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2004年7月の見聞録



7月16日

 木佐芳男『<戦争責任>とは何か 清算されなかったドイツの過去』(中公新書、2001年)を読む。ドイツにおいて、ヒトラーとナチスのみが絶対的な悪と見なされ、それに基づきドイツの軍隊や関係者に対する美化が生じている現象を明らかにしていく。
 個人的には、ナチスの絶対悪の対極に潜む美化という論旨には納得できるのだが、ただこの人は元新聞記者ということからか、なんとなく取材っぽい文章が多いのが気になる。専門家や関係者の話を聞きに言った時の描写やその人の人柄についての話が、少し野暮ったく感じる。さらに言えば、良くない意味で主観的な印象も与えかねない気もする。この本に書いてあることがより事実に近いのかというレヴェルという点においてではなく、文体の面からこの本の主張を受け入れない人も出てしまうのではなかろうか。これはあくまでも個人的な印象で、人によってはこの方がリアリティや親近感を感じるだろう。あと1つ気になるのだけれど、これは読んだことがないので分からないのだが、すでに西尾幹二が同じようなことについて本を書いていたような気がするのだが…。
 メモとして1つ。西ドイツはチェコを含む東欧・中欧におけるナチスの被害者に対する保証を一貫して拒否していたそうだ。東ドイツと外交関係のある国に対しては保証を払わないという規則があるという理由だったが、1990年以降の和解交渉においても、連邦保障法の期限が切れていることを理由に応じなかった(192頁)。


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