9月7日 ツーリング

「ウサ、今日は何とかリングとか言う日じゃないのか」
「ご隠居、それを言うんだったらツーリングですぜ」
「そうそう、だけど雨が降りそうだな」
「ご隠居、私らオフロードライダーはいちいち雨が降ろうが槍が飛んでこようが、そんなことを気にするメンバーは一人もいませんぜ」

「それは悪かったな。ところでワシも一緒に行ってもいいのか」
「それは無理ですぜ。どうしてもって言うんでしたら後ろの方に乗せていってもいいですが」
「じゃぁ、お言葉に甘えて、よっこらしょ」

「ご隠居、とりあえずそこのスタンドに入りやすぜ」
「なぜじゃ」
「ここ岩見沢で待ち合わせしているんです。札幌の三人にここで一人、ん?二人。誰か飛び入り参加?まっ、いいか。多い方が楽しいし」

「ウサ、スタンド出発して暫くしてから変な脇道入ったが、なんでこんな砂利道走らなきゃならないんだ」
「ご隠居、これが私らのツーリングって言う代物ですぜ。ちゃんと目見開いて見ててください」
「その割にはウサ、変な汗かいていないか」
「ご隠居、蒸し暑いからですぜ。決して緊張したり、怖がっているからじゃないですぜ」
「何もワシはそんなこと聞いとらんが・・・・・。それよりウサ、道が間違っとらんか」
「ご隠居、私も何か違うなとは思っていたところで。まっ、これもご愛敬と言うことで」

「ウサ、いよいよこれからが本当の道じゃな。美るとは雨に降られるとかなり滑りそうじゃが、ウサは大丈夫なのか」
「大丈夫じゃありませんぜ、ご隠居。私もいつ止まってもいいように走っているじゃないですか。もうすぐ下りですからもっと滑ると思いますぜ」
「ご隠居、早速下ってきたんですがワダチってものがありますぜ。って言ってる間に、あ〜ぁ」
「ウサどうしたんじゃ!」
「ご隠居、情けねえことにワダチばかり見ていたら気持ちが萎えてきてバイクをほっぽり出してしまいました」
「本当に情けねえ奴じゃ。ほれ後ろで [ぷか左右衛門]が「ワダチ見て出ようとしてこうなったんだ」と言われておるぞ」

「面目ない。でも晩の沢では今までの道より走りやすくなってるはずなんで、もうちょっとマシな走りができます(と思う)ぜ」

「う〜ん、少しはまともになってきておるようじゃが、他の者たちは若干不満そうな顔をしておるぞ」
「ご隠居、私もそうなんですが、なんせかんせ暑くて暑くて。それに加えて湿気が多いもんでゴーグルが曇ってよく前が見えないんで」
「脱げばいいじゃろ。だいたい何枚着てきたんじゃ」
「半袖と長袖のジャージ、長袖の綿のシャツ、ブルゾンと最後に厚手のカッパ」
「馬鹿者!この蒸し暑い雨の中で着すぎじゃ。すぐ脱げ!」

「脱いだところでご隠居、[Kの助]がいつものルートの逆から入るルートと言っているので[Kの助]に道案内を預けやす」
「ところでウサ、ワシは腹が減ってきた。どこで飯を食わす気じゃ」
「途中、旅籠(はたご)に食事処がありやすんで、そこでと皆で話してたところで」

「ご隠居、そんなにのんびりしていたら置いていきやすぜ」
「すまんすまん。おまえの遅い走りと食後の眠気でちょっとうとうとしてしまったわい」
「(一言多いなぁ・・・・)」

「ウサ、ちょっと走りが軽快になっておるぞ。珍しいことがあるもんじゃ」
「ご隠居、私だって少しはまともに走りたいときがあるもんですぜ。途中、[Kの助]が私を追い越そうとしたのでちょっと意地悪してしまいました」
「調子に乗るな!たわけ。十年早いわい」
「へぃ!」
「ところでウサ、[Kの助]が[ぷか左右衛門]に、「[ぷか左右衛門]さん、なんか軽快に走っているんじゃない」と言っておるぞ」
「私もミラー越しにそう思っていたんですよ。[ぷか左右衛門]はきっと私の走りとペースが合うんでしょう。[ぷか左右衛門]と[ぺんの進]はつきあいが長いから走るペースも似てくるんでしょう。ビビるところや走りやすい路面とかきっと同じなんでしょう。3人ともヌタ場やガレ場は嫌いですが堅めのウェット路面は好きですから」
「堅めのウェットが好きなのは皆同じじゃ。嫌いなところを何とかしなきゃならんじゃろ。進歩のない奴じゃ」
「へ〜い(また言われちまった・・・・・)」

「ウサ、[高坊]が来ないぞ。どうしたんじゃ」
「[Kの助]が見に行きやした。あっ、戻ってきやしたぜ。ありゃ[高坊]ころんだな」
「う〜ん、左半分泥が付いておる。途中、まだ慣れないスタンディングとかいうのでちょっと疲れているようじゃったからなぁ」

「さっ、ウサいよいよ最後のコースじゃ、。おまえの嫌いな」
「ご隠居、よく分かってらっしゃいますな。あ〜!、早速またバイクをほっぽり出しやした」
「おまえは何をやっているんじゃ。今度は [ぺんの進]が「ウサはよりにもよって変なコースばかり選んで走ってるなぁ」と言っておるぞ」
「私も好きこのんでそうしている訳じゃないんですが、視線が3m先しか見ていないもんで、途中自分でどのラインを取るか分からなくなるんです」
「ホント、オマエは情けない奴だのう・・・」

「ご隠居、[ぺんの進]が次のツーリングのための下見をしたいと申していますが、一緒にお付き合い願えますか」
「そりゃ当然じゃろ。ワシも気になっておるのじゃ。確か温泉付きとか言っておったらしいのぉ」
「ご隠居、結構楽しそうなコースですぜ。車も入ってくるとは思いますが」

「ウサ、ワシはお茶が飲みたい。どこかにないのか」
「ちょうど目の前に[マウントなんとか]と言うちょっと小粋な旅籠がございやす。そこにちょっとしたハイカラなところがありますんでいかがなもんでしょ」
「甘いものもあるかのぉ」
「当然です。私も甘いものには目がないもんで」

「ご隠居、そろそろ帰る時間になってきやしたが、どうでしたか今回のツーリングは」
「うん、雨のツーリングとか言うのもなかなか乙なもんじゃな。また行く機会があったらワシも一緒に連れて行ってくれんか」
「・・・・・・・」

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