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レタッチは悪ではない
まずはじめに、これから書こうとしているレタッチとは、「写真原稿からスキャン
した画像データに対する種々の処理」についてここでは呼ぶこととします。

写真の世界では、基本的には撮影段階でフレーミングし、露出決定したものを
その後の処理では一切変更する事はありません。
撮影者がシャッターを切ったその瞬間の作品を後の工程で変更するのは望ま
しい事では無いためです。
トリミングをする事や階調の変化を及ぼすような処理は原則としてはタブーで
す。まず、この原則を知った上での画像処理を考えて行きたいと思います。

で、私のサイトに載せている画像は、どうかと言いますと、これは全てなんらか
の処理を行っています。「なんだ、原則違反じゃないか!」って声が聞こえて来
そうですが、これは違います。

●スキャナーで取り込んでも原稿のイメージを忠実に再現してくれない
これこそ、レタッチの必要性を最も感じる事柄です。
まず色、それにコントラストそしてシャープネス。
ポジやネガ、プリントのイメージがスキャニングされると、概ね上記の項目は、
大きく変化してしまいます。私のスキャニングテクニックが悪いこともあるでしょ
うし、機材のクオリティーの差もありますが、これは商用の印刷原稿用の機材
であっても、この項目は劣化する傾向があるようです。
シャドー部はコントラストが再現されず潰れてしまいますし、ハイライト部も飛ん
でしまいます。モニター表示を前提としてスキャンすれは僅か256階調(表示色
ではありません)のRGB各チャネルのデータに置きかえられる訳ですから無理
もありません。

だから、後で修正する必要があるのです。「より原稿に忠実に」デジタルデータ
へ変換するための処理として、です。

●修正は「原版を忠実に再現するため」のプロセス
そもそも、世にある印刷物、例えば写真集などでは、いかに原版に忠実な再現
が出来るかがポイントになっています。原版に忠実に再現するために、その過
程で起きた変化を原版のイメージに近づけるための処理である訳です。
当然、これにはレタッチをされる方のノウハウもあります。また印刷の世界では
RGB(光の三原色)ではなくCMYK(色の三原色)で、印刷機によりインキで再現
されることもあり各工程には更に高度な技術が必要です。
解像度でもモニター表示では72dpi、印刷原稿は一般的に350dpiの世界です。
仮にスキャンして、全く何の処理も施されなかったとしたら。。。?
「原稿、原版に忠実な再現は不可能」です。これは他でもない、元のイメージを
スキャニングによって変化させてしまった=手を加えてしまったことと同じです。

少なくとも、このような処理においては、「レタッチは悪ではない」はずです。
デジタルの世界では、この範疇以上の処理がなされる事が可能である事から
「レタッチ=元のイメージを変えてしまう」と誤解されているきらいがあります。
以前にも書きましたが、銀塩の世界でも、アナログとデジタルの融合は既に実
現して久しいことが判ります。

1999.12.07

amco@hi-ho.ne.jp  BACK