多井畑貝化石層

 神戸層群はほとんどが淡水性の地層ですが、多井畑累層の一部には海生層が含まれています。何回か足を運び、本を読んだり、この貝化石を研究していた安藤保二先生に聞いたりしました。やっと見つけたのは、前から何回か歩いて見ていた赤っぽい地層でした。赤っぽい地層からはレキと思っていたのが、よく見ると貝の化石だったので、びっくりしたことを覚えています。
他にも採集できるところはないかと多井畑地域を探してみましたが、採集できるところは限られていました。そのうち、コープが建設される現場などからはっきりとした貝化石が見つかりました。見つかった地点はいずれも断層の近くで、地層は傾斜しています。
下位の地層が断層により押し上げられ、部分的に下位の地層が現れているようです(現在、産地は消滅しています)。
 これらの貝化石は最近、人と自然の博物館の松原尚志学芸員さんらによって、研究がまとめられました。
それによると、この多井畑累層の干潟群集は国内最古のもので、10種もの新種を含んでいるそうです。また、地質年代も3800万年前から3700万年前と植物化石の産出する地層よりも、200万年から300万年も古いことになります。下の写真は、化石の整理をしていたところ、少しだけ保存していました。いずれ近いうちに寄贈する予定です。
 ところで、このような時間差があれば、不整合が考えられるのではないでしょうか。しかし、多井畑凝灰岩と多井畑貝化石層の間の地層には凝灰岩や植物化石もなく、検討材料が少ないといえます。火山灰による累層区分は合理的でしたが、もういちど検討する必要があるといえます。また、三田盆地との関連も含め、年代、累層区分が将来的な課題といえるでしょう。

参考
◆神戸市で発見された新種の貝類化石10種について 人と自然の博物館 松原尚志
(神戸層群貝化石記者発表 2010年7月1日・博物館のホームページで見れます)
◆Eocene Mollusca from tne Tinohata Formation in KOBE City,southe west Japan(2010)
松原尚志・栗田裕司・松尾裕司
(日本古生物学会の英文誌「パレオントロジカル・リサーチ」第14巻第2号)

巻貝の化石(ヘナタリ?) 二枚貝の化石(シジミ?) 二枚貝の化石(?)