戻る


2000年1月16日(火)

◆掲示板にも書きましたが、拙サイトの掲示板への書きこみ数が5000を越えました。臨時掲示板の分をカウントすれば、もう100前後は行くのですが、とりあえず50件毎の過去ログが100という三桁を達成出来た事を寿ぎたいと思います。1年と4ヶ月半で5000と言う数は、1日10書きこみをコンスタントに頂いたという計算になります。まあ、10%弱は私のレスだとは思いますが、それでも、よくぞここまで書きこんで頂けたものだ、と素直に喜んでおります。ホームページの魅力の拠って立つところは「双方向性」にあると信じている人間にとって、掲示板は運営が大変ながらも絶対外せないアイテムでありました。ここのところ、思いっきりレスをサボリ気味なので申し訳ございませんが、今後とも拙掲示板にご愛顧賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
◆芳林文庫ショックの余韻を引きずりながらも定点観測。
d「殺人列車は走る」鮎川哲也編(徳間文庫)200円
「市長、お電話です」草上仁(早川JA文庫:帯)230円
「半七捕物帳」岡本綺堂(講談社大衆文学館:帯)50円
「インド宮廷殺人事件」新谷識(双葉NV:帯)100円
「迷走航路」今井泉(潮出版社:帯)100円
「世界拳銃図鑑」山梨賢一(立風書房・ジャガーバックス:裸本、印)100円
鮎哲は、スターターセット用にと思って拾ったら、抜けていたのは5巻目だった。くそう。ジャガーバックスは初見。「ふーん、これが噂の叢書かあ」と捕獲。中味もなかなか楽しくて、メカ音痴の私には、丁度いいぞお。JA文庫の草上仁はこれで15冊揃う。さあ、あとは文庫落ちしてないゾーンだあ。
◆帰宅すると川口文庫のカタログ到着。はあ、やっぱり安いよなあ。また、頼むのかなあ。頼むんだろうなあ。ふう。もうひとつでかい本が到着。某所から出た「定本人形佐七読本」。なんと480ページの大作。春陽文庫収録作全話レビューに浜田知明氏入魂の完全リストもすごけりゃ、正史の佐七以外の時代小説リストも圧巻。加えて未収録作品にテレビ脚本と、なんとも贅沢な造り。一応、寄稿している関係でタダで頂戴できてハッピーラッキー。


◆「精神交換」Rシェクリイ(早川SFシリーズ)読了
シェクリイの文庫落ちしていない長篇作品。本を選ぶ時に「作者への信頼」というのは誠に大事なものであり、私の場合、何よりこれが先に立つ。長篇の切れ味は今ひとつとは申せ、そこはシェクリイの事、それなりの作品に仕上がっているであろうと思い、今日の課題図書にしたところ、これが「とほほ」ものの大ハズレ。いやまあ、枝葉末節を飛ばして読めば、そう腹もたたないのであろうが、作者の意図はその枝葉末節にありそうなので、辛い。訳者たる井上一夫が、あとがきでぼやく事ぼやく事。原書への無責任な煽りや書評に対して噛付いているところからしても、相当腹に据えかねたと見える。確かに、この話は訳者泣かせ。何せ、キャラクター達が「(それらしい)わけのわかならないこと」を延々まくしたて、展開はひたすら不条理。一体、自分が正しくこの書の意図するところを日本語に置き換えているのかどうか不安になろうというものである。梗概を行う事にどれほどの意味があるか疑問だが、とりあえず、無理を承知で紹介すれば、こんな話。
時は未来。アメリカの田舎町スタンホープに住む主人公マーヴィン。当年とって31歳の彼は、宇宙旅行への憧れを押さえ切れず、遂に火星人との精神交換に応募する。首尾良く火星人ゼ・クラガッシュと精神交換できたと思ったのもつかの間、なんと相手はとんでもないくわせ者で自分の身体を十数人に及ぶ他の宇宙人に売りつけていたのである。それに気づいたマーヴィンが自分の体に戻ろうとすると、クラガッシュは既に逐電した後。肉体の占有権を失ったマーヴィンの命は残すところ6時間。かくして、大宇宙を股にかけたマーヴィンの精神転移と自分の捜しの旅は幕を開ける。火星人刑事は連続158回の逮捕失敗に胸をはり、メルド星のガンザーの卵はしゃべくりながら跳ね回る。隠者は詩でバリアを張り、鼻先に時限爆弾をぶら下げた外骨格生物の官吏は絶世の美女と出逢う。追うためには待つ事が一番で、個は抹消できず単一にして、外界を感ずるものにはあらず。剣劇の後には友情と陰謀が渦巻き、大道具が撤去された時、禁断の時空への扉は開かれる。かくしてマーヴィンは、根本的混乱の過程に一瞬だけかすめ去る過程の放射に立つ。ああ、もうなにがなんだかわからんぞ。
全編これ、言葉遊びと暗喩を不条理な展開に織り込んだ実験的ハチャハチャSF。ところどころ爆笑ネタがないではないが、このドラマという形式をとことんおちょくりたおしたプロットには正直辟易とした。論理は蹴飛ばされ、哲学は嘲笑され、常識は捨象される。ここはどこ、わたしはだれ?わたしは読者。読者なぞいない!なるほど、これは文庫落ちせんわ。納得。って、そんなとこぐらいでしか納得するところがないのだ。井上一夫先生に花束をあげてください。


