戻る


2002年4月10日(水)

◆会社傍の古本屋と駅前チャリティ市で安物買い。今回のチャリティ市は不調。まあ、何か買うものがあるだけでもめっけものである。
「感情の法則」北上次郎(早川書房:帯)100円
d「秘密諜報員」ホストヴスキー(角川文庫)100円
「若草の祈り」Eネスビット(角川文庫)100円
ネスビットは「砂の妖精」のあのネスビットなのだろうか?映画カバーがちょっと嬉しい。まあ、推理小説でもファンタジーでもなさそうだが。
◆帰宅するとROM114号到着!今回はアリンガム&マクロイ編。国書第4期への景気づけに持ってこいの好企画。アリンガムを小林晋氏が、マクロイをROM氏がサクサクと紹介。なんと、今年に入って11冊の原書を読破して絶好調のHさん(ちゅうかOさんちゅうか)もレビューでデビュー。EQFCのMoriwakiさんによるイタリアペーパーバック自慢。九州ミステリ研の菅さんによるバウチャー・コン・レポート、風読人のかつろうさんのQQQ連載などなど、盛り沢山の1冊。濃いです。これに比べれば拙サイトなんぞサラサラです。はい。また夏場には初めてのROM会合が開催される由。これはなんとしても参加したいなあ。


◆「バルーンタウンの手品師」松尾由美(文藝春秋)読了
作者の出世作シリーズ第2作。今度は出版社を文藝春秋に移しての登場。なんとbk1で見る限り栄光の第1作「バルーンタウンの殺人」は既に品切れらしい。自分が賞を与えた作品の面倒ぐらいみてはどうかと思うのだが?これが出版界の現実だとすると悲しいねえ。って、この本も古本で買った人間に言われたかないか?
さて、この作品集、「妊婦のみの街」という尋常ならざる近未来都市を舞台に不可能趣味にこだわった前作のテイストをそのままに、小粋なキャラの小癪な推理が楽しめる1冊に仕上がっている。前作がお気に召した方には、絶対おすすめ。まだ前作を手にいれてない人は古本屋に急げ。なあに、その気になれば入手難易度は低い。さあ、呼吸を整え一気にいきめ!以下、ミニコメ。
「バルーンタウンの手品師」身重の女ホームズ暮林美央のワトソン役を務めた有明夏乃が出産を控えた一室。続々と懐かしい顔が集まり始める。だが、愛すべき人々が集う部屋から、ビデオ・ディスクが紛失する。幼き見張り番を掻い潜り国家の命運を背負った銀色の秘密はどこに溶けたのか?推理合戦タイプの作品。トリック自体は小味だが、きちんと伏線があるところは立派。シリーズ再開編としての使命は充分に果たしていると言ってよかろう。
「バルーンタウンの自動人形」黄金の器コンテストから独立した妊婦のパフォーマンスコンテストが繰り広げられる最中、いかにもバルーンタウン向けの自動人形がやってくる。片や妊婦体操を踊り、片や腹帯を巻く。その人形師が密室状態の中で襲撃を受け、現場からは百万円が消えてしまう。だが、ご心配なく。ビデオはごまかせても、暮林美央の眼はごまかせない。謎の組み立てがシンプルで薄味な一編。犯罪よりも妊婦達の隠し芸の方が面白い。
「オリエント急行十五時四十分の謎」気鋭の女流作家のサイン会で、作家にトマトをぶつけた妊婦は<胎児占いの館>である「オリエント急行」に消えた。果して、巨大な腹はどこにいったのか?これは凄い。乱歩がトリック類別集のどこに入れるべきか頭をひねくりまわしそうなトンデモ・トリック。「オリエント急行」である必然性がややマニアの内輪受けではあるが、一読の価値はある。まあ、コアなマニアとしては「パディントン発五時四十分」ネタも何か加えて欲しかった気も致しますが。
「埴原博士の異常な愛情」暮林美央、胎盤料理家にして精神科医ハニバル博士と対決。果してバルーン・タウンに仕掛けられた巨大な陰謀とは?そして妖しい外国人の正体とは?妊婦失踪事件を切っ掛けに暮林美央自身の事件の幕は今開く。「ハンニバル」をおちょくった設定だが、意外に深刻な展開。とりあえずの「最後の事件」に相応しい重さと爽やかさに溢れた佳編。


