ロス、キャンプの旅2017

◆準備◆
久々の海外旅行。この頃「日本でさえ知らない所が多い。だから海外よりも日本」という気持ちが強く、海外旅行から遠ざかっている。しかしロサンゼルスで働いている娘の様子も見たいので、今年はロスへ行くことに決め、1月頃から準備をしていた。準備と言っても、こちらは航空券の手配だけ、あとは全て娘におまかせである。前回行った時の経験からANAが比較的楽だということで、ANAの成田経由ロサンゼルス往復を同社の予約サイトで1月に確保。往復一人約10万円で、まずまずお値打ちな値段で買えたと思う。

◆一日目◆
 午前11時頃まで留守にする家や工房の水回りや戸締まりの確認をする。12時頃車でセントレア着。トラブルなくチェックインし、腹ごしらえをし、14時25分発で成田へ。成田で乗り継ぎ2時間弱で、ほぼ定刻にロス行きの人となる。3列席の窓側が空席で二人で三席使え、ラッキーだった。

ロスでもトラブルなくアメリカ入国を果たし、迎えに来てくれた娘と合流。まずはサンタモニカのファーマーズマーケットを見に行く。日本の日曜朝市という感じで、この季節はブラックチェリーを売っているテントが多い。

その後、JaksonMarketというハムなどの食品を売っている店でサンドイッチなどを買い、店の裏庭の大きな木の下で昼食。こういう気楽さは日本にはないなあ。カペラゴーデンの中庭での食事みたいな感じで面白かった。その後娘が馴染みのカフェでコーヒーを飲み、アパートへ寄ってから二晩お世話になるダウンタウンから30分ほどの住宅地にある古い家を改造した短期貸家へ。日本で言うところの”民泊”である。

その家は、大きなベッドルーム、リビングにソファーベッド、トイレ・シャワー、キッチンがついた、大家の家隣接の一軒家。ホテルでは味わえない、ゆったり感が嬉しい。大家さんの奥さんがまだ小さいこどもを裏庭で裸で育てていたり、動物保護施設からもらったワンちゃんが妊娠していて子犬がたくさんいたりと、なんともアットホームな感じもよかった。夜は奥さんおすすめのイタリアンで食事。チーズ系パスタなどは、日本ではなかなか味わえない濃厚な美味しさだった。上の写真はリビングに置かれていたタンス。シャワーを浴び、長い一日目を終える。

◆二日目◆
ゆっくり寝て朝はシルバーレイクすぐ近くの家からシルバーレイクの辺りを散歩した。ダウンタウンが近いのに、丘陵地の閑静な住宅地である。

昼前からダウンタウンへ繰り出す。まずは昼飯、ビルの一階を改造した巨大なフードコートのような所へ行く。各国の料理を自分で好きなように選んで、空いているテーブルに運んで食べるというスタイル。日本でいうと、高知の「ひろめ市場」みたいな感じ。麺好きな私はフォー、連れは玉子料理のサンドイッチみたいなのを食す。

場所は現代美術館の下で観光客も行きやすいと思うが、ここで目的の食べ物にありつくには、ちょっと勇気が要る。

余談だが、食事代は日本の倍くらいする。着席するレストランだとチップを平均20%支払うことになる。カードで決済するとタブレットでチップの割合を三つの中から選んだりするのだが、それが18%、20%、25%などとなっていて、通常は20%に自然となるようだ。それならいっそうチップ込み料金にしてくれたらいいのにと思うが、文化の違いだろう。

食後、近くのビルを見に行く。外見は普通だが、中は写真のように独特の雰囲気があり、映画のロケなどにもよく使われるらしい。

午後4時から観覧を予約した近代美術館の斜め向かいにある”The Broad”という現代アートの美術館へ。無料で質の高い現代アートを見ることができるので超人気な場所。写真のテーブルとイスのセット、写っている人間の大きさと比べてほしい。

