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建物と文化と健康
古来より日本は滅びの美学と云うことが云われてきました。
このような建物の進化や日本人の習慣に応じて、安価で高耐久の新建材がどんどん開発され、建物の中で自然ものは次第に少なくなり、人工的なな材料が多く利用されるようになってきました。そして今、「室内環境汚染」という問題が新たに浮上してきました。 新築の家屋の室内に揮発する、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、防腐剤、防かび剤、防蟻剤などによる「シックハウス症候群」「環境ホルモンおよび化学物質過敏症」などです。 これらの問題は深刻です。人体に悪影響があるような建物は快適な建物とはけして言えません。しかし、人体に悪いからと新建材を一切使わないとなると、現建材のほとんどが使えなくなってしまいます。 壁などを本物の木板で仕上げれば、自然の材料を用いた健康的な建物になるかも知れませんが、建築費は格段に高くなってしまいますし、多くの樹木が建材用に伐採され、森林破壊などの環境問題も新たに浮上してきます。いえいえ、けして森林破壊を防ぐために人間が我慢をしなさいと云うのではありません。当然改善されるべき問題です。しかし、今すぐに改善できないと云う問題を抱えていることも確かです。 昨今の住宅の売り出しのうたい文句に「高気密・高断熱住宅」と言うのがあります。つまり、すきま風はおろか、台風時の水の侵入や湿気の侵入や外部の暑さ寒さも遮断してしまうという建物です。 冬は外の寒さを完全にシャットアウトして、室内は暖房により半袖でも快適に暮らせるという理想的な建物のように思えます。しかし、「高気密・高断熱住宅」というのは大きな落とし穴があることも知っておかなければなりません。気密性の高い部屋でストーブを1日中焚き続ければ、室内の空気は汚染され、また新建材から揮発された有害化学物質が部屋中に充満してしまいます。いくら、有害な建材を排除して、健康的な自然の材料を使っても、締め切ってストーブを焚き続ければ、健康にいいはずがありません。建物が高気密で有ればあるほど、たまには窓を開け放って換気をすることが必要です。 すきま風が入る部屋で、たいした暖房器具もなく、寒ければ1枚重ね着をして寒さをしのいだ、そのような昔の生活が全て時代遅れとは言えない面もあるのではないでしょうか? このように、建物と文化と健康は密接な関係なのです。 |