直木三十五賞 |
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−第126回直木賞発表−
第126回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考委員会が16日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に長嶋有(ゆう)さん(29)の「猛スピードで母は」(文学界11月号)が、直木賞には山本一力(いちりき)さん(53)の「あかね空」(文芸春秋刊)と唯川恵(ゆいかわ・けい)さん(46)の「肩ごしの恋人」(マガジンハウス刊)が選ばれた。副賞は各100万円。授賞式は2月22日午後6時から、東京・丸の内の東京会館で開かれる。
山本さんは高知市生まれ。東京都立世田谷工業高校卒。旅行会社勤務やコピーライターなどを経て作家に。97年「蒼龍」でオール読物新人賞。「損料屋喜八郎始末控え」「大川わたり」など、江戸の下町を舞台にした時代小説を書き続けている。東京都江東区在住。
受賞作は、江戸の深川で開業した京都の豆腐職人永吉とその家族の物語。様々な苦難に見舞われ、時に離反しながらも共に生きる家族の姿を、情感豊かに描き上げた。
会見場に現れた山本さんは、江戸の職人を思わせる風ぼう。もの書きの職人に徹し、庶民の哀感を描いてきた。文芸ビデオの制作で借金を抱えるなど厳しい人生を歩んできた。「『あかね空』は自らを鼓舞するための物語でもありました」
唯川さんは金沢市生まれ。金沢女子短大卒。元銀行員。少女小説作家を経て、OLなど若い女性の生き方や恋愛を活写した小説、エッセーを発表している。主な作品に「愛なんか」「ベター・ハーフ」「ため息の時間」。東京都目黒区在住。
受賞作の主人公は、有能に仕事をこなす自立した女性。シニカルな男性観、恋愛観を持つ。一方、親友は美貌(びぼう)をたのみに、結婚と離婚を繰り返しては、より豊かな生活を保障してくれるはずの新しい夫を探す。対照的な2人の恋の行方を描いている。
会見では、故郷・金沢市内の銀行で事務職員として過ごした10年を振り返り、「私の大きな財産。フラットに社会とかかわったこの時間があったからこそ、私の中に普通であることを大切に思う気持ちが育った」。
井上さんは、今回の直木賞候補作について「粒ぞろいでどの作品が受賞してもおかしくなかった」と評価。山本さんの受賞作については「当時の空の色やにおいまでも再現しようとする時代小説への基本的姿勢に好感が持てた。2部構成になっており、1部で読者を突き放し、2部でナゾを埋めていく知的な構造にも感心した」とたたえた。
唯川さんの受賞作については「すばらしい家庭小説だ。危機にひんした家庭に育った3人の主要人物が、短い時間『疑似家庭』をつくることで自分を取り戻していく。会話も軽快でテンポよく、ものすごく面白い掛け合いになっている」と述べた。
(以上全て、朝日新聞:2002年1月17日朝刊)
−第125回直木賞発表−
第125回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考委員会が17日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に玄侑宗久(げんゆう・そうきゅう)さん(45)の「中陰の花」(文学界5月号)が、直木賞には藤田宜永(よしなが)さん(51)の「愛の領分」(文芸春秋刊)が選ばれた。藤田さんの妻の小池真理子さんも96年に直木賞を受けており、同賞では初めての夫婦受賞となる。副賞は各100万円。授賞式は8月22日午後6時から、東京・丸の内の東京会館で開かれる。
藤田さんは福井県出身。パリで会社勤めの後、帰国。フランス語の塾教師などをへて作家に。作品に「鋼鉄の騎士」(日本推理作家協会賞)、「巴里からの遺言」(日本冒険小説協会最優秀短編賞、直木賞候補)、「樹下の想い」(直木賞候補)、「求愛」(島清恋愛文学賞)など。長野県軽井沢町在住。
受賞作の主人公は高級服の仕立職人。彼と、古いなじみの顧客夫婦、双方に因縁のある若い女性の間に交錯する切ない愛の行方を描いた。
−第124回直木賞発表−
第124回芥川賞・直木賞の選考委員会が16日、東京・築地の新喜楽であり、芥川賞に青来有一さん(42)の「聖水」(文学界2000年12月号)と堀江敏幸さん(37)の「熊の敷石」(群像同)が、直木賞には重松清さん(37)の「ビタミンF」(新潮社刊)と山本文緒さん(38)の「プラナリア」(文藝春秋刊)が決まった。副賞は各百万円。授賞式は2月22日午後6時から東京・丸の内の東京会館で開かれる。
重松さんは岡山県生まれ。早稲田大学卒。出版社勤務を経て著述業に。複数のペンネームで週刊誌のフリーライターなどをして活躍のかたわら、現代の家族を描いた小説を書いている。「ナイフ」で坪田譲治文学賞、朝日新聞に連載した「エイジ」で山本周五郎賞。東京都在住。
重松さんは「自分にとって最も切実なリアリティがあるのはニュータウンやリビングルーム。そこから小説作りが始まっている」
山本さんは横浜市生まれ。神奈川大学卒。会社勤務の後、88年に少女小説家としてデビューし、92年から本格的な作家活動に入った。
