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2011年12月

目次
・天然乾燥と人工乾燥、針葉樹と広葉樹
・製材前の材の掃除
・関西人の名古屋界隈事情--- 水の都、大垣 ---

◆ 天然乾燥と人工乾燥、針葉樹と広葉樹 ◆

 先月の文化の日、教室に来られている生徒さんの家業である製材所を見学してきました。こちらでは所有される山から切り出した木を使って家を作る仕事をされていて、現在ではとても貴重な会社です(”木”にこだわった家作りをお考えの方がおられましたら、私までお問い合わせ下さい)。

 製材所に到着後、社長さんにお話をしていただきました。その中で「天然乾燥材は全く違います。人工乾燥材は繊維がズタズタになっていて、木の味が全く違うんです・・・」というお話が強く印象に残りました。その後15分くらい車を走らせ、山へ向かいました。ヒノキの林へ入り、急斜面を下って、この秋倒したばかりの、ヒノキの大木を見せていただきました。このまま来年の梅雨前まで放置し、葉枯らし乾燥をさせるそうです。

 一方、自分に目を向けてみると、使っているのはアメリカで人工乾燥されたアルダー、チェリー、ブラックウォールナット、バーチ、ロシア材のタモなど、人工乾燥された輸入広葉樹ばかり。フィンランドの木工家さんの講演会でも「日本には木が沢山あるのに、どうして日本の材木を使わないのか?」と語られました。たしかにちょっと山間部へ行けば、山は緑で覆われ、木は豊富にあるように見えます。木工教室をやっている立場からも、これからは国産材も使っていかなければと思いつつ、実行に移せていないのが現状です。それで、今月は天然乾燥と人工乾燥、そして針葉樹と広葉樹の違いも絡め、勉強したことを少しまとめてみました。この方面の知識は無に等しく、間違いもあるかと思いますが、どうかご容赦ください。

材木の現状

林野庁のホームページに平成22年度 森林・林業白書 全文(HTML版)があります。これを見ますと、昭和30年頃から木材自給率はどんどん下がり、平成13年頃に最低の18%になり、その後は少し持ち直して昨年は27%程になっているようで、以前よりかなり持ち直しています。これに比べ輸入材は平成7年頃がピークですが、輸入材全体に占める製品の割合は一直線に右肩あがりで、丸太の輸入はどんどん少なくなっています。また白書には戦後に植えられた杉やヒノキの人工林が50年以上経ち、”高級材”の割合が増えており、10年後には60%に達するとの予測がありました。

 ということは、個人や小さな組織で仕事をしている私達には、輸入材を丸太で買って製材をするということが極めて困難になってくるということだろうと思います。アメリカ材のように現地で製材し、人工乾燥された材しか手に入らなくなるわけです。実際、私の工房でもそのような材しか仕入れていません。そして、これからは国産材も次第に良材が出回るようになり、我々も針葉樹を使うことを真剣に考えなくてはいけない時期に来ているようです。

人工乾燥の良いところ、悪いところ

 教科書的には、狂い、木口割れ、内部割れ、落ち込み、などが欠点とされています。しかしこれらの欠点は、うまく乾燥させることで事実上問題無い程度にコントロールできることと思います。ただし、蒸気による曲げに関しては、天然乾燥材でないと、うまくいかないことが多いそうです。鉋をかけると天然乾燥は違うということですが、広葉樹ではその違いをあまり感じたことはありません。また人工乾燥の方が効率が上がり、室内で保存されることが多いため、カビなどの進入や土砂の付着も少なくなります。しかし、このあたりのことは針葉樹と広葉樹の違いを抜きには話しができないようです。

 生木の含水率を比較したデータ(文献P71)では、広葉樹については心材と辺材の含水率には大きな差がないのに比べ、針葉樹では心材は生木でも含水率がかなり低く、逆に辺材では100%〜200%という高い値を示しています。ということは針葉樹の場合、もともと心材は含水率が低めで、辺材を落とすことができれば、天然乾燥がしやすいということかもしれません。最近「きらめき間伐」という名称で、スギやヒノキを、木を切らずに、樹皮をはぎとり、立ったままで乾燥させる”立ち枯れ乾燥”という間伐法の普及をめざしているグループが各地にあります。効率の問題はありますが、針葉樹の特性にあった乾燥方法であるかもしれません。

逆に広葉樹の場合は、全体の含水率が中程度で、天然乾燥だけでは、200日以上かけても18〜20%までしか含水率を下げることができず、家具など精度が要求される製品には使いにくいと言えます。

針葉樹と広葉樹

英語で、針葉樹はsoftwood、広葉樹はhardwoodと呼ばれるように、針葉樹は柔らかくて家具には適さないとされていますが、実際はどうでしょう。組織に関して、針葉樹はストローを束ねたような単純な構造、広葉樹はとても複雑な構造をしているようです。針葉樹と広葉樹について、木目方向の圧縮や引っ張りの強度試験や曲げの強度試験データ(文献P111)では、それほど差がないのに対し、木目に対して垂直な方向での圧縮や木目を裂くような引っ張りの力には針葉樹がきわだって弱いことを示しています。素直な木目が美しい針葉樹、そのせいで木目に沿って割れやすく、横方向の力で凹んだりしやすいということになります。飛騨産業さんが杉の圧縮材を使った家具を発表されていますが、まさにこの弱点を補うための優れた工夫だと思います。

あと節の問題。例えばヒノキの場合、材は柔らかいのに、節は極めて硬い場合がよくあります。これは、ホントに加工しにくいです。かと言って、無節のヒノキはベラボーに高い。建材の一等ぐらいのヒノキであれば、手に入りやすいので、うまく使うには工夫が要りそうです。

針葉樹を使ってみると

よく言われることですが、ヤニ分が多いです。手押鉋や自動鉋盤の刃先にすぐにヤニが付着します。匂いは好き嫌いはあるでしょうが、とてもさわやかな良い匂いがします。柔らかすぎて江戸指物のような細かい組手には適しません。ホゾも広葉樹と同じ程度の強度にするには1.5倍ほどの厚みが必要になるように思います(あくまで私見)。だから、構造材ではない部分、たとえば鏡板や棚板などに使ってみるのを手始めするといいのではないでしょうか。

別の観点から・・・。針葉樹は触った感じが暖かいです。また、太い材料でも軽いので、強度をうまく保つように工夫すれば、軽量の家具を作ることができます。また硬い樹脂のような木よりも針葉樹は素朴な”木の味”を持っていると私は感じます。日本人は昔から家や障子などの建具、割り箸まで、針葉樹に慣れ親しんでいるので、より身近に感じることでしょう。

針葉樹の入手

広葉樹より入手は簡単です。近所の材木屋さんの多くは建材屋さんで、国産のヒノキやスギは簡単に入手できると思います。3寸角柱の三ツ割材、厚さ約3cm、幅9cm、長さ4mほどの材料は入手しやすく、一等なら手頃な価格で家具や小物を作るのに便利です。ホームセンターのツーバイ材よりも少し割高にはなりますが、出所がはっきりしていますし、材木屋の主人と親しくなることで他の有益な情報も得ることができるので、ぜひ近所の材木屋さんへ顔を出すことをおすすめします。

もちろん木曽や紀州など有名な産地に出向くことは意味あることかと思いますが、近所の材木屋さんなら配達してくれますし、一産地に限らず様々な材木を比較して購入できるメリットもあります。以前住んでいた京都南部では同じ町内の材木屋(建材)さんからよく材木を買っていました。何度か顔を出すうちに親しくなって、事務所で世間話をしていると、この材木屋さんが地元大工さんの溜まり場で、仕事の情報交換の場でもあることがわかってきました。そんな話に加わっていると、材木の話はもちろん、大工さんがよく使う道具屋さんを教えてもらったことがあります。ホームセンターではこういう生きた情報は入ってきません。

参考文献:Understanding Wood, R.Bruce Hoadley 

◆ 製材前の材の掃除 ◆

 工房に運んだ材を手押鉋や自動鉋盤で製材する時、刃物を痛めないよう、注意深く掃除することはとても大切です。小さな刃こぼれを作ってしまったり、板ハギの段階になって刃が切れなくなっていたりすると、作業工程が狂うだけではなく、仕上がり精度にも影響するからです。ホコリのような小さな砂粒まで丹念に掃除をするには、皆さんどうされているでしょうか?

 ウチでは私が屋外から材木を工房内に移した時に、まず掃除機につけたブラシ付きノズルで掃除をしています。次にその材を使う人が製材の直前に、刷毛などで念入りに掃除をしてもらうことにしています。写真がその時に使っている道具類です。

左から掃除機につける吸引ブラシ、外壁掃除用刷毛、ワイヤブラシ、そしてタワシです。製材前にブラシでだいたいホコリを落とし、木目に入りこんでいる砂粒はどはワイヤブラシで落としで終わっていたのですが、最近山形の大江さんがHPで紹介されていたタワシを掃除ラインに加えました。

 ホームセンターで安いタワシは78円や98円で売られていますが、大江さんが使われていた「亀の子」印のタワシは280円もするんです。しかし思い切って(^^)それを買ってみました。そしたら、とても具合がよいのです。それまで掃除機やブラシで掃除しているのに、タワシでこすることによって、さらに細かい粉塵のようなホコリが取れます。そのホコリには小さな砂粒が混じっているはずで、刃の寿命を短くする原因を減らすことができます。

 これが高級タワシ?の「亀の子」です。外見は安いのとほとんど変わりませんが、毛の密度や腰の強さが違うようです。安いタワシでも間に合うと思いますが、亀の子タワシは感触がとてもいいのです。詳しい実験データがあるわけではありませんが、タワシを使っていなかった時より手押鉋の刃が二倍くらい長く切れるような気がします。値段は3倍ほどしますが、もともと高価なものではないので、一度試してみてはいかがでしょうか、亀の子タワシを。

◆ 水の都、大垣 ◆

 紅葉を見に出かけた先がイマイチだったので、近いのに行ったことがなかった大垣の町へ行き先を変更した。前々から大垣は水の町だと聞いていたが、大垣城を中心とした町の周囲に写真のような川があって、観光用川舟が運行され、なかなかの風情。

大垣は美濃路の宿場町の一つだということだ。「美濃路」とは名古屋から中山道につながる脇街道であり、難所の鈴鹿や七里の渡を通らないため、昔はよく利用されたらしい。だから大垣の町並には、写真のような道標が沢山ある。京と江戸を結ぶ街道であった証拠。

 水の都というだけあって、町中至るところに湧き水がある。写真は八幡神社境内の湧き水で、写真を撮った時も、ご婦人が二人、自転車でペットボトル数本に水を入れに来ておられた。料理やお茶に使うそうで、実際に飲んでみると、なかなかうまかった。伊吹山ろくからの伏流水のように思うが、実際のところはよく知らない。

 初めて行った大垣の町は、昭和な感じがして、昭和28年生まれの私には馴染みやすかった。あんなに繁華街から近い天守閣というのも珍しい。今回は時間がなかったけど、美濃赤坂も面白そう。JR大垣駅から北西に、「盲腸線」と呼ばれる、赤坂駅までのごく短いJR線が走っている。距離にして約5km、時間で6〜7分らしいが、終点の赤坂は中山道の宿場町、「赤坂宿」だという。大垣に限らず、名古屋界隈の町を知るには、旧街道の宿場町を知っておくことが大切なようだ。


2011年11月

目次
・第11回木工教室作品展、木の仕事の会東海展終了
・BEVEL-UP SMOOTHING plane
・関西人の名古屋界隈事情--- 東桜周辺は寺だらけ ---

◆ 第11回木工教室作品展、木の仕事の会東海展終了 ◆

 11回目となる今回、三日間で100名以上の方に来ていただけました。写真は小物を中心に並べたギャラリーの様子ですが、大物を並べた工房の方も大変見応えのある展示であったと思います。各作品は、来年一月度のホームページにて公開させていただく予定です。

 その前週には、名古屋市東区の東桜会館にて初めての「木の仕事の会展IN東海」が開催され、出展しておりました。土日は木工教室の仕事のため、会場には居りませんでしたが、三日間で300名以上の方にご来場いただき、落ち着いたよい展示会だったとのことです。

教室作品展にご来場いただいた方々、また東桜会館で私のブースを見ていただいた皆様、ありがとうございました。

◆ BEVEL-UP SMOOTHING plane ◆

 木工教室で教える中、何が一番苦労するかというと、やはり鉋がけでしょう。近頃は教材として入手できる広葉樹の価格が段々と高くなり、同時に手頃な値段の材はどんどん悪くなっているようです。目切れやどうしても逆目になってしまうような材に、経験の少ない人が鉋を綺麗にかけることは、至難の業です。私自身も、逆目との戦いではいつも悩みます。特に硬い広葉樹に主として針葉樹を削るために発達してきた日本の鉋をかけることは、研ぎ、裏金との隙間、刃口、台直し等々、すべてが完璧に調整されていないと困難な作業です。

 米国の木工雑誌や木工洋書を見ていますと、あちらの仕上げ鉋(SMOOTHING plane)の仕込み角は約45度で、私がよく使う南京鉋も45度、寸勾配で仕込まれています。日本の鉋は38〜40度くらいの角度で仕込まれていることが多く、この一枚刃の状態では、ちょっと複雑な木目になるとうまく削ることができません。複雑な木目の木を削る時、最後の手段はスクレーパーですが、切削角を大きくすることが有効な手段となります。

 円高の昨今、カナダのLee ValleyからBEVEL-UP SMOOTHING planeを買ってみました。本体189ドルに刃先角50度のブレードを追加し、他に小さな先端工具を買ったのですが、送料がなんと57ドル。以前よりもかなり高く、しかも安価な船便が使えなくなっていました。通販全般に言えることですが、送料や梱包費用の名目で利益を乗せている傾向が強くなっているようです。しかし円高のおかげで、本体と送料だけなら19000円ぐらいで購入できます。参考までに、日本のオフコーポさんはVeritas ローアングルスムーズプレーンを33600円で扱っておられます。

 この鉋、刃の削る側、しのぎ面を上にセットします。仕込み角12度ですから、標準で付いているブレードの刃先角は25度なので、切削角は37度です。しかし、研ぎ面が上についているので、研ぎの角度を変えてやれば、切削角を変えることができます。カナダからの通販ではオプションで38度と50度のブレードが用意されており、38度の場合は切削角50度、50度の刃では切削角62度となり、切削角が62度ともなるとバースアイメープルなどの複雑な木目でも逆目ボレなく削ることができるといいます。

 50度のブレードをセットして、ヒノキを削ってみました。節回りの逆目でも、ボコッと掘れたりしません。ただし、日本の仕上げ鉋ほど肌は美しくないし、引きは重いです。押すことに慣れれば、逆目が恐い場合の味方になるかもしれません。

 試しに仕込み角45度のCLIFTONの鉋で同じヒノキを逆目に削ってみましたが、これもキレイに削れますし、引きは少し軽いです。日本の鉋同様、薄い鉋屑で、刃口を狭くし、切削角を大きくしてやることが大切なようです。これらの鉋は刃口の大きさを簡単に調整できます。しかし、刃の微調整は、ネジやレバーですることになり、これは結構難しい。小さな玄翁でコツコツ叩く方がなれています。

 二つの鉋を並べてみると、両方ともほぼ同じような大きさですが、ややBEVEL-UP SMOOTHING planeの方が台が少し長いです。CLIFTONは刃をバーで固定しますが、Varitasはネジで固定する方式です。私的にはネジの方が、少し緩めて刃の左右の調整をしやすい感覚がありました。構造や仕込み角が違いますので、単純に比較はできませんが、値段も安いし、裏金(チップブレーカー)の調整が不要なVaritasの方がおすすめかな。

 このような記事を書いたので、洋鉋がおすすめのように思われるかもしれませんが、それは違います。鉋を正しく使いこなせる知識と経験、技量があってこそ、使いこなすことができるのは、日本の鉋と同じです。そのためにも、初心者の方は、日本の鉋で研ぎから台の調整までの基本をマスターしておくべきだと思います。そのうえで、硬い広葉樹中心の鉋がけには、ここで紹介したようなよくできた洋鉋は、ひとつの有力な道具となります。なお、台が金属のため、狂いにくいのはメリットですが、狂った場合の直し(厚いガラス板などの完全な平面にサンドペーパーを張り付け、研磨する)はより困難です。またBEVEL-UP SMOOTHING planeのように、刃の裏を下にして切削をする場合、しのぎ面ではない平面側が磨耗することになります。このため、まだ実際に感じてはおりませんが・・・、研ぎ直しの手間は、通常の鉋刃よりも多くなるはずです。

 金属製の洋鉋で、評価が高いのはLie-Nielsen,CLIFTON、少し下がってVeritasということを聞いたことがあります。今回初めてVaritasの鉋を手にしてみて、その作りや使いやすさから、かなりコストパフォーマンスが高い印象を受けました。

(追記)
ホームページを見られた方から、仕込み角について「日本鉋の仕込み角は私の使っている鉋は8分勾配 と8.5分勾配です。度数に直すと38.7度と40.4度になります。」というご指摘がありました。そのとおり、8分もしくは8.5分勾配の平鉋が多いようです。日本の鉋の仕込み角についての記述を38度〜40度に訂正をさせていただきました。

◆ 東桜周辺は寺だらけ ◆

 先月展示会があった東桜会館は、名古屋の中心「栄」から東へ7分ぐらい歩いたところにある。ところが、どういうわけか、人通りが非常に少ない所で、通りすがりの人が展示会にふらっと入ってくることなど、ほとんどない。元々は中部電力の組合の施設だったということで、使用料金がとても安いが、私が見つけてきて初めて使った時から、大変好きな展示場であり、また周辺の雰囲気も私好み。

 名古屋を代表する繁華街である栄や名駅、どうもしっくりこない。それは歴史を感じるところが少ないからかな?。ところが、東桜会館周辺は寺だらけなのだ。東に大法寺、北東に妙本寺、北には滋眼院、西に安斎院、南は法輪寺、その周辺も、ほとんどお寺と言っていいくらいだ。もう少し南にゆくとホテル街があって、ちょっと怪しい雰囲気もある。見ようによっては、東桜会館周辺は、京都の街中を歩いている感じがしなくもない。やや南方、斜めに走る道路は”飯田街道”であって、旧道なのだ。道路周辺には飲食点が並んでいて、展示会があるときには必ずお世話になる西洋居酒屋”ちゃぶや”があるし、ちょっと高級なフランス料理店、天麩羅屋などもある。

 栄の町を歩いても店ばっかりや。時には、少し歩けばたどりつく、東桜会館周辺を散策するのもいいのではないだろうか。そこからさらに北へ向かえば、最近”文化の道”で有名になってきている地域にたどりつく。


見難い画像でごめんなさい。


2011年10月

目次
・第11回木工教室作品展
・良くない材も楽しめる
・JET集塵機が壊れた!
・関西人の名古屋界隈事情--- 長良川鉄道 ---

◆ 第11回木工教室作品展 ◆

今年も100点以上の作品を工房とギャラリーで展示します。開場時間は下記のとおりです。

10月28日(金) 13:00-18:00
10月29日(土) 10:00-18:00
10月30日(日) 10:00-17:00

◆ 良くない材も楽しめる ◆

 ウチの教材は、25mmから35mm程度に製材された材をある程度まとめて仕入れています。厚く広い板から切り出して作品を作れば、すばらしいものになるとは思いますが、教室で複数の生徒さん用に材料を準備するのは、人工乾燥された規格材でないと難しいです。

 教材とは言え、使うときにはどうしてもクセのない材から使われていきます。だから、どうしようもないような、”悪い”材が残ってきます。立場上、私がそれをできるだけ使うことになるわけです。下の材、左がブラックウォールナット、右がブラックチェリーです。シラタだらけの表皮のすぐ内側という感じ。こういう誰も選ばないような材ではありますが、意外と面白みがあったりします。

長く細い材をとるとき、皆さんはどうされているでしょうか?日本は「最初に手押鉋」であることが多く、一方欧州では「まずバンドソウ」です。材は乾燥の過程で、水分が多かった外側にひきつられるような力が内包されていることが多く、切断すると歪みますす。私はまずバンドソウでおおまかなサイズに切断することから製材をはじめます。おっと、ジグソウを忘れていました。バンドソウの前にジグソウや手鋸で両端木口を切断しています。

こんな風に、長い定規で直線を引き、それにそってフリーハンドで挽き割るわけです。材の端を持って、豪快にまっすぐ進んでいく方が、コチョコチョ動かすよりも正確に切断できます。下の写真は、ブラックウォールナットの材を挽き割っている時の写真ですが、半分くらい切った段階で、すでに幅で1センチ、上下方向でも5mm以上の段差ができていて、挽き曲がりが大きいのがわかります。余談ですが、バンドソウはフェンスを使わず、フリーハンドで使うのが基本です。もしこれくらい動く材をフェンスを使って切断すると、帯鋸の刃を1cmほども横から押すことになってしまいます。

このような材を手押鉋や自動鉋で平面を出してから挽き割った場合、再度曲がりやひねりを修正しなければならず、材はもちろん、時間と手間のロスを増やすことになります。特にシラタが混じった材では、乾燥過程で生じた内部応力が大きいことが多いです。ただし、あまり細く割ってしまうと始末が悪いので、細い材をとる場合でも、幅6センチ〜10センチくらいに引き割ってから製材、それから再度割る方がトータルな効率は上がります。具体的なカットや製材の手順は、板の厚みや曲がり具合、木目の流れなどを見て、夫々の材に応じて決めます。「これが鉄則」というものはありませんが、一般に板目なら、板目の中心あたりで割ってやると、かなり狂いが出て、次の製材段階では狂いができくくなるようです。柾目は動きが少ないかというと、そうではなく、逆にシラタ側のツッパリがきつく、割っても割っても曲がりがでる材もあります。

さて、下の写真は、ヨメさんに頼まれた家用の衣類掛け。シラタ混じりのブラックウォールナットがグラデーションとなり、いい味だしている、そう思いませんか?ブラックウォールナットの濃い茶色はもちろん美しいですが、シラタが入った、やや紫を帯びたような色合いもなかなかです。

 高級な欠点の少ない材ではなく、ひょっとしたら捨てられる運命にあるような材も、磨けば光ることがあります。こういうのも木工の醍醐味の一つかもしれません。

(追記)

 後日、「山野オルガン」の山野さんから、欧州での縦挽きの方法について、下記のコメントをいただきました。長いスライドテーブル付き横切り盤が普及しているドイツの工房では、バンドソウではなく、これで挽き割りを行うとのことです。以下は、山野さんからのコメントです。

ドイツなど、スライドテーブル付き横切盤を使用している工房では、
板材で木端が直線でない場合、木目が斜めに走っているときなどの切り割り
には、バンドソーの利用は少ないと思います。私の使用スライドテーブルの
ストロークは2mまでですが、ドイツの木工房では、3mストロークを利用、
鋸刃は切り割り縦挽用の刃を使い、木端を直線で切り取ります。日本の横切
盤はモーターの出力が弱く、硬木の縦挽きに利用すると刃の回転が止まる。
私の安全ページに掲載している、ドイツの木工安全作業資料内に使用例が
紹介されています。「このWebサイトのセキュリティ証明書には問題がある」
と注意が表示されるが、リンク先のPDFファイル、17頁、Laengssaegen -
Besaeumen(縦挽き−縁切り)に掲載されています。もちろん、バンドソー
を利用する時もあるが、スライドテーブルで縦挽きするのが一般的。
日本の丸鋸盤(スライドテーブル付属でも)、モーター出力や、テーブル構
造が異なり、縦挽き利用は難しいと分かっております。バンドソーの利用を
解説されますのは、日本では正解だとは思います。

◆ JET集塵機が壊れた! ◆

 昨年12月のホームページで、JETのDC500集塵機が小型軽量でありながら、木工機械一台では充分な風量があるとレポートしました。気に入って2台使っているのですが、そのうちの一台が7月頃から異音を発するようになっていました。それが9月中旬には、臭い焼けたような匂いまでするようになり、使用を中止しました。

 何か木片でも挟まっているのではないかと、本体をあけてみましたが、別に問題はないようです。しかし、組み立てて、回転させるとやはり異音がします。もう一度あけて、よく見ると、ファン(エンペラー)の円盤状基部にヒビが入っており、回転するとファンの遠心力で基部が反り、本体と接触、摩擦してプラスチックが溶けているようです。その痕跡が本体側にありました。

 定価で20000円弱、セールで16800円?だったかな、そんな値段だから、仕方がないかもしれませんが、このままでは文字通り「安物買いの銭失い」になってしまいます。お金のこともですが、壊れた機械を処分する方が面倒です。それで、ダメ元で、修理してみることにしました。遠心力でファンが外側に倒れないよう、針金でファンをくくる作戦です。鋸でファンの先端付近に1mmほど切れ目を入れ、その溝に針金を入れながら一周させて縛りました。あとは外れないようにエポキシコーキング剤で固めました。

 なんとも不細工ではあります。また木屑が針金にひっかることもありそうで不安ですが、今のところとりあえず解決しました。やれやれです。というのは、500W以下でそこそこ風量がある手軽な集塵機は他にないからです。とはいえ、この機械の設計があまりに貧弱なのではないかという思いがつのります。そんな折、教室の生徒さんから「まだ保障期間ではないですか?」と指摘されました。そうだ、まだ一年も経ってない!。それでオフさんへ連絡し、丈夫なファンがあれば問題ないわけですので、その旨を伝え、交換用に新しいファンを送ってもらいました。

 届いた新しいファンにヒビは入っていません。これで大丈夫なのか、はたまた、同じように運転中に経年変化でヒビが入るのかどうかわかりません。心臓部ともいえる、この部品は金属製が望ましいでしょう。でもそれだとモーターパワーがもっと必要なのかもしれません。不安は残りますが、とりあえずスペアのファンが確保でき、少し安心しました。

 2万円の集塵機が1年でダメになるのと、9万円の国産集塵機を10年使うのとではどちらが良いか、冷静に考えれば答えははっきりしています。たとえば日立工機のRW200Sという集塵機は一馬力の誘導モーターで充分な風量があります。でも9万円近い金額、気軽に買えません。日本の複雑な流通経路での卸や販売店等、複数のマージンがなければアマチュアの方でも買える値段になると思うのですが・・・。

◆ 長良川鉄道 ◆

 自転車で走るというより、旅をするような感覚で自転車を楽しみようになって久しい。9月のある日、美濃市駅から長良川鉄道に自転車を持ち込み郡上八幡へ。そこから長良川に沿って美濃市まで走って帰ってきた。その際、長良川鉄道が印象的だった。

「うだつのあがる街並み」で有名な美濃市駅。駅舎の中にサイクルステーションがあって、自転車が借りれるようだ。ここから郡上八幡まで920円。ちょっと高いけど、まあいいか。切符は硬い厚紙製で、昔懐かしい。一時間に一本ほど運行されている。

プラットホームの風情は、私の小学校、中学校くらいまでの原風景、そのものだ。今はほとんどの駅が陸橋部分だけになり、佇まいを感じさせる駅舎がなくなってしまった。40分ほど待ったが、時間が止まったようなゆるい感覚は、自動車での移動では決して得られない。列車の時間が近くなると、近所のお年寄りが数名ホームにあがってくる。やってきいた列車は一両で、後ろから乗って整理券を取り、下りる際に運転手さんのところで料金を入れるバスのような方式であった。

