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2003年9月30日(火)

◆ネット社交辞令。がくしさん、おめっとさん。
就職すると「どうして学生時代はあんなに時間があったんだろう」と思います。
結婚すると「どうして独身時代はあんなに時間があったんだろう」と思います。
そこにお子様ができると「どうして二人の時にはあんなに時間があったんだろうと」と思います。はい。
◆お付き合い残業。古本屋を覗いている心の余裕がないので新刊書店で1冊。
「マクベス」シェイクスピア(新潮文庫)362円
こんなものも読んでなかったのか?
読んでなかったんです!
だからジェイムズ・サーバーの「マクベス殺人事件の謎」を読んでも一体何が面白いのか全然判らなかったのです。「火よ燃えろ!」だの「親指のうずき」だの「あの血まみれの男は誰だ?」だの、言うなればミステリの引用の宝庫でありながら、しかもオカルトで、殺人事件でありながら、読んどらんかったのです。「マクベスを引用すると不吉な事が起きる」といった演劇界のタブーを耳学問で知っていながら、作品自体は読んだ事がなかったのであります。
もう、のっけから三人の魔女が出てきて「きれいは穢ない。穢ないはきれい」だもんなあ。掴みはOK。
欧米のミステリをもっとよく理解するために、絶対読んでおくべき非ミステリを1冊選ぶとすれば「旧約聖書」か、これなのかもしれませんのう。
◆「夏の夜の夢」読了。今まで美内すずえの「ガラスの仮面」でしか知らなかった話。へえーっ、こんな劇中劇が付いていたんだ、貴族の結婚祝賀のために書かれた戯曲だったんだ、へえーっ、っと「へえー」ボタン連打なkashibaであった。惚れ薬に翻弄される三組の男女、森の神が「山の神」を弄び、三角形の第四辺が底辺になって掛ける高さ割る二、驢馬よいななけ、歌つぐみ、丸く治めて祝賀の宴、幸せパックはこちらです。


◆「究極の推論」Rスタウト(EQ所載)読了
ネロ・ウルフの第24長編。EQ118号に一挙訳出されたきり、本になっていない1冊。「殺人犯はわが子なり」のポケミス入りと、WOWOWでの放映開始が、ウルフ復活の起爆剤となれば、光文社文庫も動くかもしれない。幻の探偵・推理雑誌やら、英米短篇ミステリ作家選など通を唸らせる企画の一方で、カドフェルや、乱歩といったエバーグリーンなゾーンにも原資を突っ込む気合充分なわけで、とりあえず1冊、スタウトの観測気球を挙げてみてはどうかと思ったりもするのだが。
閑話休題。これは、スターの誘拐に端を発する連続殺人事件の顛末を描いたお話。
ステージ界で勇名を馳せた国民的人気者、ジミー・ヴェイルが誘拐された。陽気で富裕な未亡人から子連れでヴェイル夫人に納まったアルシアが、今回のウルフの依頼人。ぼく(アーチ)は、まんまと女嫌いのウルフの興味を引く事に成功するが、さすがは、ネロ・ウルフ。自宅から一歩も動かず、誘拐犯に向けた新聞広告を手配するだけで、6万ドルの成功報酬をせしめてしまう。なんと、忽ちのうちに、ジミーが開放されたのだった。だが、時を同じくして、アルシアの秘書ダイナ・アトリーがホワイト・プレーンズで轢き殺されたという報が飛び込んでくる。ウルフの慧眼は、脅迫状のタイプ面から、ダイナが誘拐に一枚噛んでいる事を読んでいたが、さすがにその死までは予測できなかった。受け渡された50万ドルの行方を追って、アルシアの不肖の息子と娘が独自の探索を始めた時、新たな死が一家を襲う。果して誘拐劇の真相とは?今、ウルフの究極の推論が欲の構図を断罪する。
この作品は原稿用紙400枚だそうで、ミステリの重厚長大化に慣らされた身の上からすると、その「軽さ」に驚く。実際、重いのは主人公の体重ぐらいで、いささか推理と展開の妙に乏しい作品である。一家の設定もどこかでお目にかかったようなパターンであり、ウルフの推論も人間観察による当てずっぽうに過ぎない。まあ、フリッツの供する食事はいつものようにおいしそうだし、パンザーを初めとする探偵チームの息もぴったりだし、アーチの啖呵も健在であり、ウルフ・ファミリーの動きだけで満足できるファンにはこれでいいのかもしれない。しかし、ガードナーのメイスンものが晩年薄味になっても、ミステリとしての面白さは確保されていたのに比べると、評価は辛くなる。中後期の凡作といった雰囲気。光文社さんは、文庫化するならこれは最後にした方が吉でしょう。


2003年9月29日(月)

◆「天正マクベス」を読み始める。これが滅多矢鱈と面白い。しかし、読み進むうちに、この作品を理解するためには、せめて3冊の古典文学(ちゅうか戯曲)を読んでおかなければ、その神髄に触れられないような気がしてきた。喩えてみれば、「僧正殺人事件」や「本陣殺人事件」を読まずして「僧正の積木唄」を語るようなものである。というわけで、書店を覗いて参考図書を買う。
「夏の夜の夢・あらし」シェークスピア(新潮文庫)400円
おお、なんかしらんが御得用である。しかし、もう1冊が、見つからん。あの血塗れの男はどこだ?


