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2004年8月3日(火)

◆ほぼ定時退社で定点観測。この観測ポイントは半年ぶり。
d「サンドキングス」GRRマーティン(ハヤカワ文庫SF:帯)
d「夢の棲む街」山尾悠子(ハヤカワ文庫JA)
「はじまりは青い月」新庄節美(創元推理文庫:帯)
「聖夜は黒いドレス」新庄節美(創元推理文庫:帯)
「アトランティスのこころ(上・下)」Sキング(新潮文庫)
「大学の人気者」城戸禮(春陽文庫)
「三代目社員」城戸禮(春陽文庫)
「超特急三四郎」城戸禮(春陽文庫)
「大学の熱血児」三橋一夫(春陽文庫)
以上1500円でお釣りが来た。マーティンは探究頼まれ本。山尾悠子は布教本。美麗フォトの入った唯一の著作でもある。
40年代の城戸禮やら若山三郎が並んでいたので、もしやと思って探すしたところ三橋一夫も1冊発掘された。三橋一つで気分は血風。たまには覗いてみるものである。


◆「パッチワーク・ガール」ラリー・ニーヴン(東京創元社)読了
「こんなものも読んでいなかったのか」シリーズ。創元イラストレイテッドSFというハードカバー叢書で上梓された後、文庫化もされ、ただ今好評絶版中のSFミステリの佳作は、こんな話。
重罪犯を半年間の冷凍睡眠の後、臓器工場として解体する「月」の法律。その在り様を巡って、地球・月・小惑星帯の3政府が討議を繰り広げる中、小惑星帯代表が、入浴中、何者かに外部からレーザーで狙撃される。厳寒の「夜」の時間、都市を脱け出していた者はただ一人、地球出身の美女ナオミだけであった。だが、彼女こそ、ARMの探偵ギル・ハミルトンがかつて愛した女。皮肉にもギルの透視能力が、容疑者を絞り込んでしまったのだ。逆密室の罠、意味不明のダイイングメッセージ、虎の穴の不在証明、性と愛の不思議、法の暴走と宇宙の非情、解体されるのは謎だけでいい。
おおお、面白いではないか!いわゆるミステリのコードがてんこ盛り。密室にアリバイにダイイングメッセージ、さらには「動機」の妙。勿論、ルナ法をめぐる人間模様だけでも立派にSF足りうる作品でもあるが、これは、SF慣れしていないミステリ読みの期待にも十分応える話である。
同じARMの超能力エージェント、ギル・ハミルトンを主人公にした作品集「不完全な死体」も好評絶版中であり、蜥蜴蜉蝣さんで開催中の創元推理文庫復刊いじりまくり祭に隠し球として一票投じたいところ。創元を代表するSFミステリの古典「20億の針」や新古典となった「星を継ぐ者」の座を脅かす風格はないものの、満載されたイラストととにも<チープな絢爛さ>が味わえる作品として推したいのである。


2004年8月2日(月)

◆会議、会議、会議、だが、どことなくまったりと時間が過ぎる。夏休みモードですかね。久々に一駅途中下車して定点観測してみたが、冷やかしで終わる。

◆「怪盗ニック対女怪盗サンドラ・パリス」(ハヤカワミステリ文庫)読了
遂に文庫オリジナルで怪盗ニック登場。ポケミス主義者としては、些か残念だが、これも世の趨勢であろう。
翻訳のあるものは、結構こまめに読んでいたが、それでも楽しめてしまうところがホック。中でもレオポルド警部と夢の共演を果たす「レオポルド警部のバッジを盗め」は、盗みのテクニックといい、意外な真犯人といい、文句のつけようのない出来映え。ホックを代表する両雄の対決という趣向を堂々と受け止めるプロットとトリックの充実ぶりに改めて舌を巻いた。
また、サンドラ・パリス登場編の「白の女王のメニューを盗め」も畳み掛けるような盗み技の連続に拍手喝采。シリーズに活を入れるスリリングな一編である。
もともと、怪盗ニックは「なぜそれを盗むのか?」というホワイダニットと「どうやって盗むのか?」というハウダニットで魅せる連作ではあるが、調子のいいときには、これに「誰がやったのか?」というフーダニット趣味が加味される。その意味で既訳の「浴室の体重計を盗め」も充実の一編。
まあ、どちらかといえば「良い作品が訳される」のか、新訳側は少し贅沢さが足りないかもしれない。だが、「怪盗対女怪盗」という趣向ならではの最後の一言に唸らされる「紙細工の家を盗め」があるかと思えば、ニック向きのプロットではない隠れ動機の深さに暗澹とさせられる「禿げた男の櫛を盗め」があったりして、長く同じ主人公で書き続けるための秘訣を垣間見せてもらった気分になる。
最新作の「ダブル・エレファントを盗め」が最も精彩を欠いているのは気になるが、巨匠の更なる発展と、その膨大な著作の翻訳が今後も進むことを祈ってやまない。作者にも訳者にも出版社にも敬礼!


2004年8月1日(日)

◆午前中は「鉄人28号」を見たり「ウルトラQ」を見たりして過す。
鉄人(「黒龍丸事件」)のシリアスさに比べて、ウルトラQ(「小町」)の脳天気な事ときたら。
◆夜。アニメ「ポアロとマープル」は「申し分のないメイド」。頭の中には創元版の「申し分のない女中」で刷り込まれているので、なんとなく違和感。まあ、最近の訳ではすべて「メイド」になってますけど。
初出はストランド誌1942年4月号、原題は“The Case of the Perfect Maid ”とか“The Perfect Maid”とか。「申し分のない」ってえのは名訳ですのう。
1942年は長編書誌上では「書斎の死体」の年(米国では「動く指」も英国に先駆けて上梓された年らしい)。なんちゅうか、ミス・マープル・イヤーですな。この頃に「カーテン」やら「スリーピング・マーダー」を仕上げていたというお話もあるそうな。
何故か短篇集(Three Blind Mice and Other Stories:1950)が編まれた後から米版EQMM1957年7月号に“The Servant Problem”として紹介されたらしい。
こちらも「近頃はメイド一人雇うのも大変」といった雰囲気のよく出た名改題かと。第二次世界大戦中だったので、メイド不足だったってことなんですかねえ。
日本語への紹介は、米EQMMを翻訳したと思しき日本版EQMM1958年2月号の「理想の女中」が初出かな?翻訳は小泉太郎こと生島治郎。
と、全くアニメと無関係にクリスティー紀行してみました。ぐあっ、ぐあっ(>オリバー)


◆「誰でもない男の裁判」AHZカー(晶文社)読了
奇妙な味あり、ブンガクあり、本格推理ありのバラエティーに富んだ傑作集。
今年の年間ベスト入りを早々に決めたと言い切ってよかろう。