雑想庵




(2000年10月10日開設)

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2017年8月16日更新<見聞録>)

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最近の見聞録


8月16日

 本郷和人『武士から王へ お上の物語』(筑摩書房(ちくま新書)、2007年)を読む。日本の中世には天皇と将軍が並び立っていた。ただし、「どうあるべきか」という当為からではなく「どうあるか」という実情から捉えれば、王としての権力を実情として維持していたのは幕府であった。とはいえ、幕府は全国を統治するだけの力は有していなかった。たとえば、室町幕府は、東北と関東の支配を鎌倉公方の手に委ねるなど、東国を切り離してさえいる。そのために、各地で土着の勢力が領民を食べさせるために統治を行いつつ並び立っていた。これらも王権と見なしうる。したがって、王権とは自立しながら統治者として自らを律する存在であり、「王であろう」とすることはよりよく統治する意欲に他ならない、と言える。そのうえで、幕府と朝廷は相互補完の関係にあった。幕府は朝廷に武力を援助した。その一方で幕府は朝廷から様々な知見や方法を学んでいった。
 大まかの概略はこうなるのだが、そのうえで、土地と貨幣、東と西、仏教、一向宗などのトピックを取りあげる。そのなかでも特に興味深いのは、一向宗に関してだった。数ある阿弥陀の中で阿弥陀だけを選んで帰依する態度は、一神教的であるとする。そうした一向宗が、リゾーム的に横のつながりで民衆を束ねていく。こうしたリゾーム的な集団に対抗すべく、縦のつながりによって束ねていくツリーを基軸とする武家王権は領木を超えて拡大していき、最終的には江戸幕府という全国的な王権が誕生し、なおおかつ朝鮮出兵の失敗により東アジア世界からの利益に期待できない状況となり、安定的に成長する道へと舵を切って鎖国となり中世は終わる、とする(なお「鎖国」という言葉を用いているが、荒野泰典『「鎖国」を見直す』(川崎市生涯学習振興事業団かわさき市民アカデミー出版部、2003年)によれば、「鎖国」という言葉は19世紀初頭に初めて登場したので、概念としては便利だが安易に用いない方がよい気もする)。
 中世史に興味を持つための本としては、網野善彦『「日本」とは何か』が何と言っても一番だと思うのだが、日本中世史の流れをすっきりと理解するための本としては、こちらがおすすめだと思う。個別事例も出てくるのだが、それらの紹介の集積を通じて中世史を描くのではなく、あくまでも中世史の本質を理解するための材料として個別事例が取りあげられている。わかりやすくなおかつ読み物としても面白い。もちろんまったく何も知らない人が見てもよく分からないかもしれないが、興味はあるのに教科書や概説書を読んでもいまいち理解できない、という人には十分におすすめできる。もちろん専門家からすれば、批判もあるだろうが、より高度な議論に進むための土台としては、文句がないできばえではなかろうか。
 以下メモ的に。よりよく統治するという点から見れば、鎌倉時代の武士は、伊勢国の藤原実重の手紙などを見る限り、あまりにもたどたどしい文字であり、統治者としての教養を保有していたとは言えない。実際に領民のよりよい生活を考慮した統治は行われていない。たとえば後醍醐天皇の忠臣であった結城宗広は、生首を見ないと調子が悪いので、僧俗男女を問わずに殺害したそうである(72頁)
 土地は、新たな実りを毎年もたらすからこそ、消費される動産に比べて不動産は価値を持っていた。さらに、自身が滅びても家が栄えれば、その記憶は家とともに受け継がれると信じたかったからこそ、家名を永続すべく経済的に支える荘園の獲得が必要になったと考えられる(100~101頁)。
 中世のように公権力が経済を十分に掌握していない中世においても、財布と呼ばれる為替手形が、高額紙幣のように用いられていた。危険ではあっても、中世社会に生活する人々はそれを欲するからこそ、用いられていた(107頁)。なお土地を基盤とした武士たちは、西国へ進出していく際に銭を規準とした社会の変化に巻き込まれていく、とある(108頁)。元寇のころに武士が困窮したのも分割相続のためではなく(そうした事態の危険性は予見できたはず、と否定的に見ている)、貨幣経済の浸透によって、土地を基盤として物への執着が戒められていた武士たちが、物価の高騰に対応できなくなったため、としている(118頁)。ちなみに、網野善彦『「日本」とは何か』には、東日本では貨幣が主に用いられ続けたが、西日本では16世紀後半以後には米が物価の基準となる場合が多かった、と書いてあった気がする。ただし、東西が分かれていた状況についての言及もあり、西国は東アジア世界の交易圏に組み込まれていた、との指摘もある(140頁)。
 なお、定住を歓迎する権力者とは無縁のところで活動する海の武士団への言及があるが(136頁)、鎌倉幕府のころから何とか介入をしていこうとしていた様相はこれについては黒嶋敏『海の武士団 水軍と海賊のあいだ』が詳しい。
 加えて、鎌倉幕府は立秋の集団を重用し、彼らの有していた優秀な建築技術を用いて土木工事を推敲した、とあるが、寺社勢力のそもそもの独自性についても伊藤正敏『寺社勢力の中世 無縁・有縁・移民』が詳しい。このように、他の色々な本との発展的な連関性が考えられる点で、やはり網野善彦『「日本」とは何か』に近いような包括的な書であると言える。
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8月6日

