宇宙
瑣末の研究1
数に溺れて

SRの会の暇つぶしとして、<ミステリしりとり>と並んでやられるのが
<ポケミス算>だそうである。ようは記憶だけを頼りにポケミスの通し番号で
算数をするのだ。最も初歩的な例をしめすと。

「大いなる殺人」+「裁くのは俺だ」=「ブラウン神父の秘密」
「ハムレット復讐せよ」+「殺意の楔」=「忘却へのパスポート」

といった具合である。
なにせ101〜1676までの数字があるのだから、やりようによっては
膨大な暇が潰せる。まあ、さしものSRの猛者でもそう続かないと聞いてい
るが、幾つかでも諳んじているというのが恐ろしいではないか。

そのバリエーションで1作家の作品でポケミス算が作れないか? と先日道
を歩きながら考えていた所、1分ほどで、

「Xの悲劇」+「シャム双生児の秘密」=「犯罪カレンダー 7月〜12月」

というのを思いついた。これはキリ番近くにクイーンが配置されているためで
成る程、昔は優遇されていたという事が窺い知れる。
では、他の作家ではどうかと目録を取り出すと、カーでは、のっけからくる

「死人を起こす」+「三つの棺」=「妖女の隠れ家」
「火刑法廷」+「曲がった蝶番」=「九つの答え」

クリスティーでも

「白昼の悪魔」+「アクロイド殺し」=「死者のあやまち」
「ポアロ登場」+「なぜエヴァンスに頼まなかったのか」=「終わりなき夜に生まれつく」

ガードナーでも数限りなく出来そうだ。

「緑色の眼の女」+「掏り返られた顔」=「メッキした百合」
「孤独な女相続人」+「ストリップガールの馬」=「影を見せた女」

更に縛りを強くして同じ探偵の作品でとなると果たして幾つのポケミス算
(勿論ここではX+Y=Z的な算数にとどめるものとする)が成立するのであろうか?
やはりメイスンの圧勝に終わるのだろうなあ。
メイスンがポケミス最多収録探偵であろう事は揺るぎがなかろう(短編まで
1編に勘定すれば、クィーンが健闘するかもしれないが)。
なにせ、本家のみならずチャスティンの代作までが収録されているのだから。
ところで、そのメイスンは1編を除いてすべての登場作がポケミスに収録されているのだが、
翻訳の遅れた「怯えた相続人」だけが文庫オリジナルになっている。
期せずして創元と早川の双方から出版されたという謎な本である。
ポケミスマニアとしては、この辺りを是非ポケミスで出し直して欲しいと
感じてしまうのだが、こういう思いって普通じゃないんだろうなあ。


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