電話をかけました(^^)。そしたら、「名古屋からお越しなら、大津で降りて浜大津の駐車場に置いて、京阪と地下鉄で市内に入られるのが便利です。駐車料金も一日500円に割引されます」と親切に教えていただきました。よっしゃ、それで行こう。
大津ICで降り、琵琶湖方面に10分も走れば、京阪浜大津駅に隣接した「浜大津公共駐車場」に着きます。二階に車を置くと、同じフロアですぐに京阪の駅でした。そこの定期券売り場で、京阪大津線と京都地下鉄の一日乗車券1000円也と駐車券500円を買います。一日券でなくてもこのルートで京都市内に入る切符を買えば、駐車料500円になるそうです。これは京都市内に観光の車を入れないためのパークアンドライド推進事業のひとつだとか。
さて、なんかオモチャのような、京阪大津線に乗って、京阪三条へ来ました。「もう腹減った、早めに昼ごはんしょうか」と昔何度か行ったことがある、京阪三条駅北側の古い食堂を目指したのです。何と言っても30年以上も前のことですから、店はないかもしれないと思いきや・・・、全くそのままの姿でありました。
お店の内部も学生時代のイメージそのままで、メニューも値段も一昔前の安さです。さすがに、床はかなり傾斜していて、低い方には水が少し溜まっていました。相棒は”たぬき”460円也、私は”にしんそば”510円也を注文しました。”たぬき”ってご存知でしょうか、東京、大阪、京都で、まったく違う物なんです。東京で「たぬき」というと、揚げ玉が入ったうどんだそうですが、大阪では甘いあげが入ったそば、すなわち「きつねうどん」のそば版が出てきます。ところが、京都では、刻んだあげが入り、片栗でとろみをつけた、ドロッとしたうどんがでてくるのです。ちなみにあんかけはそのあげのないやつです。このあんかけのうどんやそばは京都独特ではないでしょうか。寒い冬など、体が温まって、とてもオイシイですよ。お店を出るとき、女将に「今もあるかなと心配して来たら、あって感激です」と言うと、「もう開店して100年です」とのこと。ぜひこのまま残ってほしいと思います。
京都地下鉄で女子大生を多く見ましたが、私が学生だった頃の女子学生のイメージとそれほど違わない、どう言ったらいいか京都的上品さがありました。また喫茶店に入っても、熟年の奥様が割合静かに話しをしながら、コーヒーを飲んでおられます。北大路の街を歩いても、名古屋よりも少し時間の流れがゆっくりしているように感じました。「やっぱり京都は落ち着いてるわ」、これが正直な印象でした。
「浜大津に車をおいて、電車で京都市内へ」、このパターン、東から来る人にはおすすめです。最新の地下鉄路線から地上へ出て、山の迫る線路をとおり、浜大津では路面電車となる京阪電車も面白い。あと、私のお好みはイノダのコーヒーとカツサンド。今回はこれを食べることができず、それだけが気残りでした。
2006年4月
目次
・3Dソフトで遊んでみました
・家具作りという職業について
・関西人の名古屋界隈事情--- 角○衛金物 ---
◆ 3Dソフトで遊んでみました ◆
先日インターネットのパソコン関係情報サイトを見ていたら、”GoogleがSketchup買収”というのが目に入りました。Sketchupというのは、3Dモデリングソフトで、直感的な操作で、誰でも簡単に3Dが書けるらしい。Googleが無料で提供しているPicasaという画像閲覧ソフトやGoogleEarthなどは大変優れたソフトで、有料ソフトをある意味で完全に越えているものです。だから、そのGoogleが目をつけたSketchupはかなりイケルンではないかと思い、試してみました。
ここではリンクを紹介しませんが、検索サイト等でSketchupを調べれば、簡単にその日本語サイトを発見できると思います。そこで無料お試し版をダウンロードしたのですが、なんとこれは8時間しか試用できない(涙)。8時間ごとにOSを入れ替えたら、ずっと使えるのではないか・・・、そんなバカなことも考えましたが、とにかく時間のある日を見つけてインストール、3時間ほど遊んでみました。(後日談:試用期間はインストール後8時間と勘違いしていました。何日かに別れても合計8時間以内で、これならある程度試すことができるようです)
直方体や円柱をメチャ簡単に作成でき、そこに四角や丸の窓を描いて、押したり引いたりすれば、こんな図は朝飯前でした。この図が役に立つとは思えませんが、ホゾ組を書くのは超簡単です。斜めにしたい線を選んで移動すれば斜めにもなります。ただ、CADと違って、格子がないので、正確な長さは、手入力やメジャーツールを使って、マークをして描くということになります。手間はかかりますが、メジャーを使って端から2cmをマークする方法は手加工の墨付けとよく似ていて、ひょっとしたらグリッドを使うCADよりも初心者には慣れやすいかもしれません。それで簡単なスツールのホゾ組を書いてみたのが次の図。
