■■WWMおじさんの木工講座について■■


−−−生い立ち、著作権、文責、免責事項等−−−

(生い立ち)
 この講座は、1994年6月から、パソコン通信、PCVANの”家具とインテリア”SIGで約100回連載したものです。この連載期間中、同SIGの多くメンバーの方から貴重な意見をいただき、私自身たいへん勉強させていただきました。貴重なアドバイスや温かい励ましをいただきました家具とインテリアSIGの皆様方に厚くお礼申しあげます。

(著作権・文責等)
 また、この講座の著作権と講座の文章に関する責任は私にあります。本格的な木工を目指す方に役立つようにと書きましたので、木工の基礎については本文中に紹介しましたような技術書を参考にしていただきたくと思います。

(免責事項)
 この講座を参考にされた木工作業での事故や、損害等にはいっさい責任を持ちません。安全確保は各自の責任でお願いします。

(転載について)
 転載については、必ず下記、宮本までご一報下さい。

(その他お願い)
 講座そのものよりも、これによって広がる人の和がいちばん価値のあることと考えています。読まれた感想やご意見、ご質問等をぜひお聞かせ下さい。

住所:〒463-0004 愛知県名古屋市守山区吉根太鼓ヶ根3237-10
宮本家具工房
氏名:宮本 良平
e-mail: r-mymt@ann.hi-ho.ne.jp

(PS)
 このページはオリジナルのテキストファイルをもとに、エディターで半自動的にHTML形式に変換し作成しております。表示のおかしいところも多々あると思いますが、何分にも長い連載であったために、修正を充分にする時間と気力がありませんでした。あしからずご了承ください。


目次

(001) 94/06/18 WWMおじさんの木工講座(1)はじめに
(002) 94/06/19 WWMおじさんの木工講座(2)手道具の購入
(003) 94/06/20 WWMおじさんの木工講座(3)裏だし
(004) 94/06/21 WWMおじさんの木工講座(4)研ぎ
(005) 94/06/22 WWMおじさんの木工講座(5)研ぎ余談
(006) 94/06/23 WWMおじさんの木工講座(6)台の刃を入れる
(007) 94/06/25 WWMおじさんの木工講座(7)穴堀の練習
(008) 94/06/26 WWMおじさんの木工講座(8)ホゾの加工
(009) 94/06/27 WWMおじさんの木工講座(9)手加工の重要性
(010) 94/06/28 WWMおじさんの木工講座(10)子供椅子の製作例
(011) 94/06/30 WWMおじさんの木工講座(11)各種の材木
(012) 94/07/01 WWMおじさんの木工講座(12)材木屋へ行く
(013) 94/07/02 WWMおじさんの木工講座(13)電動工具1
(014) 94/07/03 WWMおじさんの木工講座(14)電動工具2
(015) 94/08/30 WWMおじさんの木工講座(15)北欧編−工作環境
(016) 94/08/30 WWMおじさんの木工講座(16)北欧編−ワークベンチ
(017) 94/08/31 WWMおじさんの木工講座(17)北欧編−研ぎ
(018) 94/09/01 WWMおじさんの木工講座(18)北欧編−スプーン作り1
(019) 94/09/02 WWMおじさんの木工講座(19)北欧編−スプーン作り2
(020) 94/09/03 WWMおじさんの木工講座(20)北欧編−感じた事など
(021) 94/09/04 WWMおじさんの木工講座(21)マカバのテーブル注文製作1
(022) 94/09/05 WWMおじさんの木工講座(22)マカバのテーブル−天板加工
(023) 94/09/06 WWMおじさんの木工講座(23)マカバのテーブル−天板のハギ
(024) 94/09/07 WWMおじさんの木工講座(24)ハギについて考える
(025) 94/09/08 WWMおじさんの木工講座(25)続ハギについて考える
(026) 94/09/09 WWMおじさんの木工講座(26)天板の固定のしかた
(027) 94/09/10 WWMおじさんの木工講座(27)アリミゾ加工
(028) 94/09/11 WWMおじさんの木工講座(28)ボンドと容器など
(029) 94/09/12 WWMおじさんの木工講座(29)テーブルの脚の形
(030) 94/09/13 WWMおじさんの木工講座(30)脚部の加工
(031) 94/09/14 WWMおじさんの木工講座(31)ホゾの加工
(032) 94/09/15 WWMおじさんの木工講座(32)脚部の仕上げ
(033) 94/09/16 WWMおじさんの木工講座(33)鉋削り
(034) 94/09/20 WWMおじさんの木工講座(34)組立
(035) 94/09/21 WWMおじさんの木工講座(35)天板削り
(036) 94/09/22 WWMおじさんの木工講座(36)天板削り余談
(037) 94/09/23 WWMおじさんの木工講座(37)オイル仕上げ
(038) 94/09/24 WWMおじさんの木工講座(38)オイル仕上げ
(039) 94/09/25 WWMおじさんの木工講座(39)設計の失敗談
(040) 94/10/03 WWMおじさんの木工講座(40)休憩−クラフトフェア
(041) 94/10/04 WWMおじさんの木工講座(41)仕上げの種類
(042) 94/10/06 WWMおじさんの木工講座(42)丹波フェスで並べた作品など
(043) 94/10/08 WWMおじさんの木工講座(43)同上
(044) 94/10/10 WWMおじさんの木工講座(44)テーブル製作反省
(045) 94/10/13 WWMおじさんの木工講座(45)椅子のデザイン
(046) 94/10/14 WWMおじさんの木工講座(46)同上
(047) 94/10/15 WWMおじさんの木工講座(47)椅子談義
(048) 94/10/17 WWMおじさんの木工講座(48)スプーン作り
(049) 94/10/19 WWMおじさんの木工講座(49)スウェーデンの刃物研ぎ
(050) WWMおじさんの木工講座(50)50回記念アンコール特別企画オイルフィニッシュ
(051) WWMおじさんの木工講座(51)50回記念アンコール特別企画オイルフィニッシュ
(052) WWMおじさんの木工講座(52)50回記念アンコール特別企画オイルフィニッシュ
(053) 94/10/28 WWMおじさんの木工講座(53)鉋の刃口をうめる
(054) 94/10/30 WWMおじさんの木工講座(54)道具箱の製作
(055) 94/11/03 WWMおじさんの木工講座(55)タブテール加工
(056) 94/11/04 WWMおじさんの木工講座(56)タブテールの機械加工
(057) 94/11/07 WWMおじさんの木工講座(57)道具箱
(058) 94/11/11 WWMおじさんの木工講座(58)道具箱
(059) 94/11/13 WWMおじさんの木工講座(59)道具箱の組立
(060) 94/11/14 WWMおじさんの木工講座(60)道具箱の仕上げ
(061) 94/11/17 WWMおじさんの木工講座(61)丁番のとりつけ
(062) 94/11/20 WWMおじさんの木工講座(62)道具の収納
(063) 94/11/24 WWMおじさんの木工講座(63)ノミの収納
(064) 94/11/30 WWMおじさんの木工講座(64)材積計算
(065) 94/12/08 WWMおじさんの木工講座(65)大口注文タンスの設計
(066) 94/12/13 WWMおじさんの木工講座(66)ビスケットジョインター
(067) 94/12/15 WWMおじさんの木工講座(67)同上
(068) 94/12/18 WWMおじさんの木工講座(68)クリスマスプレゼントのコースター
(069) 94/12/20 WWMおじさんの木工講座(69)チーク材の買い出し
(070) 94/12/26 WWMおじさんの木工講座(70)材木の購入
(071) 94/12/30 WWMおじさんの木工講座(71)板の下ごしらえ
(072) 95/01/05 WWMおじさんの木工講座(72)ホゾ穴の墨付け
(073) 95/01/08 WWMおじさんの木工講座(73)チーク板の3枚割り
(074) 95/01/15 WWMおじさんの木工講座(74)ビスケットジョインターによるハギ
(075) 95/01/22 WWMおじさんの木工講座(75)溝きり
(076) 95/01/24 WWMおじさんの木工講座(76)柿渋
(077) 95/01/26 WWMおじさんの木工講座(77)シェラック
(078) 95/01/30 WWMおじさんの木工講座(78)アンモニア
(079) 95/02/02 WWMおじさんの木工講座(79)ベスターの砥石
(080) 95/02/07 WWMおじさんの木工講座(80)スクレーパー
(081) 95/02/15 WWMおじさんの木工講座(81)スクレーパーの仕立て
(082) 95/02/24 WWMおじさんの木工講座(82)被せ面2枚ほぞつぎ
(083) 95/03/05 WWMおじさんの木工講座(83)平面と直角を作る工夫
(084) 95/03/08 WWMおじさんの木工講座(84)続ビスケットジョインター
(085) 95/03/19 WWMおじさんの木工講座(85)量産体勢
(086) 95/03/24 WWMおじさんの木工講座(86)よく使う治具
(087) 95/03/26 WWMおじさんの木工講座(87)チークのタンス完成 (注:87番がダブッていました)
(088) 95/04/06 WWMおじさんの木工講座(88)よく使う治具、その2
(089) 95/04/14 WWMおじさんの木工講座(89)ルーター
(090) 95/04/23 WWMおじさんの木工講座(90)シェラック
(091) 95/04/25 WWMおじさんの木工講座(91)続シェラック
(092) 95/04/26 WWMおじさんの木工講座(92)続々シェラック
(093) 95/05/04 WWMおじさんの木工講座(93)ルータージグテクニック
(094) 95/05/13 WWMおじさんの木工講座(94)ボブさんのルーターテーブル
(095) 95/05/20 WWMおじさんの木工講座(95)作品紹介
(096) 95/05/26 WWMおじさんの木工講座(96)作品紹介2
(097) 95/06/04 WWMおじさんの木工講座(97)製作ノートから
(098) 95/06/10 WWMおじさんの木工講座(98)創りたいもの
(099) 95/06/19 WWMおじさんの木工講座(99)木工書
(100) 95/06/23 WWMおじさんの木工講座(100)各種入手先
(101) 95/06/28 WWMおじさんの木工講座(101)木工講座を振り返って

WWMおじさんの木工講座(1)


最近、木工をちょっとご無沙汰ですので、自分にムチを振るうつもりでこのSIGにふさわしい連載をスタートします。気分によって休講が多くなったり、中断するかもしれませんが、ご勘弁を!


1,はじめに
 私が木工を本格的に始めたのは、失業してひまがあった時「この情けない失業時代の思い出に、ひとつ家具でも作るか!」と、釘と板材だけでベンチを作ったのがはじまりです。
 そのベンチは今も息子の部屋にありますが、幅9センチ厚さ3センチの板材(たぶんベイトガ)を切り、釘で打ち付けただけのものです。それでも、無垢の木の存在感と自作の家具の良さは感じられたのです。
 次に同じような板材で120センチ×80センチの食卓を作りました。これは、X脚構造で、天板は8枚の板を並べただけのもので、小さかった子供が味噌汁をこぼすと木の隙間からダダーッと床にこぼれました(^^)。その後、透明のビニールシートをかぶせて使っていましたが、案外ご近所の評判はよかった
のです。

 そんなある日、不本意ながらも仕事にありつき、毎日トボトボ車で通勤している道ばたのプレハブの工事現場みたいな小屋に、小さく「木工教室」という看板がでていました(一番最初に女房が発見した)。 それが、 木工の師匠、”クラフト1”のKさんとの出会いでした。

 Kさんも脱サラ組で、2年ほど前に会社をやめ一年間職業訓練校に通い、いきなり独立しガンバっていましたが、仕事が安定してある状態ではなく、「なんでもやろう」という気持ちで木工教室の看板を出したと思います。とにかく私が最初の生徒となったわけです。
 Kさんは「教えるのは初めてだ」ということで安い月謝で、休みの日に弁当をもって一日中、教えてもらっていたのです。まずは、刃物の研ぎ、鉋の仕込、そしてほぞの穴堀・・・。

 私自身も、習う前に「KAKIのウッドワーキング」柿谷 誠著を座右の書として愛読していましたが、この本と木工教室の同時進行がたいへん技術の修得に役立ったと思います。
 Kさんには2年半ぐらい習いましたが、先生にたよってしまう自分に気がついて教室はやめましたが、それからもずっと、アドバイスをもらったり木工の話をしたり、最近では少しはこちらからも情報がお返しできるようになり、師匠というか、仲間というかそんな間柄が続いています。

 この講座は素人のお父さんがある程度本格的に家具を作れるようになった道筋の一例として、習ったり覚えたりした順にそって、話を進めたいと思います。
(今日は序文だけで終わってしまいました。次回は研ぎのお話です)

94/06/18 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(2)


 多くのかたに励ましのお言葉や過大なご期待をいただきまして、ありがとうございます。
 パソ通のいいところは、ごく普通のおじさんが、洋家具の草分け的な職人さんや、木工の専門家の前で、堂々としゃべれることで、それはスナックで美空ひばりさんのがいるとは知らず、「悲しい酒」を歌って悦に入っているおじさんと同じようなものですから、適当に読んで下さいね。
 なお、質問については都合の悪い(答えられない)のは無視します(^_^;)。

2,道具について
 最初持っていたのは、結婚の時、「おまえは工作好きやから、これ持って行け」と実家の両親が買ってくれた、ごく普通の木箱入り大工道具セットでした。(この大工道具セットは兄嫁の実家が三木の左官用コテの工場を経営していたので、そこに頼んで買ってもらったため、最低レベルではなかった)

 しかし、この道具セットで今も使っているのは、寸6の平鉋(これはつぶすつもりで刃の研ぎと鉋の仕立てを練習した)と釘の下穴用の四目キリだけです。本格的に家具を作るのでしたら、急がなくてもいいから、大工さんが出入りするような道具屋を見つけて、ある程度使える道具を買うことが絶対に大切です。けっして、ホームセンターで棚に掛けてあるような道具を買ってはなりません(例外:替え刃式鋸は使えます)。必ず無駄になります。
 地方でいい金物屋さんが見つからない場合、新潟の平出商店さん(松本や丹波のフェアには出店される)が、1200円でカラーの道具カタログ(これは見るだけでも価値ある)を発行しており、刃物の評判も良く、通信販売で購入可能です。そのほか、東京の井上刃物さんや水平屋さん、直平さんでも通信販売も受け付けてくれます。

  *参考:平出商店*
    郵便番号959−12
    新潟県燕市白山町1−1−52 電話:0256−62−2819

 最初からこれだけは絶対必要という手道具をあげてみると
・平鉋(寸6とよぶ、中型の2枚刃)少なくとも5000円以上のもの
・鋸(レザーソーの両刃と胴付きタイプの2丁あれば大抵OK)
・スコヤ(シンワ製)
・ステンレス製のものさし(15センチと30〜50センチ、シンワ製)
・のみ(必要になったらそろえる、セットものを買う必要はない)
・けびき(ネジ式が便利、刃は研ぐこと)

しかし、これらの刃物の性能を充分に引き出すには研ぎが重要で、そのための道具がさらに要ります。
・中砥(キングの1000番、2丁)
・仕上げ砥(天然が良いが、最初はキングS−1でいい)
・金盤(金砥ともいう。砥石サイズの鋼板で、木の台をつける)
・金剛砂(金盤とともに使う)
・砥石の平面を出すための道具
 (コンクリートブロック、厚いガラス板等。ダイヤモンド砥石であれば不要)
・台なおし鉋(平鉋の台なおし用)

以上で3万円弱かかるでしょう。しかし、必要なものばかりです。

 実際には手加工だけではなかなかいいものはできませんが、この基本がないと機械加工もしっかりできないのです。

  (次回は、一番つらかった裏だしの話)
94/06/19 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(3)

WWM
 ZIROさんは、かなりいい鋸や鉋を持っておられますね。またガラス片での台なおしもご存知ですから、こりゃ講義がやりずらい(>_<)。

 また、パセリさんのRESを偶然、カアチャンが見ていまして、
カアチャン:「お父さん、まだ木工に転身してないやんか」
私:「ほっといてくれー、ワシの楽しみを邪魔せんといてんか!」

 TACKさん、フィンランドに行きたいのはやまやまですが、滞在期間をこれ以上延長すると、帰ってきた時、食卓に私の座席がなくなりそうで、今回はあきらめます。ストックホルムのお店は行ってみます。




 さて、前置きが長くなりましたが、今日は裏押し(裏だし)です。
「鉋が使えるようになればしめたもの」
「裏で切れ味がきまる」
などと言いますが、そのとおり、平鉋の刃の研ぎが、日本の刃物の研ぎの基本です。また、裏がとても大切なことは、腕があがっていくとしみじみわかってくるはずです(^^)。

 この作業、独学はとてもむつかしい。ビデオでもだめです。神戸の竹中大工道具館のビデオライブラリーの中に「裏押し」がありますが、これを見ても自分で経験があってはじめてわかると思います。そんなこと言っていては講義ができませんから、無理を承知で一応参考文献を紹介。

・木工具・使用法:秋岡 芳夫監修、吉見 誠述 創元社  3500円
・図解木工技術 :佐藤 庄五郎 著      共立出版 3000円

 詳しくは本で見てね。できれば、刃物の研ぎだけは、大工さんか、誰か上手な人に習ったほうがいい。

 私は、寒い12月頃、師匠の工房(プレハブ小屋)へ行き、床に濡れ雑巾をひき、木の台をつけた金盤をのせ、鉋の刃と20センチぐらいの木の棒をいっしょに握って、金剛砂を耳かき一杯分ぐらいのせゴリゴリをはじめましたが、削れるのですが、光ってこないのでした。
師匠:「Mさん、ピカッと鏡みたいに光るはずや」
私 :「・・・。これでどうでしょう?」
師匠:「もっと、光るはずですよ」
私 :「ゴリゴリ・・・」
師匠:「ええい、かしてみなさい!ゴリゴリ、シュシュ」
私 :「無言」
師匠:「裏押しは、妥協したらいけません」
私 :「ゴリゴリ」

 この日、朝からはじめて夕方でもOKがでなかったのであります。やはり要領があります。後日感じたポイントは

1,刃先に最も力が加わるようにする。
2,刃がグラグラしない工夫を考える(持ち方、治具の工夫など)。
3,金剛砂はほんの耳かき程度でいい。
4,いい刃物は裏がすぐにでる。
5,体が楽なように高さを加減する。
6,裏がだいたい平面になったら、息をとめて気合いをいれて空研ぎ。
 (別に息を止めなくてもいいが、気合いがはいると自然とそうなる)

たしかに、いい刃物の裏押しをすると、黒い砥カスの間にビカーッと光る刃がねにほれぼれするものです。

 今は、玄関先でコンクリートブロックを1つ置いてその上に濡れ雑巾、金盤を置いてやっています。

(PS)金盤自体が曲がっていると致命的。長く使うと、中央がへこんでくるので平面に直す必要があるが、たいへんなので、新しい金盤を買う方が速い。
 なお、東京で、研磨仕上げの厚さ3センチ程の金盤を売っていました。指物氏さんなどは、ほんとに大事な仕上げ鉋をこんな金盤で裏押しするのかもしれません。
(次回は、表を研ぐかなあ。質問なんてないよね。)
94/06/20 *****Wood Work M*****


WWMおじさんの木工講座(4)


風心さん、ありがとうございます。念のために言っておきますが、私はカラオケはあまり好きではありませんし、もし歌う場合は、営業用のコミックソングか、もしくは英語の曲で美空ひばりさんの曲は歌えません(^。^)。
 どうも、研ぎの話しはあまり面白くありませんね。が、これをマスターしないと先へ進まないのです。

(裏押し、余談)
 さて疲れる裏押しでしたが、ほぼ一日ゴリゴリやると、大切な刃が薄くなってしまいました。いわゆるベタ裏とか、ひょうたん裏というやつです。こうなると平面を維持するのが難しくダメな裏押しの代表です。
 ですから、最初はダメにしても惜しくない鉋で練習し、コツがつかめてから仕上げ鉋に移ってらないともったいないですよ。私のお気に入りの仕上げ鉋などはものの5分で刃先3ミリ程度のきれいな裏がでたのであります。
 また、本によってはキングの1000番などの中砥で裏押しをしている場合がありますが、これはあくまで素人向けであって、金盤での裏押しが本道です。
 それと、裏に顔を写してみてください。自分の顔がちゃんと映っているかどうか。曲がって見えれば、それは平面になっていないので失格。

4、研ぎ
 いよいよ、表を研ぎます。なお裏押しがしっかりできていれば、表に刃かえりがでているはずで、それをとるだけでも、かなり切れる状態になります。

   基本は前回紹介した本を見てね。

■その前に、大切なのが砥石の平面です。
 中砥の平面を出すにはいろいろな方法があります。例えば
・コンクリートブロックでこする
・厚いガラス板に金剛砂を少しまいてこする
・厚いガラス板に荒い耐水ペーパーを水張りしてこする
・同じ砥石2丁を互いにこする
・高いダイヤモンド砥石を買う
 私は、普通はブロックで、特に神経質に仕上げる時にはガラス+金剛砂です。ダイヤモンド砥石は高いけどいいらしいのですが、どなたか使用感を教えていただければうれしいです。

■次に研ぎ場について
 案外いい場所がないのです。私は、暖かい季節は外の水道のちかくで、冬は、玄関の中でブロックをしいてその上に、1500円ぐらいのゴム製砥石台を使って砥石を固定しています。
 しかし、ちょこっと研ぐ場合は、台所の流しに板をわたして研ぎますが、少しぐらつきます。それと食事の後始末の時間帯と重なることが多く、この頃は洗面所に避難することが多い。

■要は、丸刃にならないよう、一定の角度でストロークできるようにすればよいわけですが、これがなかなかむつかしい。次のポイントを工夫してみてください。

・刃の握り方
私は右手でガバッと握り、左手を添える感じ。師匠は両手の人差し指と中指4本を刃の上に平行にならべる方法。二人とも、斜め研ぎは避けるようにしています。理由は刃が斜めになりやすいから。
・ストロークを工夫する
 私は、砥石を3分割して、短い範囲でストロークする。両端と真ん中の3ヶ所で研ぐ。しかし、師匠は長いストロークなのであります。自分にあったやりかたで。
・治具の工夫
 研ぎのお助けツールがたくさん発売されていますが、木で作っている人も多い。小さい刃や細いノミは治具が特に有効。しかし、ズボラな私は、腕一本でやっています(^_^;)。
 (今日は中研ぎの話でした。次は仕上げ砥の話)

                     Wood Work M 宮本 良平

WWMおじさんの木工講座(5)

WWM
 ちゃんと、刃返りができたでしょうか? 私自身、あまり研ぎがうまくないのか、小さな刃返りしかできませんが、師匠の方が力があるのか刃返りは大きいようです。根がケチなもので、刃返りを作って落としてしまうと刃が速く減るという気もしまして、指先で感じたらすぐ中研ぎをやめています。

 職業訓練校でも4月入学で、おそい人は夏まで研ぎをやっている場合があるそうで、若い子はやめてしまう子も多いらしい。
 あまり、神経質になって完ぺきを目指す必要はありません。慣れれば誰でもそこそこ切れるようになります。

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■仕上げ砥石のこと
 最初にキングS−1で良いと言いましたが、今、自分は天然の仕上げ砥(一応鳴滝産)を使っています。

 仕上げ砥だけは、天然物がいいようです。いいものはベラボーに高いが、木っ端なら、数千円でけっこういい物があるようですから、高い合成砥を買うのだったら、天然砥を検討されてもいいと思います。

 東京でしたら、浅草、田原町の砥石屋が有名で木っ端砥もたくさん置いています。ただし、今年行ったときは、おじいさんがいなくて(亡くなったのかな?)こわいおばあさんに相手してもらってあまり居心地が良くありませんでした。
 また、京都の嵯峨の坊奥砥石さんを訪ねてみましたが、もう山堀はやめていまして、在庫だけの商売でした。3万円ぐらいだせばかなりいいものがあったと思います。

 皆さんの近くの古い金物屋さんに案外いい砥石がねむっているかもしれません。それから、NIFで話題になったことがありますが、最近散髪屋さんが、砥石を使わなくなって手放す場合があるとか。なじみの散髪屋のオヤジさんに「いい砥石持ってる?」などど聞いてみてはいかがでしょう。

■替え刃式鉋の登場
 最近、かなり使えそうな替え刃式鉋が登場しています。使われた方がおられましたら、ぜひどの程度使えるか教えて下さい。「研ぎの文化がなくなる」などという感傷的な気持ちもありますが、ほんとに使えるならば、素人の強い味方になるでしょう。
 しかしです、裏押しを自分でやった経験がないと、平面の大切さが体で覚えられないと思います。

■仕上げ研ぎ
 前置きが長くなりましたが、仕上げ研ぎです。いつも恐縮ですが、基本は本を見てね。
 合成砥でも、名倉砥みたいな小さな砥石がついていますから、これで砥石の表面を水をつけてこすります。そして、表刃全体が光ってくるまで研ぎ、次に裏1表3ぐらいで研いでおわりです。

 裏はすでに平面がでているので、それを維持するように、大切に研ぎます。光るのは合成砥のほうが良く光るが、切れるのは天然のほうで、その理由は知りません。
 天然の砥石は刃物を選びます。わが愛用の仕上げ鉋の刃を天然砥で研ぐと、すいつくような感じですぐ刃がつきますが、安物の刃はむしろ合成砥のほうがいい場合があるようです。

 こうして、夜中に刃物を研ぎあげ、鈍く光る刃先を見ていますと、思わずウットリ。こうなると、研ぎそのものが面白くなってきます。

■研げたかどうか目で見分ける方法
 完ぺきに研げると理論的には刃先の幅はゼロ。ですから、刃先を太陽などの光りにあてて、どこから見ても刃先に線が見えないはずです。ほんのり細く白い線が刃先に残っていては切れません。

 昨年、井上刃物さんで本物の千代鶴を見せてもらいました。なんとも言えない硬さと鋭さを感じる水色に光る刃先でした(千代鶴と言われたからそう感じたのかもしれませんが)。
 私のお気に入り仕上げ砥は地金の部分があまり光らないのですが、刃がねはビカッと光ってます。快感。

(いやあ、釈迦に説法みたいな講義で恐縮です。もっと面白い話がしたいですが、  次回も地味な話、鉋の仕立てです。じっとガマンの子であった:マル)

94/06/22 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(6)

WWM
 自己満足のこの講座ではありますが、地味な研ぎの話ばかりでは、あまりに失礼。今日は皆さんのRESの話題から。

>裏押しと裏だし
 てっちゃんさん、ZIROさん、実は私もこの区別がはっきりしなかったので、参考文献を見て確認しました。

”金盤でゴリゴリが裏押し”、”金床に刃を当てて玄能でコツコツ”が裏だしのようです。

 裏だしは、ベタ裏にならないようにするためには大切な作業ですが、私自身経験が豊富ではないし、なれないとZIROさんみたいに刃先をポロリということもあるので、この講座では敬遠します(^_^;)。

>KOHSEIさんの本、買いました。
 あれだけの本を出すのには、少なくとも10倍以上のバックグラウンドがなければできませんよね。KOHSEIさんの持っておられるものを控えめに表現されているように感じました。
 一般向けの本でありながら、ところどころエラクこだわりが感じられました。たとえば、柿渋、タマネギの草木染め、作業場探し、竹の種類、などなど。KOHSEIさんの生き方や主張に関係するの部分ではないかと想像しています。
 お顔がなかなか登場しないけど、やっと最後のページで拝見することができました。NIF、FDIYのROYさんもお顔が見れます。
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 さて、鉋の台ですが、詳しい話は面白くないし、本のほうが正確ですから、私のやったことを順に書きます。

おっと、裏金のことを忘れていました。
 逆目を防ぐ裏金も同様に裏押しをして平面にし表と同様に研ぎますが、その後で刃先を約70度に2段研ぎします。具体的には、中砥に刃を70度ぐらいにあて、両手でしっかり持って手前2、3回に引きます。そして仕上げ砥で仕上げます。
 それから、ここがポイントですが、本刃の上に刃先をほとんどそろえて置き、刃先と反対側の耳を指先で軽く叩いてみます。コツコツいうようでしたら、耳を金床と玄能で注意深く曲げてコツコツ音がしなくなるように合わせます。
 最後に裏金と本刃をいっしょに持って、光りにかざしてみます。光りがもれなければ、OK。もれる時は、隙間があるわけで、木屑がつまりますから、最初からやり直し。

 鉋刃を台にいれるコツは、
・鉛筆を刃にこすりつけ木槌で軽くたたき込みます。
・刃が出ないようでしたら、刃を抜いて台の鉛筆の粉がついている部分をのみの刃を立てて少しずつ削ります。

 台の調製もいろんな本に詳しいので、簡単に書きますが、要は、平面を出して、刃より台頭の部分を0.3ミリ程度薄くすることと、刃先と台尻の中央部をへこますことです。
・30センチ程度の直線のしっかりした定規を刃がでる直前にした台に当てて、様々な方向から確認します。
・台直し用の道具(平面にサンドペーパーを張り付けたような物)もあります。

 台の調製は、やり直しが可能ですから、最初の鉋を徹底的に直してみて下さい。鉋がかからない原因は刃研ぎではなく、台の調製不十分のことが多いようです。

(今回でええかげんな研ぎの話を終わり、次回から楽しみな加工に入っていきたいです。おじんさんやすこやさんが鉋についてのビデオを作ってくれるかもしれません。私にもお手伝いできることがあればやりますのでよろしく。)

94/06/23 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(7)


 自作の電気スタンドを使っていますが、これはノミだけを使った穴堀練習をした楢の木を使ったものです。その木には幅9ミリと15ミリ、深さ30ミリほどのほぞ穴が9個あいていまして、昔、ちゃんとノミだけで穴を掘った証明として残っています。今は、角ノミ機にお世話になるばかりです。

 師匠いわく、「ノミを使うのが一番木工らしくて面白い」。

■準備
木片:幅10センチ、厚さ5センチ、長さ15センチぐらい
ノミ:9ミリ(三分)、15ミリ(五分)
玄翁:450グラムぐらいの重いやつ
鉛筆:2Hの先がとがったもの
ケビキ:よく刃を研いだ物。ねじ式がいい。
作業台:最初のころ作業台がなかったので、昔作ったステレオのスピーカーを2つ重ねて金具と木ねじで固定し、その上で作業していました(^^)。

■ほぞ穴の墨つけ
1、基本にのっとり、ノミ幅の穴を掘ります。そのためには、穴を掘る位置に、ノミの刃の裏を使って、軽くノミ幅ぴったりの凹みをつけます。
2、ケビキを使って、そのしるしを通るノミ幅の平行線を引く。(穴の長手)
3、穴の短手方向はスコヤを使って鉛筆で書く。

 このようにするわけですが、ここで次の問題にぶちあたります。ケビキもスコヤも基準になる平面や垂直が正確であってこそ生きてくる道具だからです。

(木工機械の悩み)
 この方法での精密な墨つけは材料の木がちゃんと直角と平面がでていることが前提なので、手押し鉋盤や自動鉋盤が必要になってくるのです。この問題は、本格的に家具を作る人が皆ぶつかる大きな障壁ではないかと思います。手道具だけで、平面、直角を出せないことはありませんが、とてもたいへんですし、精度もよくありません。
 皮肉なことに、高価で、音が大きく、危険も大きい自動鉋や手押し鉋が事実上、本格的木工の前提条件なのです。

 私も、この問題で悩みました。師匠は「うちで機械かけたげる」と言ってくれましたが、いつも、頼りにするのは迷惑ですし、自力で木工しているのではないように思えました。後日、100ボルト用の自動鉋を購入するのですが、木工を志す人だれもがこの問題で悩み、あきらめたりしています。

 もしも、近くの材木屋さんなどで、木の下拵えをしてくれる所があれば、たいへん幸運です。ハンズの工作室がかなりこの目的に近いようですが、あの値段や材料の購入選択の不自由さはストレスのもとです。
 日立から、持ち運び可能な自動鉋と手押し鉋のセットが発売されていますが、これは値段と危険性の問題は残りますが、唯一の解決策かもしれません。

 ・小型自動かんな盤(P100RA)重さ38KG,定価174000円。
 (ただし、安全には各自で責任を持って下さい。)

 なお、ホームセンターで売っている材木はきれいに見えても、まずそのままでは正確な加工はできません。乾燥などで、変形がすすんでいます。

■穴堀開始
 ノミを使う原則、方法ですが、
・ノミをこじたり、ひねったりしないこと
・裏(垂直な方)を墨線にむけて使う
・穴の幅はノミの幅で決める
・ノミの刃の先を見ながら玄翁で打つこと。

穴の堀り方ですが、2種類ある
a,ほぞ穴の中央部から、V字状に掘っていく方法。
b,ほぞ穴の両端から1ミリ程度内側からM字状に掘る方法。

a,b両方とも試して自分に合った方法を決めてください。ちなみに私はaです。
どちらも、深くなるとノミが斜めにならないので底がさらえません。その時はノミを垂直にして、みじん切りのように残った山状の木を切り刻んで、底を平らにします。注意点は墨線の少し内側まで堀るようにし、最後に墨線にノミを垂直に入れて仕上げることです。

■中学の技術の教科書はかなり本格的に書いてあります。
 子供さんの教科書か、昔の自分の教科書をひっぱりだして、隅々まで見て下さい。かなり高度なことまで書いてありますよ(^^)。

(PS)木工講座というより、木工家の悩みみたいな内容になってしまいました。正直に書いていくと、木工機械の問題にかならずぶつかりますよね。

94/06/25 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(8)


 暑くなりました。今日なんか、時間があって絶好の工作日だったのですが、昼頃はMSのフライトシュミレーターで、セスナの飛行をトライして時間をつぶしてしまった。
 これでは、丹波フェスの作品ができないなあ(^^)。その上、昼寝をしてしまった。夕方、なんとか、次作のデザインを考えるけどボーとして全然能率あがりませんでした。

 さて、JPVW、見てきました。どなたがお書きになったか存じませんが、WWM木工講座もご紹介いただき、ありがとうございます。と同時に責任も感じております(^_^;)。

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 ほぞ穴の次は、ほぞの加工です。この加工も中学の教科書でも充分詳しいです。
 ■一番基本の、四方胴つきほぞを作ります。■

 しっかり直角のでた角材の一面を基準面とし、隣接する直角の面をもうひとつの基準面とします。基準面からケビキを使ってほぞの幅を墨つけします。胴つき部分は、スコヤを基準面2面にあてながら、とがった鉛筆(しらがきがよいが、そこまでする必要はあまりない)で、角材一周がとぎれないように墨つけします。
 この時の、ポイントは、角材の両側から、ケビキを使うと、木の厚みに影響されるので、「必ず基準面から追う」ことです。

 (例):30ミリの角材に10ミリのほぞを作る場合、ケビキを使って、基準面から10ミリと20ミリのところに線をいれるわけです。その差の10ミリは角材の厚みが変わっても不変というわけ。ほぞ穴の場合も同様です。

 この墨つけ作業が精密加工の一番大切なところ。ビデオでコツが一番伝えやすい部分ではないかと思います。

 加工ですが、胴つきを先に切るか、縦を先に切るか、意見がわかれます。中学の教科書では、ほぞを切らないように、縦引きを先にするように書いてありますが、私は、胴つきを真剣に先に切ります。
 治具を使ったりするより、胴つき鋸(レザーソーでも可)で、線のすぐ外側を正確にひきます。これこそ、熟練。なれれば、一回でピタッときまるようになります。

 ほぞの手加工による縦びきは案外むつかしい。縦びきの胴つき(ほぞひきと言う)があればいいが、なければ両刃の縦を使うことになるのですが、縦が切れる両刃は高価。レザーソーの両刃はたてが、かなり使いものになるので、安価な縦の切れない両刃を買うより、レザーソーをおすすめします。

 私は、作業台に角材を寝かせ、自分は腰を落として、ウンチングスタイルで、縦を引きます。欧米では、バイスに角材を地面に垂直にはさみ、加工しているようです。

*** ほぞの厚みはすこしひかえめ。幅はぴったり。 ***

が、目標。ほぞ穴に半分ぐらいは、手で押し込め、あとたたき込むぐらいがいいです。私は、どうもぴったりに作りすぎる傾向があり、ほぞがはいらず、手直しすることがあります。

 うまくできた、ほぞとほぞ穴は、抜くと「スポッ」と音がします。グラグラになった時は、やり直すか、薄い木をはさんでぴったりにしないと強度に問題がでます。プロは必ず、胴つきのつき具合を見ます。胴つきがピタッとついていれば、美しいし強度も最高です。

 ただし、テーブルソーがあれば胴つきは簡単にひけるので、斜めほぞなどの手加工部分にしか、職人さんののこびきの腕は表れないかもしれません。

(余談)最初のほぞ加工の練習には、ラワンの2センチ×4センチぐらいの角材を使いました。その後、松などの針葉樹を使っていたのですが、柔らかいので無理がききました。ところが、初めて楢を使ったら、硬くて無理がきかない。より正確に加工する必要性があるように思ったのでした。

 今、ほぞは、テーブルソーを最大限に使って機械加工しています。たてびきは、自作のほぞとりマシンでやります。この辺の治具の話も面白そう。

94/06/26 *****Wood Work M*****


(特別付録)


---------------------+
/ |
基準面1 / /+----------+ ← 縦びき
----------------------+/ / /|
| 10mm | / / +
20mm ------+-----------+/ /
基準面2 | | /
-------------+-----------+/
| /
----------------------+/


