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2003年8月10日(日)

◆昨夕の「ガンダムSEED」視聴。サブタイトル「螺旋の邂逅」、どうせ格好付けな題名だろうと思ったら、ホントに螺旋で邂逅していた。次週は、シリーズの裏設定が明らかにされ、偽シャアと偽ウッディーの間柄も判明する模様。それにしても一体誰を討つのか、ガンダム。
◆リアルタイムで仮面ライダー555も見てみた。なにせ見たのが2回目なので全く設定が理解不能。堂本光一の劣化コピーのようなアンチャンが、街をふらふら歩き回って破壊の限りを尽した挙句、こけ猿の壷的存在のベルトを手に入れてライダーに変身し、レギュラーらしいイケ面ライダー2人に襲い掛かったところで次週に続く。ああ、判らんよう、判らんよう、おぢさんはちっとも判らんよう。
◆夜はWOWOWで「オーシャンズ11」を視聴。豪家キャストでオオコケしたリメイクもの。カジノの金をまきあげろ、っちゅうか、復讐は俺の手に、っちゅうか、要は「ルパン3世」みたいな話(まあ、これは「隠し砦の三悪党」を見て、なんと「スターウォーズ」みたいな、という愚かもしれないけど)。ジュリア・ロバーツが峰不二子でもやるのか?と思っていたら、普通のヒロイン役で肩透しを食ってしまった。カジノの鉄壁の地下金庫を破って1億6千万ドルを強奪する手口はそれなりに楽しいが、何せ、仲間が多すぎて(11人いる)大味な印象を免れない。映画館で見るほどの作品ではないが、茶の間桟敷なら腹は立たないか。


◆「新世界」柳広司(新潮社)読了
昨年嵌まった柳広司の最新作。とうとう図書館で借りずに新刊で買ってしまった。これで、如何に私がこの作家を「高く買っているか」をご理解頂ければ幸いである。さて、この新作は、これまでの作品の中では最も読者へのメッセージ性が強い1作であろう。日本でもこの時期に年に一度は語られるあのネタ=「原爆」に正面から挑んだ問題作。「さすが、出版社も抜け目ない」と感心させられる。
舞台はアメリカの砂漠を切り拓いて作られた街ロス・アラモス。時は、1945年8月14日、第二次世界大戦の終わった日。戦勝に湧く天才たちの研究所に原爆投下の英雄たちが凱旋してくる。戦士たちのあからさまな尊敬を前に子供じみた風刺劇の準備の余念のない科学者たち。そして爆発のプロが仕掛けた祝砲が暴発した時、英雄は我が身を投げ打ち科学者を救った。しかし、死神の手は遍くロス・アラモスを覆っていた。恐怖故に生まれた冥王の元素。爆縮する宇宙の中で、神と出会うのは誰か?降り注ぐ黒い雨は、隻眼の少女の瞳を濡らし、機密の扉の向うで燐光は輝く。挿入されるイルカ放送は何を告げるのか?狂うか、殺すか、歪んだ二者択一の中で引き金を引く死神の名とは?
名探偵オッペンハイマー登場。数々の歴史上(架空上)の有名人を主人公に据えて、あったかもしれない推理ワールドを構築してきた作者の新作は、日本人にとって忸怩たる恩讐の念をかきたてながら綴られる。ただ、素材の難しさ故か、これまでの作品に比べて、まとまりが悪く、挿入される創作童話や、赤狩りの査問も、メインプロットに有機的に絡んでこない。また、幻想的な仕掛けも、アメリカ人視点としては如何なものか?フーダニット趣味には応えてくれるものの、これまでの完璧ぶりに照らすと、短篇ネタを膨らませきれなかった失敗作という印象の作品。出版を焦ったのかなあ?文庫化の際には改稿希望。


2003年8月9日(土)

◆台風の影響で荒れ模様の中、土田さん召集の飲み会で新宿へ。
久しぶりに紀伊国屋書店を覗くと、一階の見晴らしが全然変わっていてびっくり。そういえば、ここ1年ぐらい覗いてなかったもんなあ。名刺代わりに千葉の書店では見掛けなかった新刊と旧刊を1冊ずつ購入。
「新世界」柳広司(新潮社:帯)1600円
「フェンス」Mミルズ(DHC:帯)1600円
前者は「名探偵群像」路線をひた走る本格推理の雄・柳広司の最新作。ダーウィンの次はオッペンハイマーである。メガトン級の興奮を期待したい。後者は、最近「オリエント急行戦線異常なし」というふざけた題名の新作を出した作者の第1作。三年前の刊行だが、「本の雑誌」9月号の「オリエント〜」評を読んでいたら無性に読みたくなったもの。たまにはこういう本買いもいいものだ。
◆西武新宿駅下に集合したのち、華僑飯店に陣取ったのは、川口@白梅軒ご夫妻、SPOOKYさん、いわいさん、無謀松さん、石井女王様、葉山響さん、おーかわ師匠、茗荷丸さん、に私の11名。そこから、あっという間の4時間強でありました。
最初は「顔色のいいゾンビ」状態だった葉山さんのテンションが徐々に上がり、お開きになる頃には、いつもの葉山さんに戻っていて、よかったよかった。
総武線の行商婆ちゃん並みに背嚢に本を積めてきた女王様、この夏は三省堂のフーリック揃いをトリプらせていたらしい。
数年前のSRの全国大会で配られた名古屋古本地図を手に半年間の名古屋勤めに思いを馳せる無謀松さん、
kashibaと同じペースでひたすらビールを飲みつづけるSPOOKYさん、
女王様が行商する宝石の4号を一目みて「それは持っている」と言い切るいわいさん、
「誰か要らない?」という声が上がると「はい」と必ず手を挙げる土田さん、
「福永武彦の子供が池澤夏樹で」と川口夫人
「池澤夏樹の子供が池澤春菜」と茗荷丸さん
「ぶれすとふぁいやーーーーーーーっ!」な川口さん
「森村誠一で読み返して一番ペケは『捜査線上のアリア』、二番目のぺけが『螺旋状の垂訓』」と葉山氏がのたまえば、
「山村美紗は、『花の棺』を劣化コピーして消耗していく」とおーかわ師匠。
いやあ、僕なんか全然一般人です。ネット知名人の素性なども教わって、また謎が幾つか解けてしまった。満足満足。
女王様からダブリ本を1冊購入。
「太陽の生贄」戸川昌子(双葉社)300円
わおう、これはお買い得。
茗荷さんに「ふしぎなマチルダばあや」を売っぱらったので、出し入れトントンである。帰宅したら1時前だった。やっぱり千葉は遠い。でもまた誘ってにゃ。