3時間ほどしか使っていませんし、3DのモデルをJPG画像に落としていますので、図はあまり美しくありませんが、こういう直角で構成されたパーツを描くのには大変便利でした。今まで、AutoCAD、DesignCAD,TurboCAD、VectorWorks等など、限りなくCADを試してきましたが、3D図面の作成ではここまで書くまでに挫折していたのに比べると、その簡単さは特筆ものです。XYZ軸の方向をどう希望どおりに選択するか、他のCADでは特に苦労したわけですが、このソフトは自動的に適した方向を選んでくれますし、面表面にスナップするなど、「痒い所に手が届く」感がありました。表示方法も、透視や表面に木の模様をつけることもできます。同社のサイトにはユーザーの掲示板があり、そこには美しくレンダリングされた建築物の例などが紹介されています。工夫次第ですが、プレゼンテーション用として充分な機能を持っているようです。
先月、名古屋でAUTOCADの新バージョン発表会とセミナーがあり、参加してきました。会場は超満員で、「建築関係で3Dのプレゼンテーションがあたりまえ」の世の中に遅れないよう・・・というような熱気がありました。たしかにAutoCADは、モデルがあって、それをいろんな角度や尺度で見て、図面が何枚も抽出できる、3DCADの一番ほしい機能が重視されていますし、操作が難しかったのも最新モデルではかなり解消され、以前より簡単に「押し出し」操作などができるようになっているようです。しかし、50万円以上するCADを我々は使えませんし、家具のモデルを作るにしては使わない機能が多すぎます。たぶん数万円以内、できればフリーソフトでないと木工屋さんは使えないのではないでしょうか。Sketchupの値段は5万円〜6万円というところですから、本当に使えるなら、我々も買う気になるかもしれません。
2DCADは、要は図面の代わりですから、操作が自分に合うものを選べばいいと思いますし、優れたフリーソフトもたくさんあります。一方、3DCADの目的は、図面の作成ではなく、モデルを様々な方向から見て、デザインを煮詰めるためのものであると思います。そして、CADの操作を覚えるのに授業料を払わねばならないようなCADは避けたい。Sketchupは、そういう意味ではかなりいい線イっているように思いました。できればGoogleが買収し、フリーソフトになることを祈っていますが、それは無理でしょうね。
◆ 家具作りという職業について ◆
4月という時節柄、木工関係で仕事を探している方が見学に来られたり、知人がその方面に転職していったりと、最近職業としての家具作りをあらためて考えることが多いです。多くは繰り返しになるかと思いますが、今思っていることを書いてみます。
誤解を恐れずに言いますが、一般のご家庭では大きなメーカー製の、良質な家具を購入されることは、いいことだと思います。家具を一人で作られている、いわゆる「木工家」あるいは「木工屋」さん達の作る家具が悪いというのではありませんが、材木の調達、設備、品質管理、価格、ほとんどの面で歴史と経験のあるメーカーの家具は優れています。近隣諸国で生産された安い家具のことを考えると話がややこしくなるので、日本のメーカーに限っての話ですが、大手メーカーと同じ品質を個人の木工家が維持するのはほとんど不可能に近いと思います。自分もその一人なんですが、「世界に一つしかない家具」「無垢の家具」「オリジナルデザイン」・・・、そういう言葉には、私自身はあまり反応しなくなっています。
もしもいくつかの人気の定番家具があって、幸いそれを売って生活していくとすれば、営業から設計、製作、工程管理、品質管理、配送、材料の仕入れ、経理等、それらを一人でやっていては、生産量は限られていますから、いずれ若い労働力に頼ることになります。独立を目指して木工屋になって、それでまた若い方を雇用して、その若い方は雇われて製造に従事するわけです。既存の家具メーカーが来た道の繰り返しかもしれません。
一品物の家具の場合、創造性が要求されますから、もっと手間がかかります。かと言って、ほとんどの場合、かかった時間を正当に評価した値段では売れない。日本ではそういう市場がまだ熟成されていないし、そんなニーズがコンスタントにあるわけではありませんから、「安定」とはほど遠い生活を楽しめる、精神的・経済的余裕が必要です。
