しかし大口径望遠鏡が欲しいとは言ってみても、資金はあまりありませんし、観測場所はマンションのベランダだし、赤道儀はとりあえずは現行のEM100を使うとすると、そんなに大きな鏡筒は買える訳もありません。その一方で、TSC-225の口径22.5cmよりも明らかに大口径となると、25cmでは物足りず30cmは欲しくなります。そこで口径30cmクラスでさがしてみると、とりあえず手っ取り早いのはMeadeのLX200-30でしょうか。これだと架台込みの30cmシュミカセが70万円以下で買えます。しかし一度に70万円の出費は苦しいですし、フォーク式架台は他の鏡筒を載せて使う事が出来ないのが難点です。 次の候補は、セレストロンのC11/口径28cmシュミカセで、鏡筒のみで40万円以下で買え、重量的にも無理をすればEM100に載せられないこともありません。という事で、ほとんどC11に決めかけていました。しかしよく考えてみると、C11とTSC-225は口径が違うだけで、どちらもFの暗いシュミットカセグレン。補完する性格のものではないし、製品の質はTSC-225の方が上かも知れませんし、トータル性能的に大差ないと、より重いC11は結局使わなくなるのでは ? という疑問があって、購入決定には至っていませんでした。 英オライオン社製口径25cmF4.5ニュートンのテストレポートが、月刊天文誌2003年10月号に掲載されているのを見たのはそんな時でした。安価で軽量な短焦点ニュートンにもかかわらず、月や惑星の写り具合も結構良好に思えました。その後、天文ガイド誌の2002年11月号に口径30cmF4のテストレポートが掲載されている事を知り、さらに国内販売元のテレビュー・ジャパンのHPも調べました。口径30cmF4なら重量約10kg、価格も20万円程度と破格です。これだ ! という事で、数日後には、テレビュー・ジャパンにメールを入れ、EM100にも搭載可能な事を確認し、見積もりを取りました。口径30cmにはF4とF5.3があって、月・惑星撮影用にはFが大きいほうが有利で少し迷いましたが、結局重量がより軽く安価なF4を正式に注文したのは10月8日、最初にオライオンの記事を読んだ約1ヶ月後でした。なお価格は、鏡筒バンド、オスアリ金具と消費税を含めて、総額243,600円でした。 |
さて注文したのは10月8日、当初の入荷予定は12月末でしたが、実際に受け取ったのは、かなり遅れて2月15日でした。遅れはしましたが、この間の(そしてこの後も)テレビュー・ジャパンの対応は誠実なものでした。オライオンは150×50×50cm程度の、ビックリするほど大きなダンボール箱に入ってやってきました。しかしその大きさにもかかわらず、一人で運べるほど軽いのはさらに驚きでした。イギリスからの長旅のためか、箱の外見はかなりヨレヨレになっていましたが、ダンボールは3重になっており、鏡筒の両端部はリング状のクッション材で保護してあり、全く問題はありませんでした。光軸はかなり狂っていましたが、これは仕方ない事と思います。 | ![]() |
鏡筒を先端側から覗き込むと、右のような状態です。天文ガイド誌等のレポートにもあるように、約1mmの極薄スパイダーで、斜鏡金具は小さく、斜鏡本体は接着剤で斜鏡金具に3点接着されています。主鏡中心には、センターマークが見えています。 | ![]() |
主鏡側から覗いたのが右の写真です。完全シースルーで主鏡背面が見えています。3組の光軸調整装置の内側に、3本の六角穴付きボルトが見えています。これは主鏡固定用の押しネジのようです。この押しネジは、光軸調整金具より外側に設けた方が良いのでは ? と思っていると、その位置にも確かにネジ穴が3ヶ所あけてあります。ところがそこに押しネジを取り付けると、押しネジの先端が主鏡支持の樹脂ボルトに当たってしまいます。どうもこれは試行錯誤の結果のような感じで、初めは光軸調整装置の外側にネジ穴を開けて見たが、樹脂ボルトに当たる位置だったので、もう一ヶ所空けなおすにはスペースがないので、仕方なく光軸調整装置の内側にあけなおしたのでは ? と疑ってしまいます。最初の穴の位置をもう少し光軸調整装置の近くにあければ良い事なので、本機以降では改善されているかも知れません。なお、このタイプの光軸調整装置は、光軸が狂い易いとは思いますが、大変使い易いですね。 | ![]() |
ファインダーは9倍50mm、着脱式です。天頂ミラー付きで、覗くのは楽ですが、天体の導入はやりにくくいです。十字線は太めです。私の場合、明るい部屋とベランダを出入りして目がなれない内に覗くことが多いので、太い方が見やすくて良いです。見え味は悪くないと思います。 | ![]() |
左の3個がアイピースアダプターを分解したものです。写真上の、ドローチューブ側のリング(仮にAリングと呼びます)は60mmP0.75のオスネジでドローチューブにねじ込みます。中央のリング(Bリングとします)はAリングにはめ込んで、2ヶ所のネジで止めるようになっていますので、視野回転が可能です。。BリングのAリング側はテーパー形状で、しっかり固定できます。Bリングのアイピース側は、Tリング用オスネジ/36.4mm径メスネジとなっており、この36.4mmメスネジに、一番下のアメリカンサイズアイピースアダプターをねじ込みます。アイピースアダプターをはずしてBリングに一般のTリングをねじ込めば、一眼レフカメラを装着できます。 | ![]() |
