1999/4/24 上桂川(桂川)支流細野川
いよいよ我慢の限界である.これまで諸般の事情から,年券の購入を見合わせていたが,各管理釣場もそろそろ店じまい.それに,こういっては何だが,飽きた.やはり,流水である.やりにくいけど,やっぱり流水が好きなのだ.すなわち渓流.去年は美山川に通ったが,そこから得たのは,渓流釣りは「修行」であること.とにかくバイトが少ない.しかも「う」をはじめとする外道ばかり.しかし,その反面タックルの必要性は痛感したし,それを教訓として,改善を図ってきた.禁漁期中も,流水でのルアーハンドリングを練習してきたつもりだ.バリエーションを広げるために敬遠していたミノーもいくつか(いくつも,の間違いという噂もある)揃えた.
どこの年券を購入するかは去年の夏から決めていた.美山川ではない.あそこは,もっと腕が上がってからでないとだめだし,年券が高い(7500円).高い金を払って,「う」ばかりというのは遠慮したい.
そこで上桂川である.ここは,下流域はすでに下見を済ませているし,上流域の広河原は有名な場所である.去年通ったときから,ここで釣りをしたいと思っていた.ちなみに,上桂川の年券は5000円である.安い.
よくあるパターンなのだが,今日はとりあえず年券購入が目的であり,とりあえず釣り道具を持っていった.あくまでも,とりあえずである.だから,出発は午前10:00.まじめな釣り人からすれば怒られる時間である.同行者は去年秋の大戸川からつき合いのある「ディープ」シンジ君.マジ,ごっつディープ.で,年券を無事購入するのだが,行く道すがら,シンジ君はすでによだれジュルジュル状態であった.でも,それは渓流を知らないから,とは口が裂けてもいえない.なぜなら,一緒に渓流に行ってくれる人がいないからだ.何としても引きずり込む.それが狙い.
さて,いよいよ細野川に入渓する.午後2時半.天気は小雨ぱらつく曇天.少し肌寒い.ぐるっと車で回ってみたのだが,結局上桂川に流れ込む,細野川の最下流からのスタートとなる.というのは,適当なところに入川道がなかったからと,堰堤を狙いたかったからである.
円谷プロ公認のネオプレーンウェーダーを装着し,タックルをセット.ロッドは渓流デビューのSCEPTER氏.こいつなら流れにも十分なパワーがある.ただし,神経質ともいえるほど繊細なロッドティップ(カタカナ!)を持つASKとどう違うか?わくわく.格好だけは,ホント一人前.まずは,URANのアユカラー2.5グラムから始める.
いざ,川に立ってみると,やはり流れが速い.川です,川です,水が流れる川なのでーす.川の真ん中から端を狙うも,流れに翻弄されてルアーが仕事しない.すかさず,URANのゴールドヤマメ4グラム(塗装がはがれてきている)に換装.この重みが何となく安心できる.やっぱりスプーンは4〜5グラムだ.ASKでは,重量的に限界かと思われたが,SCEPTERだとまだ余裕がある.ロッドに乗せて,ゆったりとアップでキャスト.いい感じ.リトリーブ中も,ウォブリングがロッドティップに伝わってくる.こいつはいい.
堰堤までは200メートルぐらいあるのだが,時間も時間だし1ポイント1キャストを繰り返す.アタリはない.堰堤が見え始めたころに,第一のおいしそうなポイントを発見.川の真ん中に大きな岩があり,流れが分断されている.それが再び合流するところに教科書的な流れの緩い箇所.えいやとばかりにキャスト.イメージは,分断される流れにアップキャスト.その後,その緩い流れの三角地帯を斜めに横断するようにリトリーブする.ぷるんぷるん,と小さなアタリがあったので,軽くあわせを入れる.この調子じゃ…と思いつつ上げてみると,小さいながらもアーマーゴーンではないか!!!
その瞬間.キレたね.
天然河川.ルアー.アマゴ.去年1年.どれだけ修行だったか.けれどもそんなことどうでもいいや.釣ったのだ.やったー!!!脱ウグイダー.変身アマゴーン.ひゃあっはっはあー.と,撮ったのがこの写真.小さいよ,渓魚は.お世辞でもレギュラーサイズとはいえません.でも,アマゴなんですよ.