◆「モーテルの女」Fブラウン(創元推理文庫)読了
ブラウンの1958年作品。日本に紹介されたのはその9年後の67年、創元推理文庫326番。何故か私の所持本は初版、どこぞの古本屋で100円で買っていた(昔からやる事は変わっておりませんな)。勿論、現在は品切れ状態。2001年7月の目録には品切れマーク付きで載っていたが、2002年1月の目録からは落ちた。この辺りでブラウンが14冊ほど一斉に死にいたる火星人の扉を3,1,2とノックしてしまうのである。彼の名は絶版なのである。で、中味は「品切れもむべなるかな」な「田舎の駆け出し記者」もの。原題の「One for the Road」は「出がけの一杯」の意味だが、邦題のチープなテイストの方がお似合いかもしれない。日下弘のデザイン画よりも、胸を刺された金髪美人の裸死体という「テーマ」をこてこての具象画で表して欲しかったですのう。復刊フェアで取り上げる時にはその線で宜しく。
わたしロバート・スピッツアーはアリゾナ州の人口僅か2500人の田舎町メイヴィルの週刊新聞「サン」の駆け出し記者。薄給でこき使われる修業中の身の上ながら、美人電話交換手のドリスとの婚約も果たし上昇志向は人一倍。そんな私に初めて巡ってきた殺人事件の取材。街のモーテルで全裸で刺し殺されたいたのは流れ者の酔いどれ美女エイミー。物取りか?痴情か?ヤクの縺れか?それとも?週50ドルの生活費を負担する前夫、覗き見する白痴、様々な容疑者が去来する中、一枚の写真が告げた真実とは?「邪悪」という名のバー、ホテルと言う名のモーテル、そしてノーカットという名の死神。駆け出し記者に出がけの一杯を。
良くも悪くもペーパーバック・テイストの作品。<わたし>の造型は、それなりに元気が出るし、彼女との掛け合いも楽しい。邦題や美女の全裸死体といった設定から受ける淫靡なイメージは毛ほどもない青春推理の趣き。真相に迫る「家計簿」的アプローチは珍しい手法かもしれない。クライマックスに、やや唐突感があって、「犬も歩けば」式の展開ここに極まれりといった感触。これは、復刊されないだろうなあ。ブラウン完全読破を志した人だけが読んでおけばいい小品である。


2003年8月8日(金)

◆夏休み初日。台風が九州から四国あたりを暴風圏に巻き込んでいるらしい。
今日は負けずに済むかな?半身、サラ・ウォルターズ、じゃなくて、阪神、そらタイガース。降れ〜ッ、降れ降れ降れ〜。
で、負けずにすんだと思ったら、またしても4番打者が登録抹消らしい。
来た来た来たあああ。こうこなくっちゃ阪神じゃないよ、うん。
いつものこっちゃあ!!!
◆不安定な天気の中、ブックオフ2軒定点観測。
「わるガキ日記」Sブレッド(光文社)100円
「猫は聖夜に推理する」柴田よしき(光文社カッパノベルズ)100円
「どこよりも冷たいところ」SJローザン(創元推理文庫)100円
「石川喬司競馬全集 第3巻」(ミデアム社)100円
d「バレンタインの遺産」Sエリン(早川ミステリ文庫)100円
d「わが名はレジオン」Rゼラズニイ(サンリオSF文庫)100円
「黒の怪」志村有弘編(勉誠社)500円
「塵よりよみがえり」Rブラッドベリ(河出書房新社:帯)900円
サイモン・ブレッドの赤ちゃん小説が嬉しいところ。ネットででも取寄せようかと思っていたら、百均棚からボタモチ。ふははははは、百均王(ヒャッキング)の引きは老いて益々盛んぢゃああ。サンリオのゼラズニイもちょっと嬉しいかな。左程古書価格の高い本ではないけど得した気分。
ついでに細野不二彦「ギャラリーフェイク 第24〜26巻」、長谷川裕一「竜が滅ぶ日」なんかも買って即読み。前者は安定した展開だが、ややマンネリの感は免れない。後者はスーパーロボット大戦αもの、これがっ!もうっ!滅法面白いっ!!!!真面目に「ゲッターロボ対マジンガーZ」をやっている。「やはり長谷川裕一こそ、今の日本で、つまり世界で、つまり宇宙で一番熱いロボット漫画を描く人だっ」と再認識した。燃えるううううっ!!!
◆皆が買っている新刊も買う。
「陰摩羅鬼の瑕」京極夏彦(講談社ノベルズ:帯)1500円
「氷川瓏集 睡蓮夫人」日下三蔵編(ちくま文庫:帯)1300円
早速、京極夏彦サイン会応募券を葉書に貼って出す。小読者としてあらまほしき姿である。
希わくば処女出版を祝して、是非、氷川瓏サイン会も開催して頂きたいと思う今日この頃である。
♪夜は墓場でサイン会
ゲゲゲの氷川瓏
氷川瓏集は、怪奇探偵小説集第二期の目玉オヤジです。
あああ、頭が京極夏彦に。>どこが?
◆帰宅したら今月号の「本の雑誌」が届いていた。毎度ありい。
今月の特集は最強のファミリーを選ぼうという企画。
余り本を読んでいない私の知らない家族ばかりが並んでいるぞよ。
ミステリーの世界で家族というと大概、被害者一家だもんなあ。
グリーン家、ハッター家、犬神家、最近(笑)ではテンプラー家とか。
そういう意味ではマーシュのランプリイ家は異色かも。
でも、最強となるとやっぱ、コルレオーネ・ファミリーですか?
◆NTVでやっていた「ニック・オブ・タイム」をリアルタイム視聴。暴力とは無縁な生活を送ってきた会計士が幼い娘を人質にとられ、1時間半以内に女性知事を暗殺するよう迫られる、という奇抜な話。映画と実際の時間をリンクさせた小気味良いサスペンス。「敵」の張った罠の厚みに戦慄し、それでもなお逆転を試みようとする市井の人の気迫と行動力に感動する。スカッと短いのもいい。こういう話はコマーシャル抜きで楽しみたかった。