今日の夜は娘の同僚や友人とのパーティーだ。一度家(宿)に帰り、ゆっくりしてから、タクシーでダウンタウンへと向かう。タクシーと言っても日本のタクシーではなく、スマホで会員登録し、同様にドライバー登録をした素人運転手が運んでくれるUBERというシステム。スマホでアプリを立ち上げると現在地が表示され、目的地を入力すると近くのドライバーが表示され、おおよその料金もわかるらしい。車を決めて呼ぶと、スマホのマップ上に車の位置が表示され、もうすぐ来るかなどがすぐわかる。チップは不要だし、支払いは登録したカードから自動的に引き落とされる。料金も通常のタクシーの半額くらい、今日のダウンタウンまでの片道料金も5ドル程度だという。乗客も運転手もそれぞれを5段階評価するので、お客も運転手も質が保たれるようになっているとのこと。ものすごくいいシステムだと思った。日本でも登場してほしいが、タクシー業界の力が強いので、まず無理な気がする。参考:UBER

パーティーは総勢6名で、ベジタリアンレストランで楽しく食事をした。聞いたことのない野菜を使った料理の数々、慣れないこともあり、ちょっと食べきれなかったが、残りものは箱(ボックス)に入れて持ち帰るのがこちらの流儀。明朝の朝ごはんになったりするが、そのまま家でポイということもあるとのこと。

◆三日目◆
今日はいよいよセコイア国立公園でのキャンプに向け出発だ。登山用服装に着替え、荷物をまとめて、不要な物は娘のアパートの置き、その後コーヒーショップで朝食を買い、友人と合流、5時間ほどのドライブ突入。と言っても、私らは後部座席で寝ているだけの気楽さ。

キャンプ場に着くまでの山岳地帯の入り口付近には、バーベキュー屋さんがあることが多いらしい。日本なら蕎麦屋とか岩魚を食わせる店のようなものか。写真はスペアリブのバーベキューと付け合わせのオニオンフライ。ケチャップ味とガーリック味でわかりやすく、おいしかった。

アメリカのキャンプ場は、ヨセミテもここセコイア国立公園も完全予約制(キャンセル待ちはある)。そしてどこの駐車場も車中泊禁止なので、安易に泊まることはできない。私達が行った日は月曜が祝日で、「この週から夏が始まる」と言われる人が多い3連休なので、かなり前から予約をとってくれていた。

ヨセミテもそうだったが、キャンプ場は今や日本の方が進んでいる。「進んでいる」というのは間違いかもしれない。どうもこちらの人は、不便を楽しむような感じがある。たとえば、夜はトイレさえ電気が消える。ヘッドライトがなければ完全に真っ暗闇で、それを良しとしているようなのだ。

私達が泊まるのはStony Creek Campgroundで、人の多いエリアから少し北に行った通好みの静かなキャンプサイトである。オートキャンプの一区画はかなり広く、隣のテントの物音などはあまり気にならない。駐車スペース、大きな動物よけ食料貯蔵庫、イス付テーブル、グリルのついたファイヤプレイスがセットされている。燃料となる薪は、勝手に拾い集めてはいけないので、行く前に買って準備をしておくか、現地で購入する。公園までの店では一くくり5ドルで、キャンプ場では8ドルだった。周囲のキャンパーもストーブはあまり使わず焚火を楽しんでいるようだったし、日本でよく見かけるコールマンのランタンを眩いくらいに点灯させているようなキャンパーはいなかった。ある意味、都会の快適さを持ち込もうとするキャンパーこそ、遅れているのかもしれない。

テントを建て、時間があるので、車で15分ほどのところにある頂きが大きな岩の尾根に登るトレイル”Little Baldy Trail”に行く。ジグザグに登って尾根に出、そこから時には雪の残る道を進む。高低差300m弱、往復2時間弱の軽いハイキングだが、人が少なくて自然そのままの感じがいい。

