戻る


2003年5月10日(土)

◆実家でゴロゴロと怠惰な時間を過ごしていたところ、ふとトイレのウォシュレットの取り付け方向が歪んでいるのが気にかかり、真っ直ぐに直す。2時間後に、再びトイレに入ろうとしたところ、中は水位1p程度の水浸し状態!!どっひゃああ、と眠気が吹っ飛ぶ。どうやら、ウォシュレットへの分岐水栓から漏水した模様。水道工事業者を呼ぶ傍ら、ひいこらいいながら、雑巾で水をバケツに移す。発見から約2時間かかって修理が終わる。便所の床はここ十年間で一番綺麗になった筈である。実家まで行って何やってんだ、俺?
◆新幹線の友に1冊。
「被害者は誰?」貫井徳郎(講談社ノベルズ:帯)820円
こういう機会でもないと、新刊のノベルズなんぞ買わなんもんな。


◆「被害者は誰?」貫井徳郎(講談社ノベルズ)読了
最近では、ツタヤやKIOSK本屋でも貫井徳郎コーナーが出来ていて驚く。北村薫推薦帯の創元推理文庫「慟哭」がどーんと積んであって、何故かその隣に新潮文庫の「迷宮遡行」が「慟哭の次はこれを読め!」と積んであって、その横に再び創元推理文庫の「プリズム」が積んである。その横に角川文庫の「天使の屍」があって最後に重厚長大な講談社文庫「修羅の終わり」で打ち止め。双葉文庫は余りみかけないまま、とりあえず「貫井徳郎症候群」は完成するのであった。
閑話休題、今回の新作、バリンジャー、バークリーときて、今回はマガーかい、と思った貴方は、既に作者の術中に落ちている。「被害者を探せ」や「目撃者を探せ」や「探偵を探せ」は、投げる方向は違っても直球である事には変わりないのだが、貫井徳郎は、牽制球にまでカーブやら大リーグボール2号を使うのだ。いやはや。
邸宅の庭から発掘された女性の白骨死体。<手記>を元に白骨の主に迫る「被害者は誰?」
目撃された社宅での不倫。脅迫の勧めと宿泊の勧めが交錯する倒錯の倒叙「目撃者は誰?」
美男子たちは計画を胸に秘め別荘に集い、殺しは二抜けで訪れる「探偵は誰?」
ベッド・ディテクティブの恋の顛末を綴るボーナストラック「名探偵は誰?」
いずれも一筋縄ではいかない話ばかりが並ぶ。イマドキの名探偵である容姿端麗眉目秀麗痩身長躯頭脳明晰傲岸不遜商売繁盛推理作家の吉祥院慶彦(筆名)が、大学の後輩である刑事・桂島の持ち込む謎を鮮やかに解決していく!と、少なくとも第1話はそんな話である。あえていえば、バリンジャー、バークリーときて、題名はマガーだが、底意地の悪さはブランドなのである。そして、作者が最も世に訴えたかった全編に共通するメッセージはただ一つ

桂島は短小だ!

なのである(大嘘)。
「読者が被害者」でないことだけは、保証しておきます。


2003年5月9日(金)

