由仁町キャンプ                           penguin


7月27日、5時の朝は晴れていた。というか雨は降っていなかった。
台風の動向を確認しながら準備をしていたペンギンはホッとした。
これで最終ミッションである食材調達段階に移行できる。
今年の30'sは雨に祟られていた。>
誰のせいにもしたくはない。しかしあいつが怪しいという疑心を各々が持っていた。

空に感謝しながら近くの生協へ買い出しに向かう。
今回のキャンプ場はゴミを持ち帰るシステムになっていた。従って作った料理は食べ尽くすこと至上命令だ。
そのため献立は豚汁と決めた。万が一残っても翌朝のみそ汁で処理できるからだ。
幾多の状況をシュミレーションし、一週間前から綿密に組み立てられた食材量の算出。
しかし、そこに予想だにしなかった大きな壁が立ちはだかっていた。

「♪風の中のすーばるう、砂の中のぎーんがー」
プロジェクト30 食べ尽くせ!サバイバルエコキャンプへの挑戦!!
直前に耳に入ったある情報にペンギンは震撼した。それは献立計画を根底から揺さぶるものだった。
参加者の中に大豆系アレルギー保持者がいたのだ。
豚汁の具のあぶらげ。それを焼いて酒の肴にと考えていた。余れば翌朝のみそ汁に入れる。
そしてその朝飯のおかずは納豆だった。なにより豚汁は味噌味なのだ!。
危機的な状況の中ペンギンは問題解決の糸口を必死に模索した。
カップ麺という選択肢が頭をよぎる。悪魔のささやきに必死に抵抗した。
これはキャンプなんだ!。飯ごうで飯を炊くキャンプなんだ!!。
元ボーイスカウトの意地がかかっていた。
光明は目の前の特売棚にあった。一缶 90円のいかの煮付けの缶詰。蜘蛛の糸にすがるように手は伸びていった。
二缶あればどんぶり二杯の飯が食える。もしもの保険にキムチ漬けもかごに入れた。
>キャンプの成功を確信した瞬間だった。
「♪ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらあないー」

今回のキャンプの参加者は9名。しかしその大半は夕方現地直行だった。
午後2時からの先達隊はペンギンとナイスガイの二名。そこに大きなクレパスが口を開けていた。
問題はテントだった。20年前に購入した5人用家型テント。一人ではとうてい組み立てできない代物だった。
まして前回組み立ててから10年の時が過ぎていた。果たして二人で設営できるのだろうか?。
ペンギンはこの重大な障害を誰にも言えずにいた。

「♪草原のぺがあさすう、街角のヴィーナスー」
プロジェクト30 食べ尽くせ!サバイバルエコキャンプへの挑戦!! その2 事務長は当日昼まで仕事だった。そのあと私的な用事があり現地に着くのは午後5時の予定だった。
その私的な用事の都合がつき最初から参加できるとの連絡が入ったのは前日の夜だった。
百万の援軍を得た気がした。

周到に用意された食材・燃料・テントなどの前で援軍事務長を待つ。
事務長の持ってきた資材を含め全てを積み込むと車は満杯になった。携帯で連絡を取りながらナイスガイの家を目指す。
へらへら笑いながら家から出てきたナイスガイを見てペンギンは愕然とした。
彼は右手に缶ビールを持っていた。乗り込むやいなや彼は美味そうにぐびぐびと飲みだした。
ペンギンの右手にはハンドルしかなかった。

向こうに着いたら絶対ナイスガイより一缶多くビールを飲んでやる。
心の中で誓った。

「♪ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらあないー」環状北大橋を渡り平和通に入った頃フロントスクリーンに小さな水滴が付きだした。恐れていた雨だった。
しかしその雨も274号線北広島にさしかかった頃にはなくなった。
雨の呪縛を克服した。

長沼銀座のスーパーで飲料を買い込む。その後「殻付きホタテ!」と連呼するナイスガイの為に近隣の鮮魚店を探す。
しかし、内陸深い長沼に殻付きホタテは見つからなかった。その時携帯が鳴った。社長からだった。
キャンプ場に着いたと甲高い声は告げていた。
仕事を早めに切り上げて出発したらしい。入れ込んでいる気配を感じた。
ホタテは諦めることにした。

「♪みんな何処へいーったあ 見守られるこおともなあくう」
プロジェクト30 食べ尽くせ!サバイバルエコキャンプへの挑戦!! その3

15時35分、由仁町伏見台公園キャンプ場に到着。
車に満載の機材を坂の下のキャンプ地に運ぶ。汗が噴き出してきた。
いよいよ問題の5人用家型テントの設営となった。
地形の傾斜、風向きを考慮して慎重に配置を決定した。骨組みを組み立てテント地を被せペグを打ち込む。順調に進んだかに思えた。
異状に気づいたのはペンギンだった。入り口がない!!。逆だと思った。それが判断ミスだとは気づかなかった。
ペグを抜いて骨組みの四隅を持ち180度回転させた。だがまだしっくりこなかった。
そのとき事務長が叫んだ。「テント裏返しじゃないの?!」。テント地の縫い目がそれを証明していた。
テント地をはがし反転して再度被せ再度ペグを打ち込む。これで正解になるはずだった。
しかし入り口はまたしても逆だった。直前に入り口がないと思ったのは裏返しだったからで、実は正しかったのである。
またしてもペグを抜いて骨組みの四隅を持ち180度回転させた。
打ち込むペグが笑っていた。「へたくそ」と。