胴つき鋸(レザーソー可)
ほぞ穴堀練習ブロック(楢の木)
|------------------------------------------------|
深さ約30mm | 穴の長さは適当に決める(20〜40mm) |
| |----------| |---------| |------| | 9mm幅
穴の幅は | |----------| |---------| |------| |
| |
のみ幅に | |----------| |---------| |------| |
| | | | | | | | 15mm幅
あわせる  | |----------| |---------| |------| |
| |
| |----------| |---------| |------| | 9mm幅
| |----------| |---------| |------| |
| ← 40 → ← 30 → ← 20 → |
|------------------------------------------------|

WWMおじさんの木工講座(9)

WWM
 今日は、職場の特別の休みでラッキーでした。それで、使わないとは思いますが、国際運転免許をもらってきました。スウェーデンでボルボのレンタカーに乗ったら、いかにも北欧に来た気がするかもしれない。

 さて、オルガン屋さんのMSGに関連して、今日は、講義からはずれて手加工について少し書きます。
 余談ですが、松本で椅子を作る職人Mさんは、「機械はバンドソーだけ!」と言っていました。ウインザーチェアーみたいな椅子をつくる彼は、丸棒の加工もレースを使わず、角材から、8角、16角と鉋で丸にしていました。

■手加工の重要性について■

 オルガン屋さんのMSGにありましたが、木の下ごしらえが手道具でできる力をつけるため、時間をかけて1つでもやっておくと、何かの時、非常に役にたつことはまちがいありません。
 この行程の中に、実にたくさんの木工基本技術のエッセンスが詰まっています。
・定規の使い方(木にあて曲がり具合や、光りに向けて隙間を見たり)
・木の曲がり方(木目や節、木表木裏等)
・横ずりのメリットの経験
・鉋台の調整(荒けずり用の仕立て、刃の出し方)
・研ぎ(一日何回も研ぐ)
・スコヤ(直角検査の頻度や、要領)
・けびきの使い方(けびき線まで削ると、薄く細い木の糸がポロッととれる)
・平面のでた作業台が必要なことがわかる。
・何にもまして、汗と力と労力がいる。  等

 えらそうなことを言っていますが、私は完ぺきな平面をだせたことがありません。実用上問題ない程度です。ですから、オルガン屋さんの学生時代のお仕事には、驚きを覚えます。鉋に足をつけたりして、昔の人は、角材の厚みをだしたかもしれません。

 以前竹中大工道具博物館主催の講演会で見た、木挽き職人のビデオを思い出しました。森で、木をきり、その場で馬を組んで丸太を一日がかりで板にひいていました。
 ずいぶん、私たちは便利で楽な仕事をしているようです。

■自動鉋不要な加工■
 新しい考え方で、プレーナーを使用しない精密加工のしかたが工夫できないか?
 いくつかのアイデアはありますが、ここで書くほどの実績がありません。
基準面となるものを与えてやれば、精密な墨つけができる可能性があるわけです。 大工さんの心墨はいわば仮想平面です。

(後記)まとまらない、講義になって申し訳ありません。楽しむ木工と、それで食べていく木工、講義の対象がその中間の私自身であるために、立場の定まらない話になってしまいました。
    (次回からは、楽しくなんか作るぞ)

94/06/27 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(10)

WWM
 パソ通の上では、研ぎ、鉋の仕込、穴堀、ホゾとり、平面だしがマスターで
きたわけですね (^_^)。実際の作業をしないでキーボードをたたいているのは、
なんとも楽ですが、実際には何も残っていませんね。
 正直言って、この講座に対するおじんさんの発言がいちばん恐いのですが、
仮想平面のこと面白いと言っておられたので、ちょっと安心しました。


---------------------------------------------------------------------
 ここらで、簡単な作品を作ってみます。私が数年前に、従兄弟の子供の誕生祝いに作った、小さな椅子です。
 非常に簡単な構造で、板3枚と、幕板2本、ホゾは4つという単純なものです。今でも、子供のちょっとした腰掛けになったり、電話の台になったり、またいいアメ色になって、なかなか重宝しているそうです。
 こんな簡単な椅子でも、物まねではなく自分で考え出すことは、けっこうしんどいです。

 CADで図面をアップするほどでもないので、愛用のテキストマップエディターで略図を書きます。


正面図 右側面図
*-------------* .*
| | 少し 斜めに →. | A:通しほぞ
| | | | (くさび付き)
| |    座板 | |
_|_____________|_ ______________| |
|-+-++-------++-+-| |--------------| |
| ++ ++ | |-|----------|-| ←A
| ↑ | | |  幕板 | |
| A | | | | |
| | | | | |
+-------------+ +-+ +-+
↑ ↑
前脚板 後脚兼背板

 材料は紅松の3センチ厚ぐらいの板でしたが、米松でもなんでもいい。ただし厚みは2.5センチ、幅は20センチぐらいはほしい。

 手にはいる材料にあわせて適当にサイズを決めれば良いです。幕板は幅5センチ程度でほぞは3センチ幅で前後の脚板に通しほぞで接合します。座板は幕板に9ミリの穴を深さ5ミリあけ、6本の釘でとめ、埋木します。

■通しホゾ■
 KAKI工房の家具がきっかけで家具を作り始めたので、最初のころ通しホゾに憧れて、こればかりやっていました。松など柔らかい木は、痩せるので、このように楔をいれて木を圧縮した方がいいようです。
 コツは、楔の打ち込み方です。楔を打ち込むとだんだん音がかわり、低くブンブンという感じの音がすれば、それ以上打つと、楔が割れてだめになります。
 手間はかかりますが、強度は良好でアクセントとしてもいい場合があります。

■埋木■
 この技術を覚えると楽しいのではないかな。6ミリから9ミリぐらいの木工用ドリルに5ミリほどの深さに印をつけ(テープを巻く等)穴を掘ります。必要ならば、釘の頭をたたいて細くした釘を釘締めを使って底まで打ち込み、上から、穴を木で埋めます。
 埋木にする木は、穴の直径よりわずかに大きな角材を鉋をつかって、机の上で回しながら、丸く、ややテーパー状に細くします。最後は、キュウリもみのように鉋に側面で木ごろしして、先に少しボンドをつけて、たたき込みます。
 あとは、ノコを古ハガキをひいて寝かせ、木に傷がつかないように、切りとり、さらに、少し、打ち込み、鉋で仕上げます。慣れるとリズミカルに速く作業ができます。

(PS)実際の作品では、背板の裏側にトリマで「ゆうた」と名前を彫ってあります。仕上げは、亜麻仁油も知らないころでしたので、市販のチークオイルを塗っただけです。
 しかし、何よりの仕上げは人間の油のようで、数年たった今、なかなかいい色に仕上がっています。


94/06/28 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(11)


 Woodさん、過分なお言葉ありがとうございます。日記をつけない私が、パソ通ならば、毎日楽しんで文を書いている。それならば、ひとつ、日記みたいに、毎日少しずつ書いていけば、10年ほどすれば、本の一冊でもできるかもしれないなどと、気楽なことを思いつつ、楽しんでこの講座を続けています。
------------------------------------------------------------------
 さて、今日は、木材の話しです。木工を習いはじめるまで、杉、米松、ラワン、バルサ、ぐらいしか区別できませんでした。師匠のところで、楢を知り、自分で買いに行って樺を知り、桜、紅松、檜、栃、・・・、一度自分で加工すればその木は区別できるようになります。あたりまえですが、軽い木はやはらかく、重い木は固い。今まで使った木の印象は・・・。

■米松■
 近所の材木屋さんで手に入りやすく安価。無節の幅広板も多いが、建築材であり乾燥状態がいまいちのことが多く、ヤニにこまることもある。
 固い年輪部分で胴つき鋸の刃をこぼしたことがある。木工を習いはじめて最初に作った作品が、米松の椅子でありました。

■楢■
 人気の高い木で、今のところ、広葉樹としては安定した供給が確保されているほうで北海道の楢は世界的にも優良材である。はじめて削ったときは、その硬さに驚いた。非常に固い石のようなものから、比較的やわらかいものまである。
 ”しらた”は虫がつきやすく、電話台を作ったものの、半年後にきくい虫が「ゴキゲンさん」と出てきてこまったことがある。以来、楢のしらたはもったいないけど必ず捨てています。導管が大きいので私はあまり好みではありません。

■檜■
 節にこだわらず小径木でよければ安くて手に入りやすい。米松と同じく建築材のため乾燥は不十分なものが多い。やわらかくてねばりがあって、節がなければ、加工は最高に気持ちいい。
 自宅の作業台の天板は檜の柱の三つ割りを8枚接いだもので、結構安かった。脚は芯持ち材ではなく四つ割り材を使ったので高かった。節は固く、注意しないと鉋刃をこぼす。
■紅松■
 日本のヒメコマツとほぼ同じものらしい。やわらかく、時間とともにアメ色になり表面が幾分固くなる。木型、仏壇、彫刻の練習用などが主な用途。シベリア産であり、まだ資源としてはたくさんあるらしいが、ロシアの政情不安の影響か入荷に不安定な要素がある。米、カナダのホワイトパインもほぼ同じということである。
 最初、kaki工房を訪問した帰りに、富山の材木屋さんで端材をかなり大量にかつ安く買ったので、いろんなものを作った。とにかくやわらかく、自宅の食卓でマヨネーズのチューブを逆さまにしてコンコンやっただけで机がへこんだ。だから、木のことをよく知らない人には勧めない。一般的には楢などの堅木のほうが無難と思うが、私はその軽さと飴色が好きで、自宅の家具は紅松製が多い。今は、大阪で買ってます。

■スプルース■
 松の一種で楽器に使われることは有名。素直な柾目材が多い。ホームセンターでも売っていて反りも少ないので、よく小物に使いました。あまりにあっさりした味で、家具としては面白みに欠けるかも。

■樺■
 緻密で、固く重い。桜材として通用することもあるらしいが、桜と樺はやっぱり少しちがう。白い周辺部と、中心の赤みの部分の色の差が大きく、無着色では色合わせに苦労するかも。
 自分で広葉樹を買いはじめたころ、安かったのでよく使った。ビューロー、机、整理箪笥等、樺の柿渋仕上げ。桜(みずめ)の方が、おちついた感じです。この頃だいぶ値段があがっているらしい。

■栃■
 比較的大きな板が安価に入手できる。木目方向にも収縮するのか、へんな割れがはいることがある。独特のマーブリングのような杢がはいることがあり、これは面白い。拭き漆に珍重される杢をもつこともある。
 私は、大阪摂津の銘木センターのある店でよく端材を格安で手にいれます。床板用に製材したものの、割れやねじれで、使い物にならない板が処分に困って、捨て値で買えることがあるのです。オイルを塗っても、ワックスをぬっても仕上がりは良好で好みの木のひとつ。

■アガチス■
 南洋材でありながらめずらしく針葉樹とのこと。やわらかくて肌は美しく加工もしやすい。”腐りやすい”と書いてあるのを読んだことがある。
 アガチスは数年前に大阪の東急ハンズでとても安く売っていたので買い込み、いろんな箱物を作りました。ところが今南洋材が全般に高くなり高級材になったようです。自分のノミ箱をこれで作りましたが、作業台ができて不要になり、その箱は今カミさんが化粧品入れに使ってます(^^)。鉋をかけると、絹のような光沢があります。内装や建具に使われることも多いので、近所の材木屋さんでも手に入るかもしれません。

■桐■
 ご存じ桐箪笥の桐ですが、木工作家で桐を使っている人はあまりないようです。
 知人の結婚祝いに小さな引出箱を作ったことがあります。仕上げは、オイルを塗ってみましたが、吸い込んでしまい、今ひとつの仕上がりでありました。
 一度京都の桐材屋さんをたずねてみましたが、簡単に買える値段ではなかった。先日寺さんにお世話いただき、桐がまとまって手に入ったので、楽しみです。

■杉■
 安い木の代表みたいにいわれますが、面白い杢のでたものが案外身近にあることも。材木屋さんでいろんな板をみてまわるとよい。
 杉にもいろいろあるようで、西洋杉(レッドシダー)、赤杉(数奇屋用高級材)、春日杉、神代杉、屋久杉、・・・。
 尺八をいれる箱を面白い杢の杉を鏡板に、柾目板を側板にして作りましたが、なかなか面白く喜ばれました。


 今日は、いままで使ったことのある木について書いてみたのですが、自分で「結構いろんな木を使ったなあ」と感心しています。

WWMおじさんの木工講座(12)

WWM
 昨日、木の話を始めたら調子に乗って長文を書いてしまい、ちょっと疲れたました。それで今日は、軽く材木屋さん探しの経験談から。
 何でも自分でやらないと気がすまない性格で、師匠に「うちの木をわけたげる」と言われても、自分で材木屋さんをまわって見ないとおさまらない私でありました。

 師匠に店ぐらい教えてもらえばいいのに、「店探しも自分でやらねば」と意地を張って、わざとコネなしに材木屋さがしを始めたのでありました。4作目ぐらいで、電話台を楢の木で框組を練習しようという時でした。
 電話帳で、楢の文字を求めて、まずは、自宅の電話帳から、ピックアップし、電話をかけて少量でも売ってくれるかを聞いてでかけたのであります。

 この段階で楢などの広葉樹は、「道材」あるいは「北海道材」と呼ばれ建築材とは全く別の流通経路であることが、薄々わかってきました。だから、近所の材木屋さんへ行って「楢ありますか」と聞いてもまずない。
 最初、電話の感じがまあまあだった京都のT木材へ行きました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「あのう、楢ありますか?」
「・・・。(頭の先から足の先までジロッと見られ)どちらさんですか?」
「電話しましたMですが・・・」
「ああ、そうでしたか。こっちへどうぞ」

 この時、「えらいこっちゃ。買わないと帰れへんでー」というようなプレッ
シャーがひしひし。

「厚みは、どれくらい」
「30ミリぐらいで・・・」
「9分板やったら手前にあるし、寸板はそのむこう」

 これが最初はなんのことかさっぱりわからなかった。1分=約3ミリと知っ
ていれば、どんなに安心できたであろうか。おまけに

「幅は?」
「25センチぐらいで・・・」
「20センチカミでよかったら、そこ」

カミてなんや!20センチ少々の意味とはすぐにはわからない。
適当に木を見ていたら

「それは樺、楢はここから」

 ほこりをかぶった木はどれを見ても同じに見える。木の種類までわからないと思われるのはあまりに恥ずかしいと思い、知ったふりをして良く乾燥していると思われる、持って軽い9分板の楢を3,4枚買って帰ったのであります。

 その後、師匠に木を見せると
「いくらでした?」
「立米40万でした。」
「高いな。それにしらたが入ってますね。目も荒いし、ここ目切れしてますね。今度買うときは、表面にアクがでた、持って重たい木を買う方がいいですよ。できればFASマークの入った板が上等です。」
 などと、木工教室の先生と生徒の会話とは思えないような、今思うととても貴重なノウハウを教えてもらったのであります。
 しかし、その時は、「せっかく、自分で買ってきたのに、気分わるー。」と思っておりました (^^)。

 この経験のおかげで次から、「立米いくらですか?」とか「寸5の板がほしいんやけど」などと、いかにも「俺、こう見えてもプロやけんね」というようなそぶりができるようになったのであります。
 ただし、一度「立米40万」で買ってしまった店は、もう安くはなりません。だから、新しい店をもとめて大阪へ行くのでありました。

(PS)
・今でも楢の木を2,3枚買う場合、立米40万ぐらい言われてもしかたがないでしょう。(高い安いより、いい材木が手にはいるかどうかが大切)

・材木屋さんの世界も、やはり紹介があるほうが、何かといい。これから材木屋さんをさがす人は、できるだけ知人に紹介してもらって行くべき。なお、ハッタリでいいから木工関係と思わせる名刺を作っておくことです。

94/07/01 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(13)−電動工具(1)


 手加工の重要性についての話がありましたが、WWM工作室にもかなりの電動工具がありますし、無駄な買い物をしないためにも、ここらで、電動工具論に移ります。

 木工を習い初めて間もない頃、「先生、電動工具を1つ買うとしたら何がいいでしょうか?」と聞くと、師匠はウーンと考えて「昇降盤とか、プレーナーがほしいけど、むりやし・・・、まあ造作丸のこかなあ」との答でした。

 造作丸のことは、電動丸のこなのですが、ベースがアルミダイキャストでできておりガタが少なく、大工さんや内装屋さんが室内造作用に使う物です。精密切断用の定規が付属しています。そして、刃は必ずチップソーと教わりました。

 早速大阪日本橋へ行き、五階百貨店近くの大工道具やさんで日立の185ミリの造作丸鋸を買いました。

 これも使う前に準備が要ります。

1,ベースと刃が完全に直角に固定されるように、何回もスコヤを使って、調整します。45度と90度にストッパーとなるネジがあるのでそれを納得行くまで調整するわけです。

2,次に直線を切るために、10ミリ厚程度のまっすぐな板(合板でよい)をクランプで止め、それを定規としてベースの左側をあてて試し切りをします。
 そして、定規から、何ミリのところで切断されたかを実測します。(私の場合98ミリです)

3,何度か平面のでた板を試し切りし、直角と定規から何ミリのところで切れるかを再確認します。

4,付属の定規もスコヤで確かめ、角材が直角に切断できるように、調整する。

 丸鋸をフリーハンドで使うことはほとんどありません。直線定規は、50センチぐらいと、1メートルの2つは要ります。幅は20センチ弱必要で、幅が狭いと、丸鋸本体がクランプにあたり、切断が途中でできないというハプニングが起こります。

 テーブルソーを購入してからは、使用頻度は減りましたが、それでも、大きなテーブルの天板の端を切ったり、ちょっと恐いけど、自在カッターをとりつけて溝を掘ったりと、何かと役にたちます。
 普通の丸鋸でもかなり使えると思いますが、精度や、ベースの強度がいまいちの感じです。

                  *** Wood Work M ***

WWMおじさんの木工講座(14)−電動工具−


 丸鋸は少なくとも1台は要ると思いますが、手持ちの電動鉋はすすめて良いかどうか? というのは、私自身あまり使いませんし、精度高い使い方の工夫ができていないからです。

 H社製の85ミリの電動鉋が近くのホームセンターで特価でしたので購入しましたが、その後、大工仕事の好きな叔父から、M社の85ミリをもらい、同じ大きさの電動鉋が2台になってしまったのですが、この勝負は完全にM社の勝ちでした。 刃のセッティングがH社は仮セット後磁石のプレートに刃先を合わせる方法でじゃまくさいが、M社はセットする前に刃先を適正な位置に合わせる治具が付属しておりこれであわせると、簡単にOK。

 初めて電動鉋を使った時は木の端で、安心していたら、ググッと木に食い込んでしまい、深さ5ミリ程の丸溝が掘れてしまいました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
電動鉋の使用上のコツは
・削りはじめは前の部分が基準であるのでしっかり前部を押さえておく。
・逆に削り終わりは、後ろ基準なので後ろをしっかり押さえる。
・刃はあまり出さず、具合を見ながら徐々に刃を出してゆく。
・削りかすが3m以上飛ぶので、屑出口をゴミがかたづけやすい方向にむける。
・間にスジが残りやすかったりするので、早いめに手加工に移ったほうが無難。
・刃は自分で研げるが、2,3回に一度は機械研ぎにだしたほうがよい。
・使用後鉋を置くときは、回転が止まってからか、木の枕を用意する。
・電気のコードを削ってしまう事故も多いので、コードの位置に注意。
・手加工と同じで、横ズリ、斜め、縦という順番で削っていく。 等々

 この手持ち電動鉋は欧米ではあまり使われないようです。
 師匠が曲面電動鉋をお持ちでして、これは意外に便利です。椅子の背もたれなど、ゆるいアールを削り出す時、重宝します。
 自分は経験ありませんが、大型で幅広の電動鉋は一枚板の平面出しにかなり有効らしいです。

 結論ですが、絶対必要というものではないと思います。それよりも、家庭用角のみの方が能率アップのためには有効ではないでしょうか。

94/07/03 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(15)北欧編


 漫遊記が個人的旅行記でしたので、ここで木工に関するいくつかの話をしたいと思います。

 雑誌でも紹介されているこの講座ですが、ROMされている人のイメージがわいて来ないので、できるだけみなさんのご意見ご感想をお聞かせ下さい。
 「ROMしてるのがおじんさんと、オルガン屋さんだけだった」などという恐ろしい状況ではないよね(^_^;)。

(ワークベンチ)
 雑誌の写真などで見られたことが多いと思いますが、欧米の作業台です。特徴はつぎのような点です。

A,立ち作業の適した高さ。
B,バイスが2つ組み込まれており、1つは、台の一部が動く形で様々に記を固定することができる。また、ペグを仕様し材木を立て方向からはさんで固定できる。
 もうひとつは、今回使わなかったが、板を立ててはさみ木端けずりに便利そうである。
C,緻密な厚さ10センチ近い木が使われている。その反面、脚部はおそまつである。
D,に平行して7センチぐらい低いところがあり、ここが使用中の道具置き場になる。

 私が自宅で使っている平な作業台と比べどちらがいいということはなかったが、上記Bのバイスについては、スプーンやおたまなど丸いようなものをはさむのにもたいへん便利であったし、立て方向に角材を固定する機構も便利であった。
 このような機能が日本の作業台に加われば、直線中心の作品から、カービングによって複雑な曲線を持った作品が生まれ易くなりそうである。

 欠点というか不便に思ったのは、のこ引き用のアテ止めがないことである。自宅の作業台には端にアリホゾで15センチ程度のアテ止めが抜き差しできるようにしてある。胴付きのこを使う時や、鉋がけはこれを使う。やはり”押す”が主流の欧米流では、物をしっかりはさんで使うことが多いようだ。

(道具の保管)
 セミナーでは短期間ということもあり、道具は全員で使った。だから、私がビンビンに研いだ鉋が翌日どこか行ってしまい、「ちくしょう」ということになる。
 やはり、必ず道具は個人持ちにすべきである。2年の本コースの場合には壁に鍵のかかる道具入れが各自用意されているので安心であろう。

94/08/30 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(16)北欧編

ZIROさん、ワークベンチの図ですが、JW_CADで書くのもアップがじゃまくさいので、これで辛抱して下さい。


         平面図
|----------------------------------------|
| 道具置き場、一段低く、薄い板 | +--+
| | | |
|----------------------------------------| | | *
| メインの作業台+ペグ穴(#)厚い板 | | | |
| +--+------+--+ | |
| # # # # # # # # # | | # # # |==== バイスA
| |---------------------------+ +------------+ |
| |====== ↑ *
| |------| Cここで何でも
|-----++--| バイスB つかめる
*----||-*

 Cの何でもつかめる部分はAのハンドルを回すと、作業台の一部がスライドしてはさみつけるような構造になっています。細い角材なども、ペグを適当な位置の穴にいれて、両側からはさむように固定します。
 便利やと思ったのは、Cの部分に皮が張ってあるのです。材料がいたまないし、丸い物もすべらずしっかりつかめる工夫です。
 ベンはここに木口を上にして板をはさみ、タブテールを刻んでいました。

 しかし、オルガン屋さんのお話にあったように、大きな板の加工などは、ウマを作ってやることが多いようです。

 WWM工房では、バイスAのかわりに金属製の木工万力をとりつけ、バイスBの目的、すなわち木端けずりはこの万力とFクランプと木片で木を垂直に固定して行っています。
 また、長さ180センチ幅90センチぐらいまでは、平な作業台の上で加工可能なので、ウマは使いませんし、そんな場所もありません。

 ワークベンチを作品にした個展が奈良であったことがあります。たしかに、木のメカに魅力があるのは確かですが、工夫しだいで、どちらでもいいように思います。
 M民芸の職人さんは、座式で手前に木製の大きな万力を持った、厚い板の作業台を愛用しています。この万力が便利なようで、椅子の肘掛けなどを、ここにはさんで気持ち良さそうに南京で削っているのを見たことがあります。

94/08/30 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(17)北欧編

今日は基本にもどって研ぎの話。
 どんな刃物も研ぐことができなければ使えません。カペラでは”研ぎ”のみを教えるのではなく、製作過程で必要になった時に教えてくれました。

 荒研ぎは、直径50センチ程もある円形の砥石がゆっくりと下部を水につけてまわる電動研ぎ機を使いました。これは、ほんとに使いやすかった。
 日本の水平に砥石が回るタイプは、絶えず水に気を配らなければならないし、回転が速すぎ、鳴れないと恐いのです。ところが、この機械の回転速度はほぼ手で研ぐスピードなのです。ですから水も飛んでこないし、初めての人も安心して研げるのです。
 こんな簡単な発想の研ぎ機が日本でなぜ発売されないのでしょう。と思っていたら、新聞の通信販売で、デンマークのプロでも使える研磨機として広告がのっていたのが、同じタイプと思います。FWW誌(Fine Wood Working誌)の広告にはカペラと同じものがのっていました。

 中研ぎは、合成のオイルストーンか日本のキング1000番でした。どちらかというとキングを良く使っていました。

 仕上げ研ぎは、2つに別れます。1つはキングの合成仕上げ砥G1で、もうひとつは天然のオイルストン、アーカンサスの黒でした。私は、このアーカンサスがとても気に入りました。帰国後さがしてみましたが、アーカンサスの大きいのはベラボーな値段でした。昔日本橋の黒門市場の前にあった砥石屋さんにいいオイルストンがあったと聞きましたが、店がなくなってしまいました。
 ナイフの研ぎをベンに教わりましたが、ストロークではなく、刃を円を書くように回して研ぐのです。

 最後の仕上げに、皮に細かい研磨剤を併用した皮研ぎがはいることがあります。昔の散髪屋さんで、ひげそりカミソリを皮にあててシュッシュとたっていた、あれです。やってみると、ナイフなどは、ちょっと切れ味が落ちたかなというときにシュッシュしますと、またしばらくは最初の切れ味にもどります。

 鉋の刃は、まず前述の研磨機で刃先を凹面状にしてから、刃先だけを研ぎます。丸刃にならないようにやかましくいう日本の研ぎもいいですが、こういう合理主義もいいなあと思いました。

 丸のみは回すように平な砥石で研いでもいいですし、円錐形のアイスクリームコーンみたいな砥石があって、それが便利でした。これもコペンで買えなかった(^_^;)。

 どなたか、天然の仕上げ用オイルストン、スウェーデンの研磨機、円錐形の砥石を売っているお店をご存知の方がおられましたら、教えて下さい。この3つはたいへん気にいりました。どうしても入手できなければ輸入するつもりです。


94/08/31 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(18)北欧編

 カペラの卒業証書の入った封筒には、再度おたまの設計図が入っていたのです。おそらくその意味は、「森の木から手の道具だけで、人間の食生活に役立つおたまを作る過程にこそ、木工の原点や鍵がかくされているのですよ」と言っているのでしょう。あるいは、木工に行き詰まったとき、このおたまの製作過程を思い起こしなさいと言っているようにも感じました。

 切ったばかりの丸太を割るには、斧と鉄のくさびと、堅い木でつくったくさびを使います。丸太の木口の割りたいところに斧を入れます。必要ならばたたいて食い込ませます。そうすると木に木目にそった割れ目が生じます。ここに鉄の楔を入れて叩き、割れを広げて行きます。
 ある程度広がったら木の楔を入れて行きます。こうして割れ目を伸ばして行くといつか、丸太が割れます。

 同じようにして丸太を4つ割りします。その4つに割った1つを斧で角材にしていくのです。丸太を台にして。コツは柄を握る位置を工夫して、モーメントを利用して疲れを少なくすることと、刃先が扇型になっている斧の方が、木を削るように切れるのでいいということ。

 次におたまのための木取りを考えます。柄は細いので、木目ができるだけ長く目切れがしないように、また、穴を掘るところは乾燥によってひび割れができにくい方向を考えねばなりません。
 そのうえで、無駄のない、軽くて、使いやすいデザインを考案するのですが、カペラで何年も使ってきた黒ずんだ見本が、究極のスタイルでした。

工程は次のとおり。
1.穴掘り。(各種丸のみ、”ばんかき”みたいなもの)
2.穴の内側を基準に外をほる。(のみ、ドローナイフ、ナイフ)
3.柄を作る。(鋸、のみ、ナイフ)
4.サンドペーパーをかける前に、おがくず中に入れて、均等に1週間ほど乾燥させる。
5.最終仕上げ。(ばんかき、スクレーパー、サンドペーパー)
6.天然亜麻仁油によるオイルフィニッシュ。

 穴掘りは、幅3センチぐらいのちょっとカーブした丸のみ(カービング用のみ)で円周から中心に向かって回しながら掘っていく。倒したばかりの生木なので、のみが入るとジュワーと水がでてくる。
 しかし、思ったよりも楽に穴が掘れるのである。(続く)

94/09/01 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(19)北欧編

 おたまを作るときの基準面は穴の内側です。穴を仕上げのペーパーがけを残すのみの状態まで仕上げてから、手の感覚を頼りに、肉厚3から5ミリ程度に外側を仕上げて行きます。

 この時、とても役に立つ刃物がドローナイフです。30センチぐらいの細長い刃物の両端に取っ手をつけたもので、斧と鉋やナイフの中間の役目をします。力が入るので能率が上がります。それから、ナイフで手の感覚を頼りに厚みをそろえて行きます。厚さが不均一だと、乾燥による収縮度合いが違うのでヒビが生じたりします。できるだけ速く均一な厚みにそろえなければなりません。
 私は、最終段階で日本から持って行った小さな南京鉋をナイフのように持って仕上げましたがこれはよかった。
 乾燥が速すぎ、クラックが生じてきたら、作業を中断しミカン箱程度の大きさの箱におがくず(自動鉋からでる木屑)をいっぱい貯めた中に保存して均等な乾燥を待ちます。
 柄はクラックなど気にせず自由に作れますが、無駄のないスラッとしたデザインになるには、かなりの熟練が必要です。

 1週間程度経過し、かなり乾いてきたら仕上げです。内部は?型のバンカキのような道具がとても効果的でした。外側はナイフか南京が有効。あとは、120番、240番、320番ぐらいの順でサンドペーパーをかけます。
 塗装は、純亜麻仁油です。決して煮亜麻仁油やチークオイルなど市販のオイルフィニッシュ塗料を使ってはいけません。市販の煮亜麻仁油でも、煮沸処理だけではなく、重金属の乾燥促進剤を含有していますので、口に入るスプーンなどへの使用は危険です。
 私は、温めた亜麻仁油の中に漬ける方がいいと思いますが、カペラではそのまま漬けて30分後ぐらいに取りだし、過剰な油を充分拭き取って、1日以上乾燥させ、2回目からは油を塗ってすぐに400番のペーパーで濡れた状態での研磨、ウェットサンディングをします。1回目と同様に過剰分を拭き取り1日乾燥させます。これを4回ぐらいすると、いい色と艶になります。

 小さなスプーンは半乾燥状態の梅の木で作りましたが、赤身と白身の対比が美しい、おもしろい模様ができました。

 全てが曲線で、目と手の感触をたよりに仕上げてゆく作業は、自動鉋による人工的平面を事実上の出発点と考えていた自分には、たいへん刺激的な経験でした。

94/09/02 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(20)北欧編終わり

 いつまでも北欧にこだわっていることもないし、カペラガーデンの本質的なスプーンやおたまの製作報告も終わったところで、今回で北欧編は終わりにします。
 最後に木で家具を作る時の姿勢というか、心構えについて、自分が帰国後考えていることを書きます。これは今後の自分のための指針でもあります。

 木で家具を作る場合、重要なポイントは次のような点であると考えています。

1,製作自体が楽しめること。
 これはとても重要なポイントではないか。なにがしかの報酬をもらうような製作であっても、「安全に前作のとおり」とか「じゃまくさいから、ネジ止めしとこう」とか思ってしまうと、創作が単なる作業になってしまう。こうなると、作品に自分の気持ちがのらなくなるし、楽しさがなくなる。
 同じ物を作る場合でも、やり方を変えるとか、材質や細部のデザインを変えるとか、何か新しく挑戦する要素を入れると、ワクワクした気持ちで製作ができるし自分の力も少しずつ上がって行くのではないか。

2,機能を優先したい。
 椅子ならば使用目的に応じて充分機能を発揮するものであること。立派な一枚板を使ったものが、安い量産品より機能的に劣ることは多そうである。
 軽さも大切な機能である。私が数年前に実家のために作った整理タンスは、引き出しを全部抜いても2人でなければ移動ができない代物でした。これを「無垢の板はやはり重い」と言って済ませてはいけないと思う。
 もちろん、耐久性も機能のひとつです。

3,視覚的なバランス、軽快感を重視したい。
 美しい作品には、これがある。必要以上の厚さや太さを排除して、そぎ落としていく中に、美しさが生まれてきそうである。ナカシマの家具はあまり好きではありませんが、無垢の板を使う人の代表のような彼の作品でも、昨年の展示会を思い出すと、日本の作家のものに比べてかなり薄い板、細い材料を使っているのに驚かされたかたも多いと思います。
 バランスや形は、自然の中にそのヒントがいっぱいあると思う。

4,色が大切
 木の焼けたアメ色が好きといっても、それを効果的に演出する様々なものとの色の調和が大事と思う。例えば、水色と緑の細かい縞模様のテーブルクロスは、松のテーブルのアメ色を引き立てる。逆に近頃の家の白いビニールクロスの壁にM民芸のタンスは、コントラストが強すぎて色も合わないように思う。
 木は着色する必要はないけれど、家具が置かれる部屋の色調によってより引き立つ仕上げをするべき。

 次回(21)からは、北欧にこだわらず、製作中継?も含めた講座を、自分の製作ノートのつもりで書いていこうかと考えています。ご意見、ご要望お待ちしています。もし、ROMだけされている方がおられましたら(そんな人いないか)、ぜひこの機会にご感想を書いて下さい。

94/09/03 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(21)

今回から、独断と自己満足のWWM流、自称本格派の家具製作と講義が同時という前代未聞の中継講義がスタートします(^^)。

 ご近所から、テーブルの注文がありまして(娘の同級生の家)、カミさんも娘も「作ってあげて」というので、作ることになったのです。
 家を拝見しに行くと、子供が多くて新婚時代の食卓では小さすぎて、買い替えようとしておられたとのことです。6人、無理すれば8人が座れる食卓というと、幅80センチ、長さ180センチぐらいです。

 「好きなように作ってみますから、 できあがりが気に入ったら買って下さい」とええかげんな約束でスタートしました。冗談ではありません、作りながらデザインを考えるズボラなWWM流では最終作品を見て判断してもらう必要があります。

 テーブルの高さや大きさはいままで作った経験でだいたいサイズが決まっています。高さは、70センチが今の所ベスト。これは、木工を本格的に始める前に作った高さ75センチのX脚のテーブルができあがってみると高すぎたので、脚を1センチずつ切っていちばん快適な高さを経験的に求めたものです。ほとんどの市販のテーブルは高さ70センチですが。

 8月下旬、デザインや木の種類が決まらないまま、久しぶりに大阪南港の中田木材をのぞきました。ここは前より素人木工家でも買い易くなっていました。楢、樺、セン、チーク、などの広葉樹が一枚単位でも買えます。
 カペラで使ったた欧州パインが使ってみたかったのですが、柔らかい松ではクレームがで易いと思い、使用経験の豊富な樺にすることにしました。
 最初は安い、ツートーン(赤身と白身の混じった材)をさがしましたが、横にあるマカバの赤身が気に入ってしまいました。単価はなんと2倍もしますが、ほとんど反りがなく大きさも適当でなので、ここはふんぱつして赤身を買うことに決定。自宅の小さな手押し鉋で加工できるように、150ミリ幅厚さ34ミリのもの6枚(天板用)と足用に、ツートーンの66ミリの角材を買いました。そのほかに貫や幕板に使う27ミリ(9分)の板少々。

 シートを倒したワゴンに積み込んで、阪神高速と阪奈道路を通って自宅へ帰り、家の中に運び込みます。板の模様や乾燥具合、傷や節、小口ワレの程度、目切れなどを注意しながら、一枚一枚玄関から6畳の工作室へ運び込むと、ああ疲れた。木を買ってくるだけで、一日仕事でした。

 明日から、この部屋で2メートル近い板に手押し鉋をかけると思うとゾーッとします。部屋の中の物がふえたので、掃除をしてレイアウトを買えないと無理なようです。

94/09/04 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(22)

 テーブルは天板(言葉の使い方がこれでいいのか、テンイタと読むのか、テンバンか、その辺は弱いのでありますが)が命。6枚の赤身のマカバをいかに上手くはぎあわせるかが最大のポイント。

■手加工による加工は、平に近い面を選び、1メートルの定規で縦、横、斜めとあらゆる方向にあてて、高い部分を鉛筆等でマークしておき、手鉋か手持ちの電動鉋で、最初は横ズリ、次第に斜めに、だいたい平面になったら縦に削って仕上げていきます。
 平面が信用できるテーブル等があれば、そこに置いてみてガタつきを見ます。状態にもよりますが、指で押してガタガタいうところを裏返して同じ位置を削ればいいのです(これはちょっと幾何学的な理解がいります (^^) )。裏返せばガタガタのもとになっていた高い部分がちょうど前の位置にくるわけです。

 こうして平面をだせたら、その面を基準にして最適な厚さを毛引きで四方から目印をいれます。そのラインを注意しながら、反対側の面を横ズリから始め同様に削っていって厚みをそろえます。

 板の木端は直角が大切なので、木端削り台を用いて鉋を縦にして(右側を台につけて)削っていきます。この木端面を基準に毛引きで板の幅をマークし、鋸で幅をそろえ同様に木端を鉋がけします。