(今月入手した本:251冊、今月処分した本:8冊、今年の増減+243冊)


2000年1月15日(月)

◆寒い1日。芳林文庫に代金振込み。一気に懐の寒い1日。身体の中を風が吹く。鶴居村から鶴が来る。はあ、鶴が来るったら、鶴が来る。くええ、くえええ。購入本0冊。
◆らじ丼御礼ダブリ本送本。茗荷丸さん、SPOOKYさん、葉山さん、今しばらくお待ちを。


◆「帰ってきたイモジェーヌ」Cエクスブライヤ(ポケミス)読了
スコットランドに限りない誇りを抱く赤毛の大女イモジェーヌ・マッカーサリー・シリーズの日本第2作。この著者の作品も、サイトをオープンしてから再発見。フランス・ミステリに対する既成概念を木っ端微塵に打ち砕くその活きのよいドタバタぶりにノックアウトされっぱなしで、かつての積読作家は、今や「読むのが勿体ない」作家に昇格してしまった。アメリカ産のペーパーバックを闇雲に紹介するよりも、こういう作家の作品をきちんと系統立てて紹介して頂きたいものである。つくづく読売新聞社のフランスミステリ・シリーズや、教養文庫ミステリ・ボックスの趣味の良さが懐かしい。売れなかったんだろうなあ。閑話休題、このイモジェーヌ日本第2作では、海軍省を定年退職した彼女が、いかにも英国な学校ミステリに挑む。こんな話。
イモジェーヌが故郷キャランダーの街に帰ってくる。かつてキャランダーを舞台にした一大スパイ事件を首尾良く解決した彼女の破天荒な活躍に喝采を送った人々が歓迎ムードで盛り上がる一方で、マクロストー巡査部長を初めとする一部の彼女の「被害者」たちは陰鬱な日々迎えていた。海軍省で涙の別れを終え、帰還したイモジェーヌ。おしりもキャランダーの町は、毎年恒例のドーンとの対抗ラグビーで興奮状態。その試合の狂乱の最中、イモジェーヌをはるばる尋ねてきたパース州ペンバートン校の英国史教諭フラートンが刺殺されてしまう。彼は、「学校で誰かが非業の死を遂げる」という情報をもって、イモジェーヌにその防止を依頼に来たのであった!帰郷当初はしおらしく猫を被っていたイモジェーヌはこの日を境に本領を剥き出しにして、卑劣なる依頼人殺しに突撃していく。海軍省のコネを最大限活用し、英国史教師としてペンバートン校に乗り込んだ彼女を待ち受ける、哀れなる教諭陣と生徒たち。イモジェーヌは学校の表と裏のルールの総てを破壊しながら事件を追う。数学教諭は吼え、校長は発狂寸前、巡査部長は自殺を決意し、学校のパトロンの子弟は音も高らかに平手打ちを食らう。イモジェーヌが堂々と誤った犯人を指摘した時、男と女の罠は醜いその姿を晒す。
もうのっけからノリノリ。イモジェーヌと彼女をとりまく人々の言動・行動が鮮やかに描かれ、海軍省での感動の別れから、帰郷後のラグビー試合まで涙と笑いの連続である。更に、舞台を学校に移してからのイモジェーヌの無軌道な暴れっぷりは痛快の一言。英国学校ミステリの伝統と威厳を空の彼方に吹き飛ばす作者の筆は実に快調である。とことん戯画化されたスコットランド人像が随所で笑いを誘う。特に、学校の大パトロンとイモジェーヌの対決シーンは圧巻。まあ、エクスブラヤが日本を舞台にミステリを書けば、昭和40年代に、福島は会津出身の教師が、明治政府はけしからんと、ハラキリをかけて九州出身の教師に喧嘩を売るというような話になるんでしょうな。で、犯人は誰でもよくなってしまうのもお約束。頼むから、どこぞエクスブライヤの作品を出してくれる良質な出版社はないものか?お勧め。

(今月買った本:245冊、今月処分した本:8冊、今年の増減+237冊)


2000年1月14日(日)