◆「わるガキ日記」Sブレッド(光文社)読了
副題は「ボクはあぶない0歳児」
俳優探偵チャールズ・パリスやら、泥棒未亡人パージェター夫人のシリーズで知られる英国の推理作家サイモン・ブレッドが描いた「ベイビー・トーク」もの。なぜか翻訳は、かの「リング」ワールドで荒稼ぎしたホラー作家・鈴木光司だったりする。
となると、梗概は

白く濁った酸を吐き、
神経を侵す音を立て、
汚物を撒き散らし、
行く先に必ずや災厄をもたらす破壊神。
その攻撃に、生気を吸い取られていく妻と夫。
狡猾な猫すら欺き、一族の反目を煽る不幸の種子。
抜け落ちる髪の毛、疼く牙、そして驚異の増殖力。
聖なる儀式に向けて裏切りの衣装は誰が纏うのか?

ということになろうか。
で、実際そんな話である。子持ちの方は、試しにご一読を。
惜しむらくは、原語ではぼかすことのできた赤ん坊の性別を男と割切った点で、もしも趣向が許されるのであれば、女の子バージョンも作って欲しかった。翻訳は、ぼっけえちばけた女流ホラー作家・岩井志麻子で。

「わしは危ねえ0歳児じゃけ」

うーん、けーでは女も男もねーぞ。


2003年8月7日(木)

◆夏休み前の最終勤務日。とりあえず真面目に書類の整理など。
◆就業後、新宿伊勢丹へ落穂拾い。今回はミステリ系の専門店が少なかったので朝から行く気になれなかったのである。まあ、ぺんぺん草一本残ってないであろうと思ったら、アート文庫の棚に飛鳥高の「崖下の道」やら「死刑台へどうぞ」などが並んでいて、へえ〜っ、と感心する。手にとって値段を見て今度は「ひょえええ」と納得。どちらもさりげなく5桁である。「崖下の道」なんて2万5千円だ。うへえ。こんな値段の本はショー・ケースに入れておけってば。どこの棚だったかは忘れたが少年向けの「姿なき怪盗」なんてのも、さりげなく1万2千円で、忽ち棚に戻す。獅子内俊次萌えなワタクシ的には表紙絵だけでも欲しいところなのだが、それだけのために5桁は出せないよう。貧乏人だよう。ポケミスが200円から300円で大量に並んでいたが、既にめぼしいタイトルは漁り尽された後といった雰囲気。棚下も覗いてみるが、空振り。結局、小一時間会場を見て廻って拾ったのは安物買い中心に7冊こっきり。
「『ケルズの書』のもとに」PRヴィーニンガー(水声社:帯)800円
「消えた心臓」Jベンヴェーヌティー(水声社:帯・地図)800円
「小さな花」Eヒンターベルガー(水声社:帯・地図)800円
「病んだハイエナの胃のなかで」Mアマンスハウザー(水声社:帯)800円
「血のバーセナ」Mホルヴァート編(水声社:帯)800円
「ペーパーバックの本棚から」小鷹信光(早川書房:帯)900円
「白い対角線」藤本明男(河出書房新社)1500円
現代ウイーン・ミステリは、いずれパシフィカの北欧ミステリ・シリーズのように幻の叢書と化す事が必定ゆえ、いつかは買おうと思っていたシリーズ。まあ、完本が半額前後なら良しとしましょう。後4冊、どこかに転がってないかにゃあ。
小鷹信光本は版元が早川だったのでびっくり。そうか、「パパイラスの船」以外にもあったのね、小鷹本。まあ、私のハードボイルドに関する知識はパンピー並みっすから。いわんや、評論本をやである。この本、ペーパーバックへの熱い思いが伝わってくる良書でリファレンスもしっかりしているが、初出がないのが画竜点睛を欠いた感じ。
で、本日唯一の収獲は「白い対角線」とやら。こんな本、この歳になるまで出ていた事もしらなんだ。一応「長編推理小説」と銘打っているんでそうなんでしょう。まあ、夕方のこの時間まで残っていたんだから、ゲテ扱いされて放置プレイに逢っていたに違いない。一応、出版社が名のあるところなので、全くのゲテではない事を期待したいところ。
ところでこの題名みた瞬間、反射的に「青い三角定規」という言葉が浮かんでしまった私は真性オヤヂである。うーん。

