〜のんき熊の写真の楽しみ方〜
(2)四角い写真でも、味はま・ろ・や・か? 「熊さんの写真って、なんか、真四角なの多くない?」 そうなんです。あれは、撮った写真を正方形に切っているのではなく、最初から真四角に写るカメラを用いています。 |
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一般的に使われているカメラのフィルムは、35ミリフィルム(135フィルム)と言われ、通常24ミリ×36ミリの長方形に画像が写るようになっています。 一方、ブローニーフィルム(120フィルム)という規格のフィルムがあり、幅60ミリ(厳密には56ミリ程度)の幅と、カメラの種類によって45ミリ、60ミリ、70ミリ、90ミリの長さで画像が写るようになっています。私の場合、60ミリ×60ミリの画像が写るカメラ(6×6版カメラ)を多用していて、さらにそれをトリミングなしで引伸ばすため、そのために正方形の写真が多くなっているわけです。 |
2眼レフカメラ。あなたのおじいちゃんの押入れに、ひょっとしたらあるかもしれません。もちろん、修理をすればちゃんと写ります。 |
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![]() 左がブローニーフィルム。巻軸にロール状に巻かれています。右がおなじみ35ミリフィルム。 |
ブローニーフィルムは、35ミリフィルムよりも面積が広いため、画質の点で有利であると言われ、一方ブローニーフィルムを用いたカメラは35ミリのそれより大きく重くなりがちという欠点があります。よって、風景やスタジオ撮影など、機動性を求められない場面でプロが多用してきました(注)。 実は、私が本格的に写真を始めるに当たって、父が私に譲ってくれたのが、6×6版の2眼レフというタイプのカメラだったのです。35ミリからではなくいきなり6×6版(あるいはブローニーフィルム)から写真の道に入った人間は、私が写真を始めた頃には、もういなかったと思います。 では、ブローニーフィルムで、しかも正方形に鉄道を撮るというのはどのような意味があるのでしょうか。 |
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鉄道を撮る、という事は、鉄道車両を撮る、という事と同義ともいえます。もちろん、車両を撮らない鉄道写真も多々ありますが、やはり車両は重要な要素です。その車両、立方体の形をしているものは…ありませんよね。すべて、と言っていいでしょう、直方体の形をしています。直方体である被写体をフィルムに写し込むならば、やはり、フィルム面も横に長い長方形のほうが自然でしょう。 また、動いている車両を写真上で静止させるとするならば、フィルム上での単位時間あたり移動距離の少ないほうが、車両はよりきちんと止まった形で(動体ブレを感じないように)、写真に写る事でしょう 。 |
![]() 右上が35ミリフィルムのベタ焼き。左下がブローニーフィルム(6×6)のベタ焼き。ひとコマ当たり約3.6倍の面積差があります。 |
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という事は、面積の広いフィルムで、しかも正方形に鉄道を写し込む事は、通常デメリットであり、それを続けているのは、へそ曲がり以外の何物でもない、といえます。 それでも敢えて真四角に撮る理屈をこねると、正方形の画面の持つ不思議な感覚の魅力があります。例えば、山あいの里や峡谷といった風景の中に列車をぽつんと置いて真四角に撮ると、無駄のない安定した画面になります。また、画面の中のアクセントの置き方によって、奥行が深く見える場合もあります。一方、その安定した画面をぶち壊す、無秩序な縦の線、斜め線で構成するのも面白い。鉄道写真のセオリーから外れて、自由に作画できる可能性を秘めたのが、6×6版なのであります…説得力ないですね。やっぱりへそ曲がりなだけか。トホホ… |
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※ちなみにここまでの写真は、すべてデジカメ撮影です… |
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注) 実はブローニーフィルムは、1950年代くらいまでは、主にアマチュア向けに使われていました。当時はフィルムの性能も今とは比べものにならないくらい劣っていました。よって、ある程度のフィルム面積があり、一方で三脚を立て暗幕をかぶって撮るような大型カメラに比べて非常に扱いやすいブローニーフィルムのカメラは、アマチュアに広く用いられていました。一方、35ミリフィルムを使うカメラは、機械として高い精度を要求されるため、当時は非常に高価で、本当の金持ちでないと購入できないものでした。35ミリカメラが大衆化されていくのは、1960年代に入る頃からで、時を同じくして、ブローニーフィルムのカメラにプロ向けのものが多くなってきたのです。ちなみに私の父が2眼レフカメラを購入したのは1955年頃と聞いております。当然、父はプロではありません。 |
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