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2002年6月30日(日)

◆二週間ぶりにデイリースポーツを買いに行く。実は、開幕以来阪神が勝った翌日にはデイリーを買って保存してきたのだが、この2週間で、すっかり熱が冷めてしまった。開幕時にはこりゃあ140日買わなきゃいかんか、いやいや、日本シリーズもいれると144日かな、こりゃあ大変だなあ、とニヤニヤしていたのだが、こちらのお寒い懐事情を慮ってか、6月の虎は、濡れ猫状態。もしも優勝したら、まとめてオークションに出すというのも面白かろうと思ったのだが、
「オープン戦での勝利が入っていないとコンプリートとは言えない」とか
「引き分けも勝ちと同じ値打ちがある」とか
「負けた試合も大事に見守ってこそのファン」とか
さながら、帯がなきゃだめ、栞がなちゃだめ、全集の告知パンフがなきゃだめ、とかいうようなマニアがケチをつけてくれるんだろうなあ、などと、夢想したりして。とりあえず、本日で33部。だからなんだというわけではないのだが。
◆別宅に本の入れ替えに行く。カタログが二つ到着していたが、既に時間切れなのであろう。まあ、ダメモトで文生堂には入れてみるかなあ。来週はボーナスも出る事だし。自分の本棚とダブリコーナーを見ているだけでお腹一杯状態、帰りにブックオフに寄る気を失う。購入本0冊。
◆やっぱ、ブラジル強いわ。日本はグループ2位で抜けて、決勝トーナメント一回戦でブラジルに玉砕してれば格好ついたかもね。


◆「The Crown in Darkness」P.C.Doherty(St.Martin's Press)Finished
エドワード1世の密偵ヒュー・コーベット・シリーズの第2作。ここまで、このシリーズは、第4作・第3作・第1作の順で読んできたが、やっと次からは年代順に読める。やれやれ。第1作がロンドンを舞台にしていたのに対し、この第2作は、スコットランドのエディンバラが舞台の中心。第3作はウエールズとパリが冒険の中心なので、作者のサービス精神が窺い知れる。このシリーズ、どの辺りまで史実を元にしているか、イギリス史については中学校の西洋史の授業の範囲しか知らない人間にとっては「謎」そのものであるが、この作品はスコットランド王アレキサンダー三世の謎の死にコーベットが迫るというもの。本当に、このような後年の推理作家をインスパイアする不審な事故死を遂げた王様がいたとは、さながら日本の戦国時代を思わせて楽しい。こんな話。
1286年3月18日、スコットランド王アレキサンダー三世は嵐の中で悲劇的な死を遂げる。死の前夜、英国に囚われたギャロウェイ男爵の扱いにつき閣議を行った王は、突然、折りからの暴風雨にも関わらず、キングホーンで待つ新妻ヨーランドの元に向う。二人の従者パトリック・シートンとトマス・アーセルドウムを連れて、出立した王はクイーンズフェリーから渡し舟でフォース川の入江を渡りインヴァーカイシングに到着、そこから馬で闇の中を険しい崖道を越えてキングホーンへと向った。だが、その途中、何らかの理由で、王は崖から転落し翌朝死体で発見される。従者のうち、乗馬に自信のないトマスはインヴァーカイシングまで馬を運んできた御用商人(奇しくもアレキサンダーという王と同じ名の男)とともに、宿をとり、パトリックだけが王とともに崖越えの道を行った。しかし、キングホーンに辿り着いたのは、パトリックただ一人だったのだ。アレキサンダーは、かつてエドワード一世の妹マーガレットと結婚し三児を設けたが、二人の王子と妻は既に亡く、娘がノルウエー王家に嫁いでいるのみ。数十年独身を通し、浮き名を流してきたアレキサンダーは遂に5ヶ月前にフランス貴族のヨーランドを嫁に貰い新女王が誕生したばかり。即ち彼にはこれといった跡継ぎがいなかったのだ。空位となった王の座を狙うのは、スコットランドのブルース一族、フランス王フィリップ、そしてイングランド王エドワード。イングランド司教バーネルの命を受け、スコットランド王の死の謎を探索するヒューは、エディンバラに宿をとり、イングランド王の特使ベンスティードの庇護の下に、聞き込みを開始する。「王は何故、嵐の中を新妻の元に急いだのか?」「女王はなぜ、従者だけが帰ってきた際に、王を探しに人を遣らなかったか?」「崖下の王の死体を、どのようにして誰が発見したのか?」「同じ夜に《水死》したもう一人の渡し守の死は本当に事故死なのか?」有り余る疑問の中、二人の従者たちに次々と死が訪れ、更にコーベット自身にも刺客の襲撃が続く。果して、王の死の真相とは?予言者に導かれヒューは闇の中の王冠を見る。
大掛かりな舞台装置のフーダニット。多すぎる魅力的な容疑者に、思わず溜め息。風呂敷きを広げるだけ広げておいて、合理的な解決にもっていく作者の力技も凄い。この小説は、ある意味、歴史の謎に迫る「論考」との趣もあり、節目節目できちんと謎を整理してくれるので、英語の苦手な人間にも非常に筋が掴みやすい。勿論、だからといって無味乾燥な論文ではなく、当時の風俗やら人情やら活劇をしっかり盛り込んだ娯楽読み物に仕上がっている。途中、オカルティックな予言者との出逢いもあるが、そこは合理的に解決されず「世の中には不思議な事がある」という終り方をするが、これも「時代」のなせる技であろう。犯人もなかなか意外で、当時の国盗り合戦の地獄を垣間見た思いがした。「殿!大変、面白うございます!ドハティーに御任せくださりませ」「であるか。」


