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2003年10月の見聞録



10月9日

 鈴木みそ『銭』(ビームC、エンターブレイン)1巻を読む。世の中の銭に絡むルポを、幽霊のキャラ2人を中心としてフィクションの物語で描く。第1巻では、死・マンガ雑誌・アニメ・コンビニがテーマ。死の値段を取り上げた第1話は、少し全体の雰囲気が堅いかなと感じたけど、第2話以降では、お話としてのフィクションにお金にまつわるノンフィクションがうまく組み込まれており、楽しめる。『マンガ 化学式に強くなる』で、解説マンガの仕事をした下地が、良い意味で生かせたんじゃないかなあと思う。この巻で語られている、ほとんどの月間漫画誌は赤字で、単行本で穴埋めしているというのは、全然知らなかった。ところで、同じく語られている単行本3万部のノルマを、この本は突破できるのだろうか?


10月13日

 寺園敦史・一ノ宮美成・グループK21『同和利権の真相』(宝島社、2002年)を読む。同和対策特別措置法によって、利権を得た者たちを追求した書。同和地区からの圧力を怖がって、その言いなりになり20億円以上の巨額が闇に消えてしまった高知県の事件を筆頭に、税金への優遇が定められた同和事業対策法を悪用して脱税を行った例やなど、様々な事件を紹介している。これを読んでいると、アメリカにおける黒人へのアファーマティヴ=アクションに対して、黒人自身のネガティヴな意見を述べたS.スティール『黒い憂鬱』(五月書房、1997年)を思い出した。
 ちなみに、部落解放同盟もサイト上でこの本に対して反論を行っている(http://www.bll.gr.jp/guide-seimei-20030414.html、リンクについての記述が、サイトを見ている限りどこにもないようなので、直接のリンクはしていない)。もしかして活字でも反論をしているかもしれないのだが、少なくともこのサイト上の反論はよくない。反論の主たる点が日共=「全解連」というレッテル張りをしている、という点にしか向けられていない。第三者としてこの本を読んだ限り、そのようなレッテル張りは特に窺えない。もし反論をするのであれば、この本に書いてあることは事実誤認であるということを具体的に示さなければならないだろう。
 同盟自身がしていないので、私が代わりに反論(というか質問)をしてみたい。京都市役所に覚醒剤使用で逮捕されたものが多数いるという文章のなかで、京都市役所には同和地区からの推薦者が優先的に京都市役所に採用されているとの記述がある。このことに関する是非は置いといて、この文章を読む限り、同和地区からの推薦者が覚醒剤の使用者だったという事実は確認できない。しかし、どうも文章を読む限り推薦者=覚醒剤使用者という意味合いを含めたがっているような印象を受ける。これは事実誤認であり、勝手なレッテル張りをしていることにはならないのだろうか(もしかして、同盟が反論しないのは、ここを突っつくと本当の事実だということがばれてしまうからなのかもしれないが…)。あと、たとえば、70年代の大阪の解放教育のモデル校では、生徒による教師への暴行が頻繁に行われたとあるが(161頁)、これは単にこの頃の学内暴力の一端であり、解放教育の推進との関連性が本当に窺えるのか、という点も気になる。


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