○セラックまたはシェラック、英語「Shellac」について

タイ、インド等の亜熱帯地方で、ラックカイガラ虫という体長0.5ミリほどの昆虫が樹に集団で寄生し形成した樹脂状の分泌物を作ります。その樹脂を加工した物質がセラックです。セラックは日本薬局方に記載され、FDA(米国食品医薬品局)にも認可されており、医薬品(錠剤)や食品などのコーティング剤としても利用されているくらい安全性の高い天然素材です。
 セラックをアルコールに溶解したものがセラックニスです。セラックは石油系有機溶剤には溶けず、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類によく溶けます。アルコールはどれも毒性の少ない人類に馴染みの深い溶剤ですから、セラックニスは塗料の中では、ずば抜けて安全性が高いということになります。もしもエタノールを溶剤に使ったなら、体内に入っても問題ないはずです。(通常、純粋なエチルアルコールは酒税法の関係で高価なため、メチルアルコールなどを混入した変性アルコールが用いられますので、飲んではいけません)。

○塗料用セラックの種類
漂白の度合いや蝋分含量等の精製度の違いによって、多くの種類に分かれますが、塗料としてよく使われるのは、未漂白で蝋を含むオレンジセラックと漂白脱蝋した漂白セラックです。昔よく使われていたいわゆるニスの色はオレンジセラックニスで、海外の明るい色の高級家具に使われているのがスーパーブロンドと呼ばれるグレードです。今回、取扱を開始するのは日本製の漂白脱蝋セラックで、スーパーブロンドよりも漂白度が高いものです。

○セラックの溶かし方
 日本国内ではすでに溶かしたものしか入手困難ですが、セラックはアルコールに溶かしてから数ヶ月もたつと乾きが悪くなるので、使用前に自分で溶かすのが理想的です。
 欧米では、セラック1ポンド(450g)を1ガロン(3.8リットル)に溶かしたものを1cutと呼び、これはだいたいセラック15gをアルコール100gに溶かした濃度です(アルコールの密度を0.8と仮定した場合)。目止めなど、染み込ませて使う場合は1cut、刷け塗りでは2cutぐらいの濃度が適しているようですが、あまり厳密に考える必要はありません。私がセラックとワックスの仕上で使っているのは約1cutのものです。最初、「溶けるかな?」と心配になりますが、一晩おけばかなり高濃度でも完全に溶けているでしょう。なお、金属容器は不具合がでますので、ガラス瓶やポリエチレン容器で溶解するようにして下さい。

○アルコールの入手
 安全性にこだわるなら無水エタノールを薬局等で購入するわけですが、とても高価です。私は蒸発してしまうアルコールに特にこだわりはなく、メタノール主体で少しエタノールが混入された「燃料用アルコール」の500mlポリビン入りを使っています。お店によってかなり価格に差がありますので、安いところで購入するといいでしょう。

○セラックの塗り方
 目止め等の塗装下地作りを主な目的にした場合は、薄めに溶いたセラック(1cut)を小さな布を丸めて作ったタンポで塗りこみます。約30分放置し乾燥後、400番〜600番の耐水ペーパーで撫でるように毛羽立ちを取り、必要ならこれを繰り返します。私は一二度塗った後で、ワックスを塗りこんで終わることが多いです。
 塗膜を形成させる場合は、少し濃度の濃いセラックを刷け塗りをします。いわゆる「ニス」の塗り方です。フレンチポリッシュという研磨剤を併用した鏡のような光沢に仕上る高度な塗装方法もありますが、私自身経験はありません。


当方で取扱い中のセラックについて

国産の漂白脱蝋セラックです。フレーク状で大変品質が良いものです。湿気を嫌いますので密封し、冷暗所に保存してください。

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