2002年6月29日(土)

◆日記を書いて二度寝。起き出して、本日の課題図書を読んだり本の雑誌の原稿を書いたり。風邪気味につき一切外気に触れず1日を終える。鼻風邪はほぼ完治。購入本0冊。
◆夜は只管ワールドカップ3位決定戦。開始11秒のゴールには唖然。開巻即犯人がばれてしまう推理小説というか、副題が出終わった途端に必殺技が炸裂した特撮ものというか。それでも最後まで緊張感のある見ごたえのある試合になったのはさすが。トルコはいいチームだと思った。ここに二回も勝ったブラジルはやはり凄いチームだと思う。開催国双方ともトルコに負けた訳だけど、やはり2点取った韓国の方が日本より強いとみるべきなんだろうなあ。あと一試合しか、この面白いサッカーが見れないかと思うと残念至極。明日の夜は完全観戦モードだぜ。
ところで、韓国の表彰は流したのに、トルコの表彰シーンになった途端にCMに切り替えたフジテレビには、ハッサンの蹴りを食らわしてあげてください。
◆アジアの虎が負けてくれたので、関西の虎は9連敗はせずに済んだ模様。巨人もこっぴどい負け方したみたいだし、さあ、明日は久しぶりにデイリースポーツ買うぞ〜。


◆「フェニモア先生、墓を掘る」Rハサウェイ(ハヤカワ文庫)読了
アガサ賞、マリス・ドメスティック賞受賞作。壮年の独身心臓医アンドルー・フェニモアを主人公にしたコージーミステリ・シリーズの第1作。相当に業界事情に通じた書きぶりだと思ったら作者の旦那が心臓医だそうな。ただ、それだけでは、処女作としてパンチ不足。そこで、被害者にネイティヴ・アメリカン娘(インディアン娘ですな)をあてて、フィラデルフィアの旧家の嫁となる筈だった彼女を襲う因習の悪意を描く事で作品に幅を持たせた。
ミステリとしての出来は専門知識に頼りすぎた分、やや採点は辛くなるが、犯人の仮借なき悪者ぶりが光る。ただ逆に、その勧善懲悪ぶりも含め、全体的に、「受け」を狙いすぎているところが、少々鼻につく。例えば、長年つれそった愛猫との交感、向上心のある生意気な黒人少年との出会い、愛すべきオールドミス秘書との微笑ましい衝突など、こうすれば「受ける」というセオリー満載で手堅いテレビドラマを見ている雰囲気。「これがコージーだ」といわれれば、「さようでございますとも」と引き下がるしかないが、もう少し、マニア心をくすぐる仕掛があってもよいのでは?
第1作で、心臓病ネタのストックは使い果たしたと思われるので、第二作、第三作でどのような味付けを施せるか、まずはお手並み拝見といったところ。版元のセント・マーチンスでは、相当に力を入れて売り出しているようで、この作者のドットコム・サイトが既に開設されている。ちょっとお洒落なサイトの入り口はここ。作者の略歴、写真なども載ってます。