◆朝一番のひかりで下阪して会議のはしご。宿泊を決め込んでいたので、久しぶりに神戸の定点観測にゴウ。サンパルに出来たとかいう万葉書店も覗いてみたかったので新快速で三宮へ。目的地に着いてのけぞる。おおおお、これは、広い!!サンパルの3階といえば昔はジュンク堂があったんだよな。そのフロアすべてが古本で埋め尽くされている。最初は興奮していたが、一通り見て回るうちに気分が悪くなってくる。「もう、おなかいっぱいですよう」感がこみ上げてくる。古本屋でこういう状態になったのは町田のスーパーブックオフ以来。おええ。本の状態はブックオフ流の不思議の魔法を掛けておらず、明るい照明にもかかわらずどこかくすんだ印象を受ける。「こりゃあ、何も買い物はないかな」と恐れたが、翻訳文芸棚で古本の神様が1冊だけ微笑んでくれた。
「死亡した宇宙飛行士」JGバラード(NW−SF社)500円
「地球壊滅千九八六年『ゼロ時』」Gシュタインホイザー(朝日新聞社:帯)500円
「アインシュタインの夢」Aライトマン(早川書房)500円
「天井桟敷の人々」Jプレヴェール(新書館:帯)650円
ほほほほほ。叢書のすべてがキキメなNW−SF叢書の1冊が、定価の3分の1以下でゲットできてしまった。これはラッキー、というか「血風」といってもいいでしょう。専門店なら4桁の上の方だもんね。シュタインホイザーとかいう人の終末小説はいかにも「日本沈没」がブームの頃に便乗出版された本という作り。帯の背に「『世界沈没』を描く未来小説」とあったので、SFらしいと判り拾ってみた。これは妖しい。ゲテものマニアは必見かも。
のっけから良い感触だったので、足取りも軽くアーケードに向い、後藤書店の均一コーナーをチェック。お、白背の「悪魔の手毬唄」があるじゃん。もしかしてと思って奥付けを確認すると、初版であった。よっしゃあ!これならダブりでも押えなくちゃ。
d「悪魔の手毬唄」横溝正史(角川文庫:初版)167円!!
さて3冊500円だから、もう2冊かと思って均一棚を厳しくチェックすると、もう1冊白背の正史があるではないか。も、もしや、こ、これは、、
d「八つ墓村」横溝正史(角川文庫:初版)167円!!
いてまえ〜っ!!角川文庫・横溝正史の記念すべき1冊目。初版のみ表紙のイラストレーターがお馴染みの杉本一文でないという曰くつきの本である。うふふふふふ。先日のニナ・リッチ版「八十日間世界一周」に続いて、リサイクル系で狙える美味しい文庫の雄をゲットだぜ。この勢いで「獄門島」の初版もないかと思ったが、そこまで望むのは欲深というものである。仕方なく角田喜久雄を1冊。
「妖棋伝」角田喜久雄(角川文庫)167円
で、収獲らしい収獲があったのは、ここまで。その後も「つのぶえ書店」から元町高架下(通称:モトコー商店街)を探索したが、戸川昌子の東京文芸社版「負け犬」や、PAホイットニーの「レインソング」などに遭遇するも、値段と状態が合わずスルー。一冊だけゲテモノを拾ったのみ。
「お色気探偵譚」志摩芳次郎(光風社書店:蔵印)200円
昭和46年の本。エロエロでスチャラカな私立探偵もののようである。見るからに駄目駄目な雰囲気がなんとも、いやはや。まあ、今日はバラードと「八つ墓村」文庫初版で元はとったもんな。
◆実家泊まりで、鯨飲馬食して爆睡。


◆「コフィン・ダンサー」Jディーヴァー(文藝春秋)読了
半身不随の天才捜査官リンカーン・ライムとそのチームの活躍を描く第2作。結論からいえば、身震いするほど面白い。出世作「ボーン・コレクター」が文庫落ちしたばかりなので、またファンが増える事であろう。もし貴方がオモシロ読み物大好きな人であるならば、躊躇なく御勧めできる作品。実は第1作は未読のうちに映画(傑作!)を見てしまい、今更読む気になれなかったのだが、この第2作を読んで、大いに反省している次第。なるほど、あの見せ場の連続とすれっからしを唸らせる大逆転は、原作の功績であったか。
行方不明になったFBI捜査官探しという地味な仕事に打ち込んでいたリンカーン・ライムの元に、大仕事が持ち込まれる。それは伝説の暗殺者:コフィン・ダンサーの手から二人の重要証人を守るという依頼であった。仕掛けて仕損じなしの暗殺者は、既に3人の証人のうちの一人を小型ジェット機もろとも空に葬り去っていた。かつて、最愛の部下をコフィン・ダンサーのブービートラップで失ったリンカーンは、徹底的な現場検証と、天才的な閃きで最凶の敵の動きを追う。緻密な準備と大胆な行動力、臨機応変な殺人手段、静かに忍び寄る凶手に向って、動けぬ探偵は手足となる仲間たちとともに狩りを始める。仕掛け対仕掛け、罠対罠、知性対知性。小さな航空会社を切り盛りする女社長の意地が天翔るとき、死の舞踏は既に始まっていた。新兵!準備はいいか?
やられた。やられました。まあ、いってみればゴルゴ13とジャッカルの日を足して二で割ったような話だと思っていたら、なんのなんの、この伏線の周到さ、このドンデン返しの凄まじさ、そして呆れるばかりの二枚腰・三枚腰、とてもただのマンハント・サスペンスとはタマが違う。まずなにより人間が描けている。主役や敵の造型は勿論、ヒロインを含む常連チームや、標的となる人々からホームレスに至るまで実に丁寧に書き込まれており、僅かなセリフでその姿が目に浮かぶ。そして最初から映画化を意識したかのような派手な演出がこれまたニクい。動と静の対比、正と邪の対照、緩急自在の作者の手練手管に、巻を措くあたわざる快感が杭打ち状態で読者を襲う。まさか、こんな話で、一旦戻って読み返すというようなショックに見舞われるとは夢にも思っていなかった。余りの仕掛けゆえに冷静に考えると、破綻してしまっているかもしれないのだが、この過剰な超B級感覚こそが作者の持ち味なのであろう。面白くって何が悪い!!という気合の入りまくった傑作。御勧めである。って、今頃薦めているのはワシぐらいのもんである。すまん。


2003年5月8日(木)

