瑣末の研究10

理想のミステリ全集

「理想のミステリ全集」と言えば何と申しましても「世界絶版ミステリ全集」
ですね、はい。
 ここ数年、国書の頑張りに刺激されてか、早川からは「震えない男」が
再版されましたし、山田風太郎の著作も大小出版社とりまぜブーム再燃を
思わせる復刊ラッシュが続いておりますが、皆さん騙されてはいけません!
ここでうっかり買いそびれますと、たちまち「流浪の・古本屋巡礼」へと
逆戻りは必定(広済堂文庫なんてどこの本屋にいけば置いとるんじゃい?)
 とにかく絶版というのは、その作品の評価を著しく狂わせます。
「絶版もむべなるかな」という内容の作品が、絶版なるがゆえに
評価5割増しなんてもうやめましょう。
1冊の古本に万札きるようなマネはいいかげんにしましょう
(とかなんとかいいながら、続けとるわなぁ、このアホは)。
 というようなわけで、作家一人につき一作という以外は、何の制約も設けず
全くの極私的観点で選んでみました。ジャンジャン!

「世界絶版ミステリ全集」 オール新訳、月報付、函入
第1巻 創元推理文庫編
「幽霊の2/3」 Hマクロイ
「反逆者の財布」 Aアリンガム
「フレンチ警視最初の事件」 FWクロフツ

第2巻 東京創元社編
「首のない女」 Cロースン
「飛ばなかった男」 Mベネット
「消えた犠牲」 Bコッブ

第3巻 早川ミステリ編
「トム・ブラウンの死体」 Gミッチェル
「消えた街燈」 Bニコルズ
「道化者の死」 Aグリーン

第4巻 早川書房編
「私のすべては一人の男」 ボワロ&ナルスジャック
「ステップフォードの妻たち」 Tレヴィン
「魔の淵」 Hタルポット

第5巻 新潮文庫編
「ブルクリン家の惨事」 コール夫妻
「殺人者登場」 Nマーシュ
「二輪馬車の秘密」 Fヒユーム

第6巻 角川文庫編
「崇り」 Tヒラーマン
「夜明けの舗道」Eグリアスン
「聖者に救いあれ」 DEウエストレイク

第7巻 講談社文庫編
「さらばいとしのローズ」 Jポッツ
「レベッカの誇り」 DMダグラス
「メグレ警視と生死不明の男」 Gシムノン

第8巻 別冊宝石編
「死の殻」 Nブレイク
「九人と死人で十人だ」 Cデイクスン
「白魔」 Rスカーレット

第9巻 六興・日本出版共同・弘文堂編
「ライクノス殺人事件」 Pマクドナルド
「ベラミ裁判」 FNハート
「ヨット船上の殺人」 CPスノウ

第10巻 読者投票編
「さあ、10番目の椅子は、皆さんの投票で決まります!
これまで、あまりの古書価の高さに手が出なかった本、
一度見かけたがその頃は価値がわからず見逃してしまった本、
何度カタログ注文しても抽選ではずれてしまう本、
戦前戦後・既訳未訳を問わず、どんどん御応募して下さい!」
(私が投票するとすれば
「俳優パズル」
「モスコー殺人事件」
「当たりくじ殺人事件」てなとこですか。)

特別補巻 日本編
「悪霊の群れ」 高木彬光・山田風太郎
「白の恐怖」 鮎川哲也
「密室の妻」 島久平

 月報では、若手の推理作家や推理評論家が掲載作の入手にどれだけ苦労した
かを語ってもらいます.
いかがでしょう?
若干・本格に片寄ってなくもないですが、なかなかのバラエティでは
ありませんか。値段は1巻3千円位でなんとかなりませんかしら?
だめ?
どこぞに奇特な出版社はございませんか?
一応、キャッチフレーズも決めてます。
「世界絶版ミステリ全集!・・それは新たなる絶版伝説への1ページ」
なあんてね?

(初出 SRマンスリー:一部修正)

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