◆「天正マクベス」山田正紀(原書房)読了
ややこしや しゃくすぺあ
ややこしや しゃくすぺあ
ややこしや しゃくすぺあ
ややこしや しゃくすぺあ

わたしが沙翁で 沙翁がわたし
そも 沙翁とは なんじゃいな

ややこしや ぷろすぺろー
ややこしや ぷろすぺろー

面がござれば うらがござる
たねがござれば しかけがござる

ややこしや たかさごや
ややこしや たかさごや

こいがござれば しっとがござる
あいがござれば ころしがござる

ややこしや しゃくすぺあ
ややこしや しゃくすぺあ

ふぇあ いず ふぁうる ふぁうる いず ふぇああ
うそがまことで まことがうそか

ややこしや しゃくすぺあ
ややこしや しゃくすぺあ
ややこしや しゃくすぺあ
ややこしや しゃくすぺあ
ややこしや!

希代の道化師・山田正紀畢生の連作狂言。これぞ教養小説。


2003年9月28日(日)

◆二日分の日記書き、育児、買い物のお付き合い、地上波で「ダイ・ハード3」の視聴など。
「ダイ・ハード3」は初めて見た。9.11以降放映自粛が続いていたが、ようやく解禁ですか。
世界一運の悪い刑事ジョン・マクレインが勤務先NYに「爆破テロリスト」を迎えての攻防戦。どこを切っても虚虚実実の駆け引きとチェイスとバイオレンスの嵐。息をもつかせぬ展開に「ここまでやる?」と笑いっぱなし。三匹目のドジョウにしては、とてもよく出来ていた。巻き込まれ型の黒人ゼウスとの掛け合いが「リーサル・ウエポン」を思わせるのも吉。やんや、やんや。
◆新刊買い一冊。
「天正マクベス」山田正紀(原書房:帯)1900円
巷で評判の新作。私にしては珍しい全冊読破作家につきデフォルト買い。それにしても新刊本ってのは高いなあ、と改めて思う。


◆「スモールボーン氏は不在」Mギルバート(小学館)読了
小学館ミステリーの中で最も楽しみしていた1冊。これが浅羽莢子のこなれた翻訳で読めるとは、いい時代になったものである。「捕虜収容所の死」が極限状況の不可能犯罪と緊迫感漂う脱獄もののコラボレーションだとすれば、こちらはリーガル・サスペンスと黄金期パズラーの幸せな結合。最近、この快感はエラリー・クイーンの初期作を再読した時ぐらいしか感じられなかった、とまで言うと褒めすぎか?日本では絶版作家としての迷声をほしいままにしてきたギルバートの「冤罪」が21世紀に入って漸く晴らされた思いがする。
眠らぬ男・ヘンリー・ブーンが新人弁護士として雇われたのは、手広く事業を展開している弁護士事務所<ホーニマン・バーリイ&クレイン>。初めて参加した晩餐会では、創設者である故エイブル・ホーニマンの遺徳を称える賛辞が続いていた。「ホーニマン方式」と呼ばれる完璧なファイル法は、何十年に亘る案件を漏れなく要領よく整理してきたという。が、実務に入ってブーンが驚かされたのは、イカボット・ストークス信託について。その特製ファイルボックスには、なんと共同信託人スモールボーンの腐乱死体までが厳重に封印されていたのである。動機の謎、犯行現場の不可解、そして藪の中の真犯人。果して、焼き物の収集家にして性格の悪い趣味人を縊り殺したのは誰?弁護士たちと秘書たちの思惑と困惑が縺れる中、ヤードのヘイズルリグ主席警部率いる捜査陣と、眠らぬ男は一歩一歩、容疑の投網を絞り込んでいく。暗い鏡に映る悪意、利き腕の錯誤、故なき利息払い、死神との契約者は新たな債務履行を口述筆記する。
1950年に書かれたとは思えない堂々たる本格推理。舞台は、時代に取り残された「筋のよい」顧客を抱えた老舗の法律事務所。そして容疑者たちはそれぞれに一癖ある法律のプロフェッショナルとそのパートナー。探偵は正統派のヤードの主席警部とプリテンダーの如き新人弁護士。動機と機会という二大要素に真正面からこだわり、それでいて、まんまとすれっからしの読者を唸らせる仕掛けを施した地力にはただ感嘆あるのみ。また、最後の最後まで、サスペンスを持続するストーリーテイリングも「巨匠」と呼ぶに相応しい貫禄にして稚気。やられました。お見事です。