 この手加工をテーブルサイズの板でやったことは、1回しかありません。実際のところ、1日汗だくになってやっと2枚ぐらいしかできない。また、時間が長いので、加工中に板が変形したりする。それで手押し鉋と自動鉋がほしいわけですが、大きな一枚板のテーブルなどは、手加工しか通用しませんから、この経験は一度はしなくてはならないと思います。たとえ正確に加工できなくても。

■実際には自宅の機械を最大限使っています。WWM工房の手押し鉋は幅155ミリで定盤長は1メートル程。これで2メートル近い板の平面を出すには工夫が入ります。凸面を先に加工するか、凹面を先にするかですが、最初は凹面を先にしていましたが、今は凸面の方から削っています。理由は、定盤が短いので両端の重さがバランスした状態で削り始められるからです。
 それでも、定盤の精度がいまいちのため、2メートルで0.5ミリぐらい中程がへこんだ平面になります。それを見越して機械を使っています。ほとんど平面になったら、その面を基準に自動鉋で厚みをそろえます。
 次に直角定盤を充分にスコヤで確かめ、手押しで木端を削ります。幅をテーブルソーでそろえ、手押しで仕上げをします。

 ご近所への騒音を少なくするため、窓を閉め切った部屋で集塵機と自動鉋合わせて3kw近い電気を消費しつつ、真夏にこれだけの板を加工するのは、機械といえどもたいへんです。おまけに手押し鉋は最も危険な機械ですから、怪我をしないように注意を怠ってはなりません。正味は半日ですが、あまりの暑さで能率あがらず2日かかりました。

(PS)
 このレベルになると、文章で表現するのがとてもむつかしいですね。じかに教わるか見るしかないという気がします。ビデオでも無理かなあ。

94/09/05 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(23)

昨日までの工程で、34ミリの板が、ほとんど反りやねじれがなかったにもかかわらず、28ミリになっていた。もったいないけど、この程度でも歩留まりがいい方でしょう。桐タンス屋さんでは熱をかけて歪をなくして、もっと歩留まりをあげていると思いますが、このあたりはmoonさんのお家芸ではないでしょうか。
 きれいになった板6枚を作業台に並べ、木目の具合、傷、木表、木裏などを考慮して、並べ方と表を決めていきます。私の基本は木裏が上になるように使いますが、木表が混じる場合、その両隣は必ず木裏にします。
 並べ方が決まったら、鉛筆でマークを書きます。よく使われるのが大きな三角形を書く方法。私は三角形+隣どうしにAa、などど記号。

さて、いよいよ天板の接ぎ合わせをします。
その方法については、以前、TACKさんから「絶対にいも継ぎ派です」というご意見を頂戴したことがありました。

■どんな接ぎ方をする場合でも、接着面の平面がもっとも重要です。
(板の中程がほんのわずか細くなっているのが理想)

 手押し鉋で木端の平面と表や裏との直角をだすか、手押しがない場合つぎのようにしてました。

(手持ち電動鉋による加工)
板を木端を上になるように板を立てて固定します。正確に直角になった自作ガイドを付けた手持ち電動鉋で金尺で引いた直線を目印に、ガイドを板の基準面に密着させながら少しずつ削ります(指を削らないよう要注意)。

■WWM工房での結果はやはり手押しの定盤の短さが災いし、板と板の間が中央部で1ミリもあいている。これではスキマが大きすぎるので、これを気長に調整して、スキマ0.5ミリにもっていきました。

(雇さね加工)
 これは接着剤の発達した今必要ないかもしれませんが、つぎの様な理由でこの接ぎ方をしています。
・普通のハタガネだけの接着でも目違いが少なくなる。
・木口の端から端まで一本の木が通っているという自己満足。
・この方法でトラブルが今までない。

 板厚の約3分の1の幅で溝を掘ります。この工程はルーターか丸鋸が必要です。以前は、テーブルソーに9ミリの4P毛引き付きカッターをつけて板を動かして溝を切っていましたが、恐いのと板をガイドに密着させて送ることがむつかしいので、現在は造作丸鋸に自在カッターをつけて、正確な治具を自作して行っています。自在カッターは刃が斜めになって回る丸鋸で3ミリから15ミリの幅の溝が自由に掘れます。普通のカッターに比べ幾分精度は劣りますが、バーンとはねたり失敗したりする恐さがないので、愛用しています。
 丸鋸で何回か切っても時間はかかりますがOK。
 ルーターでも強力なものであればいけると思いますが、回転方向によっては刃が逃げるのでガイドの方向を考えます。

 溝の幅に合ったさねを作ります。幅は溝幅の約2倍。今回は暑さ10ミリ、幅20ミリです。天板の長さよりも最低5センチぐらい長くします。溝に力をいれずに押し込められるように調整します。幅が広すぎて板が離れたりしないよう、幅は0.5ミリぐらい狭いほうがいいです。

94/09/06 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(24)

 ZIROさんのご質問、ごもっともです。まったくのまさめの雇さねですと、割れる心配があるかもしれませんが、それでも極めて長いものなので、ヒビでもはいっていない限り、割れることはないでしょう。メーカー品では合板を雇さねに使うことが多いようですが、この方が強いかもしれませんね。
 しかし、自分は板目もしくは追いまさで天板と同じ木からとった雇さねを入れています。短いのを2本使っても外からは見えないし、強度も落ちないでしょうが、いつも天板の長さ+アルファの長いのを作って入れてます。自己満足のきわめつけです(^^)。

 板ほハギの話題になったので、いつも思っていることを書くと・・・。
天板のハギ合わせという工程は、機械がその本領を発揮するところです。だから、汗だくになって自己満足でやるより、信頼できる木工所に天板の加工を依頼してもいいかもしれない。
 もっと言えば、良質の集成材を天板につかい、脚部に自分の腕と時間を注ぐというような合理的な方法もいいのではないか。天板だけは平面がいちばん使いやすいのですから。

 さて、接着です。私は木工ボンドしか使ったことがありません。毎日濡れふきんで拭いている自宅のテーブルも木工ボンドによる接着ですが、数年たってまったくハギ割れはありません。ですから、木工ボンドで充分だと思います。カペラのベン先生も同じ意見でしたが、本によっては、木工ボンド+尿素樹脂もしくはエポキシ樹脂をすすめているものがあります。
 自分の理想としては、「可使時間が2時間程度で、木工ボンドより耐水性がよく、乾燥による目減りが少なく、刃物をいためないもの」です。ニカワの使用経験はありませんが、使われて来た長い歴史が経年変化も問題ないことを証明していますので、今後トライしてみたいです。

 接着剤を塗るのは簡単ではありません。私は接着剤の使い方で経験や腕がかなりわかると思っています。塗り方には人によっていろんな方法があるようです。
・チューブタイプ容器で塗る。
・ヘラで塗る。
・歯ブラシで塗る。
・刷毛でぬる。  など
 私の師匠は穴はヘラ派で、15センチのステンレスのものさしを使う。板ハギは歯ブラシ派です。
 最初私は穴は木で作ったヘラで、ハギは歯ブラシでしたが、今は刷毛を使っています。ちょっと堅めの水彩筆で穴も塗っています。
 ボンドの量が問題ですが、厚着してわずかにはみ出す程度が最高でしょうが、この状態をいつも作るにはかなり経験が必要。

■いもハギの場合
1,接着剤を片面に薄く均一に伸ばす
 (木がすきとおって見えるようでは少ない。また必要以上の多量はダメ)
2,板を重ねて、スリ合わせをする。この段階で、ピタっとくっついてくるはず。3,寝かせて、ハタガネで両サイドから当て木をして加圧。
 (この時ハタガネとはみだした接着剤がふれると汚れがしみつくことがあるので、紙をはさんでます。)
4,半日ぐらい乾燥させ、少しハタガネをゆるめる。

 木工ボンドの乾燥はかなりはやいので、手早く塗ってさっと接着します。はみ出したボンドを濡れ雑巾で拭くのもいいとは限りません。完ぺきに拭き取るのでなければ、そのまま乾燥させ後で削ったほうが塗装の際にダメージが少ないこともあります。

94/09/07 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(25)

TACKさん、KOHSEIさんありがとうございます。実は尿素樹脂混入は一度も経験がないのです(^_^;)。尿素樹脂はいったい何という商品名の接着剤を購入すればよいでしょうか? 講座担当者としては恥ずかしいお話です。
 カペラでは、木工ボンドで少し黄色みがかったものがありまして、説明によれば「目減りが少なく、より強力な接着力が必要な時に使うが、たいていの場合普通の木工ボンドでOK」と言ってました。これのことかなあ?
 ハギでスリ合わせを行う時は片面塗布でいいかと思いますが、そうでないときは、両面にボンドを塗っています。
 それにしても、ボンドの適量というのはほんとに難しいですね。はみ出すと汚いし、出てこないと不安になります(^_^;)。

■雇さねハギの接着
 まず、接着剤なしで仮組をするのはどんな場合でも同じ。
 その後、接着剤の乾燥との関係で、3枚程度は一度に接着できますが、それ以上は無理なようで二回以上にわけて作業をします。

 時間との勝負なので、接着を始める前に段取りを充分に考えます。
・ハタガネのスタンバイ、当て木の確保。
・接着剤と、刷毛、濡れ雑巾の準備。
・木を順番どおり取り出せるように工夫する。など

いよいよボンドを塗りますが、溝にあまりたくさんのボンドをいれると、板が密着できず失敗することがあるので注意します。

さねにボンドを塗るのはむつかしいので、私は次のようにしています。
1,片方の板の溝にさねを軽く差し込み、凸状の接着面全面にボンドを塗る。
2,さねを取り出し、ボンドのついてない方が上になるように板の溝にはめ、塗っていないところにボンドを塗る。
3,もう一方の板の溝以外の接着面にボンドを塗る。
4,作業台の上に固定したハタガネの上で接着、加圧。
5,はみ出たボンドを濡れ雑巾で拭き取る。
6,継ぎ目に紙を置き、その上からも、ハタガネをかけ、上下均等に力がかかるようにする。

 以前、四枚の天板を一度に接着し冷や汗物であった経験から、今回は一枚ずつ六回にわけて確実にやりました(乾燥時間は30分ぐらい)。やはり、ソマックスのバイスみたいなハタガネは強力で、天板ハギにはこれぐらいの力がほしいところです。今回のハギはなかなか上手くいった。

94/09/08 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(26)

 TACKさんの接着剤に関するお話では、その道の本当のプロの、それも仕事の上の貴重なコツを披露していただき、感謝しています。
 私の使用方法に都合がいいように解釈しますと、”いわゆる酢ビ系の接着剤がもっとも基本であり便利だが、市販の物には樹脂濃度が薄いものが多いことや樹脂濃度と粘度は直接関係しないことを理解した上で、接着剤を選択し使用することが重要”ということになりそうです。
 今度コニシの会社の人に会うチャンスがあったら、可使時間が長く、樹脂濃度の高い酢ビ系木工ボンドの市販品名について聞いてみます。

 さて、ハギが終わった天板はドーンとまばゆく、「やっぱり、無垢の板はええなあ」とあらためて感心したりします。
 まず、ボンドのはみ出た部分を鉋などで削りますが、同時に裏面の「目違い」をはらいます。目違いとはいくら正確に加工し接着しても、必ず0.5ミリ以下、上手く行かなかった時にはそれ以上の生じる段差のことでそれを鉋で落とし指でさわって段差を感じないようにします。裏とは言え、大きな逆目を作ったりしないように用心のこと。これは、次の吸い付きの加工に関係します。

 天板と脚部を固定したり、天板の反りや変形を防ぐために様々な方法があります。天板が木目と垂直方向に収縮したり、膨張したりするのを許容しながら、反りを防ぎ、足をつけるには・・・

・コマどめ金具の使用
・木製コマどめの使用
・アリ吸い付き
・寄せアリほぞ吸い付き
・横長の穴をあけた幕板をネジ止め

 などでしょうか。私はどうも金具は使う気にならないので、ほとんど両端を隠したアリ吸い付きで天板を止めています。この方法は紙一重でガタついたりして100%キマルということが少ない神経を使う方法で、実質的には金具を使った方が良い場合がありそうです。
 しかし、古い家具でガタが来てるのは、木ネジなどの腐食や周辺木部の疲労によるものが多いと思いますから、充分乾燥した木を使ったアリ吸い付きは、長い目で見ればいちばんいい方法だと思っています。
 この加工方法も一応教えてもらったのですが、師匠がアリはきらいだったので、自分でやりかたを何回も変えてだんだん精度をアップしてきました。

 その方法は次回のお楽しみ。

94/09/09 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(27)

 狭いWWM工房で大きなテーブルを作るときは、天板を作ったら、裏面を上にしてきれいに掃除した作業台に置きます。この上にベニヤ板を置き、その上でこれからの作業をします。

 最初にアリほぞにする部材の木取りをして、ほぞを先に作ります。私はトリマにアリビットをつけて加工しています。アリ鉋があればいいのですが、なければ際鉋を改造することで手加工によるアリほぞ加工ができる可能性があります。
 ここで今までの失敗例からの教訓があります。
「アリは平行ではなく幾分テーパー状にしないとうまくいかない」のです。
 おそらく、アリ鉋ですこしずつ削りながら合わせいく場合でも、ほんの少し先が細くなっていると思うのです。

 トリマを逆さにつけたテーブル(以前は自作テーブル、今は便利なのでマキタ2708テーブルソーに付けています)にガイドをクランプで固定しアリほぞを作ります。
 二本あるアリほぞの内側は基準面とし、外側を1メートルにつき1ミリ程度斜めにします。このために、長さ1メートル程度で端の厚みが1ミリ違うような薄板を用意します。この薄板をアリほぞの木の側面に両面テープで固定しガイドとの間に入れてトリマで掘ることのより、アリほぞ部分だけを、わずかにテーパー状にするのです。アリほぞは天板の幅よりも長いものを用意し、もっとも適した長さの部分を選択して使用できればより完ぺきにいくと思います。
 アリビットについては、深さ9ミリと13ミリを持っていて、40ミリ以上の天板には13ミリ、それ以下は9ミリを使っています。13ミリの方はコロ付きビットです。

 アリほぞは、位置をスコヤやさしがねを使い正確に墨付けします。その上にできたアリほぞを置き、とがった鉛筆で形を写します。その先よりアリほぞの溝部分の深さ(おそらく3ミリ弱)の分だけ内側を加工していくわけです。
 いきなりトリマで掘るのは無謀で危険です。まず少し内側まで四角の溝を掘ります。これも丸鋸に自在カッターをつけてやっていますが、カッターがない時は丸鋸を2ミリずつ動かして時間をかけて大きな溝を掘っていました。この作業は6畳の部屋が木屑でいっぱいになり場合によっては体にも悪いかもしれないので、防塵マスクと保護メガネ代わりのサングラスをつけてやっています。
 橋本さんがNIFの方で目と耳と呼吸器系の安全のために耳栓、保護眼鏡、防塵マスクの必要性を資料を出されて書かれていましたが、いたるところ木屑が舞、鼻の穴が黄色になるような作業環境が体にいいはずありませんね(^_^;)。

 その後は深さをアリほぞと現物合わせで調整したトリマかルーターで慎重に慎重にアリ溝を完成させて行きます。天板の幅と同じぐらいの長さのまっすぐな板をガイドにして、掘ります。今回は一方の端2センチ程は残します。後でアリ溝を掘った端からアリほぞを入れ、アリ溝と同じ形の木を入れて隠してしまいます。
 何回も入れたり出したり。ちょっとでも削りすぎてはいけないので、少しずつガイドの板を調整して大きくしていきます。アリほぞが手の力で70%ぐらいまで押し込めれる状態がベストでしょう。摩擦で入りにくいこともあるので、蝋を塗って押し込んでいます。

 ちょっとでも気をぬくと、ガバガバになってしまいます。もしも緩くなってしまったら、薄い木の板をはさむぐらいしか方法はありません。
94/09/10 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(28)

 毎日書いていると、作業より講座が進んでしまいそう(^_^;)。実際の進行状態は脚部のほぞをほぼ仕上げて貫をのぞき仮組したところです。今日は講座は進まずに関連ある話。

 いつもながらTACKさんのお話にはお世話になっていますが、今日の話でとても安心しました。というのは、木工ボンドを使っていて少し時間が経ってやや固まった時にハタガネでしめて接着部が少し動く時、「だいじょうぶかな?」と思っていました。酢ビのボンドはいろんな使い方をしてもOKみたいですね。
 なお、私が某カヤックメーカーにいた頃は、水につよいということで、24時間硬化性の2液のエポキシを使っていました。2液を混ぜるのがじゃまくさいと感じた記憶があります。

 スウェーデンでとても感心したのが、グルー容器(木工ボンド入れ)でした。「帰りに買えばいいわ」と思っていましたが、コペンハーゲンでは見なかった。
 それはボンドの1リットルぐらいの四角のタンクと100ミリリットル程度の薄い入れ物が合体したもので、小さな方にはハケしごきのついた口とトンガリ帽子のようなキャップがついているのです。
 ボンドを塗るためのハケを入れたまま蓋ができるし、浅い容器なのでハケが潜らない。良く考えられた使いやすいものでした。ぜひ入手しようと今問い合わせています。自分も今までボンドの容器は不便やと感じてはいましたが、使いやすいように改善しようとは思わなかった。
 カペラガーデンでいろんな小さな工夫を見た。ボンドの容器、流しで砥石を使うための木枠、ホウキとチリトリをかける便利な自作フック、ボール盤につける手製の回転サンダー・・・等。

 さて、アリほぞがうまくできたでしょうか。自分も100%満足というのはありません。細い板を入れたり、溝堀で端を削ってしまったり、機械による加工では、ちょっと気をぬくとミリ単位で隙間ができてしまいます。

 天板はしばらく加工しませんので、大きな布や毛布などで包み、傷はもちろん、不均一な乾燥による反りなどが生じないようにしておきます。

94/09/11 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(29)

 テーブルを作るときは脚部の構造で迷います。使いやすい天板を高さ70センチのところに保持できればどんな形でもいいわけですが、三本足ではガクッと傾くことがありますから、やはり基本は4本足でしょう。

 頭の中はだいたい次のような分類です。
1,4本足で貫有り。
2,4本足で貫無し、幕板で強度を持たせる。
3,左右2枚の板(もしくは柱+水平脚部)で支え、補強は貫。
4,X脚で貫あり。
5,一本足で十文字状の水平な木組みの台にのせるタイプ。
6,楕円形の天板に6本足。
7,その他(脚部が箱物、丸太、ミニログハウス風柱等)

 私は1から4までは作りましたが、5,6は経験がありません。3本足は座卓でやりましたが、ガクッときて4本に作り変えました(^_^;)。2番のタイプはスキッとしていて掃除もしやすく軽い感じでいいのですが、強度を充分に持たせるためには幅広の幕板が必要で、そうなると足があたるので好きではありません。メーカー品の食卓でダメになる所はほとんどが幕板と脚部の金具のゆるみです。
 同様に足があたるという理由で、引き出しつきの食卓もあまり作りません。X脚はちょっと木の無駄が多い。

また使う立場からすると、次のような要望があります。
・使わないときは椅子が下にはいること。
・多人数で利用できるように、どこからも足がはいること。
・丈夫なこと。
・カッコイイこと

 というわけで、奇抜さを重視しなければ1か3のタイプで考えることになります。それぞれのタイプは細かい分類がありますが、1の方が接地面積がすくなく掃除もしやすいが、ちょっと平凡な形になりやすく、3のタイプは木工作家の作品に多いようで、カントリーっぽくやや手作り風になるようです。自宅のは3で昨年作った楢の大テーブルは1でした。
 デザインはあくまで各人の好みです。ナカシマのテーブルは天板に目がいきますが、他にない脚部のデザインです。

 今日はデザインの話になってしまいましたが、私のは別に奇抜なデザインではありません。しかし、どこかにこだわりの仕事を残すようにしています。今度のテーブルは1のタイプで、貫のほぞを凝ったものにして、4本の脚を鉋の目が残るように手鉋で丸くするつもりです。
94/09/12 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(30)

ZIROさんもかなり、本格的にやっていたんだ!多分こったデザインの家具を作っていたのでしょうね。
 さて、脚部の製作についてはデザインによって作業が変わるので詳しく書かないで、ほぞの加工の精度などについて書きます。

 1メートル以上の大きな物は、毛引きで同じ長さがマークできるわけではないので長い物差しを使うことになります。しかし、精度は0.5ミリ程度にしないといけないので、注意が必要です。
 例えば4本の脚の加工を例にとると。

1,幅、厚み、直角をそろえた材木4本を並べて片方にさしがねかスコヤで基準の線を引く(今回の場合は接地面の線)。

2,そこを基準に正確に貫の位置やほぞの位置をマークする。大事な点は、いつもこの線から測ること。

3,脚4本を別々にし、前にひいた線をまわり4面にスコヤで回し、角材の周りの始めと終わりで鉛筆の線がピタッと一致することを確認する。

4,ほぞ穴の長手方向は毛引きでマークしますが、基準面は内側です。

■墨入れにおけるWWMの経験上の注意点は・2Hのできるだけ良質な鉛筆をとがらせて使う。
・ものさしと実際の鉛筆の線がどの程度離れるかを知って置く。
・同じ物差しで、長さを測る。巻尺で測った長さを金尺でとったりしない。
・木の端はプレーナーのくせで厚みが変化していることがある。
・最初にだした平面とそれに直角な面を基準の2面とし、ここにスコヤをあてて角材を回す線をひくこと。
・毛引きは木目にひきずられることがあるので注意。  等

 しかし、これを読んで意味がわかる人はもうこんな注意が必要のない人でしょう。こういう細かい点は、「それではあきませんよ」と人から注意されてクソッと思ったり、実際に悪い結果がでて初めて身につくもののようです。

 とにかく、正確な墨つけができていないと正確な加工は絶対できません。納得いくまで書き直しをします。穴を掘ったり切ったりしてからでは修正できません。それと、原寸大の図があれば図面と、なければ現物合わせで必ず確認することが大切。81センチと71センチを読み違えてばっさり切ってしまった情けない経験もありますが、相手の木と合わせてみればこんなアホなチョンボはしなかったはずです (^_^;)。
 大物での失敗は材料が足らなくなることが多いので、切断や穴明け前に何度も現物合わせをして、ヘマをしないようにしましょうね (^^)。

94/09/13 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(31)

 脚部の加工に入ってから、テーブルソーによる”ほぞ取り”治具を作りました。今までも丸鋸を縦に固定し手前のテーブルからほぞを送ってほぞの縦引きをする自作の”ほぞとり”を使っていましたが、外国の雑誌などにでてくるテーブルソーの上にほぞを立てて固定し、それを水平に動かして切るタイプの治具を作りたくなったのです。

 縦引きのガイドをレールのように使い、15センチぐらいの高いフェンスが縦方向に自由に動くように作ります。15ミリの合板を使って、0.5ミリ以下の隙間でガイドを包むようにしました。滑りを良くするために接触面にはビーズワックスを塗っています。フェンスが正確にテーブルに垂直になるように慎重に接着ネジ止めして一応完成。
 大きなほぞの加工にはこの治具は便利なようですが、精度は以前から使用しているタイプのほうが少しいいみたい。ただし、これを一度作っておくと、丸鋸を傾斜させることにより、斜めのほぞ取りが簡単にできるのです。

 私の作るほぞ組はたいてい”少々キツイ”傾向があり、ボンドをいれるとさらにきつくなり入らない失敗が何度かあったので、心持ち(0.3ミリぐらい)ほぞの幅が小さくなるように心がけています。もちろん、ゆるくなりすぎるないように。なお、ほぞにボンドをつけると少し膨れます。

 穴堀はほとんど角のみです。これは日立の角のみスタンドに電気ドリルをつけたもので、かなりガタがあるのですが値段の割にはとても重宝しています。その後定価6万ぐらいで移動式テーブルのついたかなり実用に耐える角のみが同じく日立から発売されていますので、これから買われる方にはこれををおすすめします。
 角のみによる穴明けのコツは、角のみが木のない方向に逃げることを避けるために、端を先にあけることや基準面をいつも奥のフェンスに密着させるように材木を固定することです。

 しかし、角のみであけた穴は必ず傾斜しています(特に私のような簡易角のみの場合)。ですから、穴を垂直に見て、良く切れるのみで押すように修正します。精度が要求される場合は、角のみであっても墨線の少し内側まで穴をあけ、後はのみで最後の仕上げをするべきでしょう。
 恥ずかしいながら穴の仕上げの最中、のみを穴の壁に押しあてるように使っていて、のみがはずれ手の甲をケガしてしまいました。手道具ではバンドエイドですむようなケガですが、のみは結構ケガしますので気をぬかないように注意しましょう(^_^;)。

94/09/14 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(32)

 テーブルがなかなか進まない。講義ばっかり先に進むのでこまった(>_<)。なぜかというと、プレーナーで作った平面に仕上げ鉋をかけておしまいだったのが、カペラガーデンの影響か、もう少し自由に削りたくなってしまうからです。丹波クラフトフェスに出す作品ももう少し作らないといけないのに、焦っています。

 脚部は一度仮組し、ほぞの具合や傾き、胴つきなどをチェックし、調整をしてあります。そして、面取りしてはいけない所などをしっかりマークし頭にたたき込んで、鉛筆でほぞ穴とほぞにAAなどの記号を書いて組立時に迷わないようにします。この時穴やほぞに書くのは、他の場所だと仕上げ削りで消えてしまうからです。仮組を分解するときはほぞを抜く必要がありますが、ご存知とは思いますが、ほぞを持って当て木をしてもう一方の木を叩いて抜きます。力任せにひっぱっておでこに木が当たって血がでた人もいますし、こじってほぞを折る人もいます。

 あとは、各部材を好みによって仕上げてゆきます。今回は脚は鉋で丸くします。まずテーブルソーの刃を45度にして大きく面取りしました。刃とガイドの間に切った木がはさまると飛んで来てきけんですから、切り落とす木がガイドから遠い位置に落ちるようにします。以前、木が飛んでふすまを突き破ったことがあります(^_^;)。
 あとは、刃を多い目にだした小鉋で8角を16角に、16角を32角にと角をとってゆきます。おそらく、木目によっては大きな逆目ができたりするので、これは案外奥深い作業です。ある程度丸になったら、逆目を起こさないように、良く研いだ中型の平鉋で削ります。微妙な木目の最終仕上げは、自慢の仕上げ鉋が登場します。

 この間1,2回は刃を研ぐ必要があると思います。逆目を防ぐには、木目を良く読むことと、鉋の刃が良く切れることが一番重要で、そのつぎに裏刃とか、台の仕立てが関係してくるようです。
 こうして苦労して鉋で丸くした木は、レースをつかった丸みとは異質の味わいがあります。またこの作業は案外楽しく、そして決して機械ではできない仕上がりになります。
94/09/15 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(33)

 部材の加工が終わったら、組立前に仕上げ鉋をかけたりするわけですが、鉋の話は済んではいますが、実際には上手く行かないことも多いので、仕上げの鉋がけについて失敗談を中心に書いてみます。

1,鉋がかからない。原因は・板が凹面上にそっている。
・台の特に台頭の刃口に近い部分がふくらんでいる。
・台自身が凹面状に反っている。 など

2,逆目がひどい・けずる方向が逆・刃が切れない・裏刃がきいていない・刃口が広すぎる。  など

3,鉋枕がでる(鉋削りの境目に筋が入る)・刃先が直線でない・刃が斜めになっている・刃の出しすぎ

4,堅い部分でガクガクとなってきたない仕上がりになる・刃の出しすぎ・切れない・刃口が広い  など

 なかなかうまいこといきませんが、全て基本にもどっての点検が大切なようです。研ぎも要領がよくなって刃先だけを研いだりするうちに丸刃になりよけいに切れないようになります。私も昨日、しっかりとブロックをひいて気合いを入れて刃を研ぎましたら、やっぱり切れ味がちがいました。

 仕上げ鉋でスカッと仕上げたツルツルの手触りはもうサンドペーパーをかける気がしなくなるので、つい平面の多いデザインになってしまいます。これからはサンドペーパーとスクレーパーによる仕上げにも慣れてみようと思っています。

94/09/16 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(34)

 WOODさん、いつもご感想をお書きくださいましてありがとうございます。
自分の日記がわりみたいに書いているわけですが、こうしてRESをいただくと、「書くぞ」という気になります。図面をJW_CADで書いてアップしたりするとかなりわかりやすい講座になるとは思いますが、そこまで手がまわらないのが実状です。いつか、画像やビデオに撮って見たいです。

 さて、今日は帰宅してからガンバりました。ほぞは一度仮組みして確かめてあるので、各部材に納得いくように仕上げをします。
・平面は仕上げ鉋をかける。寸法があまり減らないように、2,3回シュシュとやればOKというのが理想的ですが、なかなかそうはゆきません。
・曲面は、鉋、のみ、南京鉋、小刀などを総動員して仕上げますが、私は未熟なせいか、ほとんどの場合最後は180番ぐらいのサンドペーパーのお世話になっています。
・通常は45度の面取りをします。おおまかに豆鉋で面を落とし、仕上げは面取り鉋です。だいたい広葉樹で1ミリから2ミリ、針葉樹では2ミリから3ミリぐらい面を取っています。デザイン上の工夫で、丸面にしたりしますが、ルーターによる、複雑な面取りは好みではありません。
 面取りは楽な作業なので、ついよけいな所まで削ってしまいます。例えば、ほぞの胴付きがあたるところまで面取りしてしまい、隙間ができてしまったり。
仮組みの時に面取りしては行けないところはうすく鉛筆などでマークしておきます。

 本組は、いちばん面白い工程でしょう。しかし、失敗はゆるされません。私は、まず道具を片付け、掃除をします。小さな木屑で仕上げの終わった面に凹みをつけてしまうこともあります。それから、ひつような道具やボンドなどをすぐ使える状態にします。
(用意するもの)・木工ボンド・塗るための道具(私は筆か木のヘラ)・ハタガネ、クランプ等・よくしぼったきれいな濡れ雑巾。
(順序)・作業台の上をきれいにし、組み立てる部材を、仕上がりの形に並べる。
・必要なら、隠れてしまうところにマークを入れる。
・ほぞとほぞ穴にボンドを塗りますが、多すぎて胴付きの間からはみ出さないようにしたい。このためには、穴の方に多い目に塗り、ほぞには少しで胴付きには塗らないようにしています。
・ほぞを組み、当て木をして叩いて入れる。ハタガネを上手くかける。
・はみ出たボンドは濡れた布で充分に拭き取る。
・スコヤで直角を確認し、ひどいようであれば、修正するかやり直すが、仮組でこのチェックは終わっているはずです (^^)。

 なぜか夜は木の凸凹が見えにくいので、できれば昼間の方がいいように思います。

94/09/20 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(35)

 いよいよ、天板の仕上げ削りにかかります。これも自己流で覚えたので、本当の職人さんが読んだら笑われるのではないでしょうか。
 この作業は大きな逆目を起こしたり、物をおとして傷をつけたりしないように充分に注意します。お恥ずかしい話ですが、仕上げ鉋を持つ手が滑って、仕上げたばかりの天板の上に落とし、深い凹みを作ったこともあります。
 万が一、凹みを作ってしまったら、水でしばらく濡らすとかなり戻りますから、失敗したときは試して見て下さい。

 鉋は刃口がせまく、よく研いであり、食いつきのいい台であることが大切です。刃先はわずかに中央部が凸になるように研ぎます。
 天板の平面がかなり狂っているときは、よく研いだ鉋で最初は横ズリします。
ある程度平面がでていれば、横ズリは必要ないでしょう。

 刃をごくわずかだけ出して、削ります。できれば同じ材質の木を削って、刃の出方を確認した方がいいです。

 削る方向を決めるには次のような点を参考に決めます・木目(木表、木裏)・導管の形・手触り・プレーナーの削り跡

 しかし、削って見ないとわからないのが板目のはしのまさめ部分で、ここを逆に削らなければならないこともあります。
 全体にわずかに凹面状に反っていると、鉋がかからないので、少し水をつけて削ることもあります。

 くどくど説明するより、これはやってみるより仕方がないです。ゴボッと逆目を作ってしまった時のくやしさ・・・。
 コツは横着せずに刃をこまめに研ぐこと、台をよく調整することの2点につきるかもしれません。

94/09/21 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(36)

 オルガン屋さん、糊壷の件ありがとうございます。鳥の水のみの原理を知らなかったもので、本で調べました。1リットルぐらいのボンドを大きい四角にいれて置くと、低い取りだし口には、いつも一定量のボンドが大気の圧力によってあふれ出さずにたまっているのですね。とても面白く使いやすいもなので、ぜひ手にいれようと思っていますが、人から聞いた話では、日本でも扱っている会社があるらしいのですが、ベラボーな値段だということでした。週末には大阪木工機械展に行きますのでさがしてみます。オルガン屋さんは糊のハケにまでこだわっているのには驚きました。たしかに、使い古しの水彩筆はすぐ毛が横にはねますし、歯ブラシは能率悪い。高価な人毛の漆ハケがいいのかも(^_^;)。

 おじんさん、膠は一度使いたいと思いながら、まだ未経験です。近いうちにトライしてみます。小川三夫さんのTV見ました。お弟子さんの研ぎの場面が一番よかった。丸刃にならないように、刃を押し進める様に、砥石の端から端までじっくり動かしていました。斜め研ぎもしていないようです。
 最近、自分の研ぎのええかげんさが見えてきまして、反省することしきり。先日お会いした小松さんの研ぎは完ぺきでした。道具を見ただけで、自分とレベルがちがうのがはっきりわかりました。

 さて、自分は鉋のみの仕上げを好みますが、逆目皆無な削りというのも不可能に近いので、続いて180番から240番程度のサンドペーパーによる仕上げを行うことが多い。師匠の所でも、仕上げ鉋をかけて後、オービタルサンダーによる研磨をしています。
 WOODさんのおっしゃるとおり、どうも自分は鉋にこだわっています。腕のいい板前さんの切った刺身が、鮮度が長持ちするように、鉋でスカッと仕上げた木は汚れもつきにくいし、雑巾もかけやすい。何より肌触りと光沢がすばらしい。
 今回は天板を削るよりも、刃を研いだり台をいじる時間の方が長かった。やっぱり、丸刃はだめでした(^_^;)。

94/09/22 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(37)

 今日一応テーブルは完成し、オイルを1回塗り込んだのですが・・・。北欧の細く薄いスタイルを取り入れながら、昨年作ったのとほぼ同じ力学的構造だったので、天板のたて方向の揺れが気になり、やり直すことにしました。
 せっかく埋めた隠しありの木片をドリルで粉砕し、大きなハタガネでありほぞを抜き、明日、天板の下に2本の貫を追加することにします。
 木を薄く細くすると、木のしなりで、細かい振動がおこるようです。天板の重さが振り子となり共鳴するという感じです。設計ミスですが、これは作ってみるまでわからなかった。

 さて、このやり直しはなかったものとして (^_^;)、 塗装の話に移ります。
油と蝋のWWMとしましては、この単元は少し力を入れまーす。

 亜麻仁油はオイルフィニッシュに使いますが、塗料の主成分として広く用いられています。亜麻仁油+顔料=ペンキ、油絵の具,亜麻仁油+コーパル樹脂=コーパルワニス,煮亜麻仁油+ドライヤー=ボイル油,などなど。
 要するに、亜麻仁油は空気と重合して樹脂化するので、水に強い塗料のベースになるわけです。このような種類の油を乾性油といい、桐油や荏油も乾性油です。欠点は乾燥が遅いことで、そのために多くの場合、重金属のはいった乾燥促進剤、ドライヤーが混入されますがこれは毒性が強く、食器などに使用してはいけません。
 チークオイルは亜麻仁油の欠点を改良したオイル仕上げ用塗料の総称で、ワトコオイルもこの仲間です。おそらく主成分亜麻仁油にアルキド樹脂とドライヤーを加え、テレピン油で粘度をさげたものです。うすい色でよければオイルステインを混入すれば簡単に着色オイルになります。桐油はダニッシュオイルなど北欧で市販品として使用されていますが、独特の匂いと少し光沢があることから、日本ではあまり使われないようです。

 今回使ったのは、亜麻仁油ですが、防水性が強く要求される時には、ウレタンニスやスパーワニスを使う方がいいでしょう。特にスパーワニスは桐油が30%程度含まれており、乾燥は遅いですが、オイルのように布で塗ることもできるので、亜麻仁油と混ぜて使用したりするのもいいと思います。

94/09/23 *****Wood Work M*****


WWMおじさんの木工講座(38)

 テーブルの仕上げは何にするかですが、あっさりといちばん自然な亜麻仁油を使うことにしました。

 亜麻仁油はそのままでは浸透性がわるいので、テレピン油で2倍程度に薄めるか、加熱して使います。加熱の方が手間はかかりますが、濃い亜麻仁油が塗れ、また溶媒の蒸気に気をつける必要がありません。今回も加熱しました。

 亜麻仁油を入手できないかたはWWMが1リットル単位で小売りしてます。保管は空気との重合がすすまないように使わないときは密閉しておきます。
 手提げのついた金属製の塗料缶(打ち出しで継ぎ目のないやつ)か鍋に亜麻仁油をとり、小さな火のガスこんろで小さな泡ができて煙がではじめるくらいまで加熱します。引火防止のため、木工部屋では電気コンロの使用が望ましいのですが、台所ではてんぷら油を加熱しているようなものですから、まあ大丈夫でしょう。
 油は熱いので注意しながら作業場へ運び、ぼろ切れを丸めたタンポで熱い亜麻仁油をたっぷりと塗り込んでいきます。塗りにくいところから先に塗るのはどの塗装でも同じ。油が冷えてきたら、また台所へ行って温めてきて塗ります。

