ケース 3 Mさん 30歳代中期

 

不妊治療暦:5年
不妊治療を始めた年齢:32歳

結婚すれば妊娠は誰もができるものだと思っていました。
しかし1年経っても一向に妊娠に至らず・・

正直な話、結婚する前から同棲しており子供が欲しいと思っていたので欲しいと思って1年どころではありません。


私の体のどこかが悪いせいで妊娠しないのでは?そんな思いからインターネットで検索した結果「不妊」の文字が浮かんできました。

最近よく耳にするようになった「不妊」。
まさか自分が?と不安になってきました。


年齢と共に子宮も老化すると聞き、このままでは子供ができないのではないか?
そんな思いから婦人科の門を叩きました。

 

行った先は市内で不妊治療が有名なI産婦人科
年齢のこともあり 治療を始めるなら今がチャンスと言われました。
細かい検査を何種類か受け冷え性なところがあるので漢方薬を飲んでみましょう、旦那さんの精子の検査もしてみましょう、と治療はドンドン進んでいきました。


結果、旦那の精子には問題が全くありませんでした。
と、なるとやはり不妊の原因は私?

不妊には冷え性が多いと言います。
そのせいで私も妊娠しないのだろうから漢方薬を飲んだらきっと妊娠するんだ・・
そう思っていました・・が、現実は違いました。


I病院で1年ほど漢方薬を飲み、他の治療を続けながらもAIH(人工授精)を5回ほど行いましたがカスリもしませんでした。

不妊にはI病院がいい・・口コミなどでそんなコメントが書いてありますが、全員が妊娠するとは限らない、初めてそう痛感しました。

 

あとから治療を始めた友達や結婚したばかりの友達が次々に妊娠していく中で年齢のことも重なって気持ちは焦る一方です。
友達の「大丈夫、赤ちゃんできるよ!!」の言葉さえも皮肉に聞こえてくる始末。
いつからこんなに自分は嫌な人間になってしまったのか・・そんな悩みも出てきました。


不妊にはストレスがよくない、それもわかっています。
でも妊娠を希望する女性に不妊こそがどれほどのストレスか・・
不妊を経験した人じゃないとわからない苦しみだと思います。


妊娠がゴールじゃない、でも出口がどこにあるのかもわからない真っ暗なトンネルに入りっぱなしで本当に辛い日々でした。

I病院がダメなら次!と思い、新しくできたAクリニックにI病院には黙って転院しました。
自分なりに今までの経緯なども書いて先生と問診しました。

 

病院が変わると今までの方針も変わります。
そして何といっても気持ちも変わります。
何となくこの病院なら妊娠できそうな感じになりました。

 

I病院と違って流れ作業のような治療でもなく、先生とゆっくり話しをする時間もあります。
自分なりに調べて疑問に感じたことも尋ねることもできました。


その頃、ブログを始めて全国の不妊治療中の方と知り合いになり、お互いの情報交換の場ができました。
こっちの病院はこんなことをしている、あの人はこんなものを食べている。
今まで自分だけでは知りえなかった情報がたくさん入ってくるようになりました。


内膜を厚くする食べ物は大豆系がいい、ノンカフェインの飲み物が身体にいいらしい、高温期は重いものは持っちゃダメなんてことも・・

その中で「鍼治療やってます」というお友達に出会いました。
鍼?鍼やお灸と聞くと高齢者のイメージがあった私・・
えー!鍼ってどうなの?


そう思って調べ始めると「冷え性に良い」と書いてありました。
冷え性だけが不妊の原因とは限りませんが、女性は身体を冷やしちゃいけないことだけは確かだと思います。

郡山市で鍼・・それも評判のいい鍼・・口コミなどを参考に探し始めました。

 

そこで出会ったのがハリポさんです。
偶然にも勤務先の社長が通っている鍼治療院でした。
社長から紹介してもらい早速予約のメールを入れてみました。

 

初めての鍼体験
痛いのかな?効果あるのかな?
前日はそんな不安もありながら、今度こそ妊娠するかもと期待もありのドキドキでした。

 

鍼初体験の日は不妊治療での経緯などを簡単にお話ししたと思います。
先生は黙って最後まで聞いてくれていました。
初めての鍼、不安はありましたが、いざ治療が始まったらそんな不安は飛んでいってしまいました。


鍼は想像した痛さもまったくなく苦痛を感じたことはありません。
根がお喋りな私は鍼の治療中も先生とお喋りに夢中(笑)
途中から鍼の治療に来ているのか先生とお喋りに来ているのかわからなくなるほど。

 

そうこうしているうちに鍼に通い1年。
不妊治療は相変わらずでした。


転院したAクリニックでもAIHが5回以上となりそろそろステップアップしてみようか、と話が出始めました。
ステップアップ=体外受精です。
不妊治療はとにかく時間もお金もかかります。
早く妊娠すればもちろん治療費も少なくて済みます。


でも私はかれこれ治療暦4年・・
仕事をしながらの不妊治療、時間も合わなければ体外受精もできません。
仕事を辞めればお金は減ります お給料が1人分になるわけですから・・
それでも私は仕事をしながらの体外受精に挑みました。

 