2002年4月9日(火)

◆出先から直接帰宅。ブックオフを一軒チェック。何もない。
「雪の野望」木下利和(新風舎:帯)100円
「星の砦」芝田勝茂(理論社)100円
前者はスキー・テーマのロマンティック・ミステリなのかな?何故に私は生田直親を1冊も買わずに、名もない素人の自費出版ゲテミスを買うのか?要は単なる珍しもの好きなんだよな。
◆掲示板でよしださんから、昨日買った「五月の七日間」は市街図が挟み込まれていてコンプリートですよ、と教えて頂く。さすがに均一棚の本に、そこまで高望みをしてはいけない。ううむ(みすず書房:地図欠け)であったか。この世界奥が深い。ぼくなんかまだまだです。


◆「ブラッドジャケット」古橋秀之(電撃文庫)読了
大森望氏が北上次郎氏にヤングアダルトの試し読みに進めたところ、のっけの数ページで挫折してしまい、それを聞いた作者が「そこは笑い所なのにいい」と頭を抱えた、という曰くがあるのは、この作品でしたっけね?デビュー作「ブラック・ロッド」で創造した呪術的未来積層都市ケイオス・ヘキサを舞台に繰り広げられる血と力と聖と死と狂騒と虚無の物語。こんな話。
最強にして最悪の吸血鬼<ロング・ファング>狩りはまだ続いていた。その「人喰い」系「タイプ・スクエア」の源吸血鬼に最愛の娘ミラを汚染された吸血鬼学者ヘルシングは、周到な罠と圧倒的な物量で仇敵に迫るが、「マクスウェル」を操り精霊の「加護」を得た<ロング・ファング>は見事にロストしてみせる。一方、積層都市の最下層で生ける屍体の処理を生業にする虚弱な青年アーヴィング・ナイトウオーカーは災厄に見舞われていた。単調で、希望もなく、静かに立ち腐れていた日常をハロー・ポイントの銃弾が打ち砕く。頭欠けの屍は、黙して語らず。だって頭が欠けてるから。猟奇殺人鬼は聖職者の衣を纏い、爆ぜた筋肉は十字架を振り下ろす。沈降する眠れる美女、憑依された小悪魔、そして空っぽの男。今、修羅はイドの彼方で覚醒する。
前作では、既に「伝説」状態であった吸血鬼殲滅部隊隊長アーヴィング・ナイトウォーカー誕生譚。とにかく、出てくる詞(ことば)の力に感嘆する。勿論、先駆としての「バスタード!」なんぞの存在は認めるとして、たった一つの呪文でこの混沌たる世界観を支配してみせる作者の尖がった言語感覚は賞賛されるべきであろう。もし英訳されれば、国際的にカルトなファンが就く可能性を秘めた景気のいい話。予想を裏切る展開の連続に頼もしさを覚えるのは私だけではないような気がする。いやあ、カッコいいわ。


2002年4月8日(月)

◆銀河通信の日記で知ったMZTさんのネット休止宣言。古本者への皆さんの謝辞もあるので、チェックのこと。リアルの研究活動の方が面白くなってきたというのが、休止の理由。なんともめでたい!!わざわざ留学までしているんだ、今しか作れない新しい人の輪をどんどん広げていって欲しい。こういう休止はなんだか元気がでるなあ。リンクも外したほうがいいのかな?
◆出先で残業。一駅途中下車して定点観測。
「五月の七日間」ニーベル&ベイリー(みすず書房)100円
「続巷説百物語」京極夏彦(角川書店:帯)580円
「バルーンタウンの手品師」松尾由美(文藝春秋:帯)490円
「真っ黒な夜明け」氷川透(講談社NV)100円
「ホラー作家の棲む家」三津田信三(講談社NV)100円
「少年たちの密室」古処誠二(講談社NV)100円
「五月の七日間」はアメリカでの軍事クーデターの顛末を描いたフランケンハイマー監督映画作品の原作だそうな。一種の近未来SF仕立てなので拾ってみる。後は安物買い。