 ひととおり塗ったら、油が畳にしみたりしないように紙や不要な板をひきます(WWM工房ではできあがったテーブルはとなりの和室に運ばれ、ここで油が塗られるのです)。約30分後、乾いた布で過剰な油をしっかり拭き取ります。この作業が大切で、乾きのスピードやネチャツキに関係します。木によっては、3時間後ぐらいにまた穴から油がでていることもあり、これも拭き取ります。
 空気とよくふれるように配置して乾燥させます。

94/09/24 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(39)

 少し前になりますが、オルガン屋さんが「蝋をぬったところがほとんど焼けないのはなぜか」と疑問をもたれていました。たしかに、うちでもカルナバを塗った楢の額がまったく変色していません。
 大学時代の食品化学の本をみていますと食品の”褐変反応”というのがでてきます。リンゴやモモが茶色に変色する反応です。よく知りませんがCOOHをもつ食品はほとんど褐変反応を起こす可能性があるらしい。この反応には酸化も関係していますので、ワックスは空気を遮断していると考えてはいけないでしょうか。
 大阪の立花通りの塗料屋さんのご主人が私に「蝋をなんのために塗るか知ってはりますか?」と質問され、「さあ、肌さわりや光沢のためですか?」と答えたら、「空気を遮断するためです」ときっぱり答えられたことを思い出しました。
 オルガン屋さんの疑問に対する答えにはなっていませんが、関連したことかと思います。

 さて、テーブルは振動止めの貫を2本追加し、ましになりました。これで、納品できそう(^^)。亜麻仁油は完全に乾くには1週間ぐらいかかりますが、1日かわかしてオイルフィニッシュをくりかえします。
 サンドペーパーで仕上げた場合は、2度目のオイルをぬった後、400番ぐらいの耐水ペーパーで濡れている状態で研磨をします。そして、しっかり拭き取ります。
 鉋だけで仕上げた場合は、たとえ1000番でもペーパーをかけると、せっかくの光沢が濁ってしまいます。ですから、私は研磨はせずに、2回目は少し油を染み込ませたタンポで油をさらに押し込む気持ちで拭き上げています。この場合も加熱しておくとよく浸透します。
 私はだいたい2,3回塗っておわりですが、外国の本では4,5回、プロは10回も塗っては研ぎをするそうです。そうすると最後は顔が移るぐらいになります。その後、最終仕上げとして、カルナバ蝋などを細かいスチールウールパッドでかける、いわゆるワックスがけをしてブラシで艶をだし、仕上げるのだそうです。

 ワックスは熱と溶剤に弱いので、テーブルでは避けたほうがいいでしょう。
亜麻仁油のオイル仕上げだけですと、水をはじきませんが、それでいいのです。
最初は汚れが気になったりしますが、遠慮せずに、毎日塗れ雑巾で拭くことでなんともいえないいい色になってきます。
 もとろん、ワトコオイルや市販のチークオイルを塗ってもかまいませんが、加熱は絶対にしないようにしてください。また、塗ったあとは有害な溶剤の蒸気がでますから、換気に注意します。

94/09/25 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(40)

ちょっと横道にそれて丹波フェスなどの話。
 クラフトフェスティバルを初めて見たのは2年前の5月の松本でした。雑誌でよく目にする有名な松本クラフトフェアを一度見なければと一人ででかけました。
 サラッと見てしまうと「こんなものかなあ」で終わったのですが、交通費をかけて行ったのですから、とにかく誰かと親しくなろうと決心し、缶ビールをグイーと飲んで勢いをつけ、ひまそうにしている出店者をさがしました。このとき最初に目についたのが私の生まれた神戸から来ていたNさんでした。「神戸ですか」からはじまり、脱サラで食えないが嫁さんの実家の物置で家具を作っているなど、お互い身の上話をして、お友達になりました。彼とは今度の丹波でも会い、いつも「食われへんなあー」と楽しそうに話をしています。
 その次に、なにやらけったいな大阪弁の話声がするので行ってみると、大阪出身でミュージシャン、手品氏、楽器製作、指物氏の弟子などの、様々な経歴を持つ松本在住のH君でした。彼とは、「若気のいたりであこがれて飛び込んだら、えらい目にあった。」という共通の過去があり、いっぺんに意気投合し、大阪に来たらよってくれたり、松本で彼の家に遊びにいったり。ただし彼の腕やデザインのセンスは私とは比べ物にならないほど優れています。このH君を通じても松本M家具の職人さんやいろんな人と知り合いになりました。

 はじめて行った松本ではカメラを持って「撮っていいですか?」と聞いてはとにかく技術やデザインを勉強するつもりでいました。
 ところが、今度の丹波フェスでは、守口職訓の生徒さんが何人かきていて、「これ見ていいですか」とスウェーデンで作った小箱をなめまわすように見ているのです。「技術を盗ませてもらいます(^_^;)」、「やめとき、WWMの作品なんか見てもしゃーないでー」
 こちらとしては、うれしさ半分恥ずかしさ半分で、2年間の歳月というものを感じました。

 サラリーマンの世界に慣れた人間にとっては、クラフトフェスのムードは最初抵抗があります。しかし、アルコールの力でも借りて(^^)、一歩踏み込んでみると、面白い人間関係ができる宝庫であると思います。

 今回もNIFのJUBALさんがなかなか面白そうな人であることを発見したり、私のカヌー屋時代に少し関係があるクラフトマンと親しくなったり、意外にも「あなたの作品はデザインがいい」と初めてほめてくれた中年のご婦人など、楽しかった。

 会社、親戚、同窓生などのどれにもあてはまらない新しいジャンルの人脈ができて楽しいですよ。今日は工作の話はひとつもなかったけど、人脈を作るのも大切な技術ですよね。
94/10/03 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(41)

 仕上げ方法を選択する時の考え方をうまく書いてあるFWWの記事を紹介して、テーブル製作中継の最後にしたいと思います。

 FWWのNo104にChris A.Minickという人が書いている記事の中に次のような分類表があります(かなり省略、アレンジしてますが)。

種類処理分類耐水性耐汚染性光沢補修
オイルフィニッシュInPoorPoorDullExcellent
ワックスOnPoorPoorStainExcellent

 記事にはもっと詳しく多くの塗装についてより多くの項目で比較してあるのですが、特にInとOnの分類が面白い。
 また、安全性を重視する場合の選択についても書いてあり、亜麻仁油、ミネラルオイル、桐油、くるみ油、天然ワックス、シェラックなどを安全性が確認されている塗料としてあげています。

 最近の床用塗料などは、金属棒でこすってもはげない程堅いものがあるらしい。しかし、オイルフィニッシュの補修は極めて簡単であり、時間とともに風格を帯びた自然な落ちついた色に変わっていきます。

 自分でも位置づけがはっきりしないのがワックスです。今のところワックスは、オイルなり、シェラックで仕上げたあとの最終の光沢や肌触りを良くするために使うのが本来のあり方と思っています。
 ワックスだけの仕上げは導管の大きい楢などでは、ワックスが白く穴にたまることも多く、比較的柔らかくて少しは浸透する蜜蝋がなんとか使えるようです。
 ワックス、シェラックとも天然素材ですが、熱と溶剤には弱いので、テーブルには向きません。そうなると、天然樹脂を使った耐水性のいい塗料というと、スパーワニス、コーパルワニスなどの乾性油が主成分のひと昔前の塗料が浮上してきます。事実、日本ではほとんど使われなくなったこれらの塗料が、欧米では亜麻仁油と混ぜてオイルフィニッシュのように使われていることがあります。

 着色については、経験があまりないのであまり書けませんが、柿渋を薄めて3回ぐらい塗っては乾かすを繰り返すことと、アンモニアによる楢の発色は今後も使って行きたい方法です。どちらも匂いに苦労しますが、柿渋は安全そのものです。中風の薬として飲用されるくらいですから。
 毒性とか溶剤を気にしないならば、オイルステインを亜麻仁油に混ぜるだけで、うすい色ならばOKです。濃いと色落ちしますので、通常通り、シェラックニスで色押さえをして、ウレタンニス等で仕上げます。

94/10/04 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(42)

 今日テーブルをヨメさんと2人で納品しました。私は代金をいただく時になると、注文主が本当に気に入って納得して支払をしているかどうかが気にかかります。今回は食卓に合うイスも注文されそうで、おそらく気に入ってもらえたとは思うのですが・・・。あくまで、お金の価値と作品の価値というのは直接関係はないと思います。

 さて、今回は丹波で売れた小物の製作を紹介します。最初にいちばん簡単なメザシ型茶瓶しきです。約2時間で作りました(塗装は一日乾燥で2回塗り)。

・メザシ型茶瓶しき
 20センチぐらい長さのの角材の端材がたまっていたのと、魚の形をモチーフにした作品にトライしているので、これを作りました。魚4匹が2本の串で連なっているような単純な作品です。まるでメザシ(^_^;)。

{材料}・長さ20センチぐらいで約3センチ角の楢の角材4本・直径1センチのラミン丸棒(安直に昔ホームセンターで買ったもの)

{製作}1、魚大図鑑から、好きな魚の写真を選び、その外形を4本の角材に木に直接ええかげんにスケッチします。この時型紙を使ったりせずに、木の長さも幾分ちがうようにします。WWMはキスを選びました(^^)。

2、角材の状態で丸棒を2本通すための位置を正確に墨いれします。
 具体的には、4本の角材をそろえてクランプで止め、スコヤを使って2本の平行線を引きます。クランプをはずし、各々の木の周囲に1面の線を延長するようにスコヤで回します。
 次に、毛引きで上か下の基準面から角材の厚みの半分のところに鉛筆の線と交差するように切り込みをいれ、この交点を穴開けのポイントとします。

3、ボール盤を使えば簡単に直角の穴があくのですが、クリコギリでもスコヤを立てて、これと平行にドリルを立てるように注意し、木の両側から開ければ、かなり正確に木に直角な穴をあけることができます。今回もドリルをセットするのもじゃまくさいので、この方法で開けています。穴の直径は丸棒の直径に正確に合わせます。今回は12ミリのドリル使用。

4、魚の目を5ミリのドリルで開けた後、糸鋸盤で魚の形にくりぬきます。しかし、楢で3センチも厚みがあると、かなり曲がったりします。手引きの糸鋸でも可能ですし、ジグソーでカットしてもよい。

5、南京鉋で鋸引き跡を仕上げます。この工程はやすりやサンドペーパーでも良い。

6、組立は真ん中の2本は接着剤なしで丸棒をはめ込み(ゆるかったらボンドを使って下さい)、両側の2本はボンドを穴につけて叩き込みます。乾燥後、鉋で目違いをはらい平面にしガタつかないようにします。

7、仕上げは亜麻仁油と桐油のブレンドしたものをテレピン油で薄めた自作ブレンドオイルを塗りましたが、もちろん市販のチークオイル等を塗り込んでもいいです。ただし、熱いものを置くので、ワックスやシェラックニスは適当ではありません。

94/10/06 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(43)

 急いで作るモノがないとボケーッとしてしまいますが、こんな時に大物を作った時の端材を見て形を考えながらヘンテコなモノを作るのは楽しいことです。
特に端材を捨てるのが苦手なWWMにとっては、一石三鳥です。

 丹波で売れた小物シリーズ第2弾は、ハガキスタンドです。
これは、次の様なコンセプトでデザインしています。

・異なる重さの木を使った重さのデザイン。
・机や棚の上を圧迫しない高い塔のようなスタイル。
・継続して飾っておきたいハガキや写真などの整理とディスプレイ。

{材料}・土台:楢の木のブロック(約8センチ立方)・棚:紅松の斜めに削られた端材2,3本
 高さ約40センチの塔が倒れないようにするのは、石を組み込むか、重い木を使います。ここでは昨年作った楢のテーブルの足の切れ端を使いましたが、重くできれば何でも良い。しかし、見た目の安定性のためには比較的暗い色の木か仕上げが必要です。
 上部の棚の部分は極めて軽い木で、イスの背もたれの木をくの字型に木取りしたときにできる長く斜めの使い用のない木を利用しています。角材の場合は、4センチ角で長さ40センチぐらいの材料を長手方向の対角線で切断すれば、いいでしょう。

{製作}
 デザインは皆さん自分でアレンジして下さい。文だけで失礼ですが、アイデアのポイントは押さえているつもりです。

1,ハガキは薄い刃(約0.3ミリ)の胴突きで深さ5ミリ程度の切り込みに差し込んで整理します。このため直角に挽くための簡単な治具を作り、間隔を正確にするボール紙のスペーサーとともに正確な鋸引きをします。

2,こうして作った長さ10センチ弱のハガキが差し込める木を枝に見たてて高さ40センチほどの木にほぞで接合します。この時の角度や細さなどがセンスの見せどころ。
 今度の作品では上部の木の厚みは2ミリ、幅40ミリで、土台付近では厚み30ミリ、幅40ミリの長いクサビ状の木に同じくクサビ型のハガキを立てる木を4本ほぞで接合しています。

3,土台には18ミリの垂直な穴を開け、上部の木の末端を18ミリの丸ほぞにしてねじ込んでいます。土台のデザインはご自由に。

4,仕上げは土台を暗くするため、亜麻仁油を塗り込み、上部は軽いイメージをだすために蜜蝋を塗りました。

 余談ですが、このスタンドには米国のマイナーな歌手リヴィングストンテイラーさんから年数回届く、彼のコンサートスケジュールのハガキを20枚ぐらいはさんで展示していたのですが、このハガキを見て同じ彼の歌のファンの人が感激し、住所を写していきました(^^)。

94/10/08 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(44)

 9月10月はテーブル、富山行き、丹波フェス・・・、それに本業も忙しく、実に多忙を極めました。やっとテーブルを終え、丹波も終わり、昨日は23年ぶりの同窓会で、ドッと疲れがでまして、木工パワーが少々ダウン。したがいまして、木工講座も週1,2回のペースになりそうです。
 今回は私事で恐縮ですが、約1カ月半のテーブル製作の反省をします。

■感じている問題点やその改善案■・購入した板の厚み
 34ミリの板で仕上がりは28ミリでした。軽くシャープな感じをねらって以前より薄くしたわけですが、大きなテーブルではやはり少し分厚い方がいいようです。仕上がり寸法で30ミリ以上かな。

・手押し鉋の精度
 刃をかなり神経質に調整しましたが、中程が少し凹みます。定盤の短いせいもありますし精度も悪いことに気がついた。
 と思いながら、FWW誌を見ていたら、なんとアルミのL字アングルを定規に使ってストレートビットでハギ面の加工をしている記事がありました。手押しがない人は一度試されてはいかがですか。

・刃研ぎのレベルが低い
 「少々の丸刃はかまへんわ」という甘えがダメであることを実感しました。刃先のわずかな丸刃が食い込みを悪くしていたようです。夜に洗面所でコチョコチョ研いでいるようではだめで、しっかりした研ぎ台で刃が砥石にすいつくような平面に研げるように努力です。

・角のみスタンドの精度が悪い
 堅い木だとスタンドが負けて、不規則に斜めの穴になるので、のみによる仕上げ手作業がたいへんでした。

・図面のこと
 ほとんど図面を書かずに昨年の作品をアレンジして作りましたが、これはやはりいけないことでした。失敗を許されない仕事の場合には、充分に図面で検討し、できれば5分の1の模型でも作ってみるべきでした。

・作業環境
 木屑が6畳の室内に舞い、極めて非健康的な環境でした(^_^;)。手持ちの丸鋸を溝切りカッターとして多用したためで、集塵の工夫が必要です。

・雇さね加工のこと
 強度や手間、実際の効果などを考えると、決して最上のジョイント方法ではない。自己満足を捨て、ラメロなどのビスケット使用のジョイント加工機械を使う方が実質的に効率よく精度高く強度のあるジョイント加工ができるかもしれません。

■課題■
 作業の内容がWWM工房の限界に近いので、根本的な改善策が必要ですが、それはすぐには実現しないので、比較的簡単にできる課題にしぼって考えると・・・

・刃研ぎの再訓練と研ぎ場の改善・角のみ機械の改良か、上級品(日立の6万ぐらいのやつ)の購入。
・図面書きの努力。CADの活用。もしも3D図と3面図が連動するよう
 なソフトがあれば、模型なしでもかなりできあがりが予想できるかな?
・集塵ホースの改善、強力な換気扇の設置など。
・ラメロの購入検討

 というようなまとめですが、皆さんのアドバイスがいただけたら幸いです。
      木工講座というより反省会でした。
94/10/10 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(45)

 椅子がすきでたくさん作っていますが、椅子の話をするのは躊躇します。それはおじんさんの”椅子の考察”を拝見してその広い博学と経験にもとづいた見識には圧倒されていますので、おじんさんの反応がコワイ(^^)。以前、座板の座ぐりの話をした時、「女性のお尻を触って指先の感覚を育成せねば・・・」というようなアドバイスをいただき、我が女房のダレタお尻ではためにならないなと思ったものでした(他言無用に願います)。

 椅子には、いろいろな目的がありますから、使用目的に応じた設計が必要になります。
1、食事用(ダイニングチェアー)2、休息のための椅子(レストチェアー、ロッキングチェアー)3、作業のための椅子(ワークスツール)4、子供のための椅子5、老人のための椅子6、障害者のための椅子(これは橋本さんの専門分野)7、多人数のための椅子(ベンチ)8、鑑賞用の椅子9、楽器演奏用の椅子10、公共施設の椅子11、飲食店用の椅子12、パソコン用の椅子13、会議用の椅子
 などなどきりがありませんが、超お金持ちではない一般家庭で使用頻度が多いのは何と言ってもダイニングチェアーではないでしょうか。

1、ダイニングチェアー
 日本人の体格に合わせ、最近の食卓は段々低くなり、高さ70センチぐらいのテーブルが圧倒的に多いので、座面の高さは38センチから40センチが座りやすい高さになります。座面は水平でもいいのですが、後が1センチ程度低いとお尻の収まりがいいようです。
 背もたれは肩甲骨の下ぐらいまでしっかり支える高さか、もしくは腰椎の3、4番と呼ばれるヘルニヤの起こりやすい部分を前に支えるだけの比較的低いものの2種類が適当なようです。なお、肘掛けはまず不要でしょう。
 ダイニングチェアーの設計では極論すれば、座りやすい座面と疲れないように背骨を支える背もたれがあればいいのです。あとはそれを実現するための、力学的構造や、持ち運びのための重さや、美しいデザインを付加していきます。

 最初に作ったのはK工房のダイニングチェアーのコピーで、この椅子はWWM工房で作業椅子になっています。なかなか洗練されたスタイルですが、座り心地はいまいちです。一番の原因は座の奥行きが37センチぐらいと短いので落ち着かないのです。
ただし、この椅子は銀座のビアホール”ピルゼン”の注文でデザインされたものらしく、注文主の要求は「とにかく丈夫なもの」ということだったらしい。一昨年ピルゼンに行って見た時、柔らかい紅松では無理があるなと思うほど傷みがはげしかったです。おそらく、ある程度座り心地を悪くして、お客の回転を良くする目的もあったのではないかな (^^)。

 というわけで今WWMのダイニングチェアーのサイズの標準は座面高:38〜40センチ座奥行き:40〜43センチ座面幅:40センチぐらい背もたれ高:70センチぐらいのものと、85センチ前後のものの2種類というサイズを基本にデザインしています。

94/10/13 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(46)

 WOODさん、実はかなりネタ切れなんで、ちょっと無理してでも続けてみようと背伸びをしていますから、前より面白くなくなっていると思いますが辛抱して下さい。
講座というより話題提供というところです。
 いつもながら、おじんさんの話は経験に裏付けられたものだけに強い。現在の標準テーブル高がマンションなどスペースの狭い環境の影響もうけてできあがったものだという見識は参考になりました。ゆったりくつろぐために椅子は座面高28センチというのも作りました。

 さて、ダイニングチェアーでもう一つの要素は個人専用の椅子ではないということです。大部分の家庭では、座る位置は決まっているけれど各自に専用にデザインされた椅子ではない。小学生の子供から、慎重180センチの大学生、年輩の方、いろんな体格、体重、体型の人が同じ椅子にすわります。だから、誰が座ってもある程度座り心地がいいことが求められています。
 デンマークで買ってきた本ですが、「全ての人のための家具」という本では、そのことをかなり研究した内容です。特にランバーサポートと呼ばれるヘルニヤになりやすい腰椎の部分をいかにうまくサポートするかが大切な要素のようです。残念なのは、デンマーク語のためにほとんど文が読めず、図と写真しか見てないのですが。
 また、様々な座り方をする人がいるもので、「ソファーの肘掛けは女性が男性に寄って行くのにちょうどいいようにできている」という説もあり、肘掛けではなく仮の尻置きでもあるわけです。私もあるところで自分の椅子(肘掛け付き)を披露したところ90キロはありそうな大きな男性が立ち話の最中にその椅子の肘掛けに腰をおろしたので、壊れないかヒヤヒヤした思い出があります。
 椅子が倒れにくいように脚が後ろに出っ張っていると、歩いていて足の指先が当たり、「イテー」と悲鳴をあげることもよくありますよね。

 以上のポイントを大切にするためには案外背もたれが低くても、腰椎のサポートさえしっかりできればいい姿勢で座ることができるようで、最近は背もたれ高70センチぐらいの低いタイプを好んで作っています。またこのタイプの方が、背の高い人にも低い人にも対応しやすいようです。ジオポンティの超軽量椅子をご存知のかたも多いと思いますが、あの椅子の座り心地はたいしたものです。脚も斜めや曲線を多用するより、垂直な線を使った方が強度も取扱い上もいいです。
 デンマーク王立学校を見学したとき、生徒用の椅子は全て私の好きなボーエ・モーゲンセンのシンプルなペーパーコード網の椅子でした。量産で安価なダイニング用兼作業勉強用椅子としてはこの椅子できまりという感じでした。

94/10/14 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(47)

 いやあ、びっくりしました。椅子談義には一言ある人がこんなにたくさん!。ここで講座を書くのはこりゃたいへんだ (^_^;)。
 おじんさんの父親の椅子というか家族の在り方にたいする意見はこの頃よくいわれますね。
 ”21世紀はネコの時代だ”とちょっと前に新聞に書いてありました。というのは、犬はリーダーがはっきりしている家を好むそうですが、この頃の家庭はリーダー不在、父親不在で各人が好きかってしているので犬が居心地が悪いらしい。それにひきかえ、ネコはもともと自由気ままな性格ですから、この方がいい。というわけでこれからのペットはネコが主になるというお話。

 木工講座とは言えないような世間話になりましたが、最近つくずく思う事は、「なぜ作るか」ということを考えずに作っても、自己満足に終わるだけということです。
 趣味で椅子ひとつ作る場合にも、そこに考えを埋め込んでいくことがとても大切になってくる。1000分の1ミリの精度で加工できるNC機械に加工精度で勝てるわけがありませんし、下手な技術で胴付きにスキマがあっても、自分の作った椅子がいいと思えるには、作品にメッセージを持たせるしかないと思います。

 WWMの一番新しい椅子は、楢の27ミリ角材を使った簡素な椅子です。背側の脚のみ浅いくの字型に曲がっており、その他の脚、貫は全て直線です。ほぞは9ミリの通しほぞで組んであり、背もたれはゆるいカーブの細い楢材2本です。座面は6ミリの綿ロープを編んであります。仕上げは少量のカルナバワックスを混入した亜麻仁油です。
 非常にシンプルな椅子ですが、気に入っています。これはジオポンティの椅子のように幾分しなります。しなることで重力を分散しているのはいいことではないでしょうか。

 座面の素材については、木、布、革、紐などいろいろありますが、これについてもおじんさんが完ぺきにまとめられていて私が話せることはほとんどありません。
 木の場合、そのままですと、お尻の骨が2カ所で当たり痛くなりますので、どうしても座ぐりを必要とします。この座ぐりが手加工ではとてもしんどい。

 私は、座ぐりする範囲を書いたら、その断面をあらわす型紙を作っています。そして丸鋸で1センチ間隔ぐらいでその深さぐらいまで切り込み(木目に直角方向で)を入れます。その後、のみや木槌で間の木を割るように落とし、その後手鉋で鋸の溝を消すように削っていきます。
 使うのは反り台の小鉋で、刃を大きくだして横ずりしていきます。しだいに刃の出を少なくしながら、最後は斜めや縦削りで仕上げます。
 とてもしんどい工程ですが、慣れてくると半日ぐらいでやれると思います。

 なお、サム・マルーフのビデオを見ていたら、一枚板に見える座が実は10センチ幅ぐらいの木を接着したものであり、その接着の仕方は座ぐりに合わせて接着面を幾分斜めにし、各々の板を接着前にバンドソウでお尻のカーブにカットしていました。
こうすると座ぐりとても楽になるだけでなく、材料の歩留まりがいいのですね。

 だから、いいバンドソーがやっぱりほしい。

94/10/15 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(48)


椅子のむつかしい話が続きましたので、息抜きをします(^^)。

 実はスウェーデンから取り寄せた穴堀用ノミを使ってスプーンを作るのが面白くて穴堀ばっかりしています。
 航空郵便で届いたノミは日本のルータービットの様に油をかためたゴム状のもので刃先が保護されていました。日本と違いすでに刃がついた状態です。これを使って、樺の木っ端でスプーンを作ったのですが、なかなか切れます。堅い樺の木ですが手で押すだけで穴を掘っていきます。欧州のノミはたたきノミよりも、手で押して使う方が多いようで、叩くノミは構造が違い柄の頭に樹脂製のヘッドがついています。日本の外丸ノミでもおそらく可能と思いますが、欧州のノミはカーブの半径や刃幅の違う多くの種類があります。

 今まで穴を掘る場合、ドリルで大まかに穴をあけてから掘るという先入観があったのですが、ドリルを使わずいきなりノミでグリグリ掘っていくことが重要ではないかと最近思っています。というのは手で掘っていくことによって、自然と木に応じたカーブが見えてくるのです。
 長方体の木っ端にスプーンのシルエットを鉛筆で書き、糸鋸などを使っておおまかに木取りをします。この時木目に十分注意をします。取っ手の細い部分で目切れが少ないように、また穴を掘る部分もできるだけ強いように木目の方向を考えます。

 まず、穴をグリグリ掘ります。万力が必要です。丸ノミをうまく使って穴を掘っていきます。しだいに要領がわかり意外に早く穴が掘れます。おそらくドリルを併用するよりも速いと思います。穴の内側はをきれいにしあげるは難しいですが、慣れれば丸ノミだけで仕上げが可能です。西洋のバンカキのような?字型の刃物があると便利ですが、丸ノミと120番のサンドペーパーで十分加工できます。

 穴が完成したら、穴の内側を基準に手の感覚をたよりに厚さ3ミリ程度になるよう外側を削ります。最初は鋸やノミで落とすように削り、最後はよく切れるナイフや南京鉋で仕上げます。どんな場合でも最後にたよりになるのはナイフで、よく切れるナイフ(小刀)を持っていることが何より大切です。南京鉋はナイフ削りの時間と労力を節約するものではないでしょうか。この工程がしんどいのですが、妥協せずにシンプル&ビューティフルを目指します。
 柄の部分は各自の自由にできるところですが、デザインのセンスが表れるところです。とにかく無駄のないスッキリした形にしていきます。ナイフ、ノミ、鉋を駆使して最後は120番、180番ぐらいのサンドペーパーで仕上げます。

 塗装は、口に入るものですから、植物性の亜麻仁油を使います。小さいものですから、かなり温めた亜麻仁油にスプーンを漬けて30分ぐらい放置します。その後、取り出し余分な油をしっかり拭き取り1日乾燥させます。2日目には400番ぐらいで再研磨のあと、再度油に漬け今度は乾かないうちに400番耐水ペーパーで濡れたまま研磨、拭き取り後乾燥させて完成です。

 昨日作ったのは小さなシュガーポット用で、いささか少女趣味ではありますが、柄の部分にハート型の切り抜きがあります。
94/10/17 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(49)

 おじんさんのご指摘はいつも核心をついています。スウェーデンから取り寄せたノミの研ぎに実は困っています (^_^;)。

 キングの1000番で回しながら丸ノミを研いでいますが、刃返りがでにくいのです。今は砥石に溝をほるべく、一箇所を窪ませながら研いでいますが、どうも最初の切れ味がでない。
 いろいろと洋書を調べると、ベルトサンダーで荒研ぎしてバフ+青棒でこすつけるて仕上げ研磨をする方法、アイスクリームコーン型(カペラではこれを使っていた)の油砥石を使って、仕上げもアーカンサスのオイルストーンで仕上げる方法などありますが、鋼だけでできたスウェーデンのノミを研ぐには工夫が必要なようで、苦労してます。どなたかいい方法がありましたらご教授願います。

 スウェーデンでの刃物研ぎは、まず下半分が水に浸かったゆっくり回る車輪のような砥石の円周部分で荒研ぎします。刃先を凹面状にへこます効果もあります。次にキング1000番か、人工オイルストーン中砥で研ぎ、仕上げはアーカンサスのオイルストーンで研いで、最後はひと昔前の散髪屋さんにあった革のベルトに研磨剤を塗ったもので磨きあげます。
 このアーカンサス・オイルストーンがほしくて方々さがしてみましたが、小さな墨ぐらいの大きさで1万円近く、やっと見つけたうすい羊羹大で3万円ぐらいしてまして、とても手がでなかった。
 ナイフはアーカンサスで回しながら研ぐとなかなかいい感じです。日本の仕上げ砥よりも堅くて平面がくずれにくい。

 しかし、一番多用していたのはキングの1000番でした。この日本製合成砥石は世界の中砥の標準のようです。
 最近になってセラミック砥石が各社から登場し、この市場が変化するかも知れませんが、ダイヤモンド砥石がキングのとって代わらなかったのは価格のせいだけではないと思います。
 「ダイヤモンド砥石は一種の逃げやからね」とおっしゃったのは井上刃物さんのご主人でした。

 砥石の平面をだす方法が少し話題になりましたが、・ブロックにこするつける。
・同じ砥石をこすり合わせる。
・分厚いガラスに金剛砂をまいてこする。
・商品名ゼブラペーパーを使う。
 などの方法があるようです。私は、おおまかでいいときはブロック使用、通常は砥石どうしをこすり、厳密に平面を出したい場合はガラスと金剛砂を使っています。
 しかし、腕のいいプロでも台直しにも使うためにゼブラペーパーを使っている人がけっこういます。これは、特殊なサンドペーパーに粘着性を持たせたものを分厚いガラスの台にはりつけてそこでこすります。
 なお仕上げ砥は平面をだすためにこするのはもったいないので、できるだけ全面を使い一部が凹まないように気をつけています。
94/10/19 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(50)50回記念アンコール特別企画

気がつくと、50回になっていた(気はついていたが)。

 もうほとんどネタが尽きていたのですが、おじんさんから「油と蝋の昔のログのありかを教えて」というMSGがあり、また油屋WWMとしてオイルフィニッシュのガイド冊子を作る必要に迫られ、今年3月に5回にわたって書いたオイルフィニッシュについての文章に少し加筆し、3回にわけてアップします。

 誰もアンコールしてはいないのではありますが、自己満足特別企画としました(^^)。

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         ”オイルフィニッシュについて”

オイルフィニッシュ(1)>乾性油、ヨー素価など

1,植物油の種類
 「油は酸化して悪くなる」と言いますが、油の分子の中に酸素がひっつきやすい二重結合というのがあります。この二重結合をどれだけ持っているかが油の性質を知る上で重要で、そのため、この部分に酸素のかわりにヨー素をひっつけて結合するヨー素の量から、二重結合の多さ、言いかえれば酸素のひっつきやすさを測定する。これがヨー素価。
 ヨー素価が大きいと酸化しやすく、重合して樹脂化しやすい。液体の油が個体の樹脂になるわけでこれを「油が乾燥する」と表現します。

 このヨー素価を目安に、乾燥しやすい乾性油、ほとんど樹脂化しない不乾性油、中間の半乾性油の三つに分類されます。

・乾性油:ヨー素価130以上(主用途=塗料)
  例;亜麻仁油(130)、桐油(160)、荏油(200)
     クルミ油(150)、アサ油(160)

・半乾性油:ヨー素価100〜130(主用途=てんぷら油)
   例;ゴマ油(110)、ワタ油(106)、ナタネ油(100)、ダイズ油

・不乾性油:ヨー素価100以下(主用途=毛髪など)
   例;ツバキ油(31)、オリーブ油、ヒマシ油、ヤシ油

 食用では、酸化した油はダメですが、燈用や仕上げ用にはいい場合もあります。荏油は独特の甘味があり食用にも用いられるが、夏場は酸化が極めて速いので、食用では出荷をしないとのこと(鹿児島、鹿北製油さんの話)。

2,昔の植物油の利用
 食用の他、電気のなかった昔、夜のあかりに東西を問わず用いられた。西洋ではオリーブ油、コルザ油、シード・オイル、熱帯地方ではヤシ油、クワイ油、ヒマシ油、アマニ油などが、日本では大宝令に地方からの貢献を義務づけた油として、ゴマ油、アサ油、荏油などが記録に残っています。
 乾性油は防水や補強剤として雨傘、合羽、油紙にも用いらた。この方面での利用が現在のオイルフィニッシュの用法に近いと思われます。

3,オイルフィニッシュとは
 広い意味では、単に油を木に塗るだけの仕上げ方法から、デンマーク仕上げと称する何回も乾性油を主成分とする塗料を塗り込んで乾燥させたものまで様々であるが、現在では、乾性油系のオイル仕上げ剤を充分に塗布し30分ぐらい放置した後、拭き取り乾燥させる手法をさすことが多い。

 オイルフィニッシュの利点・簡単で失敗がほとんどない(唯一の失敗例は拭き取り不十分によるベタツキ)。
・特別な用具不要。
・拭き取るのでホコリに神経質にならなくてもよい。
・皮膜を形成しないので自然な感じ。
・浸透するので、木質そのものを補強する。

 オイルフィニッシュの欠点・無塗装とまちがう幾分頼りない仕上がり。
・乾燥が遅い。
・耐水性が悪い(水気の多いところには不適)。
・黄色になったり、最後は黒くなったりする。
・一年に一度程度、オイルを再塗布したほうがよい。

 このように欠点も多いが、手軽に自然な仕上がりが失敗なくできるので、時間に余裕のある素人木工家やクラフトマンの多くがこの手法を愛好している。その反面、手抜き仕上げ法としても有名 (^_^;)。


オイルフィニッシュ(2)>塗装は必要か

 「無塗装が一番いい」と大好きな工房のクラフトマンはよく言います。家でも、TVキャビネットやAVラックは松で何にも塗っていませんがいいあめ色になっています。一方松のテーブルはチークオイル仕上げですが、防水性に乏しくコップの丸い輪のあとや、シミがいっぱいあり、無塗装でも変わりなかったかもしれません。

一般的な塗装の外見ではない機能面での目的は・表面を固くしキズを防ぐ。
・汚れ、水分がしみこまないようにする。
・空気を遮断し湿度変化による変形を少なくする。等

 これら全ての目的に合致する塗料はウレタンに代表されるような合成樹脂塗料です。
しかし、ウレタンニス等はどうも好きになれない。なぜかというと、せっかくの木の質感を悪くしてしまうから。

 オイルフィニッシュを選択することは塗膜の固さを追求せず、防水性を犠牲にしても木の質感を大切にしたいという選択にほかなりません。それならばいっそう前記のように無塗装が最高という意見もあります。

 一方、オイル仕上げによって濡れ色等、木の持ち味が変化し、良くなる場合がある(チークが有名)。ですから、外見上では相手の木を良く見て無塗装を含め最適の仕上げ方法を選択することが重要です。

 最近ではさらに、天然素材指向という側面が加わります。もともと木の中に存在した蝋や油を使って塗装するということ自体に価値があると思うのです。

 京都の山中油店のご主人の話では、人間の肌からでる油にもっともちかいのが椿油らしい。クルミ油やオリーブ油もちかいでしょう。無塗装の木の椅子を何年も使い込むと人の肌から出る油によってすばらしい光沢が生まれてきます(ナカシマ展でも無塗装のコノイドチェアーが1つありました)。「これが最高の塗装です」とおっしゃる人は多い。人間と木の家具との時間的かかわりが光沢となってあらわれるのです。

 このように考えてくると、自ずから、塗料や、仕上げ法の選択をどうすべきかわかってくると思います。オイルフィニッシュだけをとってみても、油の選択、濡れた状態での研磨の是非、塗布回数、樹脂塗料との併用など、方向が決まってくるのではないでしょうか。

WWMおじさんの木工講座(51)50回記念アンコール特別企画

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オイルフィニッシュ(3)>油の選択

 油にもいろんな種類がありますが、個人的指向から、植物油にその範囲をしぼりたいと思います。実際のところ塗料にひろく使われてきた油は原料がほとんど植物油です。使用経験に基づき、リストアップし、簡単なコメントをつけてみると・・・。

1、乾性油(木に浸透し、樹脂化することで木の補強、防水、対汚染性、美化をねらう)
 ・亜麻仁油-------乾性油でもっともよく使われる。乾燥がおそい。黄変する。
  (煮亜麻仁油)-煮て重合度を高めただけではなく、乾燥促進剤含む。
  (ボイル油)---亜麻仁油だけではなく石油系のオイルも含んでいる。
 ・桐油-----------やや防水性がある。亜麻仁油よりも光沢があるように感じる。
 ・荏油-----------最も乾燥しやすく、多少ニスのような光沢がある。

2、半乾性油(乾性油に準じた目的で使用)
 ・胡麻油---------温度をあげて塗布しないとべたつく。
 ・菜種油---------  同上       。サラダオイルでも同じ。

3、不乾性油(硬化しないので、何回も時間をかけて塗り込める。人間の油による仕上げに近い)
 ・オリーブ油-----最初は湿った感じで無塗装に近いが数年たつといいあめ色に。
 ・椿油-----------あまり経験はないが、無塗装に近い感じ。
 ・クルミ油-------クルミの実を綿の袋で包んで雑巾のようにみがくといいらしい。

4、亜麻仁油ベースのメーカー製オイル(成分は亜麻仁油、乾燥促進剤、アルキド等の樹脂、溶剤で、乾性油の欠点を補う)
 ・チークオイル(各社)--溶剤の臭いが嫌い(カンペ製)。やや黄色みを帯びる。
*・WATCOオイル----臭いもすくなく自然な感じで使いやすい。高い。

5、桐油ベースのメーカー製オイル(成分は桐油、乾燥促進剤、アルキド等の樹脂、溶剤)
 ・DANISHオイル----海外の本によくでてくる。残念だが使用経験なし。

6、樹脂分を比較的多く含むメーカー製オイル(これらはオイルフィニッシュの手法で塗布されるが本質は別の塗料であろう)*・デュポン、シーラーアンドフィニッシュ--フェノール樹脂、コーパル樹脂含有?
 ・ワシン、木彫オイル-------------------ウレタン樹脂塗料?

