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2002年2月14日(木)

◆懸案事項を片っ端から片付ける1日。仕事運三つ星。
◆南砂町定点観測。古本運マイナス一つ星。安物買いに走る。
「今昔続百鬼−雲」京極夏彦(講談社NV:帯)570円
「あでやかな落日」逢坂剛(講談社文庫:帯)50円
「第4の神話」篠田節子(角川書店)100円
「犯人のいない殺人の夜」東野圭吾(光文社文庫)50円
「ミステリーズ<完全版>」山口雅也(講談社NV:帯)100円
大ファンである京極夏彦の新刊を古本落ちで買うようなってしまったら終わりだなあ。終りだよう。
◆帰宅して、奥さんからチョコレート(ケーキ)やら、プレゼントをもらって、イタリアンな夕御飯を食べて、ワイン飲んでバレンタイン。恋愛運五つ星。
◆ジグソーさんから査定。あっはっは、丁度私の買値ぐらいですね。さあ、これで、新刊買うぞお!だったら、最初からダブリ買いなんかしないで、新刊買っとけ、って話なんだよな。わかってんだよな。わかっちゃいるけどやめられないんだよな。


◆「赤の殺意」長井彬(ケイブンシャ文庫)読了


2002年2月13日(水)

◆朝もはよから清水一色の一日。暁はただ銀色。
◆残業して、散髪して、購入本0冊。
◆今日はテレビの日。「ロング・ラブレター(漂流教室)」はいつも通りの面白さだったのだが、「プリティー・ガール」の展開に唖然。これはいい!いやあ、この番組にこの種の面白さを全く期待していなかっただけに嬉しい不意打ち。来週も楽しみっしょ。


◆「静かな教授」多岐川恭(徳間文庫)読了
昨日に引き続き倒叙推理を読んでみる。が、こちらは、正統派の倒叙推理。倒叙短篇は、鮎哲の中期作から古畑任三郎を経て最近の六とん作家による「動かぬ証拠」まで、枚挙に暇がないが、長編となるとなかなか地力が要求される。この日本にこれほどに折り目正しい倒叙長編があったとは、正直自らの不明を恥じる次第。また、題名が巧いのだ。このままペリー・メイスンの一編に使えそうな、思わせぶりで上品なセンスが実にココロ憎い。そんな「The Case of the Gentle Professor」は、こんな話。
「えー、誰にも嫌いなものというのはあるものでして、エナを埋めた上を最初に通ったものを一生怖がる、とゆーよーな事が『饅頭こわい』でもまことしやかに語られております、はい。えー、今回の事件では、主役の教授は、奥さんのそんな<苦手>を使ってプロバビリティーの殺人を仕掛けます。果して、教授の失敗はどこにあったのでしょうかあ?しかし、本当の謎は、なぜ、自分の妻を殺さなければならなかったのか?にあります。しかも、その動機を理解する人間が教授にエールを送るとき、んー、人生の皮肉を感じずにはいられません。探偵役には、叩き上げの警部と、若い女性。ただ今回は些かプロの方が分が悪いようで」
倒叙推理なのだが、実は「ヒルダよ眠れ」的悪女ものでもある。冒頭の有無を云わせぬ凝った殺害場面から、被害者の実像を聞き込みの形で浮かび上がらせ、最後には、彼女に対してなんとも残酷な台詞を用意する。トリックは、仮に倒叙でなければ、噴飯ものだったかもしれないが、充分に鑑賞に耐えるものに仕上がっているのがお見事。倒叙ファンは必読。普通のミステリファンも読んでおいて損はない。


2002年2月12日(火)

◆昼休みに神保町タッチ&ゴー。大島書店が日・月と開店していたので代休とか、ううむショック。小宮山書店の均一棚もパワー不足で、@ワンダーにもみるべきものはない。靖国通り沿いの神保町ブックセンターが閉店してから、目の正月もなく、神保町の渉猟は絶不調。とほほ。
◆夜はしっかり残業。直行で帰宅。購入本0冊
◆お知り合いの名前のウィルスメールが山のように届いて、おまけに某氏の元には、私の名前のウイルスメールが飛んでいったようである。うわああ、とうとう汚染されたのか?とウイルスチェックしたところ、案の定いらっしゃいました。すみませんすみません。どうぞ皆様、わたしからの添付付きメールが行っても開けずに削除してくださいませ。


