戻る


2000年3月31日(金)

◆就業時間中からごそごそと職場異動の準備。根雪のようになった資料をバサ
バサ捨てていく快感。春よ、春が来たんだわ。
◆帰り道、八重洲ブックセンターで
「気まぐれスターダスト」星新一(出版芸術社:帯)1500円
「カント・アンジェリコ」高野史緒(講談社:帯)1800円
この期に及んで星新一の新刊が読めるのはカイカン。いやあ「いい仕事」です。
高野史緒は信用買い。カストラートの話なんぞ、通常は間違っても手をださない
ジャンルなのだが、周囲の本読み諸氏絶賛の作家につき、とりあえず押える。
◆八重洲、行徳で5店定点観測
「ペット探偵シャーロック・ボーンズ」Jキーン(早川NF文庫)100円
d「プレイボーイ・スパイ3」Hチェイス(創元推理文庫)100円
d「シャドウアイズ」Cプタセク(創元NV)100円
「放課後アイドルクラブ」水野麻里(徳間文庫パステル)100円
水野麻里は早見網元の探究本。これでパステルが揃うとか。うーむ、ご立派。
◆巨人の負けっぷりを堪能した後、新・刑事コロンボの新作をリアルタイムで視聴。
前作の「死を呼ぶジグソー」なんぞはいまだに積録なのだが、今回は少々期待して
臨んだ。なかなか丁寧な作りで犯罪計画がしっかりしており、それが綻びる手掛り
も意表をつかれた。が、最後がどうも釈然としない。パターンとしては旧シリーズの
「ハッサン・サラーの反逆」なのだが、幾らなんでもこれはまずいんじゃない?
コロンボが終る頃には、我等がチームの敗戦も確定していた。うーん、開幕から
延長11回サヨナラ負けとは、疲れる試合をやりよるわい。ああ、エア・チェック
派にとってはまた辛い日々の始まりである。

◆「手をやく捜査網」Mアリンガム(六興キャンドルミステリ)読了
楽志さんの百均ゲット報告に刺激されて手に取ってみたキャンミス。なにせこち
たら1冊当りうん千円で入手した身の上、読まないうちからまた百均で拾われては
堪ったものではない。さて、アリンガムである。「幽霊の死」「反逆者の財布」の
あのアリンガムである。とにかくこれほどイメージが定まらない作家も珍しい。
軽妙なのか?重厚なのか?本格なのか?サスペンスなのか?エスピオナージュなのか?
結局のところ、翻訳作品の少なさ故なのであろう。あのクリスティだって「ビッグ4」
と「白昼の悪魔」と「複数の時計」のみ紹介されたらどんな作家だと思われる事か?
ポワロって変な探偵って事になるんだろうなあ。ブレイクのストレンジウエイズも
そうなのだが、フーダニットも諜報もこなすというのは英国産古典探偵のたしなみ
なのであろうか?これは突き詰めればホームズあたりにまで溯れるのかもしれない。
で、これは軽妙な本格作品。典型的お館もののビレッジ・フーダニットである。
ケンブリッジに建つ旧家の館「ソクラテス園」。そこは、齢八十を越えながらも
矍鑠たるキャロラインという教授未亡人が君臨する館であった。館には彼女の二人
の娘ジューリアとキティー、息子のウィリアム、甥のアンドルー、更にアンドルー
の姪にあたるジョイスが住んでいた。妙齢のジョイスを除いては時間のとまった
「老人の園」という趣のあるその館で変事が起きた。穀潰しのアンドルーが失踪
してしまったのである。ジョイスは、許婚の弁護士マーカスを通じてキャンピオン
に捜査を依頼する。しかし、1週間後アンドルーは縛られ銃で頭を吹き飛ばされた
死体となって発見された。ようやく警察の捜査が始まるが、矢継ぎ早に今度は
ジューリアが毒殺されてしまう。一体誰がなんのためにこの無害な老人たちを
殺害したのか?記憶障害で徘徊するウィリアム、心霊に恐れおののくキティー、
更には一族の面汚しといわれるジョージが現われ事件は昏迷の度合いを深めて
いく。捜査陣を嘲笑うように屋敷の窓に残された奇怪なマークは何を物語るのか?
キャンピオンは、館に仕組まれた悪意の正体に迫っていく。
お約束ながらも意外な犯人。油断して読んでいたので完全に意表を突かれた。
黄金期初期(1932年作品)なのだから、これぐらいの稚気は当然なのかもしれ
ないが、アリンガムというブランドがなによりのレッド・へリングになったと
いえよう。まあ、うん千円出して買うほどの話ではないのだが、キャンピオンの
名探偵ぶりもなかなかのもので、作中キャロラインの前で完全にガキ扱いされる
というエピソードもいかにも英国の伝統を思わせる。一部、今の時代からは辛い
描写もあるが、時代を考えれば致し方あるまい。どこか「本格」をおちょくった
雰囲気はあるものの、まずは読んで損はない。また、あの鈴木幸夫訳というので
おっかなビックリでとりかかったのだが、意外に読みやすかった事を付言しておく。


