数年前、オイルフィニッシュについて悩み資料を調べました。それでオイルフィニッシュの原理とは、空気中の酸素を吸って固まる性質のある油、乾性油を木にしみこませる方法だと知りました。そのころ国内ではチークオイル、ワトコオイルなどが販売されていましたが、これらは、多量の溶剤、乾性油や乾燥を速めるための乾燥剤、合成樹脂を含む、うすいニスのようなものです。 ■乾性油■分子中に、空気中の酸素が化合する二重結合を持っている油で、この反応によって樹脂化する。完全に固くはならないので、木の収縮によってひび割れなどは生じにくい。この重合反応で熱が発生するので、使ったボロ布などを捨てる時は、熱がこもって自然発火しないように注意する必要がある。焼却処分、水中保存、一枚ずつ広げて充分乾燥後捨てるなどの方法をとる。亜麻仁油(Linseed oil)★
煮亜麻仁油(Boiled linseed oil)★
桐油(Tung oil)★
荏胡麻油(Perilla oil)★
■天然蝋■蝋もまた人間とのつきあいの長い油脂です。西洋では蜜蝋、日本では木蝋の歴史が長い。植物蝋、動物蝋に分類されるが、融点の高い低いによっても用途が変わってくることが多い。昔、蝋燭は貴重な明かり源であり、庶民は油を灯芯でもやし、寺社などでの儀式で高価な和蝋燭が用いられたようだ。蜜蝋(Bees wax)★
木蝋(Japan wax)★
カルナバ蝋(Carnauba wax)★
イボタ蝋★
■その他■柿渋(Persimmon juice, or Persimmon tannin)★
以下に通販の際に取扱説明の代用として使っている文をそのままここに紹介します。 オイルフィニッシュについて 【1】乾性油、ヨー素価などの基礎知識 1,植物油の種類 「油は酸化して悪くなる」と言いますが、油の分子の中に酸素がひっつきやすい二重結合というのがあります。この二重結合をどれだけ持っているかが油の性質を知る上で重要で、そのため、この部分に酸素のかわりにヨー素をひっつけて結合するヨー素の量から、二重結合の多さ、言いかえれば酸素のひっつきやすさを測定する。これがヨー素価です。 ヨー素価が大きいと酸化しやすく、重合して樹脂化しやすい。液体の油が固化して樹脂になることを「油が乾燥する」と表現します。このヨー素価をもとに以下のように乾燥しやすい乾性油、ほとんど樹脂化しない不乾性油、中間の半乾性油の三つに分類されます。
2,昔の植物油の利用 食用の他、電気のなかった昔、夜のあかりに東西を問わず用いられた。西洋ではオリーブ油、コルザ油、シード・オイル、熱帯地方ではヤシ油、クワイ油、ヒマシ油、アマニ油などが、日本では大宝令に地方からの貢献を義務づけた油として、ゴマ油、アサ油、荏油などが記録に残っています。乾性油は防水や補強剤として雨傘、合羽、油紙にも用いられた。この方面での利用が現在のオイルフィニッシュの用法に近いと思われます。
3,オイルフィニッシュとは 広い意味では、単に油を木に塗るだけの仕上げ方法から、デンマーク仕上げと称する何回も乾性油を主成分とする塗料を塗り込んで乾燥させたものまで様々であるが、現在では、乾性油系のオイル仕上げ剤を充分に塗布し30分ぐらい放置した後、拭き取り乾燥させる手法をさすことが多い。
このように欠点も多いが、手軽に自然な仕上がりが失敗なくできるので、クラフトマンの多くがこの手法を愛好している。
なお、乾燥過程で熱が発生します。したがって、オイルフィニッシュの拭き取りに使用した布は、焼却処分をするようにメーカー製オイルの注意書きには書いてあります。焼却しない場合でも、広げて一枚ずつバケツの縁にかけて乾燥してから捨てる、水につけておくなどの配慮が必要です。
【2】塗装は必要か 一般的な塗装の目的は、表面を固くしキズを防ぎ、汚れや水分がしみこまないようにし、空気を遮断し湿度変化による変形を少なくする等でしょう。これら全ての目的にかなう塗料はウレタン樹脂塗料に代表されるような合成樹脂塗料ですが、個人的にはウレタンニス等はどうも好きになれません。木の質感を損なうように感じるからです。 塗装法としてオイルフィニッシュを選択することは塗膜の固さを追求せず、防水性や耐久性を犠牲にしても木の質感を大切にしたいということでしょう。また、乾性油が乾燥・樹脂化したものは固くならず、木の収縮によって塗膜にヒビがはいったりすることはありません。最近ではさらに、天然素材指向という側面が加わり、もともと木の中に存在した蝋や油を使って塗装するということ自体に価値があるかもしれません。 人間の肌から出る油にもっともちかいのが椿油だという。無塗装の木の椅子を何年も使い込むと人の肌から出る油によってすばらしい光沢が生まれてきます。人間と木の家具との時間的かかわりが光沢となってあらわれるのです。 このように考えてくると、自ずから、塗料や、仕上げ法の選択をどうすべきかわかってくると思います。オイルフィニッシュだけをとってみても、油の選択、濡れた状態での研磨の是非、塗布回数、樹脂塗料との併用など、方向が決まってくるのではないでしょうか。 【3】油の選択 油にもいろんな種類がありますが、個人的指向から、植物油にその範囲をしぼりたいと思います。実際のところ塗料にひろく使われてきた油は原料がほとんど植物油です。使用経験に基づき、リストアップし、簡単なコメントをつけてみると・・・。