 30年ほど前、ファルトボートを担いで美濃立花の駅の降り立ち、カヤックを組み立て長良川を下ったことがある。その「美濃立花」駅は、今は「湯の洞温泉口」駅に名前が変わっている。そうそう、以前は国鉄だった。

 途中の「みなみ子宝温泉駅」で、おばちゃん達が下りた。長良川鉄道で行くと、ホームから直接入れる温泉施設の入場料が無料になるらしいのだ(入浴税50円は必要)。「駅にある温泉」ということで旅番組などでよく放映されている。

 中ほどの駅で、旅行社のバッジをつけた20名くらいの団体さんが乗ってきた。バス旅行でありながら、この昭和な列車を30分ほど体験できるツアーらしい。正直なところ団体旅行客は苦手である。一両の長良川の清流に沿って進む静かな列車に、ガヤガヤとした団体は似合わない。けど、こういうお客さんもいないと存続は難しいだろうなあ。

美濃市から約一時間で郡上八幡到着。やっぱり、昔の駅舎はいいなあ。今駅が新しくなると、ほとんどが陸橋の上に改札があるタイプ。無駄なスペースに見えるようで、駅の待合室や小さな売店、そこに集う学生さん、そういうコミュニティーがあったと思う。効率重視で何かが失われていく昨今、長良川鉄道のような、ホケーッとできる懐かしい鉄道をぜひ残してもらいたい。こういう駅舎を知らない若い人達にも、良さはわかると思う。


2011年9月

目次
・展示会の秋
・アコースティックギター
・関西人の名古屋界隈事情--- 携帯電話その後 ---

◆ 展示会の秋 ◆

私は参加しませんが、9月には大阪で「木の仕事展」(終了)、10月には名古屋で初めて「木の仕事展IN東海」が予定されており、こちらには参加する予定です。10月末にはウチの教室の作品展、東京の手考会作品展もあることでしょう。文化の秋、他にも多数の展示会が行われるようですので、カレンダーから目が離せません。

◆ アコースティックギター ◆

 毎月何か木工の話を書こうと思うのですが、硬い話が続きそうで、ちょっとお休みがほしくなりました。今月は高校生の時から今までに買って所有するギターを紹介しながら、どこかで木工につながる話ができればと思います。ギターに興味のない方、ごめんなさい。

 中学校の卒業謝恩会だったかな、そこでクラスの仲間とPPMの真似をしたのがギターを手にした最初で、使ったのは兄が買ってもらっていたヤマハのダイナミックギターという鉄弦をはったクラシックギターでした。高校に入ってからはサイモンガーファンクルのコピーから始まり、ジェームステイラーの真似もやってました。その頃、”アメリカ”は文句なしに憧れだったんですね。それはアメリカが日本のマスコミを通じて、親米ムードを作り上げたことの結果の一つだと思います。今は逆にアメリカの若者が日本を憧れていたりします。時代は変わったなあと思います。

 高一の時、お中元配送センターでアルバイトをし、そのお金で買ったギターが、写真のヤマハFG-180でした。JR垂水駅のショッピングセンター”たるせん”の中にあった小さなレコード店のお店にぶらさがっていたギターで定価18000円を16000円にしてくれました。ハードケースは後で買ったものです。FG180はヤマハが手がけた最初のマーチンタイプのフォークギター(当時はアコースティックギターではなく、フォークギターと呼ばれていた)で、ダイナミックギターの次モデルだったそうです。

 高校生の時というのは、競争意識がありまして、同じ学年の中で自分よりギターの上手い連中が沢山いて、ヤマハの5万円くらいのギターを持っていたので、当時は「負けた!」感がありました。ところが、このFG180、「イチハチ」が名機として名高くなってゆくとは思いませんでした。これは音叉マークですが、この以前にYAMAHAの文字がマークになったFG180があって、それが一番価値があるらしいです。そんなことになるとは夢にも思っていなかったので、ジェームステイラーの真似をして、ピックガードを剥がしてしまっています。これが元通りなら、オークションで8万円ぐらいで取引されているのを見たことがあります。

写真は今の別名となっている赤ラベル。トップはスプルース合板です。サウンドホールの断面を見れば合板か単板かわかります。バックとサイドはマホガニー合板。15歳で買ったので、43年前のギターというわけです。高校生の3年間、ガンガン弾きましたので、フレットがかなり減っているところはありますが、今でも非常に大きな音がします。多分今家にあるギターの中でダントツに前に出る音です。合板は安物のイメージがありますが、高価でないギターの場合、良質な合板の方が、耐久性も音も良いかもしれません。ヤマハの職人さんが、良い材料を使って丁寧に作った国産の一番いい頃ではないでしょうか。でも残念なことに、その良さに気づいたのは、もっともっと後のことでした。前述のフレットの磨耗以外、トラブルもありません。

 大学生になってからもギターは弾いていましたが、FG180の低音の量感やネックやボディーの形状に不満があって、憧れのマーチンギターがほしかったのです。しかし、高い。ある日元町の商店街を歩いていて、ピアノを売っている楽器店でヤイリのギターを見つけ、弾かせてもらいました。そのギター、低音が良く出たので、気に入りました。これまたアルバイトで稼いだお金で定価40000円を35000円で買いました。それが次の写真のギターです。


トップはスプルース単板、サイドバックはローズウッド(たぶん合板)です。当時はS.Yairiの方が評価が高かったのです。友人がS.yairiを持っていたので、弾かしてもらったら、確かにバランスがよくて高音がきれいただったという印象があります。気に入って買ったのですが、ボランティアで地域の障害のある子供たちとのクリスマス会か何かの行事でギターを弾いた時、ヤマハはガンガン音が出たのに、このヤイリは音が前に出ず、こもった小さな音だったのです。そうなんです、良い楽器というのは、弾いている人よりも聞いている人に音が届くのです。このことがあってから、このギターにちょっと嫌気がさし、働きだしてからマーチンを買ったこともあって、このギターは数年間甥っ子に貸していました。その甥がギターを弾かないからということで返ってきたのですが、どういうわけか、それから音がよく出るようになったのです。多分ケースに入れずに部屋に長期間放置されていたため、乾燥が進んだのではないかと思います。しかし、トップの板がブリッジ付近で盛り上がったり、ネックの逆反がおきて、少しビビリがでるようになっていました。これは数年前、岐阜のヤイリの工場に持ち込み、調整をしてもらい、今に至っています。ヤイリギターの初期であり、安定していなかったのかもしれません。

 ギターという楽器は、6本の弦をきつく張っています。それを細いネックと3mmほどの薄いトップの板で保持しているのです。だから、トップの板の下側に貼り付けるブレーシング材の配置や取り付け方法、そしてネックが反らないための、テンションロッドや金属アングル棒のなどの工夫が大切になってきます。ヤマハもヤイリもネックにはネジで調節するテンションロッドが入っています。しかし、このロッドをしめつけたからといって、反りが上手く治るというほど、簡単ではありません。その点、当時のマーチンギターは、中空の四角な金属製バーが埋め込んであり、調整不要でネックが反らないように工夫されていました。

 現在のアコースティックギターは、100%と言ってよいほど、米国マーチン社のギターをモデルにしています。ドレッドノートという大きなボディーを持つDタイプ、フィンガーピンキングに適したやや小型のOOOタイプなど、そしてXブレーシングという、トップに張られる力木の配置、弦長、ブリッジの構造など、マーチン社のデザインが標準となっています。なぜ、それほどマーチン社のギターが評価を得たのでしょうか。良質の材料のあって、優秀な木工職人の優れた技がそこにあったからだと言われています。


大学を卒業しサラリーマンとなって、ついに憧れのマーチンを入手しました。神戸元町一丁目に当時はロッコーマンがあって、そこでD-28とD-18を引き比べた結果、マホガニーの音が気に入って、一番シンプルなD-18にしたのです。D-18は材料的には決して最高のギターではありません。バックとサイドは中級ギターによく使われるマホガニーです。もちろん全て単板。昭和54年、1979年購入なので、今で32年ということになります。ほとんどトラブルはありませんが、唯一当時から欠点とされたピックガードの周囲がやや浮き上がってくる現象は、私マーチンでも見られます。憧れのマーチンを手に入れた感想は、正直言って際立って良い音がするわけではなかったです。しかし、コードを引いた時のバランスが優れていて6本の弦全体から塊となって、ボディーを回って音が出くる感じ、それはマーチン独特ではないかと今も思います。とにかく作りが丁寧です。あえて音でマーチンの弱いところは言うと、低音弦を高フレットで押さえた時の音が伸びないことでしょうか。しかし、とにかく、弾いていて気持ちの良いギターで、特に弦を張り替えてから一週間ほどの鳴りはすばらしいです。

余談ですが、マーチン社のホームページにはビデオギャラリー(Youtube)があって、その中で1939年のマーチンギター工場の様子を見ることができます。マーチンギターは今も評価が高いですが、戦前製作されたギターの最高とされています。優れた職人が落ち着いた様子でギターを、ゆったりと作っています。短いビデオながら、このような工場で憧れのマーチンギターが出来ていたのだなあと思うと感慨深いです。ただし、バイオリンなどと比べフレットがあるギターは、何百年も使える楽器ではなく、せいぜい100年程度の寿命ではないでしょうか。だから、最高と言われても、かなり古いビンテージ物のギターを入手するのは、かなりリスクがあると思います。

実はマーチンを買う前に、就職して初めてのボーナスでオベーションの建国記念モデル(マイク無モデル)を買っています。「限定生産だから貴重品になるかもしれない」という欲もあったんです。このギターはバックとサイドが特殊な樹脂でできていて、音がこもらないで前に出ます。実際鳴らしてみると、木製ボディーのギターとは全く違う音がします。ファンブレーシングという、クラシックギターと同じような力木の配置で、大きな音がでます。ストリートミュージシャンのような方には結構好まれるのではないでしょうか。今はほとんど弾きませんので、限定生産品のこのギターがほしい方、おられましたらメールをください。

 自分でもあきれますが、随分とギターにつぎ込んできたものです。名古屋に来て、約30年ぶりに日本の手工ギターを入手しました。東京のあるギターショップで海外のギターを弾いていたら、お店の人にすすめられたのが鷲見さんのギターでした。私も木工屋の端くれ、敬意を持って、鷲見さんの工房にお邪魔し、そこで”これでギターの打ち止め(多分?)”とバックとサイドがハカランダのOOO(トリプルO)タイプを入手しました。

 そんなにギターが上手いわけではないのに、こんな良いギターを持って・・・、楽器に気の毒です。だから一日10分でも弾くようにしています。最近はYoutubeでギターレッスンを見ることができたりします。長年ファンであるジェームステイラーのホームページには彼が直接ギターレッスンをするビデオへのリンクがあったりします。レコードをカセットテープに録音し、そのテープを回したり止めたりして、音を拾い出し、コピーをしていた時代を考えると、本当に便利な世の中になったものです。問題は指が段々動かなくなっていること。年齢による衰えには勝てません。

 良いギターは安くはありません。しかし、車のように経費がかかるわけでもなく、せいぜい弦の代金くらいですし、何より持つ喜びがあります。3mmほどの薄い板で作った木製品、それも何百キロもの力がかかるのに、40年も経過してなお心地良い音を出してくれるのです。今はギターブームですが、フォークブームが去ってから、長い間アコースティックギターは苦しい時代がありました。やっと陽があたる時代になりました。浅い一過性ブームに終わらないことを願っています。

◆ 携帯電話その後 ◆

 ブログでも書いたけれど、先月苦労の末、携帯電話をAUからDOCOMOの普通の携帯に変えた。実はヨメさんは前々から私のipodを気に入っており、この際思い切ってiphone4に乗り換えている。夏はさまざまなところへ旅行や登山をした。だから、SOFTBANKとDOCOMOの電波状況も、実感としてよくわかったし、携帯を購入契約する時の、多くの”ワナ”も見えた。その辺の事も含め、携帯電話を購入される方への参考意見をまとめてみた。

1、スマートホンは必要か?

 アンドロイドは店頭以外では使ったことがなく、iphoneによる評価だが、とにかく便利。ヨメさんはとてもとても気に入っている。ただし、インターネットを自宅でかなり使いこなしていないと、その利点をなかなか生かせないのではないか。長距離ドライブ中、メールチェック、渋滞情報、天気予報、ガソリンスタンドの場所と値段、近くの評判の良い飲食店、ホテル探し、ルート検索、観光地の見所情報、等々、助手席で調べまくっていた。だから、スマートフォンを買うなら、使い放題定額のコースに入った方がよい。

 しかし、あくまで年間で7万円超えの経費がかかることに納得できればの話である。外出前に充分調べてあれば、あとは現地で人に聞きながら行動した方が面白い場合もある。例えば食べログの飲食店評価は、アテにならないことが多くなっているし、現地の人とのコミュニケーションの方が大切な場合もあるだろう。また、携帯に電話とメールの機能しか求めない場合、スマートホンを買う必要は全くない。iphoneを片手で電話をかけることは私には難しいが、普通のガラケーは片手で電話ができる。また、電池がスマホは頻繁に使うと一日持たないくらいだが、私の携帯は数日は余裕でもつ。

 もう一点。パソコンが苦手の人は、パソコンに詳しい人が近くにいない場合、スマホはやめた方がよい。知人の奥様がiphoneを購入されたが、その設定他、大変難渋されている。ショップに持ち込んで助けてもらうことに抵抗がなければいいが、あまりよい気分はしないはずだ。少なくとも、自分でメールサーバー等の設定ができる人でないと、初期設定さえできない。

スマホを買うのをおすすめする人
・毎月7千円程度、あるいはそれ以上の金額を携帯電話会社に払ってもかまわない方。
・自宅に自分用パソコンがあって、メールの設定が自分でてきる方。
・頻繁にネットにアクセスし、複数のメールチェックをする必要がある方。

スマホはおすすめしない方
・携帯電話代はできるだけ少なくした方
・パソコントラブルなどなどややこしい事がきらいな方。
・毎日充電するのはめんどくさいという方。

2、ソフトバンクの電波状況はどうなのか?

 悪い悪いと聞いていた、ソフトバンク(S)の電波。この夏の経験では、予想以上に届いていた。たとえば上高地ではS=D(ドコモ)であったが、明神池ではS=D=X、両者ともダメで、なんと近くに居たAUの方は電話が通じていたようだ。木曽や長野はAUがいいのかも。山陰でもS=Dだったが、東北方面はD>Sの印象。 ただし、ソフトバンクの電波が通じない所では、ドコモもきびしいことが多く、ソフトバンクの電波が悪いというのは、誰かが仕かけたムード作り効果があるかもしれない。ヨメさんのiphoneで、電波が悪くて実用にならないと感じたことはほとんどなかった。圏外になっても少し走れば電波が通じる。

ソフトバンクの電波は言われているほど悪くないが、ドコモの方が繋がる率は高い。

3、携帯電話はどこで買うべきか?

 専門の各社携帯電話ショップは、総じて感じ悪い。一見対応がマシに見えても、契約などシビアな話になると、ワナがいっぱいでてくる。もしMNPをするなら、契約プロセスに入ってからは後戻りはできないので、MNP予約番号をもらうまでに、充分にどういう契約内容になるか確認する必要がある。セールストークに乗せられ、不要なオプションに入らされる危険性が大きくなる。今回AUでは真剣な話をしていないが、ドコモと同様だろう。不要なオプション強要などについては、意外とソフトバンクが少なく、契約はシンプルであった。

 家電量販店は、携帯ショップに比べ、あまりアクドイ感じはしないかった。もちろんオプション抱き合わせ商法はあるが、比較的サラッとしていた。この辺の事情は店によって異なるだろうから、最初は話を聞く程度で、複数の店の姿勢をチェックし、気の合いそうなショップを探すのがよい。ただし、電話機のデータの継承など技術的なフォローはあまり期待できないので、そのようなサービスがほしい場合は携帯ショップがおすすめ。

クドクド言われたくなかったら、家電量販店。ヘルプがほしければ携帯ショップ。

以上、あくまで私見です。ご参考まで。


2011年8月

目次
・トリマ使用で気をつけること
・ロス卒業式旅行記
・関西人の名古屋界隈事情--- 携帯・スマホ・なんじゃらほい ---

◆ トリマ使用で気をつけること ◆

 トリマは手軽で購入しやすく、木工を少しかじった方が最初に購入されることが多い電動工具です。実は私もそうでした。日立のM6トリマを買ったものの、ものすごい音がするし、うまく使えず、購入したことを後悔したことがあります。しかし、理屈がわかって使うなら、トリマは大変便利な電動工具です。今月はトリマ初心者の方が理解すべき点について、書いてみます。ただし、あくまで参考であり、実際の加工は全て自己責任でお願いします。

溝掘り(溝を突く)

溝を加工するのは、手道具では困難な作業で、手加工重視の基礎コースでも、溝はトリマを使って掘ることが多いです。この作業のポイントは、

1、沿わせて使う、定規のようなジグを使うこと。
フリーハンドで溝を切ることは現実的ではありません。様々なジグが考えられますが、まずは真っ直ぐな板をしっかりクランプで固定し、それに沿うようにトリマで加工してください。ルーターベースと刃の間隔は、合板等でスペーサーを作ってセッティングを能率アップすることも可能ですが、金尺を使ってベース端からビットの刃までの距離をはかり、ジグと墨線との間隔を正確に調整する方が広範囲に応用がききます(安全のため、調整時にはコンセントを抜いてください)ので、最初のうちはこの方法をおすすめします。

2、定規が左側なら、トリマを手前から向こうへと進めること
刃物(ビット)は本体から見て時計回りに回っています。このため、進行方向を逆にすると、ビットが木を切削する反動でジグから離れる力が働きます。ですから、必ず「ジグは左、手前から向こう」を守ってください。これは理屈をよく理解していないと、いつか失敗します。自分で考え、納得できるようにしてください。

3、ビットの選択
溝幅に合わせたビットを選ぶのが理想ですが、最初はトリマに付属している6mmのビットを使うことになるでしょう。6mmのビットは細いため、一度に深い切削をすると、ビットが振動して、段々と飛び出てきたり、ひどい場合は折れたりして危険です。6mmのビットでは深さ2mmぐらいずつ掘るようにします。針葉樹などの柔らかい木では5mmぐらい平気かもしれませんが、堅い木だと2mmずつ慎重に加工した方が安全で、早くて美しい加工ができます。切削音が軽い音ならいいですが、ギュイーンといようなトリマが泣いているような音は赤信号です。すぐ中止して、切削量を少なくしてください。

 6mmのビットで10mmの幅の溝を掘る場合、判断が難しいです。写真のような場合は、溝の墨の右端に合わせて6mmの溝を掘り、次に定規を左に移動させて溝の左側の墨線まで掘ります。二回目の加工の際も、定規に近い側を手前から向こうへ切削するようにします。この理屈も、自分で考えて理解してください。理解できない場合は、きびしいようですが、トリマを使う資格はないと考えてください。

段欠き加工

これがまた理解が難しいです。多くに方は、直径6mmのビットで5mmくらいを一度に切削して、木の端がバリバリになるのを経験するでしょう。下の図を見てください。直径6mmのビットで3mm切削する場合は、木の端では繊維を直角に削ることになり、木の端がバリバリとめくれます。切削量を2mmにしても70度の角度で切ることになり、1mmでも48度、0.5mmにしてようやく33度で切ることになるわけです。いろんな場合がありますが、大雑把に言って、ビットの直径の5分の1くらいずつ切削すれば、比較的うまくいくようです。6mmのビットなら1mm、10mmなら2mm程度。ただし、大きな径のビットを使う場合でも、一度に3mm程度の切削にとどめます。深さ方向の切削量とも関係しますので、実際の加工状況や材質などをよく検討し、まずは少ない切削量で試してください。

 額縁などで5mm程度の段欠き加工をしようとすれば、例えば直径15mm程度のストレートビットを用いて、2.5mmずつ二回に分けて加工するなどの方法が実際的です(もちろん昇降盤等による段欠き加工が一番速いです)。直径が大きくなると周回速度が増しますから、回転スピードを下げてやるのが望ましいです。したがって、段欠き加工をトリマで能率ようく行うなら、直径15mm程度のビットとともに回転数を下げることができるトリマが必要になってきます。残念ながら、国産ではその機能を持ったトリマは発売されていません。次の写真は、スペイン、ビルテックス社製FR192Nというトリマのビットと本体に付属しているベアリング部分のアップです。段欠き加工をするのに重宝しています。これは国内でも日本向けに正式販売されていますし、価格は33000円と国産トリマ+1万円ほどです。電子制御でソフトスタートや変速機能とともに、負荷が変化しても回転数が一定になるため、一定の速度でトリマを送っても、その回路がないトリマのように最初が焦げたりしにくいです。

 段欠き加工の場合も、進行方向が重要です。安全のためには、材料を左にして手前から向こうへと本体を送ります。この理屈もよく理解してください。実は、美しく速く加工するため、意識的にその反対方向に本体を送って加工する方法(ダウンカット)があるのですが、本体の反動や切削の重さなど、充分に理解していないと、大変危険で、ここではおすすめしません。

写真は生徒さんが上記のトリマを使って、幅5mm、深さ10mm程度の段欠き加工を行っているところです。深さは一回で、幅は2mmと3mmの二回に分けて加工しましたが、キレイにできています。写真右のホゾ穴手前のスジは、加工前に入れた鋸の切れ目です。ビットの刃で木が木目に沿って割れた場合でも、ここでワレが止まるように入れています。

 何度も言いますが、トリマを使う際には、ビットの回転によって、本体がどのような反動を受けるか、また木をどのように削っていくのかをよく理解する必要があります。このことがまだよく理解できていない方に、参考になれば幸いです。

◆ ロス卒業式旅行記 ◆

 6月に行ってきました、アメリカ西海岸ロサンゼルスとサンルイスへの旅を簡単に記録しました。木工と関係はありませんが、通常の観光旅行では経験できないようなこともあり、旅行記のひとつとして公開しました。

ロス卒業式旅行11

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 携帯・スマホ・なんじゃらほい --- ◆

 今のAUの携帯、電波帯の整理とかで、後一年で使えなくなる。そしてこの8月が唯一、悪名高い二年縛りの契約が、違約金なしに解約できる月なのだ。というのは、AUに電話で直接問い合わせたところ、来年7月まで今の携帯を使い、いよいよ電波が使えなくなり、自然解約となった場合も、二年縛りの一万円近い違約金が請求されるというのだ。なんちゅうこっちゃ!!。

 というわけで、携帯電話を他社に乗り換えるか、AUの無料で乗り換えられる携帯にするか、非常に迷っている昨今だ。そのうえ、ショップへ行くと、スマートホン全盛期で、普通の携帯の方が高かったりする。携帯会社としては、スマホがどんどん売れれば、毎月のデータ通信料金が一人6000円近くアップするわけで、「スマホを売れ!」の大号令がかかっているに違いない。

 スマホの火付け役はご存知iphoneである。特にiphone4が登場してから、その地位は不動のものになった。アンドロイドなど他のスマホを触れば触るほど、iphoneのできの良さがわかってくる。しかし、しかしである。誰に聞いてもソフトバンクは電波がつながらない所が多いという。「山や海へ遊びに行った時ぐらい、電話がかからない方がいいよ」という声もあるが、やっぱり、電話はつながらんとなあ・・・。

 ipod touchを愛用している。それと月270円〜3900円ほどのぷららのオプションのEMのWifiポケットルーター、”玉子”を持ち歩き、さらに6月アメリカでBlueteethで連携するGPSレシーバーを購入し、ほぼiphoneと同様の働きをさせている。したがって、現在は電話のためのAU携帯を含めると、写真の4つの機器を持ち歩くことになる(涙)。

 月々の費用は安いけれど、この機器をそろえるのに、結構お金がかかっているし、4つの電池の面倒も見てやらねばあかん。誰が考えても、iphoneの16GBを、実質機種代金0で入手する方が便利で賢いと言うだろう。

 へそ曲がりで意地を張るのもだいぶ疲れてきた。8月の解約月に、ドコモのらくらくホンにでもするか、iphoneとAUの二つ持ちか、はたまた本当のショボイAUの無料携帯で我慢するか・・・。携帯ショップの店員さんの話を聞いていると、ホント嫌になる。毎月の料金をいかに上げるか、そのワナばかりなのだ。Wifi末端の無料提供、ダブル定額、指定オプション、今なら○ヶ月基本料無料、・・・、複雑なトラップだらけの携帯料金体系。誰がこんな業界にしたのか?「携帯・スマホ、何ぼのもんや!!」「携帯・スマホ・なんじゃらほい!!!」。 冷静に考えても、携帯電話ショップでの契約は、如何にうまく月額料金を上げるか、ダマシの連続だ。こんな商売のやり方、いつまで続くんじゃろ?