2000年3月30日(木)

◆西大島、南砂町定点観測。
d「暗くなるまで待て」Tケンリック(角川文庫)210円
d「三人のイカれる男たち」Tケンリック(角川文庫:帯)240円
d「誰がために爆弾は鳴る」Tケンリック(角川文庫:帯)240円
「シャレード」Pストーン(早川NV文庫)180円
d「ショート・ショート劇場5」(双葉文庫)50円
「ルドルフォ1」図子慧(白泉社)100円
「なんか島開拓史」原岳人(新潮社:帯)100円
「ベートーヴェン通りの死んだ鳩」Sフラー(筑摩書房)950円
「怪獣大戦争」黒沼健・吉田誠・小林晋一郎(出版芸術社:帯)650円
shakaさんむけケンリック3歩前進。残すところ「バーニーよ銃をとれ」のみ。
「怪獣大戦争」は怪獣小説全集2なんだそうだ。これは平成5年の本というのだが
初めてみた。1巻は香山滋ばかりなので全集を持っていれば足りるのかな?
◆帰宅すると、くりさんと松本さんがら本が到着している。
「ふたり物語」UKル・グイン(コバルト文庫)交換
「消えた死体」ボワロー&ナルスジャック(偕成社)交換
「サーバーのイヌ・犬・いぬ」Jサーバー(ハヤカワ文庫NV)交換
よっしゃあ!!来た来たああ!!
◆またしても花粉症炸裂。夜レスのつもりだったが、薬をのんでとりあえず床
につく。辛い。眠いが眠れず悶々とした一夜を過ごす。

◆「奇妙な触れ合い」Tスタージョン(早川SFシリーズ)読了
その翻訳された短編集3冊がいずれも入手困難となっているために、絶版効果で
殆ど神格化されてしまった趣のあるスタージョンだが、なあに、ただの生きのいい
50年代SFである。なるほどどこか「変」な話は多いが、それが内面に向かって
いるわけでも、韜晦な文学方面を向いているわけではない。素直に楽しめばよいの
である。以下ミニコメ。
「英雄コステロ氏」ファウンデーションのミュールがマッドであれば、どうなった
か?という世界。徐々に狂った思考に絡めとられていく世界や人々の描写が巧み。
どこか初代スタートレックの安っぽいセットを思わせるアイデア・ストーリー。
「おまえのやさしい手で」「人間以上」な「幼年期の終り」。異能者と思われた
者が実は、という逆転が心地よい。失われた文明テーマの王道を行く起伏に富んだ
ストーリーがよいが、終盤に至ってのスペクタクル・シーンは主人公ならずとも
衝撃的である。
「みどり猿との情事」出だしはどう見ても「浦島太郎」である。西洋にその類いの
御伽噺があったとも思えないのだが、スタージョンはどこで仕入れたのであろう。
プロットは艶笑もの。あまり深刻に考えず笑い飛ばすに限る話だと思う。
「リューエリン向きの犯罪」「変」なクライム・ストーリーである。純粋培養された
男と奇妙な論理に支えられた女の「背徳と誇り」の物語。あまりにも皮肉で残酷な
オチに愕然とする。面白うてやがて哀しきラヴ・ストーリーだが、こんな話は
ミステリ系でも読んだ事がない。
「空がひらける」個人的には本作品集のベスト。はしたなく格好いいピカレスクを
でありながら、最後には「善」を説く構成をうざったいと見る向きもあるかも
しれない。が、小気味良い場面切り替えで抜群のリーダビリティーを誇るこの作品
はその多彩な稚気溢れるSFガジェットとも相俟って50年代SFの一つの理想形
であるように思えてならない。永遠が一瞬に凝縮される幕切れも楽しい。
「奇妙な触れ合い」人魚の性行動を説明しながら人間の交感と描いた異色編。
真面目に語られれば語られるほど、「人魚」の「変」が際立ってくる。
「もう一人のセリア」屋根裏の散歩者の見た尋常ならざる「女性」の生態。今の
SFX技術で是非映像化して欲しい作品である。ただこの展開は趣味ではない。
味悪感が高い。