2002年6月28日(金)

◆通勤途上ですれ違った自転車の男が凄かった。ごてごて飾り立てた自転車にまたがり、顔の下半分をド派手な柄のハンカチ状の布で覆い、帽子を被った上に鎖で繋いた本物の小猫を乗せて走り去っていった。江戸川乱歩の悪夢にしか出てこないような光景だった。猫がこちらを見て「この主人はビョーキです」と訴えるように哭いた。銀座通り、朝8時半の事である。
「梅雨寒の 覆面自転車 猫怯ゆ」
がくしみたいな。
◆昼ごろから、昨日のツケが回って来たのか鼻風邪状態。花粉症かと見まがうようなサラサラの水洟がとまらない。仕事に身を入れるや、つーっとマウスに鼻水が垂れる。いやだいやだいやだ。
「1Q末 机上に居る 濡れ鼠」
まだやるか。
◆安田ママさんのところで第一報を知り、今朝になって愛・蔵太さんのところで第二報を見た社会思想社の(事実上の)倒産。これはショック。小栗虫太郎・久生十蘭・夢野久作を息長く出し、ミステリボックスでは国書刊行会以前に黄金期マニアに随喜の涙を流させた。特にイネスの「ある詩人への挽歌」の翻訳はその年(93年)一番の「事件」だったかもしれない。その他、ディヴァインの精力的な紹介もヒットだったし、kashiba一押しのジェニファー・ロウとの出会いをもたらしてくれたのもこの叢書だ。ファンタジー系の紹介は、B級作が多かったように思うが、こと推理小説についていえば、和洋とも実に趣味のいいセレクションであった。今後、同社から上梓されていた作品がどうなるか、少なくともドル箱のカドフェル・シリーズは、まとめてどこかが引き受けてくれそうな気もするが、それ以外の作品は不安。ミステリボックスは私にしては珍しくすべて新刊書店で買った叢書であり、本棚に並べるとほぼ一列分。これが二列、三列になる事を夢見ていたのだが。今更ながら、見かけたら買っておかれる事を強くお勧めする次第。
「こわされた みすてりの匣 梅雨挽歌」
いい加減にしなさい。
◆「ウルトラマンコスモス」事件が「陰謀説」で急展開している模様。報知のスクープなのか?こりゃあ、「帰ってきたウルトラマンコスモス」も冗談じゃなくなってきたなあ。
♪君にも見えるウルトラの犯人(ほし)
♪遠く離れて獄中にひとり
最終回はこの土曜日放映予定。
◆購入本0冊


◆されど修羅ゆく君は(打海文三)徳間書店


2002年6月27日(木)

◆日本全国で株主総会である。当社もご多分に漏れず横並び開催。「独創的な商品でV字回復!」などと号令掛けたところで、こういう事なかれ体質が改まらない限り、根っこのところは変わらないんだろうなあ。とりあえず、東京でも一応衛星中継で総会の様子を視聴できる準備を整えているのはいいのだが、そこから質問が出来るわけではなく、なかなか中途半端。でもって、その案内係にかりだされ、朝も早よから梅雨寒の中、プラカードを持って路上に立つ事2時間余。新橋駅前のサンドイッチマンの気分がよくわかりましたとも。雨でさえなければ、なかなか愉しい路上観察の機会と割り切る事もできたが、すっかり風邪を引いた模様。
◆宴会。鯨飲。爆睡。購入本0冊


◆「鎮魂の森」樹下太郎(出版芸術社)読了


2002年6月26日(水)

◆あれ?今週に入って、曜日の表記が一日ずれてるじゃないの?お恥かしい。いかにリアルタイムで連続ドラマを見てないか、だよなあ。通常ならばだいたい「この番組があるのは何曜日」というような体外カレンダーが機能するのだが、この4月改編では、丁度第一週、第二週にうちの奥さんが発表会の追い込みで、全然民放のテレビドラマを見ていなかったんだよなあ。だもんで、井川遥様の芋臭い演技がトホホなキムタク・さんまサスペンスも見ずに済ます事ができた。「ごくせん」も結局ノーチェック。その分、ワールド・カップにのめり込み度大。いやあ、7月改編前に終わって(まだ終わってないけど)よろしゅうございました。
◆仕事で高田馬場へ。当然に早稲田の古本街にタッチ&ゴーをかけるが、6時半を回った時点での雨中の急ぎ旅につき、店先で黴の匂いを嗅ぐ程度。せめてブックオフで安物買い。
「されど修羅ゆく君は」打海文三(徳間書店)100円
「カルト映画館・ホラー」永田よしのり編(社会思想社現代教養文庫)100円
この店で、拾い物に当たった試しはないのだが、それでも何かしらあるのではなかろうかと覗いてしまう心の弱さよ。


