「自我の構図」の世界

  

  

 

   山際に沿い、崖を見おろす細い道を700メートルほど行った所に、
  羽衣の滝があった。高さ二百五十メートル。日本で第二の高さとい
  われるこの滝は、白いドレスが腰のあたりでいったんすぼまり、再び
  その裾を広げるように優美な形だった。高い滝上に、ここにもまた澄
  んだ秋空があった。

      (「自我の構図」 講談社文庫 p15)

  

 天人峡・羽衣の滝(石坂氏撮影)

      天人峡は旭川の中心部から、4条通りをまっすぐ東川方面に走って(もちろん車で)
         約45分。大雪自然公園の中を走るドライブは、新緑の季節も紅葉の季節も気持ちがいい。
         この美しい舞台から、嫉妬に満ちたドラマが展開していくのは、何とも皮肉な感じがする。
         疲れた心は、自然を見ることで、幾分癒されはするけれど、手痛い傷を負った心は、もう、
         それすらも目に入らなくなってしまうのかな・・・

         小説には登場しないが、羽衣の滝からさらに約30分奥へ歩くと、全く趣の違う敷島の滝がある。

 

 敷島の滝(石坂氏撮影)