◆仮面ライダークウガもいよいよクライマックス。リアルタイムで視聴。なんだかエヴァンゲリオンだよなあ。第0号ってカヲル君だよねえ、誰が見ても。特にBパートは、ヤオイな皆さんが卒倒しそうな程ツボな展開だったのでは?
◆昨日の日記をつけ終わると正午を過ぎていた。パソコンのバックアップを行うために借りてきたCD−Rドライブを付けようとするがうまく動作しない。ああ、これは当分、今の状態が続くなあ。とほほ。
◆さすがに古本を買う気は起きず、本屋で新刊1冊とマンガを2冊。
「『探偵春秋』傑作選」ミステリ文学資料館編(光文社文庫:帯)724円
相変わらずナイスな造りであり、企画も10巻まで延びたようで、慶賀の極み。ただ、我孫子武丸のやる気のない小文は、はっきりいって不要。明らかにミス・キャストである。


◆「闇から生まれた女(上・下)」Fポール・ウィルスン(扶桑社文庫)読了
<久しぶりにモダンホラーでも>と思い「ナイトワールド」サーガとは切断された二重人格・サイコものを手にとった。売れないSF作家から、モダン・ホラーに転じて金脈を当て、メディカル・サスペンスにも手を染め始めた作者だが、「城塞」を角川文庫で読んだ時の興奮を越える作品には未だに出会えない。このいささか読者サービス過剰な作品も、<双子ネタ>のツイストで器用なところを見せるが、「まあ、お約束」レベルのお話。
ニューヨークの毒に染まった一人の女の転落死。死の直前まで、二人の男を銜え込み、その界隈では発展家として有名だった淫乱女ケリー。だが、彼女は真面目な看護婦としての昼間の顔を持っていた。誰もが「ミスター・グッドバーを探して」的物語として消化してしまう都会の挿話。だが、その「物語」を断固信じない者が一人いた。それはケリーの双子の妹カーラ。10年前、ニューヨークで強盗に遭ってから、ボーイフレンドとも別れ、故郷に戻り女手一つで娘を育てながらフェミニズム・ジャーナリストを目指す彼女。カーラは死体の身元確認に訪れた病院で、かつてのボーイフレンドであるNYPD三級刑事ロブとの再会を果たす。すべての状況証拠は、ケリーの自殺を示していたが、その事実を受け入れ難いカーラは、ケリーの掛かり付けの精神医ゲイツに接近する。一度は、医師の倫理を盾に、ロブともとどもカーラを追いかえしたゲイツが、掌を返すように彼女を呼び戻し打ち明けたケリーの症状とは「二重人格」。なんと、ゲイツは双子の妹であるカーラにも別の人格が潜んでいる可能性を指摘する。そして、その日を境にカーラの周りで不可思議な出来事が頻発するようになったのだ。果して、それはカーラのもう一つの人格の仕業なのであろうか?徐々に侵されていく昼の世界。やがて人格の影に潜む語り手がその正体を現し、事件は新たな生け贄の血で染め上げられていくのであった。
二重人格モノに双子ネタを絡め、はしたない超能力でデコレーションした今どきのモダン・ホラー。ロブとカーラとその娘ジルの交感ぶりが実に微笑ましく、それゆえにクライマックスの緊張感が引き立つ。作者は中盤でネタを割って、お得意の「光と闇の闘い」に持って行くのだが、ここからが映像不能。これを演技で表現できたら凄い。ベビー・フードの使い方が巧いんだなあ、またこれが。性描写は相当に露骨で、R指定どころか間違いなくXX指定。女性が読むと相当に「厭」感の強い話であろう。いつもと同様、読みやすさは抜群なので、暇つぶしには持ってこい。「お好き」な方はどうぞ。

(今月買った本:245冊、今月処分した本:7冊、今年の増減+238冊)


2000年1月13日(土)

