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2012年10月の見聞録



10月8日

 我孫子武丸『8の殺人』(講談社文庫、1992年(原著は1989年))を読む。8の字形をした屋敷で起きた殺人事件。警視庁捜査一課警部補である速水は捜査を始めるが、捜査が進むなかでも、さらなる殺人が連続して殺人が起きていく。推理マニアである速水の弟と妹も加わって、この謎に挑戦していくが、真相らしきものに到達しては、新たな矛盾が生まれて、と二転三転を繰り返ていくなかで判明した真の犯人は…。
 著者の長編推理小説のデビュー作らしい。個人的には、色々と真犯人説が提示されていくなかで、怪しいやつがやっぱり犯人だった、というオチな気がして、どんでん返しの繰り返しの結末が結局それなのか、とやや拍子抜けしてしまった。なお、解説にて島田荘司は日本の返本制度のもとで出版点数が激増している状況を指摘しているが、これは永江朗『本の現場 本はどう生まれ、だれに読まれているか』での批判を、ややゆるめに述べているといえる。


10月23日

 遠山美都男『大化改新 六四五年六月の宮廷革命』(中公新書、1993年)を読む。蘇我家が滅亡した乙巳の変は中大兄皇子が中心となって引き起こしたものではなく、古人大兄王を立てようとした蘇我家が彼に見放され、軽王子を中心とするグループによって打倒された政治闘争だと見なす。
 仕事での関係上で読んだのだが、以前読んだ中村修也『偽りの大化改新』よりも先に出版されている。あちらと主題は同じだが、本書は乙巳の変そのものとそれまでの状況に力点を置き、軽王子のグループに属する人間を逐一検証し、そうした人物が実は軽王子と近しい地域を勢力範囲にしていたり、また彼との結びつきが強い実態を詳しく見ている。中村修也『偽りの大化改新』の方が読みやすいとは思うが、こちらの方が先に書かれているという点は重要だろう。


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