◆「世界の終わり、あるいは始まり」歌野晶午(角川書店)読了
巷で話題の実験的作品。まずは「ROMMY」以降、新境地を切り拓きつつある作者の仕事の中でも極め付きの「問題作」であろう。結論から先に言ってしまえば、非常に楽しく読めた。だが、これを「推理小説」と認めるつもりはない。それは「燃えつきた地図」や「葦と百合」を推理小説と認めるつもりがないのと同じレベルでそうなのだ。そして、その眼で見ると、些かこの小説は野卑に過ぎる。尤も、その野卑な「擬態文」や「世相カリカチュア」にもきちんと理由付けがあるところはしたたかで、島田荘司に一目でトリックを言い当てられて泣きべそをかいていた青年がここまでになるか、と感慨深いものがある。こんな話。
東京近郊で3つの小児誘拐殺人事件が連続して発生する。脅迫はすべて電子メール。しかも身代金の要求額が二百万円から百万円といった小額であるという奇妙な共通点があった。そして共通点が、もうひとつ。子供たちは総て誘拐から間もなく殺害されていたのだ。それも頭を小口径の銃で撃ち抜かれて。だが、そんな残虐な事件も、他人事である限り単調にして健やかなる日常の間奏曲に過ぎない。淡く密やかな蜜の味に過ぎない。ここに一人の平凡な男がいる。小市民である。善き夫であり、良き父である。いや、本人はそのつもりだった。ひょんな事から息子の机の中を覗いてしまうまで。そこに誘拐事件の被害者の父たちの名刺を見つけてしまった男は、果てしなき暗鬼に苛まれる事となる。疑心の追跡、煉獄の推理、そして絶望のリフレイン、青い空を白い球が過ぎる時、永遠のプロローグは間もなく終わろうとしている。
というわけで「推理小説」ではない。悪く言えば、アイデアノートだけで小説に仕立ててしまった読み物である。良く言えば、これまで如何なる奇想にも合理的な解法を準備してきた「楷書の人」が、アーティスティックな「書」に挑んだ意欲作である。いずれにしても、一生に一度しか使ってはいけない荒業であろう。なぜか、無性に次回作が気になるインパクトのある作品である。とりあえず、読んでみて何か一言いいたくなる作品である。いやあ、上手く嵌められたものだ。


2002年4月7日(日)

◆この一週間というもの、阪神の快進撃に大量の時間を奪われてしまった。いや、それはそれで、充実の時間ではあるのだが、サイト運営の立場からは、悩ましいところ。通勤時間もスポーツ新聞を熟読する為に、原書購読も進まなかった。帳尻を合わせるために、朝から原書をせっせと読み進む。
◆昼からは奥さんがピアノのお稽古でkashibaは放牧状態。原書購読の合間を見て積録しておいた「TRICK2」を3エピソード6話分を固めて視聴。おお、やっぱり、面白いではないの。特にEpisode3の佐野史郎の怪演がなんとも印象的。
◆昼飯の買出しついでに新刊書店チェック。
「達磨峠の事件」山田風太郎(光文社文庫:帯)1000円
「本格ミステリコレクション4:鮎川哲也名作選」(河出文庫:帯)1200円
「夜のフロスト」ウィングフィールド(創元推理文庫:帯)1200円
「文豪春秋」いしいひさいち(創元ライブラリー:帯)600円
日下本2冊。両方とも本当に凄い。その評価は評価として、前者では、貫井さんのホームページで後追い解説の入っている「やよいさんの指摘」の顛末が気がかり。元々はSRの沢田さんの発見らしいのだが、さあ、残る一巻でフォローは間に合うのか?後者は「緑色の扉」「夜の挽歌」「殺し屋ジョウ」も入るのかと期待していたんだけどなあ。まあ、それは中期拾遺集が出る時の楽しみに取って置けということですかね。はい。


