過去の記事をこのページに残しております。
なお、1998年〜2009年分は以下のページに分割保存しております。
2013年12月
・木工旋盤
・スライドテーブル
・関西人の名古屋界隈事情---SIMフリースマホ
◆ 木工旋盤 ◆
木工旋盤の技術は、日本では「木地師」と呼ばれる人達によって長い間専門的に行われてきた歴史があり、仕事としての木工の世界では、あまり表に出てこなかった分野だと思います。現在でも電話帳では木工所とか家具製作所という職業とは別に「挽物業(木工)」として記載されています。古くから家業として親から子へと伝わった技術で、彼らの技は一般に広く知られるようなものではなかったようです。
40年くらい前でしょうかウッディーライフ誌が創刊され、雑誌を通じて木工が新しいライフスタイルのひとつとして紹介されるようになりました。それから私のようなサラリーマンから木工を目指す人が少なからずでてきたように思います。雑誌によく登場した工房がオークヴィレッジ、KAKI工房、アリスファームで、3つの工房とも雪の積もる北国で、またマスコミに新しいライフスタイルとして登場していたことが、今思えば不思議な共通点でした。藤門氏が書かれた本で丸棒を脚にしたシェーカーチェアに興味を持ち、またKAKIの家具による松材の家具、その抽斗についていた丸いのツマミも作ってみたいと思いました。
その頃、日本ではほとんど資料がないのに、欧米では木工や家具に関する本が多数出版されているのを知り、今はない日本橋の東光堂書店などに行って木工関係洋書を集めはじめました。木工のビデオなども入手できるようになり、Richard Raffan氏の超絶な旋盤加工を見た時は驚きました。裂いたスルメのような削りくずが飛び出し、短時間で器ができる、まさにかっこいいスポーツのようでした。多分その頃から日本で趣味としての木工旋盤が広まりだしたのでしょう。そして雑誌「手作り木工辞典」などを通じ、輸入木工旋盤の販売も始まっていきます。今木工旋盤というと、西洋式木工旋盤を指すようになってきました。日本古来の和式ロクロの技術はすばらしいのですが、自分で刃物(カンナと呼ぶ)を作るなど、習得がより難しいことも、西洋木工旋盤がアマチュアを中心に広まっていくことになったと思います。
木工旋盤は比較的アマチュアが取り組みやすい分野かと思います。木工旋盤の機械ひとつだけで、ある程度のことはできますし、音も比較的静かです。私はあまり興味を感じないのは、どうしても回転するものに刃物をあてるわけで、できてくるものは円形を基本とした形になること、また寄木を除けば、削る一方であることにも馴染めませんでした。そんなこともあり、ウチの工房では近所のホームセンターで10年くらい前に3万円くらいで購入した中国製の木工旋盤を時折使ってきました。この旋盤は初期状態では振動が激しく、またネジなどのパーツの品質が悪く、モーターの固定方法を変更したり、ネジを日本製のものに交換したりして使ってきましたが、生徒さんが使うには適していないと常々感じていました。
さて、新規に木工旋盤の購入するにあたり、考えた条件や要素は下記のようなものでした。
上記のような条件を満たす木工旋盤は、残念ながら国産には見あたらず、海外製の卓上タイプに絞られてきました。FineWoodWorking誌のTOOL GUIDEを見ますと、最近ではDELTAの卓上タイプ木工旋盤の評判がよいようです。これを取り扱っている浜松の方に連絡をとってみましたが、あいにく延長ベッドの在庫がないとのことやその他の事情で、こちらでの購入は見送ることにしました。次に昔から社長さんを知っているオフコーポレーションさんが扱う木工旋盤について検討を始めました。
実はウチのある卒業生の方がオフさんからKC-14を購入されており、以前実際に拝見し、大変静かで精度も充分な機械だということは感じていました。ただし、この機種は延長ベッドを取り付けることができず、40cm以上の部材の加工ができないのです。VERIOKという名前で売られている安い旋盤はかなり目的に近いものでしたが、これも他の卒業生の方が所有していて、実際に動かしてみたところ、スムースさ静かさなどの点でKC-14より劣っていました。VERIOKの大型版、VM-1000の仕様はかなり魅力的でしたが、実機を見るとやはり品質に不満が残るものでした。そんな中、最近オフさんがJETの卓上旋盤の取扱を開始されているのを知り、これが本命ではないかと思いました。
機械というのは実際に見てみないとわかりません。それで11月の中旬ブログで書いたように、静岡にあるオフさんの店舗”工房スタイル”にお邪魔して、これらの木工旋盤を見て、実際に運転させてもらいました。それでわかったことは次のようなことです。
結局、最初から気に入っていた、軽くて使いやすいKC-14を選んだわけですが、回り道は無駄ではなかったと思います。KC-14は発売当初チャックが無料でついてくるセールスがあって、かなり多くの人が買ったようです。私は定価どおりに買ったわけですが後悔はしていません。木工機械は長く使うものなので、値段よりも”気に入っているかどうか”がとても大切だからです。今回実際に機械を見て買うことの重要性をあらためて思い知った次第です。なおKC-14は台湾製で、工作機械メーカーの方がよく言われるように、台湾製はかなり品質が良いと私も思いました。
延長ベッドはどうするかということですが、当面必要ないと考えています。椅子などの部材を加工するなら、確実に同じものを作ることができる、倣い機構付きプロ用旋盤を導入するか、外注した方が良いように思います。またアマチュアの方の中にはVERIOKの延長ベッドを本体の接合部を加工して取り付けられている方がおられるようで、それで充分かもしれません。本当の評価はこれからですが、必要なら外にも簡単に持って行くことができ、将来大型の旋盤を導入したとしても、これは何かと便利そうです。
(以上は私見です。思い込みや勘違いがあるかもしれません。あくまで参考程度にお読みください。)
◆ スライドテーブル ◆
どちらかというとプロ向けの話になりますが、この頃やっとスライドテーブルのありがたさを感じています。写真は材料の板を手押鉋にかける前に、スライドテーブルで耳の部分やや湾曲した木端を直線にカットしている様子です。欧州ではこれがあたりまえの加工法ということですが、実際に教材を作る際などにこの方法を用いると大変能率が良いのです。こうしておいてから手押にかけると、1〜2回通すだけで直線となり、鉋の刃も長持ちするのです。ウチの機械は1.4mまでしか切れませんが、スライド長2mくらいのスライドソーを導入されると大型キャビネット製作時、効率がアップするのではないでしょうか。
このような機械がなくても、次のようなジグを作れば、多少不安定ではありますが、マイタースロット(溝)のあるテーブルソウで同様の加工ができます。薄くて長い板に溝に入って滑るような角材を接着し(写真では裏側で見えません)、先端には板を押さえるようなブロックを取り付け、テーブルの上を手前から後方へと滑らせるようにして板の端を直線にするわけです。
手持ちの丸鋸でも同様の加工は可能ですが、材木表面が凸凹の場合、丸鋸刃が左右に振れたりして危険なことがあります。FESTOOLのアルミ製のソーガイドようなある程度平面が出た板を載せて切断すると、仮の平面ができ、より安定します。高価なアルミ定規でなくても、ベニヤ板を使った自作ガイドでもしっかりと固定し、丸鋸を安定して送ることができれば、同程度の加工ができます。
とはいえ、やはりスライドテーブル付きテーブルソウでの加工が安心かつ安全であり、効率がよいです。気軽に買える機械ではありませんが、多くの仕事をこなしておられる方は、一度導入を検討されてはいかがでしょうか。
◆ 関西人の名古屋界隈事情---SIMフリースマホ販売開始 ◆
今月は名古屋事情。それもまたまたスマホの話ですみません。
去る11月1日、GoogleからNexus5というスマホが発売された。これがSIMフリー末端で、機種代金39800円はかかるものの、毎月1000円以下でデータ通信やパソコンなどからこれを通じてネットに接続できるデザリングが問題なくできるようになった。物欲に弱い私、欲望を抑えきれず、これを買ってしまった。そしたら11月中旬になって、アップルからiphoneのSIMフリー版を正式発売するとのニュースが・・・。自分はiphoneにはあまり興味がないのだが、ついに日本にもSIMフリー時代がやってきたと感慨深い。ただ先月も書いたように、SIMフリー末端は自分で設定し、故障やトラブルについても自己責任で解決する覚悟が必要で、誰にでも薦められるものではない。
届いたNexus5、電池交換が自分でできないことを除けば、自分には大変満足度が高かった。薄くて軽く、処理速度も早く、画面も美しい。電池もそこそこ長持ちする。ただ新しいのでケースの入手が困難。それで文庫本タイプのケースを自作してみた。9mmのフィンランドバーチ合板を切り抜き、裏板には日本産桐材を貼り、それにボール紙を芯にした布で包んだカバーをかけた。重さは50g増えるが、これなら電車で「本を読んでいる」と見られるかも。作るのに手間がかかるので、注文は受けません^^。
子供の頃、母親の洋裁を見て、真似事をした記憶がある。だからだろうか、布地を切ったり、アイロンをあてて糊付けしたりの作業は結構楽しかった。
2013年11月
・第13回木工教室作品展を終えて
・スマホを安く使う
・足跡遠望記---モダン寺
◆ 第13回木工教室作品展を終えて ◆
毎年10月末に開催している13回目となる木工教室作品展が終了しました。5回目くらいから作品数が100点を超えるようになり、ギャラリーで小物と基礎コースの作品、工房で大きな作品という展示方法になって落ち着いています。個々の作品は来年1月頃に公開する予定で、今月はスナップのみ掲載しました。写真が下手で、良いスナップ写真がなくてすみません。
ギャラリーは小物中心です。今年は大きな箱物が多かったせいか、小物は例年より少し少なめでした。ひとつひとつの作品にスペースを十分に取り、丁寧に展示すべきですが、点数が多いことや教室での作品でもあり、毎年同じようなレイアウトになってしまうのは仕方ないかもしれません。
工房ですが、写真に撮ってしまうと、背景のゴチャゴチャが気になります。木の家具に木の背景、おまけに道具が並んでいると、写真にはならないですね。でも実際に見ると、いいんですよ。人間の目は、興味のある物を背景から切り取って見ているんですね。だから、写真にする時、背景となる無地のスクリーンや大きな布などを使って撮ると、同じ作品でも格段によく見えることがあります。余談ですが、家具のコンペなどで提出する写真は、「プロに撮ってもらうと入選しやすい」というのはほとんど常識です。
興味のある展示会があると、できるだけ見にいくようにしています。作品を実際に見るのと写真で見るのとでは違うのはもちろんですが、その展示場の空気とか、作品の”重たさ”みたいな部分は、実際に行かなければ決してわかりません。
長年やってこられたプロの木工作家さんによる個展と、ウチのような趣味の木工作品の展示会を比べてみると、正直なところ、やはり作品の持つ存在感という面で、負けていると思います。それは展示方法の不備を差し引いてもです。しかし、売るための木工展示会の家具と比べると、作り手の気持ちがストレートに出ている点では、こちらの方が面白いと感じる方は多いでしょう。売るための家具の場合、効率重視かつ繰り返し確実に作成するために、どこか安全サイドのデザインとなってしまうからです。
今回の作品の中に、”売れる”レベルの作品がいくつかありました。一方で、技術的あるいはデザイン的に未熟であるにもかかわらず、「これいいやん!」と思わせる作品も沢山ありました。そこが趣味の木工、家具作りの面白いところではないかと思います。思わず「これ何や?」というような作品を作ることができる能力も大切な要素です。
◆ スマホを安く使う ◆
一人工房主なら、携帯電話は手放せないことと思います。二三年前から、iphoneがきっかけとなり、携帯電話からスマートフォン(スマホ)へ移行せざるをえないような状況というか、ムードになっています。しかし、誰でもスマホが使いこなせるとは私は思いませんし、予想以上に電話・通信代がかかり、後悔される方の話もよく耳にします。そこで、スマホが登場するずっと前からモバイル通信を経験してきた”モバイルオタク”な私の使い方を紹介します。木工と関係ない話題ですが、お役に立てば幸いです。
毎月通話料を除いた通信固定費が6000円以上のもなるスマホを私は持つ気になれません。しかし通販をやっている関係で、外出先でもメールのチェックは欠かせませんし、スマホでネット検索や地図情報、天気などの情報を手軽に行える便利さは一度使うと手放せません。そんな折、二年ほど前から、ドコモの電波を使ったデータ通信ができるサービスが登場し、各社が参入競争し、インターネットに接続する”データ通信サービス”を格安で利用できるようになってきています。ただ、携帯ショップでさまざまなフォローが受けられるようなサービスではなく、SIMと呼ばれる小さなICチップをドコモ製のスマホなどに挿し、自分でデータ通信ができるように設定をする必要があります。速度や利用できるデータ通信量により、最低月500円程度から2900円程度まで、さまざまなプランがあります。
上の写真は私が日常使っているスマホやタブレットです。大きなNexus7は外へ持っていくことは少ないですが、これもドコモのSIMカードを挿せば、外出時にネットに接続できるタイプです。左から二番目のスマホは、夏に携帯電話を雨で壊してから、そのICチップをこれに入れて、携帯電話として使っています。その右のスマホは、二年前に発売されたパナソニックのP-01Dというスマホで、これでデータ通信とデザリング(パソコンなどを電波でネットにつなぐことができる機能)に利用可能ですが、電池が持たないので、二日以上の外出の際には、右端の黒いWiFiルーターと呼ばれる、無線で複数のパソコンやスマホをネットに接続できる機器を利用しています。これらの利用方法は興味のない方にはわかりにくいと思いますが、スマホや無線ルーターなど3つの機器を使っても、毎月2000円代で済んでいます。これでもデータ通信量があまりないので、来年からもっと安いプランに変更する予定です。ただし、仕事上ドコモの携帯電話を捨てるわけにはいかず、毎月980円の最低プランで利用しています。また家内のスマホも私のデータ通信契約で使っていますので、二人で毎月3500円くらいで、3つのデータ通信機器と携帯電話1台を利用していることになります。これなら充分サイフにやさしい。
私の利用方法はややマニア向きですので、誰にでもすすめるものではありません。でも「スマホに変えようかな?」とお考えの方、下記のアドバイスを参考に、再度検討されてはいかがでしょうか。
とにかく、日本の携帯電話会社の販売戦略は詐欺まがいと言われてもしかたがないほど、ワナだらけです。携帯電話からスマホに変えたら、電話代が月25000円にもなったという方もおられます。スマホになると無料通話がなくなるからでしたが、電話中心の年輩の方ですと、とんでもないことになってしまいます。電話代や通信代はできるだけ節約し、その分もっと有意義に使いたいですね。
以下に私が利用しているサイト名を書いておきます。リンクはしておりませんので、URLは検索サイトで調べてみてください。
・IIJmio(格安SIMプラン提供) ・EXPANSYS(海外SIMフリー携帯スマホ通販) ・アマゾン(携帯本体、いわゆる白ロム入手)
◆ 足跡遠望記---モダン寺 ◆
昭和30年代の神戸元町界隈には、アメリカの水兵さんの姿が本当に多かった。白いセーラー服、丸い後ろにリボンがついた帽子をかぶって、さっそうとカッコ良かった。今なら、コスプレのセーラー服はちょっと変わった趣味に間違えられそうだが、ポパイを細身にしたような感じだった。そんな異国ムードの元町を印象づける場所が近所にあった。
祖母は浄土真宗、門徒(モント)で、毎月だったか、よく私を連れて、お寺の法話を聞きに行った。幼児にそれを理解するのは無理だが、その時に聞いた話はかなり記憶に残っていて、自分の行動規範になっているかもしれない。例えば、「死んだら閻魔さんが居て、この世の行いが良かったら天国へ、悪ければ地獄へ落とされる」とか、子供ながらインパクトがあったと思う。またお寺の法話か親から言われたのかわからないが、「ウソをつくと閻魔さんに舌を抜かれる」とよく言われた。「どんなペンチで抜かれるんやろう?」と思いながらも、「ウソはいかん」と悟ったかも。よくわからないけれど、幼少期のこのような話が、その後生きていくうえで、何かとても大切な役割を果たしているように思う。明治生まれの祖母は、きつかった。というか、自分の生き方を強烈にまわりに示す人だったと思う。そのことの是非は別にして、これも法話のように、幼い子供には入り込んでいくように思うのだ。自分をふりかえってみると、そういう人生の規範みたいなものを子供たちにあまり伝えていないように思う。昔と状況や世相は違うかもしれないが、今一度そういう面に目をむける必要があるのではないだろうか。
さて、その法話を聞いていたのが通称モダン寺と呼ばれる「本願寺神戸別院」だ。写真は当時のモダン寺。日本のお寺とは見えない外観で、今はその面影を継続しつつ、よりエスニックな新しいモダン寺になっている。JR元町駅と神戸駅の中ほどの北側にある。神戸には他にも回教寺院や中山カトリック教会など、他の都市では見られない現役宗教施設があって興味深い。
2013年10月
・第13回木工教室作品展
・チップソウの研磨
・足跡遠望記---燈籠茶屋と飯盒炊飯
◆ 第13回木工教室作品展 ◆ (終了しました)
今年も教室作品展の季節がやってきました。手前味噌になりますが、ウチの作品展は本当に面白いです。ご興味のある方、ぜひ見に来てください。スプーンなどの小物から大型キャビネットまで約100点の作品が並びます。
第13回木工教室作品展
期日10月25日(金)〜27日(日)
25日:13時〜18時
26日:10時〜18時
27日:10時〜17時
名古屋市守山区平池東801
宮本家具工房・ギャラリー
◆ チップソウの研磨 ◆
”チップソウ”という言葉、当たり前に使っていますが、木工を始めた頃、何のことかわかりませんでした。叔父さんからもらった古い丸鋸に付いていたのは、今ではほとんど見かけない鋼の丸鋸刃でした。これはすぐに切れなくなるので、プロはものすごく硬い”超硬チップ”が刃先についているチップソウを使うのだと教えられました。チップソウは研がなくても、趣味の木工ではほとんど問題ないほど長切れします。しかし本格的に木工をするようになり、切れ味がわかるようになると、買った時のチップソウの切れ味がしばらくするとなくなること、そしてもっと切れなくなると切断面に丸鋸刃の跡が出たり、バリが多くなったり、抵抗が大きくなったりして、再研磨の必要性を感じるようになります。木工教室を始めてからはさらに使用頻度が高くなり、また安全のためにも、チップソウをよく切れる状態に保つことが日常業務になってきました。
現在、よく使っている欧州製の横切り盤では、縦も横もある程度切れるように、直径200mm刃数40程度の欧州製チップソウを使っています。刃数が多いほどよいというわけではなく、一般的な切断には、この程度の刃数が使いやすいのです。しかしより精度がほしい時、兼房製の現在は発売されていないA2と現行のAN15というチップソウを使っています。欧州製のものは比較的刃が大きく、研磨がしやすいので、マキタのチップソウ研磨機を使って自分で研磨し、兼房は信頼できる近所の研磨屋さんへ直接持ちこんでいます。研磨屋さんに直接持ち込むことで値段が安くなることはありませんが、研磨具合や自分の好みを直接伝えることができるメリットがあります。先日「研磨量ひかえめでお願いします」とお願いしたら、できあがった時に職人さんから「ひかえめにしたので、いつものように長切れはしないかも」と言われました。そういう微妙な感触がわかることは大切だと思います。
さて、チップソウの研磨について、基本的なことを書いてみます。ただしチップソウはダイヤモンドホイールを使わないと研磨できないことや、角度など大変シビアなので、おそらくプロの研磨屋さんに任せた方がよいでしょう。