7、ワックスとの混合タイプ(主成分は亜麻仁油。そこに蝋を溶かし、溶剤で濃度を調整したもの)*・OSMOカラー---ドイツ製の植物油が主成分で安全性を強調した新しいタイプ。
・OXカルナバ等---蝋をやわらかくする溶剤として亜麻仁油を用いた。 OSMO
 (WWM特製)  より蝋分が多く溶剤を含まない。

*印のオイルには油性染料を含む着色仕様がある。もちろん、全ての植物油には油性染料(オイルステインでも可)を加えて着色できる。


オイルフィニッシュ(4)>塗布法について

まず、木地が仕上がっていることがどんな塗装でも大切。
 一般的には220番以上のサンドペーパーで研磨などと言われていますが、仕上げ鉋でスカッと削ったままの朝日をあびて白く光るテーブルの天板などはすばらしいもので、私はうまく仕上げ鉋がかかったら、サンドペーパーは使いません(こぐちには使う)。本には鉋仕上げでも、600から1000番程度で研磨したほうが吸い込みがいいと書いている場合がありますが、鉋仕上げに一度でもペーパーをかけると曇ってしまい、もったいない。特に針葉樹では絶対に鉋仕上げです。

オイルの選択は(3)にいろいろ書きましたが、私の指向はやはり天然植物油です。
また無塗装も価値ある選択と思います。ナチュラルな仕上がりでは、亜麻仁油が一番ポピュラーでしょうが、椿油などの不乾性油の利用も、欧米のオイルフィニッシュとはちがう奥ゆかしい仕上がりが期待できそうで、今後試してみたいと思います。

 さて、オイルフィニッシュのやり方は簡単です。代表的乾性油”亜麻仁油”を使用する場合を想定して書きますが、ポイントは次の2つに絞られます。

1,充分に塗布し、浸透させる。
2,20〜30分後、過剰な油をしっかり拭き取る。
(20〜30分の時間は油が導管中の空気と入れ替わるのに必要な時間)3,充分に乾燥させる。


■塗布方法の例・大面積ではスポンジ(セルローススポンジがいい)で塗る。
・小物は油に漬け込んでもよい(ドブヅケ)。
・浸透性をよくするため、亜麻仁油は沸騰しはじめるぐらいに熱して塗る。
 (ハケは熱でカールしたりするのでダメ)・溶剤で粘度を下げる。
 (溶剤蒸気の毒性に注意。溶剤は純植物性テレピン油、ミネラルスピリット等)

 加熱塗布がいいようです。理由は、溶剤蒸気の危険性がなく、また油が薄くならないから。また大きな布でぬると、木より布が油を吸い込んでしまう。小さな布かタンポがいい。

■拭き取り・拭き取ったところがわかりにくいので、順序を決めるなどしてもれなく拭き取る。
・布がボトボトになったら取り替える。
・導管から噴き出して来る場合は1時間ごとによくみて拭き取りを続行。
 (シーラーアンドフィニッシュで拭き取りに泣かされたことがあった)

【PS】濡れた状態での研磨する方法がありますが、木のカスと乾性油のミックスを導管につめてシーラーのようにしてしまうので、好みではありません。この方法で仕上げるとツルツルになりますが、表面が樹脂っぽくなり、クリアラッカー仕上げに近くなるように感じます。急ぐ場合は別ですが、1回目のオイルがよく乾いてから400番〜600番で再研磨し、よくホコリをとってから2回目の塗布をしたほうが良い考えています。
 塗布回数は4回ぐらいで、最後にカルナバワックスで磨くと光沢がすばらしくなるようです。が、使い込んで仕上げていく考え方では、さらっと1回〜2回オイルをしみこませればそれでよいかもしれません(特に鉋仕上げの針葉樹の場合)。

*****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(52)50回記念アンコール特別企画

オイルフィニッシュ(5)>その他余談
 オイルフィニッシュの講師面して書いてきましたが、何のことはない、オイルフィニッシュというのは木に油を染み込ますだけの手法であるということがわかってきましたね (^_^;)。
 誰でも失敗なくやれて、自然な仕上がりで、天然素材をアピールできて、「塗装してないの?」という質問に「これが自然でいいんです」と返答できる・・・これがオイルフィニッシュというわけ。

 ただ、バリエーションが考えられます。

■耐水性が要求される時
 スパーワニスが、自然な仕上がりと耐光性、耐水性とも良好でよさそう。スパーワニスは桐油を30%含み、樹脂としてロジンエステル(松脂の樹脂成分のエステル)を含む、ヨットのスパーに塗られた油ワニス。これをかなり薄めて何回も塗る。かなり天然素材に近い塗料でしょう。亜麻仁油とスパーワニスとテレピン油を混ぜて使っている文献がありました。

 また、薄めたウレタンニスを塗り込み、最後にタンポ塗りすれば、テカテカは防げますが、もっとオイルフィニッシュ風に使う方法は、ウレタンニス:煮亜麻仁油:溶剤=3:2:2の割合に混ぜて布で塗り込みます。

 桐油は亜麻仁油に比べ少し耐水性があります。3回ぐらい塗れば効果が少し期待できます。

■着色したいとき
 オイルステインを少量油に混ぜればOK。本来は油性染料を混入すべきですが、少量の入手は困難ですし、完全な撹拌がむつかしそうです。
 桜、カバ等の散孔材は吸い込みの差から、色ムラがでて汚くなることがあります。
うすめて何度も塗るようにしたほうがよい。濃い着色は色落ちします。

■アンティーク家具の修理には不向き
 と洋書に書いてありました。理由は一度オイルを使うと、染み込むので最初はよくても次第に色がつき、再補修が困難になるからとのことでした。

■子供が口に入れても安全な仕上げ剤
 として、小児用下剤のミネラルオイルを最も安全な塗料としてFWW誌でとりあげていました。これは、どこで入手したらいいかと思案していましたら、家にあったピジョン・ベビーオイルの主成分がミネラルオイルで木に塗ってみたらなかなかよかった。
 どなたか、やすい「ミネラルオイル」をご存知でしたら教えて。ピジョンは高い。

オイルフィニッシュ(6)>北欧を見てから(5)までは、昔のMSGです。再読してみて、まちがった事は言っていないように思いますが、夏以降、前と考え方がちがう点をあげると・・・。

■広葉樹のオイルフィニッシュにはサンドペーパーを使って仕上げたほうが良い。
 鉋仕上げの場合、あまりにもツルツルに仕上がるので、オイルが吸い込まない。また、桜などでは場所や木目のちがいによって吸い込み具合が異なることがある。
 400番から600番のペーパーで研磨すると、オイルの吸い込みが良くなりかつ吸い込み具合が均等化する。特に油による濡れ色を出したい時は、鉋だけでは吸い込みが悪くて効果が期待できません。

■ウェット研磨の是非について
 何回も油を染み込ませるデンマーク仕上げではこれによってさらに油を押し込んでいくようなねらいがあります。2回目以降はあまり油を吸わないので、この作業によって長年かかって人間の油によって自然に美しくなった木に早く近づくのかもしれません。

■亜麻仁油にも種類がある。
 北欧で使われている亜麻仁油はウイスキーぐらいの色がついています。精製していない絞っただけの亜麻仁油らしいのです。日本では入手困難なようです。

■亜麻仁油による黄変
 幾分黄色く変色しますが、これをさけるために少量の亜鉛白顔料を加えることがあります。なお、顔料を油に混入するには、顔料粉末を少量の油で練り、30分ぐらい放置し、なじませてから油を加えていきます。

■乾性油の乾燥を速めるドライヤーは毒性が強い
 スウェーデン語ではこのドライヤーを”病気の源”という意味の単語で表しています。乾燥が遅くてもかまわない場合は使わない。

■木のてんぷら?
 これは偶然発見したのですが、加熱した亜麻仁油にスプーンをほおり込んだら、細かい泡がいっぱい出てまるでコロッケを揚げているみたい。これでコンガリとキツネ色になり、いい色に揚がりました(^^)。ただし、この方法で大丈夫かどうか不明。

■蝋と亜麻仁油の混合
 亜麻仁油に少量のカルナバ蝋を溶かしたクリーム状のオリジナル塗料”OXカルナ
バ”は塗りやすく、自然な仕上がりでいい。欠点は、乾燥に時間がかかること。

−−−−−−−−−−−−−− 油の巻、完  −−−−−−−−−−−−−−−−
 おじんさん、お役にたてばどんどん使ってください。誤解しているところもあると思いますが・・・。

 なお、油蝋については、 図書館で何回も借りてきている”深津 正著、 「燈用植物」法政大学出版局”に詳しく書かれています。この本を読むと、電気のなかった時代に夜のあかりとして植物油が広く使われ、また蝋がいかに貴重な贅沢品であったかがよくわかります。
 油の神様、山崎の森八幡宮を教えていただいたすこやさんにも感謝。この神社の参拝によって油の道が神様のおつげ?によって開かれたのでした(^^)。
 もし関西でオフをするならば、この八幡さんの境内にあるてんぷら屋、”三笑亭”
でやりましょう。

                      **** Wood Work M ****

WWMおじさんの木工中継(53)

 木工講座として披露するネタもかなり尽きましたので、これからは気が向いた時に自分がやったことを日記風に書いて行こうと思います。これに伴い、連載名を”WWMおじさんの木工中継”に勝手に変更させていただきます (^^)。 なお、連載番号は整理しやすいので、続き番号にしておきます。皆さんからの意見、質問、アドバイスを楽しみにしています。

 さて、先日は作品も一段落したので、以前から気になっていた鉋の刃口に埋木をしました。
 数年前、今はない角兵衛金物店で売れ残りの小鉋や反り台鉋を格安で買って今も使っていますが、その時はわからなかったけど、最初から刃口が広かった。
 いつまでも売れ残っている道具というのは、何か職人さんが敬遠した理由があるのです。鉋を少し使えるようになると、刃口の広い台は買って帰って必ず刃口を狭くする手間がかかるのを知っているわけです。

 刃口を埋木によって狭くするやりかたは、全く習ったことがありませんが、見様見真似でやってみることにしました。カペラのベン先生手製の洋鉋では刃口に摩耗が少ないように、樫か楢の木を木口を見せるように溝をきって埋め込んでいましたので、私もこの方法で。ルーターやトリマを使えば深さが決まり便利ですが、この手の回転刃物はどうも好きではないので、のんびり手鋸とのみで溝を掘ることにしました。

1,楢の厚さ1センチ弱の板をさがし、小口をテーブルソーで真っ直ぐに切る。
2,それを刃を抜いた台にのせて、よくとがった2Hの鉛筆で型を取る。
3,鉛筆の線よりほんの少し内側を胴付き鋸で約5ミリぐらい切り込む。
4,鋸引き線の内側をのみを使ってきれいにさらう。
5,楢の板を現物合わせで、きっちりと収まるように少しずつ削って溝にピタットは
 まるようにする。
6,木工ボンドをつけて板をはめ込み加圧する。
7,乾燥後、のこで楢の板を切る。
8,鉋で木の端を欠かないように注意しながら、台の面とほぼ面一にする。
9,あとは、鉋台の仕立てをするが、木口なので飛ばしてしまわないように、最後は
 しっかりした平面(手押し鉋の定盤を用いた)の上に180番のサンドペーパーを
 置いて研磨し刃口の直線をだした。
10,刃を少しずつ入れながら、刃口の調整をする。
11,最後に滑りがいいように椿油を埋めた木にしみこませてできあがり。

 結果は、埋木をすることにより幾分刃口が高くなったので、食いつきがよくなり、また刃口が0.5ミリ程度になり小鉋でも仕上げ鉋みたいな使い心地になって気分爽快でした。
 刃口が狭くなると曲線の外側を削るのがたいへん楽になります。広いと食い込んでガッガッと跡がついたりします。

 刃口の埋め方はどの方法がいちばんいいのでしょうか?溝を切らずに刃口に台形の木を埋め込む方法もあるようですが・・・。

94/10/28 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工中継(54)

 今日は朝からあまりに物が多い我が6畳工房を模様替えしようとして、ひとつの棚から物を出して掃除しただけで、また元の通り納めてしまいました。どうにも6畳が工作室兼、電動機械室兼、集塵装置室兼、材料置き場兼、油屋倉庫、・・・ではもう限界(^_^;)。

 さて、今日の結論で、壁掛け式の道具箱を作ることにしました。スウェーデンから取り寄せたカービングのみを入れる場所がないので、この機会にカペラにあったようなウォールボックスを作ってみようと思ったのです。
 大きさは幅40センチ高さ60センチ奥行き20センチの箱で2枚の扉がついてホコリをシャットアウトするはず。

 材料は、職場でもらってきた12ミリ厚のラワンの板がかなりあるので、好きではないが資源の有効利用ということで少々薄いのは我慢してこれを使うことにしました。
ホームセンターで売っているような材料です。ラワンは塗装方法によっては重厚な感じがだせるので、今回はオイルではなくちょっと珍しい二スを使うつもり。
 手にはいれば、ニレか楢の20ミリ厚の板で作ればいいものができるでしょう。

 設計図などほとんど書かないでスタート。枠になる幅20センチぐらいの板を用意します。ラワンにも白いのや赤いのがあるので、今回は白いので枠を作ることにしました。

■枠の木取り1,プレーナーがすでにかけてある材料なので、まず最初に木端を直線にします。私は手押し鉋を使いましたが、お持ちでない方は定規を使って丸鋸で切れば充分な精度で直線になるはずです。トリマやルーターにストレートビットをつけ、定規を使って端を直線にする方法もいいでしょう。

2,1の直線を基準面として板を直角に切りそろえます。スコヤかさしがねを使って墨を入れ、鋸で切り鉋で正確な寸法にします。私はテーブルソーを使い、まず一方を正確に切断し、この面を基準に寸法決め治具を使って40センチと60センチの長さの板をそれぞれ2枚ずつ切り取ります。手持ちの丸鋸で2枚一度に直角切り治具を使って切れば、それもいいですね。

3,木目や木の色に注意しながら、木の前後、左右など使いかたを決定し、鉛筆で印をつけます。板の表裏や使う場所を決めるのは以外に悩みますよ。最初の頃はあとで後悔することが多いでしょう。木表木裏は乾燥して反る方向を考えて使います。

 枠の接合は、練習の意味をこめて蟻組とし、以前作った蟻ほぞ製作治具を使い、テーブルソーでオスを作るつもり。この治具はなかなか面白いものです、お楽しみに。

94/10/30 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工中継(55)

 タブテールのお話。鳩の尻尾の形に似ていることから、タブタールと呼ばれるのですが、日本の蟻組ににています。しかし、できあがりの雰囲気や加工の仕方はかなり日本と欧米では違うようです。
 日本ではオスとメスが等間隔で配置されているのがおおいですが、欧米のものは極めてオスが小さく、まさに鳩の尻尾が並んでいるように見えます。

 タブテールの斜めの角度は、日本も欧米もほぼ同じで、約80度。シェーカーなどの古い木工書を見ると、6センチ進んで1センチ上がる坂の勾配だそうです。ただし、カペラでは、美しいタブテールは板厚を1とするとタブテールの細い幅が8分の1で広い幅が8分の3という割合を勧めています。

 日本的な等間隔のパターンは板の幅を等分し、その線を傾斜させます。引き出しなど同じパターンを複数作る場合、私はベニヤ板を使ったアリ定規で墨付けしています。
 欧米風なやりかたは、オスかメスのどちらかをまず作り、それを定規にして相手の木に墨付けします。メスを先に作ると、木口に墨付けすることになり見にくいし書きにくいので、私はオスを先の作ってからそれを定規にしてメスを作っています。

 さて今回の道具箱では板の幅22センチの板を使いましたので、約3センチ間隔でタブを7つ配置したタブテールにしました。
 以前は全ての加工のための線を木に書いていましたが、この作業だけで疲れました。
ですから、欧米流のやり方の方が合理的ではないかと思います。

(オスの加工)1,まず板の厚みを正確にけびきに移し、正確に切断した板の木口から板の厚みだけ離れた線を入れます。

2,約7等分するような線をもとにタブテールの墨付けをする。

3,その線のすぐ外側を縦引き鋸で切り込みます。この時、胴付きの縦ひき、ホゾひき鋸があれば申し分ありませんが、普通の胴付き鋸やレザーソーでもOKです。

4,タブテールの間の不要な部分をのみで落として行きます。コツとしては、けがき線より0.5ミリから1ミリ手前を板の両面からレの字型に切り込んで行きます。荒く取ってから、けがき線にのみを入れて正確に仕上げます。この時タブテールが斜めですから、それを傷つけないように充分注意します。

 ただし、私はこの工程をテーブルソーと簡単な治具を使って機械で縦ひきしています。
94/11/03 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工中継(56)

 タブテールのオスのテーブルソーによる機械加工ですが、Tage Frid(デンマーク人で、今は米国在住のFWW誌の関係者)の本にそのアイデアの原型がのっています。

(治具作り)1,まずベニヤ板で約80度の角度の定規を作ります。

2,次に角度定規を丸鋸刃にあててテーブルソーの横切りマイターゲージを80度にセットします。

3,治具を作る為の幅10センチ長さ30センチぐらいの木をマイターゲージにとりつけ、鋸刃を約10ミリだし中央付近に斜めの切り込みを入れます。

4,上の10ミリの斜めの切り込みにピッタリはまる堅い木で作った長さ3センチほどの板を接着剤をつけてはさみます。これでできあがり。

(治具の使い方)1,斜めにセットしたマイターゲージにこの治具をクランプなどで固定しますが、作りたいタブテールの間隔が30ミリなら、鋸刃と切り込みに入れた堅い小さな板との間隔が30ミリになるようにします。

2,タブテールのいちばん端は、目測で切り込み、つぎにこの切り込みを上の堅い小さな板上に移して次々に切り込んでいきます。すなわち、木口に80度の斜めの平行線が30ミリ間隔で並ぶわけです。

3,今度はそのまま、マイターゲージを逆方向の80度のなるように角度定規を使って回転させます。そして同様に最初は目測で切り込み、あとは治具をたよりにサッサッと切り込みを入れます。
 これで木口に台形型の切り込みがきれいに並ぶはずです。

 あとは、手加工で不要な部分をノミで板の両側からレの字型に切り込んで落として仕上げます。

 メスのほうは、このオスをしっかりと相手の板の上に押さえ、よくとがった2Hの鉛筆で型を取ります。そして、あとは慎重に胴付き鋸で切り込み、のみで不要部分をおとします。この時、鉛筆の線をぎりぎりで残すように注意します。最後はノミで正確に仕上げます。
 あとは現物合わせで微調整しますが、オスは機械加工で真っ直ぐ切れていますので、さわるのはメスだけにします。

 昨日の加工では、自分でも「なかなか上手くできた」と感心しました(^^)。木が柔らかければ、少々きつい目に作ってもいいですが、楢などの堅い木は無理がききませんのでピッタリ作るために鉛筆ではなくニードルを使って型をとるほうがいいでしょう。しかし、見えにくいので鉛筆のほうが私は好きです。

94/11/04 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工中継(57)

 いつものことながら、設計図を詳しく書かずに作りながら考えるのでつい欲がでてきます。今回も予定になかった引き出しを棚の下に作りたくなり、棚板を下部にいれることにしました。

 板が薄いので、6ミリのストレートビットをつけたトリマで側板に溝を掘ります。
まずトリマのベースと刃の間隔を実測しておきます。私の場合は42ミリ。そして、掘るべき溝の位置から42ミリ離れたところに直線が確かな板をクランプで固定し、深さ5ミリの溝を掘ります。

 棚板の方は、道具箱の内寸+9ミリ(片方4.5ミリで溝の底は0.5ミリ遊び)の長さに正確にテーブルソーで切断し、両木口から毛引きで4.5ミリのところに線を入れます。この線に当て木をして畦引き鋸で切るか、テーブルソーと縦切りガイドをうまく使って両側から切り、6ミリ幅の凸状に加工します。小口に毛引きで強い目に切れ込みをいれてあれば、簡単に加工できるはずです。微調整は際鉋でします。

 文で書くとたいへんなようですが、要は、6ミリの溝を掘り、そこにピッタリあうような凸状の木口に加工するわけです。

(余談)
 昨日、三木の金物祭へ行ってきました。さすが金物の町だけあり、見る物は多かった。普段は問屋さんとの関係で製造者が直接お客に売ることはできませんが、この日ばかりは、それができるので、売っている人も楽しそうでした。

 私は、懐かしい手回しのグラインダーを1000円で買いました(^^)。クレノフさんの本で、のみの研ぎを効率的に行うために、手回しグラインダーと簡単な治具で刃先を凹面状にする方法が書かれていましたのでこれをいちど試してみたかったわけです。
 もう一つは7寸の造作用両刃鋸です。これはかなりいいものですが、なんらかの傷があるもので正式に出荷できないものです。私のは、縦引きの端の刃が1本欠けています。2000円。あさりがほとんどないので、通しほぞの出た部分を切ったり、胴付きでは胴がじゃまになるような時に便利そうです。なかなかの切れ味でした。

 関西の方で木工や刃物に興味のある方は一度は行かれたらいいと思います。
94/11/07 *****Wood Work M*****


WWMおじさんの木工講座(58)

 またも名前を木工中継から木工講座に変更します。理由は、中継ではこの頃生活のための仕事がいそがしいので書き込みが進まない。それで、背伸びして講義とすれば、自分の勉強にもなるだろうから、ネタが完全に尽きるまでガンバってみようという気になります。たびたびの変更スミマシェーん。

 道具箱は外枠と中間の棚板と縦板を組み込んで仮組OKでした。あとは裏板ですが、本当は無垢の板をいれたいのですが、今回は室内の在庫端材を有効利用して減らすことも目的なので、5ミリのシナベニヤを使いました。最近のシナベニヤはだんだんと質が落ちています。表面の板の厚みは0.3ミリぐらいかもしれない。オーバーかもしれませんが、0.5ミリは絶対にない。
 ですから、自分は買ってもらう家具にこの様なシナベニヤをたとえ裏板であっても使いたくありません。特注すれば仕上げ鉋がかけれるような楢のツキ板は入手できますが、高価ですし、なんか騙しているような気になるので今後も使わないと思います。
 悩みは引き出しの底板で、こればかりは、シナベニヤを入れるのがいいかと思っています。幅10センチ、厚さ1センチほどの無垢板をさねを入れて並べる方法もありますが、そこまでこだわるメリットはないように思います。

 裏板を入れる方法にはいろいろありますが、一般的な方法はa,溝を切って下からはめ込む。
b,枠板後部を段欠きして接着剤併用でうちつける。
のどちらかでしょう。aの方が高級感がありますが、中の奥行きが短くなります。
一方、bは中のスペースを最大限に生かせるし、比較的簡単です。

 今回はbです。枠の後ろに幅深さとも6ミリの段欠きをします。

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# # # # # 裏板段欠き
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     正面図       側面図

 段欠きは手加工の苦手なところでしょう。手加工では、内側から幅、後ろから深さをれぞれ毛引きで切り込みます。柔らかい板で3ミリぐらいなら毛引きだけで切ることも可能です。それ以上はこの線に真っ直ぐな板をクランプで固定し、畦引き鋸でおおよその深さまで切り込みを入れ、欠き取ったあと、際鉋で仕上げればうまくいきます。際鉋というのは、刃が斜めになった小鉋で角の凹んだ部分を平に仕上げるのに重宝ですし、ほぞの微調整にも便利ですから、ぜひ一丁、できれば左右2丁持って下さい。
 しかし、トリマかルーター、もしくはテーブルソーがあれば簡単ですが、それでも隅の部分は最終的にはノミで仕上げることになるので、毛引きで切れ込みをいれておくことは大切です。
 今回は6ミリのストレートビットをつけたトリマに平行ガイドをつけて、段欠きしましたが、以前はテーブルソーや台にとりつけたトリマで板を動かして行っていました。どちらでもいいのですが、トリマを片手で持って安全には注意しながらも、手軽に加工するというのは、現代の木工趣味ならではかもしれません。なお、トリマ使用時は、防護メガネをしっかり着用して下さい。木屑が目に入り、目が開けられなくなったことがありました。
94/11/11 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(59)

 家では壁掛け道具箱はかなりできあがっています。自分の物なので、ああでもないこうでもないとなかなか進まない。友人のクラフトマンや私の師匠は、「自分の物には力がはいれへん」といっていましたが、私が今までに見学した工房で成功し世間の評価も高いところは、工房の道具入れに至るまで、かなり入れ込んで作っている所が多かった。

 さて、枠になる4枚の板の加工が終わったら、本組です。蟻加工は時間がかかりますが、組み立てればほぼ直角が自然とでていると思います。
 板を組み立てる時まちがわないように作業台の上に並べ、ボンドを塗ります。最近は、刷毛で塗るのが一番能率良いことを発見し、使い古しの水彩用平筆でボンドを塗っています。
 のんびりしていると乾燥してしまうので、塗るべき所をしっかりと頭に入れ、要領よく塗っていきます。角をひとつずつあて木をして木槌で軽く叩き、入れていきます。全部を組んでから、ハタガネをかけます。このハタガネをかける作業というのが簡単なようで、経験がものを言います。
 蟻組みの場合メスの方を主に加圧しますが、オスの方も板の反りなどで浮いていることがあるので、良くみてこちらも加圧します。圧をかけすぎると、かえって直角がくるったり、ひねりがでたりします。おじんさんも言われていたように補助的に使うのが本当の使い方です。
 組み上がったら、スコヤかさしがねで直角がでている(”カネがでている”と表現する)かを確かめ、狂っているようなら、手で押さえたり、対角線状に木の棒を入れたりして接着剤が乾くまでにコーナーを直角にします。

 実は、今回気を抜いて少し失敗しました。オスの方を良くみてなかったので、すこし隙間ができてしまいました。また、「自分の物や」からと、あて木をせずにハタガネを軽くかけたのですが、はずしてみると、何箇所かで、金属のアク?で黒く汚れていました。じゃまくさいけど、手を抜いてはいけませんね。

 2時間ぐらいたてば、完全には乾いていませんが、注意すれば次の加工ができます。裏板にする5ミリのシナベニヤを正確に切り取り、裏から段欠きした枠に接着剤を併用して、はめ込みます。短い真鍮釘を12カ所ぐらいに打ってベニヤを押さえます。おっと、その前に棚板などを後ろからすべらせて入れておくのを忘れないよう。

 もし、蟻組みにかなり目立つスキマができていたら、このスキマを鋸でひきこみ、薄い板をボンドをつけて入れます。このような手直しを丁寧にやればスキマはまずわからないようになります。

 こうして外側ができた道具棚は、蟻加工を除いて、なんか平凡な四角い箱で、もっと工夫や遊びをいれないと面白くないと思いました。


94/11/13 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(60)

 細かい道具をのせる棚等をつける前に塗装を済ますことにしました。木には悪いけど白いラワンはあまり見栄えが良くありません。ラワンにもいろんな種類があるようで、マホガニーみたいなやつもあれば、捨てても惜しくないものまであります。

 以前、ラワンに塗って仕上がりの良かったコーパルワニスを塗ることにしました。
スパーワニス、コーパルワニス、ゴールドサイズワニスの3つを、油ワニスといい、ウレタン二スが主流の今日では使われなくなりましたが、天然樹脂、合成樹脂、乾性油、乾燥剤、溶剤でできた乾燥の遅いワニスです。
 コーパルワニスは淡褐色で、暗い色のラワンにぬると落ちついた色にあがり好きだったのですが、今回は白いラワンで、あまりいい色にはなりませんでした(>_<)。

 乾性油がはいった油ワニスは乾燥が遅いので、オイルフィニッシュのように導管に充分込ませることができます。
 180番で研磨した上に、テレピン油で2倍ぐらいに薄めたコーパルワニスを刷毛で充分に塗ります。1回目はかなり吸い込みますから、多めに塗ります。オイルフィニッシュでも同じですが、塗料が導管から木の内部に入り、空気と置換するまでに30分ぐらいかかるらしい。全体を塗り終わってから再度チェックし、塗りムラがあれば修正します。特に蟻の部分は見せる部分ですから、木口に充分染み込ませてコントラストを強調させます。

 乾燥には12時間以上かかります。特に乾性油ですから、空気と触れあうようにしておかないと乾燥しません。全体を塗った場合は、底を小さな木っ端で浮かして乾燥させる必要があります。
 今回は1日たってから、再度240番ぐらいで軽く研磨し、手で触ってザラつきがないようにします。ほこりを払ってから2回目を塗ります。今度は良く伸びるはずです。2回目は刷毛ではなくタンポでもいいです。特にオイルフィニッシュのような仕上がりを望む場合は刷毛で塗っても、過剰な塗料を拭き取る場合があります。
 私は、仕上げにあまりこらない方なので、2回目も刷毛でさっと塗って終わりにしました。油ワニスの中ではこのコーパルワニスが一番色が濃いようです。スパーワニスは淡黄色で、最も耐光性にとみ、防水性も良好なのでヨットのスパーに使われたのでこの名前になったそうです。

 ラワンを使っていると、塗装の必要を感じます。つい数年前まで、建築内装材として、また手軽な日曜大工材として頻繁に使われていたラワン材。その後熱帯雨林の絶滅が叫ばれ、ラワンがその象徴として扱われ、中学の技術でもラワンの本立てを作らなくなったり・・・。
 でも、この頃”熱帯雨林絶滅”の話を聞きませんが、どうなったのでしょう。

94/11/14 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(61)

 道具棚の中をどのようにするかは、楽しいけど迷います。これを作りはじめた直接のきっかけは、スウェーデンから取り寄せた、カービングのみ6本の収納でした。それと、鉋がいつのまにか20ほどになり、これを整理することも重要課題だったのです。

 鉋は日本の工房の多くが、壁に浮かせて取り付けた桟に逆さまにして刃をひっかけて倒立状態で保管しています。理由はよくわかりませんが、スペースをとらないことや、刃の保護に都合がいいのだと思います。そこで、まず、道具棚の奥に鉋を逆立ちさせるための45度に斜めに切った桟をとりつけました。
 そうしたら、なんとも日本風になってしまったではありませんか。カペラ流、北欧風道具箱を目指したつもりが、小鉋を倒立させて並べただけで、なんと和風に変身。
全体のイメージが仏壇のようにも見えてきた(^_^;)。鉋というのは日本のイメージを強烈に持っているようです。
 スウェーデン製のみの収納ですが、これが困った。場所が扉の裏側しかない。扉は縞模様のように逆目と順目が交互にあるラワン板をそのまま使い、裏に反り止め兼用でのみをさす桟を取り付けることにしました。

 扉というのは、どのように取り付けるか迷います。日本では枠の内側に、ピタッと収まるように扉を取り付けることが多いようですが、欧米では枠を隠すように前面全部を扉にしたり、天板と底板の端だけが見えるようにしたりが多いようです。今回は前にかぶせる方法でこれは楽な方です。
 また、丁番は日本ではほとんどバタフライ形式のものが使われますが、欧米ではかなりバリエーションがあるようです。自分の道具箱ですから、今回は安いステンレス製の普通の蝶板を使いました。

 丁番の取り付けは簡単そうで難しい代表です。最近はお金をだせば微調整可能な丁番がありますが・・・。

1,丁番を取り付ける位置を決める。
2,木と平行になるように丁番を置いて鉛筆で型を取る。(丁番を逆に折り、90度
 にして木にあてると正確に型が取れる)3,丁番全体の厚み(金属の可動部分2枚を平行にした時の厚み)を本体の方に彫り
 込むか、扉と半分半分掘るか決めて、必要な深さを毛引きでしるす。今回は本体の
 み彫り込みました。
4,ルーターで彫れば正確に深さが決められるが、のみと胴付き鋸でやれるようにし
 たい。私はほとんどのみと鋸でやっています。
5,木ネジの取り付けは慎重すぎるほど慎重に。丁番は大きく移動してやり直すのは
 できますが、0.5ミリとかの修正ができないのです。丁番の端の回転中心の丸棒
 の中心が枠の輪郭と一致するかほんのわずか外側になるように取り付けます。
  一度に全部のネジの穴をあけるのではなく、真ん中の一個でまず取り付けてみて、
 OKならば他の穴をあけるのです。
6,扉は、下に紙をはさんだりして、最適な高さに持ち上げ、注意深く1個ずつネジ
 を入れてみて、様子を見てから、最終的に取り付けます。

 はじめから丁番がうまくとりつけられた人なんていないのではないでしょうか。私も最近やっと安心してこの作業ができるようになりました(^^)。

94/11/17 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(62)

 このところ、かぜ気味で元気がでずに道具箱はそのままです。「今日こそ」と思っていましたら、近所から「芋煮会やろうよ」というお誘いがあり、3家族で月ヶ瀬近くの木津川で腹いっぱい鍋料理を食べ、帰ってから昼寝をしてしまった(^^)。

 さて、製作のほうは一息入れて、道具の保管について今まで見てきた工房などの話も交えて書いてみます。

■ノミの収納■
 WWM工房ではノミは作業台の天板下にある2つの大きな引き出しの1つに凹みをつけた木を取り付け、そこに並べています。作業台の上が広く使えるます。座式の和風作業風景を見ると、長火鉢みたいな道具箱につけた引き出しにノミをわりと無造作に入れているようです。
 以前は深さ5センチぐらいのノミ箱を作って持ち歩いたりしていましたが、携行には大工さんが使う革製のノミ入れが一番便利なようで、今この箱は女房の化粧品入れに変身しています。

 カペラガーデンでは、ノミはガラス戸がついた大きなウォールキャビネットにノミを入れる凹みのついた横木をつけて整然と保管していました。こに棚は工作室にひとつしかなくて、良く使うノミは個人持ちでそれぞれ鍵のかかる道具箱に同じ様な方法で保管していました。
 使うときは、西洋式ワークベンチには作業台と同じぐらいの幅で深さ7センチほどの道具を置く専用のスペースがあるので、ここに良く使う鉋などと共に一時置きます。

 作業に熱中してくると作業台の上にノミを何気なく置いて、刃先に手がふれて怪我をしたり、他の刃物や玄能とぶつけて刃を欠いたりするので、注意を怠らないようにします。

■鋸の収納■
 鋸は長いので、縦にして保管している所がほとんどのようです。柄の端に6ミリぐらいの穴をあけて壁に打った釘にひっかけたり、柄の先端に真鍮製のネジ込みヒートンをつけてひっかけたり。とにかくひっかける方法が主流ですね。私の所も柄に穴をあけて小物を整理している三段ボックスにひっかけていますが、美しくないので要改良です。
 昔見たK工房では壁に鋸身がはいるスリットを持った引っかけ棚を取り付け、そこに柄を上にして収納していましたが、これはなかなかきれいでした。

 欧米では弓のような鋸(ボウソー)を使うことが多いのでこれは壁にかけていましたが、小さい西洋式胴付きは専用の棚を作ってのせているのを見ました。

■鉋の収納■
 これは前回書いたように、壁に桟を打ち付け、そこに倒立状態で収納しているところが圧倒的です。私は今まで、不要になったオーディオラックのアンプをいれる所に鉋を横にして並べていましたが、数が多くなり収拾がつかなくなり、倒立方式にかえるべく今回の道具箱を作っています。
 西洋では鉋の種類がそんなに多くないこともあり、道具箱に鉋をのせる台をとりつけ、そこに置いているようでした。

 ただし、注意したいのは錆。鉋でも半年に一度しか使わないようなものが中にあり、気がつくと錆がきていたということがあります。壁にそって鉋を保存する場合、湿気をもらうこともあるので気をつけます。梅雨の時期には週に一度ぐらい刃を抜いて椿油を塗らないと、錆が進行することがあります。

■玄能、金槌の収納■
 これは、みなさんどうしておられるのでしょうか?いろんな工房の写真をみても玄能の収納については見たことがありません。WWM工房でも、この収納が一番ええかげんでして(^_^;)、棚の空いたところに大中小3種類の玄能と木槌を放り込んでいるだけです。
 北欧では、金槌は使いませんでした。使ったのは直径10センチ程の円筒形の頭を持った木槌だけで、これは倒立させて、その辺に置いていました (^^)。 叩く道具は刃物でないせいか、保管はどこでもええかげんなようです。