◆「T.R.Y.」井上尚登(角川文庫)読了
ショート感想。第19回横溝正史賞受賞作。明治44年の上海と東京を舞台にした鮮烈なコンゲーム小説。
明治の英傑たちが繰り広げる権力ゲームの狭間を、革命の旋風が吹き抜ける。それは運の悪い天才ペテン師が見た大いなる夢。「したたかな粋」と「思慮深い無骨」が縺れ、桜吹雪に武器が舞う。どこまで行ってもピンチ、どこまで行ってもペテン。
発表当時から好意的な書評が多く、つい先日も土田館長が褒めていたので手にとってみた。なるほど、これはケツ作。よく「ルパン三世」が引き合いに出されるが、どちらかといえば「三国志」風味の「スティング」なのかな?特に終幕の畳み掛けるような展開は「痛快」の一言。勿論、時代背景を最大限に活かした、意外な「真犯人」や、意外な「脇役」などのサービスにも怠りなく、隅々まで気配りされた面白さに衒いのない娯楽読み物として強くお勧めする次第。


2002年6月25日(火)

◆ふっふっふ、遂にトップページのアクセス数が、偉大なる先達、MYSCON代表(元代表?)フクさんが主宰するUNCHARTED SPACEに並んだぞ。1日1冊書評は、当方がリタイアしてるので、差は開く一方だけど、アンチャのアクセス数は私がサイトを始めた頃から、常に一歩先を行く「目標」だった。とりあえず、極めて個人的に「やんややんや」。
◆さあ、給料日だあ!雑誌を買うぞおお!!
「ミステリマガジン 2002年8月号」(早川書房)840円
「SFマガジン 2002年8月号」(早川書房)890円
「伝奇Mモンストルム 2号」(学習研究社)1400円
「ジャーロ 8号」(光文社)1400円
HMMがスレッサー追悼、SFMがラファティー追悼。非常に充実した企画で、さすが老舗の貫禄。特にHMMの密度の濃さは尋常ではない、ヘンリースレッサー・ミステリ・マガジンの感がある。しかし、これでこの二人の作家の特集も最後かと思うと一抹の寂しさを禁じ得ない。毎年、命日で幻想怪奇特集を組んでは如何でしょうか?そういえば、HMMって毎年8月号は幻想と怪奇特集組んでたんじゃなかったっけか?
伝奇Mは、これでぶんか社のホラー・ウェイヴに並びました。さあ、目指せ、3号雑誌!!なんちゅうか、立派な紙を使って物理的な厚さを確保しようとしているのが涙を誘いますな。
ジャーロは、ますますもって翻訳物の割合が減っていて哀しい。翻訳小説の比率は全体の18%弱。悲惨だった頃のHMMを思いだす。チェックリストと翻訳物と洋物エッセイだけでいいんだってば。1/3の厚さで日本作家お断りのエンポリオ・ジャーロ作ってくれたら、値段は900円でも文句は言いません。とりあえず、次号が遅れ馳せながらのスレッサー追悼らしい。翻訳物比率がせめて3割越えて欲しいよなあ。ぶつぶつぶつ。
◆ドイツ、韓国を退け決勝進出。強いぞ、オリバー・カーン!高いぞ、ゲルマン民族!まさに「壁」!「テー、ハ、ミン、グッ!」の前振りの「ダ、ダン、ダ、ダン、ダン」という太鼓に何故かターミネーターの音楽がかぶり、不死身のカーンが立ち上がってくる感じがしてなりませなんだ。はい。