上の図はマキタの研磨機の取説にある刃先の図です。すくい角、リード角、逃げ角、研ぎ角、の4つの角度が大切で、兼房の場合には、丸鋸刃上に、例えば10-10-15-10というように表示されています。これはすくい角10度、リード角10度、逃げ角15度、研ぎ角10度という意味です。これらの角度を正確にセットして研磨する必要があるのですが、微妙に角度がずれていることがあるので、最初はちょっと当ててみて、うまく砥石があたっているか確認してから、本番の研磨に入ります。
このような角度についての知識がなくても木工作業には支障はないと思いますが、今使っているチップソウがどのような形状の刃をしているか、それを知っておくことはとても重要なことで、そのためにはこの4つの角度を理解しておくことが大切です。意外ですが、欧米のチップソウはリード角が0度のものが多いのです。だから、たとえばデルタ用丸鋸刃のすくい角の研磨は簡単です。これが国産の兼房AN15などですと、リード角がついている上に、左、右、直、の刃が5つセットで並んでいて、研磨する刃を飛ばしたりする必要があるのです。この点からも兼房は研磨屋さんにお願いしています。
写真はマキタの研磨機です。簡単な構造ですが、よく出来ていると思います。余談ですが、昔のマキタには遊び心を持ったアイデアマンがいたのではないでしょうか?軽くて持ち運べるような機械で、重量級の機械の真似事ができるような製品をいくつか作っていたようです。ただし、以前使ってみたマキタの400mmまで研磨できる手押・自動鉋刃研磨機は、期待する精度まではどうしても到達できず、メーカー担当者の承認を得て、返品したことがありました。
話は変わりますが、あまり使わない中国製木工旋盤を近くの木工家さんにあげてしまったので、昔使っていたマキタのドリルを使った木工旋盤もどきをひっぱり出してきました。シンプルな構造で、実は倣い加工もできる、面白い製品でした。ただ、右側のテールストックの木材にあたる部分がベアリングもない単なる金属棒で、小さくて軽いものしか削れません。これがちゃんとしていたら、結構使い物になったと思います。これで引き出しのツマミをよく作りました。
他にも、今も販売されているマキタの卓上小型角ノミやサッシルーターにそなわっているX軸Y軸両方向に動くテーブルなど、実に面白い製品だと思います。今や世界のマキタなので木工愛好家相手の製品作りなどできないのかもしれませんが、昔のような製品作りもぜひ続けてほしいです。
◆ 足跡遠望記---燈籠茶屋と飯盒炊飯 ◆
今月は足跡遠望記です。
元町という繁華街の下町で幼稚園まで過ごしたのだが、神戸は山と海に挟まれた横に長い街である。家から南に少し歩けば神戸港中突堤、北に500mも歩けば山に行き着く。父の母、すなわち祖母といっしょに暮らしていたが、このおばあちゃん、明治生まれの実に気丈な人だった。姫路の西、龍野の農家に生まれ、農業が嫌で神戸に出てきて、同じように九州熊本の農家生まれで神戸にでてきていた、私は見たことがない祖父と出会い、所帯を持った。ところが30歳少々で祖父は「体調が悪いから、田舎で療養してくる」と熊本の実家へ帰り、そこであっけなく肺病で亡くなってしまう。子供をかかえながら、それから兄弟の助けもかりつつ、女手ひとつで3人の子供を育てあげ、元町に小さな家、それも火災があって二度も持ち家を建てたという。和裁や兄弟の和菓子屋が作る饅頭を売り歩いたりして、晩年は近くの商家に小金を貸すまでになっていた。そんなおばあちゃんはお金を無駄に使うのが大嫌いで、「山で遊んだら、お金はいらん」と言っていたらしい。
おばあちゃんは次男で体の弱い私をよく連れて歩いた。元町5丁目の家から北に向かうと、相楽園という和風庭園や山手女学院の近くを通って、谷筋から山へ入る道がある。その急坂を一汗かいて登ると、そこには今も営業している「燈籠茶屋」という山小屋があって、そこで無料の塩茶を飲んで帰るのである。毎回無料の塩茶だと悪いのだろうか、たまに”ぜんざい”をひとつ注文することもあった。私はぜんざいよりも、蓋にのっている塩昆布の方が好きだった。一昨年だったか、その燈籠茶屋に行ってみたが、今も神戸市民が毎日健康登山をする目的地になっていて、昔そのままのムードだった。ただし、現在の人気メニューは、ジャムトーストがついたモーニングコーヒーだという。
家族全員でも、年に何度かは六甲山に行った。三宮から布引の滝を経て、その上流にはトゥエンティクロスと呼ばれる場所がある。トゥエンティクロスとは「20回川を渡る」の意味で、山中を流れる小川を何度も渡る登山道の愛称である。たいていは、帆布製のリュックザックに、飯ごう2つと米、カレーの材料をつめて登り、トゥエンティクロスの河原で飯盒炊爨をするのである。飯盒炊爨は”はんごうすいさん”と読み、枯れ枝を集め、飯盒(知らない人も多いだろうなあ)で米を炊き、食事を楽しむレクリエーションだ。現在のバーベキューと意味的には似ていると思うが、戦後大量に余っていた飯盒の利用法のひとつだったかもしれない。とにかく、お金のかからないファミリーでのアウトドア遊びの走りだろう。
ある時、直径50cmほどの円盤状の石があって、「ようも、こんなテーブル向きの石があったなあ」と仰天。それをテーブルに家族でカレーを食べた記憶がある。古い写真が手元にあるが、兄の嬉しそうな顔が印象的だ。帰り道、疲れた私は寝てしまい、リュックに入れられ、父が背負って家に帰ったらしい。もう本当に昔の話なので、記憶がはっきりしないが、その頃の体験が、後に山登りや川下りに熱中する、きっかけを作っているのは間違いないと思う。「飯盒炊爨」・・・楽しかった。
2013年9月
・アリ組と丸ほぞ
・関西人の名古屋界隈事情---マナカとスイカ
◆ アリ組と丸ほぞ ◆
Tage Frid氏のスツール製作、先月の続きです。彼のスツールは写真のように三本足です。彼自身「私は3本足のスツールを嫌っていた」を述べていますが、特に後脚が一本の場合、後方転倒によって頭を強打する事故が予想されるため、まず商品化されることはありません。その彼が、どこかの柵に腰掛けていた時、とても快適だったので、ふと「尻の骨二つのみで体重をささえている」ことに気がついたそうで、そこからこのスツールのアイデアが生まれたそうです。実際にどんなすわり心地なんでしょうか、出来上がりが楽しみです。図面は公開できませんので、興味のある方は彼の本を探してみてください。
大変スキッとしたシンプルな形ですが、詳しく見てみると、かなり手の込んだ加工が盛り込まれています。低い背板と座面は傾斜した大きなアリ組で組まれており、丸く見える三本の脚、当初は丸だったらしいのですが、どうにも形が気にいらなくて、これもふとアイデアがひらめき、断面を楕円にしたそうです。したがって、ロクロは使えず、断面が長方形の材から、先細りの断面が楕円の脚を作ることになります。どちらの作業も、機械で加工するには困難な作業であり、二三脚作るだけなら、絶対に手加工の方が速いです。手加工の技術がないと簡単には作ることができないということも意識したかどうかわかりませんが、それがこのスツールに魅力を加えていることは確かでしょう。なお、このスツールはボストンのMuseum of Fine Arts(MFA)の常設展示品になっています。
T字型をした座面は単純なホゾ組ですが、かなり薄くて深いホゾです。これは座面の反りや割れを防ぐ効果も狙っているように思います。そして、座面を曲面にする前に角度のついた直径25mmの丸穴をあけます。私はボール盤を使いましたが、角度が保持できるドリルガイドを使ってもよいでしょう。椅子に限らず曲面の部材はどこで平面から曲面に加工するか、よく考える必要があります。試作の場合、仮組までは角材のまま、確実に組めることを確認してから、曲面に加工するのがよいと思います。そうしないと基準になる面がなくなってしまうからです。
次に座と背のアリ組加工です。テーブルソウで所定の角度の切断した背板に、ケヒキと角度定規で墨を入れ、加工し、それを相手に写してまた加工します。斜めの切り込みは、縦引き鋸を用います。ホゾ挽きと呼ばれる精密な縦引鋸があればよいのですが、大きなアリ組なので、よく切れる両刃の縦引きを使う方が切りやすいかもしれません。凹んだ部分を落とすにはノミを使うわけですが、能率を上げるために、写真のようにバンドソウで多数の切り込みを入れました。ドリルを使ったり、糸鋸を使ったり、各自好みで工夫すればよいです。
アリ組はここだけなので、丁寧に加工します。右上のように、組み手はすこし入り、かつ接触面が真っ直ぐに加工できていれば、必ずしも仮組をする必要はありません。何度も仮組をしている間に端が欠けたりするからです。でも慣れない内は、仮組をし、確認した方がよいでしょう。
このように角度がついた組手の場合、クランプをかけることが難しいです。無理してクランプをかけるより、軽く叩き込むだけで組み上げる方がうまくいくと思います。
次は3本脚です。座面に開けた直径25mmの穴に丸ホゾで入れます。丸ホゾの加工は、直径25mmか1インチ(25.4mm)のプラグカッターを使うのが最も確実で速いのですが、そのサイズが手元になく、丸ホゾも手加工することにしました。丸ホゾが確実に手加工できれば、どんなサイズにでも対応できるので、一度は手加工を経験してみてください。またプラグカッターとドリルを購入しても、ピッタリのサイズに加工できないことが多いようです。
左上写真のように、木口に25mmの円を描き、それに外接する正方形のホゾを作ります。次に角に鋸を入れ、正八角形に近づけます。あとは、ノミやヤスリを使いながら、正八角にした後、さらに正16角形にします。ここにコツがあります。いきなり丸に加工しようとすると、何がなんだかわからなくなりますから、正八角になるまで次の工程に移ってはならないのです。例えば、木口からノミを入れる場合、削った面の巾が一定になっているか絶えずチェックします。その巾が下の方が広かったりすると、ホゾの根元に食い込んでいることがわかるからです。ホゾ穴に入りそうになったら、金属加工用バイスで周囲から木殺しをして、軽く入るようにします。その状態が右上の写真です。
この時、胴付は適当に切り、写真のようにスキマがあってもかまいません。次に脚をテーパー状に、そして角を取り、楕円形に近づけていきます。オリジナルのスツールでも完全な楕円形ではなく、太い部分はやや角ばった楕円になっているようですから、あまり厳密に考える必要はないようです。
このような形を大きく変えるような削りに、私は海外の友人にもらった、古くて軽いローアングルブロックプレーンをよく使います。切削角が小さいので抵抗が少なく、また台が減りにくいからです。もちろん日本の平鉋で刃を多い目に出して削れば問題ありません。あとは仕上げ鉋、そしてサンディングで形を整えます。そして、座面の穴に入れ、胴付面が座板から等しい距離になるよう、薄板などを使って、鉛筆でマークし、そこを手鋸で切断し、胴付を密着させていきます。
上の写真は私が独自にやっている方法です。このような不定形の胴付きは、どうしてもスキマができやすいので、脚の外形を鉛筆で写し、トリマで2〜3mm掘り下げ、胴付部分を木殺しして、組み上げています。これにより、見た目はもちろんですが、脚の前後左右へのガタツキも抑えられ、より確実な接合になります。
以上、手加工によるアリ組加工や丸ホゾの加工を中心に書いてみました。手加工は不確実な加工と思われがちですが、状況に応じた柔軟な加工ができ、その技術や経験を持っているかどうかで、機械に過度の依存をせずにすみます。また数をこなすのでなければ、機械と格闘するより絶対速いです。ぜひ楽しみながら経験してみてください。
◆ 関西人の名古屋界隈事情---マナカとスイカ ◆
名古屋界隈事情と足跡遠望記が、ゴチャ混ぜになってすみません。前者は「言いたいことがあった時」、後者は「自分の記憶の記録」として書いてます。
”マナカ”とは名古屋圏の交通機関で使えるICチップ付き前払乗車券である。”スイカ”はもちろんSuicaで、大阪は”イコカ”らしい。ちょっと人をバカにしたようなネーミングが全国的になっている。それが今春から全国的に相互利用できるようになって、大変便利になった。たとえば、スイカ一枚持っていれば、名古屋の工房からバスに乗って大曽根へ行き、JRで金山まで行って、そこから名鉄に乗ってセントレアまで行ける。その後飛行機で新千歳についたら、同じカードで札幌まで切符を買わずに行けるのである。
前々から私と家族用にSuicaを二枚持っていたが、名古屋ではJR以外には使えなかったので、マナカを一枚買っていた。ところが相互利用が始まり、スイカかマナカ、どちらか一枚が不要になった。ただそれだけの話なのだが、最初買った時に払った預かり金500円はどこへ?。こういうケース、ウチでけではないと思う。多くの家庭で、使わなくなったスイカやマナカ、ピタパ、イコカなんかが机の引き出しに眠っているのとちゃうやろか。
全国世帯数は2010年の調査で約5000万世帯だという。その20%が該当すると1000万枚、一枚500円をかけて50億が無意味に眠っているというか、それだけのお金をどこかがプールして運用してるんや。いやそれだけではない、全発行枚数X500円がどこかにプールされているから、途方もないお金が一方通行で動いたということになる。頭のいい人はすごいことを考えるもんや。
一般的に500円、ワンコインは大した金額ではない。しかし、そこに目をつけられたような、不気味さを感じる。へそ曲がりな私的考えでは、眠っているマナカやスイカがあれば、ちゃんと返金してもらうべきだと思う。返金に関する規定はだいたい下記のとおりなので、チャージ金をできるだけ0円に近づけた上で、駅の窓口で預かり金500円だけは返金してもらうべきだ。
参考:スイカが不要になった時の返金について
入金(チャージ)残額から手数料210円を差し引いた金額に、預り金(デポジット)500円を加えて返金します。なお、入金(チャージ)残額が210円以下の場合は、預り金(デポジット)のみの返金となります。
なんか今月はせせこましい話になってしまったが、結構大事なことかも。
2013年8月
・木取り作業
・トリマやルーターの危険な使い方
・足跡遠望記---交通事故
◆ 木取り作業 ◆
通常は週3日の木工教室とその準備があり自分の制作に没頭しにくいのですが、夏休みの間は工房と機械室が独り占め(^^)できるため、時間的にも場所的にも製作を楽しむ余裕ができます。そこで、この夏工房に居る時は、”TageFrid氏のスツールを作るサマーセミナー”に参加するつもりで、制作を楽しむことにしました。
材料は刃物を入れると気持ちのいいチェリーを選びました。写真の板は厚さ32mm、巾25cmの良い材ですが、中央に大きな節や入皮があり生徒さんに使われずに残っていました。このような材を使うのも私の仕事です。
木取りは、機械が使える大きさ(長さ30cm以上)で、ある程度小さく切ってから製材するのが良いです。巾5cm〜10cm、長さ40cm〜80cmぐらいが、扱いやすく安定して製材ができる大きさかと思います。日本では手押鉋盤が製材の最初に選ばれることが多いようですが、欧米の木工では最初はバンドソウです。
最初に製材してから小割すると、巾方向で無駄がでにくいメリットはありますが、厚みが薄くなったり、ひき曲がりにより、材にクセが生じ、再度製材をやり直すことが多くなります。一方バンドソウである程度小割してから製材すると、ひとつの部材ごとに余裕を持たせる必要があり、巾方向などで歩留まりが悪くなることがあります。また、製材前に部材サイズを確定するための図面や部品表がしっかりしていないとミスが多くなりますが、厚さ方向の歩留まりがよく、また刃を痛めやすい木端を除いてから製材するため、鉋盤の刃の寿命も長くなりますし切削作業自体も楽です。一番のメリットは、小割によってクセを出させた後製材ができることです。
このような理由から、教室ではある程度小割してから製材するパターンを推奨しています。製材されていない大きな板を短く切断するには、手鋸かジグゾウを使います。電動丸鋸や丸鋸盤を使うと、切断によって材料の内部応力や重力のかかり方が変化するため、鋸刃を締めつけたりすることによってキックバック(材料が飛んだり丸鋸が手前に急激の戻ったりして大怪我をする)の危険が大きいので使いません。プロの方で丸鋸を使って切断されている例はありますが、鋸道を切断途中で一度ずらしたり、二度に分けて切り込むなどの工夫をしているはずで、危険性を充分理解していない方が真似をすることは避けるべきです。
材の縦引きは、材料に長い定規で直線を引き、それを頼りに、バンドソウでフリーハンド切断します。フェンスに沿わせての切断はしてはいけません。直線がでていない材では、帯鋸刃を横から押すことになり、刃や機械に無理がかかります。あるいは、長い木の定規を使い、それに沿って電動丸鋸で切断してもかまいません。木の端に近いところの切断では、切断された材が逃げていくので、キックバックの危険性は材途中の切断に比べはるかに少ないからです。ウチの場合はスライドテーブルのついた大きな丸鋸盤があるので、それで木端を直線にする場合もありますが、基本的に同じ作業です。
文章に書くと短いですが、木取り作業だけをとっても、その中に、木の動きや木工機械の危険性、刃物の特性、研磨状態など、様々な要素についての理解が必要なことがわかります。
木工教室でもあり、効率よく材料が使えるように、厚さ23mm〜35mm程度の材がほとんどです。しがたって、これ以上の厚い材を作る場合は貼り合わせて作ることになります。材の貼り合わせも、単純な作業ながら、繊細な注意が必要です。木の収縮や反り方から、教科書的には木表どおしを貼り合わせることがよいとされていますが、そのことを理解した上で、臨機応変で考えます。今回は少し厚めの座面用の板なので、曲面に成型した場合の見える面の木目の自然さを重視して貼り合わせることにしました。今回は接着面積が広いので、粘度を少し低くした木工用ボンド(酢ビ)を使っています。
ボンドを材の上に適当に置き、櫛型のヘラで、まんべんなく広げていきます。そして材をすり合わせ、一度離して、全面に接着剤が付いていることを確認後、慎重にすり合わせをし、位置を決めて、中央付近からクランプをかけて、回りへ歪みを逃すようにクランプをかけていきます。ボンドが塗られた板材は片面だけが水分を吸い、延びるので、どうしても周囲が浮き上がりやすくなります。写真では適当にクランプをかけているようですが、両端や周囲に力がかかるように、慎重にクランプの位置を選んでいます。そして、はみ出たボンドを塗れた布でよくふき取りながら、スキマが生じていないか確認をします。とにかく、慎重かつ丁寧、そして迅速に。
時間に追われず、時には道具を直したりしながら、自分の木工をするのは、やっぱり楽しい。我と時間を忘れて作業をしていると半日くらいアッという間でした。
◆ トリマやルーターの危険な使い方 ◆
楽しむための木工なので、「こうしなければならない!」みたいな規則はありません。しかし、木工作業の中には大怪我をするような危険な作業があり、そのような作業をする時には、安全については守らねばならない鉄則があります。特に電動工具を使っての木工作業は、重大な事故につながる可能性があります。比較的小さくて入手しやすいトリマーやルーターも、使い方によっては大変危険な道具となります。丸鋸などの場合は、刃の回転方向が危険な方向であり、ある意味わかりやすいですが、ルーターやトリマの場合は、材がどちらに動くのか、初心者には予想が難しい。特にルーターテーブルでの作業の場合、材が飛ぶと指が刃物に接触しやすく、より注意が必要です。
最近、木工愛好家がよく利用する通販サイトで、トリマを利用して材の巾決めをするトリマテーブルが紹介されています。これはトリマのビットとフェンスの間に材を置き、一定の巾に材を加工するというものです。しかし、これはよほど慎重に使わないと、非常に危険な事態を招く恐れがありますので、その危険性について考えてみたいと思います。
左下の写真は材を左から右に送って、フェンスとビットの間隔で、材の巾をそろえようとする作業です。この危険性を考える前に、まず右下の写真のように右から左へ材料を送ったらどうなるか、考えてみてください。右から送られた材は、。ルータービットの刃に触れた瞬間、一分間3万近くで高回転するビットによって材料は左にガガガッと切削されながら一瞬に飛んでいきます。また材料が硬かったり、切削量が多かったりした場合には、ビットが折れて飛ぶかもしれません。