それでも毎年多くの方が訓練校を卒業したりして、そのうちの何割かの方は独立されます。毎年、家具・デザイン関係の学校の卒業展もいくつか見ます。インテリア雑誌で見るようなスマートな家具がたくさん並び、「よく作っているな」と思いはするものの、「これから大変やろうな」とも思ってしまいます。どうすればいいか、私にはわかりませんが、こういう現状をよく知ったうえで、自分の強みは何かを考えながら、大手メーカーにはできないこと、あるいは手作りを評価してもらえる分野、それがなければ新規にそういう分野を開拓する、そんな独自性を発揮できる力が必要なことは間違いないと思います。そうではなく、単に「木が好きだから」とか「物作りを仕事にしたい」では、結局は安い労働力として使われるだけになります。それなら、もっと収入のよい他の職業を目指し、木工は純粋に自分が楽しむための方がと思うのです。
私は自分の弱みを隠さずに言うことを良しとする傾向があります。だから、自分の作った家具を「自信を持っておすすめします」などとは決して言えません。むしろ、「軽い分、強度に心配があるので、注意が必要です」とか、「無垢のテーブルは、傷がつくんですよ。オイル仕上なんで、シミもつきますよ」などと、欠点を先に言うことが多い。お客さんは「この人、売る気あるのん?」と思われるかもしれません。でも、そういう性質なんで仕方がないです。木工家として成功されている方には、ご自身の作品に絶対の自信を持っておられる方が多いように思います。そういう自信を持てることも、独立するためには必要かもしれません。この点、見習いたいけど、私はできません。
この手の話になると、ついつい暗くなりますが、「家具作り=生活のための職業」と考えずに、もう少しいろんな角度から考えてみてはどうでしょうか。日本人は「二足のワラジを履く」とか言って、複数の職業に就くのを嫌う傾向があるように思いますが、もうそんな時代ではないでしょう。木工屋でアウトドアの達人、あるいはパソコンのお助けマン、高圧鉄塔下の草刈人、通販の商店主、雑貨輸入業、ギター教室・・・、なんでもやってみたら、そのうち何か芽が出るかるかもしれません。そうしながら、流れにあまり逆らわず、しかし木工を目指す意志を忘れないようにすれば、次第に目指す方向が見えてくるのではないでしょうか。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 角○衛金物 --- ◆
過日大阪出身のある方の工房を訪問した時、私が昔何度か通った大阪の金物店の話をすると、その方もほとんどの道具を同じ店で買ったということでした。その店は、大阪環状線玉造駅近くの日の出通り商店街にあった「角○衛金物」という小さな店です。今はもうないので伏字にする必要もないのですが、同名の店が他にもあることから一応伏字にしました。
30代半ば、スーパー店員をしていた時、昼休みに店のとなりにあった図書館でよく木工関係の情報を集めていました。ある日、有名な千代鶴さんと角○衛金物の店主がいっしょに写真に写っている本を見つけ、「大阪にはそんなお店があるんや」と知って出かけました。細い駅前商店街の中ほど、日用雑貨の店に混じって、そのお店はありました。年配の奥さんが一人店におられ、ノミや小鉋、仕上鉋、砥石などを商いされていたわけですが、すでにその時、ご主人は脳溢血で倒れられたそうで、店にはおられませんでした。しかし、奥さんや店にやってくる職人さん達のお話から、この店とご主人がとても愛されていることは肌で感じられました。店頭には研ぎ場があって、またご主人は刃物の硬度測定などのデータを採られたりとたいへん研究熱心であったということです。大阪府下の訓練校の卒業生もよく通ったということですので、ご存知の方は多いのではないでしょう。残念ながら、それから間もなく、店をたたまれました。運良くといってよいかわかりませんが、最後の売り尽くしで、今愛用の碓井さん作の寸八鉋を手に入れたのでした。
東京や名古屋、たぶん大きな町ならどこでも、この「角○衛金物店」のようなお店が今でもあると思います。こういう職人さんが集う道具屋さんは、単に道具を売るだけではなく、本当に道具や刃物のことをよく知っていて、研ぎ方や使い方まで教えてくれる、教育の場でもあります。それだけではなく、職人さんや木工愛好家の情報交換の場であったり、あるいは仕事の相談ができたり、時には就職のことまで話しがでたりするのです。一方鍛冶屋さんや道具製造の職人さんにとっては、このようなお店は営業代行、そして安定した納品先、お客さんからのフィードバックの窓口、あるいはサポート窓口でもあったわけです。このような道具製造者、(問屋)、小売店、ユーザーという流通形態が長い間、日本の木工技術を支えてきたことは確かだと思うのです。