◆芳林文庫の荷物がどっかーーんと届く。なんと「半分も当たりゃいいか」と思って申し込んだ雑誌・同人誌の類いが「妖奇」を除いて殆どすべて当たってしまったのだああ。1月半ばにして今年の古本資金のすべてを使い果たす。というか一生分の古本資金かもしれない。嬉しいような、哀しいような。以下、リストについては、敢えて値段を省く。一回の買い物としては生涯最高額とだけ申し上げておく。はあ(溜め息)、まあ当分、芳林文庫のカタログが出ないのが救いかな。単行本の方は、申し込みの3割程度の当選率。まあこの辺りが適正な「当たり」なんだよなあ。
「犯罪発明者」甲賀三郎(東方社)
「久生十蘭全集全7巻※重版」久生十蘭(三一書房)
「淫神邪教事件」梁取三義(採光新社)
「猶太人ジリウク」Gシムノン(春秋社)
「黒衣の魔女」高木彬光(ポプラ社)
「マンハント」全66冊揃い(久保書店)
「推理小説研究」全21冊揃い(日本推理作家協会)
「黒猫」全11冊揃い(イヴニング・スター社)
「新探偵小説」全8冊揃い(新探偵小説社)
「マスコット」全7冊揃い (銀柳書房)
「怪奇探偵クラブ」<オール読切別冊1号><別冊2号>
「怪奇探偵クラブ」1巻2号・4号
「探偵クラブ」2巻2号・7号、3巻2号・4号・7号・9号・10号・11号
同4巻1号・3号・6号・9号・10号・11号
同5巻9号・11号、6巻4号・9号・11号、7巻3号・5号(共栄社
「探偵実話」3巻6号・11号・12号
同4巻1号・2号、5巻1号・2号・3号・5号・10号・11号
同6巻12号、7巻1号・3号・7号・10号
同8巻3号・6号・11号・12号・13号・15号・16号(世文社)
「密室」1巻3号・4号、6巻1号、7巻1号・2号
同8巻1号 ・2号、9巻1号・2号、10巻1号(SRの会)
「みすてりい」4冊一括(推理小説研究会)
ついにマンハント一気買いに成功する。これまで2度逃がしてきているだけに半分意地になっていた。そういえば「犯罪発明者」や「淫神邪教事件」も、すれ違いの多かった本。シムノンのジリウクや高木彬光の神津ものも嬉しいぞお。嬉しいんだってば(やけくそ)
◆東千葉のブックオフで2冊拾う。
d「殺人は女の仕事」小泉喜美子(青樹社NV)350円
「ソー・ザップ」稲見一良(大和書房)100円
あーあ、また小泉喜美子拾っちゃったよ。これは久しぶりにヤフー・オークションにでも出そうかなあ。少しお遣い銭を稼がねば。
◆業務連絡:ダブリ本プレゼント第5順位:茗荷丸さんは「ハイチムニー荘の醜聞」を選択。選択権は第6順位SPOOKYさんに移行しております。


◆「銀河系の悪魔」Jブラナー(徳間NV)読了
昭和50年代初頭に、徳間ノベルズから発作的に出ていた「スペース・アドベンチャー・シリーズ」の4巻目。巻末に野田昌宏大元帥の「スペース・アドベンチャーへの招待」というエッセイが連載されていた事で知られるB級スペオペ・シリーズである。この叢書、はっきり言って、スタートレックの2冊だけを押えておけば充分という噂もあるのだが、古書価も割と手頃なので、結局集めるとはなしに集まってしまった。Jブラナーといえば、「幻影への脱出」「衝撃波を乗り切れ」のようなハードでサスペンスフルな作品をものする一方で「テラの秘密調査官」の如き箸にも棒にもかからないお手軽スペオペも書いているのだが、この作品は勿論後者のタイプ。梗概をつけるのも虚しい話ではあるが、とりあえず、こんな話。
はるかなる未来、太陽系は宇宙の蛮族ヴォラ星人に蹂躪され、人類は彼等の奴隷と化していた。亜空間駆動式航行法という科学力を持ちながら、日常は氏族間の対立に明け暮れる封建制度のもと、蒸気機関と馬力しか有していなかったヴォラ星人にとって、地球人もたらすの精巧な機械文明と精妙な文化を生活に取り入れることがステイタスシンボルとなっていた。主人公ガレス・ショウは、ヴォラ第二の氏族プウィルの二代目の家庭教師を務めた事が縁となり、ヴォラの母星でプウィルの正室に従者として仕えている。そのガレスが第九夫人シャヴァーリの密命を帯びて、ヴォラの地球人居住区へ赴く時、ヴォラと地球の社会構造を根底から覆す、密やかなレジスタンスの幕は開く。究極の媚薬を手にしたシャヴァーリの思惑、地球産嗜好品の虜となるプウェル・ジュニアの狂騒、支配者たちの糜爛し退廃した日常の影で、ショウの既視感は記憶の封印を解く。歪な進歩を遂げたヴォラ科学に隠された「伝説」とは?大宇宙を舞台にした権謀術数に終止符を打つのは、果してヴォラか、テラナーか?
「一部分だけ異常に発達した科学力を有するヴォラ星人」という設定は、なかなかにSF心に満ちており、結末において示唆される真相にはいささか驚いた。地球のとある嗜好品がヴォラにとっての強力な麻薬となるなどのアイデアもそれなりに楽しめる。まあしかし、全編これ御都合主義の固まりであり、主人公の格好良さの以前に、「敵」の愚かしさが立ちすぎ。ダイナミック・プロの安っぽい挿し絵が妙に似合ったお手軽スペオペ、というのが適正な評価であろう。翻訳スペオペ完全読破を決意した人が読めばいい話でありましょう。