では左の写真のように材料を送れば安全に加工できるでしょうか?ビットの回転により、材を左に戻すように、また材をフェンスから遠ざけるように力が働きます。ですから、絶えず材を絶えずフェンスに押し付けながら送材をすることが必要です。市販されている装置では、フェザーボードを使ってこれを解決しているようですが、フェザーボードは強く押さえると抵抗が大きくなって、送材がぎこちなくなりますし、ゆるいとビットから受ける力で材が離れ、よりビットに食い込んでいくことになります。
”RouterHandBook”でも、ビットとフェンスの間に材を挟むような加工は危険でやってはならない作業としています。このような加工では、コントロールに失敗した材は、材料が飛んだり、ビットの法に食い込んでいったりするのです。加工する材を事前に目的の寸法より0.5mmほど広く切断できていれば、大丈夫かもしれませんが、そういうことができない方が、この装置で巾を決めたいのではないでしょうか。私には極めて危険な装置であり、作業だと思えます。
ルータービットは直径6mm、大きくても直径20mm程度です。ですので、安全に切削できるのは、0.5mm〜2mm程度です。材料の厚さを決める自動鉋盤では、回転する刃の直径は最低でも60mmくらい、平均100mmくらいですから、3mmくらい一度に削っても材料を引き上げるほどの力はかかりません。しかしトリマのビットの場合、2mm切削する場合、かなり大きな力で材を引っ張り食い込もうとします。したがって、このような方法で材料の巾を決めるには、極めて少ない切削量で少しずつ削らないといけないわけです。トリマやルーターテーブルで安全に切削加工するには、フェンスの中にビットが隠れているような状態で切削するしかないのです。
仮に上手く加工ができたとしても、装置セッティングの手間や切削の危険性を考えると、手鋸で切り、鉋で削って巾を決める方が、楽しいだけではなく、多くの場合速いと思います。機械を使うのはいいですが、何でもかんでも機械というのは無理があります。手道具との住み分けや使用のバランスを考え、トータルで楽しく、安全な木工を大切にしてください。
◆ 足跡遠望記---交通事故 ◆
神戸元町5丁目の小さな家で生まれてから幼稚園までを過ごしたわけだが、その間病気や怪我で、結構お医者さんに世話になっている。5歳くらいだったか、母親が私のタマタマの左右差に気がついて、病院へ行った。そしたら脱腸だとかで、手術をすることになった。お医者さんが「痛くないから大丈夫」というので、安心して手術台の乗ったら、麻酔の注射の痛いこと。思わず「先生のウソつき!」と叫んだ。「痛くない」と言わず、正直に言ってほしかったのだ。
その頃、お風呂は家になかったので、近所の風呂屋に行っていた。ほとんどは三越元町店近くにあった摂津湯だったが、時々海岸通りを渡って、港の銭湯へ行くことがあった。ある夜、母親と兄と3人で、港の銭湯へ行った帰り、海岸通りを横断しようと自動車の列が切れるのを待っていた。母親と手をつないで待っていたとき、明るいヘッドランプが自分の方に向かってきたことは覚えている。その後何が起こったかわからなかったが、気がつくと母親の胸に抱かれていた。母親の着ているブラウスが血で真っ赤に染まっている光景がはっきりと記憶にある。たしか「ブラウス汚してゴメン」とか言ったように思う。「そんなことどうでもいいのよ」と言いながら母は東へ300mほど行ったところにあった神戸博愛病院へ走っていた。
病院で口の上と頬の裂傷を縫合することになった。その時、脱腸の手術の麻酔を思い出し、「麻酔は痛いからやめて」と言った。「しっかりした子やな」とほめられ、麻酔なしに3針縫合したが、その時の痛さは全く記憶にない。
幸い大事には至らず、口のまわりが少し引きつるだけで済んだ。後で聞くと、無免許の高校生が運転するバイクのクラッチレバーが私の顔にあたり、5mほど引きずられたらしい。事故直後、母親はその高校生に「救急車を呼んできて」と頼んだらしいが、すぐに来ないので、近くの博愛病院まで走ったとのこと。事故から二三日して、その高校生のおばあさんというクリスチャンのご夫人が家にやってきて、私の手を握りながら「この子が幸せになるように」みたいなお祈りというか話をしたらしい。その話に私の祖母が感銘を受け、「自分の子供も高校生くらいになったら同じような事故をするかもしれへん」と、事を大きくすることはせず、また賠償も要求しなかったという。
交通事故のハシリではないだろうか。保険や事故の後処理も定まっていない時代の話で、3針縫うだけの軽症だったことは本当に幸運だったと思う。記憶が定かではないが、この事故の日の昼間か前日か、長田区板宿の辺りを歩いていた時、バイクがものすごいスピードで何度も往復し、3度目くらいに電柱に激突、運転手は動かなくなって救急車に運び込まれるのを見ている。自分の交通事故を暗示していたようで、今考えてもちょっと恐い予兆であった。
2013年7月
・鉋一日講習について
・大型木工機械購入は慎重に
・名古屋事情---車の乗り換え
◆ 鉋一日講習について ◆
本格的な木工の初期の難関が”鉋”であり”研ぎ”ではないでしょうか。ウチの教室でも研ぎについて話をすることは日常茶飯事ですし、自分が木工を習い始めた時を思い出しても、独学が最も困難と感じたのは、研ぎであり、鉋の仕立でした。「どの状態が正しいか?」、それが初心者には皆目わからないのです。ですので、独学で指物的木工を目指す人であっても、研ぎと鉋の仕立てだけはしっかりと研ぎができる方に教わる方がよいと思います。しかし周囲にそういう方がいない場合が大半だと思います。
そこで、継続して教室に参加できない方や遠方の方に、一日でどこまでできるかわかりませんが、研ぎと平鉋の仕立ての基礎を体験していただく機会を作りたいと考え、”鉋一日講習”を企画しました。過去一度実施したことがありますが、今までの木工教室での経験を生かし、受講者のご要望や技量等に合わせ、柔軟に対応したいと考えています。現時点での計画は下記のようなものです。当面この要領で応募を受け付けたいと考えていますが、状況に合わせ、中止を含め、内容を変更する可能性があります。
鉋一日講習会の概要
日時:不定期。
応募者と相談のうえ、二人以上集まった時点で日程を調整します。通常は火曜日か金曜日に実施。午前10時〜午後5時まで(昼食休憩1時間)。
(ただし8月は教室が夏休みのため、土曜日で実施できる場合があります)
人数:一日、二名〜三名程度で実施予定です。グループの場合も最大5名まで。
対象:およそ18才〜70才くらいまでの方、性別は問いません。
内容:
裏押し、裏出し、研ぎ、裏金の研ぎ、調整、台への仕込み、台の調整、角材削り 等
(習得が速い方は、ノミの研ぎや、組手の基礎を練習してもらう場合があります)
道具について:
最低限、平鉋、中砥石は各自でご用意ください。仕上砥石、玄翁、金盤、スコヤ、台直鉋、下端定規等お持ちの方はご持参ください。
(道具が準備できない方には斡旋も検討中ですが、受講前に道具代のお振込みが必要になります。)
・平鉋は裏金が鉄板ではなく、鋼と地金でできているものがよい。中古など刃にクセが付いていると研ぎがより困難ですので、小鉋でよいので新品をおすすめします。
・中砥石は、キング、ベスター、シャプトンなどの1000番〜1200番。
費用:一日一人8000円(試削材や研磨用消耗品、休憩のお茶代等を含みます。昼食は各自で)。事前にお振込をお願いします。
キャンセル料:当日100%。前日50%、それ以前の場合は10%。また当方事情により中止する場合は全額返金します。
ご確認いただきたいこと
・「研ぎ一生」といわれ、一日で研ぎがマスターできるわけではありませんが、目指す方向と研ぎ方の手本を示すことができます。
・研ぎの習得は個人差が大きいです。どうしてもうまくいかない場合もあります。このことはご了解の上、ご参加ください。
・経験の有無は問いませんが、一日立ち仕事ができ、一部床にひざまずいての作業もできる体力が必要です。
・一度自己流を捨ててみることは大切です。それができる柔軟な気持ちでご参加ください。
・研ぎの作業では手先は黒く汚れ、時には小さな切傷を負うこともあります。
・刃先を見るため、眼鏡をかければ、毛が一本々判別できる程度の視力が必要です。
・外国の方に指導した経験はありますが、日本語でしか細かい指導ができません。
・木工初心者向けの内容であり、プロの方は対象としません。
堅苦しい説明になってしまいましたが、刃物が切れ、薄い透き通ったような鉋屑がでると大変嬉しいものです。研ぎは地味な作業ではありますが、やってみると楽しいことも沢山あります。また教える方からすると、クセがついていない初心者の方が理解が早かったり、力のない女性の方が研ぎが上手だったりします。「鉋を使えるようになるぞ!」という気持ちがあれば、気軽にメール等でお問い合わせください。(連絡先は教室についてをご参照ください)
◆ 大型木工機械購入は慎重に ◆
久々に大型木工機械を購入しました。すでに大型テーブルソウは3台ありますので、切断作業に困っているわけではないのですが、趣味の木工教室でもあり、アマチュアでも買える値段のテーブルソウを備えることに意味があると考え、また斜めのホゾや、二枚の丸鋸刃を使う溝きりカッターも使いたく、10万円少々で買える写真のテーブルソウを購入したわけです。単相200V2馬力仕様で、TOOLGUIDE誌での「コストパフォーマンスが高い」という記事も参考にしました。
運送業者さんが運んできた時の荷姿は、付属品などの箱3つと合板のパレットに載った重量190kgの本体でした。運送業者さんへの伝達の手違いがあり、最初はごく普通の二トントラックの運転手さん一人で持ってこられましたが、もちろん降ろすことはできず、後刻ゲート車に乗せ換え、なんとか無事工房入口に到着しました。200kgぐらいの荷物になると、平面移動は二人くらいでなんとかなりますが、トラックの荷台から降ろすことは機械なしでは不可能です。
もしこれが普通のお宅だったら、どうなったでしょうか?玄関先に降ろしてもらったとしても、そこからは、数人の男手があっても、段差を超えるには危険を伴います。趣味の木工なら、本人一人で40kg、友人と二人でも80kgぐらいを重さの上限として、機種の選定をすべきだと思います。国内メーカーの現場持込用テーブルソウは25kgぐらいですから、それを工夫しながら使う方が現実的です。
また据付に際し、パレットから降ろしたり、重たいテーブルトップを組み付けたりの作業は、機械好きの人には問題ないかもしれませんが、ある程度の経験や工夫が必要で、誰にでもできる内容ではないように思います。日本のプロ用木工機械の場合、搬入から据付、試運転まではプロの機械屋さんがしてくれます。そのために割高になるわけですが、安全と性能を保証するという意味で、アマチュア木工家にとってもありがたい存在かもしれません。
さてこのテーブルソウの性能、値段が値段ですので、品質に過度の期待はしてはいませんでしたが、まさにそのとおりでした。実用になるレベルで使うためには、自分でかなり整備をし、精度を高めることが必要です。たとえば、マイターゲージのガタ、フェンスの平行、刃口板の平面調整、等です。テーブルトップの平面や意外にも丸鋸の回転精度はかなりしっかりしたものでしたが、刃口板を自前で作ることが困難な薄板構造で、デルタの機械のように、1cmほどの厚みのある構造であることの意味がよくわかりました。これからも当分、使いこなすために工夫を続けることになると思います。
◆ 関西人の名古屋界隈事情 --- 車の買い替え ◆
足跡遠望記は今月はお休み、名古屋界隈事情です。
さて、次の写真、何でしょうか?
ウチでは某国内自動車メーカーが扱っていた、ドイツの会社がタイで安く生産していたOEM車に9年乗っていたが、半年くらい前から、車の左側から、道路の段差などで、「チンチン」とか「リンリン」とか気になる音がしていた。不安になって近所の自動車修理屋さんでチェックしてもらったけど、別に問題ないと言われ、そのままにしていた。ところが、9年目の車検を目前に控え、車検を受けてよいかどうか迷い、自分で木槌をもって車の各部を叩いてチェックしてみた。
そしたら、左前輪のサスペンションコイルの受け皿をたたいた時、リンリンとあの音がしたのだ!。ヨメさんが手をつっこんでみると「何か落ちてるわ」と見つけ出したのが、写真のモノ。まさしく、これはサスペンションコイルの下部が折れたもの。断面は綺麗で、もともと亀裂か何かがあったことを思わせた。コイルの一番下の部分が折れたために、車はほとんど傾かなかったのではないか。それにしてもビックリ。10万キロ以上走っているし、9年も乗っているから、故障はあるだろう。しかし、「サスペンションコイルが折れた」などということは聞いたことがない。「流石ドイツの設計や」と大変気に入って乗っていた車であるが、こんな大切な部品が破損するなんて、もう信用できなくなってしまった。実は前述の自動車修理屋さんが同じ車に乗っていたのだが、10万キロ未満で、タイミングチェーンが切れて、修理をあきらめたという話を聞いていた。しっかりした乗り心地で大変気に入った車だったが、他の部品もこの程度の品質かもと思うとぞっとする。
というわけで、9年乗った、思い出の多い車にサヨナラし、同じような国産車に乗り換え決定。名古屋市内で走っている車を見てると、流石にトヨタ車が圧倒的。特にプリウスの台数の多さには驚くばかり。でも関西人の私、どうしてもメジャーにはなりたくない癖があるのだ。車にステイタスを求めることはないし、最近の国産車はいらない付加価値で値段を釣り上げる傾向が気にいらん。そのうえ10回以上いろんなディーラーで試乗をしたが、最近の営業マンは電話ひとつかけてこない。アンケートに連絡先も書いているのに、営業マンは何しとんねん!夫婦で試乗するなんて、顔に「車買うで」と書いてるようなもんや。もっと積極的にアプローチせんかいな!
車探しに疲れてきた先日、ふと入ったディーラーで、気の合う店長と出会い、予算以内で、なんとか気にいった車にめぐり合うことができ、一安心。車も縁のモンやね。車の性能も大事やけど、売る人との相性も大切や。
2013年6月
・木の家具40人展2013、終わる
・足跡遠望記---元町通5丁目、その2
◆ 木の家具40人展2013、終わる◆
六回目となる合同展示会が終了しました。会場に足を運んでくださった皆様、多忙ななか全国から参加された出展者の皆様、また毎年手弁当で会の運営をされている実行委員の皆様、本当にありがとうございました。自然でゆったりとした会場の雰囲気が感じられた良い展示会だったと思います。皆さんはどのように感じられたでしょうか?
さて、まだ疲れがとれず詳しく書く余力がありませんので、アッサリした私のブースの様子だけ簡単にレポートさせていただきます。写真が下手で申し訳ありませんが、次の写真(右上の子供椅子は別の方)が私のブースのようすです。旧作ではありますが、ヒバ材で作った北欧風キャビネットは家の外に初めて持ち出しました。また、写真ではよくわかりませんが、細い葦が絡んだような小物ハンガー、できるだけ直線と直角で組んだスタッキングチェア、厚さ1cmほどの薄い天板が今回の展示会へ向けての新作です。
クリとタモの両袖机。薄いクリの天板に慎重にアリ桟を入れ、さらに長手方向の強度を補うために、写真では黒く写っている梁のような部材を介して両側の脚部を兼ねたキャビネットに乗っかっています。真横から見ると天板の薄さに驚かれることと思います。椅子は作るのが難しくてコストアップにつながる曲線や斜めのホゾを極力使わないで作ったアームチェアです。座面は桐でオシリの骨があたる付近が少し下げてあります。私の予想に反し(笑)、この椅子をほしいという方がおられ、やっぱり嬉しかったです。卓上の「滝の小箱U」は木製三段びきスライドレールを仕込んだ大変手の込んだ昨年秋の作品です。
下の写真の椅子は昨年展示したものですが、シウリサクラのテーブルの赤い色によく合っていたので、今年も持ってきました。上のアームチェアもそうですが、スタッキング可能な構造にしています。自己評価ですが、テーブルの天板は、シウリサクラの美しさをよく引き出していると思います。壁沿いの北欧風キャビネットは、スウェーデンのPeter氏とLars氏が学校で製作した記録をもとに、できるだけ彼らの製法に忠実に作ったものです。普段は自分の部屋に置いているのですが、このまわりの空気が北欧風になるのは、キャビネットのデザインはもちろん、目のつんだヒバの温かい表情が大きな役目を担っていると思います。習作で非売品ですが、これも売って欲しいという方が居られ、しみじみ作って良かったという気持ちになりました。
展示会前は、忙しくてもうやめようと思ったりするのですが、展示会が終わった後は、なんとなく祭りの後の寂しさが感じられます。一方、自分は同じことの繰り返しよりも新しい物好きなところがあります。来年はさてどうするかな?、一年に一度くらい懐かしい仲間と会って楽しく過ごしたい気持ちもありますし・・・。
◆ 足跡遠望記 --- 元町通5丁目、その2 ◆
神戸港は戦後接収され、連合軍(米軍)に占領されていたらしい。昭和26年に占領は解除されるが、朝鮮戦争やベトナム戦争の関係か撤収は段階的で、最後の第6突堤が返還されたのは昭和49年だという。
おぼろげな記憶ではあるが、近所の小さな公園にブランコがあって、その西側にはカマボコ型の米軍兵舎が建っていた。何歳の頃かわからないが、神戸港に潜水艦が入港したとか、軍艦の中に入れるとかで、見に行ったことがある。平べったい帽子で後ろにリボンが二本さがっている水兵さんの姿はよく見かけた。一度若い水兵さんにトウセンボされ、困っていたら、ニコッと笑ってハーシーのチョコレートをくれたことがある。今も販売されている”ハーシーキスチョコレート”だが、小さな巾着をさかさまにしたようなチョコレートが銀紙でつつんであり、テッペンから白い紙がでている、大変可愛らしいチョコレートだという記憶が鮮明にある。自分はシャイな子だったのだろう、「ギブミー チョコレート!」とおねだりをしたことはなかった。
とにかくアメリカの兵隊さん、特に水兵さんとの接触はとても多かった。それだけに米兵を相手に商売をしている人も少なくなかった。幼稚園でいっしょだった女の子の家に遊びに行ったことがある。国鉄(JR)元町駅南側だったと思うが、外の階段から二階にあがり戸を開けると、中は暗い部屋でカウンターがあり、天井からブドウの房など装飾物が下がっていた。その時はわからなかったが、外人さん相手のバーで、その子もハーフだったのかもしれない。
現在の元町通りはかなり様変わりしているものの、昔の面影をかなりとどめているし、半分くらいは当時のお店が残っている。家からすぐ近くには「サトーブラザース」があった。米軍放出品を扱う店として有名で、軍服から水筒、弾丸入れ、戦闘帽・・・、米軍グッズが所狭しとならんでいた。米軍用の防寒帽を買って高校にかぶっていったりしていたので、昭和50年近くまで店があったと思う。その後はご子息がビニール用品を扱う店にされたそうだ。このあたりの事情は元町通り商店街のホームページに詳しい。
家の前にあった教科書販売の会社は、今は兵庫県教育図書販売(株)となり、元町通り側はその外商部の店舗になっているようだ。この会社ではよく遊んでもらった。兄が学校の遠足で出かけた日、「ぼくも遠足に行きたい」と言うと、母が弁当を作ってくれて小さなリュックに入れてくれた。それを背中にしょって元町通りを一人でブラブラし、昼は教科書販売の会社へ行って、会社の人達といっしょにお弁当を食べた楽しい記憶がある。
さて、近くにカステラの老舗、「長崎屋」さんがあって、嬉しいことに今も同じような構えで店を継続されている。4つ上に兄の友達がこの長崎屋さんの息子さんだったので、ある夕方、母から「お兄ちゃんが帰ってこないから、長崎屋で遊んでいるかもしれないので、呼んできて」と言われ、お店に行って「お兄ちゃんいる?」と聞いたら、いたかどうかわすれたが、ご褒美にカステラの端を切り落としたのを一袋もらったのである。老舗カステラ店で今日焼きあがったばかりのカステラの端(耳と言った)の美味しいこと!。子供ながら「長崎屋へいったらカステラの耳をもらえる」と学習してしまった。数日後カステラの耳がほしくなった僕は、長崎屋さんの裏口の狭い溝のスキマを抜けて、裏からお店に行き、「お兄ちゃんいる?」と偽兄探しをしたわけである。そのときにカステラの耳をもらったかどうかわすれたが、これがまた母の耳に入ることになり、「もう長崎屋さんへ言ったらあかんよ」と釘をさされてしまった。小さいのに頭のまわる食い意地のはった子供と思われたことだろう。
2013年5月