体外受精周期になると毎日病院通いです。
幸いにもAクリニックと私の家は歩いて3分。
仕事中も外回りに出るおかげで病院の午後休診のときはお昼ギリギリに行く事が可能です。


それでも仕事をしながらの治療は大変でした。
もちろん治療の合間には鍼にも何度か通いました。
体外周期が始まる前からハリポの先生には「いつ妊娠してもおかしくない体になっていますよ」と言われていました。
その言葉が私にとっては本当に嬉しくて期待が膨らみました。

 

結局体外受精で採卵できたのは3個
そのうち受精卵まで進んだのは1個
1個の受精卵を私の体に戻すことになりました。


大事な1個の受精卵
どうかうまく着床してくれますように・・
冷やさないように、重いものを持たないように・・

 

受精卵を子宮に戻して10日後。
判定の結果陰性・・妊娠に至りませんでした。

こうして初めての体外受精は終りました。

初めての、というか、私の最初で最後の体外受精が終りました。


そしてこれをキッカケに私は心身共に疲れはて、離婚を決意しました。

体外受精での採卵で空の卵胞ができすぎ お腹周りが83センチまで膨らみました。
腹水が貯まってしまったのです。


不妊治療は女性の体にかかる負担が大きいのは知っています。
中でもホルモン剤を使う体外受精なら尚更です・・
そこまでしても妊娠しない自分の体が嫌になりました。
お金をかけてくれた旦那にも申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

 

そして出した結論が「離婚」です。
私と一緒にいたのでは跡継ぎができないから、そう旦那に無理を言いました。
嫌だと言っていた旦那を説得して体外受精判定から2ヶ月で出した結論です。

 

こうして私の不妊治療生活、結婚生活そして鍼治療が終りました。


体外受精の結果も先生にはお伝えしました。
とても残念がってくれていました。
そして「離婚」したことも一緒に伝えました。
こちらの報告はとてもビックリなさっていました(笑)


鍼に行く事がもうないだろうな、と私も考えるととても寂しい気持ちになりました。
それでも回数こそは減ったものの、腰痛などでお世話になっていました。

独身生活も慣れてきた頃、私に奇跡が起きました。


子宮頸がん検査に行くことになっていたのですが、生理予定日を過ぎても生理がきません。
検査の予約を取ろうにも生理が来ないので予約がとれず困っていました。
そんなとき、ふと思い出したのが妊娠検査薬・・


不妊治療をしていた頃、高温期が16日を超えると「妊娠したかも」と言っては検査薬を試していました。
大抵は検査薬を試した翌日に生理がきたりしてガッカリするのですが・・(笑)
今回はこれを逆に利用しようと思ったのです。


検査薬をやれば生理が来るだろうと・・

そんな安易な考えから検査をして私は驚きました。
妊娠検査薬で今まで見た事がない陽性反応が出たからです。


離婚して半年過ぎた頃からお付き合い始めた彼との間に、たった2ヶ月ほどで妊娠したのです。
結婚生活5年間 不妊治療暦5年 どんな治療をしても一度も妊娠しなかった私がたった2ヶ月付き合った彼と・・妊娠?
これには私も彼もそして両親もビックリでした。

 

病院での不妊治療が今になって効いた、なんてことはないと思います。
半年以上も治療をやっていないのでホルモン剤はすっかり体から抜けているはずですから・・
不妊治療自体に効果はなかったと思いますが、妊娠するために行ってきた「鍼」や「食生活の見直し」は役に立っていると今でも思っています。


もちろん、不妊治療を考えないで気楽に生活したことが一番だと思いますが・・

私の場合、鍼が効果あったのもありますが、
先生との会話は苦しい不妊治療中の唯一の癒しの時間でしたからきっとそういう時間を持つことも大切なのではないかと思います。
妊娠しない身体だ、なんて考えるより身体にいいこと、気持ちがいいことだけをして生活したほうがいい結果になるような気がします。

 

ハリポよりコメント

 

不妊症は、妊娠出来ないのか、それとも、まだ妊娠に至っていないだけなのか、その辺の区別が難しいですね。

このエピソードは、考えさせる内容を含んでいると思います。

 

まだ妊娠に至っていないのならば、それは不妊ではありません。

あえて表現すれば未妊です。

不妊症という定義は、一部の症例を除いて実に曖昧なのです。

 

さて、病院での不妊治療を止めた後に、あるいは、治療を休んでいる間に妊娠したという話しはめずらしくありません。

 

そのメカニズムを考えてみると、一つは皆さんがよく言うように治療の心的なストレスからの解放でしょう。

もう一つ掘り下げてみると、これは私見ですが、ホルモン治療などの身体にとって「きついインパクト」がある状態から解放されて、生殖器が正常化するということがあるのではないかと思うのです。

 

つまり、病院で行っている治療は身体の負荷という点で刺激になり、しかし(治療)刺激となっている間は、それが過剰過ぎてかえって機能が安定しない。

だから止めたり、中止したりすると、身体に余裕が生じて機能が安定する。

 

もし、そういう事があるのだとすれば、直後に結果が得られなかった病院での治療も、一概に「無駄」とは言えないかもしれません。

なぜならば、そういう期間(治療)を経なければ、機能が活性化したり安定化したりする「きっかけ」がなかった可能性があるからです。

いずれにしても、わからないことが多い分野であることは確かです。

 

 

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