もしも鍛冶屋さんと職人さんが直の取引をしたら・・・、個人の鍛冶屋さんは製作に集中することが難しいでしょうし、注文が突発的であって、安定した生活もできないのではないでしょうか。世の中、なんとなく、流通の簡素化がいいように言われますが、こと木工道具に関しては、熱心な道具店のオヤジさんが居てこそ、うまくいくのではないかと思います。
今月は、マジメな話になってしまいましたが、道具屋の主人も高齢化していますし、ホームセンターの進出で町の金物屋や道具屋は減る一方。だからこそ、本格的な木工を目指す方は、ぜひ地元の大工さんや職人さんが通う店をみつけて、よい道具を買ってほしいと思います。
2006年3月
目次
・鋸の縦と横
・塗装中の匂い雑感
・関西人の名古屋界隈事情--- 超マイナーな地下街 ---
◆ 鋸の縦と横 ◆
毎回木工の話を書こうとしているのですが、ネタに困る時もあります。そういう時は、教室の時に行っている10分間ほどの簡単な講義の中から、自分でも「ナルホド」と思ったことを紹介していきたいと思います。
昔の中学校の技術の教科書、今見ると「かなり高度」というか、プロレベルのことまで書いてあって驚きます。多分ほとんどの生徒は理解できなかったとは思いますし、ウチの生徒さんでも理解していない人もいそうです(思い当たる方、失礼おゆるしを)。その教科書に必ず載っていて、よく試験問題にしたのが「鋸の縦刃と横刃の区別」です。その時は「三角刃で大きなのが縦」とか言ってましたが、最近やっと自分で納得のいく説明ができました。
どちらが縦か横かおわかりでしょう、もちろん左の刃が横で右(錆びさせてしまってスミマセン)が縦びき。横びきの刃は、切れ刃が鋸身と平行に両側に左右交互に並んでいます。一方、縦びきの刃では、切れ刃が鋸身と垂直な方向に並んでいるのです。横びきは「ナイフの連続」、縦ひきは「ノミの連続」とよく言われます。
木は木目方向に並んだ繊維の束と考えられますから、木を切るときは、刃物は繊維を切る方向に当てなければならないわけです。柱のような細くて長い材を短く切るには、横びきを使いますよね。それは木の繊維を小さなナイフで連続して、切っているわけです。それでは木の繊維と平行な方向、例えば幅広の板を長手方向に切って、細い板に切る場合、木目が真っ直ぐなら、クサビで割ればいい。しかし、実際には木目はまがったり波打ったりしているわけで、そこを横びきの刃で切ろうとすると、ナイフが木目に流されて、うまく切れない。刃が木の繊維と垂直ではなく、平行に近い方向にあたっていて、切れないわけです。ところが、縦ひきの刃を使うと、木の繊維と直角に刃先があたることになって、木の繊維を小さなノミで切りながらかき出すように働いて、うまく切れるわけです。キーポイントは「木の繊維と直角に刃をあてる」ということですね。
それでは留めはどうでしょうか。木の繊維と45度方向で刃が当るので、横でも縦でもいいような気がしますが、親しい刃物店の店主は「留めは縦」とおっしゃいます。私も試してみた限りでは留めは縦の方が切れると思います。が、樹種や木目の状態によってケースイバイケースで選ぶことになるのではないでしょうか。
木工機械の丸鋸刃にも縦と横があります。基本は手の鋸と同じで、横切りは刃先が斜めになっていて、両端の鋭いナイフで繊維を切る構造、縦切りは平らな刃が並んでいます。でも縦と横の鋸刃を使い分けるのは面倒なので、教室では縦も横もそこそこ切れるような刃、直径20cmで刃数が50以下ぐらいのやや荒い刃を使っています。兼房の営業の方に聞くと、A2というのが比較的縦も横も切れるというので、昇降盤にはそれをつけています。
刃の交換が面倒な帯鋸では、縦も横も切れる刃が便利です。横の刃と縦の刃の並び方には何種類かあるようで、たとえば「右、左、右、左、直」の5つの刃のパターン(下図)とか、「右、左、直」の3つ刃パターン等など。右と左は横びきの働きをし、直の刃は縦びきの働きをするのだと思います。
鋸を使う時、鋭い刃先が木の繊維をどう捕らえて切っているか、それを頭に描きながら鋸を使うと、理にかなった切断ができるのではないでしょうか。ホゾの縦引きでも、鋸を入れる角度をどのようにするか、たとえば木の繊維を逆なでしないように使えば楽々と切れるのです。あるいは電動丸鋸では、細かい横切り用チップソウで力任せに縦引きしてはいませんか?それは時には大きな事故のもとになります。
◆ 塗装中の匂い雑感 ◆
塗装方法を選ぶのは楽しいけど、難しい。思ったとおりの仕上がりになることの方が少ないかもしれません。私自身は無塗装に近い、軽い仕上が好きなので、ワックスやオイルをサラッと塗って終わりという場合が多いのですが、濃い色の仕上を好まれる方も多いようです。