・曲面を削って作る
・足跡遠望記---元町通5丁目
◆ 曲面を削って作る ◆
どちらかというと直線で構成された、シンプルで機能的な家具が好きですが、そういう家具ばかりだと冷たい感じになるので、ところどころに遊び心溢れる、曲線を多用したブジェ的な家具がほしくなります。その曲線も、機械で削りだしたり型にはめて作ったものではなく、自然な感じであたたかみのある曲面がいい。それを作るには、手道具で木を削り出すことしかないように思います。正直なところ、曲面を削って作るのは得意ではありませんが、自分がやっている方法を少し紹介します。
まずは何を創りたいか、そのイメージを膨らませます。実はこの段階が一番難しい。何かをイメージするといっても、見たこともない物を考え出すことは簡単にできるわけではありませんから、多くに場合どこかで見た形を再現することになるわけで、そのためには家具を見るよりも、様々な自然の物を見て、その形やディテールからアイデアをもらうのが良い方法です。
反対に良くないことは他人の作った物を真似することで、習作としてコピーすることは否定しませんが、何となく「どこかで見た木工作家の作品」のようなのは作らないようにすべきです。また量産するわけではないので、ラフなスケッチができれば、あとは材料を見ながら、いきなり作っていきます。手道具が作り出す形というものがあると思います。作業はだいたい次のような流れです。
今回は河原に生えている葦のような細い植物が3本絡まっているようなイメージの物を作ります。ドローナイフや刃を大きく出した小鉋、南京鉋などで削っていきます。初めはドンドン削りますが、仕上げの段階に入ると逆目・順目を意識し、注意深く削ります。丸棒削りは必ずどこかで順目と逆目が入れ替わりますから、木目を見るよい練習になるはずです。
荒削りの段階で重宝しているのが写真のVeritasのスポークシェーブです。刃の仕込み角がとても小さく、というか刃の裏が木に接していて、少しだけ前に傾け削るので、逃げ角は5度くらい、刃先角は25度、刃がよく研げていれば、とても軽くスイスイ削ることができます。刃がズレやすかったり、木くずがつまりやすい欠点はありますが、南京鉋で仕上る前段階の削りに多用しています。日本の鉋は薄い鉋屑を出して綺麗に仕上ることに適していますが、これはスポークシェーブの名前どおり、形を作る鉋です。刃は比較的長切れしますが、切れなくなったら、早めに研ぎます。
次に南京鉋や曲面専用南京鉋などで形をととのえていきますが、どうしてもスジが残ったり、曲面が滑らかにならなかったりします。それで、曲面にあわせたスクレーパーを作ってみることにしました。ゼットソーの使い終わった刃の背中に目的の曲線をマジックで書き、グラインダーで凹面に削り、最後は写真のようにドリルにつけた回転砥石で滑らかな曲線にします。
グラインダーでできたバリを1000番くらいの中砥で取り、バーニシャーで返りをつけると、曲面スクレーパーができます。油をつけて、最初は水平に、次に写真のようにバイスに挟んでバーニッシャーを直角にあててこすります。曲面の場合は、あまり斜めにせず、垂直にあててこすり、最後にほんの少しだけ傾けるとよいようです。
ちゃんと刃がついたスクレーパーは、なかなかよく削ることができます。南京鉋やこのスクレーパー、あるいは直線のスクレーパーも使いながら、手触りによい、自然な曲面に仕上ていきます。人工的な平面が残っていると不自然な曲線になりますので、特にその境目には注意して削ります。スクレーパーは押しても引いてもいいですが、手に持って軽く削る場合が多いので、引いて削る方がやりやすいでしょう。また曲面は目的のカーブより少し大きめに作った方が、使いやすいです。サンドペーパーをあてるのは、その後です。
仕事としての木工ではこんな悠長なことはしていられませんが、手道具で曲面や丸棒を削り出していくのは楽しい作業ですから、気軽に挑戦してみてください。
◆ 足跡遠望記 --- 元町通5丁目 ◆
先月還暦を迎えました。60歳です。高校生の頃、50才はかなり高齢のオッサンで、60才なら正真正銘オジンだと思っていましたが、順番は来るんですね。そしてこの節目に、自分の目で見ていた昔の風景や出来事を記録しておくのもいいのではないかと思うようになりました。そんなわけで、今月から「名古屋界隈事情」にかわり、「足跡遠望記」として、頭の中にある古い記憶を辿ってみることにしました。昭和の時代が博物館で展示される昨今ですから、若い方にも楽しんでいただけるのではないかと、勝手に思ったりしています。
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昭和28年4月、港町神戸の元町通5丁目商店街の一つ南の道、海岸通までの間の小さな家で生まれた。西隣は「やぶ蕎麦」といううどんや蕎麦の店で、出前で大変繁盛していた。小さい頃、そこの店員さん達に可愛がられ、よくダッコされていた記憶がうっすらとある。住み込みの若い衆には病気持ちの人もいたのだろうと母は言うが、原因はよく知らないが、生後間もなく小児結核にかかった・・・らしい。まわりは「大人しい子や」と感心していたらしいが、実は病気が原因。だから、元気でやんちゃだった兄に比べ、何となく”身体が弱い子”というイメージで育てられたと思う。東隣はアパートをいうか、間貸しをしている家で、大家は「アサオカ」さんと呼ばれ、窓から「みやもとはーん」とウチによく声をかけていた。
ホンマかいな?と思うのが、トイレの汲み取り。裏側からのアクセスができないため、隣のやぶそばができる時からの約束で、そばやの店内をバキュームカーのホースをもったオジサンが通って、裏口からウチとそばやのトイレの汲み取りをしていた。営業中に店内をホースが通っていた記憶があり、飲食業として今では考えられない。もちろん水洗便所が皆無の時代だっかから仕方がないかも。後述するが、トイレのない家もあった。
家は玄関からすぐの4畳半(?)と襖で区切られた6畳和室、またその奥に6畳くらいの台所の三部屋と、便所であった。裏口を出ると小さな庭があって納屋があったと思う。”ネリ”という名前のメスの雑種犬を飼っていた。玄関のすぐ横に狭い板間があって、そこにシンガー103というプロ用ミシンがあり、それで母は洋服を縫っていた。その横では祖母が和服を縫っており、次の間が夫婦の寝室だ。父は昼間神戸製鋼所で働き、夜は近くのダンスホールでトランペットを吹いていた。家族の大人は全員働いていたから、母親が「遊んでやれないかわりに・・・」と、幼稚園へ入る頃から毎日10円のおこづかいをもらっていた。今なら100円以上だろうから、子供にしては結構な金額だったと思う。西に少し行った所に「タンジさん」とよぶ、一厘菓子屋(いちりんかしや)があって、そこでいろんなものを買っていた。
道をはさんで、教科書の販売会社の倉庫というか流通拠点があった。年度末になると大量の教科書を整理し、各学校へ届けるのが大仕事で、多数アルバイトが来て、手作業で仕分け作業をしていた。ここの社員さんやアルバイトさん達にもよく遊んでもらった。その会社の奥というか北側には今もあると思うが、「宝文館」という本屋さんで、店は元町通りに面していた。
近所に同い年の子はいなかったようで、記憶にあるのはヨシロウちゃんという、ひとつかふたつ年上の男の子。ヨシロウちゃんは近所の戦災瓦礫を積んだ小さい山の上のバラックに、家族5人くらいで住んでいて、親父さんが大八車で野菜の行商をしていた。今思うとほんとに一間の小さな家に家族が重なるように寝ていた。便所はなくて、ヨシロウちゃんは6丁目にあったデパートの三越の開店を待って、そこで用(大)を足していた。その瓦礫の山の側壁は瓦などが積みかさなっていたので、その瓦をはずして、「宝物」を隠したりして遊んだ記憶がある。宝物は、釘を市電にひかせてつくったぺッタンコのナイフだったりした。今思うと非常に危ないことなので、絶対真似はしないでほしいが、家のすぐ南側の海岸通りには市電が走っていて、その線路の上に釘を置き、その上市電がとおったら、持つと温かい、平たく延びたナイフができるのだ。見つかると運転手が下りてきて、こっぴどく怒られる。この市電で親父は灘浜の神戸製鋼所に通っていたし、単一料金で神戸市内を端から端まで行くことができたので、祖母や母はよく使っていた。
隣のやぶ蕎麦は、東京のやぶ蕎麦と関係があるかもしれない。私にはその味の記憶はないが、母親の話では流石に出汁は美味しかったとのこと。蕎麦は店の奥で打っていたが、うどんはどこかの製麺所でゆだあがったのを仕入れていたようだ。ある時、製麺所へうどんを取りにいく車の荷台に乗せてもらったことがある。木の枠にスノコをしいた箱に真っ白いうどんが並んだ箱を何段か積んでの帰り、荷台にいた僕(3歳か4歳?)は、その白いうどんがとても美味しそうに見え、それを手でつまんで食べていた。店に帰るともちろんバレてしまい、店の人には大笑いされたが、そのことを聞いた母は「子供にちゃんと食べさせていないと思われる」と、とても恥ずかしい思いをしたようだ。私の麺好きは、その時から始まったのかもしれない。
そんなこんなで元町五丁目では、まるで「三丁目の夕日」みたいな生活だった。続く。
2013年4月
・V&AMuseum 常設家具展示場
・関西人の名古屋界隈事情---今月はお休みします
◆ V&AMuseum 常設家具展示場見学 ◆
3月は週末が5回あったために木工教室が一週分お休みとなり、この機会を利用してロンドンへ行ってきました。基本観光旅行ですが、Victoria and Albert Museumに新設された常設の家具展示場も見てきましたので簡単にレポートします。なお帰国したばかりの時差ボケの頭で書きましたので、何かと不備があるかと思いますが、どうか大目に見てやってください。
V&AMuseumの常設展示は大英博物館と同様、無料で見ることができます。係員の方に写真撮影をしてよいかと聞きましたが、この家具展示場はOKとのことでした。少し前までは全館撮影可だったのですが、最近は撮影禁止のブースもかなりあります。もちろん他の見学者の迷惑にならないよう、フラッシュや三脚は使用せず、できればシャッター音無しで撮影するなどの配慮は必要です。
立派な入口を入り、左奥のエレベーターで6階へ行くと、家具と陶器の展示場があります。長さ50mくらいでしょうか、細長い展示場の両側と中央に、古い時代から現代の家具まで多数展示がされています。また木、金属、石、プラスチック、繊維など様々な材料を使い、手の技からコンピューターによる立体成型の技術まで展示やタッチパネル、ビデオ等で丁寧な展示がなされていました。
イギリスと言えばウィンザーチェアですが、古いオリジナルに近い形を知ることができます。かなり前に小国木材加工研究所で行われた製作講習会で聞いたとおり、脚は通しホゾではないのが本来の形のようです。弓形のストレッチャーの形も同様です。右はトーネットの曲木椅子ですが、接合にかなりダボが使われています。
左はキャビネットの構造をわかりやすく分解展示したもの。桟や抽斗を受ける構造、また裏板の取り付け方法など参考になります。右は象嵌の美しいキャビネットですが、この技法について、タッチパネルで詳しく解説がしてあります。
タッチパネルの右半分で製作過程が動画として映し出されます。3種類の金属などの薄板を重ねて貼り合わせ、右の写真のようにレールの上を直線的に動くようにした手の糸鋸(弓鋸)で切り抜いています。このビデオをV&AMuseumのウエブサイト上で見ることができます。
左の椅子は、部材加工の多くの過程をコンピューター制御の木工機械で行われています。正直なところ、「ここまでやるか!?」と驚いてしまい、小さな木工屋が必死で木を削っていてよいのだろうかと疑問も感じてしまいました。ただ、なんとなくツルンとした無機質な感じは機械加工だからかもしれません。右の樹脂製テーブルは、木をモチーフにしたアイデアからコンピュータープログラムにより枝分かれした立体図を作成、それを3次元プリンターでしょうか、ビデオではよくわからないのですが、レーザーで位置決めをしながら、すべて機械で製作されています。このプロセスもネット場に公開されています。クラフトの領域でも、近い将来このような制作方法が主流になるのかもしれません。
左の木のブロックは、様々な種類の木で、それをさわると、その樹種に応じた説明が表示されます。右のU字型のベンチは、休憩用と思われるコーナーに設置してあり、この展示場に相応しいユニークなベンチです。
最新のデザインがユニークな家具も多数展示されています。左の本棚、面白いですね。安易な真似はダメですが、発想の原点は参考になるように思います。右のキャビネット、机にも変身できるのです。これはTomoko Azumiさんというロンドンで活躍されている日本人デザイナーの作でした。
そんなに大きな展示場ではありませんが、大変面白く、見ていて飽きませんでした。展示品のセレクションも抜群ですが、歴史のある技法から最新のコンピューターによる技法まで、それらをタッチパネルや動画を使って解説していて、本当によくできている展示だったと思います。国もレベルも目的も全く違いますが、5月31日から開催予定の”木の家具40人展”も、見ていて飽きない、深みのある展示会に少しでも近づけるようにしたいと思います。
さて、ロンドンまで行けなくても、V&Aのホームページを丹念に見れば、会場で見ることができるビデオなどはほとんど公開されていて、見ることができます。英国の木工雑誌”Furniture &Cabinet Making”でも頻繁にこの展示場のことがとりあげられており、イギリス本国でも今注目されているようですので、ぜひ一度ホームページをのぞいて見てください。
Victoria and Albert Museumの家具展示場
ロンドンは二回目でしたが、この何十年かで最も寒い3月だったそうで、連日最低気温−3度、最高気温4度くらいの、厳しい寒さの日が続きました。そんな中、丸4日間ロンドン市内を見てまわりましたので、後ほど旅行記として公開する予定です。
2013年3月
・洋鉋VS和鉋
・安物買いは苦労する
・関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋走り --
◆ 洋鉋VS和鉋 ◆
一昨年の11月に洋鉋のことを書いていますが、その頃からでしょうか、教室でも何人かの方が洋鉋を使っています。木目の複雑な木や逆目ボレの起きやすい木を削る時、しのぎ面を上にして刃を仕込んだ「Bevel Up Plane」を使っているのです。この鉋は切削角を大きくして逆目ボレを起しにくくしているわけですが、これが本当に良いのかどうか、先日作り置きしていた椅子の材料三脚分を削る機会がありましたので、その使用感を書いてみたいと思います。
思いつくまま、感想を書いてみました。なお「和鉋」という言葉が適当かどうかわかりませんが、日本の平鉋と考えてください。
(白い塊は洋鉋の滑りをよくするためのイボタ蝋。ロウソクでも可。)
最近日本でも洋鉋を輸入販売しているところがあり、以前より洋鉋は入手しやすくなっています。また台の調整が難しい和鉋に比べ、当面は台の調整から解放される洋鉋は素人向きと言えるかもしれません。しかし、研ぎやすい日本の刃物の研ぎの基礎を修得していない方が、洋鉋の刃を上手く研げるとは思えません。繊細な研ぎをある程度できる方が、逆目対策で困っている場合、洋鉋特にBevel Up Planeは力強い味方になるように思います。
ただし、趣味ではなく、仕事で材を削る場合は違ってきます。多数の材を削らねばならないので、重たい洋鉋は大変疲れます。慣れの問題もあるでしょうが、私の感覚では、和鉋の倍以上疲れるように感じました。これは”押す”ことにより鉋を材の上に押し付けることになり、摩擦が増すことも要因のひとつではないかと考えます。一方和鉋は”引く”ので、軽い鉋と相まって、摩擦がより少なくなるのではないでしょうか。とにかく重い鉋を持ち上げては削るの繰り返しは、長時間になると大変な労力ですから、数をこなす必要があるプロの場合はやはり和鉋でしょう。
私は、これまでどおり、和鉋を主として使い、逆目で上手く削れない時に、Bevel Up Planeを試しています。それでも無理な場合はスクレーパーの出番です。要は適材適所で、うまく使い分けていけばよいと思います。また「誰でも洋鉋なら使いこなせる」と思い込むのは間違いです。繊細な研ぎができ、紙一枚ほどの刃の出し方を調整できる人でないと、洋鉋も使いこなすことはできないでしょう。
今回使用した洋鉋について
洋鉋にも良い物とそうでない物があります。欧米の木工雑誌の評価記事等では、CLIFTON(英)、Lie-Nielsen(米)、Veritas(カナダ)の3社が定評のあるメーカーのようです(CLIFTON以外は国内に販売業者有)。Lee Valley Toolsが作るVeritasは値段も手頃、品質も良好、Bevel Up Planeに関しては特に評価が高いようです。同社のBevel Up Planeには小さい物から大きなものまで数種類ありますが、大きさが中くらいで値段も手頃な”Bevel Up Smoother Plane”、もしくは台が長い”Low-Angle Jack Plane”が適しているようです。
◆ 安物買いは苦労する ◆
以前にも書きましたが、ウチでは今は販売されていないJETのDC500という集塵機を二台使っています。教室の機械室では大きな集塵機による集中集塵よりも、個別に集塵する方が便利で、よく使う木工機械に小さな集塵機を連動させています。このため、電力消費の少ないDC500は大変好都合なのです。しかし、ファンがプラスチック製で強度不足でしょうか、変形したり割れたりするので、それを針金でしばったりして修理しながら使ってきました。
ところが、またファンが割れてしまいました。スペアのファンに交換し、遠心力で羽が広がらないようにステンレスの針金でしばり、エポキシで抜けないようにして、修理しました。
他のショップで販売されている、同じようなスタイルの1馬力集塵機は4万円ほどするようですが、ファンは鉄製と明記されています。オフさんブランドのKERVの1馬力タイプもファンは鉄製だそうですが、やはり4万円ほど。これらに比べDC500は消費電力500Wで約二万円、半額です。しかし、安いものは修理に手間がかかるうえ、今度ファンが壊れたら、廃棄処分にせねばなりません。結局は無駄な出費につながります。集塵機のファンは鉄製であることが、集塵機選びの最低限必要条件です。
苦労話をもうひとつ。これもオフさんが販売されているルーターテーブルですが、フェンスのネジを締め付けるのに力が入りにくく、長時間ルーターで切削を続けていると振動で緩むことがあり、失敗を誘発することがありました(最近販売されているのは、ネジの首が長くなっており、締め付けやすくなっているようです)。ネジを交換しようと思ったのですが、インチネジ、かつ四角ナットで、代用品が見つかりません。それで下の写真のとおり、9mm合板を糸鋸でノブの形に刳り貫いてレバーにしました。これでしっかりと締め付けができるようになりました。
値段の高いものが良いとは限りませんが、安い物を使いこなしていくには苦労が伴うようです。
◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋走り -- ◆
愛知県は交通事故による死亡者数が連続全国ワースト1だという。今年に入ってまだ二ヶ月弱なのに、すでに交通事故による死亡者数が全国一位らしい。以前は北海道がNo1だったと思うが、近年愛知の独走が続いている。65歳以上の死亡事故が半数近くあるらしいが、原因はそれだけではなく、名古屋走りもその原因のひとつとされている。
「名古屋走り」というのは、名古屋付近で多く見られる、性質の悪い自動車運転を指す。新聞などではいろいろな解説がされているが、私が感じているのは次のとおり。
名古屋に移って間もない頃、名古屋は自動車のマナーが大阪よりも良いと感じていた。大阪人はセカセカ走り、チョロチョロ運転しているとすぐクラクションを鳴らすが、名古屋では信号が青になったのに発進しない時でもすぐにはクラクションを鳴らさないなど、一見ゆったりと走っているように見えたからだ。しかし、名古屋での生活が長くなって、とんでもない”お姫様、お殿様”運転が気になるようになった。自分中心主義というか、「私は大丈夫なのよ」みたいな甘えの運転が目立つのだ。武士の都市であった名古屋と、商人の町であった大阪の違いが今の世まで影響している?