◆「Death at Broadcasting House」Val Gielgud & Holt Marvell Finished
一週間に一冊の原書講読。掲示板で「今週はオカルトミステリから浮気をして、<カーの親友>の作品を読んでみた」という、ヒントを出しただけで、この作品だと特定された黒白さんは、さすがです。さて、テレビ局を舞台にしたミステリといえば、ブラウン管の推理番組では結構みかけるのだが、小説の方でも「八千万の眼」だの「殺人をしてみますか?」だの「火の虚像」だのといった古典から「視聴率の殺人」といった近作まで、印象に残る作品は少なくない。しかし、ラジオ局が舞台となると、やはりこの作品に止めを刺すのではなかろうか?時代はラジオドラマ全盛期の30年代、そして舞台は世界に冠たるBBC。そこで、推理ドラマの殺人シーンに被せて本物の殺人が犯されてしまうのだ。これぞ「MURDER ON THE AIR」ものの嚆矢と呼ぶに相応しい黄金期の作品。こんな話。
6月の夜9時20分、BBC。ロドニー・フレミング原作の歴史推理ドラマ「緋色の追い剥ぎ」の本番。演出家のケアードを始めスタジオ・クルーの面々はとんでもないトラブルに直面する。なんと、殺害シーン収録のために一人で7Cスタジオに篭っていた役者シドニー・パーソンズが本当に縊り殺されてしまったのだ。「道理で迫真の演技だったわけだ」などと呑気な感想を抱いていられるのはスペアーズ警部率いる警察が乗り込んで来るまでの事。そこからスタッフと出演者は徹底的な事情聴取とアリバイ調査に晒される事となる。視聴室で電話を取っていた原作者、新鮮な空気を吸いに大スタジオから上がってきた主演男優、張り番をしていたスタジオ・クルー、そしてランプのトラブルで駆け回っていた演出家、何故か、犯行時間には7階付近にいた事が判明する関係者たち。やがて捜査線上には、被害者と揉め事を起していた一人のスタジオ・クルーが浮かび上がる。素人探偵に精を出す演出家ケアード、ガールフレンドを誘い出してまで張り込みの真似事をする推理マニアの音響効果マンたちは、もうひとつの死に巻き込まれ、事件は更に混沌としてくる。敵の多い被害者、隠された手袋、脅迫される女優、推理と検証、録音された「殺害シーン」に秘められた手掛りとは果たして?今、殺しの再演に向って秒針は時を刻む。
まず、殺人の起きるタイミングが早いのがよい。全体の10分の1で、衝撃的な殺人が描かれ、文字通り「掴みはOK」。更に、放送スケジュール表や、6階から8階にかけてのスタジオの見取り図、登場人物リストなどが律義に盛り込まれているのも吉。「ああ、俺は黄金期の本格推理小説を読んでいるのだ」という気分に浸れる事請け合い(ただ、見取り図は、もう少し前のページに入れてもらった方が、英語力が乏しく現場の状況を再現するのに四苦八苦の人間にとっては、よりよかった)。ただ警察の捜査と、素人探偵たちの捜査が錯綜して描かれるために、ややとっちらかった印象があり、誰に感情移入して読めば良いのか戸惑いを覚えた。あと、楽屋落ち的に「ここがアメリカでなくて、よかったよ。アメリカだったらファイロ・ヴァンスが出てきて御託を並べるところだ」とか「まあ、ロジャー・シェリンガム的捜査法でいけば」などという台詞が顔を出したり、名探偵たるスペアズ警部が、捜査に行き詰まって妻のマッジに相談し、そこからヒントを得るといったくだりでクロフツのフレンチ警部を彷彿させたり、といったマニアックなくすぐりについては好き嫌いが分かれるところであろう。読み飛ばしていたのかもしれないが、大親友たるカーへのジャブがなかったのは少々期待外れ。だがその分トリックが、非常にシンプルにして大胆。はっきり言ってアッと言わされた。当時の風俗を写しているという面でも見るべき処のあるお話であり、充分に翻訳候補として及第点の作品である。