2003年9月26日(金)・27日(土)

◆大阪出張。週末はそのまま実家に泊る。毎度ご馳走様でございます。
◆実家では、パソコンの設定など。Bフレッツの工事が終わって3週間。ようやくPC側の設定を完了。単に、テンプレートの指示通りにデータをいれていけばいいのだが、それでも用語の不統一やらもあって、大文字・小文字の区別も危なっかしい年配者には無理なんだよなあ、これが。しかも、なまじXP搭載の新製品だったものだから、ウイルス騒動にも巻き込まれ、ネット接続を志してから、実際に光接続が完了するまで3ヶ月も掛かってしまった。
年配の人は回線業者+ISP+設置工事+PC設定+教育を一気通貫で御任せにするのがベスト。安く上げようとすると、結局遠回りで、イライラが募るばかり、「もうやめたっ!!」と投げ出してしまいたくなるのではなかろうか?
久々にPCトラブルに関わって参ったのが、富士通のコールセンター。これが全然つながらないのだ。30分以上待ち当り前。こんなに酷い状況だとは知らなんだ。この程度のサービスしか提供できないのであれば、素人にPCを売るのはやめた方がいい。会社の評判を下げるだけである。
◆古本買いは駅前第2ビルの地下広場でやっていた古本市などで若干冊。
d「オリエント急行殺人事件」Aクリスティー(ポケミス:映画帯)100円
「新日本文学全集2:鮎川哲也・仁木悦子集」(集英社:函・Vカバ・月報)60円
「ローワンと白い魔物」Eロッダ(あすなろ書房:帯)800円
ポケミスが映画帯狙い、新日本文学全集が月報狙いである事はいうまでもない。鮎哲・仁木集は一度キャッチ&リリースした本なのだが、天城一・河田陸村が鮎哲を語り、寺山修司・新章文子が仁木悦子を語る月報が付いていたとは知らなんだ。この月報はとても美味しい。ファンならば手に入れておいて損はない月報であろう。
◆新刊買いは、帰途に新大阪で1冊。
「ミステリマガジン 2003年10月号」(早川書房)840円
お待たせしました、ディー判事特集。先月から盛り上がってしまったが、期待を裏切らない立体企画に大満足。先月のホック特集に続き、二ヶ月続けて花丸を御進呈します。新刊案内では、風間賢二がハリポタ便乗のファンタジー出版ブームを「ほとんどがクズ」と斬り捨てていたのが印象的。正統派ファンタジーの理解者にして伝道者が「ハリポタ」自体はどう受け止めているのかを知りたいところではある。翻訳者の横顔は、木村二郎&仁良の回。うーん、初めて御尊顔を拝したが、なるほどジロリタンである。日本人作家インタビューは折原一。もっと原書読みな部分を突いて欲しかったなあ。残念残念。
◆その他、祝賀セールの余韻残る阪神百貨店やら、数ヶ月ぶりに足を伸ばして萬葉書店なども覗いてみたが、前者は、タイガースグッズコーナーの込み具合にめげ、後者は(北欧ミステリ「ヘルシンキ事件」やら英国製合作推理「スクープ」やらも適価で転がっていたのだが)荷物を増やしたくなかったため、そのままスルーして帰ってくる。


