My Voice No.33
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定期券最後の日
「おそらく、もう定期券を購入することはないのではないでしょうか。」
今の家に住み、今の職場に勤める限り、もう定期券を購入することはありません。

そうです、「PiTaPa」が本格稼動し、私の定期入れから定期券が姿を消しました。
阪急電鉄では「PiTaPa」の愛称で、非接触型ICチップ埋め込みカードによる、入出
改札の高機能化が8月より実用化されました。

中学校に通うために初めて定期券を手にしたのが1976年の4月。
当時は、印字された紙ベースの券を上下ラミネートした3層構造でした。
紙単体での券を使ったような記憶もありますが、今となっては定かではありません。
裏面はマルーンのイメージを残す帯磁素材、表面は透明フィルムにより券面の記
載事項が判読できるようになっていました。
阪急の車体カラーを連想させるその定期券は、パスケースに入れているだけでも
心踊る何かを感じさせるパワーを持っていたように思います。

購入に際しては窓口に用意されたOCR用紙(初期の頃はOCR用紙ではなく単なる
上質紙ではなかったかと思いますが、上部にバーコードが印字されていたようにも
記憶しています。)に必要事項を記入し行列に並ぶ必要があり、定期券を購入する
ために三宮駅や西宮北口駅へ出向いたものです。
定期券券面の記載は、自宅近くの乗車駅から学校のある降車駅までが左右に列
記されますが、窓口氏の入力が反対に行われたからでしょうか?左右が逆になる
ことが稀にあり、この左右逆に記載された定期券が発券された場合は、その半年
間はどこかしっくり来ない、嫌な想いを抱き続ける期間でした。

この定期券も何時しか一枚ものの磁気カードに進化し、パスケースを肥大化させる
ことは無くなりました。改札外の自動券売機に定期券発券の機能が盛り込まれ、web
経由で事前登録まで可能になったのは記憶に新しいところです。
この最新定期券でも、発券機によっては印字のカスレや黒筋ヨゴレが頻発し、その
券の有効期間内は、やはり嫌な想いを抱き続けなくてはなりませんでした。

そんな歴史と想い出のある定期券。PiTaPa切替キャンペーンで払い戻しまで行っ
ていましたが(最後は一ヶ月定期でしたので払い戻し対象にはなりませんが)、有
効期限までは目一杯使ってやらねば。。。

そしてその日はやってきました。
あまりにもありふれた、ケースから取り出し改札機に投入するという行為は、この日
を意識しているにも関わらず、あっけなく過ぎて行きました。
帰宅時、体温が伝わり多少熱くなった一枚のカードを投入、取り出し口から吐き出
されたカードをしっかりと抜き取り、指先にまだ残る温かみを感じつつパスケースに
戻したのでした。

その夜、「ピタッと触れてください」と表示されたPiTaPa対応機は、何の不具合もな
く私の通過を許し、翌日からはICカードを認識してくれています。

2004.9.20

amco@hi-ho.ne.jp  BACK