2002年4月6日(土)

◆ネットミステリ界に激震走る。

一体何が起きたのだ?
主宰者とは何度か面識はあるが、これは「まさか」の展開。いやあ、びっくりした〜。勿論、それなりの事情はあるのだろうし、主宰者の意図こそが尊重されるべきであるとは思うのだが、あれほどにアクセス数の多いサイトでの出来事にただ唖然とするのみ。

何の事かって?

そりゃあ、貴方!ミステリ系更新されてますリンクが黒バックになってる、ってことよ!!

「錦通信」の閉鎖に哀悼の意を表されたのでしょうか?
◆一部で評判のフランス映画を見に、奥さんと都心に出る。モノは、かなり変な女の子の物語「アメリ」。幕開けから一体どこにお話が転がっていくのかよく見えない、「作戦」たっぷり、エスプリたっぷり、エッチ少々の恋愛映画。ひょんな事から人を幸せにする悦びに目覚めた夢見勝ちの娘が、次々と「奇跡」を起していく。そして、そんな彼女を見守る優しい眼差しは、不器用なカップル未満にとびきりの勇気を贈る。いやあ、映画って本当にいいもんですね。若干、中だるみがないではないが、様々な伏線がパチリパチリと嵌まり込んでいく快感はまさに上質のミステリのそれにも似て、恋愛映画好きの奥さんも、ミステリ映画・ファンタジー映画好きのわたくしめも大いに楽しめた。皆さんも、カップルで是非どうぞ。


◆「くらら」井上雅彦(角川ホラー文庫)読了


2002年4月5日(金)

◆少しだけ残業。一駅だけ途中下車。通常の定点観測とは逆方向の店に向うと、見慣れぬ古書店が出来ているのに出くわす。新店がオープンしたというよりも、どこからか丸ごと移転してきましたといった雰囲気の店構えに品揃え。「どうせ大したものはあるまい」とはやる心を押えながら見て回るが、確かに今更買う程のものは見当たらない。まあ、店を発見したのが、一番の発見と言えようか。そこから、3軒チェックして買ったのはこれだけ。
「世界の終わり、あるいは始まり」歌野晶午(角川書店:帯)800円
「ニュー・ゴシック:ポーの末裔たち」鈴木・森田編訳(新潮社:帯)400円
「新作ゴジラ」飯野文彦・野村宏平(講談社X文庫)50円
「犠牲はいつも処女」Tハインド(講談社)50円
「完全犯罪」小栗虫太郎(春陽堂・日本探偵小説全集:裸本)50円
d「本命」Dフランシス(ポケミス・映画カバー)50円
歌野作品はバリバリの新刊の極美本。半額で買ってごめんなさい。新潮社のホラー集は出ていた事も知らなかった本。92年の出版。文庫落ちしてないのかな?「新作ゴジラ」はアンソロジー研究家・野村宏平氏の本業につき押える。ハインドは、先日未読王さんが、話題にしていた本。もう少し時代がずれていれば、ウイークエンド・ブックスに入ってそうな作品。解説を拾い読む限りでは一応「スパイ小説」らしいが、根っこのところで純文学系の作品である模様。「完全犯罪」はカバー付きであれば、古書価がつく本。気分はプチ血風。で、個人的に本日一番嬉しかったのが、競馬シリーズの映画カバー。これでまた一歩前進。やはり一風変わった本は、ブックオフよりも昔ながらの古本屋の方が出くわす確率が高い。満足満足。