◆「十三人目の陪審員」芦辺拓(角川書店)読了
芦辺拓は、稚気溢れる本格推理小説作家である。が、時々、社会派に目覚め、「敵」と見なしたものを徹底して叩く弊がある。その矛先が向けられるのは、官僚であったり、大手広告代理店であったり、所謂、世の中で権威や権力と認められている者であるわけだが、ひとたび戦端が切られるや作者は作中でこれでもかという苛烈な筆誅を加える。だが、作者の古巣に対してはどうか?ここまで世の権威に喧嘩を売るのであれば、抑止力を持たない第4の権力マスコミに噛付いてこそ、公平というものではなかろうか?と常々感じていた。いやあ、やってくれました、芦辺拓。この作品では、作者の筆鋒は、マスコミとそこに巣食う文化人を完膚なきまでに叩き伏せてくれる。技巧の限りを凝らした倒叙推理にして、法廷小説にして、近未来小説にして、本格推理小説。贅沢な小説とはこういう作品を云うのだ。こんな話。
序章ではプロメテウスが裁かれる。そして第一章では前代未聞の人造冤罪の過程が描かれる。生活苦のライターのもとに持ち込まれた悪趣味の企画。それは存在し得ない殺人事件をでっちあげ、更にDNA鑑定の裏をかいて「冤罪」を警察と司法に演じさせるという、命懸けの企画であった。無菌状態の中に隔離され、掏り換えられていく自分という存在証明、そして鏡仕掛けの狂言の幕が上がった時、真の罠の顎も開く。茫然自失の中で、開廷される第二章。弁護人は、偽りの目撃者・森江春策、そして裁くのは数十年の時を越えた復活した陪審制のもと選ばれた12人の陪審員。果して、四面楚歌、絶体絶命、無罪を勝ち取ってはいけないチェックメイトの中で名探偵に打つ手はあるのか?この世の正義の行方は、ただ微笑む月と十三番目の陪審員だけが知っている。
とにかく凄い小説である。ロスト・ワールドまで行ってしまった森江サーガではあるが、今回は「ここまでやるか?」の近未来リーガル・SFである。陪審制のない日本では、法廷推理は盛り上がらない事夥しく、大岡昇平の「事件」以前はせいぜい高木彬光の「破戒裁判」ぐらいが記憶に残っている程度で、同じ彬光でもペリー・メイスンもどきに挑戦した「法廷の魔女」はどこか漫画になってしまっている。とはいえ「然るべく」の応酬じゃあ、読んでいて面白くならないのも事実。では、陪審制度が導入されたIFの日本を舞台にしたらよいではないか、というのが一つの解決だが、そんなところで芦辺拓は満足しない。陪審制度そのものの存亡と被告の運命とのダブルバインドで名探偵を縛るのである。悪の描き方がややカリカチュアライズされすぎている以外は、文句のつけようのないオモシロ読み物。その絶体絶命ぶりでも逆転の鮮やかさでも<ペリー・メイスンの敗北>を狙った「怯えるタイピスト」を凌駕する倒叙・リーガル・SF・本格推理。もう一度いう。贅沢な小説とはこういう作品を云うのだ。傑作。


2002年2月11日(月)

◆あれこれと活動的な1日。トランクルームの下見やら、不動産屋へのヒアリングやら、お買い物やら。その間隙を縫って一軒だけブックオフチェック。前日、150冊処分しておきながら、つい買ってしまう心の弱さよ。ふっれいるてぃー、ざい、ねいむ、いず、ふるほにすと!それもダブリだもんな。
d「ヴィーナスの心臓」鮎川哲也(集英社文庫)100円
d「企画殺人」鮎川哲也(集英社文庫)100円
d「西南西に進路を取れ」鮎川哲也(集英社文庫)100円
d「透明な同伴者」鮎川哲也(集英社文庫)100円
d「葬送行進曲」鮎川哲也(集英社文庫)100円
「鬼石」佐々木禎子(ハルキホラー文庫)100円
ううむ、「密室殺人」があれば、鮎哲集英社文庫一気買いだったんだけどなあ。
◆掲示板で、石川誠壱さんから <原作の『漂流教室』に登場する「未来の象徴」は、「まだ走っていない新幹線」ではなく「まだ開通していない有楽町線の麹町駅」です。>と教えて頂く。ありがとうございますありがとうございます。そうかあ、地下鉄ねえ、2002年ともなると、東京では半蔵門線の延伸ぐらいしかなくなってきましたよねえ。>未来の駅
◆掲示板で、松本さんから、ヴァニラ・スカイの「レストランの男」は「ノア・テイラーです。」と御教授頂く。ありがとうございました。なるほど、オーストラリアの人だったんですか。「散髪して灰汁抜きしたミック・ジャガー」って感じがしたのですが、他の登場作のスチールを見るとかなり印象が変わりますね。