◆「死の飛行」Eゴーマン編(扶桑社文庫)読了
「現代ミステリーの至宝」と銘打たれたアンソロジーの2巻目。またまた御大層な訳題だなあと思ったら、原題がそのまま「A Modern Treasury of Great Detective and Modern Mysteries」だった。濡れ衣ですまんすまん。原著の出版された1994年から過去十年というような選び方ではなくて、古いものでは1954年の作品まで(うへえ50年前じゃん)収録されており、「現代ミステリ」というカテゴリーの曖昧さと広さにやや疑問符号である。日本で昭和29年以降かかれたミステリなんていうと、古典と言われている作品の多くまでも網羅されちゃうもんなあ。以下ミニコメ。
「マーティンのように」(Sマクラウド)子供の頃から優秀な姉と比べられてきた妹が入院した時、家族に何が起ったか?猜疑と劣等感の果てに待つ驚愕の結末。これは、素晴らしくツイストの効いたドメスティック・サスペンス。大傑作。
「スキン・ディープ」(Sパレツキー)エステサロンで殺虫剤を塗り込まれ悶死した実業家。知人の依頼で、黒人エスティシャンの無実を晴らそうとするヴィク。直球のフーダニットにしてオープン&シャット・ケースである。
「死体のお出迎え」(Jヘス)出張から我が家に戻るとマロイ夫人のフラットに死体が転がっていた。合鍵のない部屋に犯人は如何にして忍び込んだのか?これはインチキ密室。警察がマヌケすぎ。
「しつけのいい犬」(Fケラーマン)強欲で不快な老人が忠実なブルテリアを従えプライベートビーチを支配する。隣人たちの反感が沸点に達した時に一体何が起ったか?気の利いたオチにぐるるるるると唸る。巧い!ケラーマンは長編の長さにめげて手を出していなかったが、一冊ぐらい読んでみるかな。
「不可能な銃撃」(Mマロン)厳重に保管されていた筈の拳銃で射殺された被害者。<働くおじさん>たちの不可解を喝破する安楽椅子女警部補。すれっからしならば直ぐにそれと気付くトリック。語りの旨さでもたせた一編。
「死の飛行」(Eマクベイン)航空機墜落事件を追う私立探偵。事故機の唯一の乗客は富豪の娘。パイロットである彼女の夫が直前まで載ってきた機で起きた事件に仕組まれた謀殺の罠とは?銃撃・脅迫の果てに、探偵が見た哀しい女の運命。中編級のPIもの。これも落ちが読める作品。この犯行は大胆に過ぎる。
「サン・クェンティンでキック」(Jゴアズ)死刑執行を見学にいった男たちが目の当たりにした現実の重さ。ミステリというよりも、軽快なブンガクを読んだ感触。悪くはないが、これをミステリの至宝といわれると、ちとヘソを曲げてみたくなる。
「彼女のお出かけ」(Eブライアント)倦怠期の夫婦。クリスマスの買い物に出かけた妻が、スーパーの駐車場で怒りを募らせた時、凍ったマンハントの幕は開く。これは凄い。この展開は全く予想だにしなかった。余りの面白さに再読してしまった。ハードボイルドな幕切れまで含め文句なしの傑作。奥さんをないがしろにしている夫は必読である。この作品を読むためだけに、この本を買う価値がある。
「ホーン・マン」(Cハワード)ムショ帰りのミュージシャンをテーマにした抒情溢れる名作。ハワード版の「さらば愛しき女よ」であり、「カサブランカ」である。まあ、逆に言えばそれだけの話なので、私のようなパズラー好きにとっては大人の読み物に過ぎる。
「顔」(Pウィルソン)次々と美女たちの顔を剥いでいく連続殺人鬼とそれを追う警部が妖しく感応する時、トラウマが疼き、地獄の底が開く。なんとも救いようのないウィルソン版の「エレファントマン」。おぞましい小説であり、まぎれもなくウィルソンの作品である。
「稲妻に乗れ」(Jラッツ)確定した死刑囚の無実を晴らして欲しいという囚人の妻の依頼。ナジャーが事件を掘り返し始めた時、もう一人の「犯人」が顕れては消える。果して稲妻に乗った男が見た夢とは?なるほど、そうきたか。これは現代ミステリだ。冤罪と探偵と意外な真相、ちゃんと探偵小説になっているところが心憎い。
「いつもこわくて」(Nピカード)都会を恐れて田舎に逃げてきたニューロイックな女性、彼女に頼られた田舎育ちの母と娘たち、そして「犯罪者」、多重視点で描かれた一夜の生と死のドラマ。うーん、これは何が何だか。
「読書案内」(JLブリーン)最初「読書案内」という題名の短篇かと思ったら本当にただの傑作リストであった。しかし、この人も幅広い読み方をしていますのう。個人的には「現代作家のよる伝統的ミステリー15」の中の未訳作が気になるところ。


◆「ローワンと白い魔物」Eロッダ(あすなろ書房)読了


2003年9月25日(木)

◆二日酔。手に職。最悪。私の死。>死んでへん、死んでへん。

◆「ベイ・ドリーム」樋口有介(角川書店)読了
1998年発表の樋口流「わるいやつら」。これはいかにも「題名からこしらえました」という雰囲気の一編。青春推理と中年小説という作者の二枚看板の後者に属する作品。世紀末、まだ利権が土建にあった時代、エコとエゴを絡めて巨悪曼荼羅図絵を廃棄物上の楼閣で展開した大人のファンタジー。
レインボーブリッジを臨む街:臨界副都心。男はミミズを求めて僅かに残された地面を掘り返す。男の名は柿本書彦、44歳独身、帝東大学助教授、ミミズ研究の第一人者、なぜならそんなものを研究している人間が他にいないからである。そんな彼の前に颯爽と理想の女性が風の様に現われる。女の名は、中山紗十子。三池銀行から横森東京都知事の下に送り込まれた出向社員。だが、その清楚な美貌の下には大いなる野望が潜んでいた。ゴミの上の夢の島に描かれた歴博構想。一千億の大プロジェクトを巡り、政治屋の、小役人の、ゼネコンの、建築家の、欲が屹立し、縺れ絡まる。その足許にあいた暗い穽。底に眠る繁栄の遺物。過去から来た断罪は、果して巨悪に届くのか?「虹を摘まむ男」はその一瞬に間に合うのか?
カリカチュアライズされた悪人どもの姿をニヤニヤと眺めながら、冴えない独身中年男の夢を共有化する。うーん、オヤジだよなあ。更にドタバタを加速する方法は幾らでもあったと思うが、風呂敷きの割りにはこじんまりとした幕切れで夢の終わりと始まりを告げる。「複合汚染」ではないが、化学物質の取り扱いに素人目にもそれとわかる誇張があって、爽快さに疵をつけているのは残念。悪くはないのだが、この作者の水準はクリアできていないように感じた。


