雑想庵




(2000年10月10日開設)

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2018年1月3日更新<見聞録>)

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2018年ヨーロッパで「昆虫食」の取引が自由化 食文化は変わるのかlivedoor NEWS
 サプリンメントやプロテインバーから始まっていけば、確かに思いのほか早く浸透するかもしれない。
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当庵の覚書(2008年3月更新)
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最近の見聞録


1月3日

 金沢百枝『ロマネスク美術革命』(新潮社(新潮選書)、2015年)を読む。ヨーロッパにおける11世紀から12世紀のロマネスク美術を、知識より感情を、写実よりかたちの自由を優先する新たな表現として評価する立場から紹介していく。
 いまさら、ロマネスクを写実的ではないと低く評価する者などいないだろうが、本書で指摘されているとおり、確かにピカソなどを経た後ではそれは当然であるとも言える。それでも、ノルマン征服を描いたバイユーのタピストリーが19世紀に至るまで美術的な価値は評価されていなかった、というのは驚きだが。たとえばナポレオンは、あくまでもイングランド征服という政治的な価値に重きを置いて、ナポレオン博物館で展示させたらしい(46~47頁)。
 なお、なぜロマネスク様式が用いられたのか、という根源的な問いについては、どうやら解答が難しいようだ。個人的には、阿部謹也『蘇える中世ヨーロッパ』(日本エディタースクール出版部、1987年)にて説明されている、キリスト教を信じてはいなかった民衆へ布教するために、まだまだ信じられていた怪物たちの図像を見せて、教会へ来ればそれらから守ると教えた、という説がわかりやすくて好きである。だが、本書で述べられているとおり、12世紀以前の教会にはそれほど図像がないのであるならば、この説の妥当性は低いのかもしれない。
 やがてロマネスクからゴシックへと移っていくが、ゴシックにおいては大聖堂への部分的な寄付を王侯貴族や富裕層たちが行うようになっていく。その結果として、聖堂内部の空間は分断され、私有化もされていった。こうしてロマネスク的な一体感は崩れていくことになる、ということらしい。だからこそ、内部の装飾も世俗の宮廷文化に近づいていくようである。なお、ゴシック期には巨大な建築ゆえに大量生産による制作へと変わってもいくようである。
 以下、メモ的に。11世紀の聖堂建築ブームは、封建制の確立による安定化、農業革命による新たな開拓に基づく村の建設とそれに伴う聖堂の建造、聖地巡礼の流行が挙げられる(59~63頁)。
 カール大帝は、アーヘンの宮廷礼拝堂を建てるため、ローマやラヴェンナで石柱や大理石などの建材を集めさせている。ローマ帝国皇帝として戴冠したカールにとっては、古代の再生を示すための格好の道具であった。なお、「再利用」にあたるラテン語のspoliaは「戦利品」が原義に含まれている(66頁)。
 ロマネスクの壁面彫刻はあらかじめ定められた枠があるために、そこに併せるように歪んだ姿に見える。しかし、枠に併せればそこで自由な表現が許されたとも言える。たとえば、最後の審判の彫刻に描かれた罪人の姿は、異様に長くてくの字に曲がっている。これは、恐怖や絶望の表現として使われている(100頁)。ちなみに、伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』で指摘されているように、マンガではコマの形の自由が許されているが、これとは逆の動きなのかもしれない。なお、ここには隙間に対する恐怖があったとも言える。古代末期の石棺やバロックの彫刻にも、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた構図はしばしば窺える(90頁)。
 ロマネスク美術で描かれる海獣ケートスは、古代ギリシアのころから図像化されている。ギリシアの壺絵では全体像は描かれず大きな口が強調されていた。ただし、ローマ時代になるとアイリアノス『動物の性質について』には、「獅子、ヒョウ、雄羊の頭を持つ」ケートスが描かれるようになる。なかでも犬のような長い鼻面と前足を持ち鱗のある尾が長くとぐろを巻いたケートスが増える(114~115頁)。古代末期にはキリスト教徒も葬礼美術に用いた。「マタイ伝」第12章第40節での海に投げ込まれたヨナが怪物に飲み込まれたものの陸地にはき出されて助かったという逸話にて、怪物にケートスの語が当てられているためである。なお、イエスはヨナのように死から復活すると予言している。したがってケートスは神の使いとして登場している(116頁)。古代末期のキリスト教徒たちは、この生き物を図像化する際に大魚ではなく、怪物のイメージを用いた(118頁)。だがロマネスク期には、古代の規範が薄れて柱頭に物語が刻まれていったのと同じように、ケートスは誰にでも分かる魚型となった(120頁)。
 古代ギリシアのドラコーンは、アリストテレス『動物誌』やパウサニアス『ギリシア案内記』に見られるように、大蛇であった。ラテン語でも同様であった。アウグスティヌスも「創世記注解」では、「竜に脚はなく、洞穴に休み、しかも空へ舞い上がるといわれている」と記している。
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12月24日