(今月買った本:242冊、今月処分した本:7冊、今年の増減+235冊)


2000年1月12日(金)

◆仕事でばたばた。待機残業の間に掲示板にレス付けなど。そのまま外食行。購入本0冊。ちっ、こんな日用に、「川柳」はとっておくべきだったよなあ。
◆帰宅すると芳林文庫からの荷物の不在票が入っている。「ふっふっふ、これは、明日のお楽しみだねえ」と、ふと梱包数をみると、さりげなく「3ヶ口」と書いてある。うわあああ!なんじゃ!こりゃ!?マンハントの揃いでも当たったのかな?ううう、いかん、これでは土田さんを越えてしまう、やばい!やばいですぞおお!!果してkashibaは、「日本一古本を買う男」土田さんを下回る事ができるのか!?読者諸氏よ!刮目して待て!!(やけくそ)
◆業務連絡:ダブリ本プレゼント第4順位のらじ丼は「不確定世界の探偵物語」をご選択。選択権は第5順位:茗荷丸さんに移行しております。


◆「世界線の上で一服」早見裕司(プラニングハウス)読了
ガイバーのノベライゼーション作家、吸血姫の脚本家、横溝島の網元などとして知られる作者が背水の陣で世に送ったオリジナル長篇ファンタジー。初期の2作のオリジナル「夏街道」「水路の夢」も一応既読ではあるが、正直余り感心しなかった。超能力少女の物語なのだが、主人公対「敵」あるいは作者対読者の闘いのルールが見えないままに、なんとなく話が終ってしまうのである。純粋ファンタジー読みであれば、また違った読み方をされるのであろうが、小説を読む時に(たとえそれがみせかけであっても)「フェア・プレイ」を期待するミステリ読みとしては「キャラばかり多い、起伏の乏しい普通の小説」という印象を抱いた次第。
ところがそれに引き替え、この9年ぶりのオリジナル作品は滅法面白い。プロットがエンタテイメントの技法に適っている上に、作者の分身とも言える男女二人のキャラクターが実に立っている。美形の敵役はどこかユーモラスであり、脇役たちにも夫々存在する意味がある。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」著者乾坤一擲の幻想私小説は、こんな話。
雌伏有余年、ブレイク・スルーを期して書き上げた「おとなの小説」に没を食らい意気消沈する僕ことジュニア小説家・香坂七夜(筆名)。そんな僕の前に現われたいまどきの元気印美少女エリス。彼女は、博士のお使いのついでに僕をトウキョウの町中を引き回し、夢見る名人たちに引き合わせていく。だが、その名人たち、古本屋のおばばは映画スターを目指していた頃の自分を、パーツ屋のオヤジは高校球児だった頃の栄光を、軽食屋のおねえさんはポップス歌手として舞台で絶唱する姿を夢に見たため、なにやら浮かぬ顔。彼等に見果てぬ夢を与え心の平和を奪った者こそ、夜の化身「亜影王」。エリスの最も弱い部分に「亜影王」の攻撃が及んだ時、彼女の怒りと悲嘆は頂点に達する。そして僕が、審判者たる自己を悟った時、「亜影王」は姿を現す。甘美な、あまりにも甘美な夢を携えて。黄昏に響くは、三味線バンジョー。記憶のかさぶたは引き剥がされ、生きている穴から漏れ来る未来の光は過去の影を暴く。コーキンツ機関が青く泡立つ時、回れ、世界輪!忘却の井戸の底から遠い約束を取り出すために!
心優しきキャラクターたちが、丁寧に紡ぎあげる新しい都市伝説。周到に張られた伏線がシンメトリーに炸裂するクライマックスの興奮は一級品。「僕」が見る作家としての栄光の白日夢は、爆笑必至であり、畳み掛けるようなツイストに酔う。いいぞ、いいぞ!これぞ、エンタテイメント。ここに長篇ファンタジー作家・早見裕司の長い休暇は終った。ファンタジーという店の客人たちよ、この言葉で彼を迎えようではないか。「お帰りなさい!」

(今月買った本:56冊、今月処分した本:7冊、今年の増減+49冊)


2000年1月11日(木)