◆残業のあと新刊書店へ。ジグソーハウスさんから臨時収入があったので新刊買い。
「怪奇探偵小説傑作選・佐藤春夫集」日下三蔵編(ちくま文庫:帯)1300円
「風水火那子の冒険」山田正紀(カッパノベルズ:帯)800円
はあ、やっとちくま文庫が追いついた。え?何??第二期でたの??うううううううう、悩ましいのう。しかもついこの間まで現役バリバリの小栗虫太郎だもんなあ、この「日下三蔵」税は辛いなあ。
◆帰宅すると、パイプベッドが組み上がっていた。これから本宅では本の上に寝る事になる。上といっても「ON THE BOOKS」ではなくて「ABOVE THE BOOKS」の方である。省スペースと地震対策を目指した選択だが、やたらと天井が近くなった。ううむ、毎日が「寝台特急」気分である。でもだいたいミステリで寝台特急が出てくると、死体が転がる事になるんだよなあ。


◆「ストーンエイジCOP」藤崎慎吾(カッパノベルズ)読了
カッパノベルズからエロ伝奇以外のSFが出るというのは珍しい。しかし、日本で一番よく売れたSFはこの叢書から出た。いわずと知れた小松左京の「日本沈没」である。しかも小松左京の最初の長編SFも、実はカッパノベルズから出たのである。その作品「日本アパッチ族」と「ロボ・コップ」を21世紀のテクノロジーで交配するとこういう作品になるのかもしれない。「クリスタル・サイレンス」で日本SFの底力を思い知らせた俊英の第三作はこんな話。
2030年代、地球温暖化と野放図なペットの流入は、首都圏の植生と食物連鎖を亜熱帯のそれへと変貌させていた。そして巨大コングロマリットによって、なし崩しに認可された遺伝子技術とクローニング技術は、DNA操作や臓器移植をファッションへと変える。警察さえもコンビニ化した時代、人心は渇き、荒み、生の営みはゲームに貶められる。記憶を失った大手コンビニチェーン4UのコンビニCOP滝田治が遭遇したのもそんなゲームの一局だったのかもしれない。何者かに顔を盗まれたと訴えるホームレス少年の告白は、滝田の警察官魂を揺さぶる。だが、盗まれたのは顔だけではなかった。静かに入れ替えられていく街。襲い掛かる不死身の釘男。公園は密林となり、都市伝説は神話となる。地下の林に成る奇妙な果実の名は「禁断」。開放せよ、野蛮。取り戻せ、尊厳。石器時代のオマワリは24時間営業だ。
残念ながら「クリスタル・サイレンス」の高みには達していない通俗作品。悪夢へと暴走する科学は、牧野修のそれに遠く及ばず、少年漫画の原作としても飽き足りないレベル。どれだけプロ作家としての地力があるかをみるにはいいトライだったかもしれないが、些か真面目過ぎるという印象。主人公・滝田の過去など、まだ語られざる物語はありそうなので、もう一度、この設定で壊れた話を書いてみて欲しい。


2003年5月7日(水)

◆おおお、おーかわ師匠が血風を吹かしておられる。そんな本、全集揃いですらみた事ねえや。値段はナンボやったんか気になるなあ、おい。
◆よしだまさしさんのお子様は、おぼっちゃまはハリー・ポッターと伺っていたが、お嬢さまも超美少女らしい。あの御自身超プリティーな国樹由香先生が断言するからそうなのであろう。一度御家族とお目にかかってみたいものである。
◆本日のうちの娘はどうやらお義父さんをみては泣いていたらしい。ううむ、おじいちゃんピンチ!!
◆本当に久しぶりに南砂町を覗く。
d「無印の本命」海渡英佑(立風書房:帯)100円
d「パドックの残映」海渡英佑(立風書房:帯)100円
「八十日間世界一周」Jヴェルヌ(創元推理文庫ニナ・リッチバージョン)200円
海渡英佑の2冊は帯狙いのダブリ。やたらと競馬関係の本が並んでおり、その趣味の人の棚から纏まって出た雰囲気。グラシン紙をかけて保存状態も抜群。早速、手持ちの本と差し替えよう。
ヴェルヌは2年前にこのサイトでも話題になったニナ・リッチの香水「フィリアス」のプレミヤで特製カバーを掛けて配られた2000部の限定本。前回拾った本は鎌倉の御前の元へ嫁がせたが、今回は自分の本にし〜ようっと。
店のお兄さんが、定価が見つからずオロオロしていた。「非売品なので値段はありませんよ」と知恵をつけて進ぜようかとも思ったが、やぶ蛇になってもいけないので沈黙を通す。「200円でいいでしょうか?」という声が掛かるまで少しドキドキしてしまう。
この本、非売品の割りには、中に「創元推理文庫1976年・春」の新刊案内が挟まっているのが不思議。前回遭遇したのは再版だったような気がするのだが、それだけじゃなくて、在庫分にもカバー掛け替えで出したって事なのかな?
こういうニッチな話題は突っつき甲斐がございますのう。いやニナリッチでございます。
もう一駅途中下車で安物買い。
「浅草ロック殺人事件」加納一郎(エイコーノベルズ)100円
「ストーンエイジCOP」藤崎慎吾(カッパノベルズ)100円
「多重人格探偵サイコ 小林洋介最後の事件」大塚英志(講談社ノベルズ)100円
「武装酒場」樋口明雄(ハルキノベルズ)100円
d「ミサゴの森」Rホールドストック(角川書店:帯)100円
くそう、加納一郎まではおーかわ師匠と同じなんだけど、後の買い物の質が違いすぎるぜ。とりあえず、「ミサゴの森」の帯付き100円は非常にご機嫌な買い物ではあるのだけれど。