2011年7月

目次
・手押鉋刃を機械装着のまま研磨する
・村上さんの椅子展
・関西人の名古屋界隈事情--- 小海町高原美術館と山行 ---

◆ 手押鉋刃を機械装着のまま研磨する ◆

 ひとりの工房では、機械のメンテナンスは大変重要な日常業務です。教えてもらっている間は、その大切さが、頭ではわかっても、体ではわからないです。本格的に自分の作品作りをしようとするなら、ある程度の基本を覚えた後は、小さくてもいいから自分で機械を購入し、それを使いこなしていかないと、いつまでもどこか人に頼った作品作りから抜け出せなくなります。自分で全責任を持って作ってみることで、いろいろとわかってくるのです。

 手押鉋と自動鉋の刃をよく切れる状態にしておくことは、最も大切な保守業務の一つではないでしょうか。特に、自動で材を送る自動鉋と違い、手押鉋は切れが止まると、材が跳ねて平面が出せなくなるだけではなく、危険が増します。しがたって、安全面、精度面、両面から、細い角材でも、その重みだけで削れるくらいの切れ味を維持する必要があるわけです。かといって、毎日毎日研磨に出すわけにはいきませんが、木工の古い教科書には毎朝油砥石で刃を研磨するということが書かれていますし、精密な加工を得意とする工房では実際にそうしているということです。私も小さな油砥石で、刃を研磨していましたが、角度の維持が難しく、苦労していました。そこで、ごく簡単な角度維持ジグを考えてみました。その結果がとてもよいので紹介します。

 ウチの手押鉋は太洋製で、メーカー指定の刃先角は50度です。刃を一番出た状態に固定して、角度定規で常盤との角度を測ってみると57度でした。したがって、逃げ角は7度ということになります(この数値はあまり正確ではありませんので、太洋の正確な設計角度などご存知の方おられましたら、教えていただけると幸いです)。ということは、砥石を水平より7度傾けた状態で研磨してやればいいということになります。それで、厚目の合板を83度で切断し、マグネットで固定し、それに沿わせるように油砥石で研磨するようにしてみたのです。

 上図はその模式図です。大抵の手押鉋盤では、刃が一番上に出た状態で固定できるような装置があると思いますが、無い場合は、カッターヘッドと本体との間に木の楔を入れて、図のように固定します。また砥石が完全な直方体である必要があります。私が今使っている砥石は、機械工だった親父が使っていた、海老印のアーカンサスストーンで、これは今手に入らないかもしれません。良いアーカンサス(アルカンと呼ばれていたらしい)は、堅くて変形しにくく、それでいて、大変鋭い刃がつきます。ナイフを売っているサイトなどで、このような小さなアルカンが売られていることがあるようです。合成の油砥石も使えると思いますが、減りが速いのと、油を吸わせるのに時間がかかる欠点があります。

 実際の写真です。角度保持のジグは、わざと刃と平行にせず、少し傾けていますが、これは、砥石の同じ所ばかりを使わないようにするためです。砥石にミシン油を少しつけ、丁寧に、また均等に研磨しています。現時点では仕上げ研ぎのみ行っています。刃先にこびりついた樹脂分をとってやるだけでも、切れ味が少し戻り、刃が長持ちする効果があるようです。しっかり研いでやると、使っていない両端の刃とあまり切れ味が変わりません。刃こぼれをするほど使った刃はやはり研磨に出す必要がありますが、多少切れなくなった程度ですとこれによって切れ味がかなり回復します。

 心配なのは、やはり刃先の直線性です。ですが、今使っているアーカンサスの油砥石を使い、全体を均一に研ぐようにすれば、実用上ほとんど問題がないようです。均一の研ぐというのは案外難しく、単純な往復運動だと中央部分が多く研磨されやすいので、両端部分を研ぐ回数を増やすなどの工夫が必要です。心配なら、刃先全体にマジックを塗り、それを等しく研磨するように練習するとよいでしょう。刃先だけではなく、しのぎ面全体を研磨していれば、次第にこの方法では切れ味が戻らなくなり、研磨に出すタイミングがわかります。

以上、あくまで私のところでの例です。試される場合は、自己責任でお願いします。

◆ 村上さんの椅子展 ◆

 かなり昔の話ですが、1991年発行の「別冊家庭画報」が家具とインテリア特集で、それを買って見ていると、拭き漆のウィンザーチェアに釘付けになりました。それが村上さんの椅子との衝撃的な出会いでした。よく見ると、ロクロで作った丸い脚が、ナイフで細かく削ってあるのでしょうか、刃物で削った独特の仕上げが施してありました。

 2003年に東京国立近代美術館工芸館で開催された「現代の木工家具展」で彼の椅子に実際に座ることができました。比べてみると村上さんの椅子のすわり心地は別格でした(あくまで私見)。また私が2004年にニューヨークへ行った際には、図々しくも村上さんにニューヨーク在住の木工家さんを紹介していただくなど、大変お世話になりました。その後も、幸運なことに、名古屋木工家ウィークの名古屋丸善での展示会などでは、裏の中華料理店などで親しくお話をさせていただきました。

村上さんのホームページ

 村上さんの椅子はもちろんですが、村上さんの人柄もまたすばらしい。誰とでも同じように、若輩者の私にも楽しそうに話をしていただきました。常々感じていることですが、作品には人柄が表れる、だから村上さんの椅子はファンが多いのだと思います。

 その村上さんが、諸事情により工房を閉じられることになり、下記のとおり東京で、たった二日間ではありますが、村上さんの代表的な椅子の展示会が行われます。お近くの方はぜひお運びください。以下はその案内のコピーです。

(7月3日追記:大変残念なことですが、この展示会は村上さんの遺作展となってしまいました。)


--- 展覧会情報 村上富朗の「木の椅子たち」展 ---

2011年7月17日(日)14:00〜19:00、7月18日(月・祭)12:00〜18:00

会場 LIGHT BOX STUDIO AOYAMA 2F
東京都港区青山5-16-7

入場無料 
問い合わせ先 レミングハウス 03-5754-3222

主催 村上富朗の仲間たち
展覧会実行委員 中村好文・小泉誠・佐藤重徳・入夏広親

現代日本を代表する木工作家・村上富朗は、27歳のときフィラデルフィアのカーペンターズホールでアメリカンウィンザーチェアの名品と出会い、大きな衝撃と感銘を受けました。この出会いがきっかけになり、村上富朗はアメリカンウィンザーチェアやシェーカーの家具を自分流にアレンジして製作するようになるのですが、すぐに、それだけでは飽きたらなくなり、自分自身のデザインによる木の椅子の製作に没頭するようになりました。以来30有余年、コツコツと作り続けた椅子は、およそ300脚にのぼるといいます。このたび、村上のライフワークともいえるその膨大な椅子の中から村上自身が選び抜いた30脚を展示し、ごらんいただくことになりました。1人の職人が長い年月を捧げ、愛情を込めてひたすら追求して来た「木の椅子」の魅力とはなんだったのでしょう?椅子好き、家具好き、職人仕事好きの友人知人をお誘い合わせの上、ぜひともお出掛けくださいますよう。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 小海町高原美術館と山行 --- ◆

 小海町高原美術館で「フィンランドと日本の生活デザイン展--木の椅子--」が7月3日まで開かれていて、出展者のお一人から招待状をもらっていた。アメリカ行きやらなんやらで忘れかけていたが、終了間際の6月29日にやっと行ってきた。この美術館、よくもこんな山奥にあるなあというくらい山奥にある。

 当日の見学者は私達夫婦だけだったので、ゆっくり展示されている日本の椅子に座ってみることができた。すわり心地がよいといううたい文句の椅子は私には合わなかったが、昔丹波のクラフトフェアで知り合ったMさんの椅子は、スタイルも座り心地も大変よかった。そういう実感は、展示会に行かないと判らない。またフィンランドの椅子は私好みのものが多かった。

 さて、椅子の展示会のためにだけ、信州の小海町まで行くのはもったいない。地図を見ると稲子湯のすぐ近くだ。20年くらい前かなあ、春雪の残るシーズンに、ひとりで稲子湯から登り、本沢温泉に泊まって日本最高所の露天風呂に入り、次の日は雪の天狗岳を越えて中山峠から稲子湯に戻ったことがあるのを思い出した。梅雨の晴れ間を狙い、天気がよければ、以前素通りして心残りがある、しらびそ小屋に泊まってもみたい。

 カミさんも一応登山ができる準備を整え、美術館へ行ったが、出てみると幸運にも天気は良い。「よし決行!」。というわけで、山があまり好きではないカミさんをなだめつつ、しらびそ小屋へたどりついた。知らなかったけど、しらびそ小屋は雑誌の表紙に載るような有名な小屋だ。ここも幸運にもお客は私達二人だけ。女主人とゆっくり話をしたり、リスやカモシカも見ることができて最高。次の日は本沢温泉の露天風呂だ。なんとここも私達だけ。カミさんも初めての山の露天風呂、それも日本最高所の露天風呂に入れてテンションは最高レベル。帰りは、しらびそ小屋の前で昨日はいなかった親子のカモシカも見ることができ、昼すぎに下山し、車に入った途端、雨が降り出した。なんというグッドタイミング。その後は、美術館横のヤッホーの湯で汗を流し、帰路についた。いやはや、ほんまに幸運な、展示会出張帰りの山行きだった。


2011年6月

目次
・コルクのサンディングブロック
・テーブルソウの駆動ベルト
・関西人の名古屋界隈事情--- 浜岡原発停止 ---

◆ コルクのサンディングブロック ◆

 仕上げ前にサンディングという作業は欠かせません。ツルツルに鉋で仕上がっていても、塗装する場合は塗料の吸い込みを均一にするために研磨をする(無塗装やワックスだけの仕上では鉋で終わる場合もある)ようにします。大きな面積では電動サンダーを使うこともありますが、最後は手で研磨する方が仕上がりがよいです。研磨作業は、ある程度平面を確保するために、アテ木に研磨紙を巻いて行ったり、写真のようなサンディングパッドやブロックを使って行います。

 左のハンドル付きはホームセンターで買ったもので、研磨紙を四つに切って固定して使います。天板などの広い面積を研磨するのに重宝しています。中央はゴム製、商品名はそのまま「アテゴム」で研磨紙の6つに切って、はさむタイプ。でも意外と平面がでていないのと、手で握ると曲がったりするので、どうも使い勝手に満足できていません。右は自家製コルクブロックで、アテゴムと同様に研磨紙を6つに切って使います(半分に切って、それ三つに切る)。最近私はこれが一番のお気に入りで、超簡単に作ることができます。

近くのホームセンターで厚さ3cmほどのコルクブロックが売っていたので、それを自分が好きな研磨紙のサイズに切って、写真のように胴突鋸で切れ目を入れて作りました。写真のこのブロックの大きさは、厚さ3cmX幅6cmX長さ7.5cmで、研磨紙1/6の端が7mmほど溝に入ります。

 研磨紙を装着するにはちょっとコツがいります。薄いものなら、片方を溝に突っ込み、ぐるっとまわして、残りをはめ込めばなんとかなるでしょう。ウチで使っているKOVAXのレジンペーパーはベースが堅いので、最初にブロックに巻いて、形をつけておき、写真のように、端から滑り込ませています。

 コルクブロックは入手しやすく、安くて軽い、それなのに必要な堅さがあって平面もしっかり出ています。両側の側面も幅3cmあって、狭いところの研磨に重宝します。サンディングブロックでお悩みの方は一度お試しください。

◆ テーブルソウの駆動ベルト ◆

先日テーブルソウの手入れをしていて、ふと「このベルトが切れたら、どないしょう?」と不安になりました。ごく短いベルトは、縦に筋が入った、日本では”リブドベルト”などの名前で流通しているタイプのようです。自動車のタイミングベルトなどにも使われているらしく、薄い割りに接触面積が多くてスリップしないし、高速回転にも耐えられるとのこと。ところが、ウチのテーブルソウはもうメーカーが製造していない1995年製。16年も使っているから、ベルトがいつ切れてもおかしくない状態です。まだ切れそうにありませんが、切断に備えての予備を用意しておきたいと思ったわけです。

ベルトの名前や型番を見ると、フランスのHUTCHINSON社というメーカーのPolyVベルトで、型番が406J。ネットで調べても全く出てきません。日本の有名ベルトメーカーには、同じようなタイプのものはあるものの、どうも違うタイプだ。しつこくネットを検索していたら、フランスのHUTCHINSON社のホームページを発見し、そこでやっと日本でのコンタクト先を見つけた次第。

 ダメもとで電話をかけてみました。最初に対応していただいた方とお話し、どうも入手が困難だとあきらめていました。そうしたら、しばらくして先方から電話をいただき、詳しいサイズや溝の数、機械のメーカーや型番を聞かれたのです。電話の向こうで、フランス語で現地の技術の人に伝えておられる様子。そして「モノが特定できました」とのこと。二三日して留守中にFAXがあり、幸運にも日本に来るフランス人の技術者の方に、サンプルとして持ってきてもらったという連絡が入りました。

 それが写真右側のベルト。左は16年使っているベルト。右は新しいベルトを装着したところ。新品だからややテンションが高いが、問題なく動きました。全く商売にならない私の問い合わせに親身になって対応していただき感謝感激です。HUTCHINSON JAPANのK様、本当にありがとうございました。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 浜岡原発停止 --- ◆

 5月6日菅首相が静岡県御前崎市にある浜岡原子力発電所の全ての原子炉を停止するよう中部電力に要請、中部電力は5月中旬それに応じて原子炉を停止した。首相の停止要請に対し、専門家、学者、政治評論家はもちろん、一般の方のブログ等でもさまざまな意見が書かれている。自分は原子力の専門家でもないし、政治についてはどちらかというと無関心な方だと思うが、この事態以降”菅おろし”が加速しているように感じる。マスコミも菅さんに批判的な報道が多いが、一般の人達はどう感じているのだろうか?

福島原発の事故で、原子力発電の危険性について、次のことが実感として明らかになった。
・想定外の地震や津波などによって原子力発電所が破壊されることを想定しなければならない。
・原子炉の事故が起こった場合、対応が極めて困難であり、周辺地域に放射性物質が拡散し、広い範囲で長期間生活できなくなる。
・原子炉本体から放出された高濃度放射性廃棄物の中には極めて長期間放射能を失わない物質があり、半永久的な処理課題が残る。

 大地震や津波だけではなく、ミサイルや飛行機による自爆テロで原子炉が攻撃された場合でも、同様のことが起こりうる。そして原子炉の事故は火力発電所や化学工場の事故と違い、人間の手ではなんともならない要素がある。全く別格だ。そのことが福島原発の事故で痛いほどわかった。だから、普通に暮らしている一般の人は、「原発はこれ以上作ってもらいたくない。できれば全廃してほしい」と感じているはずだ。

 ところが「原発を停止要請したのは、日本の国力を弱めることにつながる」、「資源のない日本、事実上原子力発電に頼っていくしかない」など、浜岡原発停止要請に対する批判を繰り返している評論家も多い。専門家の先生が言うことだから、そういう側面はあるかもしれない。しかし、本当に原発に頼っていくしか、現実的発電手段はないのだろうか。岩波書店が出している「世界」という雑誌の今年1月号の特集が「原子力復興という危険な夢」であった。3.11前に書かれたその特集、その中のいくつかの論文が、震災にあわれた方でも読んでいただけるようにとの配慮から、以下のページで公開されている。

岩波書店「世界」

 その中のひとつ、「原子力のたそがれ」というのをダウンロードして読んでみた。マイケル・シュナイダー氏はエネルギーと原子力政策についてのコンサルタント機関の代表で、この論文は彼が昨年10月参議院院内会館で行った講演の内容を復元したものだ。ちょっと難しくてわからないところもあったが、ざっと読んだところ、原子力発電所建設のピークは1980年代で、それ以降廃止数が多くなっていること、また原子力発電所の建設コストが急激に上昇し、2010年には発電コストが太陽光発電よりも高くなっている、要するに経済的に見ても原子力発電のうまみは急激に減少しているというのである(詳しくはオリジナル原稿をお読みください)。

 本当に「原子力のたそがれ」なのかどうか、それはわからないが、論文中のデータは作為的に書かれたものではなく、実際の調査に基づいていると思われる。経済的にもうまみがなく、そして後世に渡って危険であり続ける原子力発電を、これからも続けるべきだという意見は、私には極めて不自然に思える。近未来に予想される巨大地震の危険なエリアの中心にある浜岡原発への停止要請は当然のことであり、それを批判している人やマスコミは、民意を離れ、何かしらの政治的意図を持って動いていると見るのが自然だろう。

 かなり前になるが、香川県の仁尾で「仁尾太陽博」が開かれた。塩田跡地に多数の太陽電池パネルを並べた太陽光発電施設のテーマパークだったが、実際には発電量が少なく、天候に左右され、また太陽電池につもりホコリによる発電能率の低下など、うまくいかなかったと聞いている。そんなこともあって、太陽光発電は実用性に乏しいダメなものと思い込んでいた。しかし、最近の自然エネルギーを利用した発電は、侮れなくなっているらしい。「原子力ありき」で日本は進んできたところがあるため、自然エネルギーによる安全な発電を必要以上に軽視してきたのではないだろうか。

 自分は太陽光ではなく、太陽熱発電の方が有望ではないかと感じる。子供の頃、虫眼鏡で太陽の光を集め、紙を焼いて遊んだことがあるだろう。この原理で、曲面鏡で太陽熱を集め、それを熱源として発電する方式である。もちろん太陽の出ている時しか発電しないわけだが、真夏の暑い時間帯のピーク電力を補助することは可能だろう。また海岸線の長い日本なら、海風陸風を利用しての風力発電も本腰を入れれば、今と違った評価になるにちがいない。もちろん太陽熱や風力だけではだめで、節約しながら石油・石炭・天然ガス等による火力発電をベースにする必要はある。残念ながら、現時点ではあくまで補助的発電手段でしかない。それでも、これらの発電施設は万が一壊れたり、廃墟となっても、その周囲20km圏内に人が住めなくなるようなことには決してならないし、今後その重要性が増してくることは間違いなさそうだ。

 今月は堅い話になってしまったが、写真は仕事の用事で出かけた静岡で立ち寄った、江戸時代から続くとろろ汁屋「丁子屋」と三保野松原の「羽衣の松」の老木。写真はないが、美しい海岸の松林や安倍川河口にある白い風力発電所の回る三枚の羽も美しかった。これらは浜岡原発から数十キロの圏内にある。


2011年5月

目次
・On Machineでバンドソウ刃研磨
・徒弟制度での教え方考
・関西人の名古屋界隈事情--- 春日井から犬山往復 ---

◆ On Machineでバンドソウ刃研磨 ◆

 木工教室の運営では、表には出ませんが、機械や刃物の整備にかなりの手間と神経を使っています。刃物については、チップソウはマキタの小型研磨機を使って自分で研磨、手押鉋刃は少し切れ味が落ちてきた段階で一回だけ自分で研ぎ、後は研磨屋さんに出す、自動鉋刃は研磨屋さんにお願いしています。デルタのバンドソウの刃は2000円程度の刃を使い捨てにしてきましたが、金沢のKWCさんが研磨機を自作されているの拝見し、以前から研磨機を作ってみたいと思っていました。理想は「刃をつけたままの研磨」で、それを目指したのですが、半分成功という結果に終わりました。

 研磨機のモーターは、自宅にあった古い扇風機を分解し、そこから取り出して使いました。写真を見てのとおり、スイッチも利用していますので、三段変速です(^^)。これは全くの試作品であり、電気的に問題があるかもしれません。感電事故があっても当方は責任を持ちませんので、真似をされる場合は、自己責任でお願いします。

 これをバンドソウのテーブルの上に置き、左右に動かすことで、刃を研磨しようというわけです。問題は、刃を正確に砥石の高さまで一コマずつ送る方法です。

上の写真のように、右側の斜めのピアノ線で刃を砥石の先端と同じ高さまで持ち上げ、そこを砥石が通って研磨する・・・はずだったのですが、残念ながら、そんなにうまくはいきませんでした。抵抗が多いし、充分な精度で刃を移動させることはこの方式ではもともと無理でした。

 他の方法、例えば小さなクランクで刃を持ち上げる方法も考えられますが、それでも砥石がわずかに当たるような位置に精度良く刃を送るのは極めて困難なように感じます。また各刃の微妙なバラつきに対応するためには、真っ直ぐに砥石を移動させるだけではなく、刃より少し離れて近づき、そこから刃に当てる”シャクル”ような動きをさせることが必要かもしれません。そのような動きを小学生の夏休み工作のようなこの装置でできるはずはなく、今回は手で刃を送ることにしました。手で送ることで微妙な力加減が可能になり、個々の刃の形状に応じて、砥石の当て方を変化させることができるというメリットもあります。

使用している刃は3TPIで長さ105インチですから、刃数は約300です。一個につき5秒かかるとすると1500秒、約25分かかることになります。実際にやってみると、休憩込みで30分ほどかかりました。

実際の研磨作業はこうです。
1、右手で目的の刃先を砥石より少し上に運び、そこに回転している砥石の先端を持ってくる。
  (ちょうどよい位置で止まるように木片を固定している)
2、次に刃を下に降ろして刃を研磨する。
3、刃を上にあげつつ、砥石を左に逃がす。

 この1,2,3を繰り返すわけです。難しいようですが段々慣れてきます。時々当ててはいけないところに砥石をあてたりしますが、この際あまり気にしません。正直、面倒でシンドイです。しかし30分間の我慢ですし、慣れれば20分ぐらいでできそうな感じです。あるいは、単純な板バネを使って、大体目的の位置にコマ送りすることができれば、手動とは言え、かなり能率化できると思います。

 肝心の切れ味ですが、予想に反し、とてもよかったです。よく切れて、なおかつ、刃の直進性が格段によくなりました。こんな不細工な装置で、肩や目も懲りますが、30分間辛抱すればこれだけ切れ味が良くなる、上出来です。素人細工でも役に立つとウレシイです。

(後日談)
調子に乗って、一度失敗している手押鉋刃を機械につけたまま、ルーターに回転砥石をつけて研磨する方法に再挑戦してみました。TageFrid氏の本で紹介されている方法です。かなり慎重にやったつもりだったのですが、今回もうまくいかず、刃を痛めてしまいました(涙)。手押鉋刃の研磨は今までどおり、小さなオイルストーンで地味にやるのが一番安全なようです。

◆ 徒弟制度での教え方考 ◆

木工教室をやっていると、自分は「教えすぎ」ではないかと思うことがあります。「教わる」ことが教室ですから当然かもしれませんが、わからないことを聞いて、その答えがすぐに与えられて解決できたことは、すぐに忘れてしまうことが多いのです。教室に限らず、時々いただく質問のメールでも、たとえば「この機械を買おうと思いますが、どのように思われますか?」というような、「それはアナタが決めることでしょう!」と言いたくなる例もあります。インターネットでわからないことは検索すればすぐに答えが見つかる時代の弊害でしょうか。

また「失敗することを過剰に恐れている」と思うことが多々あります。子供の頃からよく言われることですが、まさに「失敗は成功の始まり」なわけで、うまく行った時よりも失敗したことの方が役に立つことが多いのです。もちろん失敗したままではダメで、失敗した原因を深く追求して、それを改善しなければ意味はありません。トヨタさんの回し者ではありませんが、これが一番身につくことだと思います。ただし、安全に関することは、失敗が大怪我に結びつくので、絶対に失敗しないように、絶えず注意を喚起しなければなりません。本当は、小さな怪我ですむような失敗を体験すれば、二度と同じ過ちをしなくなるのですが、小さな怪我をデモンストレーションすることは不可能です。

私は弟子入りをした経験はありませんが、最近でも熟練の職人さんの仕事の教え方は「見て覚えろ」だそうです。例えば・・・

教室の場合
S:「鉋がうまくかかりません」
T:「刃に押されて、刃の前の方が膨れているのとちがうかな?」と下端定規やガラス板にこすりつけてそれを指摘する
徒弟制度の場合
師匠:「まだそんな鉋がけしとるんか!」
弟子:無言で内心(クソー、そんなん言うんやったら、ちゃんと教えてくれ!)
師匠:無言で(俺の鉋を見にこんかい!)と、道具箱をわざと仕事場に忘れておく。

落語のネタにありそうな筋ですが、弟子が師匠の鉋を盗み見て「どこが違うんやろ?」と必死で見、体で覚えないと身につかないことを、師匠は経験的に知っているわけです。この場合、台が膨れていると指摘されるのと、自力でそれを見つけるのとでは大違いです。「道具を見にこないヤツはアカン」と切り捨てるかもしれませんが、教室の場合は何度も同じ質問ができます。しかし、何度も同じ質問をするということは、全くわかっていない、わかろうとしていないということです。ある程度できる人には、一見冷たい対応が必要になる時期があるように思います。

以上、木工教室指導員のボヤキでした。 

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 春日井から犬山往復 --- ◆

楽しみと運動不足解消を兼ねてサイクリングを続けている。連休初日となった先月29日は、遠出はせず、近所で走っていなかった水道上のサイクリングロードを使って春日井から犬山まで往復してきた。往復約35km。

名古屋の水道水は結構飲める。それは木曽川の水を引いているからなのだ。木曽川の犬山付近で取水し、大きな水道管を埋め込んだ水道の道を通って春日井の浄水場へ、そして名古屋市内に命の水が供給されている。その水道管の上は管理用の車両だけが通行できる道と公園や自転車道が併設されているのである。これは尾張広域緑道と呼ぶらしい。

写真のように美しく整備された公園や歩道・自転車道が犬山までほぼ直線的に続いている。結構幅もあって、これだけの施設を持っている名古屋市の力を見せつけられる感じ。何はともあれ、この地下に埋まっている直径1mほどの大きなパイプによって、自分達は生きることができるわけだ。

途中何度も道路を渡らねばならないし、サイクリングとしては平坦で同じ風景が続き、やや単調ではあるが、犬山観光という目玉もあり、なかなか楽しいコースだ。


2011年4月

目次
・もっと危険な高速増殖炉
・JET DC-500 廃盤?
・関西人の名古屋界隈事情--- 神戸元町裏山、私の原点 ---

◆ もっと危険な高速増殖炉 ◆

 木工をテーマにしたこのホームページですが、東北関東大震災と福島原発のことについて連日報じられている昨今、ゆっくり木工のことを書く気になりません。特に福島原発について不安な思いが巡ります。自分は何もできないし、原子力発電に反対運動もしてこなかった。想定外の大きな津波により原発が破壊された今、現場の過酷な状況下で必死に動いていてくれる作業員さん達の活動がどうかよい結果をもたらしてくれるよう祈るだけです。

 原子力について詳しい知識があるわけではありませんが、化学が好きで、最初に入った会社が放射性医薬診断薬の製造販売の会社でした。当時国立の循環器専門病院を担当していて、ある日アメリカから帰国された著名な人工心臓の大家の先生に呼ばれ、「プルトニウムを入手したいのですが、日本での入手先を調べてほしい」との依頼を受けました。プルトニウムについて何も知らなかった私は会社に帰って製造のトップの方に「プルトニウムはどこで入手できるんですか?」と聞きました。そうしたら「戦略物資やから、まず手に入らないよ」と言われたのです。何も知らなかったことが恥ずかしく、後日本屋さんに行って岩波新書の「プルトニウムの恐怖」を買って読みました。このようなことがきっかけで、放射性物質の危険性に少し関心を持つことになりました。著書の詳しい内容は覚えていませんが、高木仁三郎さんは終始、原子炉での核反応で生じる物質中、半減期が2万年以上というプルトニウムの毒性を強く訴えておられていたと思います。ただ、むやみに心配することはよくないと思いますので、少しだけ放射能について書きます。

 地球上にある元素には、化学的性質が同じでありながら、質量が異なるものがあり、それが同位元素とよばれ、それらの中には不安定で、自然に崩壊して、安定な元素に変わるウランなどの元素があります。これらは崩壊時に放射線を放出、生物に悪影響を及ぼすことがあり、この力を「放射能」と呼びます。放射能を持つ物質が放射性物質であり、放射性物質は、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線という3種類の、いずれか、あるいは複数の放射線を放出します。

 γ線は、電磁波(電波)の一種で、物質を通り抜ける性質が強く、また遠くまで飛びます。ただし、通りぬけるので人体組織への影響は、他の二つにくらべ少ないとも言えます。体内に入れる放射性医薬品にはγ線を放出するものが適しています。
 β線の本体は電子です。物質を通りぬける力はγ線より少ないですが、生物組織への影響は大きくなります。今よくニュースで流れるヨー素131はβ線を放出しますが、それをうまく使って甲状腺疾患の治療に用いられることもあります。
 α線は、最も重い粒子で、ヘリウムの原子核です。このため、遠くへ飛びませんし、さえぎるのも簡単です。しかし、α線を放出する放射性物質が体内に入った場合、回りの組織に著しい影響を与えます。

 福島原発で検出された放射性プルトニウムは、α線を出す金属、人工的に作られた元素です。プルトニウム239は原子爆弾の原料として知られていて、核兵器にもなる恐い物質ですが、そのエネルギーを利用して、心臓ペースメーカーのエネルギー源として用いられることもあります。前述の大家の先生は、プルトニウムを燃やす”小型原子炉”とも言える、発電装置を人体に埋め込む研究をされていたのだと思います。高木氏はプルトニウムを「地球上で最も毒性が強い物質」と強調されています。プルトニウムは吸収されると容易に体外に出ず、また周囲の細胞に深刻なダメージを与えるα線を放出し、半減期が2万年以上という、現実的には放射能が永久になくならない物質だからです。完全に密閉できているなら問題ないとも言えますが、今回のように”想定外”のことが起きる可能性は否定できません。

