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2000年7月10日(月)

◆昨日の飲み会でネット初心者のMoriwaki夫人から「日記のどこが面白いの?」
と真顔で聞かれる。ううう、聞いてはならん事を平然と聞くやつ。
うーむ、スタージョンの法則ではないが、正直なところネット上の日記の99%は
つまらんのではなかろうか?(この場合、「日記」とはいわゆる「日記」であり、
エッセイや雑文といった、日常から切り離した「作品」として楽しめるものは除く。)
では、1%の「面白い」日記の条件とはなにか?
読み手が他人の日記を読むのがラブラブ大好きな<日記ファン>という人種ではなく、
書き手が「例えば、カウンタが壊れたという一事でもって爆笑ネタに加工できる」
希有の天才でない限り、読み手が書き手をホームページ以外で知っているか否かが
「面白い、面白くない」の分かれ目であろう。「あーら、あの人はこんな日常を
送っていて、こんな事を考えていたのね」という楽しみ、この一点である。
その意味で、Moriwaki夫人は「面白い」といってくれたここも「私を知らない人に
とって面白いか?」というと、別に面白くともなんともない筈である。本買って、
本読んでるだけだもんねえ。とほほ。
◆ばたばたとした1日。出そびれて定点観測も一駅のみ。
「ひとりおきの犯人」かんべむさし(光文社文庫)150円
d「親切がいっぱい」神林長平(光文社文庫:帯)130円
d「宝を探せ」Tヘルム(角川文庫)130円
d「ボニーと砂に消えた男」Aアップフィールド(早川ミステリ文庫)100円
d「夜の翼」Rシルヴァーバーグ(早川SF文庫)100円
「フリーダム・チョイス」Aマキャフリイ(早川SF文庫)100円
「ウォッチャー」草上仁(早川JA文庫)10円
「ゲッタウェイ」Jトンプソン(角川文庫)10円
元気でない。アップフィールドは何故か2冊目の「風の絞殺魔」がなくて、1冊目と
3冊目はよくみかける。まあ、100円なので拾っておく。「宝を探せ」をレジに
もっていくと、「これは半額の130円になってしまうのですが」と申し訳なさそうに
念を押される。「全然、問題ないです!」。問題ないわな、専門店なら1000円の本
だもんなあ。個人的には「ゲッタウェイ」が嬉しいところ。平成6年にリメイク映画の
公開に合わせて復刊された際の版だが、10円ならなんだって許す。これは表記ミス
ではない。本当に10円なのである。この店では、100円均一棚のほかに、10円
均一ワゴンがあるのだ!!ああ、神をも畏れぬ所業。今の時代10円で何が買えようか?
はっきりいって「あげますから、持っていって」というワゴンである。持っていって
しまいましたあ。

◆「肌色の仮面」高木彬光(角川文庫)読了
高木彬光といえば、どの出版社を連想されるであろうか?私の場合、光文社である。
それも「カッパ・ノベルズ」の印象が非常に強い。全集も、ビニル掛けの青い函と
いう光文社版が真っ先に脳裏に浮かぶ。これに続くのが桃源社ポピュラーブックス。
あと2年若ければ文句なしに「角川文庫」になったであろうと思われるが、角川で
おらおらの復刊ラッシュが始まるまでは、光文社・桃源社・東京文芸社などが高木
フォロアーの命の綱であったのだ。さて、その中でこの「肌色の仮面」を出して
いたのは光文社であった。だが、当時この作品だけは買おうという気になれなかった。
くそ生意気な本格至上主義であった高校生当時の私は、高木彬光の背信ともいえる
通俗産業スパイものなんぞ、間違っても買わんぞと固く心に決めていたのだ。その
割には、どうしようもない「裂けた死角」だの、双葉新書の「女か虎か」だのは
買って読んでいたので、一体、こいつはなんなのだ?とも思うのだが、つらつら
考えるに、どうも「産業スパイ」が駄目だったようである。この言葉になんとも
言えぬうさんくささを感じていたのだ。「社会派」をはき違えた安易なトーンに
拒絶反応を示していたのだ。というわけで、今回読んだのも、角川文庫版であり、
おまけに古本ときている。自分の「許容範囲」がどこまで広がったかを確認する
ための読書だったのかもしれない。こんな話。
冶金学の権威近藤博士が謎の失踪を遂げる。その背後には、ジュラルミンの数倍の
強度をもった新合金γの争奪戦があった。兜町の女傑の依頼を受け新合金の製法を
奪取しようとしていた私立探偵富岡は、否応無しにこの失踪事件に巻き込まれて
いく。博士は、失踪直前、持っていた株を処理するなどして4百万円を捻出して
いたという。富岡の探索は、やがて博士が魅入られるようにして付合っていた悪女
に辿りつくのだが、事件の底は更に深いものだった。株価操作を巡る狐と狸の化か
仕合、弄ばれる女心、研究者たちの怨念、嘘から出た純愛、兜町を揺さぶる「金編」
業界の仕手戦の顛末を裏側から描いたミステリー・ロマン!!
どうやら解説を読むと、作者が社会派や本格に倦んでいた頃に、テレビ放映と並行
して書いた<気晴らしミステリ>らしい。権田解説のように、ロマンの復活とまで
持ち上げる気はさらさら起きないが、冶金や株といった著者お得意の世界でのびのび
戯作をやっている雰囲気は悪くない。後はキャラクターが魅力的あれば、許せる
レベルの「テレビドラマ原作」といえよう。問題は主役を務める私立探偵の女性観
である。登場早々、彼は一人の女性を結婚を餌にして産業スパイの手先に使い、
放り出す。そんな男が、いかに純愛をやったところで、なんらの説得力はない。
終盤になって、彼の非人間的行動の背景がとってつけたように説明されるのだが、
それが更に怒りをさそう。所詮テレビドラマと割り切って、犯人や動機が後づけな事
に目をつぶっても、この主人公の勝手な「尻軽男のへ理屈」だけは許せない。作者の
気は晴れたかもしれないが、読者の気は重くなる一方である。高木彬光全作読破を
志した人だけが読めばいい作品である。


2000年7月9日(日)