◆「鬼石」佐々木禎子(ハルキホラー文庫)読了


2002年2月10日(日)

◆本日未明、アクセス数が22万を突破しました。毎度ありがとうございます。
◆義母さんがパソコンを購入して、ネットに接続。設定に立ち会った奥さん曰く「このサイトも<お気に入り>に登録してきたからね」。というわけで、過去に不穏当な表現がなかったかと、結婚前後まで日記を溯る。つい、読み耽ってしまう。あほう。
◆別宅へゴウ!自分で捌く手間と閑を惜しんで、ダブリ本をジグソーさんに送る事にする。冊数にして150冊前後をダンボール二箱に詰めて発送にこぎつけるのに2時間弱。部屋の見た目は全く変わり映えしない。とほほ。
◆「仮面ライダー龍騎」第2回視聴。うわあ、これって遊戯王まんまじゃん。ここまで玩具に迎合していいのか?<仮面ライダーは「蜘蛛」で始まる>というセオリー通りに、新章開幕ですな。もう少し様子を見ましょう。


◆「不思議の国のアリバイ」芦辺拓(青樹社)読了


2002年2月9日(土)

◆二日酔で午前中を棒に振る。ぶんぶん。
◆昼過ぎからオリンピックの開会式を見ながら日記&感想書き。しこしこ
◆夜が更けてから「ヴァニラ・スカイ」のレイト・ショーを奥さんと見に行く。さすがに公開から3ヶ月経つと映画館はガラすきで、我々を入れて客はたったの3組。殆ど貸し切り状態である。内容は、トム・クルーズが惚れ込んで権利を買い取った不条理映画「オープン・ユア・アイズ」(未見)のリメイクと聞いていたが、なんとちゃんとオチがあるではないか。キャメロン・ディアスとペネロペ・クルスという活きのいい二大美人女優が共演。元気印のいい子ちゃん役の多いキャメロン・ディアスがおっかないストーカー女に真剣に取り組んでいて吉。あの飛びっきりの笑顔を見て「怖い」と思わせる演出が憎い。ブルネットのペネロペは、四肢が伸びた雰囲気が素敵。ネイティブにはあのスペイン語なまりの英語はどう聞こえるのかな?精神分析医役のカート・ラッセルもなかなかの存在感。うまく枯れて来てるよね、この人。あと印象に残ったのは「レストランの男」なんだけど、なんて俳優さんなのでしょうか?悪魔的な感じがよいです。
◆帰宅は午前様。そこから留守録しておいたNHKスペシャル「九寨湖」をBGVにして酒盛り。こりゃあ不良だなあ。ぐびぐび。


◆「ぼくはスーパーマン新入生」Bブリトゥン(文研出版)読了
短い1日だったのでウィリアム・ブルテンの童話でお茶を濁す。これも「ふしぎなふしぎなカード」の同工異曲。一種の「悪魔との契約」ものであるが、主人公が無作為であることで些か趣が異なる。8年制の小学校を終え、4年制のハイスクールに進む少年の憂鬱と、「VIP」への憧れ。大量生産風の異形の神がその願いを聞き届けたとき、主人公は登校初日にして、すべてのクラスで「A」をとり、アメリカン・フットボールのクオーター・バックに選ばれてしまう。だが、それは悲喜劇の序章にすぎなかった。チア・リーダーである銀行家の娘からは誘拐紛いに攫われダンスの特訓、生徒会ではすべての厄介事をおしつけられ、フット・ボールで手荒く揉まれる毎日。そして対抗戦の日に、主人公に最高の栄光と破滅が訪れる、てなお話。
あらためて米国の学生生活に占めるアメリカン・フットボールの重みを認識する。主人公がAを連発し、VIP待遇を与えられてしまうくだりに、作者の教師としての経験が遺憾なく発揮されており、結末まで一気読み。飛び切りのアイデアがあるわけではないが、ネット時代に突入する以前の、アメリカの少年の「今」は描けているように思う。


2002年2月8日(金)