◆「五無斎探偵帖」横田順彌(インターメディア出版)読了
帯に曰く「明治37年の『読売新聞』が募集した「奇人百首」の一等賞に輝き、奇人として扱われた保科百助を描いた快作」で、小説宝石の94年11月号から翌年の11月号まで断続的に掲載された連作集。早稲田大学応援団長・吉岡信敬、彫刻家・中原悌次郎などが登場してお話に時代の彩りを添える作者お得意の明治小説集。さはさりながら、日本SF界の父祖・押川春浪や、大冒険家・中村春吉といった二枚看板に比べると些か小粒の感を免れず、「ジャパンタイムズ社」の主筆の娘・高橋京子と押しかけ外人記者フレッド・A・ブラウンとの掛け合いも、脱力系の狂歌に相殺されてしまっている。また、パターンを作り損なったのも、主人公故の限界か?
西洋医学に通じた医師の庭に突如投じられた大石の謎に挑む第1話「不思議な石」や製作中の裸婦の塑像の心臓を破損した災厄を絵解きする第二話「壊された裸婦像」は五無斎のトンデモ推理の空回りぶりと真相との落差を楽しむ趣向だったものが、漢方医宅を見舞った火事の真相を明かし貧乏な少年の冤罪を晴らす第3話「放火したのは誰だ!?」に至り、単なる手垢のついたトリックを軸にした五無斎手柄話となる。更に、第4話「踊る蟹の秘密」は、科学知識をトッピングした人情話、第5話「快人対快人」では、遂に事件すら起きず、とある傑物との謎掛け勝負が肝となる。
なるほど、五無斎なる人物は、なんとも明治の気概に満ち溢れた「快人」であり、それなりに楽しくは読める。が、連作長編と呼ぶには、縦方向の仕掛けに乏しく、一つ一つの謎にも新味はない。なんでもいいからヨコジュンの明治小説をもっと読みたいという人が、読んでおけばよい作品集であろう。


2003年5月6日(火)

◆一駅途中下車して奥さんへのお土産を買うついでに定点観測して安物買い。
「五無斎探偵帖」横田順彌(インターメディア出版:帯)500円
聞いた事もない出版社から出ていた、明治もの連作短篇集。油断ならないなあ。収録された5つの短篇はいずれも小説宝石に94年から95年に掛けて掲載されたものらしい。なぜ素直に光文社からでないかな?それだけ本が出しづらい環境だという事なのだろうか?
◆娘は今日もご機嫌だったらしい。一日中泣かなかったらしい。うーむ、何か調子悪いんじゃねえか?泣いたといっては心配し、泣かなかったといっては心配する。親とは心配業である。


◆「林檎の木の道」樋口有介(中央公論社)読了
99年作品の「ともだち」がよかったので、溯って同じく中央公論社から96年に出ていた青春推理を読んでみた。こちらの作品では、主役は男子高校生。勝利の方程式通りに、コンビを組む一風変わった女子高生も登場する、もう一つの「ぼくとぼくらの夏」である。
ぼくは広田悦至。世界を股にかける実践派バナナ学者の母とおいらくの恋を満喫する祖父の血を引く割りには、まともな高校生である。その夏の夕べ、家の屋上にあった瓢箪池を掘り出す作業に没頭していたぼくは、もと彼女の宮沢由実香からの誘いをクールに断わった。だが、その夜、彼女が房総の海で身投げをするなんていうのは反則だ。少なくとも友人のマツブチくんはそう思ってくれるだろう。だから、弔問に行って、見知らぬ女の子から、人殺し呼ばわりされたのは心外の極みだ。その女の子・友咲涼子が由実香とぼくと同じく「林檎の木幼稚園」の同窓だと云われて、スカートめくりの旧悪を糾弾される事など更に想像もしなかった。だが、とりあえず、自己中心的で派手で移り気で気ままな由実香が自殺なんかするタマじゃないって事だけは意見が一致したわけで、ぼくと涼子は、彼女の死の真相を探る事になってしまう。それは、走り抜けるベンツ、胃の中の墨、蠢くゾウムシ、追いつめられた出目金、ホカホカのバナナ、そして、風に舞う林檎の白い花。散らされてしまった夢。
実に手堅い青春推理。夢を食い物にする世界を生き急いだ被害者像が鮮烈。主人公に見えていた世界と見ようともしなかった世界とのギャップが際立っており、脇を固める大人たちにも華がある。ミステリとして見た場合、レッド・ヘリングがあからさまな分、損はするものの、NHK少年ドラマ並みのサプライズは保証されている。安心して読めます。友咲涼子萌えです。