2003年9月24日(水)

◆雨の中、神保町タッチ&ゴウ。何もございません。
◆歓送会で痛飲。午前様でばったり。


◆「ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王」上遠野浩平(電撃文庫)読了
復路の酩酊を予測して、とりあえず、往路で読みきれる本を手にとって出た。
「不気味な泡」4つ目は、第1作の後奏であり、未来への予兆である。
それはバブルの塔、誰が建てたかは誰もが知っている。しかし彼が本当は誰だったのかを知る者は少ない。そして彼が何のためにそれを建てたのかとなると、誰も知らない。これは、その理由(わけ)を知るための物語だ。
2月14日、聖バレンタインデー。男と女が密かな想いを込めてこの日に臨む。その日、希代の実業家・寺月恭一郎が遺した巨大建造物<ムーンテンプル>では最初で最後の観覧イベントが催されていた。だが、その催しは、観客の心とともにジャックされる。すべてを黄金に変える歪曲王の手によって。記憶の中に甦る後悔、憐憫、懺悔、恋情、友情、そして恐怖。すべてのコンプレックスが集い、世界の終わりが来た時、都市伝説はその現場へと召喚される。君の瞳の中に光が見えたら、それは辛い真実の証である。
これまで、寡黙であったブギーポップが結構語る。所謂「塔」もののRPGを多重視点で綴った作品。お約束をお約束で終わらせない工夫は、さすが上遠野浩平。「閉鎖空間のサスペンス」「奇抜な動機」「意外な犯人」に、「等身大ヒーローの怪獣退治」のオマケまでつけたサービス精神は評価に値する。果して、この物語で予言された幸運は、その後、如何なる冒険に連なっていくのであろうか?わくわく。


2003年9月23日(火)

◆日記に時間かけすぎ。時間の使い方が下手すぎ。
◆八重洲ブックセンターが25周年記念で、「私の50冊」というオリジナルの読書日記を配布しており、昨日も2冊貰ってきた。今更手書でもあるまい、と思う反面、この世にたった一つの「猟奇の鉄人」ベスト50てな本を書いてみるのも楽しいかなあ、などと考えてみたりする。既に年間ベストで過去に48冊は選んでいるんだから、後はこれを写すだけだもんな。単に時間の無駄である事は百も承知なのだが、それを言ったらこのサイト造りそのものが壮大な時間の無駄だもんなあ、と小一時間。
◆夕方から、家族連れで近所の三越でやっていた北海道物産展なんぞを覗きに行くが今ひとつ。サッポロ生ビール飲んで、コロッケ買って帰る。奥さんは、ついでに「ジャイアンツ応援感謝セール」で娘の服を選んでいた。球団を憎んでセールを憎まず。帰宅途中、新刊書店に寄って2冊買う。
「スモールボーン氏は不在」Mギルバート(小学館:帯)1524円
「SFマガジン 2003年10月号」(早川書房)890円
ギルバートは平積み状態。「捕虜収容所の死」ともども、今年はギルバートの当たり年でもありますのう。欧米人に「今、日本ではエセル・リナ・ホワイトとマイケル・ギルバートが旬です」と云ったら、どんな顔されるかなあ?
SFMは、まだ買ってなかった事に気がついて拾う。明後日には次の号が出ちゃうんだよなあ。一ヶ月って早いよねえ。
◆「ピンポン」を見ようとテレビの前に座ったのだが、掴みが悪くてダメ、20分で止めて、娘と遊ぶ。