◆EQFCのMoriwakiから突然メールで「江古田古本屋まわり&宴会」のお誘い。
自宅パソ見学も兼ねて、昼前にでかける。出掛けに中村さんと溝口さんに送本。
膳所さんと良知さんへの本は大きすぎてポストに入らず(明日送ります<私信)。
池袋で下車して、あれこれ土産を買いこみ、新桜台へ。早速、Moriwaki氏と既に
現場入りしていた静草女史と3人で江古田の街へ。いつもと違う面子で、いつもと
違う街の古本屋を回る非日常感覚が嬉しい。「夏のお嬢さん」スタイルの静草
女史の肩の白さが眩しい。
一軒目。なんと焼鳥屋がそのまま古本屋になっているという店。先日Moriwaki氏
が大血風を出した店とやら。「モンタージュ写真」「ある大使の死」「影絵の
ように」の極美初版を軒並み100均ゲットですと。実際、店構えから内装から
すべて焼鳥屋である。カウンターもトイレもある。うう、シュールじゃあ。もう
1点この店にはとてつもなくシュールなところがあるのだが、故あって公開日記
には書けない。
「警察医」島田一男(春陽文庫)100円
「警視庁物語 魔の伝言板」長谷川公之(春陽文庫)100円
「大理石」マンディアグル(人文書院:帯)2000円
Kaluさんに掲示板で教わった「ポルノ」があったので、無駄遣いモード。
2軒目。根元書房の<倉庫>と化している滅多に開かない店舗。
なげやりに積み上げられた中から、何冊か引きずり出す一行。「松尾由美って
珍しいですかあ?」と尋ねられたので「<異次元カフェテラス>なら古書価が
つきますよ」と応えたところ、「この辺りに昔並んでいたんだよな」とMoriwaki
氏が、本の壁を移動させ発掘。おお、帯付き!迷わずゲット。
d「異次元カフェテラス」松尾由美(アルゴ文庫)100円
店には入れず、玄関のチャイムで呼び出す方式なのである。ここも凄いよなあ。
3軒目。落穂舎の移転を確認しつつ、ブックオフへ。静草女史が「落穂舎」の
顧客である事を聞いて驚く。全く、見かけに似合わぬ極道だよなあ。ブックオフ
は、中規模サイズ。ああ、やっと普通の古本屋だよう。但しさすがにMoriwaki氏
のテリトリーにつきめぼしいものはない。
「アラン−真夜中の少年」Jハンセン(二見書房)100円
「暗黒世界のオデッセイ」筒井康隆(晶文社:裸本)300円
「39番目の世界」Mフィリパール(評論社)600円
ジョゼフ・ハンセンの少年小説はヴェルヴェット・ロマンとかいうシリーズで、
出ていた事も知らなかった本。なんやねん、これ?フィリパールは、一応SF。
まずまずの拾いものかと。
4軒目。<エンポリオ>落穂舎へ。
前の100均棚にめぼしいものがなかったので、諦めていたら、帰り際に中で
1冊拾う。
「ポール・ペニフェザーの冒険」Iウォー(福武文庫)350円
これも最近みないんだよね。店番の奥さんは「イブリン・ウォー探している先生が
いて、取り置いたんだけど、見えなくてねえ。人気あるの?」と実に売り渋る。
Moriwaki氏と静草女史は、推理店の移転先なんぞを聞き出していた。ふむふむ。
ご近所ですかそうですか。
5軒目。店名失念。江古田駅前の普通の古本屋。前回のMoriwakiツアーでも、
この店で連続購入記録が途絶えたという「何もない店」。ピーンチ。根性で1冊
買う。
「Uの世界」神林長平(徳間書店)200円
まあ、文庫落ちしているのだが、安かったので、、、って、単に、連続購入の
ためだけなのだが。
「キングとジョーカー」談義をMoriwaki氏とかわしながら線路を越えて6軒目。
根元書房の日芸前店。見ごたえ充分だか、これといったものはなし。ここも通路の
一つが完全にダンボールでふさがれてしまっているところが「いかにも」である。
今度こそ連続購入記録が途絶えたかと思ったら、こんなものがあった。
d「或る男の首」Gシムノン(新潮文庫:初版・帯・元パラ)150円
訳者が堀口大学というので拾う。うーむ、こんな仕事もしていたのかあ。
7軒目。根元書房の駅前支店。
ここも百均が空振りだったのだが、店内で2冊。
「就眠儀式」須永朝彦(名著刊行会:函)2500円
d「劇場の迷子」戸板康二(講談社:帯)450円
商店街の抽選券をもらってしまう。なんとも街中の古本屋だねえ。
以上で、2時間弱のツアー終了。「隣の駅のブックオフまで足を伸ばしますか?」
と水を向けられたが、某膳所さんのテリトリーなので何もなかろうと、パスする。
というか、荷物が重いのと、喉が渇いていたせいもあるのだが。
◆Moriwaki氏の自宅へ引き返して酒盛り。EQFCの絵師なかおんも登場して、Moriwaki
夫人ともども、女性軍はキャラ萌え談義。「あたしのアーチーがどうたら」、
「ウイムジー卿がこうたら」と喧しい。Moriwaki氏と私は少し濃いお話。焼鳥
古本屋での氏の血風の成果を拝見。「おお、これが伝説の<モンタージュ写真>
のカバー付きですかい。うーん、300番だあ」と盛り上がる。Moriwaki夫人の
手料理と静草さん持参のビールで楽しい時間を過ごす。話題に煮詰まって、自宅
パソで静草さんにEQFCのサイトやこのページなんぞを見せる。血風録の目次
ページの背景写真を見た女史から「こんど、いいお医者さんを紹介してあげますね」
と真顔で言われる。ううう、病気ですかそうですか。少々、ホムペ談義など。
◆明日は出勤だし、更新もあるしで、またもや早めに失礼する私。いやあ、どもども
すっかりお世話になりました。ありがとうございますありがとうございます。また
遊んでね。と、これで1日のイベントが終ったと思ったところ最後にアクシデント。
◆帰りの電車で寝過ごしかけ、慌てて飯田橋で下りたところ、まんまと読みかけの
ポケミスを車内に忘れる。他の叢書ならいざ知らず、ここで1冊欠けになるのは
痛いと思い、駅事務所に探索を依頼。
「どの辺りに座ってましたか?」(あ、慌てていたのでわかりませーん)
「どのエスカレータで上にあがりました?」(この辺だったと思いますが)
あれこれ、質問を受けるのだが、寝ぼけていたので、だらしない証人そのものの
答弁。やっぱり推理小説の証人って凄いと思うぞ。幸い煙草を1本吸い終わる頃に
無事、新富町駅で確保との報。そのまま、新富町へ向かう。ああ、よかったよかった。
時間的には大幅なロスだが、本には変えられない。営団地下鉄職員の皆さん、
どうもありがとうございました。

◆「死体をどうぞ」Cエクスブライヤ(ポケミス)読了
というわけで、地下鉄に忘れた本がこれ。作者の日本での代表作ともいえる作品で
世界ミステリ全集にも収録され、後に文庫化もされている。が、今や入手困難な
作品。これも昔は当たり前のように本屋に並んでいた作品なのだが。エクスブラヤ
は多作だけあって、読売新聞社のフランスミステリシリーズや、教養文庫のミステリ
ボックスで復活の動きがあったが、その後、とんと紹介されないのが実に残念な
作家である。早川は「パコをおぼえているか?」ぐらいは復刊してもバチはあたら
ないと思うぞ。「死体をどうぞ」は、第二次世界大戦末期のイタリアの山奥の村の
ドタバタを描いた爆笑ミステリ。イタリア人の名前を覚えるのに苦労する以外は
実に実に楽しく読めた。こんな話。
ムッソリーニ政権が揺らいだ事で、ファシスト派のマリオ村長一派が一掃され、反
ファシスト派のアチオリ村長が治める村ストラモレット。村の「政治」で対立する
新旧村長はお互いの夫人が従姉妹同士という姻戚関係にあった。しかも新村長の
息子ジャンニと前村長の娘オーロラは相思相愛で将来を誓い合った関係。戦争さえ
なければ、幸せな結婚を迎えたであろう二人を「ロミオとジュリエット」の悲劇が
襲う。そんななか連合軍の大進攻を、ナチの優勢と恣意的に報道する中央の放送に
惑わされ、ファシスト派の復権に揺れる村で、殺人が起きた。誰からも嫌われていた
ファシスト派の金貸しルチアーノが惨殺されたのだ。時あしく、中央からファシスト
派の地固めに送り込まれたブタフォキ警部とその二人の部下。彼等にファシストで
あったルチアーノの殺害を知られてはならじ、と死体を隠しまわる村民たち。
現われては消える死体をめぐって、抱腹絶倒のどたばた喜劇の幕は切って下ろされた。
果してルチアーノを殺したのは誰なのか?そんな事は誰も気にしちゃいないってば。
いやあ、笑える、笑える。ここまでイタリア人を笑い者にしていいものか?とも
思う反面、我々が考えている<恋多きイタリア>の姿がまさしくそこにある。
繰り返しのギャグもまじえながら、この不気味な喜劇は留まるところを知らない。
戦争そのものも笑い飛ばすエネルギーには感心する。真犯人は、意外な人物では
あるが、腹は立たない。この作品の真価はそんなところにあるのではない。どこ
までも感情の起伏の激しい個性豊かなキャラクターたちの言動を楽しむ、それで
いいではないか。特に齢91歳の一族の長老ぺぺの「外れ」具合が絶妙。最後には
ほろりとさせてくれるところまで、エンタテイメントとして完璧。ユーモア推理が
お好きな方は是非どうぞ。いやあ、新富町でみつかってよかったあ。