途中で可愛い小動物に出会うことしばしば。帰国してから調べたらマーモットだった。

尾根の先端の終着点は広い岩の頂きで、この日は雲海が広がり、すばらしい光景。

夕日を見ながらの下山。登り一時間、下り40分くらいだっただろうか、とにかく気持ちがよく最高だった。

暗くなってテントサイトに戻り、遅い夕食。チーズやハムでワインを飲んだあと、友人が作ってくれていたジャイアントコーン入シチュウが美味しかった。11時頃に寝る体勢に入るが、どうにも寒い。おそらく3~5度くらい。寝られないので、ありったけの服と持ってきたゴアテックスの雨具上下を着こんでシュラフに入り、やっと寝れそう。雨具の防寒力はかなりのもの、非常時におおいに役立つと思う。

◆四日目◆
心配したけど12時頃から6時頃までわりとよく寝れた。これなら今日も動けそうだ。それにしても昨夜の満天の星空はすごかった。今日は土曜日で3連休初日、というわけで人気スポットは人と車が多い。この公園で一番人気のあるキャンプサイトはLodgepoleで、日本なら上高地みたいなところ。忘れ物をしたこともあり、巨木の森散策に行くころには、駐車場がどこも満車。仕方なく私達だけで観光客用の一番短いコースを歩くことにするが、その直後路肩に駐車できたとかで、全員いっしょに行動できてよかった。

とにかくデカイ。でも観光客が集中するエリアよりも、やはり少し奥に入ったコースの方が、本当に良かった。森の木全てがセコイア(レッドウッド)ではないが、それでも写真のように数本がかたまって生えているところがあり、その中を歩くとなんとも神秘的というか、不思議な感覚だった。

木に触ってみると、硬くつまった感じではなく、ボンボンと柔らかいコルク質のような感じ。

ハイキング後半には美しい湿原の淵を回る。大満足で元の地点に戻り、今日は早めにテントサイトに戻った。ビールを飲みながらゆっくり夕食の支度をし、二晩目ともなると寝るのも慣れたもの、ゆっくりと寝て、明日に備えた。

◆五日目◆
今日は山を下りて北上し、モントレー近くのカーメルという町の家を目指す。ゆっくりテントを撤収し、キャンプサイトを出るが、ちょっと寂しいようなセンチな気分になったのは久しぶりだ。来る前は、テント二泊は少々きついかなと思っていたけど、ゆっくりできて二泊してよかったと思った。

ドライブはおもったより長かった。また最初のクネクネとした道と下山してからの気温の急上昇などで、私は車酔い状態に。酔い止めのアネロンを服用し、一時間ほどで気分がよくなった。

ジャズフェスティバルで名前を聞いたことのあるモントレーを通り、海岸沿いの小さな町Carmelに着く。海岸からすぐに小高い山となる小さな町。今はその山肌が高級別荘地になっているようだが、昔はとても安かったらしい。1960年代、決められた生き方に反発した若者、いわゆるヒッピーと呼ばれる連中がモントレーなどに集まり、その中にはフォークソングシンガーも沢山いて、例えばジョーン・バエズや有名になる前のボブ・ディランがいた。今日泊まる家は、なくなった主人がボブディランの友達だったという小説家”Alan Richard Marcus”氏のアトリエなのだ。90歳になる奥さんと娘さん?が海岸から急坂を登った奥の方にある家で暮らしていて、そのアトリエを宿泊所として馴染みの人に貸している。

イギリス風の庭のある山小屋みたいな感じ。見た目は古い山荘みたいだけど、中はすばらしい。ゆったりした椅子やソファーがあって、窓の外には谷が見える。ずっとここに居たいという気になる。

大きなリビングの半分くらいに中二階があり、そこに大きなダブルベッドがある。若いボブディランはこの中二階でギターを弾き、歌をうたって、一階の子供達に聞かせていたという。

一階は大きな窓が二面にあって暖炉もある。夜は生まれて初めて暖炉の火を経験した。亡くなったご主人はこの窓辺で執筆されたのだろう。左手には広いトイレとシャワールームがあり、そこもとても気持ちのいい空間だ。