◆「神宿る手」宇神幸男(講談社)読了


2002年4月4日(木)

◆会議の連続で、気がつくと残業になっていた。購入本0冊。
◆BSが4月改編で元気。NHKでは定番の「ER」第7シリーズに、「チャームド」「レリック・ハンター」が夫々第二シーズンに突入。ミステリの新シリーズ「バーナビー警部」もスタートして目が離せない。WOWOWでも「CSI:科学捜査官」という鑑識ものが始まった。こりゃあ、一週間で2時間テープが1本ペースですなあ。本の煩悩は、これでもかなり治まっているのだが、映像の方の煩悩は一向に治まる気配がない。ビデオを所持するようになって20年。ただ、いつでもみる事が出来るという「安心感」のみを買ってきた。もう、スチールラックから安心感が溢れている。床一杯、平積みの安心感である。本当に安心感なのか?


◆「半熟マルカ魔剣修行!」(ハヤカワ文庫FT)読了


2002年4月3日(水)

◆一駅途中下車。均一棚で安物買い。
宇宙の法則」藤井青銅・しりあがり寿(徳間書店)50円
「デルタ・スター刑事」Jウォンボー(早川書房)50円
前者は「愛と青春のサイバイマン」とかの藤井青銅のエッセイ集。へえ、この人って放送作家だったの?後者は2冊100円の帳尻合わせ。
もう一軒で、少し気合の入った買い物。
「橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇」橘外男(中央書院・帯)1200円
「橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇」橘外男(中央書院・帯)1200円
「橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇」橘外男(中央書院・帯)1200円
「橘外男ワンダーランド ユーモア小説篇」橘外男(中央書院・帯)1200円
「橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇」橘外男(中央書院・帯)1200円
いつかは買わなきゃなあ、と思っていた橘外男の選集。帯付き・スリップ付きが並んでいたので、発作買い。よくぞお金があったものだ。最後の1冊、満州放浪篇はせめて新刊書店で買うようにします。橘外男の本というのは、こちらの情熱がないせいもあって一向に遭遇しない。なにせ桃源社はおろか社会思想社の三巻本すら買っていないのである。極端なんだよなあ。


◆「警視庁物語 魔の伝言板」長谷川公之(春陽文庫)読了
少し毛色の変わったものを、と思い昭和30年代の春陽文庫から引っ張り出して読んでみた。日本の警察小説を語るうえで、一応避けては通れないシリーズ。作者は、脚本家で法医学者で小説家という多彩な肩書きの持ち主。どうも日本の警察小説には中村光至やら佐竹一彦といった、警察勤務の系譜というものがあるようで、さしずめ長谷川公之はその「はしり」といったところなのであろう。しかし、実際の捜査を知っているからといって、それを面白い小説に仕立て上げられるかというとそれは全く次元の違う話であって、正直なところ、この短篇集には感心しなかった。文章が小説以前の書き方・作文の世界なのである。よって登場するキャラクターたちもどこか書き割りのようで、喋る内容も紋切り型。勿論、プロットに気の利いたツイストやら、トリックも存在しない。思わせぶりの描写があって、「すわ伏線か?」と思いきや、肩透かしを食わせた揚句に、説明不足のまま放置する。例えば、同じく春陽文庫の看板作家・島田一男の警察小説と比べてみるとその差の大きさに愕然とする事、間違いなし。なるほど、これは絶版もむべなるかな、という作品集であった。3篇収録。通常であれば、ミニ・コメントを付するところだが、その気力が湧かない。題名だけ挙げておくので勘弁してください。郵便列車強盗を題材にした「魔の最終列車」、自動車窃盗団の物語「白昼魔」、そして連続タクシー強盗殺人団の顛末を描いた「魔の伝言板」、いずれも「リアルが売り物」といいながら、さながら捕物帳な文体が違和感な地味なお話揃いである。日本の警察小説を題材に論文を書こうという人が目を通しておけばよいシリーズであろう。


2002年4月2日(火)