2000年7月8日(土)

◆暴風雨の朝。台風情報を垂れ流しにしながら日記とレスつけで半日が過ぎる。
すっかり好天のもと、京成沿線無駄遣いツアーに出発。
一軒目、なんと駅の改札を出たところに新しいリサイクル系古本屋ができている
ではないか!
d「ブルネットに銀の簪」小泉喜美子(早川書房)520円
「ジンボー」Aブラックウッド(妖精文庫)200円
「殺しのメロディー」Aクリスティー(てのり文庫)180円
また「ブルネット〜」を拾ってしまう。良くぶつかるよなあ、この本は。
クリスティーのジュヴィナイルは併載のワイリー「冷凍死体のなぞ」狙い。
二軒目はブックオフ。
d「殺人交差点」Fカサック(創元推理文庫)100円
d「白髪鬼」岡本綺堂(光文社文庫)100円
d「鷲」岡本綺堂(光文社文庫)100円
d「影を踏まれた女」岡本綺堂(光文社文庫)100円
d「弓の部屋」陳舜臣(講談社文庫)100円
d「1ダースまではあとひとつ」山田正紀(光風社:帯)100円
「侵略の惑星」ADフォスター(サンリオ)100円
今更カサックを買うのは、この夏に改訳が出れば、こちらの「とんでも訳」バージョン
を探す人が出てくる事を見越しての行動。大馬鹿である。岡本綺堂は引き取り手の
宛もなしにぶっこ抜き。スターウォーズ本は、どうでもいいようなものだが、
腐ってもサンリオという事で。
三軒目。ブックセンターあずまへ。
「牡羊座の兇劇:殺しの幕は上がった」星野彗理(徳間NV:帯)300円
「牡牛座の兇劇:花菖蒲は見ていた」星野彗理(徳間NV:帯)300円
「双子座の兇劇:もうひとつ死体が残った」星野彗理(徳間NV:帯)300円
「蟹座の兇劇:殺戮の紅い雨が降る」星野彗理(徳間NV:帯)300円
「獅子座の兇劇:血塗りの殺人カード」星野彗理(徳間NV:帯)300円
「乙女座の兇劇:別荘地に散る死体」星野彗理(徳間NV:帯)300円
「タイムトラベルSF傑作選」星敬編(コバルト文庫)50円
「喘ぐ血」レイモン他(祥伝社文庫:帯)350円
「大予言」宮崎惇(豆たぬきの本)100円
「巫女さまカーニバル」飯野文彦(ソノラマ文庫)220円
「リトル・ドリット1」Cディケンズ(ちくま文庫:帯)300円
「リトル・ドリット4」Cディケンズ(ちくま文庫)300円
「大年神は彷徨う島」藤木稟(徳間NV:帯)400円
「夢魔城」川又千秋(中央公論社:帯)600円
d「殺しのダイヤグラム」鮎川哲也編(徳間文庫)150円
わっはっは、ついに星野彗理本を買ってしもうたわい。帯付きが揃っていたので
つい、やってしまいましたあ。これで、名実ともに矢島誠はコンプリートかな?
しかし、この歳になって若桜木虔の推理小説を買う羽目になろうとは…。まあ、
矢島誠の回だけ買ってもよかったのだが、そこはそれ、今日は無駄遣いの日です
から。豆たぬきの本の宮崎惇が嬉しいところかな。
4軒目はなにもなし。名刺代わりに1冊拾う。
d「人口進化の秘密」Eハミルトン(早川SF文庫)140円
◆バスで船橋に出て、本日はFF猿と化している安田ママさんの勤務先へ、ボーナス
が出たら買うつもりだった新刊を買いに行く。おお、山尾集成もちゃんとSFコーナー
にPOP付きであるではないか。それも4冊も。立派立派…でも大丈夫か?それより
も驚いたことに、恩田陸の新刊には、なんと著者自筆のPOPが!!これはさすが
カリスマ書店員のなせる技か。凄いぞ。買ったのはこんなところ。
「白鳥の歌」Eクリスピン(国書刊行会:帯)2000円
「タラント氏の事件簿」CDキング(新樹社:帯)2400円
「トレント乗り出す」ECベイリー(国書刊行会:帯)2400円
「ノクターン」Eマクベイン(ポケミス:帯)1100円
「ベラウの頂」Rヒル(ポケミス:帯)1800円
SFマガジン8月号(早川書房)890円
結局、海外作品ばかりを購入。SFMはスラデック特集であることを成田さんの
日記で知ったため。おお、ヴォークト追悼までついていて御得用である。それに
してもヒルは分厚いなあ。またポケミスの最多頁数記録を更新したらしい。新書が
1800円とは、あな恐ろしいや。たった、6冊で1万円を越えてしまう。あな、
恐ろしや。ついでに、1年半ぶりに目にした「創元推理文庫解説目録」ももらって
くる。これは、ホントに久しぶりである。でも、この上の3冊って本当に凄いよね。
こんな黄金期のマイナー本格が新刊書店で買えるんだから、今の日本の読者は
つくづく恵まれていると思う。
◆以上、本日の無駄遣い。いやあ買った買った。

◆実は、これまで自宅パソではCD−ROM付きなのに音楽CDを鳴らす事が
できなかった。10秒ほど再生すると消音されてしまうのだ。くっそー、と思って
いたのだが、たまには取説でもみるか、と1年半ぶりに発掘して「故障かなと
思ったら」の頁をみると、あっはっは、載っているではないか!なになに、省電力
のため、出荷時点の設定は消音にしてあるだとおおお!!うがあうがあ。そーゆー
事は内蔵取説にも書いとけよなあ。というわけで、今は音楽を聴きながらこの日記
を書いているのであった。
◆あーあ、またカウンターがリセットされているよ。最近は自分のサイトに入るたび
にカウンターをメモっておいて、ふっとんだときに大体経験則上の数字を再入力して
いるのだが、うざったいのには変りない。というわけで、お手数ですが、リセット
されているのを発見された方は、掲示板にその旨をちょっと書いて頂けると嬉しい
です。

◆「ハニーは闘牛がお好き」GGフィックリング(ポケミス)読了
先日、松本真人氏から「Gストリングのハニー」のフォトカバーを頂戴して、ついに
フォトカバーが揃ったハニーである。これで、私のポケミスに関する憑き物は落ちた。
初版クエストや、函・帯クエストはさらさらやる気がないので、満足満足(しいて
挙げれば「ディミトリオスの棺」の新訳と「時の娘」の旧訳なのだが、まあ、その
うちなんとかなうだろう)。ハニー・ウエストも最近ではご立派な古書価格がついて
いるようで、四半世紀ポケミスを追っかけてきたものとしては隔世の感がある。
それにしても不思議なのは、ハニーにしても、ナポソロにしても普通はフォトカバー
が着いていた筈なのに、今流通しているものにはカバーなしが多いという事。世の中
にはフォトカバーだけを手元に残して本を売り払う人がいるということなのだろうか?
謎である。あ、もしかして番組が終ってしまうと早川書房の方で、在庫のカバーを
捨ててしまうのだろうか?あああ、怖い想像になってしまった。ちなみにナポソロでは、
これもよしださんからお譲り頂いた「空飛ぶスラッシュ」のカバーが何故か「ない!」。
今、神保町のRBワンダーに並んでいる16冊セットでも、最初からなかった15巻、
16巻を除けば、この巻だけカバー欠けなのである。幸いハニーの場合は、かような
「謎のフォトカバー効き目」はない。たまたま私が「Gストリング」に縁がなかったに
すぎない。では、フォトカバー集でもいってみましょうか。こんなの。