◆職場の人間とカラオケ。3人で3時間、只管歌い続ける。飲みすぎで滅びる。購入本0冊。

◆「ブラック・エンジェル」松尾由美(光風社)読了
すっかりミステリの人になってしまった松尾由美の初期作。版元が絶版の殿堂、光風社出版であり、将来的にマニア泣かせの1冊になるかもしれない。新書サイズのハードカーバーで版型からして、うっかり見過ごしたり買いそびれたりするタイプの本である。帯には「書き下ろし長編ミステリ」とあるが、中味は音楽テーマのキャンパス・ダーク・ファンタジーなので、推理の妙味を期待すると面食らう事必定。ミステリ至上主義者にはお勧めできない。こんな話。
おれの名は加山孝二。学校では「おかまのコーちゃん」で通っている。そのおれが学園のカルトなマドンナ岡埜映子とでっちあげた部員6名の「マイナーロック研究会」にある夜、黒い天使が舞い下りる。そう、文字通り、ちっぽけな黒い天使がやってきて岡埜の心臓を一突きにしやがったのさ、岡埜の持っていた果物ナイフでね。それは、カルトなロックバンド「テリブル・スタンダード」の幻のデビュー盤に入っていたインストゥルメンタル「ブラックエンジェル」をBGMに虚空から現われた。集団幻覚なのか?それともCDに憑いた悪霊なのか?岡埜の「自殺」の謎を追う俺たちの前に、奇妙なアメリカ人サザランドが現われた時、更なる封印は解かれ静かなる変容が訪れる。
ロックの蘊蓄を散りばめながら、学生たちの気負いや倦怠、愛とすれ違いを、コンパクトなアイデア・ストーリーにまとめたお手並みはなかなかのもの。キャラクターの書き分けも達者で、特に森井芙美子という「けちでダサい」女の子は、よく書けている。この作者の代表作にはなり得ないが「異次元カフェテラス」を遥かに越える謎とツイストはあると申し上げておきましょう。もう一作、現在の筆力をもってロック・ファンタジーを書いて、ロック三部作としてプロモーションする手はあるかもしれない。


2002年2月7日(木)

◆朝、成田からの通勤快速が信号機故障でアウト・オブ・オーダー。仕方がないので内房線からの快速に乗ると、これがぐちゃ込み。ひしゃげるようにして読書する。
◆夜、今度は総武快速線が全線架線事故で普通。秋葉原周りの各駅停車でちんたらと帰る。これがまたぐちゃ込み。普段なら乗客が減る筈の快速停車駅でどんどん乗客が増えていく。ひしゃげながら読書する。おーのーれー、JR、なんぞ恨みでもあるんかい!?購入本0冊。


◆「九時間目」Bベンスン(東京創元社)読了
真面目な警察小説の書き手であるベンスンの後期作にして代表作。文庫版では途中から「脱獄九時間目」と改題されたが、勿論現在では好評絶版中。ヒラリー・ウォーの新訳紹介が進む一方で、ベンスンやらマッギヴァーンやらウォルシュやらといった旧「拳銃マーク」の警察小説群が入手困難になっているのは、残念な事である。まあ、とはいえ、いずれも比較的息長く出版されていたし、ファンも少ないので、その気になれば入手は左程困難ではないため、古本者としては「煽り甲斐がない」ゾーンの作品ともいえる。本作は、とある刑務所を舞台にした脱獄犯と警察との駆け引きを綿密に書き込んだサスペンスで、カット割りと多重視点を駆使して読者を飽きさせる事がない。こんな話。
1956年1月9日午前4時30分。マサチューセッツ中央刑務所で、脱獄が発生する。犯人は独居房の凶悪犯3名。彼等は密かに持ち込まれた2丁の拳銃を武器に、老看守と学生バイトの看守を人質にとって聳え立つ刑務所の壁に挑む。だが、偶然の審判は、彼等を再び獄舎へと追いやる。警察側の指揮をとるのは気鋭のパリス部長刑事。欲望の奴隷、腐敗した頭脳、歪んだ同情心、理不尽な怒り、狡猾な狐と獰猛な狂虎は、檻の中で智謀と暴力を振い、氷の魂に挑む。果して、脱獄九時間目に勝利を掴むのは誰?
実は、ベンスンの小説を読むのはこれが最初。とにかく、そのキャラクター造りの巧さに唸る。犯罪者側も警察側も、それぞれに「動物」に置き換えられるほどしっかりと色づけされており、仮に劇化されれば、役者は容易にその役柄を掴めるであろう。洒落た会話やら、驚天動地のトリックやら、小股掬いのツイストが欠片も見当たらないにも関わらず、緊張感を最後まで維持し、残酷劇の割りには爽やかな読後感があるのが不思議。とりあえず、翻訳が出ている分ぐらいは読んでおいて損はなさそうである。


