瑣末の研究14

Na「1999年のある日、ミステリ的準B級市民の今岡さんは、創元推理文庫
40周年記念復刊のラインアップに、苛立ちを覚えていた。
<また、ボワロ&ナルスジャックが無視されている。どうして、折原一あたりが
ボワロ&ナルスジャックを推してくれないんだ?>。
堪りかねた今岡さんは、装丁が揃わない事や高額を承知で「女魔術師」の初版本
を古書店で購入した。ところがようやく手にいれた本を、矯めつ眇めつ撫で回して
いた今岡さんが、何気なくそのカバーをめくってみたところ、そこには、想像を
絶するものがあったのだ!!」

Na「これは、<猟奇の鉄人>にインターネットで寄せられた書に纏わる謎を、
徹底的なリサーチで解明した調査レポートである。尚、ここで語られる内容は
総て真実である。」

「特命リサーチ200X」
サブタイトル「厚着の文庫の謎を追え!!」

Na「なんと今岡さんがカバーをめくった先には更に、古い創元推理文庫の特徴
である、白帯とパラフィン紙が掛かっていたのだ!
今岡さんは、果してそれが、過渡的な包装なのか、それとも元パラ帯状態で購入した
前の持ち主が、後からカバーを入手してつけたものかの判断に苦しんだ。誰が、
一体なんのために?そして今岡さんは猟奇の鉄人にインターネットで問い合わせ
を行った。」

所長「創元推理文庫かあ、懐かしいなあ」
美女「チーフも、読まれたんですか?」

所長「そりゃあ、僕だって読むよ。まあ、<帆船>マークが中心だったけどね」

美女「ラブクラフトとか?」

所長「おー、判ってるね」

デブ「なんですか?ラバウル小唄が反戦ですか?」

所長「(無視して)で、厚着の件については?」

美女「はい、既に京都の専門家からヒアリング済みです。ご覧下さい」


Na「我々調査班は、早速、京都在住のミステリ古書に詳しい玩具屋さんを訪ねた。」


玩具屋 さん

「パラフィンからカバーへの過渡期の頃の本にごくたまに見かけますよ。
眉毛付きのコアラのマーチが見つかった様なものですか。
見つけた時は単純にラッキー!と喜んで下さい。」

所長「そうだったのか!!眉毛のコアラね(笑)でも、他にはないのかな?
美女「はい、その点についてもヒアリングしています。」

玩具屋 さん

「意識して集めた事はありませんので、どの本にあったか定かではないです。
「深夜の張り込み」は手元にあるので間違いないですが。
後「霧の壁」「ビッグ・マン」あたりで見た事があるような・・・」

所長「うーん、もう少し詳しく知りたいものだね」
美女「申し訳ございません」

所長「まあ、手元にないとなんとも判断つかないというのが辛いねえ」

デブ「だいたい、君は調査が甘いよ、僕だった・・」

美男「(遮るように)チーフ、実はこんな情報がよせられてます」
所長「情報?見せてくれたまえ」
美男「はい」

Na「それは湘南からの一通のメールであった。その内容に調査班は色めきたった。」

奈良泰明 さん
「創元推理文庫の帯・元パラにカヴァ−付きについて。
NO.200 世界短篇傑作集5(昭和36年)
NO.223 ビッグ・マン(昭和35年)
NO.227 恐怖の限界(昭和36年)
NO.234 霧の壁(昭和35年)
NO.239 深夜の張り込み(昭和36年)
NO.251 女魔術師(昭和36年)
NO.244 義眼殺人事件(昭和36年)
以上7冊が手元で確認できます。
また、NO.228 アルザスの宿 は
白帯・元パラとカヴァ−の両方が初版が出ています。
これと同じケ−スで 
新潮文庫 ドイル 「わが思い出と冒険」昭和40年 は
入手時に 赤帯・元パラにカヴァ−が付いていました。」

所長「大変な情報じゃないか!?創元だけじゃないのか?」
美男「ええ、しかも更にフォローがついています。」
所長「フォロー?」
美男「これです」

奈良泰明 さん
「創元推理文庫の帯にカヴァ−付きの件追加です
もう一度手元で調べたところ
216番 カシノ殺人事件 昭和35年 がそうでした。 
これはカヴァ−の背の番号が215と間違って印刷されています。
また224番 「失踪当時の服装は」も帯とカヴァ−が 
「アルザスの宿」と同じで両方初版で出ているようです。」

所長「やれやれ、至れり尽くせりだなあ。」
デブ「欲しくなりました?」

所長「少しは、ん?何を言わせるんだ、君は!まあ、調査は完了かな
。」
美男「所長、実は、、」
所長「何だ、まだあるのか?」
美男「ええ、こんな後日談が」

喜国雅彦 さん
「確か僕のもっていたカシノも背番号がミスプリだったぞ、と
さっき見てみましたらば、ついてました元パラ、帯。
今までぜーーんぜん気づきませんでした。これまで
何度もこの話題になる度に「あっしには関係ないこと
でござんす」と聞き流してました。気づかせてくれて
どうもありがとう。さて、他のもめくってみるか。」

kashiba さん
「というわけで、私もダメモトで手持ちの創元推理文庫を
めくってみました。すると、なんとおおおおおおおお、
あるじゃん、「眉毛のコアラ!!」
それも「生物学会」に発表されていない新種です。
123番「ブラウン神父の秘密」(昭和36年3月)
258番「その子を殺すな」(昭和36年8月)
これは凄く嬉しいぞ。\(^0^)/\(^0^)/」



Na「次々と発見される厚着の創元推理文庫!猟奇の鉄人は尚調査を継続中で
ある。お心当たりの方は、是非情報をお寄せいただきたい!」

所長「どうなっているんだ?一体何冊あるんだ?」
美男「申し訳ございません。ただ、こうなりますと昭和36年の創元を、」
所長「買って、買って、買いまくる、か?」
デブ「結構ですねえ、それ、買って買って買いまくれええ、あれ、何処へ?」

所長「今日はこれでおしまい。ちょっと食事でもどうだ?」

美男・
美女「お供します!」
デブ「あの、私は?」
所長「君は、ラバウル小唄でも歌ってるんだな。」

デブ「そんなあ(泣)」

エンドクレジット

(無人のリサーチルーム。突如、モニターに指令が打ち出される)

「2冊の本と同じ番号をもつ創元推理文庫の謎はどうなった?」



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