サバイバルエコキャンプの幕がやっと開いた。

「♪ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらあないー」

プロジェクトXにも疲れてきたので普通の文体に戻します。

無事設営も終わり(社長と事務長の持ってきたドーム型テントは本当に楽でした)3張張の30'sテント村が完成。
ゆたか君はカブトムシを捕りたくて林を探索してました。残念ながらカブトムシは見つけられませんでしたが、クワガタを捕まえて喜んでいました。
次の作業は網焼きの食材の買いだしです。
ナイスガイが留守番することになったのですが、私としてはアイスボックスの中のビールがとても気がかりでした。
由仁の町の店で、肉とサンマ・ししとう等を買ってきていよいよ夕食の支度となりました。

豚汁は材料を適当にカットして鍋に放り込み、小型コンロに載せてあとはナイスガイが担当しました。
>私はキャンプ場に設置してあるかまどで炊飯です。
事務長が薪割りをしたいというので斧を持たせたところ、大変楽しそうに割っていました。炎と刃物には目がない事務長でした。
5合飯ごう2個で炊いたのですが、20年ぶりなので大変緊張しました。
薪の火加減が重要なのですが、少しずつ要領を思い出してきて、ほとんど焦げ付きもなく食べられる状態に仕上がったのでほっとしました。
豚汁もナイスガイの絶妙な味噌加減でうまくできていました。

一同が驚いたのはこの後でした。まさに夕食を食器に盛ろうとしていたその時、yumipyonとGONTAの二人組が到着したのです。
いつもは何かと時間にルーズな二人が、食事の時間にはどんぴしゃりに現れるとは・・。
食いものに対するすざましいばかりの執着にあきれかえりました。

>夜も更けてきて食欲を満たす至福の時間を過ごしていると、暗闇の中を黒い影がこちらに向かってくるではありませんか。
なんと今回欠席のはずのたくらんけでした。地ビールとソーセージの差し入れ持参に大感動。
特に大きな瓶入りのスカイビールは本当に旨かった。

飛び入り参加でとても盛り上がっていたが、温泉が10時までだったので宴会はいったん中断して入浴タイムとなりました。
たくらんけとナイスガイは火の番をしながらスモークチーズを作る係りとなりました。
なんとたくらんけは自作の薫製機まで持ってきていたのでした。
事前の調査でユンニの湯まで徒歩5分と見ていたのですが、社長は「いやもっとあるから車で行く」とゆたか君を置いて発車していきました。
残った5人は懐中電灯を手にてくてくと歩いていきました。
夜空には白鳥座やこと座などがきらめく中、5分ほどで到着。
9時を少し過ぎていましたが、館内は結構な人がいてなるほど人気の温泉なんだなあと思いました。
お湯は黒ずんでいて(暗かったからかも)なかなかの温泉です。
9時50分にロビー集合としたのですが、やはり例の二人組は「まもなく閉館です」の館内放送にも現れず、結局たらたら出てきたのは10時過ぎでした。

戻るとスモークチーズが出来上がっていました。これがまた美味で、再び宴会が始まりました。
周りにもテントがあるせいか、ゆたか君も参加しているからか、いつもの下ネタもなく、タマネギやあぶらげ、焼き鳥やなすなどを焼きながら酒を飲み干していきました。
当然たくらんけも泊まることになりました。
「やはりさんまは由仁に限る」というのはかなり古いギャグですが、感心したのはyumipyonの見事な食べっぷりです。
まるでレントゲン写真のようにすっかり骨だけになったさんまが皿に残っていました。
夜空を人工衛星がゆっくりと横切り、寒くもなく夜は更けていき12時くらいに就寝となりました。

翌日は快晴。夜露に濡れた地面もあっというまに乾いていきます。
社長が持ってきたパーコレーターで食後のコーヒーを飲み、ビール片手に日光浴。いやあ暑かった。
女子とゆたか君と事務長の4人はフリスビーで遊んでいました。

昼食は焼肉です。
買い込んだ肉類を全て胃袋に収容し、ご飯は若干余りましたが食材は完全に食べ尽くしたのでした。

今回はなんと言っても天候に感謝。
グルメと温泉の会に変貌していく予感を秘めて30'sのキャンプは無事終了しました。

キャンプ場の写真