「豚鼻音頭誕生秘話」     by プカプカ

林道ツーリングなんて、何のアクシデントもトラブルもなく、怪我人もなくバイクの故障もないのが一番良いのです。
それはわかっているのですが、それにしてもレポートを書く身になってみると、話題が少なくて書くことがないのは少々困ったことなのです。
2005年8月28日、いつものようにメイドのアンジェラの甘い声で目を覚ましたのは7時10分でした。
朝食用のサンルームから見ると空は快晴、銀座サンジェルマンから取り寄せた食パンの厚切りトーストと京都イナダブレンドのエスプレッソの香りが心地よく、ウイーンから呼び寄せた楽士達が奏でるショパンのセレナーデも普段の朝より響きが軽やかに感じられ、食事を終えてウキウキと身支度を調えると18世紀英国トーマス社製の柱時計は8時10分を指していました。
集合場所のロイホ元町店には8時30分までに着かなくてはなりません。
少々時間が切迫していたので、執事のフランクに命じて全市に交通規制を敷かせ、信号機をすべてコントロールさせた結果、ロイホには8時25分に到着しました。
などという些細なことを書いてみたくもなってしまうのでした。

さて本題に入りますが、ロイホに集合したのはナイスガイ・Nack・ペンギンの各氏と私の4人。
ごんたさんからは急遽キャンセルのメールが入っていました。
ここからはナイスガイさんの先導で、まったく知らない道を走り、いつもより短い時間で月形に到着しました。
月形のローソンで合流したのはたくらんけ・温泉魔人・T橋Jr.の各氏。
再会の挨拶もそこそこにたくらんけさんが寄ってきて「豚鼻はずしたかい?」、「豚鼻はずすといい感じだよ」 などと言います。
梅毒が悪化すると鼻がもげるぞ!というのは我が家に古くから伝わる家訓なのですが、そのことをたくらんけさんが知っていようとは思わなかったので戸惑っていると、 「今はずしちゃうかい?」 と言いながら私のランツァのシートをはずし、エアクリーナーに通じる部分のダクトをむしり取ってしまいました。
このダクトの形状は言われてみれば豚の鼻にも似ていないわけではなく、象の鼻にしては短すぎるし、ヤマハの部品リストにどんな名称で載っているかは判りませんが、以後豚鼻ということで私の頭にインプットされました。
豚鼻はずしの結果何が変わったかというと、まずは音です。
今まで聞き慣れていて意識することのなかった吸気音が、擬声語でいうとブカーとかバゴーとかいう荒々しくも迫力のある音に変わりました。
でも、オンを走っている間はエンジン性能の変化は感じることができませんでした。
 ローソンからはいつもどおりたくらんけさんの先導で林道に突入。
最初の肩慣らしというかあるいは身体を硬くするというか、アスファルトの上に小砂利の乗った滑りやすいワインディング峠を越え(ここではNackさんが派手にリアをスライドさせていました)、いよいよ橋を渡って○毛林道へ! というはずの所にあるその橋は、なんと付け替え工事中でまったく通行不能でした。

現場監督風の人の言うには、「泳いで渡るしかないど〜」、「他に橋なんかないど〜」、「この先山しかないど〜」とのことでした。
泳いで渡るのは嫌だし、橋がないはずはないし、山に入りたくて来てるんだし、諦めを知らない我が30's精鋭部隊はその後数十分間にわたり付近を捜索したのですが、現場の人の言うとおり半径5km以内に迂回路は見あたりませんでした。
じゃあ月形温泉で一風呂浴びて帰ろう、と言いかけたのですが、たくらんけさんの提案で林道を出口側から入って逆走しようということになりました。
ああ、そういう手があったか。
 出口から入った林道はいきなりの縮れ毛で、休む暇なくコーナーが連続し、おまけにところどころ深砂利が敷いてあります。
とくに「下りの」「砂利の」「右コーナー」という私にとって三大苦手要素が重なったコーナーが多く、腕はガチガチ体重移動はできず、視線は足下から離すことができず、前後ブレーキはかけっぱなしの、いわゆる舐めるようなコーナリングとなってしまいました。
それでも登りで路面も良いコーナーでは、ちったあアクセルでも開けてやろうかという気分になれてスイスイスーダララッタなのでしたが、ここで豚鼻はずしの効果が現れました。
トルクが太く、エンジンのツキが良いのです。
アクセルをブッと開けてやるとグッとトルクがかかり、バイクがビッと向きを変えてくれるのです。
ブッとやるとグッときてビッとなる。ブッとやるとグッときてビッとなる。あそ〜れブッとやるとグッときてビッとなる。
おほっ!こりゃええで!豚鼻音頭じゃ! と喜んでいたらNackさんが甲高い排気音とともにぶち抜いて行き、ありゃまと思う間もなく温泉魔人さんも重低音とともに追い抜いて行きました。
二人ともエンジンが良く回っていて、回転がパワーバンドに入っています。
それより何より下りでスピードが落ちません。
「あれはいかん!あれは真似しちゃいかん!真似すると路外転落じゃ!ここは豚鼻音頭に徹するのじゃ!」 ご先祖様の声がどこからか聞こえてきます。
ブッとやるとグッときてビッとなる。ブッとやるとグッときてビッとなる。あそ〜れブッとやるとグッときてビッとなる。
ブッとやるとグッときてビッとなる。ブッとやるとグッときてビッとなる。あそ〜れブッとやるとグッときてビッとなる・・・・・・。
先行の3人はあっという間に見えなくなるし、後ろの3人とも距離があったようで、今回はほとんど一人で走っていたためにメンバーの走りの様子はあまり分かりません。
T橋Jr.さんが一度路外走行にチャレンジしていたのと、ペンギンさんが「この林道面白くない」と言っていたのと、私が下りであんまりスピードを落とすのでペースが狂うとナイスガイさんがこぼしていたのは覚えています。
以上まとまりませんがツーリングのレポートでした。

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