2002年2月6日(水)

◆チャリティー市で入れ替えがないかと一応チェックをいれるが何もなし。購入本0冊。
◆本日は当家のテレビドラマの日。「ロング・ラブレター」「プリティ・ガール」をリアル・タイムで視聴。あたしゃ、楳図かずおの「漂流教室」は絵柄が苦手で読んでないのだが「ロング・ラブレター」は巧く脚色してあると思う。これほどに気合の入ったSFを、よくぞプライム・タイムに放映しているもんだ。作中「まだ存在していない<新幹線>」が登場するのだが、その名称が「いのり」。うーむ、こりゃあいいねえ。「はと」「つばめ」「こだま」「ひかり」ときて、次が「たきおん」か?と思ったら「のぞみ」だったもんなあ。自然科学から人の営みに振った手並みに感心していたら、今度は「いのり」だもんね。この言語センスには脱帽。
これって原作にあるのかな?というか原作の連載時に「のぞみ」は走っていたのか?で、ネットで調べてみると「漂流教室」が少年サンデーに連載されていたのは昭和47年第23号〜昭和49年第27号、ほんでもって「のぞみ」の運行開始が、平成4年3月14日、ほほう、もし原作にあったのだとすれば「のぞみ」を飛び越えて「いのり」だったのね。どなたか、原作にあったのかどうか、教えてくだされ。
◆「プリティ・ガール」では、稲森いずみ扮する野山花という娘を評して遣り手の人事部長が「そのうち大化けするかもしれない素材」という意味で「ガラスの破片」と呼んでいる。本日、うちの奥さんが「<ガラスの仮面>かい!」と突っ込んで始めて気がついた。おおお、いわれてみれば、主演男優も田辺誠一じゃん。いやまあ、それだけの話なんですけど。


◆「Bガール」Fブラウン(東京創元社)読了
既訳のブラウンの作品の中では、最も入手困難な一冊。東京創元社の世界名作推理諸説全集に載っているのが唯一の訳で、文庫落ちしていない。まあ、文庫に入ったからといって安心してはいられないのが創元推理文庫で、現時点での堂々の現役は「シカゴ・ブルース」と二つの短篇集だったりする訳で、せめてエド・ハンター・シリーズぐらいは常備しておいて欲しいと愚考する次第。さて、この作品の原題は「The Wench Is Dead」。直訳すれば<女は死んだ>であり、中味もまさにそんな話。
おれはハウイー。ロスの下町のしけたレストランで皿洗いをやっている。彼女の名はビリー・ザ・キッド。可憐で、飲み助で、床上手で、立派な職業婦人(Bガール)で、つまりは娼婦だ。ある夜、おれたちは酒をきらせて、ビリーの友達メイムにボトルを借りにいく。どうやらメイムは臆病者の客に振られたところ。おれは、その客が忘れていった万年筆と酒を手にビリーの許に戻りしたたかに飲み明かす。ところが、その夜、メイムは無惨に殺されちまったらしい。じゃあ、何か。犯人以外でメイムに最後にあったのは俺ってか?やばいよ、やばいよ、そりゃあ、私は実は高校教師で社会科学研究の一環でアル中の真似事をやっているだから、身分を明かせば無実を信じてもらえるとは思うんだけど、、、駄目?
お忍びで社会の最下層に潜り込むという主人公の設定は新味があってよい。彼を引き立てようとしてくれるレストラン店長とのやりとりのくだりなんざあ、泣かせるものがある。おまけに、この主人公、ミステリの主人公らしく探偵の真似事をやったりしない。ひたすら逃げ回って酒を飲んでいるうちに、事件の方が勝手に解決してしまうのである。いやあ参ったね。そして、この「驚愕」のラスト。特に結語に注目。いやはや、てなもんやで、無責任で、松竹新喜劇並みのベタな犯罪小説なのであった。


2002年2月5日(火)