◆「影の旅路」加納一郎(出版芸術社)読了
エンタテイメントの世界では暗黒時代であった明治という時代が山田風太郎以降、横田順彌の活躍もあって実は肥沃な創作の大地であった事が証明されつつある今、新たな開拓地どこにあるのだろうか?で、自身、文明開化ミステリの書き手の一人でもあった加納一郎は、我々が乱歩や正史の作品で親しんだ昭和初期を舞台に陰鬱な社会派推理を描いた。なるほど、いわれてみれば、この時代、欧米からの黄金期本格推理の移植品と、純和風エログロ耽美猟奇の二つの系統はあっても、社会の矛盾を告発するが如き作品は余り思い浮かばない。
合気武道の創始者・植芝盛平の高弟の一人・鍋岡信孝は、何者かに、その双子の兄・信繁を殺害される。信孝の兄弟弟子で警察官の砂川幸彦は、信繁は信孝と間違えて殺されたのではないかと推理する。更に、信孝が贔屓にした私娼たちが次々と殺害されいてくに至り、疑惑は固まる。現場に残されたエゾスカシユリの押し花は何を意味するのか?幸彦は、信孝の過去を追って、北海道に飛ぶ。貧困の底で殺意は育まれ、幽霊主義者は闇に怯える。恣意のすり替え、偶然の取り違え、影の旅路の果て、怨念は結実する。
植芝盛平やら、南方熊楠といった大正・昭和の傑物をあしらいながら、なんとも鬱陶しい小説を書いたものである。ここには、一連の開化探偵もので描かれた時代を楽しむ雰囲気がない。只管、貧乏で、主義者は特高に弾圧され、東京の街は震災ですべてを失い、モボとモガの闊歩する路のすぐ裏で女たちは身体を売る。連続殺人の動機はぐしゃぐしゃで、冒頭の双子の片割れ殺しの底も浅い。もっともっと面白くなる要素を秘めながら、作者が「この話は面白くしてはいけないのだ」と抑制しながら書いたとしか思えない社会派サスペンス。時代風俗はきちんと取り入れているのだが、それだけ。虚構の可能性を自分で封印したような話は読んでいて辛い。


2003年9月22日(月)

◆飛び石連休の谷間。行ったら行ったで、仕事というのはあるものだ。が、さくっと休み明けに送って、とっとと会社を出る。
◆今日は、昨日のリベンジで新刊を買うのだと心に決めて八重洲ブックセンターに向う。一階で、サイン会をやっていた沢木耕太郎の実物を拝見。痩身でハンサム、加えて一部の隙もない着こなしと物腰に感心する。へえーっ、格好いい人だねえ。いや、別にサイン貰ったわけじゃないんですけどね。
◆ブックセンターで買ったのはこの5冊。
「姑獲鳥の夏」京極夏彦(講談社:ハードカバー版:帯)2600円
「ミステリーズ vol.2」(東京創元社)1000円
「死者との対話」レジナルド・ヒル(ポケミス:帯)1900円
「らせん階段」エセル・リナ・ホワイト(ポケミス:帯)1200円
「ハヤカワミステリ総解説目録」早川書房編集部・編(ポケミスもどき:帯)1900円
京極本はいわずとしれた豆本欲しさの購入。美本を選んでいたら、なんと二刷りだった。うーむ。これは唸ってしまうなあ。まさか版を重ねているとは夢にも思わなんだ。こうなりゃ、意地でも初版を安く拾ってやるううう。
ポケミスはデフォルト買い。では、お約束で
「ポケミス、完集!!」
噂の総目録だが、ポケミスと同じ体裁というのには参った。これは買わずにはいられない。で、この600頁超のポケミスもどきの背番号が謎。なんと6桁で「116196」。これって一体何の番号なんざんしょ?早川書房からの挑戦なのだろうか?もしや莫大な財宝への鍵なのであろうか?暗号を解くと、封印された書庫の扉が開き、お蔵入りになった幻の翻訳書がずらりと並んでいたりして!!
あ、あそこに「ゴア大佐の推理」が!
こんなところに「停まった足音」が!!
きゃああ、アボットが大群でえええ!!
凄いぞ、凄いぞ、わくわくするぞ。
「イレブン疾駆す、ひと苦労」と覚える事にしよう。覚えて何になるのかは知らんけど。
ちなみにポケミス116番はアンブラーの「恐怖の背景」、196番は(なんと覚えていたのだが)クリスティーの「そして誰もいなくなった」。このあたりから推理を始めるのだろうか?例えば、「恐怖の背景」とは、この目録でウールリッチの作品である「恐怖」の真裏に位置する作品をあらわしているのではなかろうか?と、思って頁を捲ってみると、そこにはクリスティーの「満潮に乗って」が!!このクリスティーの符合は偶然なのであろうか?もしや近く出版が予定されているクリスティー全集で「満潮に乗って」と「そして誰もいなくなった」の間に何かが隠されているのかもしれない。
それとも1161番「密室殺人傑作選」に関係があるのか?残る数字は96なので、これを「クロ」と読む。黒の「密室殺人傑作選」といえば、先ごろ文庫された「密室殺人傑作選」の背表紙は「黒」だったではないか!!そこに「ロック(69)」を引っくり返す「鍵」があるのかもしれない。
それとも単純に(どこが?)「黒い密室」を指すのかも?これはディクスンの「弓弦城殺人事件」が別冊宝石に訳出された時の題名だ。ポケミスの「弓弦城殺人事件」は505番。しまったああ!「これ誤」答ではないか!!
あなたはしにました。

実は、単に早川書房の11万6196番目の出版物なんでしょうかね?