 私は原子力発電が必要かどうかわかりません。資源が乏しい我国であり、また大気汚染のことなど考えると、原子力は大切なエネルギー源だと考えている方は多いようです。ただ、少量のウラン燃料で膨大なエネルギーを得ることができる原子力発電が、一度事故を起こすと人の手ではどうにもならないほどの危険性を持っていることは今回実証されました。高木氏は、そのような原子炉の中でも、使用済み燃料を再生できる、夢の様な「高速増殖炉」の極めて恐ろしい危険性について強く訴えています。

 というのは、高速増殖炉では、冷却剤に水ではなく、「ナトリウム」を使うからです。少し化学をかじった方なら、ご存知かと思いますが、金属ナトリウムは水と激しく反応します。高校生の時、化学の先生がゴマ粒ほどの大きさのナトリウムを水に浮かべてその反応を見せてくれたことがあります。瞬時に「パチン」と音がして、爆発してなくなりました。福島原発では冷却するため水や海水を注入していますが、高速増殖炉では、それは絶対にできないことです。要は暴走しだしたら、それを抑えるのは極めて困難な原子炉というわけで、素人の私でも高速増殖炉だけは作らないでほしいと思います。日本の高速増殖炉「もんじゅ」、今からでもおそくないから、廃炉にすべきだと思います。「もんじゅ」の設計に関わられた大前研一氏でさえ、「もんじゅは封印すべき」と言っているのです。ネット上でも、福島原発から先を見越して、”もんじゅ”の危険性について、多く語られているようです。

◆ JET DC-500 廃盤? ◆

 昨年12月に紹介しましたJET DC-500集塵機を、親しい木工家さんが入手しようと、オフ・コーポレーションさんのホームページを見たところ、「取扱終了」だったそうです。私も同社に直接電話で確認しましたが、「製造元で廃盤になり、取扱ができなくなりました。」との回答でした。500Wほどの電力で風量が充分なうえ、安くて使いやすく、私ももう一台買いたいと思っていたのに残念です。

 海外メーカーの製品だけに、いろいろ難しい事情はあるのでしょうが、もう少し長く扱ってもらいたいという気持ちがあります。JETの小型バンドソウは「在庫なし」になっていますし、安価で小型の手押自動兼用機は発売後まもなく販売中止となりました。同社に限らず、「これは良い」と思う商品を、育て上げていくような商売は、できないものでしょうか?。そういう意味では、日本の大工さんが使う、マキタ、日立、リョウビなどの電動工具は、問屋、小売店という販売、アフターサービス網が確立していて、複数のマージンで値段は高くなるけれど、長く使える安心感はありそうです。

 海外製電動工具で「これはいい!」と思った機械があったら、なくならないうちに早めにゲットしておくのがよいかもしれません。セカセカしていて、そういうのは好きではないですが・・・。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 神戸元町裏山、私の原点 --- ◆

 3月15日に高校の時の悪ガキ仲間と何十年かぶりに会って楽しくやった。その中の一人Mは、カナダのバンクーバーで主にマスコミ相手の仕事をする旅行社をやっていて、彼のお母さんが亡くなったので来日、その日程に合わせての集まりだった。が、「まさか、このような大震災が起ころうとは」、神戸の震災で実家をうしなった彼は、言葉もないほど驚いていた。とは言え、気心がしれた仲間とのひとときは大変楽しかった。悪ガキがそれぞれ、旅行社社長、女子高教頭、大病院院長、そして木工教室の校長兼教員兼工房整備員になっているのが面白い。場所は震災で焼けた板宿、同じ学年の元サッカー部主将の悪ガキがやっている居酒屋であった。

 翌朝、前々から一度この目で確かめたかった幼い頃の思い出の地へ行くことにした。神戸元町5丁目の裏通りで生まれた私は、そこで幼稚園まで過ごした。健在だったおばあちゃんに連れられ、よく裏山の「燈籠茶屋」まで登って、「塩茶」や「ぜんざい」を食べた思い出がボンヤリある。

 ホテルを出て元町通りを西へ歩き、3丁目あたりから花隈、県庁あたりを通り、庭園が有名な相楽園、そして山手短大のところから、急な上り坂となる。沢沿いの道を、山手短大の守衛さんや下山者の皆さんに挨拶されながら歩く。ここは毎朝登山される人が多数おられるのだ。グングン登ると、分岐点に公衆便所があって、その奥が燈籠茶屋であった。

建物は記憶とちょっと違うので、店主に聞いてみると、「前の空地にあったのを、何年か前の水害でこちらに移しました」とのこと。上の写真の大きな木の後ろに前の茶屋はあったらしい。そんなイメージだったと思う。

茶屋の中の壁には、「ヒヨコ登山会」の名簿がずらりと貼ってあり、入り口には登ってきた人が名前を書くノートが置いてある。それを集計しては、100回、1000回、10000回・・・、となると表彰されるらしい。本当に落ち着いた、浮ついたところのない、地元に愛されている毎日登山コースなのだ。そこで懐かしい味のコーヒーをいただいたが、後で調べたら、ここのトーストが結構おいしいらしい。これは次回のお楽しみだ。

 帰りは諏訪山経由とする。諏訪山は諏訪神社の奥の金星台や見晴らし台などがある公園だ。

こうして静かに眺める神戸元町の風景、これが1995年1月の大震災で大きな被害を受けた街なのだ。元町は地盤が固かったのか比較的被害は少なかったが堆積層の多い500mほど東の三宮界隈は、大きなビルが倒れていて大変な状況だった。東北の大津波による被害は信じられないほどの被害だけれど、この神戸のように、いつか静かに眺められる時が来ると信じている。

 ビーナスブリッジというループした空中の道を下ると外国人が金星を観察したという金星台や諏訪神社があり、その下には諏訪山公園がある。子供の時の記憶では、そこには動物のいない動物園の檻があった。説明にはその通りのことが書いてある。私が生まれる2年前に閉園となり、象の”諏訪子”は、歩いて王子動物園まで行ったのだそうだ。戦時中、ここに居た動物の多くは殺されたと聞いたことがある。悲しい話だ。

なんとなく檻の面影を残している遊具。

 元町に居た頃、けっして裕福ではなかったけれど、時々この燈籠茶屋まで歩いたり、三宮布引奥の川辺で飯盒炊爨をしたりと、お金をかけずに生活を楽しんでいたように思う。幼い時の記憶だけれど、どこかで、それらは自分の原点になっている。こういう思い出の地が、今もあることはとても幸せなことだと思った。


2011年3月

目次
・小工房用テーブルソウで良いのがない?!
・マキタの充電式ジグソウ
・関西人の名古屋界隈事情--- 選挙の後味 ---

◆ 小工房用テーブルソウで良いのがない?! ◆

 ある程度の大きさの家具を作る際、いくつかほしい木工機械があります。中でもテーブルソウは精密加工の要のような存在ではないでしょうか。教室で使っている小型のスライドテーブル付テーブルソウを見て、「どこで買えるの?」と聞かれることがしばしばあります。残念ながら今は存在しないドイツの会社が作ったもので、現在では入手不可能です。たとえ販売されていたとしても入手困難だと思いますし、欧州仕様なので日本の電源では本来使用できません。
 国内に目を向けてみますと、マキタや日立工機で販売されている大工さんが現場に持ち込むことを想定した、例えばマキタ2703のような軽いテーブルソウを工夫しながら使うか(予算7万円くらい)、アメリカのデルタ社のテーブルソウ類似タイプ(10万円〜15万)を購入するかになるのではないでしょうか?しかし、デルタタイプは重さが100kg以上あり、誰でも気軽に買えるものではありません。その点ドイツFESTOOL社の丸鋸を組み合わせて使うテーブルソウはよさそうですが、値段は30万円以上(涙)。仕事ではなく木工品や家具を作る場合、一人で動かせないような重い機械は避けたいし、価格も安い方がよい。また、音が小さく、安全なものがほしいわけです。

 アマチュアに限らず、小さな工房で家具を作るためのテーブルソウとしての条件を、私なりに考えてみました。すべて満たすのは困難な、欲張りな条件ではあります。

 上記のような要求を満たすテーブルソウは、国内では見当たりません。しかし、外国には結構良さそうな機械があるようです。写真は英国で販売されているKity-419というテーブルソウで、現地の木工雑誌では、ハイレベルのアマチュアやセミプロ用として定評ある機種のようです。本体重量は25kgで、写真のセットは価格約600ポンド、ユーザーレポートなどを見る限り、ほぼ上記の条件を満たしていると思われます。

 この機械がほしくていろんなショップにメールを送り、見積依頼をしたのですが、どこも相手にしてくれませんでした(涙)。英国内の輸入代行業者を通せば入手できると思いますが、私が見積もりをとったところは、信じられないような手数料でしたので、あきらめました。あきらめた理由には電源のこともあります。英国は230V50Hzなので、西日本の200V60Hzだと、6割程度の出力しかでないことになるからです。昇圧トランスを使えば、実用上問題なく動くと思うのですが・・・。


Kity419(KITY-UK websitey より)

 次に日本へも大型木工機械を送ってくれそうなAxminsterのサイトで、Kity419に良く似たテーブルソウを見つけました。”Kity419のコピー商品”と見えなくもありません。これはTS200という機種で、Kity419より少し重くて本体40kg程度です。値段は信じられないほど安く、約300ポンド(現在350)。送料見積もりは総重量69kgで340ポンド、日本円にして合計約10万円。本体より高い送料を払ってまで入手する価値はあるのかと思い直し、手を出していません。もちろん、kityと同様に電源の問題もあります。誰か人柱になってくれないかなあ?後日、中国のサイトで販売している所を発見しましたが、コンテナ単位での販売で卸元と思われました。


TS200(Axminster-UK websiteより)

 先日Axminsterのサイトを見ていたら、最近マキタの新型テーブルソウMLT100が良く売れているらしいのです。このタイプ、日本はもちろん米国でも発売されていないようで、イギリスのニーズに合わせた新商品でしょうか。左側によくできたスライドテーブルがあって、三段引きスライドレールのような仕組みで、切断可能幅も結構大きく、右側テーブルも延長できる優れものです。重量は38kgで及第。上記二機種との大きな違いはブラシモーターであること。ただし、この機種は230Vと110Vのタイプが選べるメリットがあります。値段は300ポンド弱で、もしもマキタさんが日本でこれを発売したら、飛ぶように売れるんではないでしょうか?ルーターやトリマーも「米国で発売されているのに日本では取り扱いなし」という例がいくつもありますから、日本で発売されるとは思いません。大勢の要望があれば、動いてくれないかなあ???。ダメもとで、マキタさんへメールを送ってみてはいかかですか。YouTubeにも、実際に使っている動画があります。


MLT100(オーストラリア-Makita websiteより)

 国内の木工機械製造会社は、残念ながら、激減しました。家具・木工業界の低迷と共にそうなったと思われます。戦後、家具業界が元気だった頃は、減価償却で経費として落とせるので、一千万円を越えるような高価な木工機械がよく売れたのだと思います。だから、儲からないアマチュアや小工房向け木工機械は、開発されなかったのでしょう。しかしながら昨今、趣味で木工を楽しまれる方や小さな工房で家具を作っている方は、着実に増えています。だから、木工機械屋さんには、ぜひ小工房向けの木工機械を開発してほしいです。また、木工機械輸入業者さんも、プロばかりををターゲットにせず、アマチュアも手が出せるような木工機械の取り扱いを考えてもらえないでしょうか?例えばKity419を単相100Vか200Vで動くようにして販売すれば、結構売れると思います。軽くて性能のよいテーブルソウがあれば、今やアマチュアの方が購買力があるのです。もしも、このような小型テーブルソウの開発、あるいは輸入販売を考えておられる個人様や会社様がありましたら、ぜひご連絡ください。微力ながら応援をさせていただきます。

◆ マキタの充電式ジグソウ ◆

 上記テーブルソウの件で、マキタさんを刺激するわけではないですが、同社の充電ジグソウを買いましたので、その印象をレポートします。「ジグソウは必要なし」とおっしゃられる方もおられますが、私の教室での使用頻度は非常に高いです。製材されていない材木の切断が主な用途ですが、細い刃をつけて組み手の荒取りにも使います。仕上切断用刃を使えば、チップソウなみの切断面を得ることができますし、厚さ50mm以上の堅木を切断できる刃もあります。刃のもちはかなり良いです。

 今回購入したのは14.4Vタイプです。本体のみで27000円弱でした。18Vタイプもあるようですが、さまざまな充電工具で電池BL1430が共用できる14.4Vが現在のところベストの選択だと思います。実際に使ってみると電池は結構重たい。これが18Vになるとさらに重たくなるし、100Vの機種に比べ非力であることは確かですから、やっぱり14.4Vでよいと思います。ボッシュタイプの刃が使え、オービタル機構(必須だと思う)、電子無断変速等の機能があります。ただし、刃の速度はハンドル下のボタンの押し具合で決まるため、慣れないとちょっとやりにくいです。100Vのジグソウのように、別にダイアルがあって速度が決められる方がいいです。

 道具無しに刃が交換できるのは、予想以上に便利でした。高速切断、仕上切断、曲線や細かい切断など、目的に応じて気軽に刃を交換することができるので、応用範囲が広がる感じです。

 下の写真は私がよく使う刃です。上から、高速切断:T144DF、高速仕上切断:T101D、仕上切断:T101B、曲線・細工:T101A0です。以前から使っている100Vのジグソウは荒材の切断用で、常時T144DFを付けています。ボッシュの方の話によるとこの刃は「アサリで切るタイプ」とのこと。確かに、キックバックも少なく、製材前の切断には安心して使うことができます。T101Dは複雑な刃の並び方(プログレッシブというらしい)をしており美しい高速切断ができますが、アサリが少ないため、材の切り終わりにキックバックを生じやすいです。

 充電ジグソウはやや非力なところはありますが、コードがついていない便利さや安心感は捨てがたいです。私はほとんどこれを使っています。ただし、一台目のジグソウとしては、やはり100Vタイプをおすすめします。最新のボッシュのジグソウでは、刃を垂直に保つための機構が備わった機種があり、より正確な切断ができるそうです。これなら、さらに精度の良い加工ができるかもしれません。そうなると、安全性は丸鋸よりも高いので、利用価値はより大きくなります。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 選挙の後味 --- ◆

 先月、全国的に有名になった名古屋市長、愛知県知事、名古屋市議会リコール是非のトリプル選挙があり、結果は皆さんご存知のとおり、河村&大村圧勝と市議会解散という結末に終わった。名古屋へ移り住んで11年目とは言え、選挙に関しては当地の事情がよくわからない。さらに今回の候補者は誰もイマイチな印象があったので、選挙に行くのを止めようかと思ったぐらい、誰に投票するか迷いに迷った。当選した河村氏は70%近い票を得たわけだが、彼に積極的に投票した人が7割というのではなく、「消去法で仕方なく投票した」方は多いのではないだろうか。

 河村氏について、「テレビによく出る、ドエライ名古屋弁の人」、ひたすら「市民税10%減税」を繰り返している人、というぐらいの印象しかない。それ以外、例えば、どういう人と交流があって、バックにどのような組織があるのか、また減税政策以外の目指す方向についても、恥ずかしいながら、ほとんど知識がなかった。知事選も同様である。前知事の神田氏がなんとなく安定感を感じさせる人だったのに対し、頼りなさそうな大村氏が登場した時には面食らった。けど投票日までの私の印象は、両氏とも大きな組織と関係を持たず、個人として頑張っているというものであった。少なくともテレビの映像からはそういうイメージを受けていた。

 「減税」と言われれば、誰だって反対はしない。「減税日本」と言われれば、聞こえがよい。本当にそれだけを目指しているなら・・・。というのは、選挙が終わった直後、河村氏と大村氏が小沢一郎氏を訪ね、親しく挨拶をしている映像が流された。もともと新進党や自由党の時には仲が良かったらしいけど、選挙前のマスコミ報道では、小沢氏と河村氏の交流についての情報は少なかった。現在灰色の小沢氏との仲が広く知れると、選挙運動にマイナス要素が加わると思うのはごく自然な考え方だ。選挙まではそういう姿勢は外に出さなかったと思うのは、私の勝手だろうか。

 とにかく、今回トリプル選挙の後味は良くない。名古屋に限らず、「減税」「児童手当」「高速道路無料化」など、誰もが反対しない、言わばおいしい餌を看板にし、当選後は予期せぬバック組織の思い通りというようなことが起きないようにすることが大切だ。両当選者が実際にどのような仕事をしてくれるのか、それを見て評価ができるほどの日数を経ずに、目前に名古屋市議会選挙がある。これもまた誰に入れたらよいか、迷うやろうなあ。


2011年2月

目次
・デルタ14インチバンドソウの改良
・関西人の名古屋界隈事情--- モバイル遍歴 ---

◆ デルタ14インチバンドソウの改良 ◆

 アマチュア時代からだと20年は使っている米国製デルタ14インチバンドソウ、そろそろ新しい機種に買い換えたいところではありますが、まだまだ使えるので、壊れるまでトコトン使ってやるつもりで、前々から不満のあった集塵ポートの改良と、後方延長テーブルを作りました。何かの参考になれば幸いです。

 後期のデルタバンドソウでは、集塵ポートの位置が変更になり、直径100mmのホースを直接取り付けられるようになっているみたいですが、ウチのは細い集塵ホースが申し訳程度につくだけで、木屑の多くは出放題の状態でした。それでJETの集塵機の直径100mmのホースを直接接続できるような、ポートを自作することにしました。その条件は下記のとおりです。

 この3つの条件を考え、また手持ちの資材をできるだけ活用するということで思いついたのが、写真のような構造です。

 台上部に固定した45度の板にホースを固定、そこからは簡単に取り外すことができる短いホースで、元あった集塵ポートを取り外した空間から集塵しようというものです。このホースはJETの集塵機の付属していた安物のホースで、使い道がなくて放置してあったもの。これが役に立つとは思いませんでした。これだけで、以前と比べ物にならないほど集塵効率が良くなりました。


(こんなふうに、上部の短いホースは簡単に抜き差しできます。)

しかし、テーブル直下の刃がむき出しになっており、生徒さんが無意識に手を突っ込む危険性があります。それで、カバーを作りました。

安全カバーなので、充分な強度が必要です。それで廃棄した家電の裏蓋についていた厚さ1mmの鉄板を曲げて作りました。これを元あった集塵ポートのネジでばね台座を挟んで固定しています。短いホースを取り外し、このカバーを手前に引けば、簡単にメンテナンスや刃の交換ができます。我ながら上手くいったと思います。写真にはありませんが、その後、スポンジ製スキマテープを貼り付け、スキマを塞ぎました。

写真左上のように、厚紙でモックアップを作り、それが問題なければ、鉄板に写して、金工用刃を付けたジグソウで切断し、万力に挟んで曲げました。ジグソウで鉄板を切るのは初めてでしたが、1mm程度なら実に快適でした。ジグソウ、何かと便利です。

次に、後方テーブルを作りました。前々からほしいと思っていたものの、リップフェンスの先の固定や、45度傾けるためのアイデアがうかばず、なかなか実現できませんでした。

ようやく、アイデアが浮かび、このようになりました。テーブル後方のコの字型アングルに穴をあけ、後方テーブルの支えとなる棒二本を、ルーズに固定します。あとは、テーブルを支える斜めの”つっかい棒”を所定の位置に入れているだけ。だから、テーブルを少し持ち上げれば、棒は簡単に取り外せます。もちろん支えのないテーブルに材料を載せることはできませんが、下の写真のように、そのまま45度テーブルを傾けることができます。

もうひとつ、細かい工夫です。デルタデルタバンドソウのテーブル中心にあるアルミのプレート、これが置いてあるだけなのです。一度浮いたこのプレートを刃がひっかけ、急停止したことがありました。事故にはならなかったですが、危なかったです。そこで、写真のように、薄い木製の板を真鍮ネジで取り付け、さらに、その裏に、額縁の裏板を止める金具を二個つけて、簡単には取れないようにしました。

 今までのところ、改良によるデメリットはでていません。集塵効率は大幅に改善され、一日何回も内部の掃除をしていたのがウソみたいです。前はテーブル下のベアリングのところに木屑が頻繁につまり、それが原因となって、ベアリングの寿命が極端に短くなっていたようです。改良後は、集塵ポートへの空気の流れができたみたいで、ベアリングのところに木屑がほとんどたまりません。これは予想外の効果でした。

 ここ二三年、良さそうなバンドソウが国内でも販売されています。でも、新しいのを買えば、このデルタが無駄になり、邪魔になります。だから、まだまだ修理しながら、末永く使ってやろうと思っています。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- モバイル遍歴 --- ◆

 フロッピー(死語?)のOSで動かすパソコンの時代、インターネットの前に”パソコン通信”という華やかな一時代があった。当時携帯電話を持っていなかったので、東京へ行った時に、向こうの人と会ったりするのに、パソコン通信のメールや書き込みを見て、会合の場所を知ったりしていた。それは自分にとっては画期的なことで、言わば自分専用の郵便箱を持ち歩いているのと同じだった。しかし、出先からパソコン通信にアクセスするのは容易ではなく、その頃から、何台ものモバイル機器を使ってきた。また通販をやっているので、注文メールを確認し、必要な返信メールを送る必要もある。そんなわけで、今月は骨董品のような、私のモバイル遍歴を紹介。

 写真左上は、ヒューレットパッカード社のHP200LXという名機である。ユーザーが集まり、英語しか使えないこの機械で日本語を使えるようにした、伝説の手のひらパソコンなのだ。本体メモリが2MBしかなく、そこにフリーソフトで日本語を使える環境を作り、パソコン通信にアクセスするためのソフトやオートパイロットという自動巡回ソフトを入れ、カードスロットにモデムカードを刺し、電話ボックスから、「ピーガー」という音をさせながら、アクセスしていた。007の映画に登場する古いスパイみたいで、電話ボックスの外から、怪しい人間に見られたことが何度かある。MSDOSという、呪文のようなコマンドを打ちながら操作していたなあ。

そのウチ、Windows3.1が登場し、まもなくWindows95が鳴り物入りでデヴューする。それと平行してWindowsCEという携帯末端用OSがでてきて、それを使った画面をタップするタイプは上段中央のカシオペアである。これは結構今風だったかも。でも文字入力がしんどいので、同じCEを使う、ヒューレットパッカードのJORNADA(下段左)を中古で入手。これを使って、ロシアのウラジオストックから、メールを見ていた。WindowsCE機の欠点は、電池がなくなると、メモリの中のデータが消えてしまうこと。使いづらかった。

WindowsXPになって、東芝の軽量ノートパソコン(写真には写っていない)を買った。これはよく海外へ持っていったけれど、メモリが250MBしかなく、動きが遅くなり、右上のパナソニックを買って、今も使っている。ただし、常時携行するにはノートパソコンは大きすぎる。通信手段は、現在はホテル等の無線LANがメインとなっているが、海外では電話回線しか使えない場合もある。

昨年末、ipod touch(下段中央)を買った。最初iphoneがほしかったのだが、使っている人に聞くと、毎月数千円かかるというし、ソフトバンクは地方でつながり難いという。そんな時、私が使っているプロバイダのぷららから、月270円〜最高3980円(オプション料金)で使えるイーモバイルのプランが登場した。いろいろ調査の上、それを使うことにした。ポケットWifiというカイロの小さいようなのをカバンに忍ばせておけば、無線LANを通じて、5台までパソコンなどを接続可能だという。ノートパソコンにも使えるし、ワテにはピッタリや。

さて、その結果は・・・・・・・・。

一言で言えば、「大正解!」。月270円の基本料は、長年機械的に維持してきたNIFTYを解約して、プラスマイナスゼロにできた。またメールチェックに限るなど節約すれば、その基本料金程度で維持することは可能だし、ファーストフードレストランなどの無線LANをうまく活用すれば、ネットも経済的に使える。そもそも、インターネットのサイトを常時見る必要はない。

そして、ipod touch。その性能に驚いた。こんなに薄く小さいカードのような末端が、今までのどのモバイル機器とも比較にならない機能を持ち、超便利だった。メモリーも32GBもあり、少し前のパソコン並。スイッチを入れてから情報へアクセスする速さはダントツ。モバイルにとどまらず、家では無線LANを利用して、メールチェック、天気予報、渋滞情報、料理方法を見るなどの生活情報を知るのに、メチャ活躍している。それだけではなく、Skypeを利用して電話をかけたり、さらにビデオ電話もできるのだ。無線LANの知識をお持ちの方は、iphone導入の前に、一度この方法を検討されるとよいかと。アップルのネットストアで定価(27800円)で買ったけれど、この性能を考えれば、高いとは決して思わない。

絶賛するipod touch(iphoneも同様)だが、私的には、その閉鎖性が気にかかる。何をするにもitune経由であり、アップル社の経営戦略に飲み込まれていく、恐さがある。もちろん、それを破るようなソフトもあるが、それに時間を費やすほど暇ではない。この件を除けば、これは本当に画期的で、究極のモバイル機器だと思う。

今月は「名古屋事情」ではなく、「モバイル事情」になってしまった。お許しを。


2011年1月

目次
・第十回木工教室作品展作品一覧と私的作品
・怪我の処置について---FWW記事から---
・関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋市中心部サイクリング ---

◆ 第十回木工教室作品展作品一覧と私的作品 ◆

昨年10月末に開催しました”第十回木工教室作品展”の作品の写真を掲載しました。
(写真の無断使用はご遠慮ください)

作品展2010

作品数は少ないですが、私の昨年度作品もごらんいただけます。

2010年作品集

◆ 怪我の処置について---FWW記事から--- ◆

 米国の木工雑誌Fine Wood Working No.216に、木工作業中の刃物による傷の応急処置について、救急外来で勤務された経験をお持ちで、現在はリタイヤされ木工を楽しまれているPartrick Sullivanさんという方が書かれた記事がありました。「怪我しないように注意する」ことが大切ですが、起きた時の対処法について正しい知識を持っていることはとても大切ですので、私が理解できる範囲で紹介します。また木工作業での切傷はほとんどの場合手で発生しますので、記事も手をメインとして記述されています。そのほか目に異物が入った時の処置についても書かれていますが、ここでは手の簡単な傷の処置についてのみ書きました。著作権の関係から、引用や図の掲載は避けていますので、私的感想文として読んでください。

市販されている救急処置セットではなく、オリジナルの救急処置セットを備える

 市販の救急セットは記載されている処置方法が間違っていることがあるので、その存在は忘れるべきだ。最近は優れた応急処置用医療品が開発されており、それらを含む自家製救急セットを作るのがよい。

救急セットの内容(日本の状況を考慮し抜粋)
伸縮性包帯 洗眼液(刺激の少ない目薬で代用可?) Tegaderm bandages(後述) バンドエイド 手術用ゴム手袋 拡大鏡 滅菌ガーゼ ハサミ テープ ピンセット