99年に「恋愛中毒」で吉川英治文学新人賞。著書に「落下流水」「結婚願望」など。東京都在住。
山本さんは「私はどこからともなく現れた作家。夢は直木賞候補になることでした。その化け物のような賞をいただくことになり、解放感があります」と話した。
直木賞選評
全体的に高い水準で並んだ候補作に、審査は長引くことが予想された。しかし案に反して第一回の投票から選考委員の支持は、山本、重松さんの作品に集中。二作をめぐる細部の検討が行われた結果、満票に近い評価を得た山本さんの「プラナリア」と、ほぼ互角で重松さんの「ビタミンF」の同時受賞が決まった。
「山本さんの候補作は、収録の五つの短編のどれもが、趣向を異にしながら読み応えがあった」と阿刀田高さん。
特に受賞作中の一編「あいあるあした」に言及。
「従来、自分と同世代の若い女性を描いてきた山本さんが、私の知る限り初めて中年男、オヤジを主役にした。これが秀逸な出来で、山本さんが“隠し球”を出したな、と。山本さんは芸域を広げた」と絶賛した。
重松さんについては、「良質な作品を書き続けてきたアベレージヒッター」と位置づけ、「『ビタミンF』における子供をとらえる目の確かさ、いきいきとした大人と子供の会話、そしてユーモア」に面目を見る、と指摘。
「スケッチ風の軽みが食い足りない」との声もあったが、「この作家の持ち味。受賞を機にさらに新しい境地を開くことを期待したい」と述べた。
(以上全て、朝日新聞:2001年1月17日朝刊)
−第123回直木賞発表−
今回から直木賞選考委員に宮城谷昌光さん、北方謙三さん、林真理子さんの三人が加わり、久々に十人以上の選考委員による討議が交わされた。直木賞選考委員の井上ひさしさんが選評を発表。
直木賞選評
直木賞は二回の投票の末、金城さんの「GO」、船戸さんの「虹の谷の五月」、重松清さんの「カカスの夏休み」の三作が残った。
三回目の投票で「GO」が頭一つ抜き出た。井上さんは「小説という表現形式を見つけた喜びが作品に躍っている。新鮮で生き生きとしており、文章がいい。ユーモアもある」と語った。
船戸さんと重松さんの作品は殆ど差がなく、受賞作を三作に、という声も出たが、議論の末、原稿用紙千八百枚以上ある船戸さんの作品の迫力が勝った。
船戸さんについて「今更ノミネートするのはおかしいほどの大家だが、圧倒的な筆力と面白さがある。船戸さんの作品は独特のアクの強さが持ち味だったが、それがとれた。フィリピン・セブ島の風土や習俗の描写に迫力がある」
井上さんは「才能のキラキラした新人と大家という組み合わせになり、直木賞は大したものだと自画自賛しています」と語った。
(朝日新聞:7月15日朝刊)
回数 | 年度 | 作家名 | 作品名 |
101 | 1989年上期 | ねじめ正一 | 高円寺純情商店街 |
笹倉 明 | 遠い国からの殺人者 | ||
102 | 下期 | 星川清司 | 小伝抄 |
原りょう | 私が殺した少女 | ||
103 | 1990年上期 | 泡坂妻夫 | 蔭桔梗 |
104 | 下期 | 古川 薫 | 漂泊者のアリア |
105 | 1991年上期 | 芦原すなお | 青春デンデケデケデケ |
宮城谷昌光 | 夏姫春秋 | ||
106 | 下期 | 高橋義美 | 狼奉行 |
高橋克彦 | 緋い記憶 | ||
107 | 1992年上期 | 伊集院 静 | 受け月 |
108 | 下期 | 出久根達郎 | 佃島ふたり書房 |
109 | 1993年上期 | 高村 薫 | マークスの山 |
北原亜以子 | 恋忘れ草 | ||
110 | 下期 | 大沢在昌 | 新宿鮫 無間人間 |
佐藤雅美 | 恵比寿喜兵衛手控え | ||
111 | 1994年上期 | 海老沢泰久 | 帰郷 |
中村彰彦 | 二つの山河 | ||
112 | 下期 | 受賞作なし | − |
113 | 1995年上期 | 赤瀬川 準 | 白球残映 |
114 | 下期 | 小池真理子 | 恋 |
藤原伊織 | テロリストのパラソル | ||
115 | 1996年上期 | 乃南アサ | 凍える牙 |
116 | 下期 | 板東眞砂子 | 山妣 |
117 | 1997年上期 | 篠田節子 | 女たちのジハード |
浅田次郎 | 鉄道員 ぽっぽや | ||
118 | 下期 | 受賞者なし | − |
119 | 1998年上期 | 車谷長吉 | 赤目四十八瀧心中未遂 |
120 | 下期 | 宮部みゆき | 理由 |
121 | 1999年上期 | 桐野夏生 | 柔らかな頬 |
佐藤賢一 | 王妃の離婚 | ||
122 | 下期 | なかにし礼 | 長崎ぶらぶら節 |
123 | 2000年上期 | 金城一紀 | GO(ゴウ) |
船戸与一 | 虹の谷の五月 | ||
124 | 下期 | 山本文緒 | プラナリア |
重松 清 | ビタミンF | ||
125 | 2001年7月 | 藤田宜永 | 愛の領分 |
126 | 2002年1月 | 山本一力 | あかね空 |
唯川 恵 | 肩ごしの恋人 | ||
候補作品 | 石田衣良 乙川優三郎 黒川博行 諸田玲子 |
娼 年 かずら野 国 境 あくじゃれ瓢六 |
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