さあ,これで気がすごく楽になった.あとはシンジ君が釣ってくれるのを待つばかり.何としても釣ってもらわなければならないのだ.だって,引きずり込むのが目的だから.
そして,堰堤下に立つ.白泡が立ち,定石通り,深み.何かいるはず.ここはシンジ君に譲り,あたしは見学.スピナーを使っているようだが,アタリなし.5分ほど粘るも,結局何も釣れず.さらに上流のいかにも渓流らしい場所がいくつかあったので,そちらへ急ぐ.ためには,まず2メートルほどの堰堤を上らなければならない.シンジ君曰く,
「どうやって上るの?」
あたし答える.
「こーする」
と,おもむろにダッシュし,一気に駆け上がる.シンジ君は少しあきれたご様子.けど,それが一番早いじゃん.
上がったところは,淵.ここにはアマゴはいないと思い,あたしは先を急ぎたいところなのだが,管理釣場でいえば大物が潜むところ.シンジ君は投げたいみたいなので,どうぞと譲ると,
「ホンマにええの?」
ホントにいいんです.「う」しかいないでしょうから.
シンジ君が堰堤脇を狙っている間,あたしはそこから上流を狙う.ホレ来た「う」.しかし,シンジ君が見せて見せてとせがむので,見せてあげる.ナゼかわからないけど,それでシンジ君に気合いが入る.とはいうものの,シンジ君は釣れず.
それから1時間ほどはまったくのノーバイト.そうそう,渓流ってそうなんだよな.とにかくバイトが少ない.いい加減,管理釣場の雰囲気を忘れなければ.う〜ん,通いすぎたかな(そんなに行ってないけど).あのね,やっぱね,管理釣場の調子で行くと,渓流って本当にアタリないもん.渓流はピンポイントの釣りだから,テンポよく釣り上がっていかなければおもしろくない.だが,シンジ君は結構粘る.わかる.普通はそうだよな.それに,ノーバイトだか
ら焦りが入ってきてると思う.まるで去年の大戸川でのあたしみたい.それは困るので,スプーンを思いヤツに換えてみてはとアドバイス.あたしがアドバイスというのも変だが,見ていてもルアーが泳いでない.流されているだけだから.シンジ君のロッド(Abuのなんとかってやつ.エ21000)は,今回デビュー戦だし,いつもはバス用のエキストラファストのライトを使っているので,感触がわからないのだろう.
あたしはこの頃から,ぽつぽつと「う」が釣れ出す.言い訳でもなんでもないけど,アマゴがいそうな流れだしとか開きは,シンジ君に先行させてたから,おいしそうなところはできなかったのだ.残るのは,いかにもやりにくそうな瀬.イヤ,当然しますよ.ここを攻められるようにならないと釣果は上がらない.
たとえ「う」とはいえ,釣れると釣れないはやはり大きいのだろう.それに,シンジ君は川で渓魚(「う」は魚だが,一応ここでは含めておこう)のアタリをとっていない.すなわち,入渓して2時間,全くのアタリなし.しかも,気配なんか感じられるはずもない.「う」の姿は見えるけれど,かかってくれない.
話はそれるのだが,あたしキャストすると「う」が釣れて,良そうなところにシンジ君がキャストしても,なぜ「う」は来ないのか?シンジ君は,「う」はあたしの友達としきりに言うが,そんな気は毛頭ない.あたしの友達はアマゴさんなのである.「う」はさしずめ,ショッカーとか下っぱなどの雑魚にすぎない.この現象を詳細に解析した結果,あたしは使用しているルアーのせいではないかと結論づけた.あたしは入渓してすぐに,URAN4グラムに付け替えて,ずっとそのまま.これは,釣れる釣れない以前の問題で,こいつはアップでもダウンでも,もちろんクロスでもきれいにウォブリング&ローリングする(もしかしたらウィグリングかもしれない.とにかくよく動く).つまり使いやすいのだ.
それに比べて,シンジ君はPUREの3.5グラムをセレクト.お互いにゴールドベース.しかし,決定的な違いは,ピュアの基本アクションはローリングなのである.だから,リトリーブスピードが遅くなると,ルアーはラインにぶら下がった状態で動く.「う」がたむろしているような止水,あるいはそれに近い緩い流れの淵では効果がないのかも.URANはそんなところでも派手にアクションする.
このあたり,管理釣場でもURANが定番に上がる理由なのかもしれない.