94/11/20 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(63)

 前回は手道具の収納について書いたのですが、スウェーデン製の鑿は扉の裏側にスリット付き丸穴をあけた板をとりつけてここにさすことにしました。

 扉はまさめの板なので反り止めはいらないだろうと思っていましたが、丁番で箱にとりつけるとやはり表と裏で条件がちがうのか少し反りました。本来なら蟻溝で吸い付き加工したり端はめを入れたりしますが、今回はええかげんにいきます。
 どうも今回のラワンでは手間のかかる加工をする気にならないのです。ラワンには申し訳ないけれど、時間をかけて作るだけの価値がでないのです。自分の工房の棚ですから、機能だけで充分でしょう。

 扉のノブは出っ張りをなくしたかったので採用せず、扉の板に指をかける貝殻型の穴をカービング鑿で掘りました。厚さ12ミリの板に深さ8ミリぐらいの直径4センチほどの半円型にほりこみ、半円の弦にあたるところに指がひっかかるように小さな丸刀を使って横溝を掘ります。
 丁番で扉を取り付けるむつかしさは前に書きましたが、今回も1回試しにとりつけ再度はずして深さを一部再調整しています。
 扉は左右2枚ある観音開きですが、この2枚の扉の噛み合わせ調整は小鉋で様子を見ながら、内側をすこし斜めに落としていきます。湿気による伸びも考えると1ミリ弱あけておいたほうが無難です。

 扉をつけた道具箱はほぼ完成です。なんとなく仏壇みたいなムードがいまいちですが、奥に鉋がズラーと並び、手前の扉ぼ裏の左には鑿が、右には各種ドリルやビットが並ぶ予定。

 本体はコーパルワニスを塗りましたが、扉はまだ何も塗っていません。オイルフィニッシュや無塗装を好んで使ってきた今、以前は好きだったコーパルワニスの仕上がりがどうも気に入らないのです。扉のラワンはいちばん味のあるところを使っているので、やはりオイルで仕上げようと思います。シットリした自然な仕上がりが最高ですね。

(PS)
 昨日いろいろ悩んだ末、安さを重視してマキタのビスケットジョイントカッターを購入しました。まだ使い込んでいませんが、自分なりの使い方ができたら報告します。
同時にボッシュのランダムオービタルサンダーも買いました。これは便利そう。

 この電動工具購入で感じたことは、マキタ、日立という小型電動工具の日本市場を独占してきたメーカーが、ボッシュをはじめとする海外の道具メーカーの参入がかなり驚異であると感じているのではないかということです。
 マキタは安い海外製品が入ってくる前に日本のユーザーにジョイントカッターを買わせてしまおうという戦略のようです。定価58000円ですが、3000枚のビスケット(1.5万相当)をサービスして3万円代で買えたのです。このトータル金額はFREUD社のものを個人輸入しようととった見積額よりも安いのです。
 ボッシュも円高を背景に定価をかなり下げてきています。このサンダーも運良く販売店用のサンプルの各種研磨紙など、5000円相当をただでもらえました。本体の購入価格は1万円少々ですから、実質的には非常に得したわけです。

 電動工具の購入を検討されているかたは、今はメーカーの売る姿勢の時期のようですから、かなりいい条件で買えると思いました。詳しい情報が必要な方にはメールでお知らせします。
94/11/24 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(64)

 箱物の大口注文のスケッチを書いたりしていますので、これを講座のネタにさせていただきます。

 芸術的な才能のある人は頭の中にアイデアがいっぱい詰まっているでしょうが、私はその方面の才能があまりないので、作るより設計の方が苦労します。しかし、大切なのはアイデアです。
 一般的にはアイデアスケッチを何枚か書いて、いいものを5分の1か10分の1の縮尺で正面図と側面図、必要な場合は平面図を書きながら細部の仕口を考えて行きます。製図ではJW_CADも使いますが、最初のスケッチは紙と鉛筆が一番です。

 タンスなど箱物は見かけより多くの材木が要ります。ですから、この材料をいかに少なくできるかがコストダウンの大きな要素になります。
 フラッシュ構造と呼ばれる中空構造が安物の代表ように言われることがありますが、決して悪いことばかりではなくいいことも多いのです。軽さや狂いの少なさなど、コスト面以外のメリットがあり、特にマンションなど密閉性の高い室内で冷暖房使用という条件下では、タンス、食器棚などはフラッシュの方が良い場合が少なくありません。ただし、時間経過に伴い味わいがでてくることはありません。傷は致命傷になることが多く、ここから薄板がはがれたりします。

 反対に、無垢の板を使った家具は、その存在感がすばらしいですが、とにかく重く、材料費が高く、狂いを許容できる構造を選びます。
 それで、板をドーンと使うのではなく、カマチ組と言って木の枠を組んで、その中に鏡板と呼ばれる薄めの板をはめ込む手法が使われます。カマチ組みにしても大幅に材料が減らせることはありませんが、大きな箱物になればかなりの節約が期待できます。

 フラッシュは大量生産、機械加工向きですから除外して、カマチ組みと板仕立ての2種類でスケッチを書いています。また以前から必要な材木の量や費用を簡単に計算するため、ロータス123で下のような表を作っています。

  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    部材名  材質  長さ  幅  厚み  数量  体積
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                             A
          中略

  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                        合計立米 B
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  立米単価 C  安全率 D   材料金額計 B×D×C

 実際にはもう少し複雑ですが、要は部材の縦・横・高さ・数、 立米単価、 安全率(無駄になる分を予想し、1.3から1.5ぐらいの数値)を入れてやると合計の立米数と金額がすぐに算出できる表です。
 いろんなスケッチを見ながらこのワークシートに数字を入力してみると、瞬時に材料費が算出できるわけです。

 例えば、今回の注文分32個を全て分厚い板仕立てで作ると、6.4立米の材木が必要になり、もしカマチを組み1センチ厚の鏡板を使うことができたら、4立米弱でいいのです。
 どちらの方法でいくか、木を何にするか、扉のデザインは・・・まだまだ煮つめることがいっぱいあります。

 依頼主に今日電話しますと、「急がなくてもいいですよ」ということなので、スケッチをもっと書いてみることにしました。

94/11/30 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(65)

 「このところ書き込みがないので・・・」というオルガン屋さんのMSGに、講座を書かねばと思ってしまいました(^_^;)。

 このところ例の大口注文のための、設計をしています。スケッチを何枚か書き、材料を前回の方法で概算し、使う木の量や作品の重さを予想したり。
 この作業のなかでいろいろ気がついたり考えたりすることがでてきました。

1、重さについて
 今回の両面から2人で使うタンスは高さ150センチ、幅110センチ、奥行き55センチの大きさです。これを楢などの広葉樹で板仕立てで作る場合、木の比重を0、9とするとなんと140キロ以上になってしまうのです。これは大変な重さですし、一人で作るのはかなり困難な気がします。もし比重0、4ぐらいの軽い針葉樹で作れば80キロ程度でこれはまあまあの重さです。

 また、かまち組にして側板や天板を厚さ1センチぐらいの板をはめることができたら、楢でも90キロぐらいにおさまるのです。針葉樹の場合には強度の問題でもうすこし厚い板を使うことになりますが、60キロぐらいですみます。

 一般的には、かまち組にして重さをおさえ、材料費を安くするほうに軍配があがります。空でも140キロものタンスは模様替えをするのもたいへん。こんなわけで、かまち組をしたできれば良質な針葉樹材を使ったものを考えています。


2、木の選択
 針葉樹で家具に使いやすいものは、知っている限りではなかなかありません。手に入りやすい米松はヤニや仕上がりの面で使いにくい、シベリア産紅松はつかいやすくいい材ですが柔らかすぎます。ピラーとよばれる松のヤニのすくない白い松、あるいはスプルースという選択も可能ですが、味わいという点で好きではありません。値段も高い。

 欧米でパインと呼ばれる松材は、日本の松とはかなり違うようで、オレゴンパインと呼ばれる米国産のパイン材がとてもいい好きですが、まだ大阪南港で見つけていません。 TACKさんが扱われている北海道カラマツというのはどんな感じでしょうか?

 現時点では、米材のイエローパインが値段や入手の容易さで最有力候補です。しかし先方の希望に近い色(ライトオーク)にするには何らかの着色が必要で、そのことを考えると、楢のオイル仕上げを薦めたくなってしまいます。

 どなたか素直な使い易い針葉樹でおすすめがありましたら、コソッと教えて下さい。
作品に適した木をどこでうまく入手するかというのは大きなポイントです。
 明日からの東京でも時間があれば新木場で探してみたいと思います。車ではないのでちょっと今回は無理かもしれませんが。

(PS)
 木工講座も、だいたい自分の中身を出してしまいました。この頃は製作しながらやったり考えたりしたことを書いています。ROMされている方で、質問とかご要望がありましたら、RESもしくはメールでお知らせいただけますとたいへん参考になります。
94/12/08 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(66)

 講座が少々間延びしていますので、余談に先日買ったビスケットジョインターについての話。
 この道具については、橋本さんが詳しく書かれ、またオルガン屋さんは2台も使っておられるので、 議論はかなり出ていますが、 木工になじみの浅い人にとっては、「いったいどんな道具か?」と思っておられると思います。

 最近の木工雑誌にマキタがその宣伝をのせていますので、外見はご存知の方が多いでしょう。この機械の本家本元はラメロというスイスのメーカーで、そのカタログを見ますと、”ダボ溝加工機”と紹介されています。
 ディスクグラインダーに約4ミリ幅の溝切りカッターを付け、位置決めのためのガイドがついたハンディータイプの工作機械で、フレームや突き合わせなどのジョイント加工に威力を発揮するということです。楕円形のビスケットと呼ばれるブナのチップを圧縮した木片を双方にほった溝に入れ、接着するとボンドの水分を吸ってビスケットが膨張し、ジョイントの目違いをなくす、強度をもたせるなどの効果が期待できます。

 私がこれを購入したのは、少し大きめの箱物など、狭い板を何枚か接着して幅広の板にする時に有効と思ったからです。特に1センチ厚ぐらいの板を接着するのは、イモハギでは、接着面がせまく強度がでないし、やといざねするほどのこともありませんから、こんな時に便利と思っています。鏡板を大量に作ったりする場合には重宝しそうです。
 ダボを使う方法は、簡単そうに見えて治具(センターポイントなど)や専門の工作機械がないと意外にむつかしいものです。

 今回、これを購入するのにご存知の通りかなり紆余曲折があったのです。マキタが発売したものは、初期にはガイドのガタツキなどの不満があったようで、その件に関しては橋本さんがラメロとの比較を詳しくレポートされています。それで、ラメロを購入すべく動いておりました。
 ラメロは日本の総代理店”ウエスターン・トレーディング株”を通してしか販売していません。つい最近までバカみたいな高い値段でしたが、先頃大幅値下げをして、定価80000円で販売されています。ちなみに米国の通信販売の広告では$539ということです(日本への送料は1万ぐらいかかる)。
 一方、外国の雑誌をみていますと、イギリスのFREUD社、米国のポーターケーブル社、ボッシュ社など、主要なメーカーがそのコピー機をかなり安く発売していました($130−$180)。それで、日本でもヤマヒサトレーディングが輸入販売しているFREUD社のものを個人輸入しようと見積をとったのですが、その時自宅のFAXが故障でエライ目にあった話は前に書きました。
 結論を言えば、個人輸入した場合、送料こみで2.7万ぐらいになるのです。これと別ににビスケット三箱を日本で購入すると1.2万プラスで約4万円というわけでした。私は本物のラメロを買うか、徹底的に安いものにするかどちらかに考えていましたので、WWM御用達の日本橋尾崎電気に値段を聞いてみると、マキタはこの機械を他社が日本市場に入ってくる前に売りまくろうという姿勢であったのか、ビスケット込みで4万円弱の値段だったのです。

 木工から話がずれて、なんか個人輸入の話みたいになってしまいましたが、オルガン屋さんの工房を拝見した時も痛感したことですが、欧米のすばらしい機械を知り個人で輸入するようにしていくことが、今まで独占的に会社の立場からの道具を作り続けてきた日本の工作機械メーカーのレベルをアップすることにつながることではないかと思いました。

 なお、マキタの初期不良は、最近の物はかなり改良され、実用上ほとんど問題が内容です。この改良にかんしては橋本さんのレポートの力が大きかったのではないかと想像しています。また自分の使用方法においては、ガイドフェンスを多用しないという判断で、高精度のラメロより安いマキタを選び、その浮いた予算でボッシュのサンダーを購入しました。
94/12/13 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(67)

 おじんさんはウエスターントレーディング社と長いつきあいでしたか。見積をとったらドッサリとラメロ以外の工作機械のカタログもいっしょに送ってくれました。あいにく、買わなかったので申し訳ないのですが・・・。

 さて、もうひとつの電動工具、ランダムオービタルサンダーの話です。この名前を知ったのは、橋本さんから送っていただいた木考会通信の記事からです。偏心回転する円形ディスクに穴の開いたサンドペーパーをマジックテープで固定するサンダーです。研磨力が大きく、これがあればオービタルサンダーとベルトサンダーの中間ぐらいの能力があるということです。

 ボッシュ製の見積をとってみると新型にモデルチェンジをしており、定価が25000円から、18800円に大幅に下がっています。これを7割ぐらいで買えたのでとても安かったという感じ。
 モデルチェンジによって、布製の集塵袋が紙製に変わっています。これは何回か使って捨てるものだと思いますので、不経済だと思っておりましたが、使ってみると、ほとんど粉塵が出ないのです。これでサンディングが快適にできます。またモーターのトルクというか、ねばりが日本製に比べあるように感じました。これは便利な道具になりそうです。

 欠点は替えのペーパーが高い(5枚で800円ぐらい)ことでしょうが、今回は5パックぐらい販売店用サンプルをもらえてラッキーでした(^^)。

 最近オイル仕上げをするにはサンディングが不可欠だと思うようになってきました。
特に導管の大きな広葉樹では、穴の粗密によってオイルの染み込みに差があります。
ですから、鉋で仕上げた後でも、軽く細かいペーパーをかけてやることにより、オイルの染み込みがよくなり、均一な仕上がりが期待できるようです。

 使ってみた感想は、研磨力が強いので、注意しないと凸凹の表面を作ってしまうことがるのと、木目に平行には研磨しないので、最終は手で木目にそって真っ直ぐにサンディングするのがいいということです。
 オービタルサンダーを購入するのでしたら、ランダムオービタルサンダーを勧めます。ただし、ベルトサンダーのように小物の木端を直角に削ったりするのは苦手ですから、ベルトサンダーが不要というわけにはいきません。表面研磨に限ればとても使いやすく便利なサンダーです。

 スカッと鉋で仕上げた天板はなんとも言えない光沢がありますが、時にはサンダーで仕上げる方が、実際にはいい場合もあるようです。針葉樹はやっぱり鉋かな。

94/12/15 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(68)

 今日は久しぶりにコチョコチョやりました。職場の忘年会で、よくあるプレゼント交換をするので、木っ端でコースターでも作ってやろうと思ったのです。

 木は2年前に東京のモクモクで買った、タイガーウッドという黒いシマシマがはいった黄色い木の端を使うことにしました。広葉樹と思いますが手元の本にはその名前は見つけられませんでした。オフ・コーポレーションというクラフト関係の通信販売店でも扱っています。
 ただこれを切っただけでは愛想ないので、あまり経験のないインレイに挑戦してみることにしました。黒いシマシマ模様の中に、泡を出しながら熱帯魚が泳いでいるようなイメージで、魚1匹と泡2つを埋め込むわけです。

(製作)1,板を8センチ×8センチぐらいの正方形に切ります。のこと鉋でやればいいのですが、私はテーブルソーに横切り用自作治具をつけて切りました。平面と厚みはほぼでています。

2,魚の下絵を埋める木に写します。黒い木なので埋める木は白いほうがよいのですが、適当な厚さの楢があったので、これを使いました。厚さ約5ミリの楢の薄板です。

3,糸鋸(電動でなくてもいい)で切りとり、ナイフやペーパーで凸凹を修正します。

4,タイガーウッドの上に切った楢をおいてしっかり押さえ、よく尖った2Hの鉛筆でしっかりと密着させて型をとります。

5,魚の形の線のほんの少し内側、鉛筆の線を残すつもりで、6ミリのストレートビットをつけたトリマで(深さ4ミリ)フリーハンドで削っていきます。次に3ミリのストレートビットに変えて、さらに細かいところを仕上げていきます。
 この作業は、木が小さいので固定がむつかしい。それで、丹波で上記オフさんから買った、ルーターマットが活躍しています。ルーターマットというのは、ゴムでできた編み目状の敷物で、この上に木をおくとすべらないので、バイスが使えない様な小物も、ルーターやトリマによる加工が安全にできます。

6,あとは、現物あわせで確認しながら、切り出し、3ミリ幅のノミ、などを駆使してピッタリに仕上げていきます。本当はインレイ専用の刃物や内丸の丸のみがほしいところですが、ないので時間がかかりました。

7,やっとハマッタと思ったら、尾の方に隙間ができてしまった。ここには木をはめこんだ後で木屑と木工ボンドを混ぜたものを埋めます。

8,泡は6ミリの木工用ドリルで掘った深さ約6ミリの穴に、楢の細い棒をたたき込んで、切りとって埋めます。釘の穴の埋木と同じです。

9,接着材をつけてたたき込んだあと、乾いてから仕上げ鉋をかけます。今回は逆目がでやすかったので、ペーパーをかけ、スクレーパーで仕上げました。

10,塗装は、油のテスト用ブレンドを使っています。桐油:亜麻仁油:テレピン油=3:3:1の混合です。別になんでもいいので、オリーブオイルや椿油を塗り込んでもいいのです。もちろん塗装なしでもかまいません。ただし、ワックスやシェラックは湯に弱いので不適です。

 インレイのテクニックは全く自己流です。ピッタリと作るコツがありましたら教えて下さい。

94/12/18 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(69)

 なんとか100回を目標にするが講座らしい内容はもうナイヨウ(^_^;)。しかたなく、今進行中の大口注文の試作をレポートします。少しは参考になることがあるかもしれません。

 2点透視法のタンスのスケッチを2,3枚とJW−CADで書いた簡単な図面を先方に送り、試作にはいるOKがでましたので、今日は大阪南港に木を見に行きました。
 結論を先に言うと、高級材の代表であるチークを買ってしまったのです。

 米材のパイン材か、そのほかでも比較的軽く濡れ色の濃い木を考えていました。やけてあめ色になる目の詰まったオレゴンパインがベストと考えていましたが、電話帳で何軒か調べて電話で問い合わせたのですが、置いているところはありませんでした。
それで、その中で感じが良かったこの店に行ってみました。道材、米国産広葉樹材、チークなどが得意のかなりの老舗で、今まで南港で買っていた店に近く、以前紹介されて来たこともある店で、世間は狭いと思いました。

 60才にちかいご主人は、今回の注文の経緯を聞いて、「老人にはやさしい木がいいですし、100年はもちます。」と、チークをすすめるのです。どうやらご主人はチークに非常にこだわっている人であることが、リフトを運転して木を下ろしてくれた店の若い人(といっても私と同じくらい)の話から後でわかりました。
 事務所の家具がすばらしいことを私が指摘すると、これらがいかにすばらしいものであるかについて写真を見せていただきながら話を聞きました。近くのHさんという洋家具職人さんが作ったもので、神戸の永田良介商店のものに似ていましたが、もっと手の込んだものでした。

 チークは一度本格的に使ってみたいと思っていましたが、高いので敬遠していました。ところが、非常にいい状態のチークが楢の柾目より少し高い程度なので、ついパインのつもりがチークに・・・。
 このご主人と気があってしまったようで、午後2:30に店に行き3時間近く木をみたり事務所で話したりしました。結局、主人の売りたい物を買ってしまったわけですが、経験豊富な主人の言いなりになってみるのもいいことではないでしょうか。
 イエローパインは安いですが、その木味は人生経験豊富な老人に適した木ではないかもしれません。試作ですから、「チークでやってみて、値段があわなければパインにすればいいや」というわけ。

 東京の新木場の話もしましたが、主人いわく「家具屋はなぜか西日本に多いので、家具用材の流通量は大阪のほうがかなり多い」ということでした。チークを直接ビルマから輸入しているとのことで、「年をとると、何でも売れればいいというのではなく、好きな木を売りたいんですわ」。

 試作用に34ミリ厚のチークの板を11枚、0.14立米ほど買って帰宅し、玄関に立てかけて本業を半日休んでの買い出しが終わりました。

94/12/20 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(70)

 材木屋さんで何回か木を買う間に、お店の人に教わったこともたくさんあります。
そんな話を中心に、いくつか話題をひろってみました。

 丸太で木を買う場合は別にして、板材は標準的な大きさがあるようです。例えば、広葉樹では、長さは2メートル前後か,約4メートル。厚さは最も薄いので9分(27ミリ)、厚いので寸5(45ミリ)ぐらい、幅は18センチぐらいから25センチという物が多い。
 しかし、板の木口は蝋を塗ったりペンキを塗ったりしても乾燥してヒビが入りやすいので、最上のものでも両端の小口5センチぐらいは使えません。

 プロが買う材木屋さんでは、板を一枚一枚選ぶことは困難かもしれませんが、場合によっては「いいよ」ということがあるかもしれません。ただし、あまりいい顔をされません。
 材木を立てかけて売っている店も多くなってきました。この場合は、おそらく大口客用の木を準備したあとの余りや規格外のものも多いので、よく選ぶべきです。

 板が幅の方向で反っているのは、そんなにダメージはありません。反りがひどければ真ん中で切って接ぎ合わせれば、無駄が少なくなります。しかし、長手方向で反っていると、平面を出す際の多くの無駄がでます。また板を正面から見て弓状になっているものは、真っ直ぐに製材したのに、乾燥の過程で曲がったのですから、細く加工していく段階でもっと反りや捻りがでます。

 また丸太のどの部分の板かということは見抜いた方がいいのです。たいていの広葉樹は地上に近い部分(一番)とその上の部分(二番)があります。一般的には一番は変化のある木目や節などがありますが、厚めに切ってテーブルなどの使うといい板がとれます。逆に二番は素直な欠点の少ない部分ですが、面白味に欠けます。

 自分は30ミリ前後の板か40〜45ミリのどちらかを購入することが多いです。
前者はそのままカマチ組のワクや椅子の脚に、また半分に割って10ミリ強の薄板にします。厚い方はテーブルの天板や、脚に使います。どちらの場合も厚さで4,5ミリ、幅で20,30ミリ、長さで10センチぐらいは加工の過程でなくなってしまいます。

 他にもポイントはたくさんありますが、知っている割には私の購入は材木屋さんまかせが多いのです。自分はあまり注文をつけない方ですし、値切りもほとんどしません。それで損をしているかもしれませんが、材木屋さんの方が木についてよく知っていることは間違いありませんから、信頼できる材木屋さんを見つけて、おまかせにできればたいへんな味方を持ったことになります。東京の新木場ではそういう定評のある材木屋さんが何軒かあるようです。関西は、まだ開拓中というところです。

94/12/26 *****Wood Work M*****

WWMおじさんの木工講座(71)

 玄関に立てかけた11枚のチークの板は、反りやヒビがほとんどないいい顔で、加工されるのを待っていました。

 B2の方眼紙に1/5の詳細図と一部部品図も書き込みましたが、これをもとにJW_CADで左右の側のカマチ組の部品図を書きました。今までの製作では、部品図を書いたことはありません。作りながら考えていたのです。今回は同じ物を多数作る必要があるので、しっかり図面を残しながらの試作です。

 板は厚さ実測で厚さ34ミリ、幅180ミリと200ミリ、長さ2メートル以上の柾目の板がほとんどです。基本的には板を縦に3等分してカマチにしますが、鏡板は厚さを半分にするか、可能ならば9ミリの薄板3枚にしたいと考えています。どうしてもこの板材10枚ぐらいで作り上げないと材料費がたいへんです(^_^;)。無駄をしないように木取りを考えます。

 久しぶりに昨日機械を動かしました。

1,側カマチにする板2枚を選び、必要な165センチのところで切断。
 これは、長いままより、少しでも短くすることで、軽くし、また歩留まりを良くするためです。例えば、反りが少ないといっても長手方向で見れば5ミリぐらい曲がった板はあります。そのままプレーナーにかければ5ミリ幅が減ってしまうわけで、短く切れれば、3ミリの減少にとどめることができるのです。

2,手押し鉋で板の木端を直線に。
 テーブルソーで板を3等分するには、ガイドにあてる端が直線でなければなりません。そこでプレーナーで直線にするのです。オルガン屋さんのところのドイツのテーブルソウがあればこんな作業は不要で一発で、木端が直線になるのに・・・。
 この時、前に作った樺のテーブルでプレーナーの刃が切れないようになっているのに気がついた。堅い木を手押しにかける時は、刃が切れないと、なかなか平面がでないばかりか、木を押さえる手に力が必要で、事故にもつながります。しかし、研ぎ屋はもう休み。しかたなく、手で刃を研ぎました。

3,プレーナーの刃を研ぐ。
 大工さんは150ミリの刃ぐらいは自分で研ぐそうですが、平面がいのちの精密加工ですから、自分で研がずに必ず研ぎに出していました(代金は一枚400円ぐらいで安い)。
 今回は間に合わないので、85ミリの鉋についている治具に2枚の155ミリの刃をとりつけ、平面を出したキングの1000番で研ぎました。しかし、気がつくと治具そのものが正確ではなかったようで、端の方が少し落ちてしまった (>_<)。しかし、切れるようにはなったので、合成の仕上げ砥(の方が機械の刃には合うみたい)で仕上げ研ぎをしてから、機械にもどしました。
 刃のセッティングがまたやっかいなんです。後ろの定盤とピタリと同じ高さにならないと段がつくので、何回もやり直しをします。これもオルガン屋さん工房のは一発楽勝やったなあ(ほしがりません、買える身分になるまでは)。日本の機械の治具とか、精度はまず疑ってかからないとだめなんですよ。

4,テーブルソーで3本に。
 木端の平面をガイドにあて、57ミリ幅で切断。私は真ん中まで切って、すっと上に逃がして、今度は裏向けて反対側から真ん中まで切っています。この方が安全です。
長い物を最後まで切るのは恐い。1本切ったら、つぎのガイドにあてる面を手押しで直線にしなおし、また次を切ります。

5,切った板を直角をだし、厚みをそろえる。
 手押しとプレーナーの本業です。手を巻き込まれないように充分注意します。

 こうして、幅55ミリ、厚み30ミリにきれいに加工されたチーク材は、見ているだけで「いいなあ」と思ってしまうほど、気に入ってしまいました。いやみのない薄茶色の木に混じって、一部コバルトブルーの部分がありました。一度使うと病みつきになるかもしれません、チークという木は。

(94年の最終回です)
 ご静聴ありがとうございました。来年も講座というより自分の木工中継になりますが、できるだけ他にも使える話を盛り込みながら、続けたいと思います。
94/12/30 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(72)

 お正月は実家を2軒まわり、初詣と移動以外は何もしなかったのに疲れました。
4日の朝は11時まで寝てしまいました。どうも大口注文のプレッシャーがかかっているらしい(+_+)。
 さて、昨日今日と2日間で側のカマチ枠を加工、仮組しました。このあたりの作業は何回もやっているので、自分なりの手順が決まっています。

1,材料を選ぶ。
 組んだ時の見てくれを考えて、・木目や色がそろっているように・木のもとは下にすえは上に・節などの欠点は強度に問題がでる部分に使わないなどに注意しながら、机の上に配置してみて決めます。

2,墨つけ
 これが一番肝心。墨が正確でないといくら正確に加工しても意味がない。
・左右カマチの縦方向の長い木を4本クランプで固定し、接地面を基準に寸法をとっていきます。

3,ほぞ穴
 日立の角のみアタッチメントをつけたドリルスタンド使用。9.5ミリの角のみをつけて、穴を掘りますが、仕上がりは10ミリ幅になるようにのみで仕上げをします。
 残念ながら、この角のみでは穴が傾斜することが多いので、クセを読みながら作業をします。

4,ほぞの加工
 穴と現物合わせで確認しながら、自作ほぞ取り機と、テーブルソーで加工しました。
この自作のほぞ取り機は2代目です。おじさんからもらったマキタの160ミリ丸鋸と専用の小さな丸鋸台を使って、昇降盤のほぞ取り装置とほぼ同じ加工ができます。
 テーブルソーによる胴つきの切り込みは、自作の横切り治具で長さをそろえた材木の両端から40ミリのところを、同じ治具に木片のストッパーをクランプで固定し行います。

 あとは、穴とほぞをのみで仕上げ、仮組します。ほぞは手で半分ぐらい押し込め、後はたたき込むぐらいがいいようです。組上がったら、スコヤをあてて直角の確認をしたり、胴つきの密着度を検査します。この時、鏡板の入る溝を着る目印となる線をいれておきます。
 なお、さしこんだほぞを抜く場合は、手で引っ張ることは絶対に避けることです。
昔、少しゆるいほぞだったので横着をして、手で力をこめて抜こうとしたら、スポッと抜けたのはいいが、その木の反対側の角がオデコにあたり血が出たことがありました。目にでも当たったらたいへんでした。
 ほぞを抜くときは、抜くほぞの木を左手で持ってほぞ穴のある木に当て木をして木槌で軽く叩きながら抜きます。

 ここまで書いて、オルガン屋さんの工房には角のみもほぞ取り機もなかった(と思う)ことを思い出しました。便利な横穴ドリルにスクリューピットで長い穴をあけるか、ほぞではなくダボによる接合を多用されているような印象でした。グスグスのほぞや、胴つきがぴったり着いていないほぞよりも、きっちり作られたダボ接合の方が強度も見てくれもいいのではないかと思っています。私はダボ加工の経験がほとんどないので、今後練習してみたいと思っています。

95/01/05 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(73)

》ちょっと木工に偏っているかな、って反省もありますが
 すこやさんのおっしゃるとおり、昨年の主な話題の一覧を見ていますと、WWMという文字がやたら多いので反省しております。しかし、こりずに今日も書いていますが(^_^;)。

 今日は、あまり面白くない危ない作業でした。
カマチ組みは枠を組んで中に薄い板をいれる方法で、その板を鏡板と言います。量産家具では鏡板は綺麗な板(ビニヤー)を張り付けた合板が使われますが、これを無垢のチークを入れるのです。
 34ミリの板を半割するか、さらに薄く3つに割るか悩みましたが、側板では3つ割にトライすることにしました。仕上がりで9ミリ厚の板になればというわけです。
丸鋸の刃幅が2ミリなので、合計4ミリなくなり、平面にするのに最低でも3ミリは落ちるのでギリギリです。多少の曲がりは無視してプレーナーで厚みを揃えるようにすればなんとかなると思ったのでした。長さは64センチで、幅9センチほどの板ですから、平面にするのは割に簡単です。

 チークの板を長さ65センチの板3枚に切り、各々を真ん中で半分にして65×9センチの板を6枚作りました。この時点で、木口に鉛筆で印をいれて、もとの板の組み合わせを復元できるようにしておきます。
 手押し鉋で各々の板の片側を平面にします。この時点で34ミリがどうやら確保されていたので、9.5ミリの幅にテーブルソーのフェンスをセットし、切っていきます。
 他の工房では、こういう薄板作りはどういう方法でやっているのでしょうか?外国の本でも、まずテーブルソーで両側から切り込み、その後バンドソーで間の残りを切っているようですが。
 この作業がこわいのです。両側から切っていきますが、何らかの反りがでてきたり、鋸刃との摩擦で煙がでたり・・・。

1,最初刃を3センチぐらい出して、フェンスに板の平面をしっかりと押しつけて、両側から切り込みます。

2,刃を4センチぐらい出し、切り込む。

3,刃を4.4センチぐらいにして切り込む。この時はあまり板をフェンスに押さえつけないようにする。刃をはさむことになって危険だから。

4,中間が2ミリほど残っているが、これで機械加工はやめて、あぜひき鋸で、手でひいて切り離す。

5,中央の残りの出っ張りを鉋で取って、手押し鉋で平面をだし、上記1からの工程を繰り返す。

6,できた板は片方が平面なのでこれを基準にして、プレーナーを通し9ミリ厚にそろえる。

7,加工しない薄板は変形をできるだけ避けるために、重ねてしっかりとヒモでしばり、布に包んで保管します。

 手押しの刃の調整も含め3時間ほどかかって、18枚の9ミリ厚のチークの薄板を作りました。
 この作業、半割(今回3つ割)は、できたらやりたくない作業です。バンドソーがあれば恐い思いをせずに済みそうですが、刃が木目に影響され動くので、ガイドまかせにはできないようです。
 こうして、分厚い板を小さな薄板にしていくのは、木に申し訳ないような感覚があります。

95/01/08 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(74)>ビスケットジョインター

今回から可能な限り、内容を示す副題をつけます。

 約9ミリの厚さになったチークの板を6枚並べて接着し、縦640横450の鏡板をつくるのですが、自分の頭にある方法としては、次の3つがありました。
1,イモはぎ2,3ミリ合板の雇さねはぎ3,ビスケットによる接合

 強度が要求されるところではありませんが、接着面積が小さいので1は不安が残り、2がいちばん良さそうですが、今回は昨年買ったマキタのビスケットジョインターを試しに使ってみることにしました。9ミリの板に4ミリの溝を掘るので、両側が2.
5ミリと薄くなるのが懸念されます。
 ビスケットジョインターというのは小さな円形カッターと治具が一体になった日本では新しい電動木工具で、ブナの楕円形の圧縮チップ(ビスケットと呼ぶ)をビスケットジョインターによって掘った溝に入れて接合する方法で、圧縮されたビスケットが木工ボンドの水分によって膨張し、より強力に接合できるというものです。スイスのラメロ社が発明し、今でもビスケットはラメロ社しか作っていないようです。
 ビスケットジョインターには治具がついていますし、ベースはアルミダイキャストでかなり精度の高いものです。いろんな使用方法がありますが、今回は作業台上に本体を置いて、板を適当な厚さのベニヤ板の上に置いて、板の中央に溝を掘るようにしました。

 薄板6枚が一つの板からできたので、これを木目が合うようにならべます。木口に書いたマークが順番を決めるのに役立つはずです。また、左右の2枚は当然木目は合いますし、”ブックマッチ”と呼ぶのですが、木を本を開いたようにはぐと狭い板が左右対象な2枚が並び、広い板のように見える効果もねらいます。
 並べた板に両端から5センチのところと中央のところに線をひき、ビスケットジョインターで掘る目印とします。板の基準面は下側ですから、決して裏返さないように注意しながら、加工します。ビスケットには3種類ありますが、No10の溝深さ10ミリのものを使いました。

 溝が掘れたら、接着です。ハタガネ6本と5センチ角の木、濡れた布、ボンド、ハケなどを用意します。6枚を接着するにはかなり急がないと、途中で固まってしまいます。最初両面塗布していましたが、時間がかかるので途中から片面塗布にしました。
 堅めのハケ(筆)で、ボンドを塗り、ビスケットにも塗ってはめこみ、接着を繰り返します。ハタガネでしめてはみ出してきたボンドは濡れた布でよく拭き取ります。
 またハタガネとボンドが触れあう部分には紙をはさんで金属のアクなどの汚れが染み着かないようします。

 こうして作業をしてみて、ビスケットジョインターの良さや限界がよくわかりました。目違いが全くないというわけにはいきませんが、注意深く加工すれば、サンダーでOKぐらいの目違いですむようです。また、ハタガネをかける時にすでに位置が決まっているので安心です。
 このマキタの機械は集塵袋がついているので、ほとんど木屑がでないのは多いに助かりました。ボッシュのサンダーといい、集塵装置が付いていることが本格的作業場を持たない人にどんなに役立つことか。
 またこの機械は比較的安全です。刃が通常は引っ込んでいますので、よほどヘマをしない限り怪我はしないと思います。特に材料をクランプで固定して作業すれば安心でしょう。
 しかし、テーブルの天板をはぐ場合、やはり雇ざねをやりたいと思います。単に精神的な自己満足でしょうが・・・。
95/01/15 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(75)>溝切り

 約一週間ぶりに木工部屋へ入りました。今回の注文主である特別養護老人ホームの地域でもガスの供給が止まっているらしいので、注文のタンスどころではないかもしれませんが、量産のための工夫や図面を残しながら、ゆっくり作っています。

 34ミリのチークを3つに割ってはぎあわせ、なんとか9ミリの鏡板を4枚作り上げましたが、これは他の方法を考えた方がよいかもしれません。あまりに能率が悪いのです。具体的には、薄板にしてプレーナーをかける工程を外注し、接着せずに、3ミリのベニヤをサネにして並べる方法がいいのではないかと。
 今日はカマチに9ミリ幅の溝を掘る方法を模索しました。電動工具を使う方法にもいくつかあります。