君は何を今みつめているの?
重いショルダーに曲る背中で、
逃げていく旧(ふる)い友、
それとも金、
君も今日からは僕等の仲間、
飛び込もう古本の市へ

古本は太陽で背焼け日焼け

君も今日からは僕等の仲間、
篭ろうよ古本の蔵へ


◆「ギャンビット」Rスタウト(光文社「EQ」所載)読了
ネロ・ウルフの第25長編。1962年作品。日本では30年後にEQ87号、88号に分載された。翻訳者は大村美根子。雑誌掲載のみで本になっていない作品の一つ。ギャンビットといえば、ミステリ読みは「バールストン・ギャンビット」を連想するが、この作品の被害者は、別の意味で「捨て駒(ギャンビット)」なのであった。こんな話。
ウエブスター大辞典を焚書刑に処しているウルフのもとに、大会社の社長令嬢サリー・ブラントが持ち込んだ依頼とは、殺人容疑で身柄拘束中の父マシューの無実を証明する事。事件は二週間前、「ギャンビット・クラブ」というチェスクラブで起きた。傲岸不遜なチェスの名手ポール・ジェフリンが、12名の指し手と盤面なしで対局するというブラインドフォールド・ゲームに挑戦中、ホット・チョコレートを飲んで気分を悪くし、医師のヴィクター・エイヴァリーの応急手当も虚しく、病院搬送後に死亡してしまった。死因は砒素。チョコレートに接触できたのは、料理人、給仕含め7名の人間。警察は、調理場からポールの元にわざわざチョコレートを届けたマシューに容疑を絞り彼を拘引したのであった。しぶしぶながら依頼を引き受けたウルフは、犯人の狙いはポールではなく、ポール殺害の容疑をマシューにかぶせることでマシューを抹殺する事にあったとの捜査方針で事件に挑む。果して、大胆な殺しの指し手を揮うウルフの盤面の敵とは?
チェスクラブが舞台になっている割りには余りチェスに対する思い入れや蘊蓄の類いは少なく、単なる「刺し身のツマ」扱いなのが残念なところ。また、反目しあう富豪一家の殺人という永遠のプロットに加えて、一室に容疑者が順々に一人ずつ入っていくというのは「料理長が多すぎる」のシンプルな焼き直し。しかしながら、今回は最有力容疑者に一捻り加えて一種独特の風味を出す事に成功している。ただメイン・プロットは所詮短篇ネタ。後期の作なので、薄味感は免れない。しかし、例によってそれなりに読まされてしまうんだよなあ、これが。キャラ立ちのみで、アメリカで最も愛された名探偵の座を獲得したウルフこそはホームズの正統後継者にして日本の萌え系新本格作家の父なのであろう。


2003年8月6日(水)

◆朝一番のひかりで帰京して出社。勿論殆ど爆睡である。二三日運動不足だったので、帰りは東京まで歩く。八重洲ブックセンターで、噂の京極夏彦の「姑獲鳥の夏」ハードカバー版を手にとってみる。豆本も欲しいし、きっと買っちゃうんだろうなと思いながら、今日のところは平積みに戻す。
初出が新書や文庫で後からハードカバー化された作品を買うという経験は、これまでにもないわけではない。最も当り前には「『全集』で買い直す」というのが、それに当たる。個人的には結城昌治の「長い長い眠り」とかがそのパターン。まあ、カーの「毒殺魔」、イネスの「ハムレット復讐せよ」あたりもその類いからもしれない。んじゃあ「全集」パターン以外でないかと考えてみると、あった、あったよ、ありました。鮎川哲也の「偽りの墳墓」。なぜか初出はポケット文春なのに、毎日新聞社からハードカバー化されたという(当時としては)レアなケース。もっとも、この場合は、当時、現役本だったハードカバー版を先に買って、初出の新書版は後から古本で入手するというパターンだったけど。最近では、内田康夫やら島田荘司やらが盛んにこの形態でコアなマニアの要望(五分)と出版社の要望(九割五分)に応えているのだけれど、京極夏彦の場合は「作者の趣味」が五割ぐらいありそうですのう。まあ、凝った造本だこと。これが2万円の限定出版とかいわれるとスルーしちゃうけど、2600円だと買えてしまうもんなあ。くそう、上手い値付けだなあ。
◆その足で八重洲古書館も覗くが、さしたるものは何もなく、購入本0冊。お買い物は東京大丸夏季限定「唐芋プリン」のみ。…限定品に弱いんだよなあ(ぼそ)
◆寝床に入って本を読んでいたら、奥さんが「何よんでんの?」と聞いてきたので「推理小説」と答えると「それはわかっとるっ!」と言われてしまった。
「他になにがあるのよっ?!」と突っ込まれたので
「そりゃあ、SFとか、ホラーとか、、」というと
「そんなもん、みんな一緒よっ!」。
いや、違うんだ、「火曜サスペンス劇場」と「世にも奇妙な物語」ぐらいは違うんだ。信じてくれえ。


