Run Ou t Of Road 1
1990年春 遊輪通信vol.2掲載
突然だが2月の始めに2台目のバイクを員った。最初の予定ではNSR50を貢ってミニバイクサーキツトで遊ぼうと思っていたのだが諸般の事情でそれができず、その替わりにオフロードバイクを買うことにした。当然予算の都合上125cc以下だ。で結局何を買ったかというと、ホンダのNX125なのだ。保健付きで18万円。定価が30万円なので割と安い方だと思う。
NX125は、2年ほど前の脱レブリカの波を受けて登場したTDR,AX一1のようなオン、オフを問わないオールラウンドスポーツバイクの中の一台で、ちょうどAX−lの弟に当たる(もっとも、AX一1は海外ではNX250と写ばれているので、輪出用のNX650ドミネーターを頭としたNXシリーズの未弟と言った方がいいかもしれない)。しかし、車体はオンロードよりのAX一1と違い、純オフローダーのXL125をぺ一スにしているのでオフ走行は割と得意なほうだ。ホングの意図としてはオシャレな都会の足として売ろうとしていたんだろうけど。で、そのNX125、どれほどの性能を持っているがというと、出カ12PS、トルク1kg‐m、ちょうどNSR80と同じくらいと考えたらいい。けど重量は125ccそのものなので、はっきり言って低速の加速はスクーター並み、(でも最近のスクーターは速いからねえ・・・)5速ワイドレシオミッション(ワインデイングではちょうどいいギアが見つからない・・・)最高速105km/h(メーター読み)。こう書くと、なんだしょうもないバイクだな、と思う人がいるかもしれない。まあ、パフォーマンスを重視すると80km/hで頭打ちのするバイクなんて乗ってられないかもしれない.けど、これはそんなパイクじやない、というより、オンロードスポーツに乗っている人の価値感をひっくりかえすバイクなのだ。
最近僕はCBR250RとNX125を交互に使っている(ただし、バイトで新御堂筋を走る時はCBRを使う)。CBRで走ると40Xkm/hで走る道もNXだと30km/hになる。CBRと同じ速度が出ないわけじやない。出す気にならないのだ。これにはいくつか理由がある。まず4stシングルエンジンであること。そしてオフロ−ダーだということ。僕が思うに、2ストロークエンジンは回してやらないと気分が良くならないエンジンで、4ストロークエンジンは回さなくても楽しいエンジンだと思う。同じように、4気筒エンジンはやっぱり4stでもある程度回したくなるエンジンで、逆に単気筒エンジンは回したくないエンジンだと思う。(僕なんかNXをノッキング寸前の2500〜3000回転で走らせて単気筒特有のドコドコといったフイーリングを楽しんだりしている)。それからオフローダーという要素。オンロードスポーツは速く走るためのバイクだから加速やコーナーリングを楽しむためついついアクセルを開けるが、オフロードバイクは不整地を走る楽しさがメインのため、ただ走るだけ(しかも道が悪いほどいい)で楽しいのだ(もっとも慣れてきたら林道でガンガンとぱしたくなるかもしれない)。
もちろん、NXも速く走らせることはできる。80km/h巡航までならなんとかなるものだ。ただ普通に走らせたのでは速くは走れない。レッドゾーンまできちんと回し、常に高回転を推持しておかなけれぱならない。高性能バイクに乗っている人には走らせにくいかもしれない.上り坂や高速域では1度アクセルを戻すとシフトダウンしない限り回転が上がらなくなるのだから(アクセルひとひねり、という訳にはいかない)。これはある意味で低性能バイクのメリットだ。フラットなトルクと余裕のパワーで楽に走れるバイクは手抜きができるためかえってライテクの向上につながりにくいのではないか、と思ったりもする。この意味でとても面自いバイクは小排気量の2stバイクだ。一度乗っただけだがNSR80などは、普通に加速していくと‘こいつ小さいくせにやけに速いなあ’という感じなのだが、交差点などが近付いて一度アクセルを戻すとそのまままたアクセルを開けてもタコメークーはうんともすんとも言わなくなる。そういう、パワーバンドのはっきりしたバイクなのだ。余裕をもって楽に走らせたいのなら4st大排気量パイクがいいが、ライテクを(特にアクセルコントロールとシフトチェンジ)学ぶには小さなバイクの方がいいと思う。小排気量パイクのメリツトは他にもある。まず(感覚的にだが)事故をおこしにくそうな事。45馬力ものパワーはぽおっとしているとコントロールできなくなる時があるし、絶対性能が高いということはアベレージスビードも高くなることを意味し、とっさの時に反応できなくなる事があるが、12馬力ならまずそんな事はない.それに何といっても維持費が安い。250ccオンロードバイクを中古で買うと車体で30〜50万円、任意保健で10〜15万円もするが、125ccなら車体で20万円前後、任意保健はなんと2万5千円ほどですむのだ(これは大きい!)。燃費も4st 250ccなら15〜25km/lだがNXなら28〜40km/lなのだ。もちろんデメリツトもある。僕が思うに最大の欠点はクオリティが低いこと。NSR125Fをのぞけぱオンロード125ccはやはり安っぽくみえる(オフロードモデルはそうでもないんだけど)。それから高速道路に入れないのも欠点の一つだが、一体一年間に何回高速に入るというのだろう。それでもあなたはおおきなバイクに乗りますか?(と言いつつやっぱりでかいバイクに乗りたいと思うのはバイク乗りの悲しいさだめ?)
文・木下直樹