 町田祐一『近代日本の就職難物語 「高等遊民」になるけれど』(吉川弘文館(歴史文化ライブラリー)、2016年)を読む。明治から戦前に至るまでの大学生の就職問題の歴史的な流れを見ていく。天野郁男『教育と選抜』をさらに実証的にしたような感じで、麻生誠『日本の学歴エリート』にて論じられた産業界での高学歴化の前段階と言ったところか。明治半ばに藩閥から学閥縁故へと採用形態が変化していくなかで、教授推薦も行われるようになっていった。ただし、医学や工学などの実学分野を除くと、人文系も社会科学系も景気が良くなれば就職は見つかりやすいが、不景気になると就職が難しくなるということが繰り返された。なお、大正末には学校推薦を前提としながらも、面接や筆記を導入する会社も現れるようになる。現代とほぼ同じ状況が戦後からあっただけではなく、現代ならば就職難などほぼあり得ないような大学でも、就職できなかった学生がいたのだと分かる。ちなみに、1920年代後半には、優秀学生を引き抜かれるという中小企業の不満がすでに存在していたらしい。
 以下メモ的に。大正初期の東京帝大の学生は、約3割が職業未定または不詳であった(42~43頁)。ただし1918年には、11.1%に改善している(94~95頁)。
 大逆事件において、高等遊民と見なしうる者たちの存在が、当時の学制改革に影響を与えた。学生の数を増やせば、そのような事件を起こすような学生=高等遊民が増えると懸念されたため、結果的には1913年に改革は無期限延期となってしまった(70~71頁)。
 1930年代中盤まで、史学出身者は卒業後すぐに就職できるのは稀だった。大学院生として研究活動をしつつも生活問題に苦悩していた。たとえば秀村欣二は「就職は誰かひとり地方の女学校のくにちにありついただけで、あとは十数名揃って失業カムフラージュの大学院入りをした」(歴史学研究会 『証言 戦後歴史学への道』(歴史学研究会、2012年)(未読)と述べている(141~142頁)。
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便利な商品コーナー

かつて、「茶の間の呟き」で紹介したことのある商品の中から、
個人的に使い勝手のいい物をピックアップしています。

SX-CL02MSV (2009年5月7日)
 ノートパソコンの背面下部に置いてUSBにつなぐと風を送ってくれて、ノートパソコンの底面を冷やしてくれる(なお、バスパワータイプのUSBハブにつないでも作動してくれている)。これはかなり劇的な効果があるので、パソコンの熱さにお悩みの方は是非。なお、これはB5サイズ用で、A4サイズ用はSX-CL03MSVになる。


ブックストッパー (2009年5月7日)
 洗濯ばさみに分銅のようなおもりが付いたようなもので、見た目はかなりショボイのだが、本の両端にはさんでおけば、常に見開き状態にすることができる。文庫や新書、ペーパーバックなどを見ながらパソコンに情報を打ち込むのに便利。2つ一緒に用いないと使いづらいので、買うならば2つ一緒に。


桐灰カイロ 上からはるくつ下用 5足入 (2014年2月25日)
 靴下の裏から貼るカイロだと、冷たくなったときに硬くなってしまい、歩いていると足の裏が痛くなってしまうのだが、上から張るのだとそうならくて便利。


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