2003年5月5日(月)

◆ああ、連休が終わってしまう、連休が終わってしまう。連休が終わってしまう。
連休の宿題にお持帰りしていた似顔絵のバイトにしこしこ取組む。余りに久しぶりで、これがまた似ないんだ。似てない似顔絵ほど哀しいものはない。どのくらい哀しいかというと絶版本の落丁ぐらい哀しいのである。しくしくしく。ああ、連休が終わってしまう。
◆気分転換に散歩に出ると、千葉大学正門の真ん前にリサイクル系が一軒オープンしていたので
ちょっと買い物。
「レッド・スクエア(上・下)」マーティン・クルーズ・スミス(ベネッセ)計200円
「死の飛行」Eゴーマン編(扶桑社文庫)100円
おお、こんなアルカージ・レンコものが出版されていたのかあ。知らなんだなあ。それにしても、このシリーズって、早川→新潮→ベネッセ→講談社という流浪のシリーズですのう。ここまで効率よく(?)新作のたびに出版社を移るってのは、記録かもしれない。
◆娘は、だいぶん首が座ってきた。妖精さんとのお話も絶好調である。奥さんがタマには買い物に出たいというので2時間強のお留守番も、全然支障なく過ごす。
◆あ、またbk1から本が届いている。こうバラバラと宅急便で送っていてペイするんだろうか、と他人事ながら心配になる。
「伝奇の匣4 村山槐多耽美怪奇全集」東雅夫編(学研M文庫)1312円
この本も本屋で見かけないんだよねえ。5年後には幻の出版物と呼ばれるんだろうなあ。


◆「イカ星人」北野勇作(徳間デュアル文庫)読了
立て続けに北野勇作を読んでみる。というか、休日は全然本が読めないので、それでもなんとか1日1冊をこなそうとするとつるつると読めてしまう本から読もうとしてしまうのだ。つるつるといえばそうめんであるが、この話に出てくるのはものすごく腰の強いいかそうめんだったりする。どのくらい腰が強いかといえば、うかつに容器から出すと爆縮して人にからまり脳味噌まで食い込んでしまうぐらい腰が強いのである。で、かめくんはかめくんなのだが、イカはイカくんではなくてイカ星人なのである。イカくんではイカの薫製になってしまうからである。イカは烏賊だったり異化だったりするが医科ではなさそうである。異化というのは、またしても火星のテラフォーミングの事で、じゃあ、アメフラシで雨を降らしましょうという計画はどーなつてしまっかというとそれはまた別の話のようである。
主人公は、Kという売れないSF作家で、頼りにしていた奥さんに専業主婦宣言をされてしまったために路頭に迷った挙句に、イカ星人関係の侵略仕事に就く事になるのである。この一連の動物未来視シリーズも遂に自分を写した人間まで登場させてしまったわけで、まるで蛸が自分の足を食べるかのような状態に突入しているが、そこはそれ蛸ではなくてイカなのである。イカが自分の足を食べるかどうかは判らないが、ラストの地口なんかは、まるで田中啓文の作品を読むかのような索漠とした感じがあって、一つ穴の狢というか、所詮お前も関西人かい、と突っ込みたくなる。作者は背水の陣を敷いた。それ以上下がるとイカの水槽に落ちてしまうので気をつけてください。


2003年5月4日(日)

◆二日酔で、昼まで寝る。朝昼兼用御飯を食べてから、掲示板にレスをつけ、本の雑誌の原稿をしこしことやっつける。
掲示板へのレスは、日記ほったらかしで力を入れたのに、反応0。悔しいので日記の方にも貼っておくんだもんね。