◆「ミステリーズ」の2号では、鮎川賞、創元推理短篇賞、評論賞が発表されている。中身は全然読んでいないのだが、評論賞の選評で、権田萬治と法月綸太郎が、インターネットに触れていたのが、少し引っ掛かった。権田萬治が、評論賞の常連投稿者に、自費出版かネット上での公開を示唆しているのは、余りにも(それで読んでもらえると思っているところが、というか「評論家になりたい」君の心情を性善説的に曲解しているところが)楽天主義に過ぎるとして、法月綸太郎が、ミステリ批評を取り巻く状況の変化について語ったくだりで「よしにつけ悪しきにつけ、この分野においてもインターネットの普及がもたらした影響は大きい」としているのは、その中身について、もう少し詳しく聞かせて頂きたいところ。一体、何が良くて、何が悪いのか?
誰もが容易に自らの「読み」を披瀝できるようになった事が「良く」て、本来熟考や推敲を重ねて世に問うべき<評論>の質を下げてしまった事が「悪い」のか?創元推理評論賞が目的とした、ミステリを論じる事のできる才能の発掘が、一億総評論家の環境変化の前に無効化されてしまった事を、主宰者側として嘆いているのか?本来、こぞって創元評論賞に応募すべき人材がネットにかまけて、賞に応募してくるのは、お馴染みの落選者ばっかりなんだよお、なんとかしてくれよお、と愚痴っているだけなのか?
個人的には、小難しい「評論」は性に合わないし、読んでもいない。そんなもんなくていいぞ、既に供給過多なんだし、というスタンスである。それに、仮にたかだが千人に満たない(推計)ネットミステリ人口に左右されるのであれば「評論賞」なんか端から大したもんじゃねえ、ってことなんだと思う。多くのミステリ読者は、心からミステリを愛している良きナビゲータが欲しいのであって、セクト好きの論争屋や手前勝手なアジテータや自家中毒の文学オタクを求めているわけではない。少なくとも私はそうだ。例えば、先日、全く畑違いの「女王陛下のユリシーズ号」を手にとってみようと思ったのは、よしださんの この紹介 のためだ。ここまで褒められれば、誰しも読んでみたくなるではないか?
既存の「評論家」に飽き足らず、いやむしろ、それを老害と切り捨てて、新たな知見と切り口で目ウロコな論理のアクロバットを展開できる才能を夢見るのは勝手だが、それが見果てぬ夢である事は今回の「評論賞」の廃止が何よりも雄弁に物語っているような気がする。

なあんてね、単に偉い先生がネットの功罪に触れてくれたので嬉しくなっちゃのさ、この小物は。
◆もう一駅途中下車して定点観測。
「推理作家の発想工房」南川三治郎(文藝春秋)1800円
80年代の半ばに文藝春秋に連載された、世界の大ミステリ作家の写真探訪記。これは、85年に出版された時点では、余りの高さに手が出なかった本。定価3500円というのは、当時でも単行本3冊分。その頃の私にはまだまだ欲しい本があった、というか、くりーむれもんをVHSで買っていたような記憶もございますのう。しかし、今回たまたま遭遇できて中をあらため「これは買いだ!」と唸った。まあ、よくぞこれほどの大作家たちにインタビューできたものである。また、このカラー写真がいいのだ。多数の本と一体化した大作家たちの執筆空間の奥行きたるや、ただただ溜め息である。また、アルレーやらモイーズの美しさに息を呑む一方で、晩年のハイスミスの寂寥感と隣り合わせの貫禄にも唸らされたりと、ぱらぱらと眺めているだけで胸の奥の方が熱くなってくる。海外ミステリが好きな人ならば、是非手元においておきたくなる本だ。これはいい買い物が出来た。