とにかく、交通死亡事故ワースト1の汚名返上のためにも、名古屋の皆さん、もちろん全国の皆さんも、安全第一の運転を。
2013年2月
・ひとりオフィス
・天板にカビ(涙)
・関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋から関西への交通機関 --
◆ ひとりオフィス ◆
昨年末のこと、ブラザー(株)から”プリンターモニター募集”のメールがあり、何気なく応募していたら、新年早々「当選されました。ただ、取材をさせていただくことが条件となります」とのこと。気軽にOKした数日後、写真のプリンターが送られてきました。
今年は何か良いことがありそうな気もしましたが、取材は結構大掛かりで、流石に大企業、ブラザーの方と大手広告代理店の方、そしてその下請けと思われる企画会社の人、カメラマンにレポーターと大勢の方が来られ、2時間みっちりと話を聞かれ、プリンターの前で立っている私の写真や工房の写真を撮っていかれました。買えば2万5千円くらいのプリンターなので、取材料(^^)を考えると、本当に得だったかどうかわかりません。ま冗談はさておき、新しいプリンターの使い方は、ひとりで何から何までやっている木工家さんには興味深いと思いますので、今月はそれを紹介してみます。
遠方の展示会を見に行ったり、出張や旅行で留守になることがあります。そんな時は帰宅後、電話の着信履歴やFAXの有無を真っ先に確認していました。だから、「出先で電話の着信やFAXを確認できるといいのになあ・・・」とずっと考えていました。特に植物油や接着剤の通販を細々ですが続けている関係で、建築会社や大工さんさんから月に2、3件FAXで注文が入るのです。外出先でFAXを見る一番確実な方法は、インターネットFAXというサービスだと思いますが、月1000円程度の定額料金が必要なことやFAX番号が変わることから導入に踏み切れませんでした。そんなおり、ブラザーのモニター募集のプリンターの中に、パソコンにFAXを転送できるネットワーク対応FAX機能付き複合レーザープリンターがあったので、これを上手く使えないかと思ったのです。
結果、とてもうまくいきまして、今は外出先で留守中の電話やFAX着信を知り、FAXならその内容をスマホやノートパソコンで見ることができるようになりました。いろんなサービスを複合的に使う方法で、少し手間はかかりますが、意外と簡単です。
準備
1、ナンバーディスプレイと着信通知サービス
迷惑電話対策でもナンバーディスプレイーは活躍しますので、家庭であってもこれは必須でしょう。また、ウチはコミュファと光電話を使っているのですが、そのオプションで電話着信通知サービスというのがあるのです。月105円で、電話着信があったら指定したメールアドレスに発信元の電話番号とともにメールで知らせしてくれるというものです。ウチはそんなに電話が多くないので、これは本当に便利でした。もちろん発信元不明の場合はこちらから連絡できませんが、そういうのは大抵迷惑電話です。NTTや他の光ファイバー会社でも同様のサービスはあると思います。
2、オンラインストレージサービス
最近のコミュファの各コースには無料で5GBまで使えるSugarSyncというオンラインストレージサービルが付いてきます。これを設定しておけば、簡単に自宅のパソコンや出先のノートパソコン、アンドロイドやiphoneなどのスマホまで、データを共有できるのです。オンラインストレージサービスについて詳しくはありませんが、無料で使えるサービスは他にも沢山あるようです。なおオンラインストレージはクラウド(雲)と呼ばれ、データを複数のコンピューターで共用できるシステムのことです。
3、FAXをパソコンへ転送可能なFAXまたはFAX機能付きプリンター
モニター用に送られてきたのはMFC-7460DNというレーザー複合機です。プリンタ、スキャナー、FAXの複合機で、コピーやFAXの送受信はもちろん、パソコンから印刷せずに直接FAXを送ったり、受信したFAXファイルを特定のパソコンに転送することが可能です。他社でも同様の機能をもったプリンターはあるかもしれません。
4、留守中、ずっと起動しておくパソコン
消費電力や停電などの場合を考えると、安定したノートパソコンが適していると思われます。省電力設定で画面だけ消える設定にしています。もっと待ちうけ電力が少ない設定方法があるかもしれませんが、まだ試していません。
5、常時インターネット接続と小規模ネットワーク環境
光ファイバーの最近のコースでは有線と無線LANが付属してくると思いますので、それでOKです。
設定
ブラザーのプリンタの取説で思ったより簡単でした。受信したFAXはTIFF画像形式で保存されますので、保存先を留守中立ち上げておくパソコンの中の、オンラインストレージサービスの同期フォルダに送る設定にします。 それだけで、FAXが送られてきたら、常時起動のパソコンに送られ、それがオンラインストレージのフォルダと自動的に同期し、外出先でFAXが読めるようになります。
今度のプリンターが届いてから、外出先で電話の着信を知り、必要なら携帯電話で連絡を取れるようになっただけでなく、FAXの内容まで確認できるようになりました。有料インターネットFAXサービスとの違いは、外出先からFAX送信ができないことです。しかし、私の場合その必要性はほとんどありません。むしろ問題点は、旅行先でも仕事のFAXで煩わされることですが、それは自営の”ひとりオフィス”だと仕方がないと諦めまています。
今回はブラザー製品をおすすめするような内容になってしまいましたが、プリンタをもらったから評価しているのではなく、今まで使ったブラザー製のFAXやプリンターは、値段の割りに安定した製品で、サポートも良かったです。特に今回のプリンターは印刷速度や立ち上がりが早く、本当に重宝しています。ランニングコストについてはまだわかりませんが、絶えずインクを購入しなければならないインクジェットプリンターよりは確実に安いでしょう。近日私の工房での取材内容がブラザーさんの”活用事例”のページに掲載される予定です。
◆ 天板にカビ(涙) ◆
玄関に置いている小さなテーブル、その上に鉢植えの花を飾っているのですが、先日それを移動させた時、天板にカビが生えているのを発見しました。ヨメさんが水を少しやりすぎ、受け皿から水が溢れて、こうなったようです。
→
アルダーで作ったサイドテーブルなんですが、塗装はワックスだけだったと思います。うーん((+_+))、困りました。カビは内部まで木の中まで入っているので、完全に取り去るのは難しいはずです。とりあえず、スクレーパーで、少しずつ削って、最後は400番、600番の耐水ペーパーをかけ、ワックスを塗ってなんとかしました。右の写真のように、ほぼわからなくなりました。こういう時はスクレーパーが便利ですね。サンドペーパーだと目詰まりが激しく、うまくいきません。
1月末に米国西海岸で働いている娘が一週間帰ってきました。彼女が「アメリカで濡れたコップをテーブルにじかに置いたら、注意された」というのです。そういえば欧米の人は、必ずと言っていいほど、コースターを使います。また食事の時には、ランチョンマットというのでしょうか、皿や食器の下に敷物を敷きます。洋家具は一昔前までシェラックで塗装されたものが多かったためでしょうか、コップの”輪じみ”が付かないように、欧米の家庭では小さい時から、水が木につかないように注意しているのだと思います。
注文でテーブルを作る時、塗装をどうするか迷います。水に弱いと知りながら、自然な風合いを生かすため、テカテカの塗装はさけ、オイルなどのひかえめな塗装を選ぶことが多いからです。そして納品時、無責任にも「シミも味のひとつですから・・・」などと言ったりしましたが、西洋と日本では、まだまだ家具を使う歴史が違うようです。使い手が「木とは水がついてシミが出来やすい」ことを充分に理解し、そうならないように注意して使っていく土壌があるのだと感心した次第です。
◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋から関西への交通機関 -- ◆
先月、最初の職場の同窓会があった。約30年ぶりの再開を楽しみに、ひとりで名古屋から関西へ行ったのだが、いつもは自動車なので、公共交通機関を選ぶのに、少々迷った。幸い時間に余裕があるので、行きは名古屋から神戸へ行く、高速バス3300円を使った。これが速い。
JR名古屋駅の高速バス乗場で8時30分にバスに乗り込むが、何と豪華バスに乗客は5人だけ!。これでは採算割れどころか、大赤字だろう。とは言え、客にとっては大変優雅。名駅の西で名古屋高速に入り、東名阪から新名神へ、そして甲南PAで10分の休憩。あとはスイスイと名神を走り、阪神高速神戸線に入って、みごと定刻の11時32分までに生まれ故郷の三宮駅バスターミナルについた。超特急というだけあって、ホンマに速かった。大阪の天王寺や布施までなら2300円くらいの長距離バスがあるようだが、神戸へ行くならこのバスはおすすめだ。おそらく、よほど混雑する時期でなければ、出発間際でも切符は買えると思う。
翌日の帰りは、大阪から名古屋への木工家の定番、近鉄アーバンライナーである。チケットショップの平均価格は3200円だが、大阪駅前第3ビルなどの地下にはチケットショップがいっぱいあって、10円単位で値引き合戦をしている。私は3180円で買ったのだが、10mほど東側の店では3140円という看板があった。40円の差はたいしたことがないように思うが、大阪商人のど根性を感じる。
難波の駅で、缶ビールと柿ピーをゲットする。ふと、「缶ビールは駅の中より外の売店の方が安いんとちゃうか?」と思い、地下街で小さなコンビニを発見し、そこで缶ビールを買った。予想どおり、駅中の売店の缶ビールはそれより50円くらい高かったが、その売店で買った105円の柿ピーは量が多く、帰宅後二日にわたり、晩酌のおつまみにしたほど。難波を出てから布施くらいまでで缶ビールを飲んで寝てしまい、気がついたら「津」あたり。名古屋までの2時間は長いが、缶ビールで熟睡したおかげで、気分的には30分ほどで名古屋に着いた。新幹線より速い?!?。新幹線だと乗り過ごさないように緊張するし、50分ではビールは飲めまへん。
なんか10円20円にこだわる、せせこましい話になってしまったが、これが私が関西人である証拠である。
2013年1月
・2012年度木工教室作品展
・関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋小牧空港からFDAで長崎へ --
◆ 2012年度木工教室作品展 ◆
昨年11月末に行いました第12回木工教室作品展の作品を掲載しました。楽しんでいただければ幸いです。
また、数は少ないですが、私が昨年作りました作品も見ていただけます。
(作品写真の使用・転用・リンク掲載等はご遠慮ください)
◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋小牧からFDAで長崎へ -- ◆
昨年末、長崎方面へ旅をしてきた。ここまでやってこれた自分達へのご褒美というわけで”50代卒業旅行”。当初長崎まで車で行くことを考えたが、やっぱ遠い!。行き帰りにそれぞれ一日かかるし、高速代・ガソリン代も結構な額になる。ふと小牧空港から飛んでいるFDAを思い出し、料金を調べてみたら、福岡まで一番安いのが片道9800円。空港で5日間は無料で車が駐車できるのも便利だし、この際使ってみることにした。残念ながら帰りは年末帰省時期となるため片道12800円、これに石油代差額が片道700円プラスされ、往復一人24000円。東京往復新幹線が2万円以上だから、いい線いってる。
飛行機は思ったより大きかった。調べてみるとエンブラエム170もしくは175という70〜80席の機体でブラジル製らしい。地上を歩いて乗り込むが、飛行機好きにはこの方が楽しい。ネットで予約、クレジットカードで購入、航空券に相当する書類を自分でプリントアウトして空港で自動チェックインというシンプルさ。国内線としてサービスは普通だが、新規小規模航空会社として頑張っている感じ。
1時間半ほどで福岡空港へ、そこから地下鉄二駅でJR博多駅。博多から長崎へはJR九州の特急。運賃が高いと思いきや、調べてんみるとお得な切符が沢山ある。今回利用したのは博多長崎特急利用4枚綴りで、1万円。なんと片道2500円という安さ。正規運賃だけでも2730円なので、これはメチャ得。そのうえ、なんと一時間に二本も特急かもめが走っていて、自由席も半分くらいある。JR九州が業績を延ばしていると聞くが納得だ。おまけに車内は豪華、なかなか快適だった。
長崎の観光は有名なのでレポートする必要はないだろう。二日目は一番安い12時間5250円のレンタカーを借りて、島原、雲仙方面を回った。雲仙普賢岳の噴火は記憶に新しいが、島原の町がこんなに栄えていたことは知らなかった。雲仙の小地地獄温泉で硫黄泉につかり、セルフサービスのおでんを食べてノンビリさせていただいた。地元の人が入る素朴な湯がとても印象的だった。
また長崎をゆっくり見て、JR特急で博多へ移動。宿近くの居酒屋で食べたお刺身もモツ鍋も大変おいしいうえに安かった。博多は食べ物がおいしいと聞いていたけど本当だなあ。泊まったビジネスホテルの朝食も郷土料理があってかなり美味しかった。
最終日、あいにくの雨の中を大宰府天満宮と大宰府跡を見て、夕方のFDAで名古屋へ帰った。飛行機の中で見た夕日はとても美しかった。どうか2013年が良い年でありますように。
2012年12月
・スクレイパーについて
・関西人の名古屋界隈事情--- 祖父江町の銀杏 --
◆ スクレイパーについて ◆
先月下旬”木の仕事の会”で呼びかけた木工仲間とスクレイパーについての勉強会を行いました。今回はプロの木工家を対象にした勉強会でしたので、本当にお役に立てたかどうかわかりませんが、みっちり3時間スクレーパーの刃のつけ方を実習してもらいました。
下の写真今回準備したものです。白いカバーが付いているスクレイパーは定評がある、0.8mm厚のスウェーデンBAHCO製(LeeVallayToolsから)です。以前はSANDVIK社でしたが今はBAHCOに買収され、名前が変わりました。左から3番目は、ゼットソウの古い刃を利用した自家製です。また、中央の刃つけに使うバーニシャーはLeeVallayTools製、その右は超硬ドリルに木の柄をつけた自作、そして日本のノミです。右のスワンネックのスクレーパーは、今回は使いませんでしたが、普通のスクレーパーの刃をつけることができれば、同様にして刃をつけることができます。他にミシン油など、滑りをよくする油が必要です、鼻の脂でもいいと書いてある洋書がありました(^^)。
皆さんが持っておられたのは木工通販オフさんで販売されている0.6mm厚のものが多かったです。実際に使うには0.6mmはちょっと薄くて頼りない感じがします。平面の仕上げには0.8mm〜1.0mmの厚さがよいでしょう。0.6mm以下の薄いものは、少し曲げて使うのに便利で、椅子の座ぐり面の仕上げなどに重宝するのではないでしょうか。
日本では馴染みのないスクレイパーですが、欧米では「近代の木工で画期的な手道具」と言われるほどよく使われています。なんとなく、鉄板でかき削るような荒い道具のイメージですが、ちゃんと刃をつければ鉋のような削りくずが出ます。刃付けの理屈は「まず水平にこすってバリを少し生じさせ、それを垂直よりほんの少し傾けたバーニシャーで折り返す」ですが、実際にはいくつかコツがあって、習得は簡単ではありません。ホームページでそのコツを紹介するのは困難ですが、以下は当日配布した資料の文章が参考になればいいのですが・・・。
(刃のつけ方)
1、 ヤスリ(荒研ぎに相当)
・古く荒れた部分を落とし、真っ直ぐにする。
・金属用ヤスリよりも荒いダイヤモンド砥石の方がよさそう。
・新品ではこの過程は省略することができる。
2、 砥石
・1000番程度の中砥と仕上砥
・“板”の断面角を完璧な直角にする。
・良質なスクレイパーの新品ではこの過程も省略可。
3、 バーニッシング(刃つけ)
・スクレイパーよりも硬い金属棒やノミの裏を使う。
・水平にバリを出し、それを折り曲げる感じ(下図)。
・少量の油をつけて行う(鼻の脂でも可?)。
・数回は1と2の過程を省き、3のみでよいが、それでも切れなくなったら、(1)、2、3を行う。
(使い方)
・垂直から少し傾け、木に“ひっかかり”を感じる角度で使う。(寝かせすぎない)
・押すよりも引く方がよい。軽く使う。
・“粉”ではなく小さな“鉋屑”がでるのが正しい。
今回皆さんの刃付け作業を見て感じたことは次のようなことでした。
・バーニシャーを傾け過ぎる。----バリが出ないばかりか、面取りになって逆効果。
・力を入れすぎない。-----”パンにバターを塗り広げる感じ”という例えがあります。
・前段階の”断面を完璧な直角にしておく”作業ができていない。-----中砥と仕上砥で刃研ぎの要領で下準備
・バーニシャーはスクレイパーより硬い金属であること----参加された斉田さんのブログに体験談があります。
ちゃんと刃がつけば、写真のように粉ではなく鉋屑がでます。そして、あまり重くはありません。スクレイパーの角度も70度〜80度くらいで切れるのがよく、寝かしすぎると刃を早くダメにします。押しても引いても使えますが、材の表面を軽く削るには引く方がよく、特定の部分を、凹んでもよいから、削る場合は、押す方がよいです。
私はデンマークからアメリカに移った木工家”TageFrid”氏の方法、ノミの裏側を使って刃をつけていますが、広く知られている方法は丸い鋼の棒のバーニシャーを使う方法です。写真は参加されたYさんが持ってこられたドイツ製バーニッシャーとスクレイパー。ノミではなく丸棒の方が、小さく鋭い刃がつくという方もおられました。人それぞれの力の入れ方や好みで、ノミか丸棒、どちらかを選べばよいでしょう。
勉強会ではカード型に加え、刃先を約45度に研ぎ、その刃を曲げるように刃をつけ、台にセットして削る、キャビネットスクレイパーも試してもらいました。よく切れるキャビネットスクレイパーで削ると全く鉋屑と変わりません(下写真)。
スクレイパーはさか目の起きやすい複雑な木目の木はもちろん、鉋では削ることができない小さな部材や組み立ててから鉋をかけていない部分を発見した時や、小さく凹んだ曲面などにも有効です。サンドペーパーをかける前に、スクレイパーが使えれば、能率があがります。刃のつけ方を習得するのは簡単ではありませんが、あきらめずに練習していると「ある日突然刃がつくようになる」と書いてある洋書がありました。がんばってみてください。
◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 祖父江町の銀杏 -- ◆
何年か前、新聞で愛知県稲沢市祖父江町付近のイチョウの航空写真を見たことがあった。町に黄色いイチョウの木があるのではなく、黄色のイチョウの森の中に家が点在しているように見えるほど、それはすごかった。そして実際に祖父江町のイチョウを見てから紅葉シーズンにはよく行くようになった。今年も見に行ったのだが、人間とは欲深いもので最初の感激を超えることは難しい。最初見た時は紅葉が絶頂の時だったようだ。
それでも写真のようにそれはそれはすごく美しい。イチョウの木の下で、土地の農家の方が銀杏を売っている。「値打ちなんは藤九郎やで」ということで、藤九郎という品種の銀杏500gを600円で買って帰った。皮を剥いたりがややこしいが、ネットで「紙封筒に銀杏を入れ、レンジでバンバンと破裂するまで加熱する」という方法を知り、やってみるとホンマ簡単やった。食べてみるとメチャ美味しい!。またまたネットで藤九郎銀杏を捜してみると、500gで2000円ほどで販売されていた。メチャ得した気分。沢山あるので全部殻を取り、薄皮もむいて、残りは冷凍。写真でその粒の大きさがわかるでしょ。イチョウを見るのもやけど、美味しい銀杏を安くゲットできるのも嬉しい。
2012年11月
・第12回木工教室作品展
・タイトボンドV
・関西人の名古屋界隈事情--- エアポートウォーク --
第12回木工教室作品展
毎年10月末の金土日に開催している恒例の教室作品展が終わりました。ご来場の皆様、協力いただいた教室の方々、ありがとうございました。今回の作品展を振り返り、感じたことや今考えていることを書いてみたいと思います。
私が木工を始めた時から10年間ほど、とにかくいろんな展示会を見るようにしていました。初めは「どのように作っているのだろう?」と椅子の幕板の裏側を触って座板の取り付け方法を探ったり、抽斗内部の構造を見たりしていました。時々展示会でそういう見方をして注意されたりすることがありますが、作者に職業や名前を知ってもらい、了解を得てから勉強させてもらう、そういう時期は大なり小なりあると思います。そうこうしているうちに、次第に作品の持つ”力”というか、存在感に興味が移ってきました。技術や構造は大切ですが、それは創りたいモノを形にする手段であり、作る人が考えるべきものだと思うようになりました。
作品を見た時、その作品の周囲に、それを包む空気が感じられることがあります。たった10cmほどの作品でも周囲の空気を支配している・・・、そんな作品は”力のある作品”だと思います。昨年東京の広い画廊で、数個の独特な作品を置いただけの展示会がありました。そこは毎年著名な木工作家さんが集まって展示会をする有名なギャラリーだったのですが、その広いスペースが50cm〜80cmくらいのオブジェというか造型作品数個で完全に作品の空気で満たされていました。
そういう芸術的な作品ではなく「実用的な家具がよい」という方もおられるでしょう。ただ実用的な家具なら、材料の大量仕入れから製造や品質管理、はたまた購入後のアフターサービスまで整っている定評ある大手家具メーカーが作る家具の方に利があります。だから、小さな家具工房や木工作家さんの場合は、どこかで量産品ではない魅力を追い求めないと、その存在価値がなくなってしまいます。趣味の木工では、さらに時間や効率などの制約を受けることが少ないので、量産品にはない”何か”を付加しやすくなります。出来栄えとは正直なもので、急いで作ったモノはそれ相応に、丁寧に作ったものは「いいなあ」と思わせることになります。
木工を始めた頃「手道具が使えることが本当に腕があるということ」というような話を聞かされ、正直なところ半信半疑だったことがあります。今は「それは正しい」と自信を持って言えます。本当に切れる刃物を使っている人は、機械を使う時でもその切削状況を繊細に感じ取りながら使いますし、機械で大まかに加工した後、手道具で微妙な形を与えることができます。特に日本の伝統刃物はとても優秀で、それを研ぎ上げ、最善の切れ味で加工することが、量産品にはない”何か”につながります。木工現場に居られたある来場者の方が、「これほど手加工の技が入っている展示会を見たのは初めてだ」という感想を述べられたと聞きました。大変嬉しいことで、これからも能率よりも、手加工の味わいを大切にしていきたいです。
毎年教室作品展では、効率が求められるプロにはできない(作らない)作品が、いくつもあります。”無心に創りたいモノを作った”作品は自然と目をひきます。しかし、そこに見栄や競争心が入ってくると、その魅力に曇りが見えてきます。ある程度作れるようになった時こそ、「初心に帰る」ことを忘れないでいたいと思います。また来年も10月末に作品展を開催する予定です。ぜひ見に来てください。
◆ タイトボンドV ◆
すでに使っている方も多い接着剤であり、「今さら・・・」の感もありますが、日本国内でも入手しやすくなったタイトボンドVを使ってみましたので、簡単にその第一印象を書いてみます。