鏡筒本体が到着してからおよそ2週間後、テレビュー・ジャパンよりロンキー検査証明書が届きました。右の写真では分かりにくいと思いますが、2003年12月5日の日付で、WAVEFRONT P.V.=0.185 と記載されており、波面誤差約1/5.4、鏡面精度約1/10.8と言う事でしょう。保証鏡面精度は1/8λ以下ですが、この鏡は1/10λ以下となっており、保証値内という事になります。写真のロンキー縞も、綺麗に平行です。 | ![]() |
さてオライオン鏡筒をとりあえずEM100に搭載して見ました。鏡筒本体は約10kgでTSC-225と大差ないのですが、鏡筒バンドとオスアリプレートが合わせて4kg近くあり、合計14kg程度となります。鏡筒が長いのも不利です。TSC-225では5kgと3kgの2個のバランスウェイトで余裕がありましたが、オライオンではさらに3.5kgを追加してギリギリの感じでした。この状態でも恒星時駆動も、X-Yの加速駆動(EM100標準付属のPD-4では4倍速が上限ですが)も動いていましたが、もともとEM100の積載重量は10kgが上限なので、厳しいのは事実です。 | ![]() |
上に書いたようにオライオン鏡筒をEM100に搭載するのはかなり厳しいので、結局新しい赤道儀としてNEWアトラクスを購入しました。NEWアトラクスはEM100より遥かに頑丈で、オライオンを搭載しても余裕で高速自動導入が可能なので、大変便利です。またオライオンとの外見のカラーマッチングもピッタリです。 | ![]() |
最後に本機で撮影した木星像の内で、現時点(2004.4)でベストのものを掲載しておきます。まだ撮影回数が数回ですし、光軸調整も充分とは思えませんし、大口径ほどシーイングの影響を受けやすいですし、私の腕前の問題もありますので、30cm大口径の能力を十分引き出したとは言えないですが、その片鱗は伺えるのではと思います。 | ![]() |
眼視で使う限り特に問題の無いと感じるオライオンの2インチ接眼部ですが、私の主目的である惑星の拡大撮影には役不足と感じられるようになってきました。問題点は、(1)ピントノブの僅かな回転でも移動量が大きく、微調整が難しい (2)ピントノブが重く、調整時に手による振動が伝わって、調整が困難 の2点です(と最初は思っていました)。
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次に電動フォーカサーの導入を検討しました。後付で導入できる電動フォーカサーとして、国際光器からJMIのモトフォーカスが販売されています。ビクセンR200SSの接眼部取付けタイプを購入すると、右の写真のように問題なく取り付けることが出来ました。 | ![]() |
そこで結局おきまりの接眼部の交換にたどりつきました。ゼロイメージシフト、微調整可能な軽いピントノブとなると、やはりクレイフォードでしょうか。その中でも品質と入手し易さから、スターライト・インストールメント社の製品が良さそうです。通常のクレイフォードがアルミニウムのドローチューブを直接ベアリングで受けているのに対して、スターライト社のものは摺動部は全てステンレスになっているようで、耐久性が高いという説明は説得力があります。 | ![]() |
この接眼部を選んだ理由は、(1)本体重量400g以下と軽い、(2)本体、スペーサー、送料、税金等を含んだ今回支払い総額で35000円程度と安い、(3)カーブベースやスペーサーが揃っている、などが挙げられますが、最大の理由は、テレビュー・ジャパンのHPに赤いフォーカサーを搭載したオライオンニュートンの写真が掲載されていて、「カッコイイ」と思っていたからです。仕事用であればクオリティ中心で選びますが、趣味の物ですから好みで選んでも良いと思います。 | ![]() |
内側から覗くと右のようです。仮止め状態なので、ボルト長さ調整や黒塗装はまだです。ドローチューブ外壁の光沢は、鏡面に近い研磨仕上げとなっているためで、これによりスムーズな動作を実現しています。最内側位置では鏡筒内にかなり突出していますが、実使用では繰出した状態になるので問題ありません。ドローチューブ内壁もやや光沢があるので、こちらは植生紙などを貼ったほうが良さそうです。 | ![]() |
さてこの接眼部に交換してからまだ一度も撮影していません。上で述べた3つの問題点が全て解決していると良いのですが、その答えが出るのは、しばらく先になりそうです・・・・・。 |
現状のオライオンです。といっても、当初とそんなに変わっている訳ではありませんが・・・。 | ![]() |
アイピースは、当初所有していたのはツァイスサイズのみで、アメリカンサイズが主流の現在では使いにくいので、惑星撮影再開時に、ミードのPL-40と12.5mm、ビクセンのLV-20,10,7mmを揃えました。2003年の火星大接近時はコリメート撮影だったので、アイレリーフの長いLVは使いやすかったと思います。しかしその後、拡大撮影になった事、LVよりもツアイスサイズの高橋Orの方が木星像の見え味が良かった事、オライオン導入により短焦点のアイピースが必要になった事から、安価な国際光器扱い谷光学のOr-4mm(オライオン用)と9mm(TSC-225用)を追加購入しました。 | ![]() |