◆「青いリボンの誘惑」飛鳥高(新芸術社)読了
清水建設の常務まで務めたというのは戦後の二足の草鞋推理作家の「出世頭」といってよかろう。コンクリートの専門家というのが、平成屈指の二足の草鞋作家・森博嗣に通じるところに因縁を感じてみたりもする。さすがに、仕事が忙しくなったのか、昭和40年代以降、創作の筆を折った作者が、齢70を前に世に送ったのがこの作品。出版された時には、失礼ながら「え?まだ生きてたの?」と驚いた。それこそ、鷲尾三郎の「過去からの狙撃者」並みの驚愕であった。帯で賛辞を送った中島河太郎も「間に合った」という感興を抱いたのではなかろうか?
三谷裕は、死を目前に控えた父・健三の依頼を受け、信州の加荘市に向う。健三は妻の父が始めた家業を大企業の一角にまで育て上げた仕事の虫。その健三が最初勤めていた建築事務所時代の部下・阿東の遺族の今を見届け、更に、当時土砂災害でなくなった男・野坂の家族の消息を確認するのが健三の依頼であった。だが、裕が加荘に着いた時、既に新たな二つの死が彼を待ち受けていた。野坂の娘・友子の自殺、そして街の高校教師・山口秋子の殺害。16年の間、黒い眠りのなかにあった犯罪の場。開発を巡り揺れる街。親子の情が顔の中の落日を見たとき、甦る疑惑の夜に鶴嘴は唸る。薄幸の娘を支えてきた細い赤い糸は千切れ、灰色の川の上を虚ろな車が走る。死を運んだトリックは、死にぞこないの想いを繋ぎ、青いリボンの誘惑はすべてを始め、すべてを終える。
しっとりとした因果推理。様々な人の色と欲が風雪を重ね、いい具合にくすんだ街で、若すぎる命が惑い、滅びに向う。若者の書き分けが今一つで、主人公と二つの兄妹の交錯を支えるにはいささか辛い。トリックは小粒ながらも意表を突くが、実現可能かとなると、やや疑問も残る。ただ三つ子の魂ではないが、今一度ミステリの筆を執ろうとした情熱に敬意を表して、オールドファンはとりあえず買っとけ、買っとけ。


2003年9月21日(日)

◆実家のPCトラブルと育児に追われる1日。奥さんに「行くんだったら今」とお許しを頂き雨中の定点観測。まずはブックオフで1冊。
「メグレ激怒する」Gシムノン(河出文庫)100円
河出の新書に入っていない文庫オリジナル作品。EQに訳出された後、突然河出文庫に入ってマニアを驚かせた。みかけない時は徹底的に見掛けない本なのでとりあえず押えてみる。まあ100円だし。
もう1軒、立ち寄った先でプチ血風。
「ひとりよがりの人魚」田中小実昌(文藝春秋:帯)40円
「ふらふら記」田中小実昌(潮出版社:帯)40円
「猫は夜中に散歩する」田中小実昌(冬樹社:帯)40円
「ベトナム王女」田中小実昌(泰流社:帯)40円
「ご臨終トトカルチョ」田中小実昌(泰流社:帯)40円
「香具師の旅」田中小実昌(泰流社:帯)40円
「恥じらう死体」田中小実昌(泰流社:帯)40円
「影の旅路」加納一郎(出版芸術社)40円
「長崎・人魚伝説」山崎洋子(集英社)40円
d「続・13の密室」渡辺剣次編(講談社:帯)40円
田中小実昌の短篇集とエッセイ集が帯付きで均一棚にずらりと並んでいた。「さぞや熱心なファンの棚から出たんだろうなあ」と思わせる美本揃い。「猫は夜中に散歩する」は半分がミステリ系のエッセイなので密かに探していたが、他の5冊は勢いで買う。こういう本が固まって出た時は崩したくないではないか。うん。
あとは、1冊50円、5冊200円につき帳尻合わせに3冊拾う。世間的には、「続・13の密室」帯付きが40円は美味しゅうございますね。実は定点観測の前に、新刊書店も覗いていたのだが、ポケミスのガイドブック1冊で1900円!という値段にシッポを巻いて退散していたのである。貧しさには負けたが、雨に負けなかったので、拾い物ができた。


◆「ブギーポップ・イン・ザ・ミラー『パンドラ』」上遠野浩平(電撃文庫)
不気味な泡、三つ目。
君は、パンドラが函を開け、全ての災厄を解き放った時、最後に函の底に残ったものがなんだったっか知ってるかい?
カラオケ・ボックスに集う男女6人の若者。
三都雄は喃語で未来を唱え、
恭子は明日の匂いを嗅ぐ、
優の皮膚には暗示が浮かび、
功志は音を集め呟く、
香純が覗く先々の像を、
希美が紙に固定する。
彼等6人が見た未来。そこには一人の少女がいた。そして、その少女との邂逅は、世界の中心に彼等を導く。偽りの超能力、まことの破壊力、統和機構の魔手はそこにある。主なき傀儡たちが暴走し、パンドラの函を襲う時、海の匂いのする場所で、抹殺劇のゴングは鳴る。世界の中心で叫ぶ獣の声は、不気味な泡を召喚し、未来視はここに完成する。
そうさ、最後の函の底に残ったものは<希望>じゃない。<未来>だったんだ。
ブギーポップ第3作は、ほんの少しだけ異能者であった男女の若さと屈託を弾けさせながら、誰にも知られなかった救世主の伝説を描く。ブギーポップは第2作よりも更に裏に回り、ホンの一瞬のみ奇蹟として降臨してみせる。シリーズ・キャラとシリーズ設定の針を少しだけ動かして、一つの長編に仕立て上げる作者の筆はマンネリズムの甘い罠を回避しながら、新たな青春群像を育て、散らせる。うまいね、この人。