閑話休題。「闘牛はお好き」である。ハニーの幼なじみのピートは、メキシコでは珍しい
アメリカ人闘牛士として頭角を現していた。その彼から、緊急の知らせが入り、ハニー
はメキシコに向かう。まずは闘牛場で彼の腕前と人気の程を見学しようとしたハニーの
であったが、その彼女の目の前で、なぜかバランスを崩したピートは猛牛の角に裂かれて
大地に伏す。騒然とする場内を後に、控え室に向かうハニーは興業士やその部下たちに
行く手を阻まれる。それを突破して控え室に飛び込んだハニーであったが、何故かそこ
にはピートの死体はなかった。メキシコから出て行けという脅迫に屈する事なく事件を
追うハニーに迫る危機また危機。裸に剥かれて木から吊るされ、麻薬密輸の容疑で逮捕され、
沖合いで狙撃され、ストリッパーまがいの接待を迫られるハニー。果してハニーは闘牛を
闇から支配しようとする謎の人物「ジンゴ」の正体を暴く事ができるのか?
男色家の興業士、美貌の売れっ子闘牛士、ナイトクラブの経営者にその仲間である荒事の
プロたち、マゾのダンサーといった怪しげな容疑者たち。偶然知りあったアメリカ人医師
たちの力を借りて、ハニーは灼熱の街に真相を探る。
なんとも実にB級の「楽しさ」に満ち溢れた女性私立探偵もの。今回は舞台がメキシコと
いう事もあって、その男尊女卑ぶりに磨きがかかっている。事件の真相は、お約束ながら
も一応の「意外性」はある。ただ、総てが論理的に割り切れるかと言えば、これはもう、
全然割り切れない。犯人たちがしっかりしていれば、少なくともハニーは3回は殺され
るか、もしくは徹底的に凌辱されて薬漬けにされた挙句売り飛ばされているであろう。
原題(“DIG A DEAD DOLL”)はまさしくそういった状況を的確に表現して
いるといえる。なにが「闘牛はお好き」だよう?こんな状況で闘牛を好きになれるわけ
などないではないか!女性及びフェミニストには絶対おすすめしません。


2000年7月7日(金)

◆七夕の台風(おお、なんだか北村薫作品の題名のようじゃわい)。ボーナスも
出たので思いっきり無駄遣いしてやろうかと思ったのだが、強まる風雨の中、大荷物
を持つ気にもなれず、定点観測は軽めに済ませる。
d「夢幻の書」Jヴァンス(早川SF文庫:帯)240円
d「復讐の序章」Jヴァンス(早川SF文庫:帯)190円
d「独裁者の要塞」Jウルフ(早川SF文庫:帯)280円
d「太陽の炎」JAエフィンジャー(早川SF文庫)330円
「聖母の日(上・下)」FPウィルソン(扶桑文庫)660円
「マルコ・ポーロ殿の探偵」芳野昌之(出版芸術社:帯)700円
<魔王子>と<新しい太陽の書>のを完集。ダブリ本のセットも目指すのだ。
エフィンジャーは確か1冊持ってなかったんだよなあ、と拾ったら見事にダブり。
誰かいりまへんか?
◆実は、雨は嫌いだが、台風は大好きである。圧倒的な自然の猛威を自宅に居ながら
体験できるからなのか、単に「学校が休みになる」という嬉しい非日常体験の刷り込み
なのか、台風がくるとついワクワクがとまらない。懐も1年で一番温かいし、台風も
来るし、で朝からハイな私であった。
◆あ、川口文庫の目録が届いている。さあ、無駄遣い、無駄遣いっと。

◆「中継ステーション」CDシマック(早川SF文庫)読了
安田ママさんの「木綿のハンカチーフ」芸(7月6日・7日の日記)にひっぱられて
無性に胸キュンSFが読みたくなる。取りい出したりますは、1964年ヒューゴ賞
受賞作。文庫版の角田純男イラストがよいのだよ。いかにもアメリカの田舎、いかにも
少女、という感じが「胸キュン」係数を昂進させるのであった。シマックといえば
「都市」です、わんわん、ではあるが、活動歴が長い分、相当はしたないスペオペや
剣と魔法も書いている。プロである。そしてそれがひとたび胸キュン方面に発揮されれば、
これまた無敵なのだ。こんな話。
第二次世界大戦すら山向こうの出来事であったというド田舎もド田舎、ウィスコンシン
州の山深く一軒の農家があった。訪れる者といえば、老齢の郵便配達人がただ一人。
そこに住む男イノックは、なんと南北戦争を闘った壮年男性。百年以上の齢を重ねて
いるにも関わらず、30代の身体を持った彼の使命は、銀河系の星々を渡る旅行者が
立ち寄る中継ステーションの管理にあった。そう、一見農家にしか見えない彼の生家は
いかなる生命にも対応できる設備を備えた銀河の<峠の茶屋>だったのだ。数々の異種族
に接し、一夜の宿を供しては、克明な記録を取りつづけるイノック。そんな彼の日常に
銀河と地球の双方からトラブルがもたらされた。彼が最期を看取り手厚く葬ったヴェガ
星人の死体が墓地から盗まれた事が契機となって、地球は人類の知らぬうちに銀河中央部
の権力闘争の焦点となる。一方、彼が心を許せる数少ない地球人である聾唖の少女ルーシー
が無教養で粗野な父親の折檻から逃れ、彼の許へと駆け込んだのだ。
静謐の中にドラマは潜む。アイテムの語る星々の詩を聞き入りながら、風に向かって男は
立つ。一軒の農家に渦状星雲の運命は託され、一発の銃声に魔法機械は発動する。そして
一人の旅人は、百年の孤独に幕を引く。彼の言葉を見よ。
泣ける話である。孤独である筈の主人公の数少ない友人たちと友情に涙する。時代を
越えた、種族を越えた共感がよい。結末は相当に楽観主義であり、予定調和ではある
のだが、それがまた心地良い。主人公の名前がイノック・アーデンを踏まえたもので
あれば、この<ホーム>にまつわる結末もその物語を踏襲している。ロリコン趣味も
存分に満たされる格調高い<ヴィレッジ・サイファイ>。Xファイル的展開もあり、
なぜかスリリングでもある。ヒューゴ賞も当然であろう。傑作。
まさか、これが入手困難なんてことはないだろうな?えー、早川書房さんよう!?


2000年7月6日(木)

◆待機残業で渉猟の出鼻をくじかれ、自宅の近所のブックオフのみチェック。
見事に何にもない。
「明日知れぬ命」草野唯雄(産報NV)100円
「罪の女の涙は青」日下圭介(講談社NV・乱歩賞スペシャル)100円
「天下御免」早坂暁(大和書房)100円
「ミイラ医師シヌへ」Mワルタリ(小学館:帯)100円
「『きよしこの夜』が生まれた日」Pギャリコ(大和書房:帯)100円
「宇宙叙事詩(上・下)」光瀬龍・萩尾望都(早川JA文庫)各300円
おや、珍しく「d」がないよ。爽やかだねえ(負け惜しみ)。
◆あああ、もう収納をなんとかせねば!値段が高い本が優遇されているわけでもなく、
ここ1年ぐらいの入手本は、たとえ数万円クラスの本であっても百円均一本と一緒に
仲良く積み上げられている。函だの帯だのも実に粗末な扱いを受けている。上級者の
方は「ああ、こんな本を無造作にいい」という苛立ちをお感じのようで、前回の自宅
オフでも「山田正紀なんか棚から出して、こっち(鷲尾三郎、大下宇陀児等)を並べ
れば?」という指摘を受けた。まあ、確かに言われてみればそうですのう。この週末
にはちょっと並び替えてみましょうかね。一生見ないかもしれない積録ビデオの類を
整理するというのもいいかも。古いアニメなんて、欲しければLDやDVDを買うなり、
借りるなりすればいいんだもんねえ。凄い時代になったもんです。
◆どうも、郵便事故が起こったようである。参ったなあ。まあ、本の便の方で起こら
なかったのが不幸中の幸いかな。
◆MZTさま、良知さま、まだ発送できておりません。週末には必ず発送しますの
で、今しばらくお待ちくだされ。あと「仮面荘」は中村さんへってことで。>私信
◆ところで、倉木麻衣は何を怒っているのだ?(夕刊紙の見出ししかみない奴)