◆「棺のない死体」Cロースン(創元推理文庫)読了
創元推理文庫の「復刊」の歴史の中でも、最もマニアの度肝を抜いたのが、この本の復刊。1961年5月19日初版、1994年10月21日再版。その間なんと33年5ヶ月と2日、初版と同時に「おぎゃあ」と生まれた赤ん坊が、中年の入り口に差し掛かろうかというタイムラグ。しかも改訳などというお洒落な事はしていない。世界推理小説全集以来の由緒正しき田中西二郎訳である。どうだあ、参ったかあ?!そもそも創元の復刊は、復刊フェアのラインナップを見てから「あれ?これって切れてたの?」というパターンが多く、有り難味がないのが通例だが、この時ばかりは古書相場に激震が走った。まあ、ジュビナイル(「ゆうれい殺人事件」ね)では読めた分「首のない女」ほどの飢餓感がなかったものの、やるじゃないか!東京創元社!!そうだよ、それでいいんだよ!!と次なる「我が社の隠し球」に期待は募るばかりだったのである。まあ、それっきりでしたけどね。
で、内容の方は、皆様御存知の奇術師探偵グレート・マーリニの最後の長編。カーを追いかけながら永遠に追いつけなかった作者が、周回遅れでカーの作風に最も接近した作品といってよかろう。
新聞記者ロス・ハートの失業から、この「死」を弄ぶドタバタ推理劇の幕は開ける。一介の新聞記者が化学業界の大立者ダドリ・ウルフに対し、娘ケイとの交際を求めるというのが無茶な話だったのかもしれない。独裁者の逆鱗に触れた彼は失業に追込まれ、失言の果てに失恋というダブルパンチに見舞われる。頑ななケイの態度にふてくされ、興業準備に余念のないマリーニのもとに転がり込むロス。一方、ダドリ邸ではロスを追い出した一幕の後に、更なる招かれざる客とのドタバタ死劇が待ち受けていた。ウィリアム・ガーナーと名乗る自称FBIがダドリを脅迫した挙句、彼の反撃に遇いあえなく落命してしまったのだ。不老不死の研究医師までが死体の隠蔽に巻き込んで、陰謀者たちの宵は暮れ果てる。だが、これはすべて謎の前哨戦に過ぎなかった。死者は甦る、幽霊屋敷。この目でみたんだ、黒い密室。読者よ欺かるるなかれ。霊媒、錬金術入り乱れ、不老不死の夢を哄う棺のない死体。果して、縺れに縺れた事件の真相や如何に?
冒頭からカーターディクスンを思わせるドタバタ恋愛劇と、不可解な人物の死が描かれたかと思いきや、一拍おいて幽霊騒動の中で甦った死体が消え、兇器が消え、主人公までが消される。これで面白くならない訳はないのだが、やはりカーの天才に比べるとプロットの始末が悪い。タメが効かず、謎を小出しに解決していきながら自分でプロットを矮小化してしまう弊は相変わらず。蘊蓄も手品も凡手ではないのだが、長編をもたせるだけのストーリーテイリングの才に欠けているのだ。本格推理愛好家は読んでおいて損はないが、万人に薦められる作品ではない。永年の品切れもむべなるかな。いやロースンの中のでは面白いと思いますけどね。


2003年8月5日(火)

◆大阪出張。キタを定点観測するが食指をそそられるものはなし。いや、100均で徳間文庫の日影丈吉やらみかけたりしたんだけどスルー。なんだか贅沢になっちゃったよなあ。購入本0冊。
◆実家に一泊。CSでヤクルト阪神戦でも見せてもらおうかと思ったら、東京は大雷雨夜だったそうで試合は中止。下水道に金色藻でも浮きましたでしょうか?>特に意味はない。
◆実家でネットと接続したいというのでBフレッツを勧めたところなんと工事が2ヶ月待ちらしい。だったら、宣伝やめとけよな、NTT。速いんだか、早くないんだか。


◆「囁く谺」Mウォルターズ(創元推理文庫)読了
「ミステリの新女王」の第5作は、懐に優しい文庫オリジナルである。しかし、文庫1冊が1100円するのである。「異星の客」が390円だったよなあ、と遠い目をしてしまうロートル読者にとっては、いささか抵抗のある値段である。で、歴史を振り返ってみると、「氷の家」が860円、「女彫刻家」が960円、そして「鉄の枷」で1100円突破。そうかあ、ここで大台に載ってましたか。単行本で出ればその2倍強の値がついている事を思えば確かに安い。半額ならば550円だしなあ。うふふふふふ。
<ミステリの新女王>という呼称は、第1作でCWAのジョン・クリーシー賞、第2作でMWA、第3作でゴールデンダガーと名だたる賞を総舐めにしてきたウォルターズにこそ相応しい、というのが森事典にもある「定説」だが、頭の出来の弱いワタクシ的には、どうも作品毎に別の作家の話を読まされているような気がして素直に評価できなかった。ところが、この作品について申せば、妙な既視感があったのだ。そう、同じ作者による「氷の家」の変奏曲を聞かされたような気になってしまったのだ。
ロンドンはテムズ河畔の再開発地域、選ばれた人々の住む住宅街の一角で、一人のホームレスの死体が発見される。なんと手を伸ばせば食糧があるにも関わらず、ビリー・ブレイクとして知られるその男は餓死していたのだった。半年後、家の主にして女流建築家アマンダ・パウエルは、<ストリート>誌の記者マイケル・ディーコンから取材を申し込まれる。アマンダが、ビリーの遺体を手厚く葬った<美談>を、政治キャンペーンに使うべく「事件」に関わったマイケルは、いつしかビリーの素性探しに深くのめり込んでいく。贖罪の自傷、汚れたアンファン・テリブル、消えた銀行員、待つ女、スポイルされた魂、響き逢う因縁、失踪したエリート外交官、謎が謎を産み、封印された過去が共鳴し、顕れる。
その死体には名がある。だが、その名には実体がない。何故、男はその死に場所を選んだのか?何故、男達は消えていくのか?謎の中心にいる一人の美しい女。くすんだ記者魂を再び火をつける男、そして世慣れた少年ホームレス、この3人の絡みが抜群にスリリング。更に多層的に綴られる故なき男たちの失踪と、世代を渡る因果の環が、一つの物語に収斂していく過程が圧巻。脇役のダメ男の生態なんぞも実に巧い。人物造形への凄みを加えた都会の中の「氷の家」。完璧。しかし、これは推理小説なんだろうか?


