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2003年12月の見聞録



12月30日

 原聖『<民族起源>の精神史 ブルターニュとフランス近代』(岩波書店、2003年)を読む。他のヨーロッパの諸地域と同じく、ブルターニュにおいてもアエネアスに由来する民族起源神話が保持されていたが、16世紀にはこれが聖書の神話と結びつくことによって、ノアの洪水以後の原民族がケルト人であるとされるようになり、ケルトこそがギリシアの起源であるとの逆転した認識が生じる。さらに、ブルターニュにおいては自分たちこそが純粋なケルトの末裔との考えが意識され、それが民族的高揚にもつながったとする。
 さらっとしていて読みやすいし、面白いと思うのだけれど、どうも熱っぽさがないなあ、という印象。民族意識と絡むのに、どうも傍観者的な意識を感じてしまう。わざとそうしているのかもしれないけれど、「ケルト」ブームもしくはそれに対する批判と絡んだ議論が行われるのかと思っていたら、それにはほとんど触れていな買った、というこちらの期待とは違う方向性だったからもしれない。つまりは私の勝手な思いこみゆえにそうした醒めた印象を受けたのかもしれない。


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