◆「マン島の黄金」Aクリスティー(早川書房)読了
なんともう2年前の本であった。話題が強烈なものほど近作に感じてしまうもので
ある。「あの」クリスティの単行本が、それもミステリの単行本が出るというのは
<事件>であった。これぞ拾遺集という造りの本ではあるが、死後20年以上も経って
世界中の読者から期待されるというのは、作者冥利に尽きるというものであろう。
それが、多少出来の悪い作品たちであっても。どうも、半可通は「クリスティなんて」
と舐めてかかりがちであり、私もそういう時期があった。が、多少時間をおいて、
「物事のいい方を見よう」(そうでなければ、出来の悪い新人作家やコストばかり
かかる忘れられた作家たちの希書に付き合えっこないのである)と、評価レベルを
下げてから、昔読んだクリスティを読むと(クイーンも可)、その余りの面白さに
ぶったまげる。「ああ、中坊の私は、不遜にもこんな面白い作品に対して生意気な
文句をたれていたのかあああ」と慙愧の念に身悶える事必至。今読めば「ビッグ4」
とても「レギュラー探偵をエスピオナージュに起用した作者の意欲作!圧倒的な
リーダビリティーとツイストに脱帽!これぞ、黄金期バカミスの極致!」とか書いて
しまいそうな自分を感じてしまう次第(本当か?)。何が言いたいかというと、まあ
この作品集がたいした出来ではないって事なのだが。以下、ミニコメ。
「夢の家」男女の機微を「家」の幻想に封じ込めた怪異譚。ソノラマ海外シリーズに
収録されてもおかしくないレトロぶりが楽しめる。<創元の「クリスティ短編集1」>
といえば、オールドマニアには通じるか?
「名演技」男と女の犯罪を、一種の倒叙仕立てで綴ったアイデア・ストーリー。
後の長篇でもクリスティが繰り返し用いた「あの」トリックの原型といえよう。
まあ、それ以上でも以下でもないのだが。
「崖っぷち」古風なサイコもの。クリスティお得意の三角関係が悲劇的な結末を
招く。身勝手な浮気女虐めに残酷な快感を感じていると、唐突な展開に唖然とする。
クリスティの酷薄な一面が窺い知れる。個人的には結構好み。
「クリスマスの冒険」安心して読める「クリスマス・プディングの冒険」の原型
作品。一種の再読なのだが、ポアロが登場するだけで嬉しくなってしまう、という
のは、作者に飼い慣らされているなあ。いかにもクリスマスなオチが吉。
「孤独な神様」読んでいる方が照れくさくなるハーレクイン・ロマンス。いまどき
少女漫画家でもこんな話は描かんぞい。いやまあ、少年漫画家は描いているけど。
「マン島の黄金」表題作とも思えぬ出来損ない。こういう実際の観光企画とタイ・
アップした作品まで発掘されるのは作者の本意とするところではない、と思うの
だが。クリスティ好きの古書マニアが追っかけて「ふっふっふ、これを読まなきゃ
クリスティを極めたとはいえないぜ」とほくそえんでいればいい話である。
「壁の中」三角関係と絵画をモチーフにした「奇妙な味」作品。正直、作者のいい
たい事が未だに理解できない。もしかして、失敗作か?
「バグダッドの大櫃の謎」わーい、ポアロだ、ポアロだ。きゃあ、ヘスティングズよ。
きゃあきゃあ、てな話。テレビ版の印象が強いので、現在流布している方の作品に
ヘスティングズが出ていない、というのが逆に不思議である。
「光が消えぬかぎり」これも<痛い>三角関係のお話。黄表紙的展開への期待を裏切る
オチが辛い。舞台設定、キャラ設定ともに「恋愛小説」の王道なだけに、戸惑いを
覚える。
「クィン氏のティー・セット」英版にはなく、米版にオマケで収録されたクィン氏もの。
複雑な家族関係は、長篇向けのものであり、この長さでは消化不足。更に一番のネタを
序盤でばらしてしまっていては、興趣が殺がれることおびただしい。「あれ」さえ
隠しておけばそれなりの作品になったであろうと思えるだけに残念。無理矢理クィン氏
ものにした事が仇になったのでは。
総論:熱烈なクリスティファンが読めばいい作品集。出来の悪さを作者への「愛」で
補わなければ、読み切る事すら覚束ない。個人的には「ビッグ4」を再読していた
方が得るものは多いような気がする(まだ言うか、こいつは)。


2000年7月5日(水)

◆どうも最近まともな収獲がない。リサイクル系ばかり回っていてはいかんのだ、
そうなのだ、たまには専門店にも足を運ばなければ道は開けないと、少々お金を
下ろして、平日にも関わらず、池上方面へ。以前、よしださんが「何にも買うもの
がなくっている」という情報を寄せてくれていたのだが、あれから1ヶ月以上が
経っているので、荷動きに掛けてみる。
◆結果は惨澹たるもの。本当に買うものがなくなっており、目の保養になった、
中級ゾーンは、未整理のカーテンの向こう側においやられてしまっている。漫画の
棚が異常に増殖しており、棚の奥には、980円也にポルノビデオがずらりと
ならんでいる。なにが「どこよりも安いだああああ!!」こんなものを見るため
に、私はここまできたのではない!一体、私は電車賃をかけてまで、池上くんだり
にダメダメを確認しにきただけなのかああ、とガックリ肩を落して帰途につく。
ああ、そういえば、大井町のブックオフってまだ見た事ないんだよなあ、まあ、
今日はリサイクル気分ではないのだが、話のネタに見ておくのも悪くないな、と
考え大井町下車。店内に入ると、成る程うわさに違わぬ広さ。これは何かあるかも、
と淡い期待に100円均一棚中心に流す。結果は以下の通り。
d「吸血鬼は金曜日がお好き」夢原龍一(勁文社コスモテーィンズ)100円
d「幻想博物館」中井英夫(講談社文庫)100円
d「魔術師が多すぎる」Rギャレット(早川ミステリ文庫)100円
d「仮面荘の怪事件」Cディクスン(創元推理文庫)100円
「玉輿殺人事件」中嶋孝司(蝸牛社)100円
「花郷の落胤」松殿典子(青磁ビブロス)100年
「小さな巨人」Tバージャー(角川海外ベストセラーズ12:帯)100円
「ブラックウッド館の謎」Cキーン(金の星社)100円
「怪盗道化師」はやみねかおる(講談社:裸本)100円
とまあ、こんなもんでしょ、という釣果であった。
ただ1冊を除いては……

d「キングとジョーカー」Pディキンスン(サンリオSF文庫)100円

◆リサイクル系ばかりまわっていてはいけない筈である。筈なのに。ああ…。
「本を買うならブックオフ〜」
充分なのでは?
◆おお、気がつくと<風読人>さんをアクセス数で上回っていたぞ。自分がHP
を始める前によく書き込ませていただいていた著名サイトだけに嬉しい。ここも
ヤフーから黙殺された<アングラサイト>としては頑張っている方だよね?