先日、文机を作られた方に、漆に代えてカシューを塗ってもらったんですが、塗装中の匂いにはかなり参りました。また、よく使っているあるメーカーのチークオイルも、換気の悪い部屋ですと、完全乾燥までかなり匂いを放つようです。それらの匂いの多くは溶剤に起因するものだと思いますが、カシューもそのチークオイルも溶剤の主成分はキシレンでした。それで昔集めた資料をもう一度見たりして、溶剤の毒性をちょっと調べてみました。ただ、私はこの方面の専門家ではありませんし、匂いに対する反応は人によってかなり異なるので、実際の溶剤の使用にあたっては、皆さんご自身の責任でお選び下さい。
FineWoodWorking、1990年の1月号に塗装で使われる溶剤の危険性についての記事があります。かなり古い記事、それも米国のデータですが、溶剤の危険度を人体に影響を及ぼす空気中濃度の数値で示しています。詳しくは述べませんが、それによると、毒性が低い溶剤としてエタノール、アセトン、中程度がミネラルスピリッツ(日本ではペイントうすめ液と同等と思われる)、ラッカーシンナー、メタノール、やや強いものとしてキシレン、テレピン、トルエンなどの名前があります。
こういう化学的な数値とは別に、実際に使った感覚はかなり違うように思います。教室で使っていて、室内で塗装しても全然問題がないのはやはりエタノールで溶かしたシェラック。これは匂いたいぐらい(^^)。ウチの通販でも扱っているガムテレピンは、数値のうえでは石油系テレピンよりもやや毒性があるとされているのですが、ジンのような良いにおいがして室内でも少量であれば塗装しても大丈夫と私は感じています。メーカー製の塗料で、私の経験では、室内でも比較的楽なのはオスモやESHAなど(注:この他にも今は安全な塗料がいっぱいあります)。ワトコは使いやすくていいオイルですが、風通しのよい所で使用するようにしています。オレンジの皮から採った天然の溶剤を使ったオイルは、私は最初はいい匂いと思っていたのですが、今は苦手です。ホームセンターでも手に入りやすい一液性ウレタンニスなども風通しの良いところでないと頭が痛くなったりします。
安全性にあまりに敏感になりすぎると、「何も使えない」ということになってしまうような気がします。毒性データも大切と思いますが、自分が楽に使える塗料なら、それでいいのではないかと思います。ただ、人によって敏感さが異なるので、複数の人がいるところでは、一番敏感な人にも迷惑がかからないように配慮して作業をする必要があります。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 超マイナーな地下街 --- ◆
今、名古屋駅前にはトヨタ本社ビルがその全貌を現しつつあります。見上げるというか、あまりに高いと逆にそれほど高くは感じないのであります。しかし、私はそういうビルには興味がなく、人があまり行かない、うらびれたマイナーな場所が好きな性質。
この頃、週一回、名古屋駅方面へ行く用事があるので、いつも30分ほど名駅周辺のマイナーな地下街を探して歩いています。「名古屋は地下街」と言われるそうですが、メインの通路となる地下街から枝分かれして、それぞれのビルの地下に、人があまり通らないエリアがあるのです。特に今はトヨタビルの工事によって、以前は連続していた地下街が、分断され孤立している地下街がいくつかあるようです。
「中経ビル」もそのひとつ。今は工事で地下の孤島となった中経ビルの地下、そこはテナントが半分以上閉まっていて、人通りもまばら。「まあこういうところのお店に期待はできないわな」と思いながら、腹が減ったので、あるラーメン屋というか中華料理屋へ。ところが入って驚きました、厨房には調理人が3人も居て、他に、店の主人と思しき人、そしてウエトレスの女性。こんな寂れた地下街で、それも夕方5時に5人もスタッフが居るとは。そしてお客はというと、こんな時間なのに、10名ほどの人が、焼きそばなんかでビールを飲んでいるやおまへんか。お客の平均年齢58歳、出世街道まっしぐらというような人は一人も居ませんが、なんとなく一日に仕事に疲れ、あるいはこれからの残業にそなえ、一人静かに食べたり、軽く飲んだりしておられました。
「さて、何を食べるかな」とメニューを見て驚きました、五目ラーメンやワンタン麺が400円少々、ビール大瓶が400円・・・。他にもポピュラーな中華料理が一昔前の値段でずらっと並んでいます。店のスタッフの話は日本語と中国語が半分々。その時私が食べた五目ラーメン、非常にアッサリした味付けで、庶民の中華料理として大変満足のいくものでした。