◆安田ママさんの勤め先で新刊購入。
「失楽園殺人事件」小栗虫太郎(扶桑社文庫:帯)705円
d「火の接吻」戸川昌子(扶桑社文庫:帯)667円
「天狗岬殺人事件」山田風太郎(出版芸術社:帯)1700円
「資料・源氏鶏太」高杉方宏(フリープレス:帯)2286円
気がつけば、日下さんの編集本と自費出版だけじゃん。うーん、ハルとかデュ・モーリアとかも早く買わないとなあ。ところで、「火の接吻」の著作リストや「資料・源氏鶏太」をみていて、昨日の買い物が結構当たりだったことが判明して嬉しくなる。やるじゃん、蠍座。それにしても、源氏鶏太の怪奇ものって意外と文庫落ちしてないのね。源氏鶏太なんて全作品文庫で読めると思っていた私の認識が甘うございました。これは地獄道。まあ、土田さんの邪魔しない程度に頑張ろーっと。
◆ついでに、昨日覗いた駅のワゴンも一応チェック。
「青空に虹が」富島健夫(ソノラマ文庫)100円
「ビーナスの首」菅原有一(秋元文庫)100円
おお!昨日に続いてソノラマの二桁台が!しかも、表紙は樹村みのりだ!更に背表紙がピンクではないかああ!!うーむ、「マンガ研究生」以外にもピンク背があったのかああ!!これは買いだよなあ。作者も中味もこの際関係ない、って感じ。富島健夫のファンが見たら怒るだろうなあ。
◆森さんに2冊(春陽文庫他1冊)、越沼さんに「永遠の森」発送。
◆ふと川柳をひねっていたら、はまってしまった。

・品切れを 復刊フェアで 知るオヤジ

・「あっ、それは、ネタばれだね」と言うネタばれ

・積読は 心の天国 床地獄

・本の山 売ったお金で 本を買い

・無残やな 書棚の下の 署名本

・行列の 先頭に立つ 顔馴染み

・「何故ここに?」そういう貴方は 何故ここに?

・通番が なけりゃ買わずに 済むものを

・読めりゃいい 函・帯つきなら もっといい

お粗末さまでしたあ。


◆「ポーをめぐる殺人」Wヒョーツバーグ(扶桑社文庫)
私立探偵ホラー「墜ちる天使」をひっさげて、エンタテイメント界に強烈なファースト・インパクトを与えた作者の日本紹介第2作。この2作以外にどういう作品があるのか寡聞にして知らない。「墜ちる天使」は、作者が脚本をやったというその映画化作品「エンゼル・ハート」もなかなかにB級な造りで、結構お気に入り。<クロス・オーバーな悪夢>という原作の持ち味を血の匂いでむせ返るような暑苦しい映像で再現した作品である。で、面白けりゃ、なんでもありでしょ?という創作姿勢はこの歴史オカルトミステリでも健在で、作者のサービス精神に改めて脱帽。コナン・ドイルに、脱出王フーディーニ、スポーツ記者デイモン・ラニアンが三つ巴で話を盛り上げるところへ、ポーの幽霊までが登場して、とことん瑣末な史実に拘った破天荒な「見立て殺人」物語を繰り広げる。こんな話。
1923年、ニューヨーク。美女を抱えた巨大な猿の目撃情報が29分署に寄せられた時、それが呪われた「ポー連続殺人事件」の幕開きになることに気づいたものは誰一人いなかった。やがて密室の煙突の中から発見される美女の死体。それは、「モルグ街の殺人」を忠実になぞったものだった。引き続き起きる「黒猫」や「マリー・ロージェの謎」を再現する酸鼻な殺人事件。一見、無関係にみえる被害者たちを結ぶ線の中心に、希代の偽・心霊術破りにして天才奇術師、ハリー・フーディーニーの姿があった。おりしも二番目の愛妻とともに訪米し、各地で講演会を行っていた<心霊研究家>サー・アーサー・コナン・ドイルとフーディーニは、旧交を温めつつ、あるいは互いに反発しつつ、この「ポー連続殺人件」に巻き込まれていくのであった。妖しくも静かな熱情を込めてフーディーニーに接近してくる<イシス>の化身オパール。ドイルの前に幽玄の彼方から姿を現す始祖ポー。煽情的なラニアンのペンが全米を狂騒に巻き込む中、死と快楽は徐々にフーディーニの身近へと忍び寄ってくる。ヒュプノスの香りはタナトスへと人々を導き、詩人の悲哀は金色の闇に溶ける。冥界の蓋が開くとき、脱出王は絶体絶命の窮地から帰還することができるのか?
フーディーニとドイル、あるいはホームズという組み合わせは無性に小説家の遊び心を刺激するようで、「名探偵登場」や「ロンドンの超能力男」などというキワ物作品も日本で紹介済み。で、その二人がポーの見立て殺人に挑むというのだからこれは面白くならないわけがない。設定だけで、半分勝利したようなものである。実際、作者はこの二人と当時の風俗を実によく研究した上で、キャラクター化してみせた。マザコンのフーディーニ、心霊狂いのドイルという、遺族が見たら顔を顰めるであろう二人の偉人の<陰>の部分が見事に作品の中に消化されている。勿論、二人の<陽>の部分もよく書けていて、特に、ドイルのジョンブル気質はなんとも微笑ましい。加えてポー作品への耽溺ぶりが尋常ではない。私は余り良いポーの読者ではないが、まさにこの小説はこれ自身が強烈なポーへのラブ・レターである。ところが、熱烈なラブレターというものは、あまり傍からみて心弾むものではないのと同様、この作品も「それで?」と冷めた反応を返したくなるのである。「墜ちる天使」でみせた超自然と物理法則の絶妙にバランス感覚が、この作品ではいささか危なっかしいのだ。それもプロットそのものを破壊するレベルで危ういのである。虚実をないまぜにしてヒョーツバーグ世界を組み上げる過程は、最高に面白いのであるが、それと対照的に中盤以降のドラマ部分の失速ぶりが辛い。最後に仕掛けられたリドルも、なんとなく中途半端で、陰陽を大逆転させるケレンを期待する読者を裏切るものにしか映らない。実に惜しい。本当に惜しい「傑作になりそこねた<変>な話」であった。