◆「三匹の野良犬たち」河野典生(芸文社アクションシリーズ)読了
河野典生こそは変幻自在の作家の一人である。ハードボイルド、ファンタジー、
ジャズ小説、パスティーシュ、ピカレスク、ユーモアPI等など、その想像の翼
に載せて、あらゆるジャンルのエンタテイメントへと読者をいざなう。その作者の
初期に上梓されたお気楽な連作ピカレスクが、この作品である。滅法腕のたちワル
たちが、暴力のプロの鼻をあかして回る痛快連作。だが、3ヶ月前に若い衆に騙さ
れて読んだ高原弘吉とは骨の髄から出来が違う。「格好良さのインフレ」が大バカ
の域に突入してしまった高原作品にはない、小気味良いツイストがこの作品集の
魅力である。なればこそ、高原作品は大外しのC級で、この作品は正しいB級なの
である。全19章のそれぞれが起承転結を備えており、極めてお得用。まずは、
高校生の英坊とその友人の一郎が偶然手にいれた曖昧宿の鍵を使って、情事に酔う
男女の恐喝業に手を染めるところから物語は始まる。第2編で三匹の残り一匹に
して兄貴格の岡本隆が登場。何者かの陰謀で殺人の罪を着せられ5年間の務めを
終えた隆。かつての恋人がバーのマダムに収まっているのを知った彼は、自分を
ムショ送りにした人間の見当をつけ、自らを囮にして彼等を屠る事に成功する。
その現場から逃亡する隆と英坊、一郎の出会いと、隆の更なる復讐劇を描いた
第3編。以降、三匹の野良犬たちは、暴力団の賭場を荒し、汚職絡みの心中事件
の裏をかき、夫婦ものの歪んだ愛憎にケリをつけ、麻薬取引の上前を撥ね、密売
銃器を横から掻っ攫い、挙句に関係した暴力団同士を共食いにさせる。更に、更に
自衛隊パイロット暗殺や、軍事クーデター壊滅といった事件にまで絡んでいく三匹
は、終章「グッドバイ」という言葉を残して颯爽と去っていく。そこには東映やくざ
映画の愁嘆場や暗さはない。どこまでも楽しげに、ワルをこなしていく三匹の物語は、
ルパン3世やゴルゴ13に通じる「犯罪の楽しさ」に満ちているのであった。
かつて日本に暗黒街があった時代のピカレスク・浪漫はどこまでも軽やかである。
たいへんおもしろうございました。


2000年7月4日(火)

◆天の底が抜けたかのような大雨。家に帰れるかどうかも怪しい雨とカミナリに
びびってどこにも寄れず。購入冊数0冊。さすがに梅雨明けだろう、これで。
◆早めに帰れたので書き込みへのレスつけに勤しむ。やっと追いつく。と思いきや
一晩でまた10以上の書き込みが……。むむむ。

◆「怪盗レトン」Gシムノン(角川文庫)読了
「こんなものも読んでいないのか?」路線の極めつけ。メグレものは7割方は読んで
いるのだが、なぜかこのメグレ警部デビュー編については本日に至るまで「積読」の
山の中に埋もれていた。ここのところ河出文庫から以前出ていた作品が相次いで復刊
されファンを喜ばせているが、それでも今本屋で買えるメグレは10冊ないと思われる。
古本渉猟の上級者にとっては、メグレ104編中唯一戦前訳しかない「自由酒場」を
除けば比較的短期間に集めきる事が可能なようだが、雑誌掲載のみの作品も多く、
通常はその全容把握すらおぼつかない。なんでも森英俊氏によれば、光文社9月創刊
の「ジャーロ」には、またしても<最後の「メグレ」もの>が掲載予定だそうで、
一体、この世には幾つメグレものがあるのだろう?という疑問に駆られる。このまま
1年に1作のペースで
<今度こそ最後の「メグレ」もの>の発掘が進めば、それは
それで喜ばしい事ではあるが。

閑話休題「怪盗レトン」である。国際的犯罪組織の首魁と目される「ピートル・ル・
レトン」のパリ入りを告げる暗号急電を受け、雨の北停車場に「北極星号」を待ち受ける
メグレ主任警部。しかし彼の鼻先を手配文書通りの姿をした男が通り過ぎたかと思うと、
「北極星号」の洗面所から、全く同じ顔をした死体が発見される!果して怪盗レトン
は二人いたのか?マジェスティック・ホテルに変名で投宿したレトンは、警察の張り
込みを嘲笑うかのように消え失せる、親交を深めていた米国の実業家とともに。一方、
メグレは死体の遺留品から、とある海辺の町の別荘へと捜査の手を伸ばしていた。
そこで、レトンの妻子と出会うメグレ。そして彼の勘は、その場にレトンが現われる
ことを告げていた、、
影武者を使う神出鬼没の怪盗とメグレの一騎打ち、と書いてしまうと、血湧き肉踊る
ピカレスクを想像してしまうが、全く違う。以降、100編以上綴られる事となる
メグレ・サーガの総てがここに凝縮されているといっても過言ではなかかろう。「二人
の怪盗」という設定が斯くも深刻な人間劇に転じようとは、さしものパリジャンたち
も驚いたのではなかろうか?凶弾に屈せず、部下の死を乗り越え、只管犯人を心理的
に追いつめていく鉄の男メグレの姿は、中期から後期にかけての印象からはかけ離れて
おり、相当にハードボイルドである。が、犯人の心になりきる事で「真相がわかって
しまう」という捜査法は、紛れもなくメグレである。やはり、この作品は読んでおかなく
てはいけない。そして、いつでも本屋に並んでいなければならない。


2000年7月3日(月)

◆朝、訓示があった。どうやら全国安全週間らしい。「人命尊重」が第一義との事。
ところが、部長の発音が不明瞭で「じんめんそうちょう」に聞こえてしまった。
「人面瘡蝶?」おげげ、キモワル。横溝正史読み過ぎ。
◆二階堂黎人さんの日記を読んで、森さんのところに皆で遊びに行った事を知る。
ううう、いいなあ、いいなあ、とひとしきり身悶えてから、「あ、考えてみれば、
Murder by the Mailに直接『売って下さいな』とお邪魔すればいいだけじゃん」
と思い至る。一体、彩古さんや女王様や喜国さんは、お買い物したのだろうか?
◆GAKUさんに送本。なんでも友人の「某叢書あがり牌」らしい。友情だねえ。
◆一寸残業。新橋定点観測のみ。なぜか、月曜日からチャリティ市をやっている
ではないかいな。
d「女人国伝奇(山田風太郎の妖異小説1)」(東都書房)100円
「現代長篇推理小説全集13:水上勉編」(東都書房:函)100円
山風は5年前なら大血風なんだけどなあ。まあ100円だし、許す。
◆さて、7月新番組ラッシュ。とりあえず「リミット」は録画してみる。三谷幸喜
脚本の「合い言葉は勇気」を別格にすれば、後は何を追い掛けようか?「トリック」
と「つぐみへ…」ぐらいかな?

◆「夜の闇のように」Hブリーン(ポケミス)読了
実はこんなものも読んでいない。正直なところ、今、日本の出版界が崩壊して
一切の新刊の流通がとまっても、一生読むに困らないぐらいの備蓄(積読とも
いう)があるわけだ。ふーん。ブリーンは高校の同好会時代、顧問の先生から
借りた「ワイルダー一家」にカー並みの期待を抱いて取り掛かり肩透かしを食って
以来、特にフレイムものは買うだけのシリーズに終っていた。この作品も「東京
泰文社」のシールが入った初版。きっと数千円で買ったのだろうなあ。確か重版
されている筈なので、古書的な価値は既にない(と思う)。よくカーが引き合い
に出され、怪奇趣味・不可能趣味が云々されるのブリーンの作品であるが、この
第2作では催眠術やESPを事件の中心に据えている。こんな話。
ワイルダー一家の事件を手際良く解決し、ライターとしての名声と婚約者まで
手に入れた我等がレイノルド・フレイムであったが、高校時代の憧れの女性リー
の叔父バランタイン弁護士が謎の墜落死を遂げたという記事を見て、むらむらと
義侠心と好奇心が疼き出すのをとめられない。リーと10年ぶりの再会を果たした
彼は、酒場で偶然にも、馴染みの劇作家から最近評判の「催眠術師」プライスに
紹介される。プライスの術の冴えを目の当たりし、そこに危険なものを感じて
逃げ出すようにしてその場を去った二人であったが、叔父の死の謎を追ううちに、
再びプライスとまみえる事となろうとは、神ならぬ身の知る由もなかった。
なんとプライスの術の女性被験者が催眠状態で事件現場に現われ証拠隠滅を図った
のだ!彼女の後を追うフレイム。プライスを取り巻く、奇跡の復活をとげた大リーガー、
その恋人の歌姫、資産家の未亡人と彼女に迫る退役軍人、読心術の使い手といった
曰くありげな社交界の面々。果して元判事の死は「催眠術」による自殺なのか?
彼が転落した時間にアポをとっていた人物とは一体誰なのか?謎が深まる中、新たな
転落死が、フレイムの眼前で起きるのであった。
なんともチグハグな印象のみが残る作品。催眠術を正面から取り上げ、思わせぶり
な原註を多数施す割には、解決との絡み方が中途半端なのである。「皆を集めて
さてと言い」のクライマックスでは、なんと関係者に催眠術をかけて証言させたり
もするのだが、解決の爽快感がないのだ。純粋なフーダニットとしても、納得性に
乏しい。フレイムの捜査法は、行動的な反面、どこか行き当たりばったりな印象を
受ける。もうひと化けする要素は持ちながら、プロットの弱さがこの作品を「幻の
作家の幻の作品」にしてしまったといえよう。