◆「湖畔に消えた婚約者」Eマクベイン(扶桑社文庫)読了
新・刑事コロンボにマクベインが脚本をやった回が2本あって、はじめの一本の題名が「初夜に消えた花嫁」。「死が二人を」やら「人形とキャレラ」あたりが下敷きになった話だったと思う(が、ポケミスは「別宅」においてあるので確認が出来ない)。ただの「消えた花嫁」といえば、ロベール・トマの「罠」を原案にしたレビンソン&リンクのテレフーチャーが先ず頭に浮かぶ。そして次にアイリッシュの余りにも有名な短篇を思い出す。なんでも万博を巡る奇譚を下敷きにした話らしいが、「自分と一緒にいた筈の人間が消え、周りの誰もが『そんな人間はいなかった』と証言する」という悪夢的な(それゆえに魅力的な)謎に挑戦した話は多い(色気はないが、ホックのホーソン博士シリーズの一編「革服の男」などもその系統)。このマクベインがマースティン名義で世に送った作品も「消えた花嫁」パターンを踏襲したもの。
同僚の車を借りて婚約者と他州で週末を過ごす筈の刑事が、とあるロッジに宿を取ったところ、謎の流血事件に巻き込まれる。そこで、大騒ぎを演じているうちに連れの彼女が行方不明となり、宿の主人や、前日速度違反で一悶着あった地元の警官までもが「彼女は最初からいなかった」と主人公に告げる。果して、如何なる陰謀がこの地で進行中なのか?主人公は、仲間を呼び寄せ、果敢なる探索に挑む。幼い娼婦の誘惑、奪われた者たちの友情、湖畔の宿で潜入者は悲鳴を挙げ、愛の前に悪しき企みは瓦解する。
可もなく不可もない警察サスペンス。プロットは強引だが、とりあえず読まされてしまう。主犯の設定が光っているが、やや分裂症気味。最も見るべきは、供述書に名を借りて「私は都会っ子だ」という事を美文調で綴ったあたり。なんともマクベイン節で泣かせる。まあ、こんな供述ありっこないのだが。


2002年6月24日(月)

◆この土日の日記がそっけないのは、何度も韓国×スペイン戦での誤審に対する所感を(それも相当の分量を)書いては消ししていたためである。俄かサッカーファンが書く事でもないか、と思ってみたり、それでも我慢できずにまた書き出したり、とにかくモヤモヤが晴れなかった。だが、今日の朝日のスポーツ欄を見て救われた気になった。それは、韓国戦に向けてのドイツの守護神オリバー・カーンの談話。
「私たちにも不利な判定が一つや二つはあるだろう。それはよくあることでホームアドバンテージというものだ。(中略)
ゴールがみとめられない事があっても、さらに1点決める努力をすべきだ。2点目が認められなければ3点目を決めるんだ。」
くうう、こういう台詞がはける奴を待ってたんだよなあ。
FIFAランクが低かろうが、んなこたあ、関係ない。

我がゲルマン民族の心意気は世界いちいいいいいい!!!!!

悪いですが、準決勝の韓国×ドイツ戦、わたしドイツの味方です。
◆仕事で東大へ。久しぶりに本郷通り沿いの古本屋を覗いてみようとしたが、唖然とする程、店が消えている。結局、冷やかしたのは1店のみ。以前であれば、とりあえず拾っておくクラスの文庫本もあったが結局スルー。帰途で二駅途中下車して定点観測するも、購買欲を僅かでもくすぐるものは何もなし。雨もぱらついて来たのであっさり引き上げる。購入本0冊。
◆掲示板でも報告がありましたが、よしださんがとんでもない血風を吹かせておられます。完全脱帽っす。


