「おそらく、もう定期券を購入することはないのではないでしょうか。」 今の家に住み、今の職場に勤める限り、もう定期券を購入することはありません。 そうです、「PiTaPa」が本格稼動し、私の定期入れから定期券が姿を消しました。 阪急電鉄では「PiTaPa」の愛称で、非接触型ICチップ埋め込みカードによる、入出 改札の高機能化が8月より実用化されました。 中学校に通うために初めて定期券を手にしたのが1976年の4月。 当時は、印字された紙ベースの券を上下ラミネートした3層構造でした。 紙単体での券を使ったような記憶もありますが、今となっては定かではありません。 裏面はマルーンのイメージを残す帯磁素材、表面は透明フィルムにより券面の記 載事項が判読できるようになっていました。 阪急の車体カラーを連想させるその定期券は、パスケースに入れているだけでも 心踊る何かを感じさせるパワーを持っていたように思います。 購入に際しては窓口に用意されたOCR用紙(初期の頃はOCR用紙ではなく単なる 上質紙ではなかったかと思いますが、上部にバーコードが印字されていたようにも 記憶しています。)に必要事項を記入し行列に並ぶ必要があり、定期券を購入する ために三宮駅や西宮北口駅へ出向いたものです。 定期券券面の記載は、自宅近くの乗車駅から学校のある降車駅までが左右に列 記されますが、窓口氏の入力が反対に行われたからでしょうか?左右が逆になる ことが稀にあり、この左右逆に記載された定期券が発券された場合は、その半年 間はどこかしっくり来ない、嫌な想いを抱き続ける期間でした。 この定期券も何時しか一枚ものの磁気カードに進化し、パスケースを肥大化させる ことは無くなりました。改札外の自動券売機に定期券発券の機能が盛り込まれ、web 経由で事前登録まで可能になったのは記憶に新しいところです。 この最新定期券でも、発券機によっては印字のカスレや黒筋ヨゴレが頻発し、その 券の有効期間内は、やはり嫌な想いを抱き続けなくてはなりませんでした。 そんな歴史と想い出のある定期券。PiTaPa切替キャンペーンで払い戻しまで行っ ていましたが(最後は一ヶ月定期でしたので払い戻し対象にはなりませんが)、有 効期限までは目一杯使ってやらねば。。。 そしてその日はやってきました。 あまりにもありふれた、ケースから取り出し改札機に投入するという行為は、この日 を意識しているにも関わらず、あっけなく過ぎて行きました。 帰宅時、体温が伝わり多少熱くなった一枚のカードを投入、取り出し口から吐き出 されたカードをしっかりと抜き取り、指先にまだ残る温かみを感じつつパスケースに 戻したのでした。 その夜、「ピタッと触れてください」と表示されたPiTaPa対応機は、何の不具合もな く私の通過を許し、翌日からはICカードを認識してくれています。 |
2004.9.20
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