「○毛はパンツの中に・・・」

当望林道を走る予定だったツーリング報告

 by プカプカ

今年最後のツーリングは10月1日、当望林道を走る予定でした。
当日は都合のつかないメンバーが多く、参加者はT橋Jr、nack、ペンギンの各氏と私の4人という寂しさでしたが、秋晴れに恵まれた最高のツーリング日和とあってみんなニコニコ顔です。

ただ、大きな問題が一つ。
それは正しいルートを把握しているメンバーが誰もいないということでした。
三人寄れば文殊の知恵と言いますが、4人もいればそれぞれの記憶を総合すればなんとかなるだろう、そう思うことにして林道へ突入です。

ところが資料館裏から入った最初の林道は写真のような浮き砂利の連続です。

しかも敷いたばかりで圧縮されておらず、踏ん張りが効かないというか、パワーをかけていないとフロントタイヤも取られる感じでバイクを寝かすのにも勇気がいります。
まして下りのブレーキングなんかはおっかなびっくり。
思わず念仏を唱え始めていました。
「ああ転ぶ 今すぐ転ぶ もう転ぶ・・・」有名な林道地蔵経の一節です。
これを3回唱えると誰でも転ぶという霊験あらたかなお経ですが、2回半唱えたところで最初の林道は終了、どうやら無事に舗装路に顔を出しました。
しかし、この2回半の言霊がのちに別のメンバーへの呪いとなってしまうとはこの時点の私には思いもよらないことだったのですが、その話は後程。

ここでちょっとルートの整理をしておきたいと思います。
(1)資料館からの林道はタイトターンの連続する舗装路と砂利道が半々くらいのルートである。
(2)それが終わると農道のような舗装路に上から降りてくる形で合流する。

舗装路に顔を出したというのは
(2)の地点に顔を出したということです。

ここから道なりにしばらく走ってみたのですが、林道の入り口が見当たりません。
「確かどっかから右に入るんだったよなあ」と思いながら数キロ走ってみたのですが、あたりの風景にも見覚えがなくなってきて、どうやら
(2)の地点から少し走ったところにあったカタカナのトの字の形をした交差点を右に行くべきだったのかもしれないと考え始めました。

ここで再びルートの整理です。
(3)(2)の地点から数分のところにトの字型の交差点がある。

更にしばらく走ると大きな駐車場のある休憩所のような広場がありました。
(4)(3)の地点を直進して道なりに走り続けると大きな駐車場のある休憩場所がある。

「こんな所来たことがないぞ。やっぱりさっきの交差点を右折するべきだったんだ」、そう思ってUターンをして
(3)の地点へ向かいました。

ご存じの方も多いと思いますが、私、方向音痴です。
林道のルートも積極的に覚えようという気持ちはなく、たとえ覚えようとしてもなかなか覚えられません。
酔っぱらってススキノから家に帰ろうとする時などは、西がどっちなのか冗談抜きで真剣に考えないと反対方向へ歩いてしまうタイプなのです。

今回のツーリングでどこをどう間違えたのか、正しいルートはどうだったのか、ペンギンさんやT橋Jr.さんは理解したようですが、私は未だに分かっていません。
幹事という立場上先頭を走りましたが、その結果メンバーを引き連れて訳の分からないルートを走り回ってしまったことを反省しつつ、こうしてレポートを作りながらおさらいをしていきたいと思っているところです。

さて、「どっかから右に入る」という固定観念に囚われた私は、
(3)の地点から左に折れて(元々来た方向から見ると右に折れて)舗装された峠道を走り始めました。
途中右側に「道民の森入り口」というような看板がありましたが、「キャンプ場には用などないんじゃワシラ」と無視しました。
この峠道から「右に入る林道の入り口」がきっとあるに違いないと思っていたのですが、しばらく走ってもそれらしい入り口が見つかりません。
正しいルートを知っている人はもう気づいたことでしょうが、このあたりから迷走が始まったのだろうと思います。
峠道はどんどん登り続け、再び「こんな所来たことないぞ」の思いが頭の中に渦巻きだしました。
停車して他のメンバーの意見を聞いてみたのですが、やはり「こんな峠の上まで走った記憶はねえしオマエに食わせるタンメンはねえ!」ということで意見は一致しました。
どこかで見落としがあったかも知れないと思い返してみると、
(3)の地点からすぐのところに赤い橋があり、そこから右に入る林道があったことを思い出しました。