◆「あやかしの夜」岡田鯱彦(あまとりあ社)読了
ちょいめずを読んでみる。所持本は、あのジグソーハウスさんから交換で手に入れた本。それ以前も、それ以降も、一切現物に遭遇せず、目録で見かけた事もないので私にとって縁が薄い本だったのであろう。こういう縁は大事にしたいものである。昭和33年の10月30日に出版されており、私と殆ど同い年。蠍座の古本。出版社が出版社であり、副題が「エロチック・ファンタジー」なので、おっかなビックリで手に取ったものの、怖れていたほど下ネタ度は高くなく、奇妙な味もある風俗推理小説集として一応のレベルに達していた。9編収録。以下、ミニコメ。
「女にたかる」両刀使いの美貌の女性を振出しに、人にたかって生きる私の一人語り森奈津子はだしの展開に眉を顰めていたところ、ラストで唖然。え?岡田鯱彦ってこんな話書く人だったの?参ったなあ。
「テレビ塔の殺人」テレビ塔から自宅を覗いた探偵が見た魂の地獄。暗鬼が呼ぶ殺意は、神の悪意に翻弄される。少し乱歩を思わせる<覗き奇譚>。まずは、このオチしかなかろうというものだが、愉快な話ではない。
「白狐の宿」幼き日に見た肉欲の記憶。妖艶な狐、獰猛な狼、そして甘美なる誘惑。誰しもが体験する性への目覚めを活写した佳編。ミステリ趣味は薄いが印象的な作品である。
「毒唇」変態趣味の夫に嫁いだ悪妻が企む巧妙なる殺人。果して遠隔の殺意は機能するか?結末がやや御都合主義だが、一応推理小説としての道具立ては揃っている。これもまた乱歩趣味。
「からだに弱点を持った男」お嬢さまに愛玩物扱いされた凛々しい男。襲い掛かる恐竜に立ち向かう英雄に秘められた謎とは?一発ネタの艶笑ファンタジー。結末はもっとさらりと流せなかったのかなあ?編集が納得しなかったのであろうか?
「覗き」愛すべき女性が女の闘いを挑まれた時、いつも彼女の事を覗いていた私は命を懸けて罠に立ち向かう。これ一作だけ単独で読めば嵌まったかもしれないが、もう慣れた。鯱彦の考えていることなんぞお見通しだあ!
「獺(かわうそ)」獺伝説の村に今も伝わる怪異の物語。だが、それは語り手にとって、甘美な青春の椿事を思い起こさせる。エロチックなノスタルジーが微笑ましい作品。今の規準からいけば、もう一ひねり欲しくなるところ。
「相似人形」小悪党が富と美女を手にしたドッペルゲンガーに遭遇したとき、金の檻は閉じる。設定がいかにも強引であるが、似て非なるものが招く皮肉な結末にはニヤリ。アイデアも叙述も悪くない。
「秘術」酔った上司が次々に見せる奇跡の技。意思の力は果して全ての不可能を可能にしてしまうのか?先は読めるものの、着想は心憎い。泡坂妻夫の作品ですよ、といわれれば、思わず納得してしまいそうな佳編。


2002年6月23日(日)

◆サッカーのない日曜。時間の使い方が下手になっているのが判る。ビデオテープの整理を始めると、バーナビー警部の第6話(第3エピソード)の結末部分数分が録画できていない事に気がつく。ううむ、テレパルが間違った情報を掲載していたとしか思えない録画ミス。こういうのは、損害賠償請求できるのであろうか?以前なら烈火の如く怒って出版元に抗議の電話を掛けるとか、落胆の余り口をきく気も無くしたりしたのだが、最近は、何年かすればCSで流れるか、ビデオ化されるであろうと鷹揚に構えていられる。まあ、この分では、当分見そうもないのが判ってきたからかもしれないが。CSIの5話と6話を視聴。

