リンク小説
2話 佐々木正利君「バイクに乗って奈良の実家へ帰ろう」からの続き

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それが彼の方法、前に進むための方法だった。

追い風の日常の中でも、いやむしろ何もかもがうまく
進んでいるような日々の中だからこそ、
道端の小さな石に蹴っ躓いたときに
ばぁん、と跳ね飛ばされてコースアウトしてしまいそうになる。

でも、その場にしゃがみこんだって何も変わらない。
やさしく手を差し伸べてくれる優子も、もういない。

 止まっちゃおしまいだよな。

深夜のツーリングは拓郎にそのことを思い出させてくれた。
どれくらい走ったのかは覚えていない。

コンビニの缶コーヒーで暖まりながら、
へんだな、なんだか嬉しい気分になっている自分に気づいた。

 躓きながらでも走ってくのが俺なんだよな、へへ

冷えたエンジンを暖気しているうちに、もう空は白みかけている。

 一人の方が楽しいのかも知れない。
 そういやあいつもそんなこと言ってたっけ        (依頼中 YUSUKE SHIBATA)

 よし、この気持ちを設計のエネルギーにしよう     (2000年12月10日開通 YUICHI YAMASHITA)

実家はもう目の前だったけど、そんなことは問題じゃない。
拓郎は、東京へ走り出した。


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2000年12月9日 まつむらくにあき が書きました。

リンク小説っていう企画


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