(今月買った本:56冊、今月処分した本:7冊、今年の増減+49冊)


2000年1月10日(水)

◆法律の格言に「法は不識を許さず」というのがある。法律を知らないからと言って言い訳にはならん、という意味ですな。その伝でいけば、「パソコンは不識を許さず」って事なんですかね。しかし「そんなもん、売るんじゃねえ!」というのが、パンピーとしての素朴な思いですなあ。と言うわけで、本日の「パソコン初心者うがあ&とほほ日記」。
◆よしださんから、ホームページビルダーを一旦消して再インストールしては?というアドバイスを受けるが、さすがにこれは自分でもトライ済み(効果なし)。更にMoriwakiさんからは「winの下にあるTemporary Internet Fileの中を掃除しては?」というアドバイスをメールでもらう。ふーん、こんなところに結構溜まってるんだなあ、と一気に削除。ついでにTempの中の拡張子temp.ファイルもばっさりゴミ箱行き。さあ、どうだああ!!
結果、状況は一向に改善されませんでした。お二方、アドバイスありがとうございました。とほほ。

◆よしださんに春陽文庫2冊送付。(「お願いゆるして」「月を裂く快男児」)、ロビーさんにダブリ本1冊送付(「幻想と怪奇1」)、ダブリ本選択権第三順位の越沼さんは「永遠の森」を御選択。次はらじ丼の予定。しかし、第29順位の川口さんまで、回るのには何ヶ月かかるのであろうか。米国や中国在住の方もいらしゃるしなあ。
◆銀河通信掲示板によれば自宅最寄り駅一駅手前でワゴンセールの模様。落穂モードで覗きに行く。駅のワゴンにしては珍しいオール100円。ダイジマンがSFを、某せどり隊のやよいさんが推理小説を根こそぎ持っていってるんだろうなあ、と思いながらも覗かずにはいられないのが、病気である。ただ、ここのところ、今ひとつ渉猟に掛けるガッツが欠けてるんだよなあ。そもそも小田急古書市初日ということを失念している辺り、既に古本者失格かも。しかし、とりあえず見るだけにするつもりが、そんな時に限ってそれなりに拾うべきものがあるんだわ、これが。拾ったのはこんなところ。
「凍原に吼える」戸川幸夫(ソノラマ文庫)100円
「夢幻惑星」川又千秋(徳間ノベルズ)100円
「強制結婚」戸川昌子(徳間書店)100円
「闇の中から」戸川昌子(講談社)100円
「みだらな儀式」源氏鶏太(光文社)100円
「ならず者の鷲」Jマクルーア(早川書房)100円
ソノラマ文庫二桁台となると、動物小説でも拾いたくなるのが人情。戸川昌子、源氏鶏太は余り文庫本でみかけないタイトルだったのでとりあえず押える。マクルーアは、小泉喜美子訳だし、CWAの次席だし。まあ、どれも1冊100円でなければ手を出してないのではあるが。なんとなく、古本モードに火がついたのでついでにブックオフ・チェック。マイブームな草上仁のJAの欠番を幾つか拾うついでに何冊か。
「エルム街の悪夢(上・下)」Jコッパー(竹書房)各100円
d「ムーン」Jハーバード(早川NV文庫)100円
d「死利私欲」Jフレーザー(講談社文庫)100円
d「テルジーの冒険」Jシュミッツ(新潮文庫)100円
「結ぶ」皆川博子(文藝春秋)100円
「くらげの日」草上仁(早川JA文庫)200円
「かれはロボット」草上仁(早川JA文庫)200円
「ラッキー・カード」草上仁(早川JA文庫)250円
フレーザーとか、シュミッツとかそれなりに人気ある本はダブりでもひろっちゃうよなあ。JA文庫の草上仁は残すところ1冊。それにしても、この人の著作というのは何冊あるのだ?(で、ネットで調べる。「星売り」とか「天空を求めるもの」とかは文庫落ちしてないのかな?「愛のふりかけ」ってえのがしんどそうだなあ。うう、とっとと楽になりたいぞ。)家に帰って、掲示板をチェックすると森さんから「今日は、蠍座が絶好調の日」との書き込み。ははーん、それでやる気のない割には、そこそこの釣果だったわけね(>納得すんな!)