◆久々にチャリティー市に遭遇。それも、降り続いていた雨がほんの間上がって店を広げ始めたところへ居合わせる。シチュエーションとしては申し分なし。ただ釣果の方は今ひとつ。こんなところ。
「よしきた三四郎」城戸禮(春陽文庫)100円
「陽光の下 若者は死ぬ」河野典生(角川文庫:初版・白背)100円
「未来世界 デロス・ワールドの謎」JRホール(番町書房・イフノベルズ)100円
「怪物」Aピアース(東京創元社)100円
「鉄仮面」デュマ/高木彬光訳(偕成社)100円
「紳士は金髪がお好き」Aルース(大和書房)100円
デロス・ワールドが嬉しい程度で、後は無理矢理買ったようなもの。とりあえず久々にまとまった冊数が買えてそれなりの満足感。他に、偕成社版のルパンやホームズが転がっており、ルパンは初見。もっぱらポプラ社版しか見た事のない者にとっては新鮮。1巻から7巻まで並んでいたが重いのでスルー。そのあと直ぐに、再度雨が降り始めた事を考えると買わなくて正解だったですかね。
◆おお、青月にじむさんも日記で「本の雑誌」2月号の鼎談を取り上げてくださっている。その中で、再認識したのが、新刊読みのにじむさんは、彼女の10倍以上の冊数を買ってる古本者よりも、一ヶ月にかける本代が多い、って事。そうか、そうだよなあ。さあ、あなたも読書の暗黒面にいらっしゃーいませんかあ。一冊100円ですよお〜。
◆別宅でSRマンスリー最新号と創元推理倶楽部秋田分科会からの「金田一耕助読本」への参加要領を回収。マンスリーでは、Moriwakiさんの「佐々木丸美再評価」やら、やよいさんの島田一男続報やらを拾い読み。またいよいよホームページ開設に本腰が入る模様。さあて、どうなりますことやら。秋田分科会については、参加したいのだけれど、何を書いていいか判らないぐらい金田一には思い入れがあって困ってしまう。まあ、6月までには何か書けるでしょ。
◆「ムジカ・マキーナ」ハヤカワから5月に文庫化決定!作者御本人のページでも解禁になったようなので、「おめでとーございますー」。イラストは誰が描くのか今から楽しみである。


◆「御伽草子」水木しげる監修(PHP文庫)読了
御伽草子を題材にした書き下ろしホラーアンソロジー、と書くと誇大広告で公正取引委員会から警告を受けかねない作品集。というのも、いわゆるビッグネームの京極夏彦・水木しげる・井沢元彦の収録作はそれぞれに過去作であり、他の作品集で読めるからである。加えて、いわゆる御伽草子の作品と被らないテーマも多く、はっきり言ってこの作品集、「企画倒れ」であり「看板に偽りあり」なのである。本屋で買っていたら怒るよ。救いは、ファンタジーの書き手たちが夫々に力作を寄せて、編集の無能をカバーしているところ。以下、ミニコメ。
「カムイコタンの羽衣」美の化身を写しとった男が遭遇した魔の刻、霧の向こうの因果が溶ける。軽快なギョーカイものの筆致で描かれた北の羽衣伝説。二段落ちがまずまず。
「枕中記」功なり名を挙げた男が、半生を振り返る時、すべては振出しにもどる。その声に応えてはいけない。ありふれた設定を、格調高く語り挙げた作者に軍配。
「わたしはうさぎ」危険な隣人は、被害者の顔をして擦り寄ってくる。たぬきとうさぎのばかしあい。「たぬき汁」にされたのは誰あれ?これは全編「毒」の固まり。ラストはどこまで深読みすればいいのだろうか?
「小豆洗い」勿論、巷説百物語の記念すべき第1話である。傑作に決まっている。特に音読するといいんだ、これが。しかし、これを再録するかね?
「雨女」雪女のバリエーションだが、凍ってない分、生臭い。最終ページにはのけぞった。これは水木しげるだから許されるのであって、普通の漫画家がやったら間違いなく「ダメ」がでちゃうところである。
「乙姫の贈り物」行きずりの乙姫を助けた男は、豪奢な屋敷で贅を尽した歓待を受ける。だが、空白の1日に悪意の罠が作動する。悪くない話ではあるが、なぜ、これがホラー集に入っているのか疑問。浦島太郎ネタのホラーであれば他にもありそうなものだが?
「狂鬼、走る」博多の街を恐怖の巷と化した殺人鬼の正体とは?若い海洋生物研究家は南の海で笑顔の下の憎悪に出会う。成長する復讐の器、仮借なき暴力、そして文明への葬送曲は肛門でひりだされる。作者ならではのスプラッタ描写が光る。ネタとしては手垢のついたものだが、この純粋な悪意には参る。
「C10H14N2と少年」虐められっ子とホームレスの老人の友情。だが、それは単なる思い込みの産物かもしれない。湖畔の喘ぎ、無意味なる死、そしてどこまでも乾いた心。やはりこの作者は凄い。読者の予想を裏切る天才。とても「痛い」お話。
「百日紅の家」不倫の心に忍び込む息子の生霊。忘れられた生と死の葛藤が百日紅の下から助けを求める時、父は帰る。
「蜃気楼」堂々たる中国活劇ファンタジー。丁寧であり、大作であるが、健全に纏まりすぎていて、華がない。