管理人です。突然、黒後家蜘蛛の会。

「『君は柳できない』って柳に動詞はないよ」
「<柳が茂る>って意味ならどうだ?駄目か」
「語源は、枝のしなう木だね。」とルービン。
「クリケットのバットに使われる」トランブルが指摘した。
「君はバットにはなれない?違うな。」
「柳にはアセチル酸が含まれている。つまりアスピリンの原料なわけだ。」
「それで?ドレイク」
「柳について知っている事を言えといったのは君だぞ」
「すまない」
「ヘンリー、君の出番だ。何か思いついた事があるようだけど。」
「はい、アヴァロン様、その前にお客様に一つ質問がございますのですが、よろしゅうございましょうか?」
客は不審げに、給仕に目をやった。
「ヘンリーは、よく真実に最も近いところに立っているんですよ」
とアヴァロンが請け合った。
「続けてくれ、ヘンリー」
「そのパティシエは日本通だったのですね。」
「そうだが?」
「ならば、日本の菓子についても造詣が深かったものとおもわれます。
もしかして最後の言葉は You Can't Willow ではなくて
『羊羹とういろう』ではなかったでしょうか?」
「なんだって?」
客は唖然としたままヘンリーの方を見た。
「…いや、そう、確かにそうだった」
「日本の菓子で似て非なるものとして引き合いに出されます」
「そうか!そう考えれば、話の辻褄があうんだ!似て非なるものか!こうしちゃいられない、電話を掛けてもいいかな?」
「携帯のご使用はサロンの外でお願いいたしております」
客はおお慌てで部屋から飛び出していった。
「やれやれ、またしてもヘンリーの慧眼か」
「偶々でございます。それに皆様が柳について全てを洗い出されておられましたので、」
「まだ柳が関係するのか?」
「はい、日本で最も有名なういろうの老舗は<青柳>と申します」

第0条 管理人は自らが放置プレーされる事に耐えなくてはいけない。

◆夕方から、義父母さんが子供の日の祝いにやってこられて宴会。ところが日頃は愛想のよい娘が、人見知り状態で大泣き。ううむ、折角来てもらったのにね。なぞである。
◆購入本0冊かと思ったら、bk1から1冊とどいてしまった。
「猿神の呪い」川野京輔(新風舎:帯)1200円
一部で話題の自費出版本。昭和35年の地方新聞連載小説がこうして日の目をみるんだもんなあ。ホントに本が簡単に作れるようになったってことでしょうね。著者後書きが、なんとも自慢げなのが、微笑ましいというというべきか、いかにも自費出版おやじの一代記していて、なんだかなあ。川野京輔といえば、知る人ぞ知るプロ作家と思っていただけに、些か辛いものがありまする。


◆「かめくん」北野勇作(徳間デュアル文庫)読了
第22回日本SF大賞受賞作。日本SF大賞って22回もやっていたのか?なんてったってSFのプロが認定する2001年の大賞が「かめくん」なのである。2001年といえば、SFの世界ではとても意味のある年なのである。宇宙の旅なのである。で、かめくんが宇宙の旅に出かけるまでが描かれているのがこの作品なのである。
かめくんはどうやら普通の亀ではなくてレプリカメであって、甲羅が背部記憶装置になっているらしい。りんごが好きだ。フォークリフトを運転できる。猫も飼っている(本当は飼っちゃいけないんだけど、かめなのでかめへん、かめへんなのだ)。どうやら木星では戦争が起きていて、相手はザリガニらしい。そのあたりが微妙にアンドロイドは電気羊の夢をみるかだったりエンダーのゲームだったりするのだが、正直なところ、作者は余り説明をしてくれない。りんごが好きだ。そこは気で気を養って深読みして、ほーっと溜め息をついて、さも判ったような顔をして、「うーん、これは紅玉ですね」「おお、判りますか」「やはり林檎は紅玉でしょう」「アップルパイは甘い品種では逆に駄目なのです」と蘊蓄をたれないといけないのだ。
おそらく何万人もの人が同じ感想を抱いたであろうが、北野勇作は北野勇作であって北野勇作でしかないのだった。これは、やさしい人々に囲まれた兵器の出征前記であり、やがて忘れてしまう物語であって、だからこそ忘れられざる物語になったのだ。とりあえず、りんごが好きだ。


2003年5月3日(土)

◆まだ娘の首が座っていないので、妻子二人を残して私だけクラブのOB宴会で先輩宅へ。途中、乗換駅で定点観測。
「コフィン・ダンサー」Jディーヴァー(文藝春秋)100円
「悪魔を飼った男」クリストファー・ムーア(東京創元社:帯)100円
d「きまぐれ砂絵」都筑道夫(角川文庫)300円
角川文庫都筑クエスト一歩前進。これで残すところ2冊!の筈である。なまじ元版をもっているばかりに買いそびれていた本だが、角川文庫の解説は夫々に特徴があって吉。この作品の解説も、なめくじ長屋捕物落語に相応しいキャスティングで作者の亡兄の逸話などが綴られている。なるほど。ハードカバー2冊は安物買い。「ボーン・コレクター」は読まないうちに映画を見てしまった(傑作!)ので、せめて「コフィン・ダンサー」はちゃんと読んでみようと思う。掴みから映像化を意識した凄まじい展開である。うーん、やるなあ。
◆2時から延々10時までカラオケも交えつつ只管飲み続ける。途中うちの娘の名前当てクイズに2時間を費やす。6つのヒントを出したが、一向に当たる気配がなく、日頃から推理や検索自慢の面々の顔が徐々に引き攣ってくる。
「とにかく、片っ端から思いついた名前を並べる人」
「黙りこくったままヒントをもとにパソコンで検索を始める人」
「順列組合せで、端から候補を潰していく人」
「『もう下りた、下りた』といいながら、熱心に考え込む人」
「回答権を失ってもなお『これはどう?』『あれはどうよ?』と口走る人」
「電子メールで自宅の姉に聞く人」
「寝ている人」などなど
たかがクイズでも、それぞれの性格が出てしまうのが可笑しい。これって推理小説のシチュエーションにそのまま使えますのう。
◆へべれけになって午前様。奥さんに、娘用に貰った人形を手渡し、爆睡。