名古屋駅にはラーメンブームで有名になった「駅麺通り」があります。中央コンコースの地下ですから、超便利。が、やはり地代が高いのでしょうか、スカスカのラーメンで700円もするようなお店が多い。というか、勢いが峠を越えたラーメンブームの悪影響でしょう、庶民の味「ラーメン」の平均価格が昨今650円を越えています。しかし、駅から徒歩3分ほど、トヨタビル工事で寸断された地下街の奥に、中国の料理人がせっせと働く、安くてオイシイ中華料理店があったんです。トヨタビルができ、地下街が繋がったらテナント料が高くなって、こんな庶民の味方の中華料理店がなくなる・・・なんてことはナントカ避けたい。今のうちに足繁く通ってみたいと思います。
2006年2月
目次
・ノミとケヒキの使い方
・私の腰痛対策
・関西人の名古屋界隈事情--- 三丁目の夕日 ---
◆ノミとケヒキの関係◆
木工教室で教えるようになって、より一層大切と感じるようになった、「ノミとケヒキの使い方」について書いてみます。日本の精密な木工技術、「指物」では、これらの道具と木の性質を充分理解して、うまく使うことが”要”だと思います。シラガキについても同じことです。
組手の加工などで、基準面からケヒキで木にわずかに切れ込み、そこにノミを立てて叩くと、墨線どおりに切れるのではなく、ノミに厚みがあるため、木の圧力によって、必ず左側に寄るわけです。これを繰り返すと、だんだんと墨線から離れてしまうことになります。精密な木工加工をするための原則のひとつは、このようなノミにかかる圧力をうまく逃すことではないでしょうか。
ノミを使って、正確にケヒキ線どおりに加工するためには、教科書的に言えば、「仕上線の約1mm外側を落としてから、仕上のノミを入れる」ということになります。糸鋸で1mm外側を切っても同じですが、単に1mm外側を落としさえすればよいというものでもないようです。わかりやすいように、柔らかい中国産キリの端材を使って、実例を作ってみました。
写真左はケヒキの切れ込みに直接ノミを入れて強く叩いた場合です。ノミが切り捨て側の木の圧力で内側に0.5mmほど入っていますし、その付近がちょっと盛り上がってメクレそうです。しかし、この方法でも、ホンの少し垂直のノミを入れたら、外側から斜めにノミをコマメに入れてやることで、ほとんど墨線どおりに加工できるのです。このような柔らかい木では1mm残す方法よりも直接ノミを入れる方が内部まで綺麗に切断できるかもしれません。
写真中は教科書どおりに、1mm外側にノミを入れています。しかし、よく見るとケヒキ線までの間の1mmほどが盛り上がっています。上と同様に垂直のノミを強く叩きすぎたことで内側に押されて、ケヒキの線までの間の木の繊維が剥離してしまっています。その結果、折角のケヒキの溝が狭くなって、ノミの刃先が入らないということもあります。やはり、垂直のノミは、2mmくらいの深さまで掘るまでは、慎重に入れなければなりません。
写真右は、慎重に1mm外側にノミを入れたもので、左側のケヒキの線は全くつぶれていません。右側は仕上のノミを入れた後ですが、中央付近は墨線どおりに仕上がっているものの、右側は少し内側に押されています。これは、コーナー付近では鋸の切り残しや組手の凸部の影響を受けて内部に入った、あるいはノミの裏の凹みの影響と思われます。対策としては、仕上のノミであっても最初は少しずつ、慎重に入れなければならないということでしょうか。
実際の仕事では、そんなに慎重にばかりしてはいられません。それで表面の2mm程度が墨線どおりになりさえすればいいわけですから、慎重に少し掘り込んだ後は、ガンガン叩いて掘っていきます。一度しっかりした壁ができてしまえば、そんなに乱れないはずです。また、切断面の中ほどがボコッと掘れることがよくあります。見えないところなので、問題はないのですが、よく切れる刃物を用いて椿油を刃先につけながら少しずつ掘れば、それは最小限に抑えられるでしょう。
椿油を刃先につけながら加工することも大切です。油壺を作るのが邪魔臭ければ、台所で使う小さいプラスチック製の容器に綿のハギレをいれ、刃物用椿油を染み込ませたものでOK。毎回刃先を布にあてて椿油をつければ、木との摩擦げ減り、切断面が綺麗に仕上がることと思います。しかし、何よりケヒキやノミの刃が鋭く研げており、裏が鏡面の真平であることが前提ではあります。
◆ 私の腰痛対策 ◆
今年は本当に寒い。工房で暖房をつけないと,、長い時間座ったままの作業はできないほどです。しかし、腰痛で苦しんだ昨年に比べ、今年は調子が良いのです。昨年来、気をつけてきて、良い結果が出ていると思う、私の腰痛対策を紹介します。多分、木工屋さんの多くは、暖房もほとんどないような寒い部屋で、厚着をして、毛糸の帽子をかぶって、時々手を股に挟みながら、作業をしているのではないでしょうか。
1、快眠