2002年2月4日(月)

◆おお、銀河通信の安田ママさんがフォーマルハウト日記から「あなふる日記」(「ふるさとは、夏」の感想)に直リンクを張ってくだされたぞ。慶賀慶賀。作者から「感想」に「感想」を頂くのも嬉しいのだけれど、同好の士から評価してもらうのも、これまた嬉しいものなのである。
◆おお、山村まひろさんの「うたたね日記・日常編」で、本の雑誌2月号の古本座談会が紹介されているではないか。更新されてますリンクが「読書日記」直行なので、日常日記の方はついでの時にしか見ないんだよなあ。どうやら山村さんのご主人が御三家の誰かを御存知とか。ううむ、一体誰なんだろ〜?谷甲州ファンで三国志ファンの天羽さんって知ってる?>よしださん、土田館長
◆一軒だけ定点チェック。
d「レイン・ソング」フィリス・A・ホイットニー(サンリオ・モダン・ロマンス)140円
「御伽草子」水木しげる監修(PHP文庫:帯)350円
PAホイットニーは、最初に見かけた本屋の同じ棚でダブリに遭遇。これは、捜している人がいるかな?PHPのホラー・アンソロジーの3冊目は出ている事を知らなかった。昨年の11月の出版らしい。普通、書店じゃPHP文庫の棚って確認しないもんね。


◆「詩人と狂人たち」GKチェスタトン(創元推理文庫)読了
「おかしな二人連れ」奇妙な二人連れが鄙びた宿屋に辿り着いた時、商才は昇る太陽を復活させる。そして新たなる地主の登場は狂った心に滅びの火を点す。詩人にして画家ガブリエル・ゲイル颯爽登場。どこかブラウン神父の登場譚「青い十字架」を彷彿とさせる、逆転の構図が嬉しい。
「黄色い鳥」画想を練る半眼が黄色い鳥を捉えた時、谷間に住むロシア人の哲学は、開放に向って暴走を始めていた。狂気の暗示、死のカウントダウン。ゲイルの超論理は生存への道をひた走る。巧い。
「鱶の影」窓から窺う鱶の顔。そして、足跡のない砂浜の死。切り裂かれた首。それはあまりにもカー的な物語。不可能趣味と怪奇趣味が一体になった作品だが、それはまた馬鹿馬鹿しさと背中合わせでもある。
「ガブリエル・ゲイルの犯罪」ついに狂気は伝染したのか?無辜の人に突如襲い掛かり、兇器とロープでゴルゴダの丘を再現しようとするガブリエル。そして真相もまた「神の御業」なのであった。鮮やかなる逆転。日本人には発想不能の逸品。
「石の指」進化と神学の相克。招聘は謝罪のためか、それとも別の罠なのか?偉大なる学者は隠すよりなお現われ、殺意は化石となる。これも無垢な詩人の観察眼を以ってしか見抜けない罪の姿。とんでもぶりでは、本作品中の白眉。
「孔雀の家」果して十三人目の客は招かれざる客なのか?運命が犠牲者を宴に招くとき、詩人は似て非なる符合を指摘する。叙述の妙が光る狂気のアクロバット。不条理は狂気によって理に落ちる。話の構造が見えないうちに、びっくり箱に誘い込まれる作品。
「紫の宝石」怒れる劇作家の失踪に秘められた謎。それは、高潔なる魂の昇華だったのか?はたまた卑俗なる嫉妬の果てか?同業のよしみで出馬したゲイルはカンタベリの伽藍だけが見ていた真実を暴く。これもブラウン神父ものに類似ネタあり。ゲイルものとしては平凡作。
「危険な収容所」狂人たちの集う園で詩人は、狂人が狂人でなければならない理由を指摘する。シリーズの前日談にして後日談、ここにガブリエル・ゲイルと狂人達の挿話は幕を閉じる。きれいに環を閉じてみせた作者の手際に拍手。


2002年2月3日(日)