病院へ行くべきかの判断

・指先など、腱がない単純な組織は比較的簡単に自分で処置ができるが、関節周囲の損傷や腱・神経の損傷を含む場合は医療機関へ行くべし。
・皮下組織のダメージが大きくない1インチ(2.5cm)以内の単純な切り傷は、自分で処置できる場合が多い。
・機械に巻き込まれたような傷の場合は、組織や神経などの損傷が大きく、早急に病院へ。

比較的小さな刃物のよる切り傷の処置

1 石鹸と流水で傷を洗う

 感染を防ぐことが一番大切。通常、刃物や木についている微生物は深刻な病気の原因となる菌ではなく、ほとんどの感染は患者自身の皮膚に付いている細菌で起こる。これを防ぐ最も効果的な方法は、石鹸と清潔な水で洗うことである。ティッシュペーパーや布などで傷を拭くことは最もよくない。水道の流水と石鹸を使い、少なくとも1分間、傷を開けて充分に洗うこと。この間多少出血しても問題はない。その後、キレイなペーパータオルの上で手を乾かす。

2 5分間傷を指で押さえる

傷を洗浄した後、止血をする。キレイになった指で直接、傷の真上を5分間押さえ、血が固まるのを促す。この間、指をのけて傷をのぞき見すると、また出血する。必ず5分間中断せずにおさえること。

3 傷を閉じる

例えば3MのSteri-Stripsなどの最近医療用テープで傷を閉じる。(日本の3Mオンラインストアでも、ネクスケア”ステリストリップ”の名前で購入できるようです。また、オリジナル記事では、医療用の接着剤も使っています。)

4 傷の保護

最近、防水性の良いバンドエイドが発売されています。記事で紹介されていたのは、Tegadermという保護シートで、これは上記3MオンラインストアでNexcare  防水フィルムと名前で発売されいるのと同じと思われます。これだけで不安な場合は、伸縮性のある包帯を上に巻く。

以上、ごく簡単に紹介しましたが、流水と石鹸で傷を洗うこと、また指で直接押さえて止血することなど、私は目からウロコでした。ただし、くれぐれも素人療法で傷を悪化させたりすることがないよう、自己責任でお願いします。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 名古屋市中心部サイクリング --- ◆

 自転車でいろんな街や風景を楽しむようになって3年ほど。一度も地元コースの紹介をしたことがないので、新年にあたり名古屋中心部サイクリングでの風景をご紹介。住んでいる町でありながら、良く知っているようで知らない所は多い。自転車で回ると、また違う街に見えてくる。そこが楽しい。

名城公園で路駐する。平日でも午前中の一部を除けば、
無料で駐車可能。そこで自転車を出し、西側お堀を回る。
堀川沿いに下ってゆく。円頓寺商店街付近の古い街家の
残る道を通って、栄・伏見の雑踏へ。そこから、白河公園を
通って大須へ向かう。
大須観音は、スガキヤラーメンやういろのCMにも登場する
ので、ご存知の方も多いかな?
境内から続く大須商店街。レトロな雰囲気あり、エスニック
なムードありで、小さな店が並ぶ私好みの街。写真の商店
街に入ってすぐ左の店で団子を買って食べる。
さらに南へ行くと、東別院。浄土真宗の大きなお寺。
ドンドン南下し、有名な熱田神宮を回り込み、白鳥公園から
堀川沿いに再び北へ。昨年COP10が開かれた国際会議場。
さらに上がっていくと、材木屋さんがある尾頭橋に至る
少し西へ行き青山鉋店の前を通って、高架沿いに北へ行く
と・・・、レトロな松重閘門が見えてくる。新幹線の窓からも
見えるのでご存知の方も多いかな。

 他にも、名古屋港水族館のあるウォーターフロントを回るコース、愛知万博会場周辺コースなども、楽しいコースです。


2010年12月

目次
・板接ぎについて
・JETの集塵機DC-500他
・関西人の名古屋界隈事情--- ETC割引&EXPASA ---

◆ 板接ぎについて ◆

 ”板接ぎ”作業は、プロの木工屋さんにとっても、最も気をつかう作業ではないでしょうか。「ハギが切れる」、「接着剤の層”グルーライン”が見える」などのトラブルは、事後の修理が困難で、クレームとしてもとても嫌なものです。

 教室で多い板接ぎでのトラブルは、「グルーラインが見える」ことかもしれません。板接ぎの重要性を知ってトラブルを未然に防ぐ気配りが足りないことなど、経験不足もありますが、接着剤の塗り方に起因すると思われるトラブルが多いです。多くの木工書では、両面塗布ですり合わせ、接着剤を接ぎ面全面に完璧塗布することが求められていますが、塗布面積が広くなると塗布に時間がかかり、接着剤が堅くなって、いくら圧着しても余分なボンドが逃げていかず、その結果グルーラインが見えてしまうことになるようです。

 このような問題を起こさないようにするため、教室では次第に接着剤の塗り方を変えてきました。木工の先輩から見ると「こんなやり方ではダメだ」と言われそうですが、一つの方法として紹介してみます。この方法では全面にボンドがついているか不安は残りますが、接着剤が柔らかい間に圧着できるメリットは大きいと感じています。

教室での板接ぎ

 板接ぎは一度に3枚を限度とします。これ以上の枚数を一度に接着するのは時間がかかりすぎます。また、15cmほどの板を6枚接ぎあわせて90cmの天板を作る場合でも、3枚なら二回ですみます。ほとんどの場合、ビスケットを併用します。

  1. クランプ二本の上に板3枚を並べ、軽く押さえてみて、接ぎ面がピッタリつくことを注意深く確認する。
    端に近い部分や、ビスケットの溝の端にバリが残っていて、スキマを発生させることもある。
  2. 両側の板二枚を接ぎ面を上にしてクランプ上に立てる(倒れないように)。中央の板は寝かせておく。
    接ぎ面を傷つけないように充分注意する。
  3. ビスケット、木つち、クランプの金属部との間に入れる紙、ふき取り用のぬれた布、必要ならあて木など手元に用意する。
  4. 小さめのノズルをもつボンド容器(180グラム入りのホームセンターに売っているボンドの容器)で、ビスケット溝の両側上部にボンドをつける。
    多すぎないように注意。直径2〜3mmのボンドのひもを置く感じ。中央の板は両側にビスケットが入るので、塗りにくい。手で持ち上げたりして、手早く、そして確実に。
  5. 同じボンド容器で、板の幅約1cmあたり、直径約2mmのボンドのひもを置くように、両側の立てている板の接ぎ面にボンドを塗る。
    例えば、厚さ15mmの板では2本、25mm以上の厚さの板では3本、直径2mmのボンドのひもを置く感じ。中央の板の接ぎ面にはボンドを塗らない。ボンドの適正塗布量は、一平米あたり250g〜300gの製品が多く、上記の塗り方でほぼこの値になる。
  6. 立てた板の方に、ビスケットを挿入する。溝の中央に入っていない場合は、木つちで叩いて溝のほぼ中央に移動させる。
  7. 三枚の板を合わせる。水平状態でもよいし、垂直に立てて行ってもよい。
  8. 軽く二本のクランプをしめ、金属部とボンドが触れないように紙をはさむ。
  9. 上から1本、あるいは3本のクランプをかけ、圧着する(長い材の場合は、クランプの数を増やす)。

 上記は、いわゆる木工ボンドの場合の方法ですが、ウチで扱っているピーアイボンドの場合、ボンド容器ではなく、混合した紙コップからの塗布となります。この場合も片面塗布とし、接ぎ面に多い目にボンドを置いた後、櫛型のヘラ(市販のボンド用ヘラやプラスチック板で自作)で延ばして適正量を塗布します。「接ぎ面全面に塗ってすり合わせる」ことは大切なことですが、その間に水分が蒸発して、どんどん堅くなっていきます。この点、細いノズルから出したボンドをそのまま丸い糸状にしておくことで、表面積が減り、乾燥が遅くなり、より時間に余裕ができます。

以上、やり方自体は単純ですが、接ぎ面の精度を見る目、適正塗布量、堆積時間、均一な圧着作業等、実際にはかなり経験や繊細さを要求されます。経験の少ない方は、接着剤を入れず、接ぎ作業を本番と全く同じように行い、手順に慣れておくとよいです。

 木工教室では比較的小さな板を扱う場合が多いですし、これが「正しいやり方」とは考えていませんが、何かの参考になれば幸いです。また、もっと時間が稼げる接着剤、たとえばエポキシ系、湿気硬化型のウレタンボンド、ハネムーン型などを利用すれば、もっとゆっくり確実に作業ができるかもしれませんが、工夫をすれば、使いやすい水性の木工ボンドで充分な強度が得られると思います。

◆ JETの集塵機DC-500他 ◆

機械室に、地味ではありますが、新しい機械やパーツを導入しましたので、簡単にレポートします。ネットではあまり評判が出ていないようですので、購入を検討されている方の参考になればと思います。

集塵機 JET DC-500

 大きな木工現場では、おそらく集中集塵システムが備わっていると思います。「金属管を配管し、機械ごとにゲートを設け、大きな集塵機で木屑を一箇所に集め、サイクロンで木屑を分け、さらにフィルターを通して外気へ」という大規模な設備です。ですが、ウチのような小さな工房、特に手加工を大切にする木工教室では、それほどたくさんの木屑がでるわけではないし、機械の使用頻度も低いのです。それとアマチュア時代からの機械をできるだけ使っていまして、その流れで大半の機械は機械ごと個別に集塵するようになっています。個別集塵では、小さな集塵機が多数必要で電気容量が不足しやすいこと、ゴミ集めの手間がかかること、風量不足・・・等々の欠点があるわけですが、反面、常時大きな集塵機が作動することによる送風騒音に悩まされることがなく、また集塵ダクトでのつまりなどの心配や粉塵爆発などの危険も少なくなります。また、スイッチの工夫で木工機械に連動させて動作させることも簡単です。

 前置きが長くなりましたが、昇降盤の集塵用に長年使っていたマキタ410(一度ブラシを交換している)ですが、もう20年選手ですし、音も大きいので、新しい集塵機を探していました。この手の集塵機で大事なのは、真空圧ではなく、風量です。いろんな集塵機を見ていて気がついたのですが、消費電力と風量は比例するのではなく、意外にも電力が小さくても風量の大きな集塵機が存在します。例えば日立のRW200Sという集塵機、風量は20m3もありながら、電力は700W程度です。デルタ社と同様な1馬力モデルでは風量は19m3で電力1000W程度とのカタログ値です。カタログ値で見る限り、日立のRW200Sは大変効率がよく、またコンデンサ起動の誘導モーター使用で耐久性も良さそうです。しかし、ちょっと簡単に手が出ない値段です。

 実は半年ほど前に、P店からトライパワーの集塵機というのを買いましたが、とにかく完成度と使い勝手が悪く、集塵機の袋から粉塵がダダモレで健康にも悪そうなので、同店に改善を求めたところ、返品をすすめられ、工房から消えました。今回導入した集塵機は、それよりひとまわり能力が小さい、写真のJET DC-500です。オフコーポレーションさんから購入、送料込21000円です。

 米国Amazonでの評判を見ると、一人の人が酷評していましたので、心配しましたが、使ってみましたら、結構よくできています。組み立ては道具いらずで楽にできますし、集塵袋の脱着もワッカを機械の内側にはめるタイプで簡単です。風量は14m3で、カタログ上の消費電力は450Wと少ないです。ちなみにマキタ410の風量は8.7m3で電力1050Wですから、DC-500の風量はマキタ410の1.5倍あります。ただ、スイッチオンから、最大風量になるまで、数秒かかります。

 というわけで、アマチュア用の集塵機ではありますが、木工機械一台の集塵をするには十二分な性能であり、価格も安く、使いようによっては、重宝すると思います。消費電力が少ないので、起動時間をずらせば、ひとつのコンセントから集塵機と電動工具を動かすことができるのではないでしょうか。

スティールシティー角ノミ用ライザーブロック

 これまた地味な話です。ウチでは6.35mmの角ノミは、スティールシティーの卓上角ノミにマキタのサッシルーターの移動テーブルを組み合わせて使っていますが、ベースが高いため、長い角ノミ刃を使うことができませんでした。それで6cmアップするライザーブロック(2900円+送料)を購入してみました。全く問題なく組み込め、8mmの角ノミでも材料につっかえることなく、安心して使えるようになりました。地味なオプションですが、高さがほしい方にはおすすめです。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- ETC割引&EXPASA --- ◆

 今年は3回東京まで自動車で往復した。大阪から東京は遠いけど、名古屋からだと意外と近い。渋滞がなければ、休憩なしで3時間半ぐらい。しかし高速代が結構かかるので、一回目はETCカード3枚を酷使して、通勤割引を必死に使った。ところがカード3枚を使う努力があまり報われない気がする。それで、東京ICまでの高速料金をいろんなケースで調べてみた。

名古屋ICから東京ICまでの料金(通常料金は7100円)
1、カード3枚を酷使し通勤割引を最大限利用した場合----5000円前後
2、カード一枚で通常の通勤割引で走行した場合   ----6000円
3、深夜割引を利用した場合               ----3550円
4、平日夜間割引                      ----4950円

平日しか動けないので、土日割引1000円は使えない。なので、この四つを比較してみる。神経を使って二回も降りて入ることを考えると、カード一枚との差1000円はそれほど高くないようにも思える。深夜割引は一番安いけれど、0時から4時はこの歳では苦しい。そうすると、平日夜間割引というのが結構いい線いっているようだ。平日夜間割引は朝は4時〜6時、夜は20時〜24時の間に出入りすれば距離制限なく3割引なのだ。朝はちょっとしんどいけれど、帰りは楽勝の時間帯だ。

要するにいろんな割引制度ができて、通勤割引カード差し替えは、無駄な労力となる場合もある。カード三枚持って血眼になってUターンしていた私ではありますが、1000円ぐらいなら、ゆったり安心して走った方が精神に良さそう。

EXPASA

 話は変わる。この秋オープンした”EXPASA”と呼ばれる、高速道路の巨大サービスエリア、御在所、多賀、足柄に全部行った(^^;)。EXPASAとは、EX=超、PA=パーキングエリア、SA=サービスエリアを表した造語で、「従来のパーキングエリア、サービスエリアを超越した経由地ではなく目的地を目指した高速道路のサービス施設」だそうな。施設内には、老舗の飲食店が並んでいる。御在所SAでは、名古屋の地元でも高くて有名な「味噌煮込みうどんの山本屋」が入っていたり、足柄SAにはホテルもあった。結論を言う。私的には、EX=超、PA=パー(大阪弁でアホやというような意味)、SA=さ、要するに「超パーな施設」だと思う。

 私の根拠のない予想では、EXPASA、投資効果ほどの集客力アップはないと思われる。観光バスが沢山やってくるようなSAはどうもイマイチだし、名前が先行している老舗飲食店で高い食事をしようとも思わない。地元のおばちゃんがやっている長距離トラックの運ちゃんが愛用するようなマイナーなPAの方が、安くて美味しいものがあるのだ。そもそも、SAを目的地にするのは本末転倒。そのあたりの事情を、NEXCOのエライサン達は勘違いしているのではないだろうか。一方地方の特色ある「道の駅」は、なかなか面白い。立派な施設や有名店ではなく、何か「心意気」みたいな部分が人を集めるのだと思う。

写真は文と関係なく、神宮外苑の銀杏並木


2010年11月

目次
・第十回木工教室作品展終了
・関西人の名古屋界隈事情--- さぬきと瀬戸内 ---

◆ 第十回木工教室作品展終了 ◆

 季節外れの台風が心配された作品展でしたが、その影響はほとんどなく、無事終了しました。搬出後雨がふりだしましたが、会期中は予想外に天候に恵まれ、本当に幸運でした。

 まだ疲れがとれず、ゆっくりレポートを書く余力がありませんので、今月はスナップ写真をいくつか載せるだけにさせていただきます。作品数は120点で、技術的にもよりパワーアップしたように思いました。

ギャラリー
工房

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- さぬきと瀬戸内 --- ◆

 実家は神戸市の舞子。神戸元町の下町で幼稚園まで過ごし、その後結婚するまで神戸の西の端に近い舞子に住んでいた。舞子から淡路島は目の前で、一見手漕ぎボードでも渡れそうなのだが、潮の流れが速く、海難事故も多々あったと聞いている。明石から舟に乗れば30分ほど。そこに橋が架かる計画がでてきた頃、「夢の架け橋」と呼んでいた。その夢の架け橋が現実のものとなってかなりになるが、先日やっと渡ることができた。

 10月のとある日、若い頃に8年間営業で通った高松再訪と瀬戸内の小島を利用した催しを見るため一泊二日の旅行をした。平日しか動けない私達は、休日1000円高速を使うことができず、通勤割引を駆使するべく名古屋を4時半過ぎに出発。いつものように大阪神戸を通って、初めて淡路島へ架かる「夢の架け橋」に入った。運転しているので、まわりをよく見ることができないけど、垣間見る景色は、今まで知っている実家付近の風景とは全く異なり、サンフランシスコやストックホルムのような、海と街と坂の美しい風景だった。橋の一番高いところに絶景を見ることができるポイントを作ってほしかったなあ。

 あっという間についた淡路島。上はそのSAからの写真。でもやっぱり橋の上からの景色が忘れられない。特に自分が長年住んでいた所だけに、思い入れが大きい。淡路島についてからはどんどん走って鳴門大橋を通過。渦潮が見える。徳島に入ってからは高速で高松まですぐだ。名古屋から5時間少々、速いなあ。

 早速10時前に昔出張で使っていた宿に近い「うどんバカ一代」へ行く。高松市街のうどん店では最近評価が高いらしい。そこでブッカケうどんを食す。これがやっぱり美味い。ガツンとうまい。うどんだけでなく出汁も薄味で美味いのだ。それから今夜の宿の車を置いて、屋島、五剣山を回るサイクリングへ。途中、有名で大きなうどん店「山田家」で昼食。これまた美味い。表現方法が貧弱だけどウマイとしか書けない。とは言え、讃岐うどんのブーム以来、探せばうどんツアーの情報は山ほど見つかる、この辺で省略。かなり前の営業で通っていた時の話だけれど、高松のうどんは観光用ではなく、地元の人の生活に密着どころか、深く浸透している。だから、街中のどこにでもあるセルフうどん店に言っても、美味しいうどんが安く食べられる。地元の人は観光客が行くような有名店には行かず、かけうどん180円ぐらいの安いセルフのうどん店に通っているはずである。

 予定にはなかったが、地元でもらった地図で「ジョージナカシマ記念館」を発見。サイクリングの終点付近にあって、3時半頃入館。木工を始めた頃に憧れ、「木のこころ」を読んで影響され、大阪での大きな展示会も見たし、東京にあった「さぬき会館」のロビーで多くのナカシマの椅子に座ったこともある。その後、一枚板の家具に疑問を感じるようになって、北欧の機能的で軽くて明るい家具が好きになる。そして今、目の前にナカシマデザインではあるが桜製作所の高い技術で作られたナカシマの家具を見て、わたしはとても魅力を感じた。ナカシマという個人の木工家の持ち味を、数は多くはないだろうが量産していて、しっかりと商品になっているのに感心した。木工関係者の方は、機会があれば、一度見に行かれるとよいと思った。入館料500円と安いし、ナカシマの椅子の座ってゆっくりお茶を飲むこともできる。

 さて、ここは旅の情報源ではないので、二日目の話に入る。帰りと船の便数のことを考えて、高松からではなく宇野から直島へ行くことにした。早い目に宿を出て坂出経由で橋を渡り本州側へ。ここから宇野までの一般道が渋滞して予想以上に時間がかかる。宇野駅東の一日500円の駐車場に車を止め、自転車といっしょにフェリーに乗り込んだ。宇野から連絡線に乗って高松へ営業に来ていた昔が懐かしい。連絡船の窓から近くに見えていた陸地が直島だったと今やっとわかった。フェリーの船旅は、テンション上がるなあ。

 すぐに直島についた。朝食がまだなので、港の周りをうろうろし、小さな古い喫茶店の前でメニューを見ていたら、おっちゃんが話かけてきて、店に入らざるを得なくなる。正直、きちゃない(失礼お許しを)喫茶店であったが、500円のモーニングはなかなか良かったし、そこで島の人の生の声が聞けた。この芸術祭で島の人口の何倍もの人がやってきて、そこで上手くやった人、そうでない人、また島の一番美しい浜を独占開発したベネッセに対する評価、目のつけどころがすごいという話やそれに対する無力感みたいな部分・・・。美しい地中美術館やさまざまなアート企画、それを見る前に、このような地元の人の声を聞けたことはとてもよかった。浜辺の小さな漁村にある喫茶店だから、少々きちゃないけど、それはある意味自然だと思う。

 瀬戸内芸術祭についての感想は省略。人の評判を聞くよりも、自分の目で見て実際の空気を吸うことが一番だ。「百聞は一見にしかず」、ホンマにそうや。検索すれば、無数の旅行記が出てくるしね。

 自転車で島の南半分を巡った。北半分は三菱マテリアル直島精錬所だ。瀬戸内の小島は、おだやかな海に浮かぶ、美しく平和な所。ところが現実は、このような島が廃棄物の島になったり、大企業の精錬所になっていたりする。つつましい島の人々の生活は、大企業や巨大宗教などの大きなの資本に翻弄されてきたのだろうか。そう思うと、私はこの芸術祭を素直に楽しむことができなかった。あらためて見た瀬戸内の海は、本当に穏やかで、渥美半島で見る太平洋の荒々しさとは全く違っていた。瀬戸内と美しい小島、「これは宝だ」と感じた次第。

 夕方の船で直島から宇野へ戻り、そこから岡山ICを目指す。ところが、岡山市内がメチャ渋滞。京阪神からから高松の往復は淡路島ルートにかぎるようだ。6時間以上かかって、予定どおり24時をまわってから春日井ICを降り、深夜割引で無事帰宅。内容の濃い二日間だった。


2010年10月

目次
・第十回木工教室作品展
・BOSCHの変速トリマー
・関西人の名古屋界隈事情--- アウトドアショップ事情 ---

◆ 第十回木工教室作品展 ◆

木工教室作品展を今年も開催します。早いもので10回目となりました。ここ二三年、木の家具作りを仕事にされている多くの仲間と知りあい、名古屋の合同展示会などを通じて交流を深めました。同時に、家具を売っておられている方との立場の差、そして趣味の作品の持つ意味合が、見た目は同じ木の家具であっても、大きく違うことを痛感しました。売るためではなく、楽しみながら作られた家具や木の小物、それらはより自由で、より作者の気持ちを反映したものとなります。

売るために作られた物は、納期や価格など様々な制約をうけ、そのうえ一定の水準以上の仕上がりが求められます。このため、効率が重視され、不確実な方法よりもデザイン的にも技術的にもより安全な方向になりがちなのは仕方のないことです。この点、趣味の作品は恐いです。教室ですから、大きさや時間、機械といった限度はあっても、外部から制限される要素が圧倒的に少ないのです。だから、作者のアイデア、気持ち、イメージが率直に作品に表れます。プロレベルとは言えないまでも、技術的にも見応えのある作品も多く、アマチュアの方はもちろん、プロの方にも楽しんでいただけることと思います。

 10月29日(金)から三日間と短いですが、お近くに来られることがありましたら、ぜひお立ち寄りください。事前に連絡していただければ、できるだけ時間をあけて対応させていただきます。

◆ BOSCHの変速トリマー ◆

 内外にさまざまな問題をかかえる日本ですが、とにかく円高です。輸出企業は大変でしょうが、工具や機械を海外から買うにはチャンスです。それで、以前から目をつけていたBOSCHのトリマー(Bosch PR20EVSK Colt Variable-Speed Palm Router Kit)を二台購入しました。米国のTOOK KINGからで、一台約120ドル、二台で240ドル、それに送料が65ドルで計305ドルでした。二台で26000円ぐらいでしょうか。それに配達時税金が500円かかりました。注文から到着まで5日ほど、国内並の速さでした。

 趣味の木工では、手道具を使うのが楽しいですし、本筋だと考えています。しかし、溝を彫ったり、兆番の掘り込みをする場合など、手道具できれいに加工するのは極めて困難で、このような加工はルーターやトリマーに軍配があがると思います。中でも、片手で扱え価格も手が届きやすく、重切削をしなければ、トリマーはとても便利な電動工具です。ただ、トリマーを買った方の多くが悩まされるのが、ギュイーンという高い音。音が大きいだけではなく、音自体、恐怖感をあおります。工房では、主として日立とマキタのトリマーを使ってきました。その際、スピードコントローラーを併用することが多いのですが、トリマー専用ではないため、回転が安定せず、あまり使い勝手がよくありません。以前ビルテックス社のやや大型な変速トリマーを導入した時、変速機能のありがたさを痛感しました。

 さて。BOSCH社のこのトリマー、FWW誌の記事で評価が高く、また米Amazonのサイトのレヴューでも、かなり評判がよいようです。日本のメーカーのトリマーと比べ、きわだった特徴は電子制御で回転数が変えられることと、独特な微調整機構です。また樹脂製ベースではなく、合金製ということも大きな違いでしょう。

 ”トリマーキット”という名前から想像していたよりも、内容はシンプルです。トリマー本体、レンチ二本、ストレートガイド、これだけです。こんな大きなプラスチックケースは不要だと思いますが、これがあるおかげで、輸送中の破損など、少ないように思います。日本の電動工具では見たことがない大きなノイズフィルタが電源コードに付いています。

 コレットは1/4インチの6.35mmですが、日本ボッシュ製の変速機構がない同じタイプ(PMR500)の部品が流用できます。6mmコレットやさまざまなオプションがあり、工具販売店やTOOLS-GRさんで入手可能です。カーボンブラシも同じタイプだと思いますから、米国製でありながら、安心感があります。

まだ本格的に使っていませんが、簡単に第一印象を書いてみました。

(良)
・電子制御による変速はすばらしい。市販の電動工具用スピードコントローラーは、あまりスムースではありませんが、これはトリマーに特化しているのでしょう、とてもスムースです。
・9.5mmのストレートビットで溝を掘ってみました。速度ダイアルの数字が”3”ぐらいが丁度よく、回転音は心地よいものでした。
・ストレートガイドが日本製のそれよりも丈夫にできているように思いました。
・ベースを固定するレバーが使いやすい。
・慣れれば、微調整ができる。

(イマイチ?)
・期待したよりも、作りが雑な感じ。ベースの遊びなど。
・刃高微調整機構は面白いが、クセがあり、慣れないと使えない。
・テンプレートガイドなどが別売りである。(日本国内で購入可能)

 下は微調整機構の写真です。ベースの一部にボルトがあり、それを回すと本体のネジ付き溝の中を滑って微調整ができるわけです。が、そのためにはベースのレバーを緩め、ベースを回してネジを溝に押し付けながら微調整ノブを回す必要があり、これが結構面倒でした。

 とは言え、この変速トリマ、かなり使い勝手が良さそうです。同じ変速付きのビルテックス製トリマーに比べ、値段は半分以下です。私的には、”ビルテックス>=ボッシュ>マキタ、日立”という感じです。私は持っていませんが、刃高微調整機構だけならRYOBIのトリマの方がよさそうに思います。しかし、安定しスムースな変速機構は断然魅力的です。

 話は変わりますが、どの国内電動工具メーカーも、どういうわけか、ルーターやトリマーは米国だけ変速付きが発売されていたりします。日本国内の市場が小さいということでしょうか?あるいは、トリマーという機械の使用目的から、高速回転の方が都合よいと判断されているのでしょうか?。いろんな事情があるでしょうが、日本ボッシュさんには、ぜひこの変速タイプを国内でも発売してもらいたいです。 

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- アウトドアショップ事情 --- ◆

 9月の祝日、雨の中を運動不足解消を兼ね、栄の街歩きをしてきた。東京や大阪の方は信じられないでしょうが、休日は終日、平日でも午前中の数時間を除けば、名城公園や県庁周辺道路は、大手を振って路駐ができる。教室があって休日に休めない私、週半ばの祝日はその恩恵を受けることができる数少ないチャンスというわけ。

 県庁西庁舎駐車場近くの道路に駐車し、そこから大津通りを南に歩いてゆく。高速道路の下をくぐり、テレビ塔を遠くに見ながら歩いてゆくと、右手にアウトドアショップの”Patagonia”があるのを発見。まあ、別に用はないので、お店を素通りして、さらに南下する。今度はミズノなど多くのスポーツ用品店も入っている東急ハンズのビルを左に見てさらに進むと、錦の観覧車が見えてくる。と、そこには山道具の”IBS”があった。行きはここも素通り。

 栄の中心部に入っていく。栄の丸善を少し南に行くと、”好日山荘”がある。それを南下するとデザイン関係の催しがよくあるナディアパーク。そこには、”モンベル”が入っていて、ジュンク堂の本屋とともに私のお気に入りの場所である。さらに下って大須まで行って、チェザリでピザを食べて休憩。それから、元来た道を帰る。

 製図用品を買いにいったパルコには、さまざまなアウトドアショップが沢山入っている。さらに北に行くと、三越のラシックにもアウトドアブランドが沢山入っているフロアがある。それから、帰りにIBSに入ってみたら、山道具店というより、アウトドアブランドのショップの集合体みたいな店作りだった。

 最後に行きは素通りしたPatagoniaに入ってみた。このブランドは高いと知っていたけど、ホンマに高い。山用ジャケットが背広上下より高かったりする。「すぐれているから高い」というより、「高いから憧れる」ブランドに成り下がってはいないだろうか?

