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2003年7月の見聞録



7月12日

 アンドルー=ゴードン編『歴史としての戦後日本』(みすず書房、2002年)上下巻を読む。1993年に出された論文集から、幾つかピックアップして翻訳したもの。論文だからかもしれないが、どうも今ひとつ表層的な気がする。日本に不況が来る前の段階で執筆されたものだからかもしれないが、どうも現在の状況から見た戦後日本と隔たりがあるように思える。現代史だからそうなのか、それとも外国人だからそうなのかは分からないが。もし後者だとすれば、日本人が書いた外国に関する論文も、現地の人にはこの本について感じたように見なされることになるのだけれども。
 一つだけちょっと疑問に思ったことを。第3章のキャロル=グラック「現在のなかの過去」において、戦後日本の大衆文化にとっての歴史は、豊臣秀吉や坂本龍馬のような個人が取り上げられる「人物史観」であったとしている。したがって大河ドラマはこのような人物に視座の中心を据えたものとなったとしており、その証拠として昭和時代を取り上げた「山河燃ゆ」や「いのち」は芳しい視聴率を上げられなかったとしている。逆に、朝のテレビ小説では昭和から現代が取り上げられることが好まれるとも指摘している。ごく単純に意味づければ、歴史における英雄史観と民衆史観との分離状況を示している、ということにでもなるのだと思うけれど、これは別に現代日本だけに特別に言えることではないのでは? たとえば、ギリシア悲劇では、たいてい過去の英雄の物語が取り上げられているし、(現存している限りでは)同時代のテーマを扱ったのはアイスキュロス「ペルシア人」しかない。そうした表層的な事情の奥に一歩踏み込んで行かないと、歴史学としてはあまり意味がない気がする。


7月18日

 富樫義博『HUNTER×HUNTER』(ジャンプC、集英社)1516巻を読むを読む(14巻はココ)。グリード・アイランド編もだいぶ佳境に入ってきた。これらの巻は、落書きのようなコマがほとんどなく絵が安定している…と思っていたのだけれど、いまさらながら気づいたのだが、著者は単行本収録にあたって、絵を描き直しているようだ。そりゃなかなかコミックスが出ないよな。
〔追記〕
 16巻で一番好きなシーンについて書くのを忘れてた。修行で以前よりもはるかに実力をアップさせたゴンとキルアが、ヒソカに再会したシーン。ヒソカは全裸であり、1コマ目には「僕の見込んだとおり」というセリフが股間の下にあるが、2コマ目には「キミ達はどんどん美味しく実る…」というセリフが股間の上にあり、その横にグググという擬音がある。単純な構成なのに、ヒソカの変態っぷりがにじみ出ていてよい。このシーン、もしもアニメになったらどうなるんだろう。〔2003年8月10日〕


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