◆一週間前、ものは試しと感想文をbk1に投げてみた。字数制限があるので、日記に書いたものを少々刈り込んで送る。モノは「夜陰譚」と「五人姉妹」の菅浩江2作品。本日めでたく採用された模様。んじゃ、「始末の鉄人」マダム山村まひろ流にポイント稼ごうかな。問題は現役本を何冊読んでるかだよな、私の場合。
◆一駅途中下車。さしたるものは何もなし。でも、知らない間に一軒新しい店舗が出来ていて楽しい。消えていく店もあれば、生まれて来る店もあるのだなあ。
d「怪人対名探偵」芦辺拓(講談社ノベルズ:帯・葉書・栞)350円
「小説幻妖 弐」(幻想文学出版局)1000円
芦辺本は、帯欲しさ。なにせ帯にしか鮎川哲也の賛が載っていないという「追尾の連繋」パターン。それと知らずに1冊目をブックオフの半額・帯欠けで買って臍をかんでいたもの。最初から新刊で買っておけばこんな苦労はせずに済むものを。一体何が楽しいのだ?いや、これはこれで楽しいのである。そういう事にしておいてくれ。
幻想文学出版会の本は、発作買い。正直何が珍しくて何が珍しくないのか見当もつかない。副題の「幻視の文学1986」という煽りにほだされて買う事にする。まあ、相場なんでしょうか?
◆よしだまさしさんの日本冒険小説協会第20回全国大会のレポートが圧巻である。帰宅してからあれだけの文書を打ち込めるというのも凄いが、なんといってもよしださんの大物ぶりが改めて凄い。こういう人に付合って貰えているかと思うと「器じゃねえよう」と身悶えしたくなるよなあ。


◆「バケツ一杯の空気」Fライバー(サンリオSF文庫)読了
いかにも50年代なアイデア・ストーリーから、サイケでニューウエーブな幻想譚まで器用に書き分けた作者の代表作を収録した作品集。余りにも作品毎のイメージが異なるためにバラエティーブックの感すらある。さしずめ、ここに、怪奇ものとファファード&グレイ・マウザーものが入ればホントに「フィリッツ・ライバーひとり雑誌」ですな。「闇の聖母」やら「妻という名の魔女たち」の判りやすさを期待すると、頭を抱える羽目になるクセ玉も何球かあって、読み手のSF読者適性を図るのに使えそうな本である。11編収録。ミニコメ製作中。


2002年4月1日(月)

◆本日から心を入れ替えてブックオフには行かない事にしました。(>勿論、大嘘)
◆とりあえず、本日はブックオフには行かず、八重洲ブックセンター、古書センターの定期巡回コース。八重洲BCでは探し物をするが見当たらず。まあ、bk1ですらヒットしないのだから無理もないか。マイナー出版の本は、存在を知ったら直ぐに動け、という教訓ですな。それにしても、海外ミステリの棚のホームズ関連書物の多いのには驚くなあ。古書センターでは、100円均一棚がなくてそれだけで損をしたような気分になる。雑誌コーナーで「妖奇」やら「トリック」が何冊か並んでいたのには驚く。この店にしては渋いものを。値段は専門店価格で何を持っていないかきちんと把握していない人間には怖くて手が出せるレベルではない。てなわけで、本日は購入本0冊。新年度「古本がやめられる」プログラムのスタートとしては上々の滑り出し。
◆MYSCON3のレポートがあちこちでアップされ始めている。西澤保彦作品が苦手だったり、海外ミステリのサスペンスものも語れるような読み方してないし、山田風太郎も全然といっていいほど読んでいないので、結局、企画で興味津々なのは古本オークションのみ。勿論参加すれば普段話せない人達と話せてそれなりに楽しいのは確かなんだけどね。オークションでは、またしても市川尚吾さんが、濃ゆい出品で参加費を稼いでいかれたのが印象的。個人的に羨ましかったのは茗荷丸さんが落した「絶体絶命」。海外翻訳ものでは今一番欲しい本。まあ、参加していても今回の落札金額では、追随できなかったかなあ(こればっかりは、その場の雰囲気なのでなんとも言えんけど)。あとはフクさんの落した「刺青殺人事件」の元版もその値段なら参戦してましたね。それにしても「大倉火華子」が如何に状態が悪いとは言え、その値段なのか?本当に?ううむ、これは信じられんん!!!逆に高城高・長編の高騰ぶりにはびっくり。その値段を出せば函付きが買えてお釣が来るのでは?まあ、確かに見ない本だし、読んで面白い作品なのでむべなるかなではあるんだけど、これを見た業者さんが、無闇なカタログ価格を付けない事を祈るのみ。いやあ、やっぱりオークションは魔物だわ。