◆「共犯マジック」北森鴻(徳間書店)読了
問題小説に足掛け3年にわたり断続的に連載された連作長編。非常にコメントし辛い作品である。表向きは、60年代末に長野のとある書店で、偶然にも発禁書であるカルト的占い本「フォーチュンブック」を買い求めた人々がその後の人生で遭遇したアンフォーチュンで、イリーガルな物語集なのだが、もうひとつ、読んでいるうちに気がつく趣向があって、それに触れてしまうと読者の興味を削ぎかねないのだ。巷にある書評などでは無神経に紹介されてしまっていたりもするのだが、個人的には悩ましいところ。
学生運動華やかりし頃、ノンポリ学生のリーダー格の自殺に隠された謎に迫る「原点」
新聞社に送り付けられた偽500円玉が懐かしい人の非業の死に結びつく「それからの貌」
失われた筈の天才画家の水彩画を巡る青春の悔恨を描く「羽化の季節」
尾羽打ち枯らした元記者が過去のない男と企む便乗犯罪の顛末「封印迷宮」
苦界から一人の女を救った「神様」に捧げる鎮魂曲「さよなら神様」
天才彫刻家の墓から流出した6体の未完成品が語る暗い情熱「六人の謡える乙女」
すべての物語が一つの陰謀に収束していく不幸の結末「共犯マジック」
不運のみを予言された人々が運命の輪の導きのままに昭和の霧の中をさ迷う意欲的な連作。一筋縄ではいかない作者らしい企みに満ちた意欲作。よくぞこんな大胆な趣向を現実に小説化しようと思ったものである。勿論、それぞれの短篇を支えるアイデアも及第点を与えられるものであるが、やはりこの連作ならではの無謀な趣向に敬意を表したい。


2003年5月2日(金)

◆4時起きして、昨日の課題図書を読んで二度寝。阪神ファンの聖書デイリースポーツを買いにいきがてら豆腐を買って帰り味噌汁の具にする。食べ終わって後片付けをしているともう正午である。とほほ。本日の課題図書を1冊読み終える頃には、奥さんがお片づけモード復活。しぶしぶながらこちらも整理整頓に務める羽目になる。
おまけにダンボールの下から発掘された体重計に無理矢理乗せられ、ここ半年間の不節制のつけをこの目でしかと確かめさせられる。

うわあ、これはヤバイ、ヤバイよ。また要管理者扱いになってしまうよ。

泣きながら、1時間のウォーキングと20分の筋トレを復活。
ああ、こんな事してる場合じゃないんだけなあ、俺は。


◆「泉」倉阪鬼一郎(白泉社)読了
作者の今のところ最新長編(の筈)。とにかく精力的に作品を仕上げているので最新作と書く頃には次が出ている恐れがある。版元は余りホラーの得意な出版社ではないが、内容はれっきとした<邪神復活>テーマのキャンパス怪奇小説である。版元に敬意を表してか、ボーイズラブをおちょくり倒した作中作は爆笑ものだが、加えて、ミステリ電網の人間として嬉しいのは、事件の舞台となるのが、MYSCON会場を彷彿とさせる本郷の団体旅館とその界隈という事実。自分も知っている場所であるからこそ、作家の目とイマジネーション、そして描写する力の凄さが身に沁みて判る。得意の古本趣味は控え目だが、蕎麦ツアー御一行様にとっては、更に美味しさ倍な舞台設定でもある。
桜桃大学「リテラリー倶楽部」と「怪奇クラブ」合同主催の百物語に向けて物語は動き出す。リテラリー倶楽部の部員で旧家の出である弓田泉は、ぬいぐるみ供養の帰りから「あれ」の存在を意識するようになった。稚拙な木彫りに封印された怨念は、若き彫刻家を自刃させ、諸々の想いを詰め込んだ夜に結界は決壊する。くらい、なにもみせない、それは語り終えられる事のない百物語。蝋燭が点す魔の風景。左肩を叩かれたものは決して左から振り返ってはいけない。
「死の影」同様、倉阪ホラー初心者向けに書かれたコード満載のエンタテイメント。邪教の神、井戸の底の霊能少女、百物語、黒の小説家、鏡の向う、陰陽師などなど、お約束のガジェットが万人を幽冥の世界に誘う。多少リングの影響を引き摺り過ぎた印象もあるが、そこは御愛敬。キャンパス群像の書き分けも類型的ながら達者で、特に、健啖家のボーイズラブ同人誌作家・美香のキャラクターは鮮烈。モデルは高瀬美恵さんですくああ?