そうこうしているうちに車のところに帰ってきた。往復で5キロ少々の散歩だった。駐車料金もかからず、ウォーキングとショッピングが楽しめる、手頃な散歩コース。

 学生の頃、山道具屋さんは学生など、若い客が多かった。ところが、今や山道具屋の客層は、収入のある働き盛りの人や高齢の人なのだ。それも山の経験の少ない人が多いから、店員のアドバイスをよく聞く。ゴアテックスの雨具は良いけど、上下で3万円ぐらいするし、チタン製の食器は数千円だ。でも、「少しでも楽で安全に」ということで、ちょっとぐらい高くても良いものを買う、お店にとって良いお客さんが多い。

 私が学生の頃、モンベルが誕生した。カヌー屋で働いていた時、社長がカヌーの講習を受けに来ていたことがある。そのモンベル、今や日本のアウトドアブランドで名前を知らない人はいない大きな企業になった。この会社の製品は、比較的良くできていて、値段も手頃なものが多い。あくまで想像だけど、既存の流通経路に頼らない販売ルートで商売をしているように思う。自分もモンベル製をいくつか愛用しているが、唯一の難点は、「着ている人が多い」こと。でも、高級であることやブランドが大切ではない山やアウトドアでは、モンベルのやり方は正しいと思う。

 このように、栄周辺にはアウトドアブランドショップが目白押し。一方、名駅の地下にはアウトドアショップモールもあるし、駅の東には古くから山屋さん御用達の「駅前アルプス」がある。とにかく、山道具、アウトドアショップだらけという感じ。もう貧乏臭い山登りは終わった?!。


2010年9月

目次
・倣い加工あれこれ
・関西人の名古屋界隈事情--- 山で考えたこと ---

◆ 倣い加工あれこれ ◆

 久しぶりにルーターを使った倣い加工をしました。個人的な作品作りでは、あまり出番がない作業ですが、複雑な形の部材を多数作る場合にこの方法を使いますし、椅子をよく作られる方には必要な加工方法です。このような作業は、腕というよりも、機械や刃物の使いこなしが求められますので、自分で所有する機械や刃物を使用すべきだと考えています。

使用機材について:
理想は径1インチ以上の軸を持った縦軸成型盤ですが、重量級の高価な機械であり、刃物も高価であることから、プロであってもよほど加工頻度が多くないと導入に踏み切れません。特にアマチュアや小さな工房では、ルーターを利用しての加工が多くなります。

 さて、今回の様子を紹介します。今回作るのは、三日月型で、内側が波のようになったものです。目的の形は細くて加工が恐いので、今回は内側と外側を二段階で加工するジグを作りました。写真は加工用ジグで、部材を二つ置いて中央のネジを締めて固定するわけです。最初に”波”の加工をし、次にそれを基準として、外側のゆるい曲線を加工します。部材が正しい位置にくるように木片をいくつか配置していることに注目してください。灰色の紙はサンドペーパーで、部材が動きにくいようにしています。

 最初に、バンドソウで少し大きめに切ります。パターンを鉛筆でなぞって、その外側1mmほどのところを切ればよいわけですが、ゆるいカーブであれば、写真のような簡単なジグを使って、効率よく切ることができます。

 写真でわかると思いますが、ジグ木片の両端が刃の前後で少し飛び出していて、それ以上近づくことができないようになっています。急なカーブでは、うまくいきませんので、そのような場合は鉛筆でなぞって、それを見ながら切ります。今回も、内側の波型はそうしています。

 

次に、波の面をジグの所定の位置に置いて、3本のボルト&ナットで材を固定し、外側を加工していきます。

前述のバンドソウジグを使うと、きれいに約1mm大きめに切れています。それから、ベアリング付きビットをつけたルーターテーブルで加工しますが、直径19mm、刃長50mmほどの刃が高速で回転していてとても恐いので、写真のようなカバー兼集塵ポートを作って、作業をしています。これがあるのとないのとでは、安心感が全然違います。ただ、キックバックが起こった場合、カバーが飛んでしまうことも充分ありえますから、慎重に、右から左へ、方向を間違わないように送っていきます。特に、刃に材料を当てる時に飛ばされやすいので、刃が滑らかに材に当たるよう、パターンの形状を考えます。

安全のため、また美しい仕上がりのためには、一回の切削量が1mm以下となるようにしてください。経験上2mm以上の切削は大変恐いですし、モゲが大きく、端が欠けたりしやすいです。バンドソウでうまく切れていない場合は、大きく残っている部分をあらかじめノミで落としたり、ジグに固定する位置を少しずらせたりして、とにかく切削量を少なくします。

このルーターテーブルは、LeeValleyToolsから買った鉄板製のものです。中央がやや凸になっていて、ルーターをつけても下がらないといううたい文句ですが、その効果はよくわかりません。使い勝手もそれほどいいわけではなく、おすすめというほどではありません。ただ、板が薄いので、ルータービットが充分上に出てきます。

このビット、長く使っているために、切れがよくありません。さらに、柔らかいアルダー材なので、切削面はあまり美しくありません。特にベアリングに近い方が磨耗していて、その部分でより逆目が起こりやすくなっています。

このような逆目を防ぐには、よく切れることと、切削角を小さくして、材をむしり取らないようにすることが必要です。そのためには、より直径の大きなビットが好ましいわけです。大型の面取盤だと直径10cmほどの刃物を使うようなので、大変美しく加工ができることと思います。

外側のカーブを、バンドソウで切った様子です。どうせ鉋をかけるので、今回外側はルーターによる加工はせず、バンドソウだけですませました。

 今回の加工を終えて、長年大事に使ってきたTREND社のパターンビット、小さなダイヤモンド砥石で何度か研いだこともあり、そろそろ買い替えが必要なようです。それで、国内で入手可能な大径のパターンビットを調べてみました。

兼房の替刃式ビットもよさそうに思いますが、直径と刃長があまり大きくなく、値段が本体15000円以上。一枚刃であることからバランスは大丈夫か、また替刃の費用、ベアリングの消耗などを考えると、初期投資を替刃式でどれだけ回収できるかはわかりません。上記ビットの使用経験がおありの方おられましたら、使用感など教えていただけるとありがたいです。

 久しぶりの倣い加工の感想は、「やっぱり恐いな」でした。特に、細かい波型のカーブでは、必ず逆目を削ることになります。今回15本加工する間に、2本は逆目からの切削で凸部が欠けてしまいました。数が多くなければ、バンドソウで切って、すぐに鉋やペーパーで仕上る方法がよい場合も多そうです。新品の良く切れるビットなら、楽勝だったと思います。やっぱり刃物ですね。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 山で考えたこと --- ◆

 強い体力がある方ではないし、ボール運動が苦手。でも野外で遊ぶの好きで、大学では山岳部に入った。21歳の時に岩登りで事故を起こした。血気盛んな年頃でもあり、「どこでも登れるぞ」というような思い上がりがあった。その前には、初めての夏山合宿で、先輩が落石で大怪我をした。なんとかテントサイトまで下ろして、大町からやってきた県警のヘリで病院へ収容。訓練を重ね、計画の検討会を重ね、OB組織のバックアップのある山岳部であっても事故が起これば県警ヘリのお世話になる。

 今年、山岳遭難救助ヘリの墜落事故が重なった。マスコミの記事からしか事情はわからないが、なんと悲しい事故だろう。これらの事故は、山での遭難がなければ起こっていないことは、紛れもない事実である。特に日本の一般登山道としては最も危険とされるジャンダルム付近での事故は、その責任の一端が登山者にないとは言い切れないとの思いがある。

 最近は若い人も少し増えてきたけど、山は年配の人が多い。自分の体力・経験・能力を知って、無理のない行動をしている方もおられる一方、やたらと元気なリーダーが先頭に立ち、後ろからついてくるヘトヘトの人に「頑張れ」と尻を叩いているシニアパーティに出会うこともある。これは滅茶苦茶。リーダーは最後尾、一番体力のない人が二番目、先頭にはルートファインディングに長けたメンバーという原則さえ知らないのである。

 暗い話になってしまったけれど、シニアと呼ばれる年齢になったら、自分の能力を知って、他人様に迷惑をかけない登山をしなければならないと思う。そういう注意を充分にしていても事故は起きる。その場合、県警のヘリにお世話になることもあるだろう。しかし、「途中で動けなくなった」という状況で救助を要請するのは、どうかと思う。万が一の場合でも自分でなんとかするのが山の基本姿勢だからだ。

 夏の北アルプスの縦走路、私が大学生だった頃でも、アリの行列のように登山者が連なってやってくる。「こんにちは」ばっかりの一日だったりする。ところが、それはまだマシなことなのだと言う。夏の有名登山ルートには、旅行社が募集したツアー登山がどんどんやってくるという。道を譲っても礼も何も言わず、数十人の列、それも足元がしっかりしないで通過に時間がかかる・・・、を長時間待たねばならないことが頻発するらしい。旅行社のツアーには、自己責任という概念はないだろう。「お金払ってるんやから、リーダーがなんとかするやろ」。若いアルバイトツアーリーダーの苦労が目に浮かぶ。

 今夏、学生時代に温泉を横目で見ながら素通りした苗場の赤湯へ行って来た。赤湯から苗場山は高度差1000m以上でしんどそうだし、特に山頂へ行きたいとも思わなかったので、今回は温泉だけが目的だった。夏は廃墟と化している”苗場プリンスホテル”の前を通って、林道の終点まで車で行き、そこから二時間強の険しい山道を、「これでもか!」というほど登って降りてたどりついた赤湯。宿の方の親戚の子達、小学生の女の子三人が小さな犬といっしょに夏休みを過ごしていた。世代変わりした宿の女主人は、「これからも今までどおりの経営方針でやっていきます」と元気に言っておられた。無茶な開発と投資、昨今は集客が困難な苗場プリンスホテルと、36年前とそれほど変わらない赤湯のコントラストが印象に残った。

 必死こいて山頂を目指すことは、これから止めようと思う。学生の頃はお金もなく、テントに泊まっていたけれど、これからはその山道を守ってきた人達の話を聞くような山旅もしたい。また、多数の人が通るために起こる登山道の土壌流出も大きな問題だ。さらに人が多く集まる山では排泄物も特定の場所に集中するため、「お持ち帰り」運動も起こっている。でも、私はそこまでして山に登りたくはない。そんな問題が起こっていない山も沢山あるだろう。

余談。最近話題の「山スカート・山ガール」、批判もあるみたいだけど、私は全面的に悪いとは思わない。きっかけはファッションであっても、山登りをする中で、本当によろこびを感じることができれば、それはいいことだと思う。とは言え、足を上げることの多い山では、山スカートではなくショートパンツにタイツの方がいいし、それで充分かわいらしい。

赤湯「山口館」

一番大きな露天風呂「玉子湯」

宿の子供達の愛犬


2010年8月

目次
・ナイフは楽しい
・バンドクランプ
・関西人の名古屋界隈事情--- ストアブランドの功罪 ---

◆ ナイフは楽しい ◆

 今夏は暑い。暑いけど、何もしないでいるとよけいに暑い。それで教室時、空いた時間を利用して、数年前山で拾ってきた白樺の木(登山道の整備で伐採されていたもの)を割って、内側は丸いノミで、外側と柄はナイフだけでスプーンを作ってみました。簡単にとりかかれ実に楽しい作業でしたし、作りながらいろいろ考えることがありました。

 木材置き場の片隅に放置していた白樺には、ご覧のような黒い複雑な筋ができていました。このような模様は栃やメープルなどで見られ、本来は生きている間に、なんらかの原因で水が入り、菌が繁殖したり、またそこに樹液がたまったりしてできるそうです。このような杢はスポルテッドと呼ばれ珍重されています。しかし伐採後生じたものは単なる腐食で、あまり価値はないようです。でも、海外の木工家の中には、人為的に菌を繁殖させて、好みの模様をつける人もいるようですから、この際スポルテッドということにします。

 時々横から雨にあたったのでしょう、水が入ったところに沿って黒くなっています。内部の模様まではわかりません。それを切り出してみると予想が外れて、スプーンの柄ではなく、凹んだ部分に模様が出てしまいました。液体用スプーンではなく、砂糖など粉を入れるのには使えそうです。

 スプーン作りの歴史が長い海外の本を見ると、スプーンの形で注意すべき点がいくつか書かれています。たとえば次のようなことです。

 スプーンやコーサなどの木製食器作り、北欧ではとても大切にされています。スウェーデンの木工や民芸の学校では必ず取り上げられる課題で、これらの製作が大切な意味を持っているようです。その理由を考えてみました。

 いつもならスクレーパーやサンドペーパーを使うのですが、今回はほとんどナイフだけで作ってみました。スプーン作りをされているプロの木工家の作品でもサンドペーパーをあてておられない方はまずおられません、北欧だと「ナイフだけで作った」ことに付加価値があることも多いと聞きます。実際、鋭い刃物で削った滑らかな面は、サンドペーパーでは得られません。

 下の写真、ナイフ二本はフロストのナイフブレードに自分の手に合わせて柄を付けたものです。同社のナイフはラミネートされた刃で、よく切れ、日本の刃物よりも強靭です。ブレードだけの入手は困難ですが、オフ・コーポさんでも柄付きで入手可能です。

 スプーンの下の木のペグは、スウェーデンの友人が大量に注文を受け、ナイフだけで削り出したものの一つです。ただし、ホゾの部分の加工は機械で作っています。その右にY字型の木は、枝を利用した削り出しのハンガーです。このような、ナイフで削り出した小物が、さりげなく室内で使われていたりします。

 木工を仕事にしていると、ついつい機械で作ることだけを考えてしまいがちです。たしかに機械は速く確実です。しかし、機械は直線や平面の加工は得意ですが、微妙なカーブや曲線、また木目や木質の応じた形を与えてはくれません。一方、手道具は反復した加工が苦手で不確実ですが、誰もが”世界にひとつの曲線”を作ることができます。時にはナイフ自体が形を作ることもあります。自分はナイフを自由に扱えるほど上手ではありませんが、ナイフの手軽さ、面白さ、奥深さを、以前にも増して感じています。

◆ バンドクランプ ◆

 額縁など留めの接着では、紐やゴムを使ったり、写真のようなバンドクランプをよく使います。左のはベッセイのバンドクランプで、ひとつ一万円以上します。右のは近くのホームセンターで買ったもので、1000円くらいだったと思います。一見、同じように使えますが、使ってみると全く違います。

 ベッセイの方は、右の赤いノブで軽くバンドを締めてからハンドルを回すとグイグイとしまります。右の安物は、ナイロンテープがめちゃくちゃ伸びて、しっかり締まりません。使用後、ベッセイは本体にベルトを簡単に巻き戻すことができますが、安物は大変手間がかかります。また、ベッセイのコーナー保護用部品は大変よくできています。ベッセイの回し者ではありませんが、使ってみれば1万円以上の価格に納得です。バンドクランプに関しては、安物では代用にならないと思います。

 下のバンドクランプは日本製です。”SUN BAND”という名前が書いてあります。荷造り用PPバンドを機械に挟んで、ネジで締めるタイプです。コーナーの保護パーツは木で自作しました。このクランプの面白いところは、締め上げた後、右のネジが二つついた金具でバンドを挟んで、締め具本体を抜き去ることができるところです。だから、右の金具が複数あれば、本体一つでいくつでも締めることができます(購入時二本付属)。でも、力はあまり強くありません。小物の箱などでは重宝しています。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- ストアブランドの功罪 --- ◆

 大手食品スーパーで働いていた時、職場の資格試験で、「ストアブランドの意義について答えよ」という問題が出たことがある。ストアブランドはプライベートブランドとも言い、有名な企業が作った売筋商品と同じような品を、少し安く販売する、独自商品のことである。

 スーパーなどの流通業は、かつては製造業よりも力がなかった。それで、流通業が主導権を持つための戦略の一つとしてストアブランドを利用した。たとえば、レトルトカレーの元祖「ボンカレー」は売れる強い商品であったが、そのためにメーカーは卸価格をあまり下げない。そこで、スーパー商品部はボンカレーと同等の商品を他メーカーに作らせ、それだけを売場にならべ、ボンカレーは撤去する。これは私が体験した事例で、ボンカレーを毎日買いにくるタクシーの運転手さんやJR職員さんから、売り場で散々苦情を言われたことがあった。カレーに限らず、売れているのに消えていった商品は他にも山ほどある。

 現在Jがつく大手流通業は超巨大流通業となり、メーカーより力が強い。定期採用され、運良くエリートコースに入った社員が20代後半に商品部員となり、毎日メーカーの営業さんと商談をする。売上が伸び悩む昨今、商習慣として販売数に応じた還付金(リベート)が大きな意味を持つので、利益確保が最大の課題である商品部員は、ひたすらリベートを要求するようになる。大学を出て間もない若い社員が、毎日メーカーの営業さんから、ヨイショされ続ければ、世間の感覚から外れていくのが当然の成り行き。

 ストアブランドは、強い商品の商品力を弱める効果がある。けれどストアブランドは所詮物真似商品、元祖の商品にはかなわない。しかし、大手スーパーの強い商品部のおかげで、消費者は買いたい元祖商品が手に入らない事態になる。それだけではなく、売り場が実につまらないものになる。特にPOSというバーコードが商品につくようになってから、売れる商品だけが店に並ぶことに拍車をかけ、よりいっそう売り場が面白くなくなった。POSがなかった頃は、売場担当者が毎日売場の状況を見て商品を補充発注するしかなかった。だから、失敗もあったけど、売れる商品、売れそうな商品を見極めて、担当者の能力が生かせたのだ。

 最近感じているのは、「ストアブランドの品質低下」。強いブランド商品と同等の内容で低価格であれば、消費者にとってメリットがある。ところが、ストアブランドの品質が低下したうえに、他の商品が選べない状況は最悪だ。救いはある。意外と小さなスーパーの方が、きめ細かい仕入れをしていることがある。郊外に乱立している巨大なショッピングセンターではない、街中の小さなスーパーや商店街は、ストアブランドを作るような余力はない。メーカーの定番商品を中心に品揃えをしているので、ほしい商品が手に入ることが多いように思う。

 駅前商店街の衰退が激しいが、このような事情が逆風を運んでくることを期待したい。名古屋や市内、郊外ともに、バーチャルな町並み、巨大ショッピングセンターが乱立している。一方、地価が高く、人工の密集した東京都内や大阪市内では、結構昔ながらの商店街が残っている。名古屋はもう手遅れかな。


2010年7月

目次
・北欧流キャビネット
・新しい集塵機
・関西人の名古屋界隈事情--- 財布を盗られた? ---

◆ 北欧流キャビネット ◆

 ブログでも書きましたが、数年間放置していたスウェーデン流のキャビネットをようやく完成させ、自宅で使うことにしました。最初にカペラゴーデンに行った際に手にいれた小さなブックレットを頼りに、売るためではなく、展示会にも出さず、自分の勉強のために作ったものです。ギャラリーの片隅に布をかぶせて放置していた時は感じなかったのですが、自分の部屋に入れてみて、今までにない存在感、そして北欧の風を感じたことに大変驚きました。その理由はよくわかりませんが、手間を惜しまず最善の方法を考えぬき、様々な技術を駆使して作られた家具のもつ存在感、それが大きな要素であると思います。

 

 オリジナルはバーチ材で作られているのではないかと思いますが、私は以前宮大工さんの工房でいただいたヒバの柱の端材を小割して使いました。ヒバの緻密な風合が、欧州パインのような質感を感じさせるのかもしれません。オリジナルの扉では、鏡板上部が湾曲しているのですが、私はその加工を嫌って直線にしています。なお、鳥のインレイ(アロマティックシダー材)は私のオリジナルです。

角度をつけて接合された側板は、上部で切断され、間に仕切りの棚板を挟んで、貫通した多数のダボによって上下がつながっているように接合されています。日本では過小評価されているダボ接合ですが、ダボにはダボの良さがありますし、その加工には独特の難しさがあります。ダボ接合のメリットとして、このように天板や中間の板は木口を削って飾ることができます。ここでは少し丸くすることで、全体の印象がかなり変わりました。

鏡板の周囲の段欠きは、単純ではなく、微妙なカーブで削られています。オリジナルでは、面取り盤に製作者が製作した刃物をつけて加工していましたが、私は通常の段欠きをした後外丸鉋で削りました。框内側の面取りも直線ではなく、凹面の小さなカーブとなっています。

扉のヒンジ側は本体と等しい角度で斜めになっていて、それに合わせてナイフヒンジを加工しています。オリジナルではビスが真鍮でマイナス、かつその方向を一直線にそろえているのですが、私のはプラスネジです。

北欧に限らず、欧州の高級なキャビネットでは、片方の扉には鍵があり、普段はそこに鍵をさしたまま開け閉めしているようです。オリジナルほどよい金具が見つかりませんでしたが、LeeValleyToolsから買った鍵で代用しました。鍵穴の周囲には別途入手した真鍮製鍵穴飾りを入れました。

上の二杯の抽斗は、本体に組み込まれていますので、前板の両側が斜になっています。下の五杯は扉の内部に収まります。どちらも可能な限り、アリ組による接合です。

写真は抽斗を抜いて後ろから見ています。下5杯の抽斗がすべる面には3〜4mm厚の板を接着しています。木目の方向が抽斗側板と平行になって、すべりがよくなるのでしょうか?あるいは磨り減った時の修理に都合がよいとも言えそうです。

抽斗を入れるとこんな感じになります。底板の構造に注目。上段と中段、下段ではちょっと違います。そこまでやる必要があるの?という感じがしないでもありません。

 以上、結構ディープな世界を紹介しましたが、如何でしたか?オリジナルはこの上にガラスの扉が入った上部キャビネットが乗ります。そうなると値段は少なくとも150万円以上するのではないかと思います。もちろん、私のような拙い技術レベルではありませんが・・・。

 自宅で使っている家具は、カミさんが結婚の時に持ってきた洋服ダンスなどを除いて、全て私の手作りです。が、このキャビネットほど、今までにない雰囲気や存在感を持ったものはありませんでした。北欧風を真似するのではなく、自分流でこのような家具の存在感に少し近づけたらいいなあと思いました。

◆ 新しい集塵機 ◆

 少し前、日立工機のRP35YDという集塵機が臭い匂いを発して動かなくなりました。3年前に買ったもので、比較的新しいです。一時期115vで運転していたことが故障原因のひとつかもしれませんが、昔から「日立はモーターが強い」と言われていたので、ショックでした。販売店経由で修理見積を依頼、愛知県の修理センターに持ち込みましたが、一ヶ月以上何の連絡もなく、こちらから問い合わせると、「日立工機の組織変更で連絡が滞っていました」とのこと。肝心の修理代は「モーター乗せ換えで22000円ほどになります」(涙)。まだ返事をしていませんが、購入当初からたびたびホースが破損するなど不満も多く、おそらく廃棄処分にするでしょう。その場合は見積代金が525円かかるそうです(涙々)。

 話は本題に入ります。バンドソウの集塵機がないと困るので、すぐにマキタの新型集塵機を買いました。491Pという最新のステンレスタンクの粉塵専用タイプです。電子制御で、消費電力の強弱が細かく設定でき、ソフトスタートで穏やかに始動します。写真のように大きな車輪で取り回しも楽ですが、ちょっと大きすぎるかも。ステンレスタンクでゴミ捨てが楽かと思いきや、重くてひっくりかえすのがちょい大変でした。それで今はビニール袋でゴミをためて、それを捨てるようにしています。

 使用感ですが、音は低めの気にならない音ですし、ソフトスタートは本体が動かず具合がいいです。集塵フィルタもプレフィルターが二段階に入っていて、目詰まりも少ないです。今のところ不満は少ないですが、私的には、もうすこし小さくても良いかな。3年で壊れた日立の集塵機と耐久性がどのように違うかはこれからの判断となりますが、購入直後の印象はマキタの方が格段に良いです。

◆ 関西人の名古屋界隈事情--- 財布を盗られた? --- ◆

 お恥ずかしい話ですが、5月頃、財布をなくしました。現金1万6000円程、クレジットカード3枚、キャッシュカード1枚、免許証、交通機関のICカードを紛失しましたが、カードの不正請求などがなかったのは不幸中の幸いでした。どうもプロのスリにやられた可能性があり、何かのお役に立てばと、反省点など書いてみました。

 当日は私の休日(平日)で、雨の中ゆっくりと午後からカミさんと買い物にゆき、夕方家に帰りました。が、寝る時になって、財布が見当たらないことに気がつきました。無くした原因をいろいろと考えたのですが、立ち寄った山道具屋さんで雨具などを試着した時、脱いだベストのポケットから携帯電話が落ちたことがあり、その時に財布も落としたのではないかと考えました。深夜ですが、連絡がついたクレジットカード会社(イオンクレジット)に不正請求がないか確認しましたところ、それはないということで、その日はカードの停止はしませんでした。

