瑣末の研究22

困った時の女王様

イカハゴクヒジョウホウ サイコウキミツ
‘BUY BOOK’カイゾウシュジュツかるて

ナマエ:イシイハルミ
ショクギョウ:フツウノOL

というわけで、女王様である。我々古本日記書きにとってネタの宝庫、オフ会の壊れた華、即売会に吹く旋風、酔ってくだまき、抜かれて「畜生!」、人間椅子の愛好家、でも気前の良さは日本一、♪百万冊の本を下さい〜、本を本を本をください〜
たとえどんなに話題がない日でも、女王様一人いれば、あーら不思議、たちまち日記のページが埋まっていくではないか。まさに「困った時の女王様」なのである。困ったチャンの女王様ではない。でも、酔っ払うとちょっと困ったチャンかも。いやそれはもう、全然困ったチャンかも。うーぬ。
そんな女王様に敬意を表して、ここに、2000年の日記に書いた企画モノの女王様ネタを、まとめておくことにする。

<クローズアップ現代:「古本殺人」〜なぜ主婦は古本に溺れたか?
国谷裕子「今晩は。クローズアップ現代です。今日は、古本を買う金欲しさに夫に保険金をかけて殺害した主婦の話を取り上げます。ごく平凡な女性であった彼女がどのように、古本に嵌まっていったのか?なぜ、古本を買う事が止められなくなったしまったのか?遂には、踏み越えてはならない一線を越えてしまった彼女。その心の闇に迫ります。まずはVTRからご覧ください。」
ナレーション「今年12月、ある主婦が神奈川県警に逮捕されました。自分の夫に保険金をかけて殺害した容疑です。保険金殺人自体は、これまでにも何件もあった事ですが、彼女が供述したその動機が世間の注目を集めました。『古本を買うお金が欲しかったから。』」
(原宿ブックオフのオープンの映像。「列の最後尾はこちらでーす」との店員の声)
ナレーション「今年11月、<若者の街>原宿に日本最大級を謳った古本屋がオープンしました。全国展開している大手古本チェーン店の支店です。徹底的なマニュアル化と独特の店舗戦略で、従来の古本屋の概念を一新したそのチェーンでは、いわゆる古書は扱わず、定価の半額と100円均一といった安価な本を中心に販売しています。しかし、新規店舗のオープン時には、希少性の高い本が並ぶため、古本マニアが朝から行列をつくるのです。そしてその行列の先頭に『彼女』がいました。」
(オープンの瞬間、「いらっしゃいませ」を連呼する店員の間を抜けて、階段を駆け上がる彼女の映像、ストップモーションの後、ホームページの画面に)
ナレーション「これは彼女が出入りしていたインターネットのとあるサイトの掲示板です。<『貼雑年譜』のためなら、臓器でもなんでも売る!><本以外ならなんでも売るわ!買って頂戴!!>何かに憑かれたようなこの書き込みが彼女のものです。そんな彼女を、サイトの仲間はこう呼んでいました。<古本の女王様>」
(顔を隠し、声を変えたインタビューへ)
友人A「エエ、イツモネ一番乗リデシタヨ。アンナニ古本ガ好キナ人ハチョット珍シイ。仲間ウチデモ有名デシタネ。」
友人B「ムカシカラ、本ハ好キダッタミタイデシタケド、ホラ、コノ道、突キ詰メテイクト、ドンドンまいなーナ趣味ニナッテ行キマスカラ。ソウナルト、図書館ナンカデモオイテナイヨウナ本ガ欲シクナルワケデ…」
友人A「モウ旦那サンナンカ、ホッタラカシデネ。旦那サンノ誕生日ダトイウノニ、おふ会トカ泊リガケデ出カケタリトカネ(笑)ヨク耐エテルナア、ト皆デ云ッテタンデスヨネエ。デモ、マサカ本当ニ旦那サン殺ストハ、思ワナカッタナア」
(夫の『事故』死を報じた新聞の映像)
ナレーション「一見、事故だと思われたこの死が、計画殺人であった事が判明したのはその翌日の事でした。そして彼女が逮捕されます。容疑は保険金詐欺と殺人。そして『古本が買いたかったから』という動機が、世間を驚かせたのです。」
国谷裕子「『臓器でもなんでも売る』。何が、彼女をそこまで追い込んでしまったのか。古本の事について詳しい社会学者の古本好男教授にスタジオにお越し頂いています。古本先生、古本というのはそんなに魅力のあるものですか?」
古本「あります。なんといっても、女子高生と合コンできるのが最高です。」
国谷「なるほど。これほど新しい本が出版されながら、古本でなければならないというのは、人との差別化を図りたいという意識からなんでしょうか?彼女の場合は、もとは普通の新刊書で満足していたようなのですが、徐々に読みたい本の質が変っていったということです。もしかすると、大部数の出版の裏で余りにも多くの本が絶版になってしまっている事も原因の一つとして考えられないでしょうか?一種の強迫観念とでもいうのでしょうか。更に、その世界で知り合った友人との抜きつ抜かれつのゲーム感覚が収集欲を加速して、遂には依存症状態に陥ってしまう。彼女自身、古本市に行けずにいると、自分の探している本をライバルに抜けれてしまうという思いにかられてしまった、と告白しています。本人の性格もあるのでしょうが、ここまでエスカレートしてしまったのは、文化物までを消費する出版システムの弊害といえるのではないでしょうか?いかがでしょうか?」
古本「時代は、三橋一夫でしょう。」
国谷「つまり、三橋一夫読んで、心身ともに健康になる必要がある。明朗小説を読むために、陰湿になっていったのではいけない、ということですね。どうもありがとうございました。今日のクローズアップ現代では、古本が欲しさに夫を殺した主婦の事件をレポートしました。彼女は今も獄中から、倉庫に預けている蔵書の様子を気にしているという事です。」
予告ナレーション「明日のクローズアップ現代では、IT時代の商取引として注目を集めているネット・オークション。その過熱気味の実態と課題についてレポートします。」


