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2004年9月の見聞録



9月1日

 石渡正佳『産廃コネクション』(WAVE出版、2002年)を読む。不法投機買いかなる形で行われているかの実態を示し、それに対する解決策を千葉県の産廃Gメンたる著者が実体験に基づき述べる。環境危機の問題を必要以上に強調することの危険性を、圧倒的なデータに基づいて主張したB.ロンボルグ『環境危機をあおってはいけない』の項で、「グローバルな観点からではなく、よりローカルな場所では環境汚染が生じているのではないか」として、産業廃棄物をその一例としてあげたが、まさしくそのことを示す本であった。不法投棄だけではなく、処理場においても実は未処理廃棄物の横流しが行われて結局は不法に処理されているらしく、環境問題がますます悪化していくようにしか見えないので。また、容器包装のリサイクルは自社処理が原則なのだが、指定法人の日本容器包装リサイクル協会に一定の金額を払えばよいことになっているが、協会はこれを処理業者に補助金として渡しているのだが、結局これが処理コストの増加へとつながり年間400億の維持費が掛かるらしい。そして、リサイクル率は1%以下だそうである。これを高速道路の例になぞらえているのだが、非常に分かりやすくかつ空しくなる。著者が言うようにリサイクルに市場原理を導入するのが、理想の上では一番の近道なのだろうけど、結局のところリサイクルで確実に儲かる技術が開発されない限り、事態は解決しないような気がする(それが、あまりに他人任せであるということは分かっているのだけれども)。


9月3日

 夏目漱石『文鳥・夢十夜』(文春文庫、1976年)を読む。読み始めたときは、これは漱石という名前のある人だからこそ許される余技かなと感じていたのだけれど、読み進めていくと、漱石ならではの味があるという感じるようになった。特に病床での体験記を綴った「思い出すこと」が味わい深い。「夢十夜」は前半は軽いホラーぽくって、後半の方の話は同時代の風刺のように感じた。特に後者に関しては、第六夜の「明治の木に到底仁王は埋まっていなかった」というくだりや、第七夜のどこへ行くやも分からない船から暗い海へ飛び降りる辺りなど、おそらく明治という時代に対する違和感を吐露しているのだろう。これについては、国文学者あたりがすでにさんざん語り尽くしているとは思うのだが、明治時代の思想史を探るための史料として、歴史家も使えるのではないだろうか。


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