2000年3月29日(水)

◆10時過ぎにM氏を最寄り駅まで送って帰宅後二度寝。二日酔で気分優れず、
ぐずぐずと日記書きと掲示板へのレス付け。夕刻から神田の牛タン屋で歓送会。
結局、本屋にも古本屋にも寄れずじまい。皆さん、呑み過ぎには注意しませう。
◆DASACON3のオークション本がリストアップされている。彩古さんの
出品本は相変わらず濃いなあ。ダイジマンさんも函へのこだわりが如実に現わ
れていて良い。で、ものの見事にミステリはない。「DASACONですから」。

◆「第三の演出者」戸板康二(桃源社)読了
中村雅楽ものの第二長篇にして最後の長篇。桃源社の「書下し推理小説全集」
第二期第8巻として世に送られたが、その後は出版の機会に恵まれず、今なお入
手困難な作品となっている。個人的にはマニアの黎明期にビギナーズ・ラックで
拾った高校生時代の思い出の1冊。神戸元町の今は亡き「こばると書房」で買っ
た本である。この本を買って間もなく古本屋自体がなくなってしまったのが強烈
な原体験(「そうか!古本屋ってなくなるのだ」という事を生まれて初めて知った
次第)として記憶に残っている。掲示板の方で「文庫本にすれば200頁」と
いう分量である事を教えてもらった事もあって、体調の優れない時の切り札にと、
この28年ものの積読本を取り出してみた。
ツバメ座という劇団の主宰者であった加倉井誠の病没後、思わぬところから彼の
遺作脚本「虚偽と真実」が発見される。座員からの声で追悼公演への気運が盛り
あがるが、「若い妻の不貞に苦しむ教授」という加倉井自身を模した脚本の設定
にはどこか禍禍しいものがあった。人の行動を読み、至るところに自筆のメモを
おいて人を操るのが好きだった加倉井。その娘ほども歳の離れた妻:瑠璃子は
夫の千里眼を半ば超自然的な能力として認め、没後なおその思念が座員たちを
支配しているという思いにとらわれていた。そしてその「思念」は一発の弾丸
となって、瑠璃子が頼りにしていたある俳優の命を奪う事となるのである。
しかし、中村雅楽の慧眼は事件の背後に、加倉井とは別の悪意が存在する事を
見抜くのであった。
関係者の証言をお馴染みの演劇記者竹野悠太郎がとりまとめた、という構成を
とっており、リーダビリティーに富んだ多重視点が心地よい。徐々に浮き彫り
にされていく複雑な人間関係、妄執とも言える「操り」の罠、プロバビリティ
の犯罪の裏に潜む殺意、そして安楽椅子探偵:中村雅楽の名推理と、ファンなら
ずとも読んでおきたい作品である。ただ作者の仕掛けたトリックは相当に眉唾
ものであり、どこまで実現性があるかとなると少々辛い。科学捜査が不能な山荘
ものならいざ知らず、いくら昭和30年代とはいえ、これはないだろう。劇中劇
的メタ構造と「操り」という斬新さが今尚充分に鑑賞にたえるものである事を思え
ば、このトリックの危うさが返す返すも残念である。


2000年3月28日(火)

