あらがう絵  8月29日

個展開催は毎年ではないが、吉岡弘昭先生と知り合って15年くらいになる。
銅板に直接 針で線を刻んでゆくドライポイントという銅版画の技法の作品に
引かれたからだ。
まっすぐ引こうと思っても、反れる。たくさん刷れない。色もない。
制約がいっぱいで そこのところが作家は魅力なのではないか。

実力ある芸術は抵抗が多いほど、豊潤に実を結ぶと思う。
吉岡先生の作家紹介では よく幼少の頃の苦労や独学のいきさつ等が
語られているが、それが影響しているかどうかは判らない。
人生は誰も全て独学なんだから。

ただ、先生は画廊の仕事をいつも励ましてくれて単純にうれしい。
DM 出来ました と 送っても返事のない作家も多いが、吉岡先生は違う。

先日アトリエに伺ったらドライポイントを40年しています と聞いて、
していますの中身を考えると倍くらいの仕事の内容だと感動を覚えた。

銅版画と並行して、近年はアクリル絵具を何層にも重ね、コラージュも悪戯の
ように貼りこんだ極彩の世界を展開している。
地中に押し込められたエネルギーが一度に噴き出したごとく。
色の洪水に沈みそうだが、目を凝らすと描かれているのは等身大の感情のある
人間や悲しみを食べてくれる犬や旅に誘ってくれる小船だったりする。
この無限の開放が、宇宙の果てに吸いこまれてゆくのだろうか。

明日は総選挙でTVや街頭からは経済政策優先の言葉がぱらぱらと降っている。
困難は多いほど、道は険しいほど、入口は狭いほど 芸術はおもしろいともっと声に
出して言えばいいのに。
時代が悪いので 絵が売れない、とか そんな次元で括って欲しくないのに。

吉岡先生と話していると、当たり前な絵の世界を気づかせてくれる。

展覧会は10月2日〜12日です。
ご覧下さって、ちょっと熱くなって下さい。   吉岡弘昭 展へ

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