(5)(3)の地点から間もないところに赤い橋があり、渡ったところから右に入る林道がある。
とりあえずその地点まで戻ってみたのですが、こんな林道に入った記憶もまったくなく、ここに入って行っても正しいルートを走れないことはさすがの私にも分かりました。

「おかしい!○毛林道はいつの間にかパンツの中に隠れてしまった。」
「どうしたら○毛にたどり着けるんだろう。○毛見たさに私の後を着いてくる純真無垢なメンバー達をどうしたら満足させられるだろう。」
「こうなったらどこでも良いから林道に入ってしまえ。林道さえ走っていればとりあえずは林道ツーリングだ。」
その場を取り繕うことに費やされ続けた私の社会人としての半生は、このような結論を出す人間へと私を変えていたのです。

「この道じゃないと思うけど、とりあえず入ってみようか」という問いかけに、金魚の糞、いや純真無垢なメンバー達は目を点にしながらただ頷くのでした。

 

間違った道であることを承知の上で入った林道、ということは当然走ったことのない道なわけで、あまりペースは上がりません。
その上だんだん道幅は狭くなり、路面は草に覆われ始め地面が見えなくなってきました。
救いだったのはその草を踏み分けるようにジムニーか何か四輪車の轍があったことで、その轍をトレースするようにしながらヨタヨタと登り続けました。


知らない林道の頂上付近。広場のようなスペースがあったので小休止。
KTMの後方が草に覆われた林道です。

やがて道は下り始め、突然目の前に広い林道との交差点が現れました。
右下にはコンクリート製の建物がちらっと見えます。
まずは自分たちの居場所を知る手がかりを得るために、建物の方へ下ってみることにしました。
建物の入り口の門には「月形ダム」と書かれていました。

この看板を見ても、私には自分のいる場所がどこなのか分かりません。
持参した古い地図帳を開いてみると、「南月形ダム」というのは書かれているのですが、「月形ダム」というのは載っていません。
「どうやら最近出来たダムらしい。」などという結論を出しかけたとき、門の脇に見覚えのある物を発見しました。


これってもしかしたら・・・?
そうだ、間違いない!

(6)(5)の地点から入った林道を抜けると月形ダムに出る。

そうです。過去に何度か昼飯を食ったことのあるあずまやが、いつ潰れたものか、屋根だけを残してそのまま放置されていたのです。
「あ、この景色覚えてるぞ!そうだここにあずまやがあって、あそこにダムがあって、道の上の方には白いフェンスがあって・・・。」

何度も言いますが、正しいルートを知っている人にとっては「なんだ、そんなとこに出たの?」という程度のことなのでしょうが、今回のツーリングで初めて記憶にある場所に立った私の心は昂揚しました。
やっと正しいルートに出る事が出来たと思った私は俄に自信を取り戻し、その結果二度目の誤りを犯してしまいました。
「記憶にある景色に向かって走って行けば、正しいルートに出ることが出来る!もう大丈夫!」そう思ってしまったのです。

いぶかしがるペンギンさんを無視して、「わかった!こっちだ!」と叫びました。
多分この辺りから、支離滅裂な先導者によってメンバーの方向感覚は混乱させられ、「なんだか分からないけど、可哀想だからついて行ってやろう」という諦めに変わったのだろうと思います。

自信を取り戻した私は若干ペースを上げつつ、ダムの上流に向かう林道を走り始めました。
ところがしばらく走ると大きな重機が道をふさいで停めてあり、そばには土留め工事中の看板が・・・。
ここはT字路になっており、直進方向は重機がとおせんぼしていますが、直角に右に伸びる道はなんとなくどこかへ抜けられそうな様子に見えます。

時刻は正午を過ぎた頃だったので、ここは慌てずまずは昼食を摂ることにしました。
訳は分からないながらまあそこそこ走っては来たし、天気も良いし、悪い気分ではありません。

昼食後はとりあえずT字路を右折してみることにしました。
ところが走り始めてすぐに崖崩れです。

落ちてきている木の上側を通れば突破は難しくなさそうですが、その先にももう一ヶ所崩れているところがあり、更に先はカーブになっていて見通せません。
「君子危うきに近寄らず」と言いますが、正しいルートかどうか分からない道を無理して進む必要はないわけで、ここは引き返して、重機の置いてある道を進んでみることにしました。