1,ルーターとストレートビット。
2,テーブルソーに溝切りカッター。
3,手持ち丸鋸に溝切りカッター。

 今回は木の粉による作業環境の悪化をできるだけさけたいので、集塵機が使いやすい、2の方法を選びました。3年程前までは毛引きつき4Pカッターという、長方形の4枚の刃があるカッターを使っていましたが、抵抗が大きく、ちょっと食い込んだりすると跳ね返ったり、木がかけたり、とても恐くていつか怪我をしそうなので、最近は多少精度が悪いですが、自在カッターを愛用しています。
 自在カッターというのは直径10センチぐらいの刃幅3ミリのチップソーが回転軸に対して直角からやや斜めまで固定角度が可変できるもので、丸鋸の刃がひねりながら回転するのです。大工さんがよく使うらしく、家具屋さんが使うのはあまり聞いたことがありません。溝切りの恐さを少しでも少なくするために私が勝手につかいだしたのであり、本などでは紹介されていません。基本的には丸鋸ですので、食い込んで飛ばされたりすることはあまりありません。しかし、溝の底や仕上がり具合や、位置決めに難があります。
 手持ちのものは3ミリから15ミリ幅まで無段階に幅が変えられますが、刃の中心部が厚いので、私のマキタのテーブルソーにはそのままでは装着できないので、今までは手持ち丸鋸のカバーをはずしてつけていました。
 今回、集塵機を使うためにテーブルソーに取り付ける改造をしました。回転中心部の余分な出っ張りをやすりですりおろし、うすい金属ワッシャーを見つけてきて、どうにか、テーブルソーに装着できました。

 溝切りは、必ず試し掘りをして幅、深さ、位置を確認します。刃が木の下に隠れているので一見安心ですが、木を押す最後で木からあらわれた刃に指がふれる危険がありますので、充分に注意する必要があります。また、木の平面や直角がしっかりとでていないと、通常の溝切りカッターでは非常に危険です。自在カッターでは、手持ち丸鋸につけてフリーハンドで切ってもはねかえってきたりしません。

 今日は溝を切って、鏡板をはめこむつもりだったのに、午後からカッターの改造やとりつけを始め、夕食後やっと木片に試しに溝切りができました。

95/01/22 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(76)>柿渋

 すこやさんからの質問もありましたし、橋本さんが木考会通信に大々的に「WWM油蝋屋商事(^^)」のことを紹介して下さり、昨日は沖縄まで柿渋を送りましたので、この機会に柿渋とシェラックについて書いてみます。

 私の住む加茂町では柿の木がある家には秋になると毎年渋柿を買いとりにくるそうです。もちろん柿渋を作るためです。
 柿渋は古くから庶民の塗料として、紙や布などの防水防腐食の役目をしてきましたし、中風の薬として飲用もされています。英語ではパーシマンタンニンというのですが、柿のタンニンが重合し樹脂化することにより強靱な皮膜を形成します。カペラガーデンで柿渋のことを話したら、全く理解されませんでした。

 木の仕上げには最近はあまり利用されていませんが、漆の下地として使ったり、台所で使う棚に塗ったり、高級な物ではなく貧しい人々の実用的な塗料として活躍したようです。”渋染め一揆”が歴史の教科書にも登場するように、昔は貧しい人々のものだったのかもしれません。

 柿渋を木に使った経験は、多くはありません。自宅で使用中のビューローとおじの注文で作った書机と椅子ぐらいです。どちらも樺の木で、白い部分と赤みの部分の色を合わせる目的で塗ってみたのですが、思いの他いい結果が得られています。他にも、檜の小箱に柿渋を一度薄く塗って、後はチークオイルで仕上げたこともあります。

 柿渋製造会社の社長さんのところには、欅を柿渋に何回も漬けて塗装した看板文字があり、漆と間違うほどの光沢です。また明治時代から使っているという柿渋の樽の一部は黒光りした柿渋とは思えないものです。塗り方の工夫や、草木染めの技術を使って色合いを調節するなど、まだまだすばらしい利用方法がありそうです。

 私の塗り方を紹介しますと(あくまで一例)1.木地を整える
 水性のため、鉋による仕上げが望ましい。サンドペーパーでは毛羽立ちや研磨粒の残によって黒いスポットが生じることがあるようです。

2.塗り方
 水で約2倍に薄めた柿渋を水性塗料用の刷毛で塗り、塗りムラを避けるために、乾ききらないうちに布で拭き取ります。

3.乾燥
 独特の臭い匂いがします(ウンコの様な)が害は全くないし、乾燥すれば匂わなくなります。天日にあてると発色が速くなります。塗った直後はほとんど色がつきませんが、4,5日すると塗っていないところとの差が顕著になります。

4.塗り重ね
 乾燥したら大なり小なり毛羽立ちが起こっていますから、400番ぐらいの耐水ペーパーをかるくかけて表面をつるつるにし、2とおなじ方法で塗り乾燥させます。これを4,5回繰り返すといいでしょう。

 注意点は、タンニンですので鉄分があると黒くなります。研磨紙のカスなどに鉄分が含まれていると、黒い点ができるようです。発色についてはほとんど知識がないのですが、鉄分やいろいろな成分を加えることで色をコントロールできそうです。これは将来の課題です。

95/01/24 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(77)>シェラック

 セラックニスとかシケラックニスとか呼ばれるニスはシェラックをアルコールに溶かしたものです。ラック貝殻虫が分泌する天然樹脂がシェラックで、フレーク状をしたオレンジ色のものが手元にあります。大阪の塗料屋さんは”シェラックゴム”と呼んでいました。

 シェラックニスは湯や水がかかると白くなるので、古いテーブルなどでコップを置いた丸い輪が残っているのはたぶんこのニスです。ウレタンニス等合成樹脂塗料がメインになった現在は上塗りに使われることはほとんどありません。しかし、オイルステインで着色後、仕上げ塗りをするための滲みを防止するために色押さえとしては今でもつかわれています。
 今シェラックが活躍している分野は薬です。薬の外側に使われるのです。厳しいことで有名なFDAもシェラックは人体への害の少ない物質として位置付けています。
ですから、安全性という面から考えると、柿渋と同様もっと利用してもいい天然樹脂です。

 木工の分野でのシェラックの利用は、穴埋め剤として、また仕上げ剤として使われます。例えば小さな節穴を熱で溶かしたシェラックを溶かしてうめたりしています。
仕上げとしてはフレンチポリッシュと呼ばれるアルコールで溶いたシェラックのタンポずりが高級で、熟練を要する光沢仕上げとして有名です。

 とは言うものの、シェラックの経験はあまりありません。カペラガーデンで初めて使いました。シェラックはアルコールに溶解して使うのですが、溶かしてしまうと寿命が短く、使う直前にシェラックのフレークをアルコールに溶かして使うのが望ましいとのことです。

 たった一度の経験ですが、次のように塗りました。
1,シェラックをアルコールで溶き、タンポで塗れる濃度にします。この時のアルコールは、工業用として飲用できないようにした変性アルコールでもいいのですが、飲んでも大丈夫な醸造アルコールが望ましい。私も、飲んで大丈夫なお酒の瓶に入ったアルコール(スピリッツ?)を使いました。

2,タンポは丈夫な麻布(と思う)に麻の繊維を丸めたものをつめて卵大のタンポを作ります。ここまでしなくても、綿と脱脂綿でもいいと思うのですが・・・。

3,タンポにシェラック+アルコールをしみこませ、木の表面を丸く撫でる様に塗っていきます。アルコールが蒸発してねばくなってきたら、少しアルコールをしみこませてやわらかくします。

4,タンポは密閉できる缶に入れて保管していました。

5,なお、乾燥は速く、乾燥後すぐに、蜜蝋、木蝋、カルナバ蝋をミックスしたワックスを塗って磨いて仕上げしています。

 実際にやってみると、やたら手にひっつきあまりいい気持ちのものではありませんが、こうして仕上げた楢の小箱は独特の光沢があります。

95/01/26 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(78)>アンモニア

 アンモニアの話がでていました。アンティーク風ないい色を出す方法の一つにアンモニアとオークの組み合わせがあります。
 この方法は、木っ端でちょこっと試しただけなんで、講座のネタにはならないのですが、着色方法として独特なものです。

 カペラのベン先生に教えてもらった方法は、アンモニア(煙がでるくらいでかなり濃い物)を布でさっとオークの木にぬり換気の良いところに30分ぐらい置く方法でした。枯れたちょっと赤身を帯びた茶色に仕上がります。特に木目をひきたたせる着色効果が期待できます。
 日本へ帰ってからあるクラフトマンと話していたら、彼は「直接アンモニアを塗るのでは本当の色はでない、大きなビニールで包み、その中にアンモニアを皿か何かに置いて扇風機で風を送る」などと教えてくれましたが、具体的にはどうしたらよいのかはっきりとは知りません。
 文献でも塗るのではなく、アンモニアガスをあてると書いてありますから、この方法が本当のやり方でしょう。オルガン屋さんが経験豊富ではないでしょうか?

 しかし、どちらにしても問題は匂いです。木っ端だからいいようなものの、タンスなんかをこの方法でやったらたいへんです。まして自宅の木工室でやる気にはなりません。
 また、NIFで色が濃くなった部分を修正するのにレモンがいいという書き込みもありました。レモンティーが紅茶の色が薄くなるのと同じです。タンニンという物質は、アルカリ性で黒く、酸性で色が薄くなる性質があるようです。

 話は変わりますが、今日知人の画家がダンマー樹脂と、油絵材料辞典というのを持ってきてくれました。この辞典を見ていますと、私が興味ある知りたいことが満載されています。ピラミッドのミイラに使われていた蜜蝋の話、テレピンのこと、様々な天然樹脂のこと・・・。油絵が塗装の原点であるようです。ダンマー樹脂はある木から取れる樹脂でこれをテレピン油に溶かした二スが油絵の最終仕上げに最良のものらしいです。
 天然樹脂や油蝋にのめりこんでいるのは、人間が身の回りのあらゆる素材に目を向け使ってきたことに驚きを感じているからです。特に東西を問わず、松の木と人間の関係は非常に大きい。テレピン油をはじめ、松根油やジン、ロジンエステル樹脂を使ったスパーワニス、日本でも松は戦時中は飛行機の燃料として大量に伐採された悲しい歴史もあるようです。
 石油ももちろん天然の物であるわけですが、上記のような昔の生活の智恵の延長線みたいな塗料にとてもひかれるのです。

95/01/30 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(79)>ベスターの砥石

 天然素材の話も途中ですが、新しい合成砥石を買ったのでその使用感をレポートします。

 ちょっと前のFWW誌に日本製の新しい合成中砥の比較記事がのっていました。おおまかな内容は、

 −−今までキングブランドしかなかったが、最近になって数種のセラミック砥石が登場した。ベスターはその中で最も研ぎが速い砥石で、−−−−−この記事に登場した砥石は

・ベスター    Bester    #700,#1200
・デバド     Debado    #400,#2000
・アクアストーン Aquastone #800,#1200,#8000
・タケノコ    Takenoko

 アメリカの人の方が私より最近の砥石事情に詳しいことに多少ショックを受けました(^^)。ベスターが良さそうであるということは気にかかりました。

 1月始めに大阪日本橋へ行き、黒門市場横の砥石屋が健在であったことは書きましたが、ここでベスターの1200番を買いました。たしか1800円ぐらいだったと思います。700番も売っていました。

 さて、使用感ですが、もうキングを使う気にはなれません。キングは刃を研いでいるより、砥石を減らしている方が多いと思います。ベスターはすぐに黒い研ぎ汁がでて、泥分がとても少ないのです。
 今はキング1000番のあと仕上げ砥の前にベスターを使っていますが、700番を買ったら、キングは細い鑿専用にしようと思います。

 しかし、大和郡山の宮大工さんの集まる刃物屋さんで聞くと、宮大工さんは砥面が硬くて荒れにくいので気に入っているが、町屋の大工さんは柔らかいキングの方を好む傾向にあるということでした。
 また、井上さんは「ベスターはあたりはずれがある」と。またキングの粒状が丸なのに対しベスターが尖った形であるとも言っていました。

 キングの1000番からいきなり仕上げ砥にいくのではなく、1200番から1600番程度で研いでから仕上げにいくのがいいということのようです。この使い方でもベスターの1200番は非常にいいです。

95/02/02 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(80)>スクレーパー

 この道具は日本にはありませんが、とても重宝なものです。今回のチークのタンスでも非常に活躍しています。オルガン屋さんが経験豊富で詳しくご存知なので、間違ったことを書いていたら訂正をよろしくお願いします。

 スクレーパーはシンプルな道具で、ハガキを縦半分にしたような厚さ1ミリほどの鋼の板です。雲型定規のような曲面用もありますが、長方形のものが基本であり、用途も多いようです。
 この道具の原理は鋼の板の端にわざと刃返りをつけ、これで木の表面を削るのです。
使い方より先に、私が感じた便利な点や感想をあげると・・・

1,多少板が凹面になっていても、スクレーパーなら板を少し手で反らせることによって仕上げ削りができる。これは非常に便利で、鉋なら板がわずかに反っているだけで削れないことがままありますが、平面を確保することがさほど重要でない薄い幅広板の仕上げ削りに威力を発揮します。

2,板ハギの際、はみだしたボンドを塗れ雑巾で拭くか、拭かないか意見の別れるとこですが(拭くとかえってボンドを木に染み込ませてしまうという意見がある)、はみだしたボンドを乾いてから欠きとるのに抜群です。

3,逆目が立たない

4,サンドペーパーがけの後、木の粉をとり、表面を鉋で仕上げたようにできる。

5,使う前の予想よりも良く削れる。

 しかし、入手が困難であったり、仕立て方がよくわからないという問題があります。
オルガン屋さんは、鋸の替え刃を捨てずに使えば良いと言っておられましたが、今使っているのはスウェーデンのSANDVIK社の475というスクレーパーで、厚さが約1ミリで両側の刃の部分は特別に焼きが入れてあります。
 実はこのスクレーパーはテージ・フリッド先生もおすすめの物で、彼曰く「1生に1枚か2枚で済むので、高くてもこれを買いなさい」ということです。しかし値段はUSAのカタログでは$5ちょっとですからとても安いものですが (^_^;)。 これが手に入れられれば、めんどうな仕立ての大部分をパスして、スクレーパーの良さが実感できます。

 日本の木工書でスクレーパーの仕立てについて書いてある本を私はまだ見たことがありません。洋書と北欧で帰り間際にベンから教えてもらった方法をたよりに、「スクレーパーの仕立て」を次回書きます。

95/02/07 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(81)>スクレーパーの仕立て

 前回から少し間があきましたが、けっこう忙しくしてたもので・・・。毎日帰宅してから木工室でチークの木と格闘し、食事をはさんで200LX と格闘し、睡眠不足の状態で勤務先へという毎日です。
 おじんさんから、「たのもしい」とおほめの言葉をいただいたのは初めてではないかと思うんですが、ほんとスクレーパーは面白い道具だと思います。

 スクレーパーを使えるようにする要点はつぎの2つのステップです。
1,端を直線にして、板の角をシャープな直角にする。
 これが一番大切で、鉋の刃先と同様に直線、平面ということがやはり重要なのです。
テージフリッドの本などの教科書では、最初やすりで板の端を直線に注意しながら、直角にします。NIFでこの状態で使っている人がいましたが、通常は砥石を使ってさらに平滑でシャープな直角にします。
 砥石が部分的に凹みやすいので、砥石の側面を使うなどするといいでしょう。なお、1000番程度の中砥で充分でしょう。この状態で仕上げ削りには使えます。
 正確で平滑な直角ができていないと、つぎの工程で刃返りをつけた時に、刃が凸凹になりきれいな仕上げ面を得ることができません。

2,刃をつける。
 この方法にもいろいろあるようです。一般的には、スクレーパーよりも硬い金属の棒(バーニシャーと呼ぶ)を使って油(ミシン油でよい)を併用し85度ぐらいの角度で角を擦ります。バーニシャーがなくても、のみの裏でOKです。私は今は使わないノミに怪我をしないように刃先にカバーをして刃の裏でこすっています。

 しかし、カペラの資料を見ると、次のような2段階で刃をつけています。

    バーニシャー
    ####################
    _________________
    /
   1, |
    _______________|

    #
    ______________/| #
    | #
   2,     | #バーニシャー
    _______________| #
    #
    #

 (注意:図では85度の斜めが表現できないので平行に書いています。)すなわち、水平方向に刃をつけて、それを垂直方向に折り返すわけです。この方法はうまく行けばかなり大きな、そして返りのシャープな刃がつくようです。

95/02/15 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(82)>被せ面2枚ほぞつぎ

 これが正式名称かどうかわかりませんが、東京行きをはさんで扉4枚を作っています。カマチと鏡板という組み合わせの是非については考えるところも多いのですが、注文品に関しては、冒険をせずに自信のあるこの組み方で扉を作ることにしました。

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 このほぞは古い家の建具などの使われていることが多い、指物の世界でよく使われるほぞです。接合面積が広く、ひねりに強いので、扉のように片側だけで支持しているよなカマチは重力によって平行四辺形に変形しやすいので、この少々複雑なほぞが使われるのです。

 穴掘りは、6.5ミリの角のみを使い掘りました。実際のところトータルで32個の幅6.5ミリの穴をあけることは手加工ではあまりに時間がかかります。日立やマキタのドリルスタンドにつく角のみでいいですから、簡単な角のみ機械の購入をおすすめします。3万円ぐらいの投資になろうかと思いますが、能率がぜんぜん違います。
しかし、機械を使っても最後はのみと自分の目で穴を仕上げなければなりません。

 ルーターやトリマで行う方法も考えられますが、今のところこれで深い穴を開けた経験がありません。
 墨は、毛引きと鉛筆を併用しています。自宅の角のみは精度が充分ではないので、フェンスによって位置きめする場合でも、しっかり墨を入れておく方がいいのです。

 ほぞは通しになっている部分と10ミリだけ入れる部分の段付きで、深さ10ミリの穴(溝)は6ミリのストレートビットで0.5ミリずらして2回なぞる方法で加工しました。
 ほぞの加工は充分に現物合わせをして確かめてから、自作ほぞ取り機で、慎重にとっていきます。とくにほぞの幅は接着剤を入れてピッタリぐらいにする必要があります。

 今回は4枚の扉を一度につくるため、治具の設定を非常に慎重にしました。0.3ミリ程度は読んでいます。夕方仕事から帰っての加工では、墨線がとても見にくく、手元を照らす電気スタンドが必需品でした。スウェーデンでも昼が短いので、ワークベンチにはZライトを取り付けるための穴が開いており、細かい作業ではこのライトを使っていました。
 ある指物氏さんが、年をとると墨が見えなくなるので、いい仕事は年とってからはできないと書いておられましたが、自分もそろそろ遠視の傾向が・・・。

95/02/24 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(83)>平面と直角を作る工夫

 YTOKさんのお話にもありましたし、以前私自身も「プレーナーと手押し鉋が本格的木工の事実上の前提です」と書いた覚えもありますので、そうではない例として、いくつか平面をだす作業のアイデアを書いてみます。頭で考えただけのものもありますので、作業を行われる場合はその方の責任においてやって下さい(^_^;)。


■平面加工■1,手加工
 これは以前書いたとおりですが、定規を様々な方向にあて隙間を見て削るべきところを鉛筆等でマークします。そして刃を多い目にだした鉋で横ずりしていきます。
 また、平面が確かな机などに置き、ガタを見てガタつく所を裏返せばそこが削るべきポイントになります。

2,電動の手持ち鉋による方法
 やりかたは上と同じ。この方が能率はいいが、リスクが大きい。なれないと、端に円形の溝を掘ったりして泣きます。
 今でも、一枚板のテーブルや幅広の板はこうして平面を出していますが、何とか能率のいい方法はないものか・・・。

3,ルーターと治具による加工
 平面にしたい板をまたぐように一定な高さ(例えば4センチ)の木の橋を作り、そこにルーターを移動させる定規となる溝を作る。板を平らな机の上に置きガタつかないようにして、この橋にルーターを置き、ストレートビットで一定の高さに削っていくのです。板をひくり返して、ビットの高さを調整して削れば厚みもでます。
 この方法は電動手持ち鉋にも応用できそうですが、刃の高さが自由に変えられないので、電動鉋ではかなり困難です。またこの橋を置く台を曲線にしたら、カーブした板が作れます。

■直角■平面ができていたらその面にまっすぐな定規(合板やアルミのアングル)をあてて丸鋸で切れば簡単に直角になりますが、ジョインター程度の精度にしたい場合には・・。

1,ルーター
 まっすぐな定規とストレートビットでOK。一回の切り込み量を少なくしないと危険です。

2,手持ち電動鉋
 直角ガイド(メーカーオプションでなくても自分で作れます)をつけた手持ちの電動鉋を使い、注意深くガイドを平面にあてながら加工する。可能ならば、木端が上を向くように固定して作業するといい。いずれの場合も電動鉋の刃の近くに手がくることになるので、ガイドで手が刃の方にいかないようにするなど、充分な注意が必要。


 以上のようになんとか作業はできても、問題は木の屑でしょうね。おそらく部屋の中は木屑だらけでしょう。機械を買えば簡単に平面はでますが、平面からスタートしなくてもできる木工というのもいろいろあります。私もそこのところの認識が甘かったと反省しています。
95/03/05 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(84)>続ビスケットジョインター

 製作中(というか「まだですか」と催促され尻に火がついている・・・)のチークのタンスの扉4枚ですが、細身のフレームに9ミリの鏡板を入れるので、また34ミリの板を3つに割り、8枚の鏡板を作りました。。
 当初、今回は3ミリの雇ざねをいれるつもりでしたが、カッターのセッティングがめんどうで、今回もビスケットジョインターを使いました。TACKさんやYTOKさんからあまりに薄い板に使った場合の膨張によって不都合がでないかとのMSGもありましたが、結論から言うと9ミリ厚でも心配ありませんでした。

 前回一部に少し目違いがでました。原因は機械の精度ではなく、私の板の押さえ方です。そこで、今度はガイドフェンスも使い、上と下からサンドイッチにする方法で、位置決めしたところ事実上問題ない精度で溝が掘れました。マキタのこの機種は初期には問題があったようですが、現行の機械はよくできているのではないかと思っています。ダストバッグの開閉はチャックではなく、プラスティックのスリーブではさんでいる方式でとても便利です。

 位置のマークはさしがねで、木の両端から6センチのところと、中央の3カ所に直線を鉛筆で入れています。この鉛筆線をビスケットジョインターのガイドの中央線にあわせればOKです。
 ボンドの塗り方はこの方法がいいかわかりませんが、まず片面にボンドを厚めに塗ります。次にビスケットの半分にボンドを塗って板に差し込み、この状態で残り半分のビスケットにボンドを塗り相手の板と接着します。

 ビスケット自体にバラツキがあり、スッと入ったり、硬かったりします。ペンチで抜いて位置を直したことも少しあります。橋本さんのレポートでは、元祖ラメロでは溝の幅が幾分広くスッと入るいうことでしたので、このあたりのサイズのとりかたが、オリジナルの微妙な秘密なのかもしれません。

 2回目ビスケットジョインターを使ってみて、これは手放せなくなりました。簡単に位置決めができ、そこそこの精度で固定できるというのは魅力です。今回のタンスではざっと180枚のビスケットを使いますが、一枚4円程度ですから、800円ぐらいの経費です。雇ざねを作る手間と材料を考えるととても安いと思います。固定具の少ない素人木工家の環境ではいもはぎよりもはるかに気軽にハタガネをかけて厚着できます。

95/03/08 *** WWM(Wood Work M), UNH86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(85)>量産体勢

 おおげさな題をつけてしまいましたが、はじめて数を作ることを意識して作業をしていますので、今までボヤーッとしていた部分が強調されてきました。それは、クラフトと呼べる趣味の木工と、仕事としての木工と差の実感ということかもしれません。
 作業能率がたいへん重要になってきます。前回オルガン屋さんが、ビスケットジョインターの位置決めで、「両端は線を書かない、中央は目測でほぼ中央で良い」とのアドバイスをいただきましたが、このようなひとつひとつの作業の無駄を省くということがとても重要になってくるわけです。おじんさんもおそらく、この工程の無駄というものに昔は非常に注意をそそがれたことと思います。

 私のような素人に毛がはえたような人間が家具を作る時、一番時間がかかっているのは、「ああでもない、こうでもない」と考えている時ではないでしょうか。仕事の仕方が決まっていればこれは速いのです。これを”段取り”というわけですが・・・
 では、そのためにはどんな点に注意をしたらいいか?貧弱な自分の経験から考えてみると

1,原寸図、もしくは部品図を書くこと。
 あたりまえですが、図面で寸法が決まっていないものがサッサッと作れるわけありません。図面でも表現できない場合など、1/5などの縮尺で模型をつくること。
 ウェグナー展でも書いてありましたが、彼はスケッチ、1/5の図、1/5の模型、原寸図という手順が多いらしいです。とくに1/5模型は製作にかかる手間や時間を推定するのに役立つらしい。私は今回の箱物で、手間や時間の読み違いが非常に大きかったのです。

2,墨付けを省略する工夫。
 これは加工精度の向上にもつながりますが、たとえば、長さ50センチの角材4本の両端をほぞにする場合、治具を使って角材を正確に同じ長さにそろえ、次に治具を使って両端から50ミリのところをテーブルソーで切り込みます。このようにすれば墨付けは不要です。
 基本的な治具については機会をあらためて書きたいと思います。

3,同じ作業の繰り返しが一番速い。
 面白いかどうかはわかりませんが、同じことを繰りかえせるような工程の工夫が能率アップには有効になります。
 例えば角のみでほぞ穴を作る場合、全部の材の同じ位置の穴を連続してあけます。

4,待ち時間を考える
 ”接着剤が固まるまで何もできない”なんてことがよくありますが、接着は一日の最後にもってきたいもの。そうでなくても待ち時間にやる作業の候補を1つ2つ考えておくとよい。

5,機械加工の時間を考慮する
 一日中、プレーナーをかけているなどというのは、面白くないばかりか、怪我のもとです。注意深く精神を集中して機械作業ができるのは2時間ぐらいが限度ではないか。午前に1時間、夕方1時間程度で機械をつかう危険な作業を終えるほうが結局能率があがるのではないかと思います。

 量産体勢というのは、木工を楽しむ姿勢とは一見ちがうものですが、その中に大切な何かがあるようです。ウェグナー展で見たビデオはたいへん参考になりました。

95/03/19 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(86)>よく使う治具

 行うべき加工に適した治具をパッパッと作れるとカッコイイ(^^)。多くのクラフトマンが誰かに聞いたり、自分で作りだしたオールマイティーに使える定番治具というのがいくつかあります。そんな中で、WWM工房でよく使うものから紹介したいと思います。

1,テーブルソー用横切り治具
 これは海外の雑誌を見ると必ず登場します。昇降盤の溝に合わせた木の薄板の上の合板をのせ、刃と直角なフェンスをつけたものです。



正面図 側面図

______ _ _
___________/ \__________ |_| ←ここに材を置く |_|
|_______________|_______________| |_|___________________|_|
# # =======================
鋸刃の切れ目
↑ ↑

昇降盤の溝にはいる木の薄板

 WWM工房のこの治具の材料は12ミリのベニヤ、とラワンの角材、溝に入れる楢の薄い板を使っています。

<作り方>
 最初に溝にピッタリで滑らかに動く板を慎重作ります。この精度がポイントのひとつです。厚さは溝の深さと同じぐらい。これを2本作り、上面にボン度を塗って溝に置きます。
 その上にベニヤ板(ホームセンターで徹底的に反っていないものを選ぶべし)を置いて重いものなどを置いて接着します。釘などは使用しない方がいいでしょう。
 乾燥したら、このベニヤを押さえながら、丸鋸の刃を静かに上げて、ベニヤを中央から切っていきます。決してベニヤをずらせて真2つに切ってしまわないように。

 つぎが最大の難関。ベニヤ板の中央につきでた丸鋸の刃にスコヤを何回もあてて丸鋸と直角になるように手前のフェンスをとりつけます。鉛筆で線を入れ釘で仮止めして、試し切りをするなどして、できるかぎり直角の精度を高めます。最終的にはボンドと裏側から木ネジでとめて、できあがり。

 その後ベニヤが真2つにならないように刃の通る部分は高くし、また向こう側にも同じ様なフェンスをとりつけます。滑りをよくするため、私は蜜蝋を塗っていますが、ローソクの蝋で充分です。

<何ができるか>
 この治具だけで、長い角材の横切りや、板の切断、ほぞの胴突きの加工など安心してできます。注意すべきはフェンスを押した時に手前にでてくる鋸刃です。FWW誌にこの部分をアクリル板でカバーしている工夫が紹介されていました。
 これに小物の治具を組み合わせることでいろんな可能性がでてきます。
留め切り、ホゾの縦ひき、長さを一定に切断などなど・・・。

<いいところ>(欠点はない?)・木の治具なので傷や汚れが材料の木につきにくい。
・鋸刃とのすきまが小さいので木片がはさまって恐い思いをすることが少ない。
・ベニヤの切れ目から位置決めが用意。
・動きが滑らか。

 横切り用テーブルソーを持っていてもこの治具を使っている人がいるほどの定番です。これは治具とは呼ばないかもしれませんね。

95/03/24 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(87)>チークのタンス完成

 例の注文の試作タンスがほぼ完成し、3月29日に納品することになりました。正直言ってしんどかった (^_^;)。 もともと6畳の洋間の工房でやれる仕事としては限界に近い。また地震で約1カ月は全く作業をしなかったので本業の仕事をしながら、また細部のデザインを考えながらで約2カ月でした。

 大きさは幅110センチ高さ150センチ奥行き55センチで、部屋の中央に置いて2人で使うのが目的なので、裏がないのです。そのため4枚の扉をつけ、そのうち2枚は固定しますが、これは簡単に解除できるようになっています。組み立てて作業台の横に置くと、部屋の中は歩くスペースもないほどでした。

 チークを本格的に使ったのは今回が初めてです。34ミリ厚の板から9ミリの板3枚をとるというギリギリの使い方なので、少し鋸目ののこったところがあったりしますが、なんとかごまかしました。こういう時ランダムオービタルサンダーは役に立ちます。苦労した板剥ぎの結果は良好で、なかなか気に入った扉になりました。
 重量と材料費を考えて全部無垢にせずに、底と仕切と天板の鏡板は9ミリの両面シナ合板を使いました。チークの濃い茶色とシナ合板の白い色の対比は意外に新鮮で、使い方によっては扉の鏡板にしてもいいぐらいです。34ミリ厚、幅18センチ、長さ2メートルほどのチークの板を9枚使いました。

 仕上げは「チークオイル」というぐらいですから、当然オイルフィニッシュという先入観念がありました。亜麻仁油をできるだけ加熱し(少しでも煮亜麻仁油に近づけたい自己満足ですが)、やや冷えてからガムテレピン(純植物性)を加えて刷毛で塗りました。面積が大きいので刷毛の方が能率があがるのです。乾燥剤を含まない亜麻仁油は完全乾燥までに長い時間がかかります。ですからとにかくよく拭き取ることが大切で、ボロ布をどんどん新しいのにかえて何回も拭き取ります。それでもチークはもともと油分の多い木なのでなかなかカラッとなりません。
 塗れ色が濃いのには驚きました。一回目の塗装で予想よりはるかに濃い茶色に変身してしまいました。梅田の阪神デパートのスカンジナビア家具のコーナーがありますが、そこに置いてあるダイニングテーブルと全く同じ色合いです。私は軽い色のほうが好きなので、この重厚な茶色を見て鏡板はワックスで仕上げたらよかったと思いましたが、もうおそい。しかし一般的にはこの色は好まれると思います。

 さて、試作は何とかやりましたが、残る31個はどないしょう?納期に自信がないので遠慮させてもらうか、もしくはもっと能率重視のデザインに変更しなければならないでしょう。これは片手間にやれる仕事ではないようです。
 この仕事、受けて立つべきか・・・はたまた、断るべきか・・・。それとも第3の方法を考えるか? WWMおじさんの人生にも関係しそうな問題であります。

95/03/26 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(88)>よく使う治具、その2

 インターネットや両方の仕事が忙しく、かなり間があきましたが、治具の続編です。
ここではマキタの2708という普及品のテーブルソーを使用しています。

1,長さ決め治具
 何かと多用します。椅子の脚やカマチの枠など同じ長さに切ることが要求される場面は多いはずです。前回紹介しました横切り治具のフェンスに小さな木片を接着した細い角材をCクランプで固定したものを3本ほど用意しています。約50センチ,1メートル、1.5メートルの3種類です。残念ですが1.5メートル以上のものは、自宅のテーブルソーでは傾いたりして危険ですので、この場合は墨をいれて造作丸鋸で切っています。

 例として椅子の脚用に40センチの長さの角材を4本切断する場合について書いてみます。
 まず全ての材料の片方を正確に直角に切断します。つぎに1本の角材だけに40センチの長さに印をつけてここを鋸刃に合わせてから、上記治具をCクランプで固定します。この時、1ミリぐらい長さが狂ってもかまわないのです。それよりも4本の長さが揃っていることの方が大切。ストッパーになる木片にしっかりと角材の切断済みの端をあてて4本の切断をすれば、ピタッと同じ長さの角材ができるはずです。

2,留め切り治具
 前回紹介した治具上に正確に45度の線を鉛筆でひき、ボルトナットで角材を仮固定して何度も切断を繰り返して正確に45度で切れるように位置をきめ、再度鉛筆で印をつけます。
 よく調整してあれば、簡単に額が作れます。なお額の留めのちぎりを入れる溝も専用の治具を作ってテーブルソーで加工します。
 余談ですが、額の接着にはハタガネやゴムバンドをかけたりするよりも、接着材を塗って正確な平面上に手で厚着しただけで放置する方が、加工上の誤差を全体で吸収してねじれや歪のない額ができるようです。しかし私は額には留めほぞを使うことが多いです。

3,斜め切り治具
 かなり平行に近いような斜め、縦切りフェンスとの角度が20度以下のような場合は、横切り治具では無理があります。そこで、2本の角材を丁番でつなぎ、長穴(スリット)を開けたベニヤ板で開き具合を調節できるようにしたコンパスのような治具を使っています。この治具の一方を縦切りフェンスにあてながら、使用します。
 ただし、この治具は鋸の刃の通る位置が予想しにくいので、スイッチを入れる前に充分に治具を動かしてみて、安全を確かめてることが必要です。

4,ほぞの縦引き用治具
 これは特殊です。また、鋸刃に対するストレスも大きいので使用にあたっては充分な注意が必要です。詳しく説明しませんが、縦切り用フェンスをまたいで滑らかに移動できる木製のコの字型ボックスを作りこれに材料を固定して、テーブルに垂直に立てた角材の木口を切ろうというものです。

 テーブルソーでは以上の4つの治具を主に使っています。繰り返しますが、テーブルソーはひとつ間違うと大怪我しますので、スイッチを入れる前に充分に動きを確かめること。手以外に目の保護をお忘れなく。
 私はテーブルソーを使うときは必ず集塵機を回し、防塵メガネをかけ、ヘッドフォンなどの耳栓を使っています。また丸鋸の回転による遠心力で何かが飛んでくることも考えられるのでできるだけ丸鋸刃の正面に顔がこないようにしています。

95/04/06 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(89)>ルーター

 8番会議室に書いた方がいい話題になるかもしれませんが、インターネットニュースで知り合ったボブさんとのメールのやりとりを通じてアメリカでのルーターに対する考え方がわかってきましたので、最もホットな話題として聞いて下さい。

 WWM工房では現在H社のトリマだけを使っています。トリマは刃の上下がしにくいですが、片手で操作できる手軽なルーターといったところです。力が弱いこともあり、シャンク径(ビットの軸径)は6ミリしか使えません。現在ビットは6ミリ、3ミリのストレートビット、9ミリ、13ミリの蟻ビット、10ミリのコロ付きフラッシュビットを使っています。

 私はビットでほぞ穴を正確に速くあけたり、曲線、曲面を能率よく仕上げたりしたくて、強力なルーターといろんな種類のビットを手にいれたくてインターネットニュースに質問したのです。頻繁にメールをやりとりするようになったボブさんから、自作のルーターテーブルの設計図を送って来ました。彼らは、SHAPERとしてルーターを使おうとしているのでした。

 特に最近の電子ルーターには3つの新しい機能があるのです。それは1,ソフトスタート機能2,SCRによる高トルクを保ったままの回転数可変機能3,負荷フィードバックによる回転数維持機能の3つです。

 1はスイッチON時の反動を少なくできますし、2はルーターによる焼けや騒音、木の質に合わせた最適の回転数が選べるわけです。
3が最もあたらしい機能で、硬い木で負荷が大きくなると電力を多く供給し回転数が落ちる事を防ぐ機能です。

 このような最新のルーターを平面がしっかりした自作のルーター台にとりつけることによって、高価なSHAPERでするような作業をやろうというわけです。例えば、ドアパネルの周囲の加工や、接ぎ合わせビットによる加工などです。また、商品名インクラジグと呼ばれるギヤのような機構をつかった精密な位置決めジグや、マイクロアジャスターとの併用によって、かなり自由に蟻ほぞを機械加工したりするわけです。

 日本では秘伝とかコツなどと言って説明されることの少ない技術の領域を個人の技量に依存せずにアマチュアレベルで実現しようという熱心さは私たちが勉強しなければいけないところではないかと思ってしまいました。
 いつか彼の設計図を参考にこのような立派なルーターテーブルを作るつもりでいます。今までもルーターテーブルを自作しトリマをとりつけて使用していますが、人に見せるほどのものではありません。

95/04/14 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(90)>シェラック

 このところ、YTOKさんやインチさんなど木工に詳しい方が登場、うれしい反面ええかげんな事が書けない事態になりました(^_^;)。もう終わるべき時期になっているのですが、ここまで来ましたので100回までは続けたいと思います。

 木考会通信にのせていただいてから、油や柿渋の注文が復活(税務署さん心配しないでね、100個買った塗料缶がまだ30個以上残ってますし、手間を考えると完全なボランティア活動ですから)していましたが、一段落したので、新しいアイテムの開発に着手しておりますのでご期待下さい(^^)。