今までオリジナルタイトボンドやタイトボンドU、さらには使用時間を延ばしたタイプも使ったことがあるのですが、気に入らなかったのです。理由は圧着中に少しでも動くと接着力の低下が著しかったからです。その点従来の木工用ボンドはラフに使っても、ある程度強度を保っているように思います。また私が通販で扱っているピーアイボンド、これは本当に接着力が強く、広く集成材に使われており、強度や経年変化についてはかなりの実績があり、水にも極めて強い。しかし硬化剤と主剤を混ぜる必要があり、手間や無駄が多い欠点があります。余談ですが、私はエポキシやウレタンボンドはどうも好きになれず使っていません。
タイトボンドV、名前はタイトボンドですが、オリジナルのタイトボンドシリーズとは全く違う接着剤であるという印象を受けました。詳しくはわかりませんが、ピーアイボンドと同様に木質と化学結合を形成するタイプの接着剤のようです。そうでありながら一液性、かつ寿命が二年と長く、接着力も最高レベルという報告があり、さらに食器に用いても問題ないという、理想に近い接着剤に思われます。使用方法についても、塗布後張り合わせるまでの時間(オープンタイム)が10分以内、圧着完了までのトータルアセンブリータイムが20〜25分と比較的長く、使いやすい。
ただし、問題点がひとつあります。それは温度が低いと硬化しないことです。実際、知りあいの木工屋さん二人から「冬期、固まらなくて失敗した」という経験談を聞きました。製造元のデータでは使用可能温度は摂氏8.3度以上、日本の取扱ショップによっては摂氏10度以上を使用条件としているところもあります。しかし日本では、太平洋側であっても、冬場10度以上の作業環境を常時確保できる工房は、それほど多くはないのではないでしょうか。たとえ暖房を入れたとしても、接着部の温度がすぐに上がるわけではなく、不安が残ります。木工用白ボンドやピーアイボンドは名古屋の真冬、0度近い温度でも、トラブルは経験したことがありません。
ということで、春夏秋であれば、防水性が要求されるテーブルトップなどの板ハギにタイトボンドVを使ってみようと思います。その他の作業、たとえば強度が要求される椅子のホゾにはピーアイボンド、一般的な接着には、これまでどおり融通が効くこれまでの木工用ボンドが適当と考えています。
以上はあくまで個人的な意見です。ご参考まで。
◆ 関西人の名古屋界隈事情--- エアポートウォーク -- ◆
名古屋空港は懐かしい。カナダのモントリオールに居た娘のところへ二回行ったのも名古屋空港からだったし、二度ウラジオストックへ行った時も名古屋空港から新潟空港へ飛んで渡っている。自宅から高速道路を使わずに一時間以内で行け、小さくて便利な国際空港だったが、残念ながらほとんどの便がご存知の通り、セントレア、中部国際空港に移ってしまった。
現在の県営名古屋空港、セントレアができてから行ったことがなかった。先日、ひょんなことから行くことになって調べてんみると、”エアポートウォーク”というシャレタ名前のショッピングモールになっているらしい。確かに国際線のターミナルビルは大変美しい建物だったから、壊すのはもったいないとは思っていた。
エアポートウォークに行くと、アクセスはほとんど以前の名古屋空港時代と同じで、さらに滑走路側にも超広い駐車場ができている。ショッピングモール利用者は無料で駐車でき便利。建物に入ってみると、思ったよりも断然広いし、ショップも大変充実している。イオンのドーム前店や熱田店と同等か、もっとゆったりした感じで、好印象だ。本の紀伊国屋も広い店舗で入っている。また行かなかったけど、別棟の映画館もある。店のインフォメーションの背景には名古屋空港時代の発着便の案内盤がそのまま利用されたりしていて、いい感じ。元空港国際線の建物だけに、全体に天井が高く、ゆったり感があるのだ。
人工的なショッピングセンターは便利だけど、あまり好きではない。けれど、このエアポートウォーク、懐かしい名古屋空港を大変上手く利用した施設で、大変気に入った。もちろん以前と同様、屋上からは自衛隊機などの発着がよく見える。飛行機ファンには絶対おすすめ。個人的には四階にいろんなアウトドアブランドを扱う広いショップができていて、これも楽しい。元空港ビルを利用し、現役の空港と共存しているショッピングモールは、ここが初めてではないだろうか。
2012年10月
・充電式ジョイントカッター
・クサビ作り
・関西人の名古屋界隈事情--- 伊勢二見浦「賓日館」 --
◆ 充電式ビスケットジョイントカッター ◆
マキタから充電式ビスケットジョインターが発売されています。今使っているマキタの初代はスイッチが入りにくくなるなど、使用頻度が高いためか、やや不安があり、故障に備える意味で二台目としてこれを購入しました。既に持っている14.4VのバッテリーBL1430を使うタイプなので、本体のみを23000円ほどで購入。
箱を開けた第一印象は、マキタの初代より”プラスチック感”がありました。初代は金属製の立派なケースに入っていて、発売記念でビスケット3000枚が無料で付いていたのです。しかし、初代はフェンスの精度に問題がありました。90度にセットしても2度くらい角度が狂っていましたし、上下するプレートの刃との平行度もいいかげんでした。
新型はプラスチック感はあるものの、今回購入したものはフェンスの角度や平行の精度は実用上問題のないところまで調整されています。心配されたパワーも、AC100Vより劣るものの、充分実用範囲。スイッチも使いやすく、ボディーも握りやすいです。今までのところマイナス面は少ないですが、しいてあげれば、本体のお尻に装着される電池が意外に重たく、100V機より持つのに力が要ります。しかし、コードレスはやはり便利で、気軽にいろんな場所、角度で使用できるでしょう。
試しに上側のフェンスを使って穴を掘ってみましたが、本体の精度ではなく、手持ちの精度が悪く、少々穴がブレました。教室では上のフェンスは使わず、材料を作業台に穴を掘る位置に近いところでしっかり上から固定し、作業台に本体を置いて穴を掘っています。手間はかかりますが、こうすることで、精度良く加工ができ、板ハギの際の目違いを最小限にすることができていると思います。
上側フェンスを使わないで板厚が20mm以外の板に穴を掘る時は工夫が必要になります。私は1mm、2mm、3mmのアクリル板のスペーサーを用意しており、ほぼ真ん中の位置に穴を掘るようにしています。例えば15mmの板なら3mmのスペーサーを板の下にかますと、実用上問題のない程度で中央付近に穴を掘ることができます。
工房内での使用だけなら通常のAC100V機をおすすめしますが、出先での作りつけ家具などを手がけられる方は重宝されるのではないでしょうか。木工教室で使う二台目としては良い選択だったと思います。
◆ クサビ作り ◆
写真を見れば一目瞭然でしょう。目的の形を作るのに決まった方法はありません。丸鋸でクサビを作る方もおられますし、長い薄板を手鉋で削る方、あるいは小さな木片をノミで削る方、好きな方法を使えばよいと思います。今回は巾7mm、長さ15mm、厚さ3mmほどの大変小さなクサビでしたので、木片に写真のような切れ込みを手鋸とノミで作り、巾7mm厚さ3mmの薄板を簡単なジグと手鋸で15mmの小片に切り分け、それを木片の切れ込みにはめこみ、手鉋で削ります。安全で確実な方法で、熟練の建具職人さんから教わりました。
◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 伊勢二見浦「賓日館」 -- ◆
先日伊勢神宮へ行ったら、平日無料だった駐車料金が全ての駐車場で有料化されていた。それも最初の二時間500円でその後は30分100円の上限なし。伊勢にお参りに行くといっても、おかげ横丁などでまったりするのが楽しいわけで、駐車料金が気になる小心者には酷な有料化だ。というわけで、お参り後そそくさと退散し、以前行ったことがある二見浦近くの運動公園に車を置いて、自転車で二見浦へ向かった。
夫婦岩のところへ行く道で立派な建物があるのは前から知っていた。開館しているので中を見ることに。ここは皇族が伊勢神宮参拝の際に宿泊されたという旅館?(国の重要文化財)である。名前は賓日館。
拝観料300円也を払って中に入ると、なかなかである。ゴッツイ大広間や、庭園や海を見渡せる角部屋など、庶民にはちょっと縁遠い豪華さ。そんななか、写真のようなガラス障子が。こういう模様って前からあったんやろか、それとも職人さんの遊び心だろうか?。もちろん建物全体見所いっぱいです。
2012年9月
・木の動きを予測する。
・無料2D-CADが続々登場
・関西人の名古屋界隈事情--- キャンプを考える --
◆ 木の動きを予測する ◆
無垢の木を使った家具、それもオイルフィニッシュなど表面を完全に覆わない塗装では、木の水分の変化に伴うトラブルが大きな問題となります。梅雨から夏の湿気の多い季節は、それが最も顕著な時期でもあります。教室でも、扉に入れた鏡板が予想以上に膨れ、框のホゾを抜いて膨れてしまうトラブルがありました。木の動きを予測するために、木と水分との関係について復習してみました。私は下記を参考にしましたが、含水率や木の収縮については多くの文献がありますし、材木屋さんがネットで説明していることも多いです。
参考文献:Understanding Wood R.Bruce Hoadley 著
含水率
生木は大量の水を含んでいますが、自由水と呼ばれる抜けやすい水が抜けた状態が繊維飽和状態で、その時点での平均含水率は約28%、そこからはゆっくり乾燥し、空気中の水分と平衡状態になって乾燥が止まります。湿気の多い日本では18%くらい、乾燥した土地でも15%が上限だとされています。これだとまだまだ動くので、人工乾燥によって8%程度まで乾燥させ、それを外気に馴染ませ12%くらいに戻った材料が一番安定すると言われています。
家具で使われる人工乾燥材が、湿度90%にもなる梅雨の時期、どの程度まで含水率が上がるのかは、材木の種類や置かれている状況によって異なりますが、手元の文献の次のグラフで、おおよその判断ができるかと思います。
少々見難いですが、縦軸が木の含水率、横軸が回りの空気の湿度です。グラフから湿度90%の時は含水率20%前後、それが湿度30%になると含水率が6%になると読み取れます。乾燥が進行している時と違い、含水率が戻る場合には、その変化は少ないとされていますので、実際の含水率変化は人工乾燥材の8%から自然乾燥の上限15%程度まで変化することが多いのではないかと思います。
理論的には繊維飽和状態の含水率28%から完全乾燥の0%まで木が一定割合収縮するとみなし、次の式で動きを予測することができます。
収縮巾=(材の巾)X(生木からの総合収縮率)X(含水率%の変化/28)
例えば巾30cmのチェリーの板目板の含水率が8%から15%へ7%増えた場合、チェリーの接線方向の収縮率は7.1%(資料より)なので、300X0.071X(7/28)=約5.3(mm)となり、5mmほど巾が大きくなると計算されます。実際には板目でも両端は柾目に近くなっていますから、収縮率はもう少し小さくなって5%程度かもしれません。それでも300mmで4mm程度の伸びがあると予想できます。
上記の例は比較的おとなしい状況の場合であり、何日も雨が降り続いたような場合には、もっと含水率があがってくるでしょうし、収縮率の大きな樹種であれば、もっと伸びがあるはずです。私の経験では、人工乾燥材の巾が2%程度伸びることはありえます。ですので、巾300mmの鏡板を框の中にはめこむなら、両方の溝で3mmずつ、合計6mm余裕を持っておけば、まず大丈夫なのではないでしょうか。
写真のような扉を作る時、湿気による鏡板の膨張が許容できるよう、溝の深さや形状を考えてください。天板へのアリ桟の仕込みや、抽斗の高さを考える時にも、どの程度の余裕を持つべきか、予め知ることができます。その数字を知ったうえで、柾目材を使うことや塗装方法を考えることによって、必要な余裕(スキマ)を少なくすることが可能になります。
◆ 無料2D-CADが続々登場 ◆
楽しむための木工教室で図面を書くことを追求していませんし、私自身も同じ家具を繰り返し作ることが少なく、普段は方眼紙に書いた簡単な図面で製作することが多いですが、図面の管理や修正が楽なCADもよく使います。今までもCADの話を何度か取り上げてきましたが、ここ一二年の間に、主に海外で、2Dに限っては無料で使用できるCADがかなり出回ってきていますので、今月はそれを紹介してみます。
Draft Sight
正直なところ、日本CAD販売会社が無料の2Dcadを配布するとは思っていませんでした。SolidWorksを扱うダッソー・システムズが”Draft Sight”というAutocadLT類似の無償CADソフトを配布しているのです。以下のサイトで、Windowsだけではなく、Mac、さらにはLinux(ubuntu)版も入手できます。
私はAutoCADを使いこなしていませんので、実際どの程度代用になるのかわかりません。が、触ってみた感じは、AutocadLTとほぼ同等ではないかという印象です。試しにAutoSketchで書いた筆箱の図をDWG形式で出力し、読み込んでみました。
寸法も八ッチングも全く問題なく読み込んでいます。検索すると、建築関係のHPやブログではこのDraftSightについて昨年あたりからかなり取り上げられています。商業利用も問題ないことから、小さな建築会社ではこれをメインに使っていこうとする動きもあるようです。何と言っても日本語化されていることはメリットで、メニューもヘルプも日本語で読め、安心感があります。
progeCAD smart
海外のサイトで、こちらの方がよりAutocadに近いというコメントがあったCADです。これは非商業的利用に限り無償です。下記サイトでリクエストのページへ行き、メールアドレス等を入力しれば、ダウンロードができるようです。
AutoCAD互換で有名なIntelliCADと関係があるようです。そのためでしょうか、コマンドなどもよりAutoCADに近いらしいです。商用的利用厳禁であることと、日本語化されていないことから、DraftSightに比べると使いにくい印象ではあります。
こちらも何の問題もなく、AutoSketchの図面を読み込むことができました。
AutoSketch
実際に私が使っているのは、日本で販売が終わったAutoSketchです。これは、方眼紙に図を書くように描けるのです。家具のスケッチを描いて、それを方眼紙に書いてゆく、それをコンピューター上でやるだけです。AutoCADでもグリッドや背景を工夫することによってこのような描き方ができるかもしれませんが、基本コマンド重視で、習得が難しいと思います。
図でははっきりしませんが、私のテンプレートは1cm間隔の太線と5mmの細い線が灰色でグリッド表示してあり、1mm間隔でスナップするように設定しています。グリッドの時はG、スナップフリーにはS、端点にはE、など、キーボード入力し書いていくのに慣れてしまっています。米国ではAutoSketchが今でも販売・バージョンアップされています。日本でも愛好者が居るようですから、Autodeskさん、なんとかしてくれないかなあ?とういうのは、日本版最終バージョンはWidows7ではインストールできないのです(XPモードだと可能との噂有)。
AutoSketch+DoubleCADXT
今年2月に紹介したこの無償CADの組合せ、やっぱり便利です。
スケッチアップで各パーツの3D図を描き、それを複製して、移動、回転などして、右の筆箱全体図を作りました。慣れれば簡単です。そして見せたいように表示して、それを”シーン”として追加すれば、正面図、側面図、平面図はもちろん、パース的な図や部分的な拡大図も表示・印刷できます。
DoubleCADXTの強みは、スケッチアップの図面を読み込めること。ペーパー空間場に、いろんなビューポートを設置すれば、AutoSketchではできなかった、一枚の紙への複数の異なる尺度や方向の図面が印刷できます。ただ、これも日本語化されていないので、TurboCADに慣れていないと使いにくいです。
事実上CADで世界標準となっているAutoCADのDWGファイル形式、そのCADを使いたい場合、そしてそれが2D図面でよければ、日本語化された無償の”DraftSight”はとても魅力的です。3D図を書くなら、家具ではSketchUPが最適ですから、そのファイルを読み込むことができるDoubleCADXTが便利です。
とっつきにくく、大変高価なAutoCADが、世界中で広く使われている理由はよくわかりませんが、趣味や小さな木工房にとって、これら無償のCADソフトは大変ありがたい存在です。プロの設計現場では3Dが主流となり、2DCADがあまり使われなくなったので、3DCADを売るための2DCADの無償化でしょうが、何時提供されなくなるかもしれません。今使わなくても、これらのソフトをダウンロードしておくのは得策かもしれません。
◆ キャンプを考える ◆
雷鳥沢キャンプはホンマに良かった。けれど、どこのキャンプ場も快適というわけではない。小学生くらいの子供が居て家族でのキャンプなら、野外でご飯を作ることが楽しいだろうけど、子供も大きくなって出て行ってしまい夫婦二人だけで毎日食事を作っている日常を考えると、わざわざ野外でバーベキューをしたり、カレーを作ったりする意味がないのだ。でも還暦前のこの歳になってからのキャンプは、若い頃とは別の意味で楽しさがある。
私がキャンプをする目的は、宿泊代を節約し、窮屈な宿泊施設よりも快適なテント生活をする・・・ことである。食事についても別にこだわりはなく、キャンプだから簡素でかまわない。場合によってはコンビニ弁当でもいいし、山なら軽量化するため、アルファ米とレトルト食品におつまみ少々で充分。豪華オートキャンプサイトは不適。そういうキャンプ場は一泊5000円もするところもあるが、キャンプ場でホテル並料金では意味がない。流行の車中泊も基本仮眠であり、周囲に気兼ねせずにゆっくり寝たい場合、やっぱりキャンプ場になるだろう。
静かで清潔、夜は星空が見えるような、シンプルなキャンプ場がいい。室堂から歩く雷鳥沢や上高地の徳沢は理想的だが、山の領域なので登山経験がないと少しハードルが高いかもしれない。しかし、探せば駐車場から少し離れた所にテントサイトがある一般向けキャンプ場も沢山ある。このようなキャンプ場は車を横付けできない不便さはあるものの、静かで比較的安い。でも荷物運びがしんどい。それで、炊事道具を折りたたみコンテナに入れ、ダンロップの古いテントと薪を、カーマで1480円で買ったキャリーとともに車に常備することにした。焚き火ができるところばかりではないが、飯ごうで炊いた飯はうまいのだ。薪は工房の端材。
荷物をカートに乗せてみたら、ホームレスのおっちゃん風になったけど、まあいいか。またどこか、安くて快適なキャンプ場へ行こう。
2012年8月
・蟻(アリ)桟の加工、備忘録
・関西人の名古屋界隈事情--- 雷鳥沢キャンプ --
◆ 蟻(アリ)桟の加工、備忘録 ◆
先月と先々月、3名の生徒さんが作品の天板に反り止めのための”蟻桟”を入れることになり、私のやり方を教えました。蟻桟の加工には精度が要求され、しっかりと天板を吸い付けるように組み込むことは、かなり難しい作業です。木工を始めた頃、平行な蟻桟を作っていましたが、叩き込む過程で、どうしても入らなくて、苦労した思い出があります。今は少し勾配をつけた蟻桟にしていますが、その過程は少し複雑ですので、その加工方法を備忘録として残してみました。ただ、”これが正解”という方法はありません。実際の加工では、皆さんがそれぞれに工夫し、自分に適した方法を見つけてください。
蟻桟の加工手順
蟻溝の加工
上記手順にそって、ポイントとなる写真を掲載します。(電動工具を使う加工で危険を伴います。あくまで自己責任でお願いします。)
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ルーターテーブルやトリマなどで加工できます。 今回は短い材料なので、写真のようにルーターを逆さまに 固定、フェンスをクランプでとめた簡易ルーターテーブルで 加工しました。 途中で倒れたりすると極めて危険ですので、同じように加工 される場合は、充分注意してください。 |
重い切削になることがありますので、振動が少ないよう、 また位置決めがしやすいように軸径も刃径も1/2インチの ビットを使っています。今回蟻の深さは9mmにしました。 |
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蟻桟は叩き込んでしっかり固定するため、天板の幅より 約10センチ長く作ります。 まずに両側同じように加工し、次に30cmで1mmの勾配を 持った薄板(私は手鉋で削って作っています)を両面テープ で桟に貼り付け、フェンスの位置を調整して、テーパー状の 蟻桟を作ります。 |
加工した蟻桟です。二本並べてみると間に2mm少々、 スキマがあり、30cmで1mmのテーパー状蟻桟になって います。 通常、精度が要求される面は材に平行なままとします。 例えば、テーブルなら外側を、フレームに落とし込む場合 などは外側を平行なままにしています。 |
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上記の蟻桟を天板に固定し鉛筆で正確に位置を写します。 このごろは細かい線がよく見えないので、LEDランプを使い 確認しています。 |
上の線から3mm内側、深さは1mm浅く、荒堀します。 写真では別のルーターにストレートビットをつけて加工 していますが、丸鋸で何本か切り込みを入れ、ノミで 欠き出したり、溝切カッターを使う場合もあります。 |
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荒堀が終わったところです。手前の色が違う木は、端が めくれないための押さえの木です。 荒堀しないで直接蟻形ビットで切り込むことは、刃物への 負担が大きく、危険です。 |
いよいよ蟻溝の加工です。 フェンスの位置決めで精度が決まりますから、慎重に。 写真ではルータービットとベースの距離と同じ幅の スペーサーで位置決めをしていますが、最初にひいた 鉛筆の線に慎重に合わせる方がよい結果になることも あります。 ジグや計測器が万能ではなく、自分の目で確かめることが 大切。その積み重ねが、垂直や長さを感知する能力を 高めることにつながります。 |
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理論的には、蟻の深さ=蟻溝の深さでよいわけですが、 実際には、底面の摩擦が大きすぎて、入りにくくなります。 それで0.2mm〜0.5mmくらい蟻溝を深くします。スキマを 見せたくない場合は、同じ深さで作り、蟻桟の中ほどを 手鉋で少し削ってもよいでしょう。 |
蟻桟を溝に入れてみます。 手の力だけで、ここまで入りました。叩き込めば、あとは 入るでしょう。経験では、手で押し込んで入らない部分 の長さが5cm〜10cmなら、まず大丈夫です。 もしも緩くなってしまった場合は、蟻桟を作り直すか、薄板 を間に挟みます。 |
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私がやっている方法を紹介はしましたが、蟻桟を仕込む目的と理屈がわかれば、後は自分でその方法を模索し、見つけ出すことが一番大切だと思います。また蟻桟は、それ自体に木組の面白さはありますが、反り止めの手段としては特に優れているとは思いません。少し精度が悪くなると、天板が離れやすく、そうなると修理もしにくいです。一方、木ネジを使うコマ留めは安易な方法のように思われがちですが、手堅く簡便な反り止め手段として有効な方法と考えています。