◆あああ、しまったああ!!「世にも奇妙な物語」を取り逃がしたああ!!
政宗九さんの日記で、昨晩放映のあった事を知っているようでは、最早テレビっ子
とはいえない(>誰が「子」やねん?)結構真面目に録画してきた番組なので
ダメージ大きい。朝からへなへな。あああ、楽志さんまで、日記に書いとるわい。
うがあうがあ。
◆雨の中、某FCのM氏と神保町で待ち合わせて呑む。待ち合わせの前に2軒だけ
チェック。
d「キャンティとコカコーラ」Cエクスブライヤ(教養文庫)100円
d「ドナデュの遺書」Gシムノン(集英社文庫)100円
「虹が消える」多岐川恭(河出書房新社:初版)100円
「警視廳物語」樫原一郎(文藝春秋新社:初版)100円
「死刑執行人からの手紙」小林穂波(悠飛社:帯)100円
「快楽の法則」Fゴードン(角川海外ベストセラーシリーズ4)100円
「’97ミステリー・BESTのベスト」(光文社)500円
樫原一郎の本は昭和33年の初版カバー。これでグラシン紙でもかけておけば
20倍ぐらいの値をつけていても不思議ではない本。多岐川恭の本も千円以下
では見かけた事がない。ラッキー。「死刑執行人〜」はフジテレビのニュース
キャスターが書いたとかいうゲテモノ。帯に「斉藤栄氏もおもしろいと絶賛!」
とある。この帯で元はとったな。「おもしろい」。光文社の本はEQの書評欄を
まとめた志の低い本。後になって「これを持っていないと『EQ』コンプリート
とは言えない」とかいわれるのも癪なので押える。
◆M氏と神保町駅上の居酒屋で閉店まで粘る。場の勢いで、拙宅に誘拐。明方
まで本を肴におしゃべり。沈没。ちゃっかり二人とも翌日年休をとっているので
あった。M氏からの頂きもので、
d「三つ首塔」横溝正史(角川文庫:初版:帯)交換
角川横溝文庫初版クエスト一歩前進。いよいよM3である。なにが凄いといって
この本、「火曜日の女」(いとこ同士)の帯がついているのである。ありがとう
ございますありがとうございます。

◆「ALUMAアルーマ」高瀬美恵(ぶんか社)読了
ジュニア界の若き女王が放った初めての大人向け音楽ホラー。「SFバカ本」や
わらべ歌ホラー集で読んだ短編が光っていたので、一つ試してみようと手にとっ
た。アンソロジーのいいところは作品のバラエティもさることながら、作家の
見本市でもあること。好みの作家の幅を広げるには最善手ではなかろうか?
現に、ジョージ.R.R.マーティンなどは「スニーカー」掲載の作品でその
面白さを知った分けだしなあ。さてこの作品は、作者後書きによれば映画「ストレ
ンジ・デイズ」の俳優を当てて読むべき作品のようであるが、それを知らずとも
充分に楽しめる。こんな話。
身体を壊し一線から退いていた元売れっ子歌手の土岐綾乃が焼死する。彼女を
スターに育て上げた音楽プロデューサー碓氷は、綾乃を捨て辻井珠姫という新しい
「人形」をデビューさせる。綾乃が朦朧とした意識の底で口ずさんでいた謎めいた
言葉を歌詞にしたデビュー曲「ALUMA」はたちまちヒットチャートを駆け上がる。
しかしその歌は、冥界から綾乃を呼び出し、根暗な少女たちに異界を垣間見せる
のだった。集団ヒステリー事件の起こったステージを後にしてかつての恋人府川亮の
元に転がり込む珠姫。果して「ALUMA」に込められた秘密とは?芸能界を
舞台とした新たな都市伝説が紡ぎ上げられていく、、、
巨漢のピアニスト西条と料理好きの女丈夫橋本という二人の脇役が異彩を放ち
最後には完全に主役を食ってしまう展開が嬉しい。ホラーとしてはおとなしめの
話であり、同じく音楽ホラーである「妖都」辺りと比べると全然甘い。「ALUMA」
の解明も今ひとつかな。だが等身大の少女達の描写は、さすがジュニアの仕事師
高瀬美恵である。読後感は爽やか。まあたまには、こういう緩い話もいいか。


2000年3月27日(月)

◆2日間掲示板のレスつけをサボるともう大変。レス付けに2時間半かかる。
カット&ペーストで「メモ帳」に貼り込んだ段階で容量オーバーになったのには
愕然、一瞬気が遠のいた。
◆ちょっと残業。ケンリック捕獲に、東西線2駅定点観測をかますも手応えなし。
d「ネオン・タフ」Tケンリック(角川文庫)100円
「トムは真夜中の庭で」Pピアス(岩波少年文庫)200円
「パラダイス」Mレズニック(早川SF文庫)100円
d「鉄の夢」Nスピンラッド(早川SF文庫)100円
「SFバカ本:だるま編」岬兄悟・大原まり子編(広済堂文庫)270円
「風の名前」妹尾ゆふ子(プランニング・ハウス)200円
「Sの悲劇」中町信(青樹社)100円
「エミリーの記憶」谷甲州(徳間書店)100円
「ARUMA」高瀬美恵(ぶんか社:帯)800円
えっへっへ、昨晩「銀河通信」さんに「本とーに見ない」と書いた「鉄の夢」
の文庫版をゲット。ハードカバー版しか持っていなかったので、これは嬉しい。
しかも100円!わたくし的にはこれで充分である。昨日の「東欧SF」に続き
SFの探求書がサクサク入手できているぞ。
◆文生堂からカタログ着。欲しいのは1冊だけ。しかし、これは皆も一緒だな。
絶対入手は無理ね。それにしても、6千円とは文生堂にしては安い値付けだな。
◆膳所さんから交換本到着
d「マスクのかげに」Oヘーグストランド(TBSブリタニカ)交換
これは須川さんにお回しする予定。