 さて最近今面白いと思っているのは、温故知新の代表格シェラックです。シェラックは1590年ごろからすでに塗料として用いられていた文献があるほど歴史の古い天然樹脂です。ラックカイガラ虫がある種の木に寄生して樹液を吸い分泌する樹脂です。

シェラックメーカーのパンフから(特徴)1,天然樹脂としては唯一の熱硬化性樹脂である。
2,常温でアルコールに簡単に溶解し、また熱に容易に熔融するが、一度熱硬化する
 と熱にも溶剤にも侵されなくなる。
3,耐油性が著しく強い4,電気的に不導体である。
5,耐摩耗性がすぐれている。
6,アルコールに溶解して塗布、溶剤が揮発した後には、常温で光沢にすぐれ、滑ら
 かで耐摩耗性・密着性・耐久性に富んだ薄い皮膜を形成する。
7,水はもちろんのこと、アルコール以外の有機溶剤にはほとんど不溶または膨潤す
 るだけである。

 いいとこばっかり書いてありますが、古い食卓などで、コップの白い輪がついたりしているのはこのシェラックのことが多いようで湯には弱いようです。

 どんなところに利用されているかというと、意外に広く使われています。
・塗料用
 セラックニス、ラッカー、金属箔塗料、皮革塗料、紙塗料、ゴム塗料・印刷インキ用
 最近ではシェラック水溶液による水性フレキソインキが注目されている・電気用
 絶縁樹脂としてマイカの接着など・ワックス用
 食品コーティングに使用できる許可がおりているので、フルーツワックスなどには
 最適。
・医薬。製菓用
 錠剤や糖衣を施した菓子の光沢。
・化粧品
 マニキュアやヘヤースプレイなど

 木工から話がそれましたが、シェラックはニスの原料であるという以外にあまり知らなかったのですが、安全で比較的安価でかつ使いやすい天然樹脂であることを再認識させられました。

95/04/23 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(91)>続シェラック

 シェラックになぜ興味があるかというと、食べ物にも使えるほど安全な天然樹脂であることの他に、日本ではセラックニスというビン入りの塗料としてしか多くの人に知られていないという現状があるからです。またシェラックとワックスの仕上げが非常に嫌みのない自然な無着色仕上げにになることも見逃せません。

 固体のシェラックの見たことのある人は少ないと思いますが、木の枝からとった不純物の多いシェラクをスチックラックといい、それを精製したものが入手可能なフレーク状のシェラックです。ふつうシェラックは樹脂分95%とシェラックワックス5%からなり、ワックス分を除いたものを脱漏シェラックと呼びます。
 アルコールに溶かした状態のシェラックは劣化がはやいので、固形のシェラックを使う前に溶かして準備するのがいいと、欧米の本には必ず書いてあります。

 そんなわけでシェラックを溶かす場合には独特の表記方法が使われています。
例えば、”4−lb,cut shellac”というと、それは1ガロンのアルコールに4ポンドのシェラックを溶かした液という意味です。
 1ポンド=453g、1ガロン=3.79lですから、1−lb,cutというのは1リットルのアルコールに120gのシェラックを溶かしたものというわけです。

 なお、溶剤として使うアルコールはエタノールが最適とされていますが、エタノールは酒税法との関係で高価なために、飲用できないように他のアルコールを加えた変性アルコールが使われることが多いようです。メタノールやイソプロピルアルコールです。しかし、安全第一の私としては、ここはなんとしてもエタノールを使いたいので、実験室で使う試薬エタノールを使っています。本当は醸造アルコールを使いたいところですが、水分があるとよくないので、試薬エタノールの使用がいちばんいいと思います。
 またさまざまな濃度のシェラックをすばやく作るのに便利なように、5−lb,cutのシェラックを作っておき、これを薄める方法をすすめている文献もあります。

 シェラックには精製度によりいろんなグレードのものがありますが、大きくわけると、オレンジシェラック、脱蝋シェラック、漂白シェラックの3つにわけることができます。漂白シェラックは、着色のあとの色おさえ等に使われますが、寿命が短いということです。一般的にはオレンジシェラックを使います。この中でももっとも精製度の高い良質のものを入手します。日本ではレモンNo1などと呼ばれています。ただし蝋を含むものは、溶かしたときに濁りがあり、沈澱と上澄みに分離します。今脱蝋シェラックも入手し試していますので、どちらがいいかはまた報告したいと思います。今でも古い塗料屋さんはシェラックを買って変性アルコールに溶かし、ビンにつめてセラックニスとして売っています。固形のシェラックはそんなに高いものではありません。

 シェラックによる仕上げというと、フレンチポリッシュと呼ばれる非常に光沢のある高級な仕上げが有名ですが、シェラックは傷は小さな節などの穴埋め材としても使われるのです。私が興味を持っている仕上げ方法は、フレンチポリッシュではなく、木の表面に膜を作らないオープンポア仕上げとしてのシェラックの使用方法です。

95/04/25 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(92)>続々シェラック

 シェラックのことを書き出したら予想外に長くなってしまいました。前回などかなり狭く深い話だったので興味のない方には読みづらかったと思います。ペンキ、ニス、ラッカーなどとすでにできあがった塗料しか使ったことがない方が大半だと思いますが、素材からスタートして塗装を考えていくことが大切ではないかと思います。

 今作っている娘の中学入学祝いのベッドも仕上げはシェラックとワックスにしました。まだ完成していませんが、仮組を終え、本組前に塗装を済ませました。非常に簡単で速い仕上げ方法です。

1,木地の仕上げ
 好みはあくまで鉋仕上げです。サンドペーパーを使う場合は最終400番以上がいいと思います。

2,シェラックのタンポ塗り
 本によってはタンポはセーターの切れ端などの羊毛をつかっています。また丈夫な麻布を使ったこともあります。今回は単純に木綿肌着のボロです。
 シェラックは1.5lb,cutのもの、すなわち100mlのアルコールに18グラムのシェラックを溶かした物(2,3時間で溶けると思います)。

 塗りにくい凹んだところは刷毛で少ない目に先に塗っておきます。あとはタンポにシェラックをしみこませ、木目にそって刷り込むように塗っていきます。わずかに色がつきます。すぐに乾燥しますので、少しずつシェラックをつけたり、あまりにひっつくようだとアルコールをつけたりして、できるだけ均一に塗り込みます。

3,ワックス
 これは、カペラのベン先生おすすめのブレンド比で作った自家製ワックスを使っていますが、少し硬すぎるのでもうちょっと柔らかいものを検討中です。蜜蝋とカルナバと木蝋を2:1:1の割合でブレンドしテレピン油で少し柔らかくしたものです。
 おそらくこんな特製ワックスを使わなくても、固形のケントクやリンレイワックスでもほとんど同じだと思います。
 けっこう硬いこのワックスを布につけて、車のワックスがけよろしく、シェラックを塗った木を磨くように吹き上げます。鉋で仕上げた面がより光沢を放ち、明るいほうにかざしてみると鏡のようにみえるはずです。

 シェラックは、大阪の塗料屋さんで1キロ1500円で買いましたが、もうすこし純度の高いものを求めて製造会社に見本を送ってもらいました。しかし、最低20Kgは買わないといけないので、どうしようかまよっています(^_^;)。買うかどうかわかりませんが、共同購入ご希望の方おられましたらご一報下さい。(まだこのメーカーに値段は確認していません)

95/04/26 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(93)>ルータージグテクニック

 電動工具にたよることの是非は木工を楽しむ立場からすると議論すべき問題であると思いますが、日本の木工とアメリカの木工を比べる時、ルーターをいかに使っているかということが大きなちがいのひとつであることはまちがいないようです。

 rec.woodworking のFAQで推薦してあった、”Router jigs &Techniques”という本を手にいれました。400ページ近いルーターの本ですが、ルーターを骨までしゃぶるような使い方を写真も豊富に教えてくれます。
いったいどんな加工をやっているか?
・おもちゃ用車輪の加工・アルファベットのイニシャル掘り・ダボ接合・倣い加工・トリミング・溝掘り・インレイ・つき板の留め加工・ほぞ穴とほぞ・ダボ作り・アリほぞ加工
 などなど。これらを職人のわざではなく、アイデアジグで乗り切っているところが面白い。例えばダボの丸棒を作るには少し大きめの丸溝ビットをつけたルーターと電気ドリルを併用して丸棒を作っているんです。ウッドレースの刃物のかわりにルーターを使ったと思えばいいでしょう。まだあまり読んでないので、詳しいことはいずれ自分で試してから書きたいと思います。

 今日は、安全対策についてピックアップしてみます。
1,機械とビットの精度
 大きすぎるビットの使用はもちろん危険。また、軸やビットの偏心にも注意が必要。
マイクロゲージでチェックをしています。

2,安全用具
 耳栓、木くず集じんアダプター、安全めがね、足踏み式スイッチ、スピードコントローラー、さまざまな木片押さえ器具、など
 特に木片を押さえるものとして、 クシ状の板(手製でいいが、 既製品もあるみたい)、ローラーとバネを併用したルーターテーブルにとりつけて使う押さえなど、ぜひほしいと思いました。


(本について)"Router Jigs & Techniques" by Patrick Spielman ISBN 0-8069-6694-7
$16.95 (Sterling Publishing Co., Inc.)(入手先)Linden Publishing352 W.Bedford #105Fresno, California USA 93711-6079
 この本屋さんもFAQで知りました。カタログをすぐに送ってくれました。東光堂書店のカタログのようです(いや東光堂がまねしているのかな)。カードで購入できます。
95/05/04 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(94)>ボブさんのルーターテーブル

 新しいルーターテーブルはまだ作り始めてもいないのですが、ボブさんから送ってきたルーターテーブル設計図を見ていると、日本ではこうは作らないだろうなと思うところがかなりあります。そんな点を中心に簡単にレポートしてみます。
 今までは自分がやったことだけを書いてきましたし、これからもそうしたいと思っているのですが、今回だけは外国の仲間からの受け売りとして例外とします。


キャビネット正面図 天板の構造

========================= ================== LAMINATE
| | | ################## MASONITE
| | | ################## MASONITE
|ダストトレー | | <<<<<<<<<<<<<<<<<< 合板
|----------|----------| ================== LAMINATE
| | | ガイドフェンス
| | | +-------+
| | | | +--+ |
| | | | | +-+
| | | | | +-+ T字型スロット
| 道具置場 | | | +--+ |
+---------------------+ +-------+

 全体の形は2枚の扉がついた箱に天板がついたものです。扉の中には上段には木屑をためるトレーがあり、下には道具収納スペース、扉裏側にはビットを斜めにさして収納する木がつけてあります。

 ルーターテーブルで大切なことはつぎの3つであると書いています。
1,ルーターの取り外しが簡単なこと2,マイターゲージのスロット(溝)の精度3,充分な重さ

 また天板にもとめられる最も重要なことは、完全な平面であること、決して反らないことであると言っています。そのためには、材質がよくわかりませんが、合成樹脂の2層のコアで反りを防ぎ平面を保ち、なおかつ溝の耐久性を良くしているねらいがあるようです。
 マイターゲージスロットの精度高い加工のトリックとして、フラッシュトリミングビットをうまく使っています。まず、天板上にマイターゲージをはさむように真っ直ぐな定規を固定し、マイターゲージだけを抜いてこの定規を基準にならい加工するのです。
 同様の方法で、天板中央にピッタリはまる樹脂製のルーターベース用穴をつくりここに逆さにルーターを差し込むだけで固定しています。だから、ルーターを手に持って使うときはとりだすだけでOKというわけです。

 集塵方法はガイドフェンスの裏側に集塵用自家製ダクトをとりつけています。またフェンスはT字型のスロットを持ち、スーリーのスキーキャリヤのネジみたいなノブ付きボルトで位置決めストッパー等を固定するようになっています。

95/05/13 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(95)>作品紹介

 この連載は100回で終わるつもりです。ルーターを駆使する方法はブツを入手してからあらためてご報告するとして、今からは自分の昔のアルバムを見ながら、自分が気に入っている作品を回顧しながら、紹介します。なお最後には資料編をアップするつもりです。

■おもちゃの木馬ならぬ木犬■
 兄のところに年のはなれた次男が誕生したので、そのお祝いに作ったもの。木は栃で、大阪摂津の銘木センターで栃の端材を一枚1000円で買ったなかの一枚でした。
 栃という木は、幅広の大きな一枚板が比較的安く入手しやすい木ですが、たまに茶色の部分と白い部分が川の流れのように入り交じった不思議な杢がでることがあるのです。ホコリだらけで反っていて「しょうもない木」と思っていたのが、削ってみるとあっと驚くほどすばらしい模様と色が出現しました。
 この板を幅約20センチ、長さ50センチ程度にカットし、ロッキングチェアーの足のようなカーブした板を2枚下に取り付け、背もたれと、犬の顔にみたてた手で持つ部分をつけた木馬ならぬ木犬は、無心にワーッと作ったのに、今も好きな作品のひとつです。
 1才ぐらいになったオイっ子はこれにまたがり、縁側や座敷をすり足で走り回っていました。足をあげたり、シーソーよろしくユラユラしたり・・・。けっこう丈夫でした。その兄の住む実家も今年の震災で傾き、ついに建て替える運命になりました。
地震に強い○○ハウスのプレハブになるそうです。

■四方木口の小箱■
 30才前半、流通業の仕事をしながら、木工をやり、「木工関係の仕事をするぞ」
と焦っていました(今も同じようなもんですが (^_^;) )。大学時代の山岳部の先輩で障害児教育に携わっている人がいて、自分の木工技術を彼の分野で生かせないか相談に行ったことがありました。この時のお土産に作った小箱です。
 その頃ジョージナカシマの「木のこころ」を読んで感化され、スケッチがのっていた四方木口の箱にトライしようと思ったのです。東急ハンズで非常に安く売っていたアガチスの薄板を売り場にあった分を全部買って持っていたので、それを使用。アガチスは南洋材でありながら針葉樹で、削ると絹のような光沢がでる加工しやすい木です。
 四方木口の組手の話はこの講座の最初のころ書いたような気がしますが、コーナーに両方の木口があらわれている不思議な組手です。木がポロッと折れ易い組手なので、きつくてもゆるくてもダメという厄介なものです。この組手をテーブルソーを駆使して大部分機械加工しました。「この組手ができたらかなりな技術や」とその頃はいい気になっておりました。今考えると、機械をうまく使えば誰でもできるのですが。
 蓋はアガチスを2枚はいで、はしばめをはめました。この加工もむつかしそうでいて、案外やってみると簡単です。ピタッと決まらなければ、はめる方を鉋でけずれば簡単に調節できるので、考えようによっては、ふつうのほぞよりも手加工むきかもしれません。
 仕上げはその頃チークオイルを手にいれてなかったので、薬局で買ったオリーブオイルでした。オリーブオイルは不乾性油に分類されますが、よく染み込みませて充分に拭き取ればいい仕上がりになります。乾かないと言っても、何年もたてば完全に乾くようで、そのころにはなんとも言えないいい飴色になっているはずです。

95/05/20 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(96)>作品紹介2

 木工を始めて2、3年頃は無我夢中で作った作品が多く、欲がなかったせいか、今でも強く印象に残ったり自分で使い続けている物が多いです。

■樺柿渋塗りのビュロー■
 ビューローを作ろうと思ったのは、なんとなく男の憧れの書斎のイメージがあるのと、木工の本では難しい作品として本の最後の方に書かれていたからです。
 樺という材木を知ったのは、京都の材木屋で、「立米30万以下の道材はありませんか?」と聞いたら「樺ならなんとかなります」と返事されてからです。買った樺は柾目にひいてあるツートーンでした。ツートーンというのは樺材は赤みを帯びた心材と白い辺材(しらたではない)の差がはっきりしており、赤白のツートーンカラーの意味です。9分板でツートーンの雑樺(私は雑樺とま樺の区別ははっきりとはわかりません)なら、今でも立米20万程度で手に入るはずです。しかし、昨年買った柾目のマカバはチークよりも高かった(^_^;)。

 設計は苦労しました。前の扉を斜めに配置しないとビューローらしく見えないので、そのために側板の処理が難しい。また、開いた扉の裏側を机にするために、ツライチにせねばなりません。KAKIのビューローではそれを革を使うことによって解決していますが、私は木で行きたかったのです。また開いた扉を支える棒は必ず扉を開く前に引き出しておかないと扉を開けた時に、蝶番をこわしてしまいます。この点に関しては支え棒に小さなカムを連動させることにより、支え棒を引き出せば扉が2センチほど浮くようなトリックを考えました。ですから、扉に取っ手はありません。
 この作品では原寸に近い大きさで図面を書きました。大きな図面を書くと自然と細かいところを考える必要にせまられ、解決の糸口が見えてきます。このあたりのメリットがCADではいまだ感じられません。原寸図を薄い合板に書くといいらしいですが、そこまでしたことはありません。

 樺の九分板を10枚ほど買い込み、ズラーとならべてみると、どの木をどこに使えば良いか非常に迷ったと記憶しています。大物を作る時はいつもここで悩みます。一般的には、カマチなどは木目の素直な柾目を、傷のある木はめだたないところ、鏡板は木目の大胆な色目のそろったもの・・・などと考えていくとどの選択が最上かわからなくなってくるのでした。ツートーンが安い理由がわかりました。色あわせが難しいのです。結局、ツートーンは側板に、板目の白い部分は鏡板に赤身はかまちにという方針で木取をしました。
 そのころはアリホゾは無理と思っていましたので、板に幅15ミリほどの溝をトリマで掘って組み合わせました。釘を併用し、埋め木します。最近釘をあまり使いませんが、ハタガネやプレスがたくさんないアマチュアの場合、釘を併用することは強度的にも、作業の能率アップする意味でもいいことではないかと見直しています。
 扉のカマチもはじめて「馬乗り」などと呼ぶ5ミリ幅で面取りした部材にホゾの一部が被さる本格的な加工をしました。裏面の処理方法は悩みました。鏡板の収縮、膨張を吸収できるような構造にすると、カマチとの間にスキマができますし、ピッタリですと不都合が生じます。それで、鏡板の裏も5ミリ程度斜めにカマチの上に被せて、スキマが生じても目立たないようにしました。この加工がどの程度有効かわかりませんが、4、5年使っていますが、なんらトラブルは生じていません。

 樺のビューローについて書き出すととても長くなってしまいますのでこれで終わりますが、仕上げは柿渋4回塗りです。またつまみはわざわざマキタのウッドレースアタッチメントを購入して樺の小片から作ったのでした。内装部分の小細工は、樺ではしんどいのでアガチスの薄板を使っています。
 実はこの作品をある公募展に出したのですが、結果は「選外」でした。今考えてみるとそれは当然で、素人としてはなかなかよくできていますが、それ以外に作品の持つメッセージも、芸術性も何もなかった。しかし、実用上の価値は大いにあり、今でもとても気に入った作品です。

95/05/26 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(97)>製作ノートから

 何作か作ってから、失敗したこととか、大切なことなどを記録しておくことが重要に思えて、一冊のノートに簡単な製作記を書くようになりました。今あらためて見ると、小物も含めて40作ほどの作品名が最初のページに目次のように並んでいます。
 そのなかで、最も失敗したと思う作品について今日は書きたいと思います。うまくいった作品よりも失敗した作品の方が勉強することは多いのです。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−89年8月の製作ノートから<電話機台>1,楢の板購入・しらたを避けること
 (この時けちってしらたも使ったらそこから虫食いがあって、天板に穴があいた)・板は重くてアクの出ているものがよい
 (初めて自分で楢の板を買ってきて先生に見せたら、ボロクソ言われた)・FASマークが入っている板はいい・虫食いの注意する

2,カマチ組・組立時、直角に気をつける・カマチのほぞの幅は鏡板を入れる溝より広いか、二枚ほぞにして、ほぞが弱くならないようにする。
・鏡板ははめこめる幅よりも少し狭くしないと湿った時ほぞを抜く時がある。
・左右のカマチをつなぐ横の桟を止めるには、釘よりも木ネジがいい。
 (太い釘を打ったために、胴つきが少し離れてしまった)・鏡板の加工は下のようにしたが、端は斜めにした方が鉋で仕上げがうまくいく。

+-------------------+
+--+ +--+
+-------------------------+

3,塗装(下地)
 天板、前板等、楢の木が硬すぎて、カンナがうまくかからずに、サンドペーパーにたよった。(今思うと研ぎがヘタだった)

(着色)
 オイルステインは東亜ペネトール、オークAを使用。刷毛は上等のものに限るが、タンポでもいいように思う。刷毛の場合、かなり強く拭き取る必要がある。

(色おさえ)・最初速乾ニスを使ったが、完全に失敗。(着色剤がブリードした)・アルコール系のシェラックニスを使うべし(今思うとあたりまえ)
 四ツ目印の漂白セラックニス(乳状)メタノール30〜40%含有を使用。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 いやはや、あのころは何も知らなかったのに、先生にたよらずに自分でやってみたい気持ちがあって、よく聞かずにパッパッと組立て、失敗をよくしてました。この電話台ほど、失敗の多かった作品は少ないと思います。板も先生のところで分けてもらわず、電話帳でさがした京都の材木屋さんで自分で買って失敗、しらたの多い木で虫食いで失敗、組み立てたら、ほぞは緩いし、直角はでていない、着色は色むら、色おさえで失敗と、やることすべてうまくいかなかったのです。

 ひょっとしたら、この作品がきっかけで、失敗の少ないオイルフィニッシュ専門になったかもしれません(^_^;)。

95/06/04 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***


WWMおじさんの木工講座(98)>創りたいもの

 この回は読まないでとばしていただいた方がいいかもしれません。というのはこれから自分がつくりたいと思う家具などについてのことなので、本人以外には役に立たないと思うのです。「そんなら書くな」と言われそうですが・・・。とくにおじんさんから、苦言をもらいそうな気がしてコワイ (^_^;)。
 なお、1に健康,2に家族・・・は本当ですね。私が木工バカをやっていられるのも、家庭が精神的に(経済的じゃないっす)安定しているからでしょう。カカ様に感謝。20代後半よりも今の方が自由な発想をし、より自由に生きていることは確かですから。

 思っていることをバババと書いてみると・木の質感だけが魅力のものは先が見えている。
・量産体勢でないと、多くの人が入手しにくい。
・手作りの一品物がいいというわけではない。
・手加工で無駄な努力をしない工夫をしたいものだ。
・重さ(軽さ)もデザインの重要な要素と思う。
・天然素材には魅力があるが、人工的な素材にも質感のいいものがある。
・たとえ商品であっても作っていて楽しいこと。
・ホッとさせるもの・鮮やかなパステルカラーなど、色を忘れない。
・日本の伝統的素材を活用する。
・手作りだから「高い」は通用しない。
・針葉樹系の材木をもっとうまく家具に使えないか。
・直線を基調にしたデザインでもまだまだやることがある。
・逆に、時間をかけない曲線加工は今後の課題。
・不必要な家具は作らない。
・収納家具を手に入れるより、収納物を少なくする方がいいはずである。
・伝統的な組手や仕口には魅力があるが、構造的に弱くなるようではいけない。
・安いことはやはり大切なことと思う。
・椅子、机、箪笥以外にあれば便利な家具は他にもある。
・机の上に置く小物にもっと木のものがあってもよさそう。

 ああ、講釈だけはいくらでも言えます。しかし実際に物に生かすとなると、そこで真価が問われますね。

 1年ほど前に作った楢の椅子がわりと気にいってます。3センチに満たない楢の角材を通しほぞで組み合わせ、背もたれはわずかにカーブさせています。座は8ミリの綿のロープを編んだものです。軽く、ひかえめでかつ個性的、綿ロープの座り心地がことのほかいい、楢と綿の白い色のコントラストがいい、勝手にほめまくっていますが、上に書いたことの2つ3つは具体化できたのではないかと思っております。
 また、今進行中のタンスの設計などしていますと、小規模の量産体勢というのが必要不可欠ではないかと感じています。1つの作品をひとりのお客が買ってやっていけるような特殊な大先生は別にして、一つの作品を複数の人に提供することで、リーズナブルな価格と、それで生きていく人のバランスがなりたつと思います。
 そんな意味で、東京でおじんさんと見たウェーグナー展のビデオは非常に参考になりました。その時バッタリ会ったM民芸の職人さんのAさんは先日の松本で、「私らは今までやらないでいいことに時間をさきすぎていたように思いました。機械をもっとうまく使う工夫をすべきなんですね。」と言っておられました。まさに同感です。

95/06/10 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(99)>木工書

 私は近くのKさんの工房で木工の基礎は習いましたが、その後はほとんど本を見て手探りでやってきました。日本の木工書で役にたったものは残念ながら多くはありません。最初の頃書きましたように、入門と言う意味では柿谷 誠さんの「KAKIのウッドワーキング」ですが、専門的に木工をやるとなると役不足です。今回はプロを目指すレベルの人に良いであろう本を紹介します。

・(図解) 木工の継手と仕口  鳥海義之助 著 理工学社

 以前にも推薦しましたが、洋書をかなり集めた今でも、この本は日本の木工を伝える数少ない図解本で、私の友人のクラフトマンもこの本をアイデアの出発点にしているほどです。欲を言えば、具体的な寸法や加工方法について述べてあればいいのですが。しかし、技術書となるといいものはありません。しいてあげると

・図解 木工技術  佐藤庄五郎 著 共立出版

 でしょうが、不満はいっぱいあります。しかし辞典的な意味では便利です。
 一方洋書となると状況は一変します。 rec.woodworkingのFAQで推薦されていた木工書を引用しますと

以下引用(Copyright (c) 1994 by James J. Roche. All rights reserved.)
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GENERAL WOODWORKING Cabinetmaking and Millwork - John L. Feirer ISBN 0-02-675950-0
New Yankee Workshop - Norm Abram ISBN 0-316-00454-5
Classics From The New Yankee Workshop - Norm Abram ISBN 0-316-00455-3
Mostly Shaker - Norm Abram ISBN 0-316-00473-1
Encyclopedia of Furniture Making - Ernest Joyce ISBN 0-8069-6441-3

FINISHING
The Woodfinishing Book - Michael Dresdner ISBN 1-56158-037-6

INTRODUCTORY WOODWORKING
Basic Woodworking - Sunset Books ISBN 0-376-0-1628-0

JOINERY
Tage Frid Teaches Woodworking: Joinery Tools and Techniques.
Tage Frid ISBN 0-918804-03-5
Tage Frid Teaches Woodworking: Shaping, Veneering, Finishing
Tage Frid ISBN 0-918804-11-6 (out of print though)
Tage Frid Teaches Woodworking: Furniture Projects
Tage Frid ISBN 0-918804-40-X

TOOLS
Router Jigs and Techniques - Patrick Spielman ISBN 0-8069-6694-7
200 Original Shop Aids & Jigs for Woodworkers -Rosario Capotosto

WOOD
Understanding Wood - R. Bruce Hoadley ISBN 0-918804-05-1
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 これらの本はいずれもすばらしい内容ですが、私が絶えず感心して見ている本は・Tage Frid Teaches Woodworkingの三部作・Router Jigs and Techniques - Patrick Spielman・Encyclopedia of Furniture Making - Ernest Joyce・Understanding Wood - R. Bruce Hoadley

 そして、FAQにはでてきませんが、以下の本も絶えず愛用しています。
・How To Build Shaker Furniture - Thos.Moser・James Krenov の三部作・Der Mobel Bau(メーベルバウ、ドイツ語)

 これらの洋書を直に輸入して思う事は、なんと日本の本が高いのだろうということです。とくにパソコン関連の本が書店の棚を埋めるようになってから、本の値段がグーンと上がったように思います。また、大手の洋書輸入業者も最近では英語権の本は比較的安くなりましたが、入手しにくい本については今でも手数料が高すぎると思います。
95/06/19 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(100)>各種入手先

 昨年の夏の卒業の日に、卒業証書とともに4ページほどのコピーが全員に配られました。工具、材木、金具、化学薬品などの入手先のリストでした。日本人の自分は言葉の壁もあり、あまり利用していませんが、現地の人にとっては、自分で木工を続けていくのにこんなに役立つものはないと思います。その時とても感激し、自分もこの手の情報はしまいこまずに公開して行こうと思いました。
 しかし、不特定多数の方が見る事のできるこういう場ですので、小さなお店の紹介がかえって流通の混乱をおこしたりすることも考えられますので、そんな心配のないところにしぼって紹介します。
 まず顔を出して実際に見ることが大切と思い、場所を中心に書きます。大阪が多いはお許しのほどを。実際に行ったことがあるところだけを書いています。
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(木工手道具、電動工具)
台新
大阪市浪速区日本橋TZONE前
電動工具も多いが、奥の手道具は昔から定評がある

尾崎電気
大阪市浪速区日本橋
五階百貨店の近く電動工具

かね一商店
大阪市浪速区日本橋
五階百貨店の近く電動工具も多いが、普及品の大工道具が多い。

柴商
大阪市浪速区日本橋
五階百貨店の近く手道具中心の店

青木砥石
大阪市浪速区
黒門市場の近く、堺筋に面している砥石専門店

松本金物大阪
JR天満駅下車
商店街を300メートルほど南に行った右側比較的安く切れる刃物が多いと思う。

布利商店
奈良市今在家近く、大仏殿の近く奈良市では「ぬのり」という評判。電動工具も。

平出商店
959−12 新潟県燕市白山町1−1−52 TEL 0256-62-2819
伝統刃物の行商屋さん、カラーカタログ(有償)有り。

井上刃物店
東京都墨田区立川伝統刃物のみ

水平屋
東京浅草合羽橋のすぐ近く行った時しまっていたが、大きい店でした。

大江金物
東京新宿
伝統刃物は縮小傾向

高刃物
奈良県大和郡山市伝統刃物と研ぎ

フソー株
奈良県桜井市吉備戎町588
西ドイツALTENDORF社の木工機械輸入もと

(材木)
中田木材工業
大阪市住之江区平林南1丁目4−2
TEL 06-685-5315
最近小口のお客にも対応している。
道材中心

勘定木材
和歌山県橋本市隅田町上兵庫
一風変わったお店

斉藤木材株
大阪出張所大阪市西区南堀江道材
小口には向かないようです

服部商店
岸和田市材木町16−1
道材全般

紅春
大阪市境川
紅松専門店

小西銘木
摂津市鳥飼銘木町
栃など

水谷銘木
摂津市鳥飼銘木町
欅、栃、他

岡利
京都市中京区東洞院通丸太町下がる
紅松専門店

黒田木材店
京都市伏見区醍醐下山口町
神代楢など特殊材

北路桐材店
京都市右京区西院安塚町桐
米広葉樹材

鹿野木材店
奈良市草小路町909
建築材から銘木まで

(その他)
野崎化工
大阪市西区南堀江
塗料

山中油店
京都市下立売通智恵光院西入
油各種

藤田商店
東京都台東区千束塗料、木蝋など

釘徳金物
大阪市北区天神橋4丁目金物多数

(書籍、輸入関係)
東光堂書店
東京日本橋
大阪支店も有り木工洋書全般

オフ・コーポレーション
静岡県清水市いはら町
TEL0543−67−6511
輸入工具、本など通販店

Linden Publishing Co. (800) 345-4447
352 W. Bedford #105 (209) 227-3520 Fax credit card orders
F resno, CA 93711-6079 (209) 431-4736 Customer se rvice
Woodworking books.

MLCS Ltd. (800) 533-9298
P.O. Box 4053
Rydal, PA 19046
Router Bits

Woodcraft (800) 535-4482
41 Atlantic Avenue
PO Box 4000
Wide range of tools for craftsman. Nice catalog, good prices,
excellent delivery.
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我ながら「いろんな店に行ったりコンタクトをとったりしたものだ」と感心しています。

95/06/23 *** WWM(Wood Work M), unh86339@pcvan.or.jp ***

WWMおじさんの木工講座(101)>振り返ってみると

 いよいよ一応最終回ということになりました。実を言いますと、これを始めた理由は、その頃世間話に終わるMSGが多くなったように感じて、「木工の専門的な話がほしい」と思っていたのがきっかけです。人に要求するよりまず自分からという軽い気持ちで始めたのです。
 KAGUにはじめておじゃまをした頃は、本業の方で精神的にもまいってノイローゼ気味、木工も中だるみの大スランプの時期でした。スランプ脱出法などで皆さんからあたたかくきびしいRESをいただいたことを今でもはっきり覚えています。オルガン屋さんからは「スランプというのは甘えです」ときびしいが全くそのとおりの叱咤激励をいただきました。
 木工講座をはじめて感じたことは、RESのありがたさです。何の反応もなければ到底続くものではありません。皆さんの上手なオホメの言葉に気を良くして調子にのって続けました。一応の区切りとして、今までの講座の内容を一覧にして振り返ってしめくくりとさせていただきます。。
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(001) 94/06/18 はじめに
(002) 94/06/19 手道具の購入
(003) 94/06/20 裏だし
(004) 94/06/21 研ぎ
(005) 94/06/22 研ぎ余談
(006) 94/06/23 台の刃を入れる
(007) 94/06/25 穴堀の練習
(008) 94/06/26 ホゾの加工
(009) 94/06/27 手加工の重要性
(010) 94/06/28 子供椅子の製作例
(011) 94/06/30 各種の材木
(012) 94/07/01 材木屋へ行く
(013) 94/07/02 電動工具1
(014) 94/07/03 電動工具2
(015) 94/08/30 北欧編−工作環境
(016) 94/08/30 北欧編−ワークベンチ
(017) 94/08/31 北欧編−研ぎ
(018) 94/09/01 北欧編−スプーン作り1
(019) 94/09/02 北欧編−スプーン作り2
(020) 94/09/03 北欧編−感じた事など
(021) 94/09/04 マカバのテーブル注文製作1
(022) 94/09/05 マカバのテーブル−天板加工
(023) 94/09/06 マカバのテーブル−天板のハギ
(024) 94/09/07 ハギについて考える
(025) 94/09/08 続ハギについて考える
(026) 94/09/09 天板の固定のしかた
(027) 94/09/10 アリミゾ加工
(028) 94/09/11 ボンドと容器など
(029) 94/09/12 テーブルの脚の形
(030) 94/09/13 脚部の加工
(031) 94/09/14 ホゾの加工
(032) 94/09/15 脚部の仕上げ
(033) 94/09/16 鉋削り
(034) 94/09/20 組立
(035) 94/09/21 天板削り
(036) 94/09/22 天板削り余談
(037) 94/09/23 オイル仕上げ
(038) 94/09/24 オイル仕上げ
(039) 94/09/25 設計の失敗談
(040) 94/10/03 休憩−クラフトフェア
(041) 94/10/04 仕上げの種類
(042) 94/10/06 丹波フェスで並べた作品など
(043) 94/10/08 同上
(044) 94/10/10 テーブル製作反省
(045) 94/10/13 椅子のデザイン
(046) 94/10/14 同上
(047) 94/10/15 椅子談義
(048) 94/10/17 スプーン作り
(049) 94/10/19 スウェーデンの刃物研ぎ
(050) 50回記念アンコール特別企画オイルフィニッシュについて
(051) 50回記念アンコール特別企画オイルフィニッシュについて
(052) 50回記念アンコール特別企画オイルフィニッシュについて
(053) 94/10/28 鉋の刃口をうめる
(054) 94/10/30 道具箱の製作
(055) 94/11/03 タブテール加工
(056) 94/11/04 タブテールの機械加工
(057) 94/11/07 道具箱
(058) 94/11/11 道具箱
(059) 94/11/13 道具箱の組立
(060) 94/11/14 道具箱の仕上げ
(061) 94/11/17 丁番のとりつけ
(062) 94/11/20 道具の収納
(063) 94/11/24 ノミの収納
(064) 94/11/30 材積計算
(065) 94/12/08 大口注文タンスの設計
(066) 94/12/13 ビスケットジョインター
(067) 94/12/15 同上
(068) 94/12/18 クリスマスプレゼントのコースター
(069) 94/12/20 チーク材の買い出し
(070) 94/12/26 材木の購入
(071) 94/12/30 板の下ごしらえ
(072) 95/01/05 ホゾ穴の墨付け
(073) 95/01/08 チーク板の3枚割り
(074) 95/01/15 ビスケットジョインターによるハギ
(075) 95/01/22 溝きり
(076) 95/01/24 柿渋
(077) 95/01/26 シェラック
(078) 95/01/30 アンモニア
(079) 95/02/02 ベスターの砥石
(080) 95/02/07 スクレーパー
(081) 95/02/15 スクレーパーの仕立て
(082) 95/02/24 被せ面2枚ほぞつぎ
(083) 95/03/05 平面と直角を作る工夫
(084) 95/03/08 続ビスケットジョインター
(085) 95/03/19 量産体勢
(086) 95/03/24 よく使う治具
(087) 95/03/26 チークのタンス完成 (注:87番がダブッていました)
(088) 95/04/06 よく使う治具、その2
(089) 95/04/14 ルーター
(090) 95/04/23 シェラック
(091) 95/04/25 続シェラック
(092) 95/04/26 続々シェラック
(093) 95/05/04 ルータージグテクニック
(094) 95/05/13 ボブさんのルーターテーブル
(095) 95/05/20 作品紹介
(096) 95/05/26 作品紹介2
(097) 95/06/04 製作ノートから
(098) 95/06/10 創りたいもの
(099) 95/06/19 木工書
(100) 95/06/23 各種入手先
(101) 95/06/28 木工講座を振り返って
        (北欧木工漫遊記は別にしました)
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