◆ 雷鳥沢キャンプ ◆
昨年夏から雷鳥沢でキャンプをしようと、好天の日を狙っていた。昨年は天候があまり良くなくて、テントや食料を詰めたザックを玄関先に置いたまま、夏が過ぎ、涼しくなってしまった。だから、「今年こそは・・・!」と、天気が安定するのを待っていた。よく「梅雨明け十日」と言われるように、梅雨が明けてから10日間ほどは好天が続くことが多い。今年も、梅雨明け宣言後もなんとなく天候が安定しないが、ついにその日がやってきた。
名古屋から富山は近くなった。3時間少々で立山駅に着き、駅前の無料駐車場に駐車。40年以上も前になるが、大阪から夜行列車で立山駅まできて、35kgもあるキスリングザックを背負って剣の夏山合宿に向かったが、今日はヨメさんと二人で小さなテントを担いで、一人10kgほどの荷物。それでも重たく感じる。40年という年月を思い、しみじみした気持ちになる。
立山黒部アルペンルートの名前でご存知の方も多いと思うが、ケーブルカーで美女平、そこからバスで室堂に到着。そこから荷物を背負って・・・、残念なことに上り下りの少ない地獄谷ルートが有毒ガスのために通行禁止。でも、みくりが池山荘で、生ビールを飲んで休憩し、ゆっくり一時間ほどかけて雷鳥沢キャンプ場へ到着。天気さえ良ければ、こんなすばらしいテント場はない。一人一泊500円、二泊以上は1000円上限と安いし、近くのロッジへ行けば、500円で温泉に入れる。生ビールは飲めるし、ここは天国。トイレも昔のキャンプ場に比べれば充分清潔。特筆すべきは、キャンプ場管理等には金沢大学医学部の学生さんが待機してること。安易に頼ってはいけないが、怪我をした場合など、応急処置やアドバイスが受けられる。
隣のテントの、見た目、ちょっと近寄りがたいおじさんに声をかけ、親しくなった。彼は51歳で仕事をやめ、今は一年の半分を、雷鳥沢や、四国88ヶ所巡りなどで過ごしているという。そういう生き方も有りだなと思う。彼の話では、こんなすばらしいテント場なのに、最近若い人が減っているそうだ。私自身、体力バリバリの若い頃は、雷鳥沢テント場をバカにして素通り、一山超えて真砂沢でキャンプを張り、雪渓歩きや岩登りをやっていた。そこまで行かなくても、この雷鳥沢で充分楽しい。ただし真夏でも夜は真冬並に冷え込むこと、テントや食事は各自持参、そして10キロ程度の荷物を背負って最低2時間程度は登れること。雨が降ると悲惨なので、良い天気を選んでくると最高だ。
朝のテント場
雪の残る「みくりが池」
立山登山は地元の小学生で混雑していた。
立山は信仰の山。テント場近くの石仏。
2012年7月
・桐油塗布後の経年変化
・パリ旅行記
・関西人の名古屋界隈事情--- 舞子、明石、住吉神社の海岸線 --
◆ 桐油塗布後の経年変化 ◆
自宅の床は、栗無垢材のフローリングで、12年前の新築時、自分で調合した桐油フロアオイルを塗りました。ほとんどの床には桐油75%にテレピン油25%を混ぜただけの桐油フロアオイルを、水気がかかる洗面所やトイレの部分には、それに一液性油性ポリウレタンニスやスパーワニスを約10%混入して塗りました。この塗装が12年の間にどのような変化をしたか、見ていただこうと思います。なお、追加塗装などのメンテナンスは全くしていません。
次の写真は通常の床部分、桐油フロアオイルによる塗装です。白い栗の床材が12年の間に次第に褐色に変化、特に導管の集まっているところが黒くなっているのがわかります。乾性油に代表される天然素材だけのオイルフィニッシュは木自体があめ色に変色するだけではなく、導管をより濃い褐色にするわけです。
次に樹脂を混入したオイルの変化を見てください。写真はドアを境に右側がトイレで、ウレタン(スパーワニス?)混入オイルを塗っています。トイレの白熱電球の光で撮影しましたので違いがわかりにくいかもしれませんが、左のオイルだけの塗装よりもかなり色が薄くなっています。塗った時は、これほど差が出るとは思いませんでした。トイレの外の床に日光が直接あたることはありませんので、光の影響があるとは思えません。
もう一つの例をお見せします。実にいい加減な塗り方で恥ずかしいですが、下の写真は二階トイレで、自然光で撮影しています。上半分がオイルのみ、下半分がスパーワニス(ウレタン?)混入です。一階のトイレよりもコントラストがより強くなっています。ウレタン混入とスパーワニス混入の二種類を試しに使ったのですが、一階がウレタンなのかどうか自信がありません。とにかく、どちらかがウレタンで他方がスパーワニスを混入した桐油です(もう忘れてしまいました、すみません)。
色が薄くなっている理由はよくわかりませんが、オイルに樹脂が入ることで、オイルの浸透が抑えられたのかもしれませんし、またオイル自体の変色を抑える効果があったのかもしれません。導管部分だけではなく、木質全体に色が薄くなっています。とにかく、ウチの床材では少し樹脂含有塗料を加えることで色が濃くなるのを抑える効果があったようです。
天然植物性乾性油の通販を始めた頃に比べ、今では国産でも多くのいわゆる”自然塗料”が販売されています。それらを選ぶにあたっては、できれば数年間の経年変化のデータを調べて選びたいです。天然、環境にやさしい、安全などのPR文句だけではなく、経年変化に注目することは大切だと思いました。
◆ パリ旅行記 ◆
今年3月末から4月にかけて行ってきたパリ旅行の記録をアップしました。私的観光旅行ですが、楽しんでいただければ幸いです。
◆ 舞子、明石、住吉神社の海岸線 ◆
先月所用で神戸に行った際、神戸市西端の実家に立ち寄り、前々から走ってみたかった海岸沿いのサイクリングロードを西へと走った。頭の中の舞子の浜は、”国鉄舞子駅の南側に松林があり、国道がわたると、六角堂がある海岸”である。六角堂は実際は八角で、今は孫文記念館となっている。小学生の頃、六角堂は荒れていて、遊びに行って、勝手に中に入った記憶がある。その頃、”夢の架け橋”と言われていた吊橋が現実のものとなり、普通電車しか止まらなかった舞子駅は、一気に出世し、快速が止まり、淡路島へのバス路線の乗り換え駅となっただけではなく、「ここは日本?」と思うような、ハイカラな風景の海岸線に見合う駅に一変。明石までの海岸線は見事に美しい人工の浜となった。
列車がなかった頃、九州方面の人は大阪に仕事を求めて、海岸線を歩いてやってきたそうだ。海沿だから、お金がなくなっても、最低限打ち上げられている魚や海草、貝などを食べることもできただろう。そして、神戸あたりで疲れ、「もうこの辺でいいか」と人が集まってきたのが神戸の町なのだという話を聞いたことがある。確かに神戸は他所から来た人を受け入れやすい土壌があると思う。明石から西へ、舞子の人工浜とは対照的な、昔ながらの海岸線が西へ続く。パターンは単純で、海→砂浜→松林→民家である。その砂浜の陸側に防波堤があり、その上に幅3mほどの自転車道がある。
各地に自転車道はあるが、自転車道というより”仕方なく作った”感がある自転車道も多い。しかし、ここは、本当に気持ちの良い自転車道だ。上半身裸で褐色に日焼けした元気そうな漁師のおっちゃんを何人も見かけた。また人気のない浜で70歳くらいの老夫婦が日傘をさして昼のバーベキューを楽しんでいるのにも出会った。小学生の遠足だろうか、浜で40人くらいの児童が先生と楽しくやっていた。なんか、ほっとする、風景の連続だったのだ。
さらに、西へと走ると二見の浜の手前に住吉神社がある。海岸からすぐ松林があって、そこにお社がある。住吉神社は全国的に海の神さんらしい。鳥居ごしに見る海は、「昔の人もこうして眺めたんだろうなあ」と思わせるものがあった。自分が小学生から結婚するまでを過ごした実家近くの懐かしい海岸を見て、ちょっと感傷的になっているのだとは思うが、こういう穏やかな海は瀬戸内独特ではないかと。愛知県や三重県の海岸線を全て見たわけではないけれど、名古屋近辺でこのような海岸線はまだ見たことがない。
2012年6月
・木の家具40人展
・関西人の名古屋界隈事情--- お休み --
◆ 木の家具40人展 ◆
第一回から参加してきた名古屋での合同展示会、去年は私的行事のため参加できませんでしたが、5回目となる今回復帰しました。実はこの展示会へ参加することには迷いがありましたが、終わった今、自分の考えを整理するためにも展示会の意味を今一度考えてみました。
展示会の目的は下記のようなことかと思います。
1、自分の作品を一般の方に見ていただき、知っていただくとともに客観的な評価を感じ取る。
2、自分の作品を同じ木工仲間に見てもらい、反応を見る。同業者から評価されると嬉しい。
3、他の出展者の作品を見て、勉強させてもらう。貴重な相互情報交流の場である。
4、作品を気に入っていただいた方に、買っていただく。
5、どのような作品を作っているかを知っていただき、将来の受注につなげる。
6、親しい仲間と親睦を深め、また新しい方と知り合いになることは楽しい。
木工教室が主になっている昨今、自分が作った家具を売る気はあまりありません。しかし、出展者の多くは作品である木の家具や小物を販売して生計をたてておられ、そのことがいかに難しいことか、それを思うと、同じ展示会にノンビリと自分のために作った作品を並べていることが果たしてよいのか、と考えてしまったのです。終わってみると「販売」は展示会の多くの目的の中の1つであって、むしろその他の目的の方が大切であることを実感します。それでも、求めに応じて譲渡できるよう、価格を決めておくことは礼儀だと思います。展示会は終わりましたが、「売るならこれくらい」という価格を、反省の意味もこめてつけてみました。本当にほしい方がおられましたら、譲渡価格はご要望も考慮して決めますので、お気軽にご相談ください。
一般の来場者の方にとっては、好みの作風を持った作り手を見つけ、じっくり見て、作者がいれば話をし、楽しい時間を過ごせることが、一番ではないかと思います。出展者はさまざまで、お客様との会話が上手な、いわゆる「接客がうまい」人もいれば、そうでない人もいます。話がうまくない人の方が、付き合ってみると、味があったりします。見学者の方も、会話が得意な方、その反対の方もおられ、これもまた面白いことに、無愛想な方の方が、長い付き合いになったりします。結局は”人と人”ですから、相性が合って作品が気にいったら、値段を聞いてみてはどうでしょうか。
* * * * *
前置きが長くなってしまいましたが、写真が今回持って行ったものです。手前の椅子二脚は、以前作ったものですが、どこにも出品したことがありません。この椅子、予想以上に評判がよかったです。左奥の小さなアームがついたスタッキングチェアをアームを大きくしたり、前方を広げるなどして、よりゆったりと座ることができるようにしたものです。ある奥様は「この後脚の角度がいいのよーー」と撫でておられました。そう言われると嬉しいです。これは製作が難しく、2脚セットで15万円というところでしょう。作り手にとって、椅子の値段を決めるが一番難しいと思います。数をまとめて作ることを前提に値段を決めないと、量産された椅子の値段に対抗できないからです。正直、一番儲からない分野でしょう。
昨年の「木の仕事の会東海展」で出品した折りたたみ棚には、昨年末の展示会に出品した箱物を並べました。目の高さということもあるでしょうが、シャムカキを扉に使ったキャビネットに興味を示された方が多かったです。ある同業者の方から、「こんな細かい仕事のキャビネット、いったいいくらで売るの?」と聞かれましたが、即答はできませんでした。手間を全て価格に反映させると大変高額なものになってしまうからです。買う方に立場に立って考えても20万円にはなると思います。その上のウェーブスルーキャビネットも大変手間のかかった作品で手放したくありませんが、売るなら同じくらいの価格です。
最後は今回のための新作、組み立て式のパソコンデスクとシンプルな椅子です(卓上の小箱は旧作品)。上質なタモの柾目板を使い、天板下には3杯の深さ3cmの引き出しが備わっています。天板の端がコの字型フレームの溝に収まり、組みあがります。脚上部は外に向かって少し湾曲しており、天板の上2cmの枠は筆返しの機能と、反り止めの効果も担っています。この部分に注目をされた方は多くありませんでしたが、北欧で家具製作を勉強された木工仲間に「この見せ方、いいですね」と言ってもらって、嬉しかったです。椅子はシンプルなものですが、スタッキングが可能。機織の姿勢を参考にした背もたれは、正しい姿勢を保つ効果があると思います。座面はオリーブ色のリノリウムを張った9mm合板で、座布団を併用することを念頭に置いています。これらも単品生産で値段はつけにくいのですが、机と椅子で合計25万円というところです。
作り手が販売の場として展示会をとらえた場合、来場される一般の方の価格に対するシビアな感覚を充分に知っておかねばなりません。作り手が予想するより、はるかにお客様の方が”値ごろ”をご存知だからです。でもその値ごろ感は量産品についてのものであって、いわゆる一品物ではありませんから、そこに小さな工房で作る少量生産の家具販売の難しさがあります。大変難しいことですが、そのハードルを越えて「欲しい!」と思わせる、魅力のある作品を作らないとやっていけません。今回「欲しい」と言われた方がおられなかったということは、自分の作品にそこまでの魅力がなかったわけです。
今年の合同展示会は終わりました。来年はどうしよう?。参加者の中でかなり年長になっていますので、参加枠に限りがあるなら、これから販路を広げる必要がある若い方に席を譲ることも大切なのではと考えたりします。一方、展示会は来年も開催が決まっています。ほぼ同時期、5月31日〜6月2日の予定です。皆様また来年も来て下さい。
◆ 新緑 ◆
展示会で多忙で、お休みさせていただきます。代わりに新緑を楽しんでください。
2012年5月
・凹面加工他
・関西人の名古屋界隈事情--- 湖北マキノ周辺 --
◆ 凹面加工他 ◆
樋のような長い凹面状の溝を加工することになり、昇降盤に斜めの定規を固定して切削する方法を行ってみました。この方法は以前から知っていましたが、どのような危険があるかわからないこと、また刃に負担がかかると予想されることから、今まで避けていました。しかし、実際にやってみなければわかりませんので、今回慎重に試してみました。ただし、加工される方の技量や慎重さ、また機械の剛性などが異なるため、この記事を見て同じような加工を行われる方は、慎重に、そして自己責任で行ってください。
まず加工したい曲面の合うように定規をセットします。頭で考えるより、実際に刃を目的の深さまで出し、斜めに材料を当て、”現物当たり”の方が確実です。直感ですが、45度以上傾けることは避けた方がよいと思います。加工中定規がずれると恐いので、クランプを慎重にセットし、簡単には動かないよう、確実に固定します。なお刃は直径255mmの兼房AN15です。
今回最も深い所で8mm掘りますが、危険や刃への負担を少なくするため、鋸刃の出を0.5mmずつ上げていくことにしました。ウチの昇降盤はハンドル一回転で2mm上下しますので、四分の一回転ずつ刃を上げていきます。ですから、今回は16回にわけて少しずつ加工しました。
おそらく一番危ないのが材料が浮くことだと思います。しかし、あまり強く押さえると摩擦が大きくなりますから、適度な力で材料を定盤に押さえながら、材料を送ります。すべりを良くするため、加工前にシリコンスプレイを使っています。最初は刃の出が0.5mmですから、まず危険はないでしょう。でも刃の真上は押さえないようにして、両手をうまく使って、刃の前後でコンスタントに押さえながら材を一定速度で送ります。私の場合は、10cm/秒くらいです。
刃を少しずつ上げていくのですが、しだいに力加減がわかってきますから、危いとを感じたことはありませんでした。ただし、このように完全に刃が隠れているので、一見安全なように見えて、実際の切削がどういう状態かはわかりません。ですので、押さえ棒やジグを使って材を送るよりも、刃の真上を手が通過しないようして、手で直接材を送り、切削具合を手で感じる方ことが大切だと思います。予想しなかったことは、木屑が加工された溝の方へ逃げていくためでしょうか、集塵がうまく働きません。毎回小さなほうきで木屑を掃除し、特に定規との間にたまらないように注意します。
慎重に加工したこともあり、比較的安全に加工ができました。しかし、刃の切削能力や抵抗を感じながら、材料を安全に送ることが、誰にでもできるとは思いません。したがって教室ではこの加工は禁止します。面取盤などの大型切削機械を使わない場合、他の方法は、一番深い所とあと二箇所くらいに丸鋸盤で切れ込みを入れ、それを目印に鑿や鉋で手加工することでしょうか。
このカーブに合う外丸鉋を持っていませんでしたので、下の写真にある、四方反鉋や幅の狭い豆鉋、時にはスワンネックのスクレーパーを使いながら、目的の曲面(単純な凹面ではなく、平面につながる曲面)に仕上ていきました。恐いなと思いながら機械加工するより、木の肌を感じながらの鉋かけはとても楽しい。久々無心にその作業に入っている自分を感じました。写真にある小鉋類の中で、下の方4つは自作の鉋です。そのうち、ひとつは、電動鉋用のハイス刃を切断して、刃にしたものです。
海外で現地の木工家と話しをすると、よく日本製替刃式のこぎりを見せてくれます。ゼットソウやレザーソウなどのごく一般的なものですが、彼らはそれをとてもすばらしいと評価してくれます。もう少し日本の木工を知っている人は、日本製のノミを持っていて、「これはいい」と言います。でも、流石に、日本の鉋を使いこなしている木工家に会ったことはほとんどありません。針葉樹と広葉樹の違いもあるでしょうが、やはり日本の鉋は使いこなすのが難しいのでしょう。
日本の鉋の特徴はいろいろありますが、刃が柔らかい地金と鋼の二層構造で刃が分厚いこと、台が木でできていることがあげられます。刃が分厚いことは、刃自体が研ぎの角度を決める”ジグ”の機能を備えていると言えます。市販されている刃研ぎジグは、完全には同じ角度が再現できないために、研ぎに余計な手間と時間ががかかります。せっかく刃自体がジグの機能を持っているのですから、ぜひ研ぎを練習して、”刃先まで真っ直ぐに研ぐ”コツを身につけてほしいです。また台が木でできていることは、台が狂い易いという欠点につながりますが、それは台を目的に応じて変化させやすいことでもあります。金属製の鉋に比べ軽いので作業も楽です。
サンディングが好きという人は少ないのではないでしょうか。木屑でクシャミがでたり、体全体が真っ白になったり・・・。これに比べ、鉋がけは、鉋がうまくできていれば、本当に気持ちのよいものです。テレビなどでシューと薄紙のような鉋屑がでている映像がありますが、実際にはそれでは、鉋屑は厚すぎることが多いです。上の写真の下左ではまだ厚い、下右でちょうどくらい、実際には上のようなグシャグシャした鉋屑になります。最後の仕上げ鉋では、鉋屑は出てこず、台の中にたまっています。それに息をふきかけると、綿のような鉋屑が飛んで出る・・・こうなれば最高です。
海外の木工家があこがれる日本の手道具、これを使わないのは絶対モッタイナイ!。諦めないで、ぜひ使いこなしてください。微力ながら、私も日本の手道具を多くの人に伝えていきたいと考えています。
◆ 湖北マキノ周辺 ◆
4月中旬のある日、カヌー屋時代が懐かしい、海津大崎の桜を見に行った。名古屋から琵琶湖は意外と近い。湖北へは北陸道木の本IC経由で一時間少々。今回高速料金をケチって、関ヶ原から伊吹山の山裾を回りこむように木の本へ向かった。その間も、至るところ桜満開である。
海津大崎は、事前の予想どおり、平日ながら人と車の多いこと。車の間をすり抜けるように自転車を走らせるが、あまり面白くない。おまけに、トンネルを越えたところの浜で一休みしようとしたら、恐そうな兄ちゃんが「自転車100円」と言いよった。「そんならええわ」と引き返すと「有料と書いてあるやろ、ボケ」と罵声をあびせられる始末。昔からの観光地には、こうした無礼でややこしい連中がいることが多い。言い返しても始まらんので、トッとと海津大崎におさらばする。が、帰ってから撮った写真を見ると、やっぱり美しかった。海津大崎の桜は、昔のように湖面からカヌーで眺めるのが最高ちゃうかな。曰く「桜は湖に向かって咲いてるから」。
駅前のレンタサイクルのお兄ちゃんがくれたサイクルマップをたよりにマキノへ向かう。マキノのスキー場も、裏山のスキーツアーにも何度か来たことがある。冬はプチ信州大糸線沿線となるのだ。人気の少ない川の土手のサイクリングロードを気持ちよく走る。これで海津大崎の嫌な気分が解消。そして、メタセコイアの並木道へ。冬枯れで葉の落ちたメタセコイアが道の両側に一直線に並ぶ景観は、日本離れして、なかなかのもの。マキノ駅前で地元の方が売っていた鯖巻き寿司と五目炊き込みご飯の弁当を川沿いで食べる。とても美味しかった。
この時期、有名所でなくても、桜は超キレイ。花粉アレルギーさえなければ、一年で一番美しい季節かも。午後からは余呉湖を一周。そこでも美しい桜に沢山出会うことができた。
2012年4月
・パリの木工教室
・関西人の名古屋界隈事情--- グーグルのお節介 --
◆ パリの木工教室 ◆
先月末から約一週間、木工教室の休みを利用して、パリへ行ってきました。日本の方が居心地がいいし気軽に出かけられるので、このごろは国内旅行の方が好きなのですが、一年に一度くらいは海外へ行って刺激を受けてくることも大切と、気合を入れて出かけました。とは言え、ヨメさん同伴の観光旅行です。が、直前にパリの木工教室というかDIY教室をネットで発見、そこを訪問してきましたので簡単にレポートします。旅全体の記録は、後日まとめる予定です。
”パリ、木工”で検索していたら、日本語で紹介しているサイトを見つけました。「アパルトマン暮らしに嬉しい「日曜大工スペース」がパリに誕生 、パリに学ぶ暮らしのエッセンス 」 http://bit.ly/uqfHVL。この情報から先方にメールを送り、訪問できることになりました。返事ではちょうどこの時期にパリで"Journee des Metiers d'Art"という、多数のショップが参加する、デザイナーウィークみたいな催しが行われているとのこと。ウェブサイトは下記ですが、残念ながら、フランス語で全くわかりません。
http://www.journeesdesmetiersdart.com/evenement/traditions-et-innovations-a-l-etablisienne
というわけで、今回もメール一本で突撃(^^)です。パリ東部のNATIONという地下鉄の駅から5分ほどの、とてもよい場所にその工房というか店はありました。名前は”L'Etablisienne”ですが、何と発音すればよいか、全くわかりません。
店の前に今回の大きな催しのポスターがつるしてありました。一見カフェ風。パリ全体が古い建物なので目立ちませんが、かなり年季の入った建物です。中に入ると京の町家のように奥が長く、廊下の中ほどにカウンターがあり、そこにメールで返事をいただいた女性がいました。
フランス語のため、どうも話が通じにくいのですが、この女性がオーナーで?、左の男性はどこか木工の先生らしく、時々こちらで教えているようでした(正確かどうか自信なし)。一階に椅子張りと奥にモデルを作るような部屋、地下にはマリオネットの人形?を作る部屋と、木工の作業場、小さな機械室がありました。木工機械はプロ用の大きなものではなく、小さなアマチュア向けのものでした。