2003年5月1日(木)

◆朝起きて、ポテトサラダを作る。奥さんに好評。
今日の奥さんは気合が入っていて、娘の鼻の孔から「うそっ」というほど大きなハナクチョを発掘したのちに、2週間以上先の来客に備え、腕まくりでお片づけモード。
仕方がないので、こちらも枕元に雑然と積みあがった本を半日がかりで整理。ダンボール一箱分をジグゾーハウスさんに送本し、同じく三箱分を別宅に搬入する。
◆整理の御利益で、「創元推理21」を一巻買いそびれていた事に気がつく。慌ててbk1に注文を入れる。メフィストはつらつら顧みるに、既に昨年末から買っていなかった事が判明。益々もって「ま、いっか」感が募る。買いそびれといえば「このミス2002年版」もなかった。こちらはまあ、専門店へ行けば瞬殺でしょうけどね。
◆激務(?)の間を縫って、新刊書店と古本屋を一軒ずつチェック。
古本は1冊。
「橘外男ワンダーランド 満州放浪篇」山下武編(中央書館)1000円
これで橘外男ワンダーランドは一応完集。ホントは帯付きが欲しかったのだが、このチキンゲーム、私の負けである。
「『密室』傑作選」ミステリー文学資料館編(光文社文庫:帯)780円
「ハイ・シエラ」WRバーネット(ポケミス:帯)1100円
「『密室』傑作選」は、山前氏編集の私家版や別冊シャレードで「圷家殺人事件」を買い求めた者には、辛い内容。自慢じゃないが「密室」の元版でも持っているぞ。しかし何度も申し上げるように、このシリーズは索引のためだけにでも、買う値打ちがあるのである、はい。
「ハイ・シエラ」にようやく巡り合う。これで1729番まで「ポケミス完集!!」と、いつものお約束。
◆夜は阪神・巨人戦の観戦とスポーツニュースのはしごで終わる。阪神が強いのは結構なことだが、他の事が何もできないんだよなあ。


◆「秘められた傷」Nブレイク(ポケミス)読了
詩人にして推理作家ニコラス・ブレイクの最後の長編推理。ポケミス1100番台の一番人気といっても差し支えあるまい。それにしても、これほど渋い英国作家の作品が8割以上翻訳紹介されたというのは、一体誰の御蔭なのであろうか?同じテイストをもったマイケル・イネスの惨澹たる翻訳状況をみるにつけ、ブレイクと日本の読者の幸運を寿がずにはいられない。さて、この作品では、レギュラー探偵のナイジェル・ストレンジウエイズは登場せず、作中作の形で20数年前の事件が綴られるという構成。ブレイク自身の自叙伝的な要素もあるという異色作である。こんな話。
1939年夏、駆け出しの作家ドミニック・エアは、新作の構想を練りながら、幼い日を過ごした故国アイルランドを旅していた。そして車の故障が切っ掛けとなってシャーロッツタウンという田舎町に逗留する事となる。エアが執筆場所に借りた家の家主は街を牛耳る政治家ケヴィン。そしてエアが夏の恋人用に「借りた」女・ハリエットの主人はケヴィンの兄でかつての内戦の英雄である牧場主フラリー。厳格な教区司祭のブレスニハン神父から、決してハリエットの誘惑に屈するなという忠告を受けていたにも関わらず、エアはアイルランドの血の赴くままに奔放な彼女の性技に溺れていった。だが、それを喜ばない何者かが、初めは静かに、やがて実力をもってエアに不倫の清算を迫ってきた。嫉妬ゆえ?忠義ゆえ?それとも陰謀ゆえ?そして、夏の終わりに訪れた一つの死。それは一夏の狂騒、それは秘められた傷。
ブレイク版「ヰタ・セクスアリス殺人事件」。格調高い文章で綴られる田舎町の点景と赤裸々な性愛と愚直なるアイルランド魂。勿論ミステリとしてのツボも心得ており、妻を寝取った男との「友情」など、緊張感溢れる展開は、それだけで一つの読み物として成立しているが、フーダニット趣味の部分でも、限られた容疑者の中で読者を眩惑する。アメリカ人から見たメキシコ、日本人から見た台湾、と同様の「イングランドから見たアイルランド」小説。都会の優越感が、土地の温度に翻弄され、かの地の血を以ってしか説明不能な事件の核心に畏怖する。「野獣死すべし」「章の終わり」などでも用いた作中作形式で自らのパトスを写したブレイクの心境や如何に?それにしても、ロスマクの「ブルーハンマー」やクイーンの「心地よく秘密めいた場所」もそうなのだが、巨匠たちの白鳥の歌は何故に斯くも性臭に溢れているのであろうか?ここまでブレイクを読んできた人は必読。但し、この作品からブレイクに入らないで下さい。