宇宙
瑣末の研究6
帯に短し、話は長し

さて帯のお話をしよう。
この「帯」というのが困りものである。
古書では、これの有無で随分と価格が変わってくる
「なんでえ、たかがオマケじゃん。」と侮るなかれ。
帯を笑うものは帯に泣くのである。
正直、古書を題材にミステリを書けば
帯の有無が殺人の動機になりかねない、
それほどに、業の深い世界なのである。

で、最初にお断りしておくが、私はどちらかと云えば

帯を笑ってきた方である。

例えば、山村直樹というマイナー作家の
「追尾の連繋」というマイナー作がある。
これの帯に鮎川哲也が賛辞を寄せている。
この賛辞は、本文にもカバーにもなく、
従って鮎哲コンプリートを目指すと、

たかが帯だけのためにこの本を
追っかけることとなる。


私は「そんなん知らんもんね」と
本がダブった際に惜しげもなく帯付きを売ってしまった。

嗚呼。あほ。

話を続けよう。
帯といえば、個人的に非常に思い出深いのがバローズの火星シリーズである。
その帯とは、これ



見たか、この煽り!!

「007号」の「号」が、なんとも時代。
そこへ持ってきて「風太郎忍法帖」である。
火星シリーズの刊行がスタートした昭和40年代前半に、
何が流行っていたか一目瞭然。
それに便乗しようと言うのだから、大バローズもなめられたものである。
どう考えても、バローズの方が40年早い。いうなれば

「墓場の鬼太郎」復刻版に<京極堂絶賛!!>

という謳い文句がつくようなものである。

これを本末転倒と言う。

しかし考えてみれば、火星シリーズといえば、ようやく合本という
読み捨てエースブックのような姿で、長き品切れの日々に終止符が
打たれた訳で、大リバイバルブームの山風やピアズ・ブロスナンで
新作が撮られ続けている007に比較すると、なんだ、やっぱり
これでよかったのでは?と弱気になったりもする。

というわけで提案です。

東京創元社は、今回の合本に、
昔の帯を復刻してつけるように。


更に帯の話。
題名に年代を折込んだ番組がある。
例えば、「Gメン75」であり、「ウルトラマン80」である。
いつ頃放映されていたのか手にとるように判る。
とはいえ、「スペース1999」のような場合もあるので、
一概には言えないが。(勿論、今年の新番組ではない)
ミステリで有名なのが「チェックメイト78」。
「鮎川哲也読本」にも詳しく出ているが、刑事コロンボブームに便乗した
倒叙ミステリドラマである。主演が松方浩樹、助演が財津一郎・萩尾みどり。
原作のトリックに頼りすぎた分、古畑の高みには達する事ができなかった
失敗作といってよかろう。
ただ、この番組の功績は、なんといっても、
角川文庫での鮎川哲也の短編全集の刊行をバックアップした事である。
この企画で「裸で転がる」から「自負のアリバイ」まで7巻が発刊され、
いまでも入門編のコレクターズ・アイテムになっている。
問題は、こいつの帯である。



果たして、全てに「チェックメイト78」の帯があったか否か?
ニフティの絶版好事家調査会の調べでは、「自負のアリバイ」を
除く6巻については帯が確認されている。
内最初の1巻は藍色帯で、後の5巻は黄色帯である。
というわけで、ネット上では最も濃い人々が集まる場所でさえ、
確定できない謎の一つがこれだ。

「自負のアリバイ」には
チェックメイト78の帯はついていたのか?


どうか御持ちの方は、ご一報頂きたい。
B級ビブリオ史上、シーラカンス並みの発見だと思う。

とりあえず、帯の話はこの辺で。

以上

メール アイコン
メール
トップ アイコン
トップ


宇宙