ひどい腰痛であっても、熟睡することで、固まった筋肉が少しずつゆるんでいって治るようです。足先が冷える私は、スキー用靴下を履き、電気敷き毛布をし、部屋はデロンギのオイルヒーターで少しあたため、頭からの熱放出を防ぐために、古いセーターを頭付近に置き、寝ています。人によって快眠のための方法は違うと思うのですが、7時間以上ぐっすり眠ることができたなら、毎朝リフレッシュした体と気分になれると思います。暖房費が少々かかっても、腰痛で寝込むことに比べれば、全然問題にはなりません。ひどい腰痛で寝れない時は、弱い睡眠導入剤を処方してもらっても、熟睡する方がよいと昨年痛感しました。
2、快便
恥ずかしいながら、昨年秋、便が詰まって出なくなり、近所の医院で浣腸をしてもらいました。それ以降、「こんなことでは大変なことになる」と便秘ぎみの体質を変えることにしました。私の場合、21歳の時に椎間板ヘルニアの手術をしているせいでしょうか、腰部や臀部の血流が悪い傾向にあって、神経も敏感ではないようです。腰痛と便秘は関係があるといわれていますし、私自身絶対に関係有と思います。
勤めて水をよく飲み、朝は穀類がたっぷり入ったシリアル(ムスリー)をヨーグルト・牛乳を毎日食べ、朝晩二回、大便のために便器に座ることにしました。「出ないやろうな」と思っていても、力まずに深呼吸を繰り返していると、不思議と便が出るようになってきました。最近は、毎日二回以上、お通じがあります。痔にも内部圧力を減少させて、好結果なようです。
3、昼寝
「結構な身分やな」と言われそうですが、昼食後、ストーブの前に横になって、20分ぐらい腰を伸ばすように寝ています。体全体の力が抜けて、こわばっていた筋肉が少しほぐれます。お勤めの方は無理でしょうが、ゆったりと椅子で力を抜いて座るだけでも違うと思います。工房建設時、ウチに来ていた大工さんは、昼食後、車のシートを倒して車内でよく昼寝をしていました。「あれは腰痛対策」と今にして思います。
4、銭湯・お灸
「ちょっと腰がこってきたな」と感じたら、銭湯に行って、ジェット風呂や電気風呂も使って、体全体をほぐします。寒い冬、自宅のお風呂では、なかなか体が温まりませんし、銭湯では気分もリフレッシュできます。また「千年灸」などの家庭でできるお灸や、肌着にはりつけるカイロも、効果があります。
5、ラジオ体操・腰痛体操
元気な時は、ラジオ体操がお勧めです。イキナリの柔軟体操ではなく、末端からほぐしてくれます。反動をつけず、ゆっくりと体操します。「膝かかえ」などの腰痛体操は、もちろん効果的。でも腰が痛い時は、無理をせずによく寝ることにつきます。
以上、単純なことばかりですが、熱心に家具を作っている方は、知らない間に、体が固まっているようです。もしギックリ腰などの腰痛になったら、早い目に整形外科で診察をしてもらうこと。そして、それが筋肉の問題なら、鍼灸などの東洋医学やマッサージもいいかもしれません。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 三丁目の夕日--- ◆
50歳以上だと「夫婦で2000円」になるんですよね、名古屋のある映画館。喜んでいいのか悪いのかわかりませんが、とにかくお得です。そんで、前々から気にかかっていた、「Always3丁目の夕日」を見に行きました。
原作者の西岸良平さんは、同じ名前ということもあり、また漫画をあまり読まない私にしてはめずらしく、連載されていた「三丁目の夕日」は楽しみにしていました。昭和28年に神戸元町で生まれ、小学校に入るまで元町通りのひとつ南側の筋で生活していたので、この漫画は私の幼少期の風景と重なるわけです。それにもまして、温かい人情みたいな部分にジーンと来る、いい漫画でした。
それが映画化されてどうなるか?、正直不安でした。カミさんとポップコーンを買って座席につき、いよいよ映画が始まりました。映画の半分くらいまでは、完璧なまでにCGで復元された、昭和30年代の町並みや家の中の様子に、多少の違和感を感じていました。しかし、段々とハマってしまい、後半は完全にやられました。筋は単純ですし、言っていることは、聞き飽きたような、例えば「お金より心」みたいなことなんですが・・・。最後の方はお涙頂戴のシーンが連発しまして、映画が終わってもすぐに外に出れない有様でした。私達だけかと思ったら、そうではないみたい。というのは映画が終わってから、俳優やスタッフの名前が画面に流れるその間、外に出た人は一人だけで、ほとんどの人はただただその流れる字膜を黙って眺めていたのです。