◆午前中、氷雨に外出意欲を削がれ、家でうだうだと過ごす。読書感想もはかどらない。夕方、雨があがった頃に定期券を買いにいきがてら、ヨドバシカメラを覗く。DVDが10%引きの15%ポイント還元。ううむ、安い。しかし欲しいものは数限りなくあるので、涙をのんでスルー。代わりに、先週の「あるある大辞典」で紹介されていたマイナスイオン発生器を発作買い。帰宅して組み立てると、要は自動霧吹き機のようである。こういう効果が眼に見えない製品ってのは、何を信じてよいのやら。自分か?>一番、あてにならーん!
◆「TRICK2」<episode1:六つ墓村編>第2話・第3話(完結編)までを視聴。おお、面白くなった。メインの伏線は、読めたが、上手に捻ってあって吉。ただ「当初予定されていた犠牲者」は誰だったのか?が疑問として残る。もしや、上田?くるくる。
◆いまどき「アギト」最終回を視聴。甘い大団円にゲンナリ。作り方次第でいくらでもハードボイルドなエンディングが可能であったろうに。おまけに、謎は謎のままテンコ盛りで積み残し。ああ、フラストレーションが溜まるうう!!
結局ギルスは何だったの?アギトの不完全変態形?
んじゃ、なんで、葦原涼はギルスに選ばれたの?
アンノウンって、つまるところ何だったの?
黒服の創造主が遺伝子から誕生したくだりは何だったの?
黒服の創造主が、マシントルネーダーをスライダーモードにに変形させるときにアギトに肩入れしたのはなぜなの?
真魚の父親を殺したには誰なの?
なんで、アンタレスが移動して、蠍座の人間を殺していったの?
うーむ、全く納得いかんぞお!!誰か教えてくれええ。
ラストの「翔一スペシャル」はエヴァ最終回の「拍手」を思わせて、心底とほほである。ああ、途中まで面白かっただけに、辛いなあ。大風呂敷を広げるだけ広げて畳まないまま首に巻いて去っていきやがった。とう!
◆新シリーズ、仮面ライダー龍騎は、前半15分だけ視聴。妙にレトロな造りが笑えるが、テイストはライダーというより宇宙刑事に近いかも。とりあえず、何話か見てみましょう。


◆「深川澪通り木戸番小屋」北原亞以子(講談社文庫)読了


2002年2月2日(土)

◆家事やらお出かけやらで、古本とは無縁な一日。WOWOWで「ロマンシング・ストーン」を「ながら視聴」。今ひとつ緩急の付け方がぎこちないドタバタ冒険ものだが、ロマンス作家の生態が窺えたので許す。そごうで、やぶそばを食べて、三省堂ではエッセイやら実用書の類いを立ち読み。そうか、世の中の人は、こんな本を読んでいたのかあ。
◆帰宅して積録してあった「TRICK2」の第1話を視聴。過剰演出が鼻についてやや辛い。小ネタへの異常なまでの執着ぶりにはアタマが下がるが、お笑いよりも、推理手品をもう一つぐらい交えて欲しかった。
◆引き続きこれも積録しておいた「13デイズ」を視聴。こちらは凄んげえ面白さ。2時間半弱の長さを感じさせない緊張感溢れる政治ドラマ。画面は地味だが、史実の重みと映像の厚みで惹きつける。「キューバミサイル危機が回避された」という歴史は知っていても、その経過がどうであったかなんぞについては全くの無知だったものだから、大いに啓蒙されてしまった。ああ、アメリカ万歳!>思うツボか?


◆「メビウス・レター」北森鴻(講談社)読了


2002年2月1日(金)

◆残業後、一軒だけ、チェック。ううむ、何もない。帯買い1冊。
d「スペードの女王」横溝正史(角川文庫:帯)150円
本自体は再版だが、帯は「ザッツ・エンタテイメント、角川文庫グリーンフェア」帯。とりあえず、「新刊」帯の変形と認定して買う。誰が認定するかというと、私が認定するのである。しくしくしく。ああ、何か買うものをくれえええ。
◆奥さんとワインやら水割りやらをしたたか飲む。お互いの友達の話をしているうちに、なんと「朝刊暮死」「コール」の結城恭介氏が奥さんの小学校の同級生だったという事が判明。といっても、奥さんが知っていたのは「美琴姫騒動始末」などのごく初期作のみで、その後の活躍は一切知らぬまま。ネットで御本人のホームページをみて、きゃあきゃあ喜んでいた。なんでも、小学生時代から学級新聞やら、班ノートにマンガを描いておられたとか。やっぱり小説家になろうという人は、子供の頃から息をするが如く創作するのである。


◆「われ巷にて殺されん」紀田順一郎(双葉NV)読了