 ジェイコブ・ソール(村井章子訳)『帳簿の世界史』(文藝春秋、2015年)を読む。ヨーロッパ史における帳簿の位置づけに関して、古代や中世の事例にも簡単に触れつつ、中世イタリア商人から近世を中心に現代をも含めて述べていく。
 物凄く簡単に言えば、経済的な繁栄を維持できるのは、複式簿記に基づく帳簿をきちんと付けていたか否かにかかっている、というのが全体的なテーマであろう。さらに、支配者が会計の仕事をどちらかといえば蔑む傾向が20世紀に至るまで続いていたことにも繰り返し触れられている。もちろん帳簿をきちんと付けることは、合理的な経営に不可欠であろう。それは繁栄の土台と持続にはつながると思う。だが、結局のところ事業に成功することなくしては、繁栄することは適わないのではなかろうか。現代のように複式簿記が当たり前になっても、事業が上手くいかないからこそ粉飾決算を行うのだと思われる。その意味で、帳簿の世界史は没落の世界史なのだろう。本書を読みながら、浅羽通明  『天皇・反戦・日本 同時代論集治国平天下篇』『昭和三十年代主義』での成長しないなかでどのような心持ちでいるかという問題と、高橋洋一『日本経済のウソ』の項で述べたそれでも「上に引っ張っていこうとする力がなければ、そうしたスケールダウンを緩やかに行うことすらできずに、急降下して崩壊してしまうような気がする」と書いたことを思い出した。
 ちなみに、帳簿に基づく計算をきちんと行うとようになる背後には、山本義隆『一六世紀文化革命』が指摘していた技術の価値の上昇も関わる気がする。
 以下メモ的に。アウグストゥスは自らの業績禄にどれほどのお金を払ったのかを記録させている。これについて「透明性の高い精密な会計を自身の政治的正統性と功績に結び付けた」としている(21頁)。だが、新保良明『ローマ帝国愚帝列伝』にも記されているように、アウグストゥスをはじめとする皇帝たちはどんぶり勘定で財政を行っており、各地の自治制に任せていたのであって、このような評価には少し疑問符がつくと思われる。ただし、27頁には、ローマ帝国の帳簿は不十分であることも指摘されている。
 ジェームズ・ワットは、事業の拡大とともに大量の財務書類を作成して保管せねばならなくなったため、複写機も発明した。インクが裏面にしみこみやすい特殊な紙を使い、圧力をかけて別の紙に転写させるというものであった(210~211頁)。
 ネッケルはフランス王家の『会計報告』を出版したが、これは当時としては大ベストセラーになった。1781年だけで10万部が売れ、翻訳されて数千部が外国で出版される(235頁)。なお、革命憲法の第5章第3条では、各省庁に支出の詳細な会計報告の公表を義務づけているし、徴税請負制度が廃止されて国税庁が設置されている。ただし、有能な人材は限られていた(241~242頁)。


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便利な商品コーナー

かつて、「茶の間の呟き」で紹介したことのある商品の中から、
個人的に使い勝手のいい物をピックアップしています。

SX-CL02MSV (2009年5月7日)
 ノートパソコンの背面下部に置いてUSBにつなぐと風を送ってくれて、ノートパソコンの底面を冷やしてくれる(なお、バスパワータイプのUSBハブにつないでも作動してくれている)。これはかなり劇的な効果があるので、パソコンの熱さにお悩みの方は是非。なお、これはB5サイズ用で、A4サイズ用はSX-CL03MSVになる。


ブックストッパー (2009年5月7日)
 洗濯ばさみに分銅のようなおもりが付いたようなもので、見た目はかなりショボイのだが、本の両端にはさんでおけば、常に見開き状態にすることができる。文庫や新書、ペーパーバックなどを見ながらパソコンに情報を打ち込むのに便利。2つ一緒に用いないと使いづらいので、買うならば2つ一緒に。


桐灰カイロ 上からはるくつ下用 5足入 (2014年2月25日)
 靴下の裏から貼るカイロだと、冷たくなったときに硬くなってしまい、歩いていると足の裏が痛くなってしまうのだが、上から張るのだとそうならくて便利。


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