Elgar:行進曲「威風堂々」op.39(全5曲)(2,3,5*) J.バルビローリ/PO. NPO.* 62.8.29 (1&4) /66.7.14 (2,3&5) Kingsway Hall, London Stereo |
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EMI CDM 5 66323 2 ![]() +序曲「フロワッサール」op.19/序曲「コケイン」op.40 |
![]() 私にもそうしたあまり長くはなく、聴き進むほどに楽しくなる曲がいくつかあります。そのひとつがElgarの「威風堂々」です。恐らく1番が一番有名で次が4番でしょうか。余白に1番だけカップリングされている場合も結構あります。 私の場合、この5曲が全て入っている盤が聞く対象となります。1曲だけ付録のように付いてくるものは仕方ないとしてもこの曲を目当てに買う場合は5曲とも揃っていないと厭なのです。聴くときに1番から5番まで必ず通して聴きたいからです。もちろんこれらの曲はひとつひとつ別の曲で作曲された時期も違います。作曲者自身がひとまとめにしようとして書いたものでもありません。でも私は1番だけでは物足りないのです。曲が物足りないと言うことではなくて、ただ勇ましいマーチだけではなくそれぞれ特徴のあるいろいろな音楽の中に長く浸っていたいという単にそれだけのためなのです。ですから私にとってはこの5曲のうちどの曲が良いか、と言うことはありません。全てなくてはならない曲です。 イギリスの指揮者、演奏家にとって「エニグマ」やこの曲などは特別の愛着を持って奏されるものだと思います。ボールトはあっさりとした歌い口にもかかわらず要所を締めてオーケストラをうまく鳴らしています。デル・マー盤は、潔いと言うか男気があると言うか、とにかく緩急のメリハリがついた豪快な演奏。メニューインの生気に満ちた華やかな演奏、グローヴスのオーソドックスで安心して聞いていられる演奏、どれもそれぞれ聞いていて楽しい演奏ばかりです。 この中でバルピローリの演奏は少し雰囲気が違うかもしれません。テンポは若干遅めでしょうか。1番にしてもシンフォニックではありますけれど、例えばデル・マーが振ったDG盤のようなマーチとしてのきびきびとした勇ましさはあまり感じません。オーケストラの響きは立派なものですが、華やかさだけではなく、その中に昔日を愛おしむような響きが聞こえます。それはこの指揮者の独特な歌わせ方によるところが大きいのでしょうね。有名な第1番、オルガンが入る前の絶妙なリタルダンドから、その後の旋律の歌わせ方の見事なこと。 5つの曲すべてがすばらしい演奏ですが、特にバルピローリらしさが出ているのは一般には知名度が落ちる3曲、つまり1番、4番以外の3曲ではないでしょうか。(この録音は1番、4番の2曲が62年に録音され、他の3曲はPO.が改組された後に録音されているので、クレンペラーの「大地の歌」と同じく、2つのオーケストラの名称が並んでいます。)例えば2番は、ボールトやメニューインのような快速テンポをとらないことで全く違う印象の曲になっています。冒頭の弦ににしてもゆったりとしたテンポで進むと鄙びた哀調さえ感じます。大英帝国の輝かしき歴史の中の一抹のペーソスとでも言うか・・・。 オーケストラはクレンペラーのPO.。一般にイギリスのオーケストラは軽く抜けるような金管が特徴でしょうけれど、この時期PO.は随分重い響きに変化しています。この演奏でも無愛想で重量感ある金管が凄い。でも、全くと言って良いほどイギリス音楽を振らなかったクレンペラーの下で演奏していたPO.にとっては、合間にこうして自国の音楽を演奏できるのは楽しかったでしょうね。 左は買い換えたCDですが、私が愛聴してきたのはLPでした。この曲を初めて聴いたのもバルピローリ盤でした。当時、1番の途中オルガンが入ることに驚いた覚えがあります。マーチですから、教会やホールにしかないオルガンが加わるとは思っていませんでした。それもかなりの重低音で。一時よく聴いていたのはこの低音の魅力もありました。ただCDで改めて聴いてみるとLPの方がずっしり響いていたような気がします。アナログの低音が膨らむ傾向故だったのしょうか。分解能の良さは確かにCDの方が上でも雰囲気はLPの方があったように思います。
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