瑣末の研究15

「不老不死の血」殺人事件

「えー、どうやら今回の事件も大詰めの模様です。被害者を
始めとして、やたらとミステリマニアの多い事件でしたが、
犯人は、被害者の前の奥さんです。
んー、通常、夫婦の片割れが殺された場合、その相方を疑うの
ですが、今回は遺言状が事件を複雑にしました。
決め手になったのは、被害者が、死に際に本棚から掴みとった
創元推理文庫。いろいろな推測が成り立ちましたが、この本が
指し示す条件に合致するのは、事件の関係者でただ一人、
そう、たった一人なのです。
といっても、奥さんが何百年も生きている魔女だという訳では
ありません。それは早川ミステリ文庫の方で、、
えー、解決編は10行後。古本任三郎でした。」




「えー、残念ながら、この本が<犯人は貴方だと>指し示しています。
『不老不死の血』。
SFマニアが探しているそうですね。こんな小汚い本が、失礼、
んー、数千円もするとか。
これは、とても珍しい本だそうで、いや、内容ではなくて、この本自体の
生い立ちがです。
最初は、この本には339番というミステリの系統の番号が振られました。
ところが、700番台からSFが始まるにあたって、731番に移された、
いわば、嫁いだ訳です。んー、しかし、しかしです、その番号も、」
「別の本に取られた、、、」
「はい。まさに奥さんの人生と同じように、、因みに後に納まったのはシェール
という作家の『宇宙船ピュルスの人々』という作品だそうで ・・・
自供して頂けますか?」
(うなずく犯人)
「・・ええ」
「お察しします」
(扉を手でさし、同行を促がす古本)
「・・・古本さん」
「はい?」
「その本は、SFマニアが探しているのよね?」
「ええ」
(泣き笑いの表情で、犯人)
「私も、SFマニアに嫁げばよかった」
(両者退場)
エンドクレジット(音楽高まる)

以上
(参考文献:小林文庫「創元推理文庫目録」)

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