2000年7月2日(日)

◆朝から、掲示板のレスつけ。ひたすらレスつけ。書いても書いても終らない。
私と同じ年頃の日本人で、こんな休日の過ごし方をしている人間は果して何人
いるだろうか?もしかして、一人もいないかもしれない。そう考えるとこれは
これで凄い状態なんだな、ううむ。
◆それでも、レス付けの間隙を縫って古本屋へ行く。今日は総武線沿線定点観測。
まずは、総武線沿線では最もお気に入りの「とにかく安い」お店へ。
d「巨人頭脳」Hハウザー(創元推理文庫)40円
d「イブの時代」多岐川恭(早川JA文庫)40円
d「オーロラの殺意」藤本泉(早川JA文庫)40円
「結晶星団」小松左京(早川JA文庫)40円
「三つ数えろ!」Rディキアラ(二見書房)40円
d「そして死の鐘は鳴る」Cエアード(早川ミステリ文庫)60円
「深紅の帆」アレクサンドル・グリーン(フレア文庫)50円
なんといっても「三つ数えろ!」が嬉しい!!これは探していた。訳者が小鷹信光、
木村二郎というだけで、このハードボイルドゲームブックの「正統性」は証明された
ようなものである。しかも未開封。しかも40円。言う事ございません。グリーン
の文庫は初見。なんでも河出書房の少年少女世界の文学22巻に収録したものを
新訳し、省略部分も全面的に復活させたものだそうな。いやあ、世の中にはいろんな
本があるもんだわい(とか、オツにすましてると、掲示板で突っ込みが入るに
違いないので、この辺にしておこう)。
2軒目はロクなものはない。
「新作ゴジラ」飯野文彦・野村宏平(講談社X文庫)100円
「風と共に去るぜよ」吉岡平(角川ノベルズ)100円
ゴジラの新しい方のX文庫は初見。ふーん、こっちも出ていたんだ。吉岡平は
坂本竜馬対レッド・バトラーという世にも珍妙な取り合わせの作品。あまりの
馬鹿馬鹿しさについ買ってしまう。
3軒目で、個人的には嬉しい買い物。
d「闇の金魚」陳舜臣(講談社:帯)300円
d「青雲の軸」陳舜臣(集英社:帯)300円
d「怒りの菩薩」陳舜臣(桃源社)300円
d「密室探究第2集」鮎川哲也編(講談社文庫)280円
「キャット・ボーイ(上・下)」図子慧(角川スニーカー文庫)400円
「辞書の王国」松殿典子(角川スニーカー文庫)220円
「辞書の暴虐」松殿典子(角川スニーカー文庫)220円
「湖底の美神」松殿理央(青磁ビブロス)100円
ほほほ、陳舜臣の元本をわしわし買ってしまう。いずれも文庫で持っているだけ
の作品。特に「怒りの菩薩」は嬉しいぞい。初見ではないが、通常千円は下らない
本だもんね。図子慧と松殿某は掲示板で日下さんが挙げていたのでとりあえずあった
だけ買ってみる。うーむ、陳作品が300円なのに、なんでこんなものに200円
も出しているのだ、わしは?
最後に今にも雨の落ちてきそうな中を4軒目を手早くチェック。
d「殺意の終着点」鮎川哲也編(徳間文庫)120円
d「サムソンの犯罪」鮎川哲也(徳間文庫)130円
d「金田一耕助のモノローグ」横溝正史(角川文庫)140円
モノローグが最近品不足になっているという噂を聞いたので、とりあえず押える。
鮎哲も安いとつい買っちゃうよなあ。
最寄り駅を出て10m行ったところから雨が降り始める。わあ、大変、大変。
おお慌てでダッシュ。こういう時に限って傘をもってないんだもんなあ。まあ
いい運動にはなったけれど。

◆「ダック・コール」稲見一良(早川JA文庫)読了
ここのところ「ためにする」読書モードに入っているので、純粋に小説を楽しむ
ためだけに、とっておきの切り札を取り出す。幸い、その期待は存分に叶えられた。
「斯くも美しい小説があったのだ」という感動に身悶える、鳥たちと男たちの物語。
泣ける。正直、電車の中で読むべき本ではない。これは、どこかゆったりとした
空間に身をおいて、万全の態勢で読むべき小説である。思わず、居住まいを正さね
ばならぬ気にさせる「世界」がそこにはある。よく「人間もまた自然の一部である」
という言説があるが、基本的にそこに胡散臭さを感じている。自然保護主義者の欺瞞
や傲慢を無効化するために持ち出される言説ではあるのだが、なにか弁解とも虚無と
もつかない袋小路感を感じてしまうのだ。だが、稲見作品の男たちは紛れもなく
「自然の一部」である。自然と対峙するのではなく、ただ自然の中に立つ彼等の姿は
たのもしげであり、儚げであり、そして広い肩幅の向こうに少年のしゅっとした
シルエットが浮かぶ。文学の小難しさはないエンタテイメントでありながら、読む
者に充足感を与えてくれる山本周五郎賞受賞作。この作品集は正しい。以下ミニコメ。
「望遠」商業主義の中で、自らの本能に走った若きカメラマンの姿を描いた佳編。
露骨な商業主義を切り捨てる一方で、作者の筆は自然写真家やマスコミの欺瞞をも
暴いてみせる。勇気ある不器用さに震える。
「パッセンジャー」ある絶滅種の物語。大いなる自然が、臓物と糞尿と破壊の権化
として描かれる。どこまでも無力な一人の若者の見た幻視が悲しい。
「密猟志願」人生から最期の休暇を貰った老人と少年の交感を描いた傑作。この
1編だけでも作者が文壇にいた証明たりうる。「まず、食べる事」。そんな単純な
真理を老人は少年から教わる。<名前>を与える事で世界を切りとったつもりに
なる大人の理屈を笑い飛ばす少年の爽快さが心地よい。脇役の老女の勇猛さも光る。
そして、唐突にしてやるせない結末。キャラクターたちのその後に思いを致さざる
を得ない作品である。
「ホイッパーウィル」日系二世の保安官助手を主人公にしたマンハント小説。
逃亡者チームと追跡者チームのそれぞれが的確に命を吹き込まれており、中編
でありながら、長篇並みのプロットを小気味よく消化していく。幕間に挿入される
日系部隊のエピソードも効果的。物語のラストで明らかにされる題名の意味が泣か
せる。ハードボイルドでありながら、何故か優しい結末にほっとする作品。
「波の枕」死を間近に控えた老人の回想。大海原をたゆたう人間の儚さが<波の
枕>に助けられる。ただそれだけの話なのだが、痛いファンタジーである。鳥が
取り持つ男女の出会いの顛末が触れられないのが心残り。
「デコイとブンタ」無機物である鴨のデコイを語り手にしたファンタジー。デコイ
を拾った少年の息遣いが聞こえる佳作。少年ブンタの目に映ったラストシーンを
思うと胸が締め付けられる。
総論:元気の足りない時の処方箋。用法を誤るとスピンアウトしかねないので、
心してかかること。傑作。