そういえば、「人に迷惑をかけるな」とか、「外見より心や」とか、そんな昔はよく聞いた当たり前のことを最近は聞かなくなった、いや言わなくなったかもしれません。元町にあった私の生家の隣は、「やぶそば」というそばやで、当時は、住み込みの店員さんを沢山かかえ、出前で大変繁盛していました。熟練した人は、一人で20人分ほどのうどん鉢を片手のお盆に積み上げ、自転車で配達していました。このお店がいち早くテレビを買って、私や兄は夕方のマンガを見たくて、お店によく行っていたので、両親は「隣に迷惑がかかる」とウチにもテレビを買ったということでした。家の前は、教科書の配給会社で、冬頃には大学生のアルバイトが沢山来て、仕分けをしていました。うろ覚えですが、近所の公園にはまだ進駐軍?のカマボコ兵舎があって、アメリカ人の水兵さんからチョコレートをもらったこともありました。元町通りが遊び場だった子供だった私、そんなワサワサさした中で、大人の会話を聞き、自分の「モノサシ」を作っていたのかもしれません。
映画のHPを見ると、映画の音楽が流れてきます。どうも音楽にもかなりやられたらしい、HPを見ているだけで多少ウルウルした気分になったりして、恥ずかしい。そして、そこのメッセージボードには、4000以上の書き込みがあって、古き良き時代のことや、感動したという若い人の話があります。政治的にはどうなのかわかりません。また単なる懐かしさからは、何も生まれてこないかもしれません。しかし、そういった批判を忘れてしまうほど、私はこの映画を見たあとに、何とも言えない、すがすがしい気持ちになったのでした。
2006年1月
お知らせ:誠文堂新光社の木工誌、「週末工房No.4」が出ました。今回は塗装について書いております。教室作品展の様子も紹介されています。
目次
・2006年度展示会と教室作品展
・関西人の名古屋界隈事情--- 名駅のきしめんスタンド
---
◆ 2006年度展示会と教室作品展 ◆
恒例になりました「2006年度展示会」と「作品展2005」です。2006年度展示会では昨年度私が作った作品を見ていただき、作品展2005は昨年度秋に行いました木工教室作品展での生徒さん達の作品を紹介しております。次第に木工教室の皆さんの作品がパワーを増し、反対に私の作品は、パワーダウンをしているように感じます。今年は、数は少なくてもいいから、自分で納得のゆく作品作りがしたいです。
2006年度展示会(私の作品)
作品展2005(教室生徒さん達の作品)
◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 名駅のきしめんスタンド --- ◆
まず初めに、名古屋人は名古屋駅のことを名駅(メイエキ)と言います。理由はわかりません。かつては、新幹線でも、名駅停車中にプラットホームに降り、名古屋名物「きしめん」を超特急で食し、また同じ列車に乗るという曲芸みたいな光景がありましたが、流石に今は見かけません。しかし、駅のきしめん屋さんは根強い人気があるようです。「何番線のきしめんがうまい」とか、講釈の多い、駅のきしめんフリークもいるらしいです。とは言え、味噌煮込みうどんに比べると、それほど名古屋人が好んで食べているようには思えません。
さて、最近用事で名駅に夕方6時頃に行くことが多い。それで簡単に腹ごしらえをするべく、時々JR中央線のきしめんスタンドで、340円(ちょっと高いことない?)のきしめんを食べるのであります。もちろん、きしめんがメインですが、どうもそれ以外の目的でやってくるお客さんが多いのに気がつきました。
黒いアタッシュケースでダークスーツのビジネスマン二人組みは「大ジョッキと湯豆腐」、他のお客は「中ジョッキと肉じゃが」なんかを食券で買っています。店主も慣れた手つきで、大ジョッキにナミナミとビールを注ぎます。そういえば、この頃の大ジョッキは大ではないように思うなあ。今は「大」は昔の中、「中」は昔のグラスビールみたいに、ケチケチしたところが多い。しかし、ここは違います。正真正銘の大ジョッキです。湯豆腐は、お豆腐半分をきしめんをゆでる釜であたため、きしめんの出汁をかけ、カツオ節とネギをかけただけ。肉じゃがはレトルトです。でも、本当に大きな大ジョッキが600円ですから、800円ぐらいでほろ酔いどころか、かなりシッカリ「いい気分」になれそうです。
洒落た居酒屋もいいですが、きしめんスタンドで大ジョッキをグビーッと飲む、そういうサラリーマンさん、好きですわ。大阪駅のガード下や地下街には、立ち飲みの串カツ屋さんがあって、時々行っていました。1000円以内でほろ酔い気分になって帰れるんですよね。立って飲むとしんどいかというと、そうではなく、酔いがまわってくると、全然苦にならないのでありました。少ない小遣いで帰りの一杯を楽しむ、そういう些細な幸せ、なんとなく大切にしたいなあと、ちょっとセンチな気分で、きしめんスタンドの大ジョッキオジサン達を眺めたのでありました。
そういえば、東京ではどうなんでしょう?駅の立ち食いそばでビールやお酒を飲んでいるの人いるのかなあ?!?