夜はちょっと贅沢をして、クリントイーストウッドがオーナーだという海沿いの大きなステーキがメインのレストラン”Misssion Ranch”に行く。流石に立派で、現地の人も誕生日とかの特別な日に使うようだ。敷地内には結婚式場もあり、レストランではピアノを囲んで合唱するなど社交場のような感じだった。

◆六日目◆
今日はLAに向けてのロングドライブである。計画ではカーメルから美しい海岸線に沿っての道路を南下する予定だったが、大雨で道路が崩落し、復旧の見通しも立っていないとのこと。残念だが、内陸部の道路を使うことにし、モントレー近くの大きな観光施設のようなところで朝食。アメリカ的な庭や家のショップやレストランが立ち並ぶ、何と言ったらよいか・・・、リゾートショッピングモールのような美しいところだった。

サンルイスへ行くまでに娘が”ワインテイスティング”へ連れていってくれた。ワイナリーの酒蔵で数種類のワインを試飲させてくれる。大抵お土産に好みのワインを買って帰る。日本酒の酒蔵見学といったところだが、いたるところにあって、こちらの人の身近なレジャーとなっているようだ。

ワインテイスティングを終え、ちょっと遠回りをしてなぜか海岸に向かう。着いてみてわかった、海岸に大量のelephant seal(ゾウアザラシ)が寝そべっているのだ。

アザラシの大群に圧倒された後、娘が学生の時に住んでいたモロベイやサンルイスの町で一休みし、行楽帰りで渋滞するなかLAに夜9時頃返りついた。アパートで荷物を回収し、近所でフォーを食べ、今日の宿である近くの一軒家へ向かう。夜遅かったので、帰国へ備えてパッキングをしてバタンキュウ。

◆七日目◆
今日は最終日。正午頃発の便で日本へ帰るので、朝はわりとゆっくりできる。

泊まった家の裏口。外見は豪華ではないが、中はすごく快適だった。

大きなベッドルームが二つ、写真のリビングとダイニング・キッチン、シャワー・トイレ、それに大きな洗濯機があるランドリールームまであった。

ここでは大家さんには全く会わず、勝手に入って写真のようなキーボックスにメールで届いた暗証番号を入力し、勝手に鍵を取って家の中に入るシステム。出る時もこのキーボックスに鍵を入れて終わり。なんとも合理的だ。このような民泊システムも、Uber同様、利用後双方がお互いを評価するので、お客も綺麗に家を使うし、大家も安心して使ってもらえるようにしないとお客が来ないから、ちゃんとするのだ。実にすばらしい。いくら高級なホテルでも、自宅でくつろぐようなゆったり感は得られないと思う。

内容テンコ盛りの旅を終え、空港までのスーパーでお土産を買いこみ、トラブルなく空の人となった。帰りも3列席の一つが空席でラッキー。行きは新人CAさんが沢山いて初々しかったけど、帰りはベテランのCAさんがほとんどで、ちょっと怖かった(^^)。ほぼ定刻に成田に着き、国内線搭乗口の売店で天ぷら蕎麦を食べると、日本に帰りついた気がした。

大まかな行程は次の地図のとおり。旅の企画、泊まる家やキャンプ場の予約、そして長距離ドライブ。身内ながら、娘には大変お世話になり、感謝々。今までは私が計画をする部分もあったが、もはや完全に世代交代である。そんな感傷にひたりながら、日付が変わった翌日夜名古屋の自宅に無事帰り着いた。

◆旅を終えて◆
この頃、「日本はすばらしい」みたいなTV番組が多かったりして、日本を持ち上げるような風潮が感じられる。しかし、高校生の頃から音楽などで憧れだったアメリカ、サラリーマン時代の出張も含め数回旅をしているが、この旅であらためてアメリカという国の良いところを感じた。娘がiphone(ネット)を以前にも増して駆使していたのにも驚いた。タクシーに代わるシステムもそうだし、一軒家に手頃な値段で泊まることができるシステムも本当にすばらしい。いいところは見習いたい。ただし、トランプの真似だけはご遠慮願いたい(^^;)。

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