2000年7月1日(土)

◆なんと今年も半年が過ぎてしまった。1日1冊として既に182冊の本を読んで
感想を書いている勘定である。はっと我に帰ると、結構頑張ってるではないですか。
さあ、あと2ヶ月でホームページ開設1周年。まだ1年も経ってない割には大きな
顔してますかそうですか。
◆ピーカン晴れ。ぐんぐん気温の上がる予感。イベント0の完全オフな1日は
古本屋回りしかないでしょう!と久しぶりに京成沿線定点観測へ。一軒め。
「マドンナ・レッド」Jキャロル(三笠書房)100円
「ターバンを巻いた娘」Mモラッツィーニ(文藝春秋)100円
「牙のある時間」佐々木譲(マガジンハウス:帯)100円
d「あしたカルメン通りで」森雅裕(講談社)100円
d「なんでもあり」式貴士(CBSソニー)600円
d「舞姫」佐々木丸美(講談社)100円
d「罪灯」佐々木丸美(講談社)100円
d「ながれ星」佐々木丸美(講談社)100円
「江戸川乱歩殺人原稿」松村喜雄(青樹NV)100円
d「宇宙船ヴァニスの歌」友成純一(双葉NV)100円
d「恐怖の暗黒魔王」友成純一(双葉NV)100円
d「淫獣軍団:凌辱都市1998」友成純一(大陸NV)100円
d「ファンタジーへの誘い」伊藤典夫編(講談社文庫)100円
d「ショートショート劇場2」(双葉社文庫)100円
「殺しはパリで」加納一郎(弘済出版社こだまブックス)100円
わっはっは、佐々木丸美と式貴士の未文庫化ゾーンを久しぶりにゲット。友成も
つい捕獲してしまう。あろうことか先日押し付けるようにして宮澤さんに御譲り
した「江戸川乱歩殺人原稿」も拾っちゃうぞおお!おらおらおらあ!ショート・
ショート劇場は、Picaさんが持ってる巻でしたっけ?
バスを乗り継いで2軒目へ。
「1944年の戦士」WPマッギヴァーン(早川書房:帯)600円
「ユタとふしぎな仲間たち」三浦哲郎(新潮少年文庫2:函・帯)200円
「赤い血黒い血」佐賀潜(アサヒ芸能出版)100円
「すべてを賭けて」結城昌治(東京文芸社)おまけ
「2月計画」JHロバーツ(早川ノヴェルズ)200円
d「死の世界2」Hハリスン(創元推理文庫)100円
マッギヴァーンの戦争小説が嬉しい。佐賀潜もいろんな会社から出ている本なの
だが、何故か縁の無かった本。聞いた事も無い版なのが嬉しいぞお!結城昌治は
状態が悪かったので「これはタダでいいです」との事!凄く儲けた感じ。これって
文庫では何に該当するのかな?「死の世界」はこれでダブリが3巻揃ったかな。
むふふ。「2月計画」は日本を舞台にしたエスピオナージュらしい。さあ、笑え
るだろうか?三浦哲郎は帯つきだったのでつい買ってしまう。一応、妖怪もの
らしい。ああ重い。再びバスに載って3軒目。
d「バトラー弁護に立つ」JDカー(ポケミス:帯)350円
d「ニューヨークの野蛮人」Nクラッド(ポケミス)300円
d「首吊り判事」Bハミルトン(ポケミス:帯)250円
d「レイチェル(上・下)」デュモーリア(ダヴィッド社)800円
「星踊る綺羅の鳴く河」赤江瀑(講談社:帯)800円
赤江瀑は今年の2月の新刊。あらら、こんな本でてたのね?でもこの薄さで定価
1600円はあんまりかも。ポケミスがあれこれ並んでいるが、おらおらクラスは
なし。御手頃価格ゾーンからぶっこ抜く。クラッドがちょいめずかな。レイチェル
は、おそらくダブリだろうとおもったが、装丁が味のあるダヴィッド社版なので、
「ま、いっか」で押える。帰宅して確認したらやはりダブリ。三笠書房版でもって
いた。「ま、いっか!!」。これ以上持てそうにないので、遅めの昼飯でビールを
かっくらって帰宅。駅から汗だくになって帰る。なんちゅう暑さじゃあ!!こういう
時には自家用車を持っている人が羨ましくなる。とりあえず、沢山買ったので満足
する。ダブリばっかりなんだけどさあ。
◆倉木麻衣の1stアルバムを買う。おおおおおお!今日の今日までこれは宇多田
ヒカルの曲だと思っておったわい!!!
世界ふしぎ発見!をボンヤリみていると、お!エンクミか?と思ってしまった。
釈由美子でしたあああ。
オヤヂと呼んでくれい(ぼそ)。
◆ザッピングして7月新番トップの「フードファイト」を見る。ぬぬう。これは
タイガーマスクじゃあねええかああああ。佐野史郎が出ていたのでとりあえず
リアルタイム視聴の対象にしますかね。是非、赤坂尊子とか出て欲しいのだが。
とりあえず来週の田口浩正戦は燃えるかも。ほとんどラスボス級のキャラなのに
なあ。勿体無い。宮沢りえのやつれ方に比べて深田恭子のぷっくりぶりが目立つ
こと目立つこと。

◆「サバイバル殺人事件」池田雄一(双葉NV)読了
シナリオライター出身の作家の特徴は「それなり」である事である。乱歩賞作家
の長坂、野沢然り。器用貧乏の田中文雄も然り。そしてこの池田雄一も然りである。
面白くない訳ではない。文章だってそれなりにしっかりしている。なによりキャラ
の立て方に長け、読者を飽きさせない。「ならばそれでよいではないか?」。成る程、
それでよいのかもしれない。池田雄一の「不帰水道」を読んだ時、そのトンデモ
アリバイトリックを成立させるために、延々、話そのものに仕掛けを施した根性に
敬服したものだ。しかしながら、何故かそこには「薄っぺら」な読後感が残されて
しまうのだ。俳優もいない、ロケ地の風物の助けもない、BGMもない、その筆一本
の世界の中で、彼等の紡ぐ夢はどこまでも「カット!」の声を待っているように
思えてならない。そんな池田雄一の代表作の一つといわれる作品を渉猟の友に持ち
だした。こんな話。
5年前起きた誘拐殺人事件は、何人もの人間を不幸のどん底に叩き込んだ。誘拐
された男の子の父母、父親の愛人、偶然殺人現場を目撃した宅配便の運転手、誤認
逮捕されたコンピュータ技術者。被害者の父が銀行のコンピュータを操作できる
立場にあることを利用した犯人の目論見はまんまと的中し、2億5千万円を手中に
した犯人の行方は杳としてしれなかった。誤認逮捕で総てを失ったコンピュータ
技術者吉岡は、事件を担当した刑事の殺害を切っ掛けに、5年間追い求めた真犯人
の正体に迫る。そこで彼は、事件の関係者たちを集め、真犯人に天誅を下す企みに
協力する事を求めるのであった。緻密な計画に基づいて、真犯人の塾経営者の回り
に罠が張り巡らされていく。しかし、彼等のメンバーが一人、また一人と消されて
いくのであった。サバイバルの果て、最後に笑うものは誰か?
どこまでも類型的な悪役、役割をきちんと割り振られた主役陣、読者サービスの
濃厚な濡れ場描写、効果的にカットバックで挿入される物語の背景、矢継ぎ早の
展開、無能な捜査陣、意表をついたドンデン返し、どこを切っても月曜スペシャル
ドラマの世界である。フーダニット趣味については、すれっからしならば、全体の
2割程度の部分でそれと察しがつく。が、とりあえずは「それなり」に時間つぶし
には使える作品といって良かろう。但し最後のツイストについては「小説」に
こだわった作者の勇み足と申し上げておこう。なんとも珍妙なラストである。