 あくる日、その山道具店が開店するのを待って電話を入れ、カミさんに行ってもらいました。しかし、拾得物はないということでした。朝から落とした可能性のあるお店に全て電話をしましたが、何の情報もありませんでした。それで覚悟を決め、クレジットカードとキャッシュカードの停止を各社にお願いしました。カードの停止自体は、電話での本人確認ができれば、簡単でした。また正午には近くの交番に紛失届けを出しました。その後、一週間ほどかけて、キャッシュカードやクレジットカードの再発行、免許証の再発行などを行いました。現金のみの損失ですみましたが、再発行の労力や精神的なショックは大きかったです。それからも、待てど暮らせど、取得物の連絡はなく、ついに二ヶ月以上たった今も、何も見つかっていません。いろんな方に聞いてみても、落としたものであれば、現金はなくなっていたとしても、かなりの確率で財布ぐらいは出てくるという話。結局、プロのスリによる犯行で、その場所は雨具を試着したりしていた山道具屋さんではないかと推察しています。

 昔から山登りが好きだったので、山道具屋さんというのは、自分にとって、安心できる場所のひとつです。また山道具屋さんにいる人達はみな好い人だというような根拠のない思い込みもありました。ところが、スリの目になって店内を見てみると、結構お金を持った年配の人が多く、雨具など3万円以上するので、5万円くらい現金を持ったお客も多いし、ところ狭しと服が並んでいて、死角も多いのです。それからしばらくして、用事で大阪へ行った際に時間が余ったので、駅前のIBSやロッジなど、昔よく通った山道具屋さんを見てまわりました。その時にもスリの目で売り場を見ると、やはりスリにとって格好の場所と思えました。

 数年前、ストックホルム駅でカバンを網棚にあげるのを手伝ってあげようと言ってきた連中にカバンを奪われ、取り返したことがあります。この時も、「スウェーデンに慣れているし、そんなに悪い人はいない」と気楽な思い込みをしていました。今回も同様です。「人を見たらドロボーと思え」というのは悲しいですが、日本は昔から高度なテクニックを持ったスリの伝統があるようですから、いつも危機感を持っていることが大切なようです。その後、万が一盗られても被害の少ないように、現金とカードを分け、カードの入った財布は肌身離さず、小額の現金は盗られてもかまわないというようにしています。もちろん、絶えず警戒心は忘れないように注意しないとね。皆さんも、気をつけてください。


2010年6月

目次
・木の家具展2010出展作品紹介
・簡易連動スイッチ
・関西人の名古屋界隈事情--- 東海道宿場サイクリング ---

◆ 木の家具展2010出展作品紹介 ◆

 3回目となる名古屋での合同展示会を終え、いろんなことを感じました。会を重ね、客観的にこの展示会を見るようになったのかもしれません。大手家具メーカーの、あるいは海外有名家具メーカーの展示会等と比べ、個人の木工家が作る家具は、やはり自己満足の部分が多いと感じました。それは悪いことではないと思います。万人の好みに合わせた物作りという方向ではなく、作り手が使い手を選ぶような物作りもあってよいと思います。また10〜20年くらい前の木工家さんの作る家具と比べ、最近のそれは北欧系の直線的でシンプルな家具が増えているように思いました。でもこの方向は、家具メーカーによる量産に適しているので、結局は量産品との価格競争になってしまうような気がします。かと言って、分厚い一枚板を贅沢に使った濃厚な家具を好む人は次第に少なくなっているようです。

 さて、私が今展示会用に作ったテーブル(机)二つを紹介します。これらは純粋に私の好みで作ったものです。典型的自己満足の作品とも言えますが、それを作ろうとした気持ちを形にするまでのプロセスを紹介してみたいと思います。今回の展示会用新作を作るにあたり、考えたことは次のようなことです。

 以上のようなことを全て考えながら作ったのではなく、「後から考えるとそうだった」みたいな、”こじつけ”的な部分もあります。でも、売るためではなく、競争して勝つためでもなく、素直に作りましたので、何かを感じていただけると嬉しいです。

次の写真は、搬入前の車への積込み前に工房に並べてみたところです。後ろの長い机二つが今回の新作です。

 二枚のタモ柾目板をハギ合わせた天板は、二本のアリ桟で反りを止めています。通常アリ桟は、栓を入れて隠したり、送りアリにして見えないようにするのですが、効きを考えた場合は、通しで端まで入っている方がその効果は強いはずです。それで意図してアリ桟を見せるよう、ブラックウォールナットで作り、かつ高さを高くして、床に直接置いて、座って宴会ができる台にもなるようにしました。脚部についてですが、左のテーブルは3つに分解できるようなっています。脚は二枚のバーチ材を8個のサネで結合し、スキマを3mmとって縦のラインに見せています。右のテーブルは、左右独立した棚と抽斗で、その上に天板を置いているだけです。

 天板は柾目の木目をできるだけ生かすように、目なりのゆるい曲線とし、川の流れをイメージしています。実は右のテーブルの天板には、木の芯に近い部分に節やワレがあり、それを落としてしまうと幅が狭くなるのです。それで欠損部はそのまま、板をハギ合わせ、その穴にアップリケのように模様を入れてみることにしました。木目の曲がり具合が鳥が泳ぐ際にできる波に見えるかな?昨年末犬のポアロがなくなってから、一人で以前の散歩道を歩いていると、池面を進む鴨を見ることがあります。どうも、その姿にポアロを重ね合わせて見ているようです。

 右の抽斗、自分で言うのもなんですが、結構手間がかかっています。抽斗の側板や後板も違和感なく外面として使い、抽斗と本体のスキマをなくすように考えました。常々、箱物は抽斗と外側本体が二重になっていて無駄が多いように思っています。それを一重にして、機能を落とさないようにと考えました。

会場で実物をごらんになられた方、ご感想などお聞かせいただけるとありがたいです。

◆ 簡易連動スイッチ ◆

 バンドソウと連動させていた日立の集塵機が3年ちょっとで動かなくなりました。現在修理に出していますが、初期電流の大きなバンドソウを内臓された連動スイッチでON OFFしていたことも故障の原因のひとつではないかと思います。それで、新しい集塵機に入れ替えたのを機に、連動スイッチを別に設けることにしました。こうすれば、故障してもスイッチを交換するだけですみます。

 デルタのバンドソウは単相100V用ですので、スイッチは2接点(2P)ですみます。そのスイッチを同じ大きさの三相用(3P)に交換し、使わない1接点を集塵機のON,OFF用に使ってみました。また、集塵機のみを動かしたい時のために、並列にスイッチを設置しました。なお集塵機とバンドソウは別回路から電気をとっています。(ごく簡単な回路ですが、このような電気回路を自分で設置するには電気配線の知識や技術が必要です。不適切な方法で接続された場合は、感電、漏電、発火等の危険性を伴いますので、専門家にご相談ください。)

 より望ましいのは電磁開閉器を用いて集塵機を連動させることですが、このように余った接点を使って簡易連動スイッチとして機能させることは、他にも利用できる場面があるかもしれません。

スイッチの左に出ているコードが集塵機の連動オンオフ用、壁につけたコンセントの隣に集塵機を単独で動かすためのスイッチがあります。

◆ 東海道宿場サイクリング ◆

 自転車での短い旅行を楽しみだしてから、かなりになる。徒歩だと行く先々でどっぷりとその場に浸かるけれど、自転車だとあくまで「旅の人」であり、グライダーの低空飛行にように、静かにその場を流すことができる。その自由さというか、気を使わないスピード感が好きだ。初めは、川沿いの自転車道などを走ることが多かったが、それだけでは面白みに欠けるようになって、今は自分のルーツを感じるような旧道を走るのが楽しい。

 幸い東海地方は東海道、中仙道、伊勢街道等々、名だたる旧街道が沢山集まっている。最近「歴女」という言葉があるそうだが、幕末がブームになるちょっと前から、私はにわか「歴おっちゃん」になった。今読んでいるのは、有名な「東海道中膝栗毛」の原書に忠実な岩波の文庫本。これは、今なら犯罪となりそうな話がいっぱいあって、正直かなりお下品。けれど、江戸時代の庶民目線で見た旅人の姿やさまざまな風俗が描かれており興味深い。貨幣価値もよくわかる。例えば、一文=10円(いろんな説がある)と考えると、食べ物の値段など、結構今の値段に近かったりする。また、私の祖母や祖父の使っていた言葉や風習の多くが、江戸時代のものであったことに驚く。ドリフの「8時だよ全員集合」のネタなども、この膝栗毛にヒントを作ったのではないかと思うような話もある。小さな文字で書かれた古い文体は読みやすくはないけど、なかなか面白い。話の落ちの「そうかいな」というフレーズも、小さい頃おじいさんやおばあさんの世代からよく聞いた。チョンマゲ頭の侍が草鞋を履いて、東海道を歩き回っていた江戸時代は、ほんの少し前のことなのだ。

 その気になれば、旧東海道を見つけることはたやすい。たとえば講談社から文庫本サイズで「東海道五十三次ガイド」が出ていて、安価で手軽なガイド本だ。名古屋近辺では有松絞りで有名な「鳴海宿」、弥次さん北八さんが狐に騙されかけた?という松並木が残る「御油宿」、現存する唯一の関所がある「新居宿」など、自転車でなくても、見てまわるのは楽しい。社会科、特に歴史が大嫌いだった私、年のせいでしょうか、変わるもんですねえ。


四日市、日永の追分、右京大阪道、左いせ参宮道の道標


往時の建物が現存する「新居の関所」


2010年5月

目次
・森の恵み-木の家具展2010
・WindowsとMACを半年間併用してみた
・関西人の名古屋界隈事情--- 谷汲山と薄墨桜 ---

◆ 森の恵み-木の家具展2010 ◆

 第三回目となる名古屋での合同展示会、今回は初回の会場、「電気文化会館」の東西2つのギャラリーを使って開催します。私は西ギャラリーの中ほどに出展します。ここ数年は木工教室がメインの仕事となり、注文製作をすることはほとんどありません。ですので、気楽に自分が好きなように作ったテーブルや箱物を展示する予定です。今年のテーマは、「自然」かな?。川や生き物の安らぐイメージを感じていただけるとうれしいです。また5月14日(金)〜16日(日)に名古屋栄のラシック一階で開催される”Woodworkers Chairs Collection”には、定番の”スタッキングアームチェア”を出展します。11日〜16日の会期中は、ほぼ毎日電気文化会館に居る予定です。

◆ WindowsとMACを半年間併用してみた ◆

 コンピューター”オタク”というほどではありませんが、毎日かなりの時間をコンピューターの前で過ごします。通販の注文はほぼ100%メールで入りますし、展示会準備関係のメールチェック、ブログの更新、CADによる図面書き、木工教室の資料作り、通販関係の書類印刷、そしてこのHPの更新など、実に多くの仕事をコンピューターでこなしています。木工中心のホームページなので、今までコンピューターの話はあまり書かないようにしてきましたが、木工を仕事にされている方にもコンピューターの活用が必須な昨今、初めてコンピュータの話題を書かせていただきました。

 数年前から工房で事務用に使っているDELLのコンピューターは、WindowsXPHome、ペンティアム4、メモリ1GBで、最初ハードディスクが40GBであったのを160GBに入れ替え使っていました。この新しいHDが一年ほどで壊れてしまい、またもとの40GBHDで使っています。CPUの能力も今となっては限界に近いし、いつ壊れてもよい状態ですので、予備として写真左のコンピュータを購入し、今はそれを自宅で使っています。これはWindowsXP、Core2Duo、メモリ2GBで、かなり性能は良いです。このPCを工房の事務用コンピューターにする予定で、昨年12月に私個人用として初めて写真右のMacを買いました。ネットで評判が良かったこと、一体型で邪魔になるコードが少ない、そして何より、カッコいいから・・・。また、MacでWindowsも動くと聞いていましたので、仕事もできると思ったのです。

 壊れた時の対策に予備のPCを買っていると、皮肉なことに工房のPCが壊れないのです。で、半年経過した今も、ごらんのようにWindowsとMacが並んだままです。このため、WindowsPCとMacを、充分に比較することができました。これからPCを購入予定の方に参考になればと、半年間の使用感を書いてみました。この二つのPCのハード面の能力はほとんど同等です。

 MacにはWindowsXPHomeも入れています。最初はBootCampを使って、どちらかを選んで立ち上げていましたが、現在はVM-Fusion2という仮想マシンソフトを入れて、Mac画面上で同時にWindowsを動かしています。でも、Windows専門のPCが隣にあるので、MacでWindowsを使うことはあまりありません。

 さて、以下に各項目別に、私の印象を書いてみました。あくまで私の個人的な感想ですので、正しい評価とは言えないこともあるかと思います。また、私はMSDOSの時代からWindows3.1-Windows95-98-2000-XPと乗り換えてきましたので、所有しているソフトやPC操作に関する知識はWindowsについてのものばかりです。そのあたりのことも考慮に入れて読んでください。

Windows Mac
画面 画質は普通、高さが調節できて見やすい 写真はとても美しいが、高さが高すぎ
キーボード 普通 カッコはいいけど、ストロークが小さく使いづらい。テンキーがほしい。
マウス 普通 カッコいいけど、使いづらい。マジックマウスの加速スクロールは便利だと思う。
起動時間 MACと同等 Windowsと同等
処理能力 体感的にはMACと同等 体感的にはWindowsと同等
ウイルス対策 Microsoft Security Essentials(MS、無料) なし。でも不安はなく、快適
外観 本体・液晶・キーボード・マウスの結線が必要 本体は画面一体型、キーボード・マウスは無線。実にカッコいい。
メールソフト 秀丸メール(シェアウエア)。 MACに最初から備わったソフト
ブラウザ Firefox。使い慣れている。 付いて来たSafari。使いなれていない。
事務ソフト Office(有料) NeoOffice(無料)を自分で入れた。
写真閲覧 Windowsエクスプローラーで見ている iPhoto、これは使い勝手がよい
写真の加工 有料ソフトやフリーソフトを自分で追加する iPhotoだけでかなりのことができる
写真の読込 オプションでつけたカードリーダー SDカードのみ読み込める
音楽(MP3) フリーソフトの組み合わせで利用 iTune、iPodに囲い込まれている感じ。
Skype 音声デバイスのトラブルがあった カメラ・マイクが内臓で安心して使える。
CAD JwCad,Autosketch、Sketchup Sketchup、2DCADで無料の物がない?
バックアップ ネットワークドライブへデータのみコピー TimeMachineによる自動バックアップ
修理 知識があれば自分でパーツ交換可能 一体型の修理は自分でしない方がよい
価格 本体+画面で6万円代後半。 約11万円、3年間保障は+2万

さて、パソコンの購入を考えておられる方へ、私なりの選択を書いてみました。また、WindowsからMacへの乗り換えを検討されている方にも参考になるのではないでしょうか。

話が本題からそれますが、パソコンを購入する場合、少々高くなっても高性能なプロセッサを搭載したモデルを選ぶことをおすすめします。たとえば、低価格のPCでよく使われるCeleronは、ウイルス対策ソフトの更新など、複数の仕事をこなす場合に処理が大変遅くなることがあります。この点Core2Duoなどのプロセッサーではそのようなストレスは少ないです。

ウイルス対策ソフトについて

Macの快適さのひとつは、ウイルスソフトがなくても、現時点では大丈夫だろうと言うことです。Windowsは何かしらのセキュリティーソフトが入っていないと文句を言います。しかし、毎年高い更新料を払うなんて馬鹿らしい。そう思っていたら、やっとMS社がMicrosoft Security Essentialsという無料のセキュリティーソフトを配布してくれました。XP以降なら使用可能で、個人的使用ならこれで充分だと思います。

バックアップについて

パソコンはいつか壊れるものです。OSやアプリケーションは元に戻せても、自分で作ったデータや過去のメールは決して戻ってきません。一番手軽なバックアップ方法は、USB接続のハードディスクを買って、そこに毎日データだけをバックアップする方法です。Windowsでは私はフリーソフトの「ディスクミラーリングツール」というのを使っています。これは指定したフォルダを自動的にバックアップするソフトで、実にシンプルで便利なものです。

私は過去に何度もハードディスクの故障を経験し、データ消失の恐さを痛感しました。それで現在は、工房や家庭で使っている複数のパソコンとネットワークを組んだハードディスクに、各PCごとにデータをバックアップし、さらにそのハードディスクを同じ容量のUSBハードディスクに一日一回自動コピーする設定にしています。要するに、同じデータを3組保存していることになります。多分この3台が一度に壊れることはないと思います。Macも同様にこのネットワークハードディスクに容量を限定したフォルダを作って、そこにMacに備わっているバックアップソフトで自動的にバックアップをとっています。

関西人の名古屋界隈事情 --- 谷汲山と薄墨桜 ---

 岐阜県の大垣市の北方、本巣市のあたりへ名古屋から行くのは結構時間がかかる。大げさに言えば、ちょっとした秘境である。谷汲山華厳寺や即身成仏されたというミイラで有名な横蔵寺界隈の雰囲気が好きで、先月は花見に行った。以前「谷汲線」という名前の鉄道があったそうだが、今は廃線となり、古い駅舎と線路の通っていた土盛が残るだけである。近くの道の駅に車を置いて、自転車で寺の参道を行く。道の両側にやや低めの桜並木が続き、のどかな風情。参道横の広い駐車場では、テントが張られ、近くの農家が農産物などを売っていた。また、横蔵寺方面へ少し行ったところにおかきやアラレの工場があって、その一角に直売所がある。そこでおかきを買うのも楽しみである。

思ったより時間が余ったので、まだ見たことがない有名な薄墨桜をを見に行った。谷汲山から30分ぐらい走ると、おっちゃんが駐車場へ誘導していた。観光バスが出てきたりして、騒然としている。ちょっと嫌な予感を感じながらも、駐車料金を払って桜を見にいく。桜を見るまで、参道のような道には沢山の出店があって、商魂たくましい。肝心の薄墨桜は見事な老木ではあったけれど、こんなに年をとってまで働かされているようで、かわいそうな気もした。この有名な桜一本を観光資源として活用しているのに、へそ曲がりな私は、どうも馴染めなかった。


2010年4月

目次
・展示会前に木工を振り返る。
・関西人の名古屋界隈事情--- 近所のお花見所 ---

◆ 展示会前に木工を振り返る ◆

 今年も5月に名古屋で大きな合同展示会を行います。第一回の会場となった電気文化会館の東西2つのギャラリーを使って何らかの形で木工を生業とする35名が集まって作品を合同展示します。東ギャラリーではテレビボード展、西ギャラリーでは木のお盆・トレー展も開催します。なお同時期、名古屋市内各所で木工関連の展示会や催しが行われ、有志の方が「木工家ウィーク2010」と称して広く一般の方にPRされています。

 第一回から関ってきましたこの合同展示会の前に、しばし今までの木工を振り返ってみたいと思います。「振り返っていては早く老けるよ」とのご意見もありそうですが、木工の今後の方向を考えるための参考になればと書いてみました。言葉の使い方や事柄の理解で勘違いや間違った内容も多々あるかと思いますが、自分史的な内容でもあり、どうか大目に見てください。

ウッディーライフ

 薬品会社の営業として20代は関西と四国を回っていました。そんなある日、高松出張で夕方仕事を終え、ふと入った本屋でウッディーライフ二号を見て、なんとなく興味を持ち、買いました。今思えば、それが木工への最初のきっかけだったかもしれません。アウトドア的な、あるいは田舎暮らし、山小屋ぐらし、というような生活と木で物を作る仕事の複合ライフスタイルにとても憧れたのでした。その頃高山の山奥で活動されていたアリスファームを主宰されていた若い藤門さんも大きく紹介されていました。「うーーん、なんか知らんけど、コレや!」というような衝撃があり、世間知らずの若い私は、頭の中で田舎暮らし、自然と調和した生活・・・等々についての、イメージが膨らむばかりでした。そんな折、またまた、私に衝撃を与える本に出会います。それが野田知祐氏の「日本の川を旅する」でした。好きなことには影響を受けやすい私、また「コレやッ」と思ってしまったのです。

 早速そのカヤックを教えてくれるところを探し、講習会に参加しました。今まで見たことのない川面からの風景、川が流通経路の主役であった昔の川旅を思わせるキャンプしながらの川下り、ガップリとはまり込みました。そして、カヤックを作る仕事をしながら、農学部を出ただけで実際の農業の「の」の字も知らないのに、農業をやりたいと超甘いことを考え始めたのです。有機無農薬の農業をやっておられるご家庭を見学に行ったり、自然卵養鶏の本を読んでそんな農家へも出向いたこともありました。

 そうこうしているうちにカヌーの会でカヌー製造会社の社長さんと会った際、私の夢を話すと、「ウチで働いたらええ、月12万ぐらいにはなるから、後は農業で、食べていけますやん」と言われます。あとから考えれば、そんなことで家族4人が食べていけるとは全く思わないのですが、好きなことになると目が見えなくなるものです。あっさりその気になってしまった私は勇んで会社に辞表を提出し、カヌー屋になったわけです。

 薬品会社は結構給料がよかった。それがいきなり時給の世界に。どうみても破綻は見えています。この商売は文字通り水物で、8月下旬になると急に注文がなくなり、「今日は3時で帰っていいよ」・・・。結局半年後、他愛もないことで社長ともめてやめました。そして失業保険もない完全な無収入に。恥ずかしくて親にも言えず、とにかくアルバイトでもしなければと履歴書を出した大手スーパーで中途採用され、やっと生活のめどが確保できたのです。

木工を習う

 ウッディーライフのカッコいいライフスタイルに憧れただけではダメだと痛感した私、失業中に自己流で作ったX脚のダイニングテーブルが結構良くて、ぜひ本格的に木工を習いたいと思っていました。「腕に技術をつけなければだめだ」という思いです。幸運にも近所で「木工教室」の小さな看板を見つけ、脱サラされて木工で独立されたばかりの先生の、最初の生徒になりました。二年間ほどでしたが、本格的木工を経験し「木工は自分に合う」と確信しました。でも、前の失敗にこりて、別の仕事で給料を稼ぎながら家具を作って行こうと決意し、6畳洋間を工房にして、100Vの木工機械を入れ、自分で家具を作り始めました。ところが一人で作り出してみると、何をどのように作ったらよいやら・・・。もっと勉強する必要性を痛感しました。何か教科書的な本はないか。そんな折、図書館でカミさんが見つけてきた「KAKIの手仕事」という本に触発され、故柿谷誠さんが書かれた「KAKIのウッドワーキング」を入手、それをたよりに家具を作り始めました。KAKI工房に憧れ、実に憧れやすい性格ですな(笑)、実際に工房に足を運び、半日作業を見せていただいたこともあり、その後も何度か弟さんペンションに家族でスキーに行ったりしていました。

 日本には木工の手本となる教科書的な本は、今も本当に少ないです。そんな中、家具つくりを目指す人にとって「KAKIのウッドワーキング」は良い本だと思います。ただ、KAKIの真似から脱するのは難しいです。あと佐藤庄五郎氏の「図解木工技術」は、内容は少々古いですが、昭和の木工全般を知るには貴重な本で、KAKIさんの本とともに今も重宝しています。余談ですが、雑誌ウッディーライフの後、「手作り木工辞典」という雑誌が発刊され、アマチュア木工愛好家の中でバイブル的存在だったと聞きます。私は木工のいい面やかっこいいライフスタイルの紹介が多いように感じられ、ほとんど読みませんでした。

 いつ頃だったか忘れましたが、有名な松本クラフトフェアに行きました。そこに今はない東京の東光堂書店さんが、店を出しておられ、アメリカでは木工関係の書籍が山のようにあることを知りました。それからは、東京にたびたび足を運び、日本橋の東光堂さんで洋書を探しては購入していました。さらにLinden Pubilicationという米国のクラフト関係書籍専門店から個人輸入をしたりして蔵書を増やしました。

 1994年にはスウェーデンのカペラゴーデンで木工のサマーセミナーに参加します。たった3週間のセミナーではありましたが、日本にはない自由な雰囲気の中で、木から生活のための道具を作り出すシンプルな行為を体験できたことは、今までと全く異なる体験でした。

パソコン通信、インターネット

 スーパーの店員を数年しているうちに、もっと木工をする時間がほしいと思いはじめ、縁あって中学校の講師に転職しました。そこで偶然パソコン教室の開設を担当することになりました。アマチュア無線2級を持っていましたので電気関係は得意でしたが、パソコンは食わず嫌いでした。でも、仕事の必要に迫られ、MSDOSというコマンドを打ち込む古いタイプのパソコンをいじり始めました。そのうち他校の技術の先生から、「パソコン通信、おもしろいよ」を言われ、そこに入っていきます。始めてみると、パソコンが個人の所有物から、世界への扉に変貌する、その瞬間を感じました。やがて閉鎖的ともいえる会員制のパソコン通信をインターネットが淘汰していきます。最初にインターネットにつながり、画像がゆっくりと見えてきた時は感動でした。しかし、その頃はホームページを見るような通信環境にはなく、パソコン通信と似た「インターネットニュースグループ、rec.woodworking」を利用し、海外の木工愛好家との交流も始まりました。ルーターを個人輸入したり、開業されて間もないリブロスデルムントさんからデルタのバンドソウを買ったり、アメリカ流木工に大いに感化されました。一方では、パソコン通信の仲間を通じて東京の刃物屋さんと親しくなり、伝統的な日本の木工技術、特に指物技術の奥深さに触れることになります。

 やがてホームページを扱う環境も整い、木工関係のホームページを「六畳一間の工房より」と題してアップします。その頃はYahooに登録するのは簡単でした。それが縁で雑誌の記事を書かせていただいたり、現在の木工教室の基盤ともなりました。

 インターネットの普及のせいか、木工に限らずインテリア雑誌の廃刊が続き、今本格的な木工雑誌はなくなってしまいました。そして、ホームページからブログへと舞台は移っているようです。しかし、ブログというのは、実際の人格から離れて、ブログの中のバーチャルな人格が一人歩きするような、恐い部分を持っていると思います。普通の人が、ブログを通じて、有名になる可能性もあり、これから木工を目指す人には避けて通れない道かもしれませんね。個人的には、慎重に利用されるのが懸命だと考えています。実際に顔を合わせ話をする、それに勝るものはありません。

海外の木工・巨匠

 ここ一二年、世界的に名前が知られている数名の木工家が世を去りました。ジョージ・ナカシマ、サム・マルーフ、テージ・フリッド、ジェームス・クレノフ、アラン・ピータース・・・。これらの方々にはにはお会いしたこともありませんが、著書にはとてもお世話になっています。

 特に「Tage Frid Teaches Woodworking」のシリーズは、教室でも頻繁に参考にしています。彼はデンマークからアメリカの大学に木工の指導で招かれた方で、FineWoodworking誌創刊時の編集者の一人です。手加工と機械加工、どちらに偏重することもなく、合理的な家具製作の技術を簡潔な文章と写真・図で紹介しています。日本訳が出ているジョージナカシマ氏の「木のこころ」は読まれた方も多いのではないでしょうか?一時、日本の木工家が作る家具の多くが、ナカシマ風に見えたほど、ブームになりました。近年の一枚板のテーブルの人気の源流は、ナカシマではないかと思ったりします。サムマルーフ氏のロッキングチェアはアメリカで人気があり、信じられないような値段で取引されるようです。彼のビデオで作り方が紹介されていますが、荒く整形してから、完成品のような滑らかな曲線になるまでは詳しく見せていません。おそらく弟子に相当する方が、時間をかけて研磨されているのでしょう。アラン・ピータースさんが一人で書かれた本は持っていませんが、写真左下の本は、彼が監修に加わった再版本で、ロンドン近郊の木工家の作品が多数掲載されており、イギリスの木工を語る上で大変重要な人であったようです。彼の写真や作品を見ていますと、ずっと木工職人としての立場を守り、誇りを持ちながら、家具を作り続けたのではないか、そんな気がします。

 右上の5冊の著者、ジェームス・クレノフが最初に書いた本は、最近大分の木工家、三ツ橋さんが訳されて自主出版されましたので、読まれた方も多いかと思います。私は、クレノフ氏が上記のほかの人と比べ、かなり変わった立場で木工をやり続けた人だと思います。売るための木の家具作りをするのではなく、一枚一枚の木を見て作る物を考える、その制作プロセスにこそ意味があると言っているようで、木工教室をやっている自分にはある意味救いでした。彼の難解な英文を私達でも理解できるような日本語とし、さらに解説をつけていただいた三ツ橋さんに感謝しています。

 さて、今上記のような巨匠は誰なのでしょうか?私には思いつきません。家具の先進国である欧米でも、誰もが認める著名な木工家、あるいは職人はもういなくなっているのではないでしょうか?