◆「犯罪の広場」鷲尾三郎(青樹社)読了
高校生の頃に訳もわからないまま、「長編推理小説」という背の文字を見て買った本。200円の値札がついているので、その値段だったのだろう。思わず昔の自分を「エライ!!」と褒めてやりたくなる。ああ、あの頃から、こういうマイナーどころを漁っていれば、もう少し、昭和30年代作家も充実していたであろうに。でもあの頃はカーだの、クイーンだのに血道を上げていたんだよなあ。
閑話休題。「長編推理小説」というのは大嘘の短篇集でバラエティーに富んだ7編を収録。救いようのないスリラーだけでなく、本格推理の香りのするものもあったり、何より他の作品でも活躍するキャラたちのなれそめ譚やら初手柄話が入っていて、思わぬ拾い物。いや、拾ったは25年以上前なんだけどさあ。以下、ミニコメ。
「悪の末路」悪い前科者に騙された馬鹿な女が修羅を見る。揺れ動く心が最後に見た地獄とは。捻りも何もない典型的な安手のスリラー。よくぞこんな作品で原稿料を取っていたものだ、と呆れる。
「悪魔の罠」私立探偵南郷宏の元に持ち込まれたのは、南米で自殺を遂げた富豪の姪からの依頼。秋までは命を保証されていた伯父が彼女の帰国を待たずに死ぬ筈はない、という訴えに南郷宏の義侠心が疼く。果して欲望に塗れた悪魔たちが仕掛けた大陰謀は?世界を股に掛けたアイデア・ストーリー。多少強引ではあるが、その意気やよし。後の南郷シリーズに繋がる趣向も楽しい。
「悪の代償」恐喝者と殺人者。不倫の代償を迫られた男女は、奸計と殺意をもってこれに応える。果して完全犯罪は成り立つのか?倒叙サスペンスだが、証拠品の隠し場所に一工夫あって楽しい。内藤・田所もの。
「悪女の顔」出所した男が女の裏切りに気づいたとき、もう一つの殺意の罠が口を開ける。悪女の顔を持っていたのは姉?それとも妹?ありがちな設定の通俗スリラーだが、いかにも哀切なところが意外と悪くない。
「悪の囁き」推理作家・牟礼が偶然にも街で意気投合した女は、恐ろしい陰謀を豊満な胸に秘めていた。消える女、運び出される死体、そして消える死体。一連の不可解に秘められた真の狙いとは?死体消失トリックとホワイダニット趣味の逸品。お馬鹿なトリックが愛しい作品。
「悪の敗北」今は社長夫人となった闇の女。その前身をネタに強請る人生の負け犬。悪心は暴力のプロたちを呼び寄せ、悲運の夜に銃声が轟く。女の幸せを支えるものは、金?力?それとも愛?通俗サスペンスながらも人間が描けており、読後感もよい。鷲尾三郎の通俗スリラーにもいいものはあるのだ、と再認識。
「悪魔の海」海女の誉れに仕組まれた邪恋の罠。犯人は分かっているが、手段が謎な本格推理。善悪の書き分けがはっきりしており、面白く読める。後の内藤警部の初手柄という趣向も吉。
結論:この作品集は「買い」です。