言い換えると,「う」はあたしの友達ではない.「う」が釣れるのは,あくまでもルアーの性能なのだ.PUREとは違うのだよ,PUREとは!
全くの余談ではあるが,このとき,あたしはURANを通販(メーカー直販)で購入することをすでに決めていた.だって,使いやすいんだもん.
さて,「う」ゾーンと「あ」ゾーンを繰り返しながら,遡上していく.足下に注意しないと踊ることになるので気を抜くことはできないが,この雰囲気が良い.これを味わいたかったから,渓流に来ようと思ったのだ.おかしい?良いところに気が付きました.確かに.来てもいないのに,その雰囲気を味わいたかった…矛盾ですな.答は想像力.それは間違っていなかった.確かに思った通りの雰囲気なのだ.しかし,想像はしていたが,それを遙かに上回っていたものがある.それは,「修行」である.釣れない.あたしは去年イヤというほど味わっているので,半分慣れっこなのだが,シンジ君にとっては,とにかく雑魚すら釣れない.どこを狙ったらいいのかわからない.キャストしても自分の思うようにルアーを泳がせることができない.そこが渓流の難しいところだと,あたしは解釈している.それゆえ,自覚できるほどに腕を上げたときの感動も大きいだろう.
いくつめかの瀬が連続するところ.シンジ君は先行している.あたしは落ち込みの上にある,長さにして1メートルほどもないところへダウンキャスト.アタリ!すかさず合わせるも,魚の腹が見えたような…それを見てシンジ君が戻ってきて同じようにキャストする.
ところが着水点がそれた上に,痛恨の根がかりとなってしまう.去年のあたしの得意技である,自らポイントをぶっつぶしに行くことになるが,そのとき渓魚が走ったようだ.やはりさっきのはアタリなのだ.むっちゃ悔しい.
さらに,落ち込みが岩盤にぶつかっている深さのあるポイントにさしかかる.シンジ君がそこでやりたいようだったので,heaven持ってたらその方が良い,と声をかける.あまり気が乗らない様子であったが,流れが強く,深さがあるところにはheavenはもってこいで
ある.そして粘ること5分.
「釣れた!」
とそれまでのブルーさはどこへやら,みなぎる勝利感.たかだかに渓魚を上げてみせる.アマゴ!しかも15センチぐらいのやつ.立派じゃないですか!いうまでもなく,記念写真.この1匹で,渓流にはまってくれたとあたしは信じる.ここまで3時間強.耐えた甲斐があったというものだ.
その後,あたしは「う」を何匹か釣ったくらい.6時を回っていたので,下ることにする.よくあるパターンなんだけど,入川道を確認しておかないと,暗くなって身動きがとれなくなってしまう.それはやばい.確か途中で入川道を見つけていたのだが,果たしてそこからどのくらい上がってきたのか?内心は焦る.薄暗くなってくると偏光グラスをかけると視界が暗くなってしまうし,かけなければ川底の石の様子が分からないし.とにかくどちらかが見つければ良いので,あたしはずんずん下ってゆく.何度か踊りつつも,耐えて足を進める.去年も何度も思ったことだが,引き際が肝心なんだよな.もっと早めに下り始めていれば,ダウンで狙うこともできるのに.
汗だくになりつつ,ようやく入川道を発見.心の底からほっとする.そして,無事道路に出る.すでに辺りは暗い.車へ戻る途中,シンジ君が足を滑らせて,ガードレールの隙間から落ちそうになる.心身共に疲れたようだ.そりゃ,釣りだけじゃなく,足下のことがあるからなあ.あたしは元気.やっぱ渓流って良い.サイコー.
シンジ君が最後に曰く,
「渓流って,修行やな…」
けど,行くときは必ず誘って,と念を押されたのでした.
今回,ロッドがSCEPTERとなりました.感想ですが,まずロッドパワーが十分にあること.それでいて,ティップは繊細.ASKは神経質ともいえるぐらい繊細だったが,SCEPTERはそこまではいかない.これは,ASKはファスト,SCEPTERがミディアムというところに起因するのかもしれない.それに関して,キャストのアキュラシー性能もシビアだ.よく,源流部での正確なキャストにはファストが良い,とあるがやはりその通り.本当はファストが欲しかったんだけど,5.6ftにはなかったんだよな.残念.
総合評価としては,80点以上をつけることができるでしょう.
以下,4/29釣行に続く…