【4】塗布法について 仕上げ鉋でスカッと削ったままの朝日をあびて白く光るテーブルの天板などはすばらしいもので、私はうまく仕上げ鉋がかかったら、サンドペーパーは使いません。せっかくの鉋仕上げに一度でもペーパーをかけると曇ってしまうので、特に針葉樹では鉋仕上げのまま塗る方がいいのではないでしょうか。しかし、導管の大きな広葉樹では油の吸い込みに差が出やすいので、一般的にはサンドペーパーを使った方が、いい結果を得られるようです。 オイルの選択は前にもいろいろ書きましたが、食べ物が触れたりするサラダボールなどは無害な天然植物油を使用すべきです。タンスや机など、塗布面積の広い場合は、オスモなどの一回で仕上がるタイプが便利でしょう。 さて、オイルフィニッシュの実際の方法ですが、代表的乾性油”亜麻仁油”を使用する場合を説明しますが、大切なポイントは次の3つです。
塗布方法のくふう等
■拭き取り ・拭き取ったところがわかりにくいので、順序を決めるなどしてもれなく拭き取る。 ・布がボトボトになったら取り替える。 ・導管から油が噴き出して来る場合はその後も拭き取りを続行。
濡れた状態で研磨をする方法もあります。この方法は木のカスと乾性油のミックスを導管につめてシーラーのようにしてしまうので、この方法で仕上げるとツルツルにはなりますが、表面が樹脂っぽくなり、クリアラッカー仕上げに近くなるように感じます。 通常は1回目のオイルがよく乾いてから400番〜600番で再研磨し、よくホコリをとってから2回目の塗布をします。塗布回数は4回ぐらいで、最後にワックスで磨くと光沢がすばらしくなります。しかし使い込んで仕上げていく考え方では、1回〜2回でよいかもしれません(特に鉋仕上げの針葉樹の場合)。 【5】その他 ■耐水性が要求される時 スパーワニスは桐油を30%含み、樹脂としてロジンエステル(松脂の樹脂成分のエステル)を含む、ヨットのスパーに塗られた油ワニス。テーブルトップに亜麻仁油とスパーワニスとテレピン油を混ぜて塗っている例があります。 また、薄めたウレタンニスを塗り込み、最後にタンポ塗りすれば、テカテカは防げますが、もっとオイルフィニッシュ風にするには、ウレタンニス:煮亜麻仁油:溶剤=3:2:2の割合に混ぜて塗り込むのもいい。
■着色したいとき あまり濃い着色は無理ですが、オイルステインを少量油に混ぜればOK。本来は油性染料を混入すべきですが、少量の入手は困難ですし、完全な撹拌がむつかしそうです。
■子供が口に入れても安全な仕上げ剤 小児用軟便剤のミネラルオイルを最も安全な塗料としてFWW誌でとりあげていました。国内では入手困難ですが、赤ちゃん用ピジョン・ベビーオイルの主成分がミネラルオイルで木に塗ってみたらなかなかよかった。
■亜麻仁油による黄変 幾分黄色く変色しますが、これをさけるために北欧では少量の亜鉛白顔料を加えることがあります。なお、顔料を油に混入するには、顔料粉末を少量の油で練り、30分ぐらい放置なじませてから油を加えていきます。
ワックスフィニッシュについて 欧州では蜜蝋が、日本では木蝋やイボタ蝋が使われてきました。蜜蝋・木蝋は比較的柔らかく使いやすいですが、ハゼの木から採れる木蝋は純粋なものは最近入手困難です。また、ブラジル蝋ヤシの葉から採取するカルナバ蝋はとても堅いワックスです。 ワックスは、オイルなり、シェラックで仕上げたあとの最終の光沢や肌触りを良くするために使うのが本来のあり方と思います。ワックスだけの仕上げは導管の大きい楢などでは、ワックスが白く穴にたまることもあり、比較的柔らかくて少しは浸透する蜜蝋が適しているようです。 ワックス、シェラックとも天然素材ですが、熱と溶剤には弱いので、テーブルには向きません。そうなると、天然樹脂を使った耐水性のいい塗料というと、スパーワニス、コーパルワニスなど、乾性油が主成分の今は使われることが少なくなった塗料もいいかもしれません。
■蜜蝋の塗り方■ いろんな塗布方法があると思いますが、私は加熱し過ぎないように注意しながら(湯煎がベスト)溶かし、火を止めてから(引火に注意!)、テレピン油で1.5倍から2倍程度に薄め、冷えてシャーベット状にしたものを塗っています。薄くのばして塗った後、布で強く磨きます。細かいスチールウールで塗り込む方法や固形のままこすりつける方法などがあります。
■カルナバ■ とても堅いこのワックスは、塗布するのがたいへんむつかしい。蜜蝋と同じように溶かしても冷やすと固まってしまいます。柔らかくするにはかなり薄める必要があります。堅い木であれば固形のままこすりつけて磨くほうがいいかもしれません。メーカー製のワックスは固いカルナバと柔らかい蜜蝋などをブレンドしているものがほとんどです。
柿渋の使用方法(一例) 柿渋の塗り方の基本は、薄めに塗っては乾かすを繰り返すことです。また、原液のまま漬けるように塗るのも面白く、漆にも似た光沢が得られます。塗った直後はほとんど着色しませんが、天日にあてて乾燥させると、数日で独特の色合いになります。 乾燥するまでは、独特な生臭い匂いがありますが、乾燥後は匂わなくなります。また柿渋は中風の薬としても飲用されるくらいで、人体に害はありません。
(注意)タンニンが主成分なので、鉄分があると黒くなります。塗る前に研磨紙のカスなどが残らないように注意して下さい。
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