もとは配管業者の事務所か作業場であったらしく、そのゴチャゴチャしたムードが、何とも言えない工房らしさを演出しています。この辺のムード作りが上手い。もっといろんな場所の写真をとったら良かったのですが、初対面でもあり、またこちらがどういう人間であるかも詳しく説明できないので、写真は数枚撮っただけです。お店のサイトを見た方がよくわかるかもしれません。
これもムード作りでしょうか、壁に年代物の手道具が無造作に飾られています。壁に飛び散ったペンキの跡も、”粋”に見えなくもありません。
工房では生徒さんも何人かおられ、長居は迷惑ですので、一時間ほどで店を後にしました。スタッフから見に行くようすすめられた、バスチーユ駅東側の廃線となった鉄道の高架下に連なるクラフトショップを見に行きました。インテリア関係やアート関係のこだわったお店が連なっていましたが、ガラス越しに見るだけで、中に入って詳しく見ることはありませんでした。やはりもうすこしフランス語ができないと、お店の人とも話しができません。
その後、お店で「見ておくべき道具はありませんか?」の問いに、デッカイDIY向けホームセンターだけど、”BHV”がおすすめと言われたので、そこへ向かいました。繁華街のど真ん中にあるデパートの地下一階にあり、東急ハンズをもっと品揃えを多くしたような感じですが、基本的にアマチュア向けと感じました。木工の先生の話でも、パリでは職人の技術等は秘密主義だそうです。木工の分野においては、アメリカではアマチュアがプロ同様の情報が入手しやすいようですが、ギルドの流れか、イギリスを除き、ヨーロッパでは楽しむ木工という部分はマイナーなのかもしれません。
◆ グーグルのお節介 ◆
ブログでも書いているけど、先月購入したイオンの980円SIMは一ヶ月でおさらばし、IIJmioのベーシックプランに乗り換えた。イオンSIMも充分魅力的だが、データ通信専用ならIIJの方がより良さそうだったからだ。今度のプランでは月945円で128kbsの速度ながら使い放題である。実際に使ってみると体感的にはイオンの2倍〜3倍の速度でスカイプも問題なく使えた。これなら充分使える。ただし、画像や動画、重たいホームページは時間がかかるので、普通の方はやはり大手の定額制を使う方がよいと思う。ヨメさんのiphoneの二年縛りが終わったら、SIMロックを解除(公式にはできないが・・・)して二人でファミリープランに加入すると良さそうだ。
と思っていたら、大手プロバイダーのHi-HoがこのSIMの取扱を始めた。”hi-ho LTE typeDシリーズ”というらしい。SIMフリー末端+SIMカードの組合せがこれから競争時代に入るのか?。いささか専門的な話になってしまったが、ドコモの普通の携帯電話と月945円のスマホ、二台を持ち歩いてみて、このやり方が一番良いという気がしている。スマホはとにかく電池の消耗が早い。データ通信専用のスマホなら、電池がなくなっても別の携帯で通話ができる。また、自分が古いのかもしれないが、どうもスマホで電話する気にはなれないのだ。
前置きはさておき、スマホを使い出して驚いたことがある。Androidの場合は、とにかくグーグルのメールアドレスを登録することが求められるのだ。そして、それを元に、カレンダーや連絡先、さらにはFacebookやスカイプまで情報がすべて同期され、勝手に表示される。
そのことを知らなかったので、最初Facebookも同期するように設定していたら、スマホの画面に、「今日は○○さんの誕生日です」とか「今日は△△の催しがあります」とか告知された。おいおい、それほど親しくもない人の誕生日を教えてもらっても、ちっとも嬉しくないばかりか、迷惑や。俺はパソコンやスマホに、そこまで行動を左右されたくない!。Facebook自体も、どうも性に合わない。勝手に「お友達かもしれません」などと、紹介してもらう必要はないし、「人が今どのように過ごしているかを知ってどうするんや!」ということもある。
グーグルはホンマに便利やし、今もよく使う。けれど、メールアドレスやスマホや携帯の電話番号まで特定されていれば、検索した語句はもちろん、居場所や行動予定まで、集中管理できることになる。この膨大な個人情報を、国や他の力のある団体が、自分達に有利なように利用する可能性は高い。もうすでに、個人の志向や年齢に応じた広告を表示するような仕組みが、グーグルに限らずアマゾンでもできあがっている。考えてみると、メチャ恐い。ネットの世界、これからよほど注意しないといけない。
iphoneやスマホで爆発的に広まったネットの世界、その中で個人情報が広告に利用されるくらいなら許容範囲かもしれないが、政治的な意図を持って個人を特定したり、流す情報を操作したりすることができるようになるのは目前にせまっている(もうすでにそうなっている!?)。「どのようにネットと付き合っていくか」を慎重に考えねばならない時期に来ている。
2012年3月
・クランプを使うのは難しい
・関西人の名古屋界隈事情--- 980円SIM --
◆ クランプを使うのは難しい ◆
教室をやっていると、”同じ注意の繰り返し”がとても多くなります。言っている自分が気にかかるくらいですから、長く教室に居られる生徒さんはそれこそ”耳にタコ”ができていることでしょう。先日テレビの番組で、老舗の和菓子屋さんだったかなあ?、二代目となった娘婿さんが「義父は一度しか教えてくれない」と言って嘆いていました。でも、「一度しか言わない」のは、本人のためだと思います。どうするか自分で考えて方法を見つけ出さないといけない。そのことがとっても大切で、”教えてくれたことはすぐ忘れる”けど、”自分で見つけたことは忘れない”。だから一度しか言わないのだと思うのです。教室では、そうはいきませんが、「同じことは3回以上言わない」ようにしたい・・・。
話が横道にそれましたが、同じことを繰り返し言うことの一つに、接着の際の注意があります。
準備を周到にすることはとても大切です。またクランプを正しくかけることはとても難しい。「直角に加圧できる」といううたい文句のベッセイのクランプであっても、そのかけ方に繊細な注意が必要です。それで端を直角に切った角材を使って二三例をあげてみました。
上左の写真のようにクランプを配置すると、支えのない部分にまで力が加わって、内側に傾いているのがわかります。右のようにネジと押さえたい部分を一直線にすると、直角に固定することができています。
実際の組み立てでは多数のクランプを使いますし、接着剤が乾かないうちに圧着を完了せねばなりませんから、経験が少ない人はスコヤを当てたりする余裕はないのが実情です。できることなら、スコヤに頼らず、眼で平行や直角をある程度判断できるのが望ましい。たとえば次の写真、ネジの部分で押さえるべきところを押さえていながら、クランプのバーが本体と平行ではないため、直角に固定できていません。こういうところを見逃さないことがとても大切です。
以前はハタガネを使っていましたが、ハタガネはバーが曲がりやすく、一本だけだと上右写真のように狂います。力も弱いため、今はほとんど使っていません。
次の写真はベッセイの軽量UNIクランプです。下左のように深くクランプをかけると直角が狂います。しかし右のようにネジの位置でしめても、バーの合成が弱いため、少し開きぎみになります。UNIクランプは軽くて便利そうですが、接着本番では使っていません。
長いFクランプがないので試していませんが、Fクランプのようにピンポイントで押さえるクランプの方が、うまく加圧できる場合があるかもしれません。とにかく、接着作業は今でも一番緊張します。繊細かつ大胆に、しかも確実に接着剤を塗りながらも、一定の時間内(酢ビ系接着剤で10分〜15分程度)に圧着を完了しなければならないからです。
クランプの使い方以外にも、接着剤の塗り方は重要なポイントです。塗る前に木片で目的に応じたコテを作ったり、広い面積にボンドを広げるためのクシコテを使ったりします。すこし時間がかかりそうなら、塗り広げずにチュウブで出したままのボンドを各部に配置しておき、接着直前に広げたり、とにかく、時間との戦いです。このあたりのことは、慣れの要素が大きく、あるていど経験をつめば自然とできるようになるかもしれません。
◆ 980円SIM ◆
携帯電話にお金をかけたくないが、ヨメさんのiphoneはホンマに便利やし、それを使わしてもらっているのもイマイチや。なんとか安くスマホが持てないかと、ずっと考えていた。そんな折、スーパーのイオンが月々980円の定額データ通信用SIMカードを販売していることを発見!。「980円なら、今のガラケーが1300円くらいやから、二台持ちで合計2300円ほどに収まるやないか」とケチなオジサンは考えた。イオン専用月額サービス
SIMカードというのは、携帯電話の中に入っている小さなICチップのことで、その中に契約情報がつまっていて、それを電話機本体に挿して使うわけやけど、携帯電話会社というのはセコイ、自分のところのSIMしか使わせないようにSIMロックというのをかけている。そのうえ日本国内ではSIMロックされていない携帯電話は通常ルートではまず買うことができない。一年くらい前から、DOCOMOの携帯電話は3150円の手数料を払えばSIMロックを解除してくれるらしいけど、それがどう役に立つかはわからない、現状ではソフトバンクのSIMが使えるだけかも。ただし、今回のイオンSIMは日本通信という会社がドコモのFOMA電波網を使ってb-mobileという携帯電話網を販売しているうちの一つの商品で、元々ドコモの回線だからSIMロックされいても使えるのだ。
なんとかスマホ本体のみを安く買うことができたら・・・と探していたら、この世界では「白ロム」と言われるSIMカードが入っていない携帯電話があるらしい。”白ロム”、なんか怪しい響きやけど、別に法に触れているわけではない模様。ネットでいろいろ迷って、結局昨年の人気モデルであるXperia arcというのを19800円で入手。ネットでなくても、大阪日本橋などでは、中古携帯電話を扱う店が多数ある。
すぐさま、イオンのお店へ。ウチから20分ほどのイオン春日井店の携帯電話売場で「980円のSIMちょうだい」と買ってきた。手数料として3150円を支払い、小さなチップと書類をもらう。自宅に帰ってそれをスマホに差し込んで設定をしたら、おーっつながった!!!。
言い忘れてた。普通なら月6000円くらいかかるスマホ、それがなんで980円かというと、データ通信の速度が100Kbpsに制限されているから。なんというか、100キロで走れる高速道路に平行して細い自転車専用道があって、そこを15キロぐらいでチンタラ走っている感じ?。とはいえ、昔は56kbpsとか、電話でキーコンコンとネットにつないでいた。一昔前のISDN回線が64kbpsだったからそれよりは速い。だからメールチェックは余裕でOK、ネットはゆっくり表示されるものの、なんとかなる。ダメなのは動画、それとSkypeはちょっい無理だった。
これからの時代、低速のデータ通信980円は誰にでもすすめられるものではないけど、家にインターネットがあって、出先ではメールチェックやネットでの文字情報中心なら、充分実用になる。もしも使い物にならなくても、解約時の違約金やペナルティーは一切ないし、契約時にいらないオプションを強要されることもない。速度の速いものがほしくなったら、少し高いSIMに変えたらええだけや。最近のニュースでは、ヨドバシカメラから日本通信の高速SIMが商品化されているらしい。これは月額基本料が0円で速度制限はなく、データ量が100MBまでは従量制、100MBから1GBまでは月3780円という料金体系という。ケチなオジサンにはイオン980円でいいけど、ストレスがたまってきたら乗り換える手もある。
ドコモもAUもソフトバンクも、今のような変な商売してたらアカンようになると思う。海外からSIMフリーの携帯電話を買って、日本通信のSIMを挿して使う人がこれから増えていくような気がする(今でも携帯電話輸入業者は多数ある)。とにかく、閉鎖的な日本の携帯電話業界に風穴を開けてくれた”日本通信”という会社に拍手を送りたい。
2012年2月
・SketchupとDoubleCAD XT
・関西人の名古屋界隈事情--- 美濃赤坂駅 --
◆ まさかのマサカン? ◆
先月旧友と会った際、「”アラカン”とは四捨五入で60歳のことやからブログの記述は間違ってるで、アラカンではなく正しく”カンレキ”」と言われてしまいました。確かに、数え年では生まれた時が一才なので、計算上は今年60となるわけで、いやはやナント・・・。歳にこだわるつもりはありませんが、一度原点にもどってこれからの生き方を考えるよい機会なのかもしれません。そんなわけで、このホームページもそろそろ一度リセットしたいと考えています。今までのように毎月更新はしないかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。
◆ SketchupとDoubleCAD XT ◆
これまでに何度か新しいCADについて書いていますが、実際のところはそれほどCADを使っているわけではありません。私は同じものを作ることが少ないので、正確な図面を残す必要性がないからです。また、新しいアイデアはコンピュータの画面上では生まれないので、スケッチや小さな模型から始め、構想がかなりまとまった段階になってからしかCADを使いません。それでもCADは、手書きの図面に比べ、修正や原寸図の印刷が簡単なうえ、図面管理も楽なので、図面はほとんどCADで書いて保存しています。
3DCADが注目されるようになってからは、多くの3DCADを試しましたが、結局無料で入手でき、3DCADとしてはとっつきやすいGoogleSketchUP(以下Sketchupと記述)を使っています。Sketchupは本当に便利で、ビデオなどの自主学習教材も沢山公開されていて、直線主体の家具なら誰でも2時間〜半日頑張れば3Dモデルが描けるようになるのではないでしょうか。しかし、そのSketchupで書いた3Dモデルから実際の製作に使う3面図や原寸図を取り出そうとすると、これは結構難しい。平行投影図にして、前、側面、平面をそれぞれ指定の尺度で印刷するしかなく、手間がかかります。有料のSketchupPROなら、Layoutというソフトと連携して、一枚の紙に様々な図を打ち出せるようですが、このためだけに7万円以上出す気はありません。
従来の2DCADも必要で、すでに日本で販売が中止されているAutoSketchをずっと使ってきました。ところが、このソフトが最近のPCでは動かなくなり、新しい2DCADのを探していました。日本ではJWCADというフリーソフトが普及していることもあり、最近はメーカー製2DCADが、少なくなっています。フリーソフトはいくつか試しましたが、自分が気にいるのを見つけることができませんでしたし、継続的に使用するには不安が残ります。一般的には、○○スケッチと呼ばれる一万円程度で購入できる安価な2Dソフト、例えば”図脳スケッチ”、”Turboスケッチ”等で充分だと思いますし、AR-CADやLiteCAD、もちろんJWCADのフリーソフトも評価が高いです。
海外製CADを探してみますと、最近大物ソフトの2D機能だけが無料で提供されています。シーメンスのSolidEdge 2DdraftingやDoubleCADXTです。前者はあまりに重たく、機能満載なため、私には使いこなすのが難しく思われました。後者は、日本で販売されているTurboCADを開発しているIMSIdesign社の製品で、AutoCAD-LTユーザーを取り込もうというわけでしょうか、2DのXTはは完全無料化して配布されています。TurboCADは前々から使ったことがあるCADで、私には比較的とっつきやすかったので、今年になって、これを集中的に使ってみました。DoubleCADXTのウリは、AutoCADファイルの読み込み保存ができ、SketchUPファイルの読み込みにも最適化され、使いやすい新しい画面構成になっているとのことです。今日は簡単なSketchUPとDoubleCADXTの連携使用例を紹介してみます。
まずはSketchUPで、立体モデルを作成します。下のような椅子なら本当に簡単。平面図で3cmX3cmの正方形を書いて、それを400mmまで立ち上げ、ひとつの部材として”コンポーネント”を作成し、複製します。そんな簡単な作業で部材をつくり、組み合わせていきます。興味のある方は、公開されている修得ビデオ等で自習してみてください。
この段階では、ホゾなどの詳細な加工は書き込んでいません。製作すると決めた時に、モデルを複製し、それを分解して、パーツ毎にホゾを延ばしたり、穴を開けたり、カーブを付けたりして、部品図も簡単に作ることができます。例えばこんな風に部材の両側にホゾを伸ばしたりします。
次に、作成した3DモデルをDoubleCADXTで読み込みます。上の椅子とは少し違うのですが、同じような椅子のモデルをDoubleCADXTで読み込むと下記のようにワイヤフレームとして表示されます。これを平行投影で表示し、正面図や側面図など、必要な方向から表示して、それぞれ名前をつけたビューとして登録します。
それをA4ペーパー空間にそれぞれ4つの”ビューポート”として1/10で表示したのが下図です。印刷後物指しで計ってもピッタリ1/10の寸法ですから、原寸図や接合部などの様々な詳細図を印刷することもできます。有料のPRO版では、ペーパー空間上のモデルに簡易レンダリングを施し、実際の椅子のように表示させることもできるようですが、無料版XTでは、ワイヤフレームと、隠れ線処理をした表示の二つしか選ぶことができません。
私はAutoCADに詳しくないので、実はペーパー空間にこのように表示させるまで、かなり苦労しました。尺度の変え方やビューに名前をつける方法がわからかなったりしたのです。DoubleCADXTは英語版で、日本語表示がありませんし、付属のヘルプファイルも英語なのでよけいに苦労しました。それで、TurboCAD日本語版の評価版(30日間使用可能)をダウンロードし、その日本語ヘルプから、操作を覚えました。操作や画面はTurboCADとほぼ同様ですが、DoubleCADXTで気に入ったのは、下図のように四角や直線を描くとサイズが図面の寸法線のように表示され、キーボードから数字を打ち込めば、ハイライトされているサイズ(下図ではSizeA)が決定でき、TABキーを押せばSizeBが入力できるのです。直感的で非常に便利と感じました。
DoubleCADXTは少し前から配布されていたみたいですが、日本では有料のTurboCADとの関係からでしょうか、あまり紹介されていません。無料2D版が日本語版となって配布されることはなさそうですし、そうなると有料化されるかもしれません。おそらくAutoCADの対する、シェア争いの強力な手段として、アメリカでは2D版が無料配布されたのだと思います。3DのSketchupと2DのAutoCADと互換性の高いDoubleCADXTの組合せは、現時点ではどちらも無料で入手でき、利用価値が高い方法ではないでしょうか。英語版というハードルも、慣れてしまえば、それほど高くはありません。
(参考サイト)
http://sketchup.google.com/intl/ja/
http://www.doublecad.com/
◆ 美濃赤坂駅 ◆
大垣駅から、鉄道ファンが”盲腸線”と呼ぶ、極めて短い路線が枝分かれし、北西に延びている。その終点が美濃赤坂駅だ。実はその手前から貨物専用線が山麓の石灰石採掘工場まで続いていて、時々会社名の入った貨物列車が赤坂宿の中を通る。中山道の宿場町「赤坂」は、昔の風情を残す町並みが残っていて、昭和の繁栄を感じさせる。広大な敷地で今は無人の赤坂駅と合わせ、しみじみした気持ちになった。
2012年1月
目次
・第11回木工教室作品展出品作品他
・昨年買ってよかったモノ
・関西人の名古屋界隈事情--- 2011年の一枚 ---
◆ 第11回木工教室作品展出品作品他 ◆
昨年10月に行いました「第11回木工教室作品展」の出品作品を下記のページに掲載しました。楽しんでいただければ幸いです。
数は少ないですが、昨年の私の作品ページも作りました。
◆ 昨年買ってよかったモノ ◆
充電ジグソー
マキタの充電電池ジグソー。ジグソーは、アマチュア時代にあまり使っていなかったのに、今はかなりの頻度で使う代表選手です。ちょっとパワーが足りない時もありますが、14.4Vの電池が使いまわせるので18Vよりもこれを購入。ボッシュの刃が使え、工具もなしに刃の交換でき、音は静かで、コードレス。曲線など、動きの激しいジグソーにコードレスはたいへん重宝しています。荒材の高速切断にはT-144D,仕上切断にはT-101BかT-101D、小さな曲線にはT-101AOを使っています。ただし、一台目には100Vタイプをおすすめします。
屋外用水性エマルジョン塗料
塗ってから二ヶ月ほどしか経っていませんが、屋外で雨ざらしにするテーブルで、今のところニッペのウッディーガードは大変具合良です。水性で塗りやすく、写真のように撥水性、耐水性は良好です。ホームセンターで手軽に買え、値段も手頃。高価な自然塗料と比べることは無意味ですが、単純に天然素材を混ぜただけの自然塗料より、信頼できる水性エマルジョン塗料に、長い間植物性乾性油の通販をやっている私は好感が持てました。他のメーカーの製品にも同等の品質の塗料は沢山あることと思います。
工房にエアコン
一昨年に工房にエアコンを入れ、それが予想を良い意味で裏切る好結果でしたので、秋の安くなった時期を待って、機械室にもエアコンを入れました。工房と両方稼動すると電源の許容量をオーバーしますが、機械室は私一人で作業する時と教室の床暖房を寒い朝に補う程度に使いますので問題ありません。
木工家さん達は、寒い工房で我慢と気合で仕事をしているイメージがありますが、あまりに寒かったり暑かったりすると、効率がわるいばかりか、怪我の危険性も増します。10万円少々の費用はかかりますが、寒い冬は少し暖め、暑い夏は少し温度と湿度を下げてやるだけで、仕事をする気になりますから、費用対効果は高いです。購入される場合、100Vではなく、200V単相のエアコンをおすすめします。理由はパワーが全然違うし、200Vなら家庭の電源で使えますし、家庭用なので工事費が安いです。業務用3相タイプは、室外機への配電となり、新たな配線が必要になりますし、工事代も高くなります。
「これでいいのだ」、ガラケイ
ガラケイとは、日本独自の仕様で発展してきた世界に通用しにくい日本の携帯電話を”ガラパゴス”携帯とバカにした言葉です。しかし、スマホばかりもてはやされる昨今ですが、ガラケイなら探せば機種代金0円で、毎月の費用も安く抑えられるコースがあるはずです。私の場合月々1300円ほど。これでEメールも、SMSも、海外でもOK。ただ、ヨメさんはiphoneを持っているからこれでよいという側面はあります。メールチェックや情報収集にスマホは本当に便利ですが、だからと言って毎月6000円近いお金はもったいないです。
この携帯を買うまで本当に苦労しました。ドコモもAUも、やたらといろんなオプションを強要してくるし、安い料金には必ず悪名高い”二年縛り”があります。もっと顧客の立場に立った商売をしないと、携帯電話会社はいずれユーザーから見放されるのではないでしょうか。ぜひSIMフリー化と、料金の単純化をしてほしいものです。
◆ 2011年の一枚 ◆
昨年7月の八ヶ岳、しらびそ小屋から本沢温泉へ向かう途中で出会ったカモシカ君。ズームがない28mmの広角デジカメだから、かなり近い!自分は哺乳類好き、彼らの表情を見ていると心が安らぐ。