2003年8月4日(月)

◆原書講読の皺寄せ分1冊をこなすために早起きして1時間ばかり読書。結局読み終えることができず電車の友に。まだ日本のサラリーマンは真面目に働いているようで、車内はいつもと変わらぬ混み具合。往路の途中で1冊目を読み終え、本日2冊目に突入。満員電車の中では一冊目を鞄に仕舞って二冊目を取り出すという作業が大変だったりするのである。ナイオ・マーシュの犯人の如き早業トリックなのである。同じような装丁なので、ふと目を離した人は別の本だとは気がつくまい。それどころか読んでいる方も、どちらがとちらか判らなくなるのである。それは、単に記憶力が悪いだけなのである。
◆就業後、余りの暑さに寄り道の気力を奪われ真っ直ぐ帰宅。めでたく2冊目も読了する。購入本0冊。


◆「風の向くまま」Jチャーチル(創元推理文庫)読了
実は歴史小説家だったジル・チャーチルの「時代推理」新シリーズ。といっても時代設定は、1931年。ヴァン・ダインが「カブト虫殺人事件」を、エラリー・クイーンが「オランダ靴の謎」を、クリスティーが「シタフォードの謎」を、カーが「絞首台の謎」「髑髏城」を出した年であり、要は黄金期のど真ん中な年である。では、この物語が黄金期かというと全くそんな事はなくて、コージーに吾が道を行く御手軽な読み物になっている。こんな話。
大恐慌ですべてを失ったブルースター兄妹、ロバートとリリー。上流階級から一気に貧乏のどん底に転落し、兄はご婦人方のお相手で、妹は銀行の事務で口に糊する毎日。そんな二人に、突然遺贈された田舎の大邸宅。贈り主は二年前に事故死を遂げた二人の大伯父・ホレイショー。10年の間、僅かな維持費のみでその屋敷に住みつづける事ができれば、ホレイショーの莫大な財産はブルースター兄妹のものになるという。失うべきものは何もない二人は、渡りに船と、このへそ曲りの大伯父の挑戦を受ける。かくして有能な弁護士夫婦を召使い代わりに、奇妙な同居生活は始まった。そこに降って湧く、大伯父の殺人疑惑。二人は降り掛かる火の粉を払うためにも、好奇心を満たすためにも、大伯父の死の真相を追い始める。だが、それは封印されていた殺意を甦らせ、屋敷に新たな死を招くのであった。
腰の低い弁護士と料理自慢の弁護士婦人、チグハグな上流一家、穀潰しのいとこ、分不相応な野心を抱く駆け出し新聞記者、やる気のない編集長などなど、人物の肉付けは毎度の事ながら達者なものである。ミステリとしての仕掛けはシンプルで、すれっからしには「さくっと御見通し」な薄味ぶりだが、勧善懲悪で過不足のない大団円は、コージーミステリの水準をクリアしている。いっそ、「主婦探偵ジェーンが小説講座で書いた話」という設定にして、嘘臭さを大法螺で塗潰すという手法もあったかな、と邪推してみたりして。


◆「その死者の名は」Eフェラーズ(創元推理文庫)読了
ここへ来てコージーな世紀末の後輩たちに交じって今更ながらの紹介が進むエリザベス・フェラーズ。デビューからなんと62年後(!)に、東洋の島国にその記念すべき処女作が翻訳紹介された。それでいながら全くと言っていい程、古臭さを感じさせないのは、活きの良い訳文の功績か?はたまた作者の地なのか?「黄金期」の堂々たる構築美に金属疲労が生じ、セイヤーズやバークリーといった宮大工が第一線から引いた頃、このいなせな新人は、鳶・大工なホームズと正体不明のワトソンを引き連れてやってきた。こんな話。
ところはチョービー村の警察署。その1月の深夜、「車で人を轢いてしまった」と怯えながらやってきたのは、5年前に娘のダフネを連れて<月桂樹荘>に移ってきたアンナ・ミルン夫人。被害者は、泥酔した挙句、道の真ん中で寝ていたらしく、夫人に落ち度はない。顔を潰された被害者は土地のものではなく、それが証拠にポケットの中からは南アフリカの洋服屋のレシートが発見される。さらに、その裏にはミルン夫人の住所が記されていた。果して、見知らぬ男の死は事故だったのか?男を泥酔させた「酒」の出所を追う警察は、ひょんな事から事件に首を突っ込んできた犯罪ジャーナリスト、トビー・ダイクとその相棒ジョージに振り回されながら真相を追う。匿名の手紙が飛び交い、偽りの身元が告げられたとき、謎は自己増殖し、過てる恋は死を招く。その生者の名は?死者の名は?
呑気な雰囲気の内に、緻密なプロットを忍ばせ、探索者たちの調子はずれの言動で読者を翻弄しつつ、一筋縄ではいかないオチへと誘い込む。これは、処女作としては出来過ぎ。反・本格推理を、「天然」でやらかした作品とでも呼ぶべきか。ライスのビンゴとハンサムに先立つ事2年、最も有能なるワトソン最初の事件は、ロマンス小説のように大団円で、そして恋を裏切る。