<偽・プレミスコン2レポート:「古・執アルバム」>
「晴れ渡った師走の午後、石井女王様は渋谷区で開催されたプレミスコン2にご臨席されました。先週の徹夜オフ会の疲れもとれた女王様は、いつもの軽快なファッションに身をつつみ、にこやかな笑顔で若人たちを人間椅子にして楽しんでおられました。当日は、フク・ミスコン主宰の開会の辞に続き、スタッフを務められた雪樹誤謬皇女様から、企画の例題として、石井女王様をモデルにした物語が紹介され、列席したネット民の皆さんから、万雷の拍手が寄せられました。
女王様は、セレモニー終了後、会場の皆様と親しくご懇談され、歳若い編集者の方にも『貼雑年譜は、臓器を売ってでも是非買い求めたいですね』と、お声をかけておられました。女王様の『私の臓器では不経済ではありませんか?』とのご質問に『いえ、不敬罪です』とお答えする編集の方。まるでshakaさんがいるみたいに寒い1日となりました。」(大嘘。でも、ちょっとホント)

以下、新作。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
欲イッパイ
決シテ抜カレズ
イツモ口汚クノノシッテイル(チクショー)

一日ニ効キ目四冊ヲ買イ
味噌ト少シノ野菜デ食費ヲウカセ
アラユルホンヲ
カケイヲカンジョウニ入レズニ
カイマクリヨミ
ソシテワスレル

街中ノびるノ林ノ蔭ノ
小サナまんしょんニカエラズ
東ニ開クぶっくおふアレバ
行ッテ先頭ニナラビ
西ニしゃったーヲ下ロシタ古本屋アレバ
行ッテ叩イテコジ開ケ
南ニ死ニサウナ人アレバ
遺書デ蔵書ヲ譲レトイヒ
北ニ血風ホウコクガアレバ
ツマラナイ報告ハヤメロトイヒ
ヒデリノトキハおふ会デ呑ミ
サムサノナツモアサカラナラビ
ミンナニジョウオウサマトヨバレ
キラワレモセズ
ネタニサレル

サウイフモノニ
ワタシハ
ナッテイル(チクショー)


以上

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