◆「花の通り魔」横溝正史(東京文芸社)読了
横溝正史の時代ものといえば、人形佐七に止めを刺す。初出は他のキャラクターであったものも最終的に佐七ものに改稿されるケースが多く、とりあえず私のような薄い人間は捕物帳については春陽文庫の14巻ものを押えているだけで、憑き物が落ちている(まあ、朝顔金太を三桁で拾われたりすると、コンチクショーではあるのだが>フクさん)。ところが長篇時代モノとなると、そこで納まっている訳にもいかず「闘いはこれからだ」状態。で、長篇の捕物帳でシリーズ化されているのが、この「お役者文七」もの。「蜘蛛の巣屋敷」「比丘尼御殿」とこの「花の通り魔」は昭和50年代に東京文芸社から新版が出ているので比較的入手容易なのだが、「謎の紅蝙蝠」ってのが見あたらないんだよなあ。これって、文七なんでしょうか?
大岡越前守が南町奉行を拝命していた時代、岡っ引だるまの金兵衛宅に身を寄せているいい男・文七、しかしてその素性は播州十八万石勝田駿河守のご落胤にして名優阪東彦三郎の養子という結構なもの。窮屈な侍暮らしは真っ平ゴメンと、気楽な市井浮浪の生活を送っているも、捕物となると異能を発揮するという役柄。「比丘尼御殿」事件を首尾良く解決し、のんびり釣りにでもと誘われた文七だったが、事件の方が文七を放っておいちゃくれねえ。こんな話だぜ。
金兵衛とその手下の雁八とともに釣り舟を繰り出した文七だったが、ひょいとみると怪しげなつづらがぷかりぷかり。こいつあ、なんだと船に引き上げ、中を改めると、なんと縊り殺された娘の死体がごろり。それによくみりゃ、この娘は巷で評判の絵師歌川喜多麿画の「艶色三幅対」に描かれた一人、銀杏茶屋の茶汲み娘お葉じゃねえか?そろりと、銀杏茶屋に探りをいれてみると、なるほど、二日前からお葉は行方しれず。と、そこへ、三人娘の今一人、柳屋の看板娘お鶴までが行方知れずとの報せ。さあ、こうなると三幅対の残る一人、当たり屋の矢取り女お仙の身にも何かよくねえ事が起きなきゃいいが。どうも、事件の裏にゃ、どこぞのお寺のお小姓・千寿丸ってえ奴がいるらしい。案の定、お仙にも千寿丸の手は伸びていやがった。お仙は、どこぞの寮で千寿丸としっぽりと楽しんだ後で、首を絞められかける処を呼んだ覚えのない迎えの駕籠に助けられ、命からがら逃げ帰ったっていうじゃねえか。おまけにお仙の記憶を頼りに、その寮を探り当ててみりゃ、なんと、そいつは歌川喜多麿が仕事場に借りている寮ときたもんだ。ところが、喜多麿先生にゃ身に覚えがねえと云う。云われてみりゃこの事件、最初から胡散臭え。つづらに重しもいれず死体を詰め込むってえのは、いかにも中途半端だぜ。どうやら三幅対の絵解きにゃ、も少しネタがいりやすねえ、旦那。
可もなし不可もなしの捕物長篇。海に浮かぶつづらに詰められた死体、水もしたたる美形のお小姓、美人画の3人娘といかにもな道具立てを並べておいて、更に話を一ひねりしてみせるところはさすが大正史だが、人形佐七ならば、この十分の一の分量で、この事件を片付けてみせたところであろう。サービス精神旺盛で、読みやすさはこの上ないものの、やはり、正史の時代長篇には、悪漢・怪人・魔人・女妖入り乱れた波瀾万丈の大伝奇を期待したい。まあ、正史の捕物帳ファンが読んでおけばよい話であろう。

(今月買った本:50冊、今月処分した本:4冊、今年の増減+46冊)
ううう、ちっとも減っとらんではないか!やはり、ちまちま処分していては「焼け石に水」だよなあ。なまじ減らした気分で「火に油」なのかも。