◆「Death in a Million Living Rooms」Pat Mcgerr(Doubleday)Finished
探偵を捜したり、被害者を捜したりするのがお得意な米女流が、さすがにネタ切れになったのか、真っ正直なフーダニットに挑戦した、彼女にとっての「異色作」。といっても、森事典によれば、この第6作以降は、ごく普通のミステリに転向(?)した模様である。マガーの作風というと、つい奇抜な設定ばかりに目がいってしまうのだが、実際に読まれた方は御存知の通り、彼女はキャラクラーの書き分けや、複雑な人間関係の描写が抜群に上手い。「四人のおば」や「被害者を捜せ」などでは、結末が近づくに連れ、そのまま話しが終わってしまうのが残念に感じた人も少なくないのではなかろうか?さて、この第6作は、テレビ局の看板ショーを舞台にした作品。黎明期のテレビは、その圧倒的な訴求力で瞬く間にメディアの主役の座からラジオを追い落とし、更には娯楽の主役の座さえも映画から奪うという元気のよさがあった。ビデオが未だ生まれていない頃、番組はすべて生放送。それは正に一発真剣勝負の世界であった。この作品でも、その緊張感がよく伝わってくる。こんな話。
リサーチャーのメリッサ・コルビンは、「エンタープライズ」誌の仕事をうけ、全米一の人気を誇る「ポッジ・オニール&スコッティ・ショー」を多面的に密着取材することとなる。ポッジは元スポーツ選手だったが、コメディエンヌのスコッティとの出会いにより、芸人としての才能が開花し、そのアドリブで、百万世帯に爆笑を提供してきた売れっ子パーソナリティ。一方、スコッティは、番組のネタ造りから、構成までを仕切る笑いの女帝。一時、ポッジとも結婚していたが今は離婚して、パートナーとして良い関係を築いている。なんと、彼女の秘書的存在のベスが今のポッジの新妻だというのだから、推して知るべし。メリッサにはメリッサの事情があって、番組でCMアナウンサーを務めるデイヴ・ジャクソンは、学生時代に彼女が恋心を抱いた男、ところがダンス・パーティーの夜にとんでもない仕打ちに会って以来、十年近く没交渉で来た。さて、スタジオで取材を開始したメリッサは、お笑い番組の舞台裏が決して笑いに満ち溢れている訳ではない事を悟らされる。それは、スコッティの存在が余りにも強大だと云う事。番組の関係者、歌って喋れる才能をもった新人タレントのヴィヴィアン、彼女のマネージャーである百戦錬磨の古狸アル、若手プロデューサーのビクター・ギングリック、ディレクターのバズ、オーケストラ・リーダーのグレイなど、全員がスコッティさえいなければ自分の才能をもっといかせると感じていた。そして、本番前日、スケートの事故でスコッティが怪我をした事が皆夫々のアイデアに火をつけた。スコッティの出番の穴を埋めるため、次々とギャグや構成を思いつく面々、勿論、ポッジもアイデアを出す。だが、そんな楽しみを吹き飛ばすように、不屈のスコッティが本番半日前にスタジオ入りして、番組を彼女なりにアレンジし直す。だが、それは、誰かの我慢の限界でもあった。なんと、生放送のCMで飲むジュースに毒が仕込まれ、百万視聴者の目の前で、殺人シーンが実況中継される事になってしまったのだ!果して、誰が、番組の主役を抹殺しようとしたのか?収録前夜、ポッジから驚くべき告白を聞いていたメリッサの取材メモが何者かに盗まれ、事件の謎は更に深まっていく。この番組は、五つの味が楽しめるファイブ・ジュースの提供でお送りしました。
ど真ん中での豪速球という風情の一編。このまま、ジェシカおばさんのエピソードに使える端正なフーダニット。苔の生えたミステリの読み手には、およその想像がつく展開ではあるが、それゆえに愛すべき作品でもある。少々、主役のパーソナリティーが、ここまで内実をさらけ出すのか?という疑問は残るが、憎まれ役のスコッティが実に堂に入っており、動機の納得性は非常に高い。テレビ業界の内幕ものとしても興味深く読め、まずは作者の狙いは成功しているといってよい。個人的な趣味からすれば、最後まで、語り手であるメリッサに探偵をやらせたかったが、そこも作者なりの趣向であったのか。軽快なアメリカン・ミステリを読んでみたい人には強くお勧めする次第。


2002年6月22日(土)

◆お他所のネタその1
しょーじさんが「アントニア・フレイザーを知らない」と表明したところ、葉山響さんが「それは鍛え直さねば」と力瘤を作っていた。「アントニア・フレイザーとアンシア・フレイザーはエリス・ピーターズとエリザベス・ピーターズぐらい違う」とでもやるのかな?
◆お他所のネタその2
国書第4期10冊のうちのヘキストの仮邦題は「テンプラー家の殺人」らしい。で、風読人掲示板によれば「天婦羅一家の殺人」と誤読する人が現われたとか。セイントみたく「テムプラー」と表記すれば、誤読はなくなりそうだけど、いずれにしても「ランプリー家の殺人」と絶対混同が生じるように思う。ここは原題に忠実に「足許に潜むもの」あたりで宜しいのでは、と愚考する次第。今度は「魔王の足跡」とかぶるかな?じゃあ「潜む影」でどうよ、どうよ。
◆買い物ついでに定点観測で安物買い。
「The Master's Choice」Alfred Hitchcock(Coronet Books)70円
◆サッカー見て、CSIの第4話みて、サッカー見て一日が終わる。