重機の左側の側溝を通れば簡単に通過できそうだったので、側溝にバイクを乗り入れたのですが、これが実は表面だけが乾いていて底の土はぬかっており、リアタイヤが埋まってちょっと苦労してしまいました。
私以外のメンバーはお利口さんなので、写真のとおり重機の脇を通り抜けます。

 
ペンギンさんの左側にちょっと見えている裏向きの看板の方向が、今引き返してきたT字路です。
私が埋まった側溝はT橋Jrさんの足下のあたりです。

しかし、本線と思われたこの道もやはり行き止まり、というか土砂に埋まった川の跡のような工事現場に突き当たってしまい、写真でもわかるように、走れるような道はなくなっていました。


写真の右下には枯れかかったような川があります。

ここでまたルートの整理です。
(7)月形ダムの上流は土砂崩れで工事中であり、手前のT字路を右折しても土砂崩れ現場があって抜けられる保証はない。

上流がダメなら下流へ向かうしかないということでダムを通り越して舗装路を下り始めましたが、○毛が隠れたパンツの紐は固く、私の中にも諦めの気持ちが起こり始めていました。
もう午後になってしまったし、日暮れが早くなっているから残り時間は余り多くないと思いながら走っていくと、見覚えのある場所にでました。
そこは最初に舗装路に顔を出した
(2)の地点でした。

(8)(2)の地点で道なりに進まず、Uターンするように右折すると月形ダムに着く。

要するに我々は、間違ったルートを走った挙げ句山一つ巻いて、元の場所に戻ってきてしまったわけです。
○毛を隠したパンツは「坊や下手くそネ。」と私をあざ笑ったのでした。
この時点で私は再び自身を喪失し、思考は混乱しました。
「あっちへ行ってもダメ、こっちへいってもダメ、ダメったらダメ。ダメなのねー、ダメなのよー。」

ペンギンさんも珍しく混乱した様子で、「さっきここで停まったって?・・・うーん、方向感覚がおかしくなった」と言っています。
nackさんは「なんでもない所で転んでしまった」と、ハンドルガードを調整しています。
「あんまりペースが遅いんで気が抜けていたんでしょ」と言うと頷いていましたが、本当の理由は初めの方に書いた林道地蔵経2回半の呪いなのです。
しかし、これだけ引きずり回しておいて更に呪いまでかけてしまったとは言うことができませんでした。
T橋Jrさんは寡黙な人ですが、どうやら何事かを理解したようで、
(4)の地点まで行ってそこから右折するのが正しいルートではなかったのかと言っています。

私は完全に主体性をなくしており、「ダメなのねー、ダメなのよー。・・・もう好きにして」という状態だったので、ここから後は判断を停止し、他のメンバーの言うとおりに走ることにしました。

まず
(3)から入った舗装の峠道がどこに抜けるのかを確認しに走ってみたところ、この道は道道28号線に通じていることが判りました。
その後は28号を当別方面へ走り、○毛の出口、月形から28号への出口、そして去年工事中だった橋を確認できました。
この時点でペンギンさんも混乱から回復し、納得の様子です。

橋を渡って進むと、土盛りをしたばかりで工事中の道がありますが通行止めです。
ここはT字路になっており、T字路を右折すると・・・。

お待たせしました。
本日の目的であったはずの○毛林道が姿を現しました。
あとはパンツの紐というか、このゲートを越えてしまえばOKです。

しかしすでに影が長く伸び始め、時間の余裕がなくなっていました。
今回は○毛林道の入り口に辿り着いたことをもって良しとしようということになり、今年最後のツーリングは不完全燃焼のまま終了することになったのでした。


今、私の手許には一枚の地図があります。
このレポートを書き始めてみたものの、どこでどう間違って正しいルートはどこだったのか、手持ちの地図帳ではどうしても判らず、nackさんが言っていたことを思い出して国土地理院ホームページからダウンロードしたものを貼り合わせて作ったものです。
この地図を見ながらレポートを書いてみて、今なら一部を除いてほとんど理解できます。
地図を用意するということに事前に気づいていれば良かったのですが、怠慢な幹事のせいで走りを楽しむツーリングにはならなかったことを参加メンバーにお詫びして、当望林道を走る予定だったツーリング報告を終わります。