2003年8月3日(日)

◆のんびりと起きてペーパーバックを読み進み、10時過ぎに366頁を読了。366/10000。はああ、3月初旬にベロウを読み終えてから半年ぶりの原書読破。まあ、それだけ娘の手間が(こちらにまで)かからなくなったということか。二人の子育てと家事に追われながら、バリバリ原書講読したり、翻訳修業に励んでおられる青縁眼鏡さんはホントに偉いと思う。
◆野菜室で長ねぎ3本が腐乱死体になりかけていたので、人参1本と玉ねぎ半個とともにスープにする。じっくり煮込んだのが奏効して、自然な甘みが出た。これはヒット。えらいぞバーミックス。見事な死体消失。あとはいわしの丸干しに、大根おろし、おくらと長芋入りのスタミナ納豆など、ヘルシーな朝昼兼用食を頂く。
◆昼寝して3時過ぎから本の雑誌の原稿にとりかかり、5時頃に仕上げる。夕方から珈琲ミルを選びにデパートへゴウ!8500円也のドイツ製ミルと珈琲豆をあれこれ300g買って帰る。夕食後、まともな珈琲を立てて、風月堂のダークチェリータルトでデザートを楽しむ。小市民的リッチな気分。購入本0冊。


◆"Lamb to the Slaughter" by Jennifer Rowe(Allen & Arwin)finished
(現時点では)最後のヴェリティー・バードウッドものとなっている、作者の長編ミステリ第5作。前作「Stranglehold」では、バーディー自身の知り合いでもある「一夫多妻制」の老パーソナリティーの一家が主人公となったが、この作品にも少しピントの外れた大家族が登場する。
9人の子供を育ててきたアニー・ラム。その下から2番目の息子トレヴァーは、妻のダフネを殺害した罪で5年間獄中に繋がれていた。しかし、野心家の若手弁護士ジーン・グレゴリアンが「屠所の羊(これが題名にもなっているわけで)」と題する本を著し、トレヴァーが冤罪であることを仄めかした結果、トレヴァーの恩赦を勝ち取ることに成功する。法学部の学生であった頃ジーンの好敵手であったバーディーはABC放送の元仕事仲間からの依頼もあって、釈放されたトレヴァーを取材すべく、ラム一族の住む「希望の果て」と呼ばれる屋敷へとやってくる。かつては、素封家であったラム一家もアニーの夫が地所を切り売りしてきた結果、残った土地はごく僅か。「希望の果て」から車で10分の小屋に夫婦で居を構えていたトレヴァーは、5年ぶりに訪れる「我が家」で本を書くために新たなパソコン一式を持ち込みご満悦。だが、愛娘を結婚という形で奪われた挙句、その命まで奪われたと信じてきたダフネの両親であるレスとドリーのヒューイット夫妻、そしてダフネの弟フィリップは、トレヴァーの釈放に戸惑いを怒りを隠せなかった。
惨劇は、帰還の夜に起きる。夜半にバーディーと一旦別れ、トレヴァーの様子を伺いに出たグレゴリアンは、いつになっても戻らず、おっかなびっくりで彼の行方を追ったバーディーは、高木の根元で倒れ伏すグレゴリアンを発見、更には離れで撲殺されていたトレヴァーの死体の第一発見者となってしまったのだ!!警察の捜査が始まるや、トレヴァー殺しの兇器が5年前のダフネ殺しのそれと同じである可能性が示唆される。昔からトレヴァーに思いを寄せていた酒場の女スー、トレヴァーの兄・キース、キースの愛人のあばずれ・リリー、トレヴァーの弟で知恵遅れのポール、トレヴァーを英雄視する甥・ジェイソン、その母でトレヴァーの双子の妹・ロザリー、そしてヒューイットの3人、様々な欲望と怨念が交錯する「希望の果て」にバーディーが見た「真実」とは?5年の歳月を超えて模倣される死。鋳造された神話が語る断続殺人の罠。病院の待ち合い室に天啓は降る。
最後の最後まで、真犯人を隠し切ろうとする粘り腰はいつもながらのジェニファー・ロウ。二つの殺人を操る手際と伏線も鮮やか。とはいえ、この話は、本格推理というよりはバーディーを主人公にした「HIBK」もののように思えなくもない。真相へと至る道が、迂遠なのである。バーディーがとある質問をもっと早い段階で行っていれば、事件は開幕即終結していた筈である。ロウ自身「名探偵」の在り方に疑問を感じたのか、この作品を最後に我等が「近視の探偵」ヴェリティー・バードウッドは姿を消し、その後、女刑事テッサ・ヴァンスものの2作を著した後に、古巣のファンタジーに篭ってしまった。弱虫ローワンも悪くはないのだが、ミステリマニアとしては、素直に惜しいったら、惜しい!処女作「不吉な休暇」同様、田舎の一家を舞台にしたこの物語をバーディーの「カーテン」にはして欲しくないんだけどなあ。


2003年8月2日(土)