◆「囁く血」(祥伝社文庫)読了
邦題からは、てっきり吸血鬼小説集を想像していたら、なんと、お下劣パワー爆発のエログロホラー・アンソロジーであった。やるなあ、祥伝社。「血」とつけば、バーカーの「ハイブラウなんでもありホラー」の「血の本」をイメージするよ、普通。まあ、見ようによっては「暗黒の粛正時代」以前に海野やよいや別役礁が漫画でやっていた事を、90年代半ばにアメリカのホラー作家が真面目な顔をしてやっているのが可笑しい。
残酷なイマ風の人魚姫奇譚「人魚の歌が聞こえる」、
ハイブラウな闇の数遊び医「数秘術」、
細切れにエスカレートするリビング・デッド「心の在処」、
いかにもアメリカらしい時節もののチャイルド・ポルノ「疵物」、
シモネタ界の古典的伝説をスリリングな落とし噺に仕上げた「妖女の深情け」、
多重視点でポルノ映画館の暗闇を切り取った技巧作「闇の中」、
出口なしの精神官能感応もの「淫夢の男」、
人体改造手術によって無敵のセックスマシーンとなる女「おもちゃ」、
伝説のポルノ女優を巡る業の深い収集狂の争い「ビデオ収集家」、
淫臭立ち込めるフリークの饗宴「異形のカーニバル」、
この作品集の中では頭抜けてお洒落なツイスト「いまから三つ数えたら」、
あまりといえばあまりの珍・悲喜劇「おかまのシンデレラ」、
ありふれた設定をねちっこく書き込んだ侵略物「愛咬」、
下半身直撃のニンフォマニアックなオカルト探偵もの「情欲空間の囮」
どれをとっても、自分の大切な人には読ませたくない話ばかり。怖さでいえば「疵物」が一番怖かったかな。
次は「蠢く血」でどうよ、と思ったのだが、掲示板でよしださんから「喘ぐ血」「囁く血」とくれば次も口編でなきゃ、ということなので、「呷く血」で如何でしょうか?


2002年6月21日(金)

◆年休を貰う。朝、日記だけあげて昼まで爆睡。ブランチを食べて近所のブックオフを定点観測。何もないってば。
「囁く血」マスターマン他(祥伝社文庫)100円
「フェニモア先生、墓を掘る」Rハサウェイ(ハヤカワミステリ文庫)100円
祥伝社文庫の「血」シリーズ・アンソロジーは、「喘ぐ」と「囁く」のどちらを持っていたか不明。面倒くさいので買ってしまえ。もしこのシリーズに次があるとすれば「蠢く血」だとは思いませんかそうですか。
そういえば、今週大喜びした砂川恵永の「ぶつぶつの時代」がまた100円均一に並んでいた。ううむ、「グリフォンズ・ガーデン」パターンだよ。さては早川書房、ゾッキに流したのかあ?
◆ベッカム見て、奥さんと居酒屋行って、積録の「CSI」の第3話みて、カーン見て1日が終わる。テレビ見過ぎ。


◆「ブレードランナー2−レプリカントの墓標」KWジーター(ハヤカワ文庫SF)読了
ショート感想。原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」も下敷きにしながら映画「ブレードランナー」の続編をディック賞受賞作家ジータに書かせるというのは、ある意味で最強の布陣に思われる。しかし、読み終わっての感じたのは「ひとつで充分ですよ」という事。
余韻を残しながらも一応は完結した「ブレードランナー」を復活させるためには、結局のところ、危なっかしいながらも保っていたオリジナルの均衡をあえて崩して、然る後にジーターのイマジネーションで膨らませる必要がある。5人と思われていた逃亡レプリカントがもう一人いた、だの、最凶のレプリカントのオリジナルが現われ、ブレードランナーの秘密を暴きたて、遂には負う者と追われる者、裁く者と裁かれる者が逆転する、だの、まあ、それなりの工夫はある。真贋の合い乱れるシミュラクル感覚はなるほど、ディックの末裔。しかし、ジーターのマニアックな企みには敬意を表しつつも、「いい加減、そっとしておいてやれよ」というのが普通のファンとしての素直な気持ちである。
もうお腹一杯です。強力わかもと下さい。