日本の木工・家具

 日本に限らず、ドイツでも、プロの技術が本となって公開されることは少ないそうです。職人の技術は本や映像で伝わるようなものではないということもあるでしょうし、プロの領域・利権を守る意味合いもあるでしょう。また、日本で木工の巨匠は?と聞かれても、すぐに名前が浮かんできません。数年前に見た「黒田辰秋展」は大変見ごたえがありましたが、生活家具というより伝統工芸の世界で、庶民には縁遠い物に思えました。

 日本の家具業界、戦後「作れば売れる」時代があったそうです。確かに、子供の頃の家の中には、洋服箪笥と和箪笥、それにちゃぶ台があっただけでしたから、高度成長期、住環境が良くなるにつて応接セットが飛ぶように売れたでしょう。またアメリカへの輸出家具で業績を伸ばした家具会社も多かったと聞きます。「家具とは何か?」を追求しなくても、物真似で家具が売れたわけです。多分、その頃私は量産家具が本物の木ではないと感じ始めていたのだと思います。今なら、中空のフラッシュ構造の利点も理解していますが、その時は「木やない、ウソや!」と思ったものでした。しかし、勢いは続きません。海外からの安い家具が流れ込み、日本の家具業界は、低迷してゆきます。

 そういう中、目に飛び込んで来たのが、KAKI工房さんの無垢のベニマツで作った家具やオークヴィレッジの重厚な楢の家具、アリスファームのシェーカー家具だったのです。この三つの工房に共通するのは、雑誌やマスコミへの訴求力があったということではないでしょうか。それと、この時期に木工の世界へ入った方は、大なり小なり学生運動の影響を受けています。私も例外ではなく、高校時代に学生運動の影響か、「反、体制・大企業」的な単純な思い込みをしてしまったのです。おそらく、その時代、企業に頼らない生き方を模索した人は多かったと思います。そこに「木工家具」というキーワードはみごとにヒットしたのです。

 50代以上の方は、そういう状況をご存知だと思いますが、20代30代の方は理解しにくいでしょう。ヒッピーという言葉も知らないかもしれません。今活躍されている先輩の木工家と呼ばれる人達を理解するには、このあたりの事情を知っておく必要があるように思います。「いや、そうではなく、全く知らない方がよい」と考えられる方もおられることでしょう。どちらがよいか私にはわかりません。ただ、生きていくための手段として、決して効率がよいとはいえない木工を仕事としていくには、その意味や意義を自分でしっかりと考えておかないと、いずれ挫折すると思うのです。

 私が名古屋で2000年1月に教室を始めてからでも、沢山の方が家具工房を開設され、起業されています。量産家具に満足できない方も少なくないようで、私達のような小さな工房で作られる家具へのニーズはあるかもしれません。それがどれほどのものなのか、また何時まで続くのかはわかりませんが、5月の展示会は、個人あるいはごく少人数で、個性的な家具を作っている人達が沢山いることを知っていただき、また彼ら・私達の作品に触れて、作者と直接会話をしていただける貴重な機会となることを願っています。

関西人の名古屋界隈事情 --- 近所のお花見所 ---

 これを書いている3月末、「暖冬予想はいったいなんだったんだ!」と思う。2月は結構な寒さだったし、3月末になっても真冬並の気温の日が続いた。「本当に地球は温暖化しているのか?」との疑問も起きてくる。温室効果ガスによる温暖化を示すデータは間違っているという指摘もあるし、どうも先進国の優位を保つための騒ぎという感がしないでもない。そう言えば、以前騒がれたオゾン層の破壊については今どうなんだろう???

 実は今月のこのコーナーに、3月末の美しい桜の写真を載せようと思っていた。ところが、この寒さで、見ごろは4月上旬になるという。それで、ウチの近所の桜が美しいところを紹介することに変更。遠方の方には意味のない内容かも。

東谷山フルーツパーク
名古屋市の最高峰(198m、^^)東谷山(とうこくさん)の裾に広がるフルーツパークは枝垂れ桜の名所として地元では超有名。この日が最高というような、花が輝くパワー全開の日に行くとすごい。実は私、ここの売店の濃厚なソフトクリームのファン。この時期、地元の農家さんなどが野菜などを格安で売っていたりして、まさにお祭り。普段無料の駐車場が、このシーズン有料で、去年の300円から500円に値上げされている。

落合公園
東名高速「春日井IC」に隣接する大きな公園で、「日本の都市公園100選」に選ばれたとか。大きな池を囲んで芝生の広場があり、その周囲に1000本以上の桜の木が。開放感のある公園で、小さな子供を連れた奥様から、ボール遊びをする若者、健康のために歩いている年配層など、地元の人に愛されていることがよくわかる。私達は桜を見て、少し離れた朝宮公園まで往復サイクリングを楽しむことが多い。この道にも桜があり楽しめる。

犬山付近の木曽川沿い
本物の城、国宝犬山城はすばらしい。天守閣の最上階からの木曽川の眺めはすばらしいが、高所恐怖症の人にはちょっと辛いかも。お城付近の桜もいいが、城のすこし西側の木曽川沿いの遊歩道は、ゆったりと流れる木曽川を見ながら、桜のある雑木林の中を歩く。この独特のムードが好きだ。自転車があればもっと西、木曽川堤の138タワーパークまで足を伸ばすのも楽しい。

 その他、五条川、山崎川、名古屋城、鶴舞公園などが有名。写真は、昨年の東谷山フルーツパークの枝垂れ桜


2010年3月

目次
・洋鉋
・木工機械による事故について
・関西人の名古屋界隈事情--- 鈴鹿界隈 ---

◆ 洋鉋 ◆

洋鉋を使うことはほとんどありませんが、下のような加工でスタンレーのローアングルブロックプレーンを使うことはあります。

Veritasの金属製スポークシェーブ(西洋の南京鉋)も、曲面削りには便利なものです。でも、仕上げに金属製の洋鉋を使うことはありませんでした。

しかし、欧米の木工雑誌や訪ねた工房では、日本のノミはよく見かけましたが、日本の木の鉋を使っているところは、まず見かけません。たとえばロンドン近郊の大学の家具製作コースでは、生徒の机の上に”CLIFTON”の名が入った美しい洋鉋が置いてありました。日本の鉋は削るよりも使えるまでの準備というか調整に、高い技術と豊富な経験を要求しますから、それが原因かもしれません。が、それよりも日本製鉋は刃の仕込み角度が小さくて木目の素直な針葉樹向きであり、洋鉋は刃がより立っていて複雑な木目がある広葉樹向きである、このことの方がより大きな理由ではないかと。

 そのことを立証するかのように、昨年のFurniture and Cabinetmaking誌では、クレノフ氏追悼号記事と同じ号に、氏のトレードマークである自家製鉋を手本として木製鉋を作っている方の製作記事が出ていました。記事の鉋はしのぎ面が上になって、すくい角がゼロだったのです。これなら、逆目は止まるはずです。日本の台直鉋で削っているのとほとんど同じではないでしょうか。

 そんな折、カナダの友人が上の”Handplane Essentials”という本を贈ってくれました。これを見ると洋鉋で仕上げる場合に最もよく使われているのが、Bench Plane No.4というタイプだそうで、またタイミングがよいことに、最近F&C誌でCLIFTONのNo.4BenchPlaneの評価記事があり、そこでは「欠点なし」と絶賛されていました。ポンドがかなり安くなったこともあって、この鉋を一度使ってみたく、Axminsterから購入した次第です。同社の英国国内価格は192ポンドですが送料がなんと69ポンド!、しかし税金が約30ポンド安くなり、232ポンド+国内税と手数料600円で入手できました。約33000円です。

 この鉋、細部まで上品な作りで、金属加工の手間を考えれば、安いと思いました。刃を固定しても、真鍮のノブを回すことで、簡単に刃の出方を微調整できますし、刃の下にあるレバーを左右に動かせば刃の傾きも微調整できます。日本の鉋の玄翁で刃を叩いて調整することに慣れていない人なら、絶対にこちらの方が便利と感ずるでしょう。充分実用になる精度の微調整機構です。また刃口の大きさは、鉋刃を止めている台を前後に動かすことで変えることができます。


真鍮の刃の出方調整ネジ
下のマイナスネジで刃の台を平行移動、刃口を調節できる。


レバーは長いテコ。刃の傾きを左右に微調整可能。


裏金に相当するチップブレーカーは独自のツーピース構造
鉋屑が詰まるので、表裏とも研ぎなおしました。

さて、削り具合はどうでしょうか?。まだ充分に使いこなせていません。日本の鉋に慣れているので、押すことがうまくできない感じです。感じることは、洋鉋の場合、基準となる平面が鉋後部、ということは削ったところが基準になるということです。日本の鉋の場合は、削る前の面が基準となって引き始めます。この違いは大きいように思います。日本の仕上鉋は、すでに平面となった木を薄く一定に削るようにできていると考えてよいのではないでしょうか。一方洋鉋は、削り始めは安定しませんが、削った面ができてくると調子がでてくるようです。手押鉋盤は、削る材が1/3程度後方テーブルに移動したら、そちらを基準に削りますが、それに似ているように思います。下の写真は楢の細い材を逆目方向で削っているところです。幅広の板や複雑な木目でどうなるかは???です。ちなみに、この材を日本の仕上げ鉋で削ると、かなり逆目ボレをおこしました。刃の出方や研ぎの状態などもありますので、単純に比較はできませんが、洋鉋の方が広葉樹には適している面がありそうだと感じました。

よく研ぎあげた日本の鉋は、材の上で引くだけで、鉋が木に吸い付きます。それは見方を変えれば、材を上に引っ張っているわけで、木目が湾曲しているところや目切れしている部分では、いわゆる逆目ボレを起こしやすいとも言えます。刃を立てて、すくい角を小さくすれば、切る抵抗は大きくなりますが、木を上に引っ張る力は少なくなります。削った感じは、ほぼそのとおりでした。

 実は今、使っていない古い仕上鉋の刃を裏返して入れ、しのぎ面が上になる”反転鉋”を試しています。反転すると刃先の位置が変わるので刃口を埋めなければいけませんし、押さえ溝や背なじみの調整も必要です。でも反転するとすくい角が30度以下になります。前述の本やLeeVolleyToolsのカタログを見ていますと、すくい角が28度であれば、ほとんど逆目が出ないとされていますので、その角度に近くなるわけです。キレイに削ることができる要素はそれだけではなく、刃のビビリや刃口の狭さ、研ぎなど、いろんな要素があるので、刃の角度だけの問題ではないとは思いますが、日本の鉋で刃を裏返せばどうなるか、お時間のある方は試してみられてはいかがでしょうか?私が削ってみた感じでは、洋鉋と同様、引きは重たいですが逆目でボコッと掘れるのは格段に少なくなりました。

 使った経験がありませんが、洋鉋ではCliftonと並んでLie-Nielsenの評価が高く、実用的なVeritasも良いとされているようです。Veritasならカナダから個人輸入も比較的安心で簡単ですし、オフコーポレイションさんもVeritasの鉋を扱っておられるようですので、入手は容易です。ただし、日本の鉋と同様、本当の調子を出すには、使い手による繊細な調整が不可欠です。私の場合、まだ洋鉋は遊びです。お仕事中心に使われる方は、安易に飛びつかない方が無難かもしれません。

◆ 木工機械による事故の原因統計 ◆

 先月の教室で、木工機械による事故についての話をしました。その資料を作るのに、労働災害データをいくつか見ました。そのどれにも共通なことは、「木工の製造現場での事故の約半数は丸鋸によるもの」ということです。事実、私が直接聞いた事故経験者の話は、全て丸鋸盤(昇降盤)による事故でした。さらに丸鋸盤での事故は、そのほとんどがいわゆるキックバックによるものです。例えば、「細い材に溝突き加工をしていて、突然材が後ろに飛ばされたために、押さえていた手が鋸刃に触れた」とか、「縦引きをしていて、材が突然後ろに飛び、タマタマに当たって、片方が潰れた」などというものです。

 キックバックを説明するのに難しいのは、キックバックの恐さを実演できないことです。一度材が飛ぶ恐ろしさを経験すると、心底慎重になると思うのですが、耳学問だけでは本当にわかっとは言えないのです。でも当然のことですが、事故経験のない方も、キックバックが起きないように対処しなければなりません。丸のこは一分間に3000から5000回転しており、その外周速度は時速150km〜250kmほどにもなります。プロ用の木工機械は力が強く、回転軸の慣性も大きいため、材が飛ばされる速度が鋸刃の外周速度とあまり変わらないはずです。材が飛んで後ろの壁を貫通したという話も何度か耳にしましたし、割り箸程度の材が壁に1cmほど刺さったのを見たこともあります。

 キックバックが起こる状況は実に多様です。グーグルなどで”木工 キックバック 事故”とでも入れて検索してみれば、沢山の事例を見ることができるでしょう。また、アメリカのサイトでは、もっと多くの事例を見ることができます。しかし、ウチの教室のように、たまにしか機械を使わない人が、キックバックを未然に防ぐことは100%できるわけがありません。それで教室では、縦引きはバンドソウで、また昇降盤による溝突き、段欠き加工は、原則禁止しています。

 キックバックを防ぐのに有効な”割り刃”がついている丸鋸は、国内ではあまり見ません。カタログ等でよく見る鋸刃上部にカバーがついているタイプでは、溝突きもできませんし、ホゾの胴突きも加工できません。それで、多くの現場では割刃などの安全装置が取り外されています。しかし下のような三日月型の割刃が鋸刃と連動して、どのような刃高においても、刃の高さより3mmほど低い位置をキープできるなら、ほとんどの加工が支障なく行えます。

長さ決めの横切やホゾの胴突加工ではキックバックはまず起こりませんので、このような加工専用機であれば、キックバック防止装置の設置義務はありません。しかし、三日月型の割刃は、ついていても作業に支障はありませんので、できれば付けてほしいものです。

関西人の名古屋界隈事情 --- 鈴鹿界隈 ---

 2月は寒かったのであまり出歩かなかった。それでストレス解消のため「どこか行こう」ということになり、鈴鹿の「椿大神社」へ行った。名古屋から鈴鹿ICまでは近い。近いけど景色はちょっと信州のような感じで、気温も5度以上低かった。手軽に遠出をした気分になれるのがいい。

 椿大神社は、山を背にしたいい感じ。境内に「さざれ石」が置かれているのを発見。そう、学校で歌わされた「〜〜千代に八千代に、さざれ石の〜〜」のさざれ石だ。あとで調べてみたら、岐阜に「さざれ石公園」というところがあって、そこにはもっと大きなさざれ石があり、それが国歌のさざれ石のモデルらしい。そんなことは知らず、「これがさざれ石というものか!!!」と、その時は妙に感激。鈴鹿山系ではさざれ石がわりとよく産出するらしい。

 

 名古屋の自宅を昼食を済ませてから出たのに、神社から直に帰るとあまりに時間が短い。それで、カーナビで近くの温泉を検索してみた。すると一番近いのが湯の山温泉の「片岡温泉」らしい。あまり聞いたことがない温泉。とにかく、湯の山温泉をめざすことにした。細い山道をカーナビ頼りに30分ほど走ると、突然片岡温泉の前に。結構車が止まっている。人気がありそうな気配を感じたので、ここに入ること決定。

 スーパー銭湯風の玄関を通り、600円を払って湯船へ。けっこう沢山の方が入っているけど、皆さん物静かでいい。湯に漬かると、なんとなく柔らかくて、肌に馴染む感じ。壁を見ると、「加水、加熱、循環など一切しない源泉かけ流し」であると書いてある。「そうか、そうなんや」と、妙に感心した。今までこんなに自分に合った感じがする湯は初めてだった。片岡温泉に限らず、地面から湧き出たままの温泉は、スーパー銭湯とは全く違うかも。こんな正真正銘の温泉が車で1時間以内のところにあるとは、ありがたい。


2010年2月

目次
・木と水分
・関西人の名古屋界隈事情--- 旧東海道 ---

◆ 木と水分 ◆

 教室では毎回、15分程度のミニ講義をしています。今年から、その中で木工を趣味とされている方に役立ちそうな基礎的なことを時々取り上げてみたいと思います。今回は「木と水分」についてです。この話題につきましては下記農林水産消費安全技術センターのホームページが大変わかりますく解説をされていますので、ぜひ参考にしてください。

農林水産消費安全技術センター/木とくらし(木と水分1〜3)

 樹木は生木の時、とても多くの水分を含んでいます。その水分含量を数値として考えるために、”含水率”が定義されています。含水率とは(木材を完全に乾燥させた場合の木質のみの重量)分の(木の水分)を%で表したもので、生木の場合は200%を超えることもめずらしくありません。また、木材を放置しておくとしだいに水分が減っていきますが、その速度はしだいに遅くなり、長い年月を経て、やがて空気との水分の行き来が等しくなって、ある一定の水分含量となります。これを平衡含水率と言います。

含水率(%)=(木材中の水分含量÷木材の絶対乾燥重量)×100

 絶対乾燥重量を知ることは容易ではありませんから、含水率を簡単に知ることはできません。それで普通は含水率計を使って調べます。写真は私が持っている簡素な高周波含水率計です。木材の種類によってその数値を補正する必要があります。

 日本、特に本州は湿度が高いので、木を長年放置して乾燥させても、最高で含水率15%程度までしか乾燥しないとされています。私の実感では、もっと高くて、天然乾燥材の場合は、18%〜20%ぐらいではないでしょうか。

 さて、木の中の水分含量、すなわち含水率が変化すると木が収縮します。それも全体が均一に動くのではなく、方向や部位によって動き方が違います。方向では、木の繊維方向、柱なら長さ方向にはほとんど収縮せず、幅方向に収縮します。板目は最も大きく動き、柾目の場合は板目の場合の約半分です。上記のホームページによりますと、含水率1%の変化に対して、板目では約0.3%、柾目では約0.15%収縮するということがわかります。データから名古屋では年間に平衡含水率が13.5%〜16.5%と変化、全国的に見ても年間2%から多いところでは6%も変化しています。仮に含水率1%の変化に対する収縮率を板目で0.3%、柾目で0.15%とすると、幅1mの板の収縮幅は、次の表のようになります。

含水率変化量 1% 2% 3% 4%
幅1mの板目板の収縮量 3mm 6mm 9mm 12mm
幅1mの柾目板の収縮量 1.5mm 3mm 4.5mm 6mm

 次の写真は10年ほど前に作った幅1mの端ばめを用いたコタツ板です。人工乾燥のタモで作りましたが、梅雨時になると両側に3mmずつ、中央部の天板がはみ出してくるのです。1mで合計6mmも伸びたことになります。

 上記のことから、たとえば框組の扉を作るとき、中に入れる鏡板と框の溝の隙間をどの程度確保したらよいかという問題、ザックリと言えば、2%程度の余裕を見てほしいということになるでしょう。乾燥の激しい冬に作る場合、30cm幅の鏡板なら6mm、両側の溝との隙間は3mmずつということになります。湿気の多い梅雨の時期でしたら、あまり隙間は必要ないかもしれません。塗装によって、その変化をかなり抑えることは可能ですが、それでも最低1%は動くと考えるべきでしょう。

 一般に家具では含水率10%、冷暖房が入る密閉された部屋では8%まで乾燥させた材を使う必要があるとされています。当然自然乾燥だけでは不十分で、人工乾燥をかける必要があります。材木屋さんの話では、アメリカ材の場合、現地出荷時に含水率8%まで乾燥させて船で運ばれ、日本に着くそうです。ですが、日本は湿度が高く、平均平衡含水率は約15%なので、日本の室内では伸びることになります。しかし、8%まで乾燥させた木材は、仮に15%まで水分が増えたとしても、元の状態に戻るのではなく、その変化はかなり小さくなります。これが、「過乾燥の状態から、幾分水分を戻した状態が最も安定している」ということの意味です。

 木と水分について考えてきましたが、”動かない木”を追い求めるだけでは面白くありません。趣味の木工なら、動きを楽しむ--生木の木工--や、動いても支障のない構造にするなどして、強制的に乾燥させた内部割れなどが多い人工乾燥材よりも、動きが大きくても木として扱やすい天然乾燥材を使っていくことも、意味あることではないでしょうか。

(参考)
木の水分に限らず木の性質を学ぶ時、洋書ではありますが、下記の本はとても参考になります。

Understanding Wood : A Craftman's Guide to Wood Technology (2ND)
Hoadley, R. Bruce著
Taunton Pr (2000/10 出版)
Hardcover:ハードカバー版
ISBN: 9781561583584

関西人の名古屋界隈事情 --- 旧東海道 ---

 学生の時、生意気であった。好きな勉強しかせず、嫌いな歴史や古文・漢文などは、授業中寝ていた。やりにくい生徒だったと思う。「今役に立たなくても、何時か勉強しておいたらよかったと後悔するぞ」とよく言われたけど、「そんなことないわ」と思っていた。今になって、その教訓は正しかったと痛感している。また、生前の親父が「ある歳になると”和”に好みが変わる」と言っていたのを思い出す。そう、今になって、歴史が面白くなって、西洋的なものから、和というか日本の昔にとても興味が出てきた。古典や漢文が、すらすら読めたらいいなと思うし、歴史をもっと知っていたらと思う。恥ずかしい。

 夫婦でサイクリングをよくする。自転車は旧道を走るのが得意だ。東海地方は旧東海道の町並みが残っているところが多いので、それを見るのが楽しい。江戸時代というとメチャ古い時代にように感じるけど、私の生まれた年が1953年だから、その100年前は江戸時代末期だったことになる。そんなに昔の話ではない。そこから、明治維新となり、西洋文化が入ってきて、どんどん日本古来の文化も物も捨てていったのではないだろうか。

 旧東海道、ほとんどはズタズタである。かろうじて、いくつかの宿場町が残っている。亀山近くの関宿、初めて行ったけど、予想をはるかに超える長さと風情にびっくりした。こんな道をチョンマゲをつけたおっさん達が歩いていたのだと思うと面白い。昔の人は一日30kmほど歩いたらしいから、大変健脚だったことだろう。その時代に自転車があったら、びっくりしたやろうな。

 現在にもどって考えてみる。身の周りにはなくなっていく物や習慣がいっぱいある。今はその価値に気づかないけど、100年ほど経ったら、それがとても貴重なことであったと気づくかもしれない。「役にたたんから、もう捨てよ」という前に、100年先の子孫の気持ちになって、考えると面白いかも。とは言うものの、現実はきびしい。たとえばフィルムカメラ最後のマニュアル一眼NIKON-FM3Aを買って持っているけど、フィルムを入れたのは二回だけ。デジカメの便利さには勝てません。宝の持ち腐れですわ。

 さて、写真は昨年秋に行った関宿とその近くの一里塚、それに今年行った豊川と蒲郡の間にある御油の松並木です。


関宿


亀山近くの一里塚


2010年1月

目次
・第九回木工教室作品展作品一覧と私の作品
・関西人の名古屋界隈事情--- 京都の繁華街で ---

◆ 第九回木工教室作品展作品一覧と私の作品 ◆

 毎年恒例となりました昨年度木工教室作品展の作品一覧を下記に公開しました。どうぞ、時間を気にせずに作られた木工作品をお楽しみください。
(作品写真の無断転載、転用はご遠慮ください)

第九回木工教室作品展作品一覧

数は少ないですが、昨年度私が作った作品を下記ページに掲載しております。合わせてご覧ください。

2010年度展示会

関西人の名古屋界隈事情 --- 京都の街で ---

 先月初めて夫婦で京都に泊まった。以前京都南部に住んでいたし、学生時代には京都の友人の下宿に何度も泊りがけで遊びに行ったことがある。実は高校生の時、京都に下宿したいと京都の大学を受験、下宿先を決めていたこともあった。だから、京都の街や道はだいたい知っている。しかし、子育てもほぼ終わり、何十年かぶりに京都の街を歩いた印象はとても新鮮だった。

 街には若い人が多くて活気がある。錦の市場、河原町通り、祇園、花見小路・・・、もちろんデパートなど大規模商業施設もあるにはあるが、昔あった場所にそのまま、節度ある規模。両側に個人の店が連なる通りを歩くと、適度な雑踏とお店のたたずまいが不思議に調和していて、気持ちが良かった。いつもは人の多い街を歩くと疲れるのに、京都の街はあまり疲れなかった。

 名古屋市内や近郊には、イオンなどが競って出店した巨大ショッピングセンターがいっぱいある。大曾根にはドーム店があるし、熱田にもさらに巨大な施設があり、各務原や三好等々、よくもこれだけ多数の巨大商業複合施設を作ったなあと感心する。これらの施設には、街の商店街をイメージしたり、横丁をヒントにしたような緩いカーブの道に沿ってテナントスペースがあったりする。よくできてはいるけど、そういうバーチャルな場所はとても疲れる。”どこかに似せて作った街”は、絶対本物に負ける。負けるどころか、いずれ化けの皮がはがれ、逆効果となる。名古屋にも商店街はあるし、実家のある神戸や大阪にも昔ながらの商店街はあるが、多くは衰退傾向にある。でも、これから先、衰退するのは巨大ショッピングセンターであるような気がする。いや、すでにいくつかの施設ではその兆候がでてきている。

 やや飛躍したこじつけの話になるが、小さな工房で作る木工家具も、地道に、真似をしないで、生活に必要な物を作り続けることができれば、いずれそれに味を感じる人が増えてくる、そう信じたい。

 京都の他所では真似のできない歴史の重みを反映した街並、世界から観光客が来るはずだと思った。それに住む人の活力、これが長年培われた京都の魅力だろう。(写真は二条城天守閣跡からの北東方面の眺め)


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