◆あ、ネタを振った途端に梅雨明けしてしまった。
ネタ振って地固まる
袖振っておじゃる丸>特に意味はない。
◆久しぶりに仕事のお持ち帰りがない週末。万歳。しかし、本の雑誌の締切は必ず巡ってくるのであった。今回は原書ネタなので、とりあえず今週ここまで一日25頁ペースで読んできたペーパーバックを途中昼寝・宵寝などを差し挟みつつ黙々と読み進む。夕方から、港の方で花火大会があるというので、いそいそとお好み焼きを焼いてビール半ダースぶら下げ、一家でお出かけ。しかし娘はまだ、花火風景にも音にも反応せず、周りばかりきょろきょろ見ていた。とりあえず、ビールがお腹一杯飲めて私はシアワセ。ペーパーバックは280頁あたりで遭難する。
購入本0冊。


2003年8月1日(金)

◆梅雨があけないのに8月に突入してしまった。
ふと「○○があけないのに×月に突入してしまった」というネタはどうだろうと考えてみた。

「夏休みがあけないのに9月に突入してしまった」

「年があけないのに1月に突入してしまった」

「土曜があけないのに、日月に突入してしまった」

「生理があけないのに臨月に突入してしまった」

ああ、なんか厭かも。

でも一番イヤのなのはこれだな。

「梅雨があけないに10月に突入してしまった」

「梅雨世界」JGバラード

パパイヤ鈴木と石塚英彦が一つの傘に身を寄せ合って歌うんだ。

「ばいう〜」

ああ、書いてて凄く暑苦しくなってきたぞ。
じぇえ・じい・ばらーどの濁点がカビにみえるぞ。
10月1日では遅すぎるんだよう。

東京創元社のおじさんピンバッジの申し込みを忘れないようにしなくっちゃ(私的メモ)

◆いるか書房さんに多岐川本の代金を払い込み。
◆定点観測。安物買い。
「D機関情報」西村京太郎(講談社文庫:黒背)50円
「四つの終止符」西村京太郎(講談社文庫:黒背)50円
d「地獄の読書録」小林信彦(ちくま文庫)370円
「その死者の名は」Eフェラーズ(創元推理文庫:帯)280円
「囁く谺」Mウォルターズ(創元推理文庫:帯)550円
「半身」サラ・ウォルターズ(創元推理文庫:帯)530円
「風の向くまま」Jチャーチル(創元推理文庫:帯)370円
「双生児」ハッチングス編(扶桑社文庫:帯)362円
「壁」ミステリ・シーン編(扶桑社文庫:帯)343円
「女生徒男生徒」小泉譲(春陽文庫)70円
京太郎の初期作は、確か買ってなかったよなと思って均一棚から拾う。講談社文庫の黒背っていいよね。「地獄の読書録」は集英社版で持っているので、これまでスルーしてきた本。立ち読みしたところ、今後この版が「定本」になるらしいと知って購入。実は、立ち読みしている間に初読時の興奮が甦って来た。やはりこの本は名著だと思う。後は創元と扶桑社文庫の帯付きを半額ゲット。このあたりの値段で、私が推理小説を買い始めた頃の「新書」の値段である。昭和は遠くなりにけり。最後の一冊は、どうということのない春陽文庫の青春小説(らしい)。絶対読まないよなあ。まあ、半額でも70円だし。


◆「暴走」Dフランシス(ポケミス)読了
競馬ミステリ第12作。組織が巨大化すると、お抱えの調査員が必要になってくるのは世の常なのか、なんと今回の主人公は、イギリス・ジョッキー・クラブの調査部主任である。仮に現実にこの職業があるとすれば、ある意味で「競馬シリーズ」の探偵としては最も相応しい職業なのかもしれない。尤も、実のところは、朝から晩まで新聞の切り抜きと、クレーム処理に追われている部門なのかもしれないけれど。それを言ったらマット・コブだって怪しいものである。
私は10月のノルウエーにいた。一ヶ月前のこと、イギリス人騎手ロバート・シャーマンが、ノルウエーのエーヴェルボル競馬場の売り上げ1万6千クローネとともに姿を消したのだ。しかし、花形騎手がその地位と愛妻を捨ててまで引き合う犯罪とは私には思えなかった。事件が見かけと通りではないことは、依頼を受けて48時間後の体験で立証される。フィヨルドの海で、情報交換していたノルウエー・ジョッキークラブの公式調査員アルネと私は、突如現われた快速艇にボートを引き裂かれ、凍える海中へと投げ出されてしまったのだ。九死に一生を得た私は、更に、ロバートの可憐な妻エマが暴力のプロから襲われた事実と出会う。果してノルウエーとの間を頻繁に行き来していたロバートは犯罪者だったのか、それとも被害者だったのか?ジョッキー帽の下に隠された策謀のプロット。鎮魂の罠は北の大地に待つ。
次から次へと、よくもまあ競馬絡みの様々なネタを考えつくものだと感心する。今回は、国境を越えて騎乗で稼ぐジョッキーを、一種の「諜報戦」に巻き込んだお話。競馬シリーズ版007とでも云うべきか、話の冒頭から実に派手な演出が施されている。腕っ節の足りない分、頭と行動力で、悪の正体を炙り出していく主人公は毎度の競馬シリーズの主人公だが、冒頭のべたように、謎に挑む必然性がある反面、「理不尽な権力・暴力への怒り」や「男の誇り」のみで闘う男たちに比べて、ややビジネスライクな印象がある。一長一短というべきか。真相は、土地柄を反映したもので、半ば感心、半ば「どこが競馬シリーズやねん」というツッコミを入れたくなるものであった。「意外な犯人」はお約束の域を出ないが、そこがまた競馬シリーズのいいところなのであろう。