◆「暗い燈台」Aガーヴ(ポケミス)読了
「ポケミスにおけるガーヴ」最後の作品。顧みすれば、100番台からコンスタント
に紹介されてきた作家であり、今なお復刊フェアなどに名を連ねるところを見ると
それなりに人気があるのであろう。なるほど、レギュラー探偵を用いない、巻き
込まれ型のラブ・サスペンスを基本とする作風は、火曜サスペンスや土曜ワイド
劇場向きである。ただサスペンスに流されるだけでなく、フーダニットとしての
工夫が凝らされているところも人気の秘密であろう。また「モスコー殺人事件」
という翻訳ミステリ収集上十指に入る難物がある事もあって、マニア的にも印象
に残る作家である。私にとってもサスペンス派から好みの作家をあげれば、アイ
リッシュの次にガーヴが来る。きちんと仕事はしてくれる、という信頼があるのだ。
が、この作品は少々期待外れ。強盗に失敗した挙句、言い訳の効かない殺人を
犯した男女4人組の若者が警察の手を逃れて老朽船で海に出る。ところが浸水・
座礁、命からがら沖合いに立つ燈台に救助される。燈台には3人の台員がいた。
海の怖さを知りつつ、海を愛し、誇りをもって孤独な任務に勤しむ「海の修道士」
とも呼ぶべき彼等と燈台をジャックした4人の若者の駈け引きを描いた作品。
主犯格の幼稚な英雄主義とカリスマのメッキが剥がれていく過程の描写や、緊張感
溢れるプロットは、さすがガーヴと思わせるが、いかんせんツイストのない一本
調子のサスペンスでは、今の時代辛いものがある。ジュリアン・シモンズの主唱する
クライム・ノヴェルの定義には適合した作品なのかもしれないが、私にとっては
まさにポケミス暗黒時代を象徴する1冊であった。170頁強という短さがせめて
もの救い。これ以降、ガーヴの紹介が止まったのも何となく理解できるというもの
である。


2000年3月26日(日)

◆葵若葉は、良い!!もうクウガは、このコのために見続ける事に決めた!
◆お問い合わせ:葉山さん・戸田さん・やよいさんへ
別に急がないのですが「ショパンの告発」は今どなたの手元にあるのでしょうか?
年度末につき一応所在を確認させて頂きまする。掲示板でもメールでも結構です
から、ご一報下され。
◆風読人さんでスタウトの「The Black Mountain」の翻訳書が出版されていた
事を知って、早速メールで申し込んでみる。いやあこれは知りませんでした。
日本にもいろんな人がいるもんですのう。
◆ROM氏への返信書き、川口文庫への注文書き、くりさん・松本さん・膳所
さんへの本の梱包、昨日の日記書きであっという間に1日が過ぎてしまう。
一連を発送方々、shakaさん用ケンリック狩りに新検見川定点観測。
d「消えたV1発射基地」Tケンリック(角川文庫)200円
d「上海サプライズ」Tケンリック(角川文庫)200円
d「チャイナホワイト」Tケンリック(角川文庫:帯)250円
「秘密の探偵術」加納一郎(豆たぬきの本)100円
d「魔法の月の血闘」Eハミルトン(早川SF文庫)130円
「亡霊たちのフォークロア」石飛卓美(実業之日本社:帯)300円
「悪魔のベッド」Jレイ(岩波少年文庫)200円
「バラの構図」KMペイトン(岩波少年文庫)200円
「人狐伝」石飛卓美(徳間NV・MIO:帯)200円
「透明戦線」田中文雄(広済堂NV:帯)200円
「にごりえ殺人事件」加納一郎(双葉社NV)200円
「収容所惑星」A&Bストルガツキー(早川海外SF)300円
「SF−その歴史とヴィジョン」スコールズ&ラブキン(TBSブリタニカ)200円
「東欧SF傑作集(上・下)」(創元推理文庫)310円
徳間のMIOが一歩前進。開化事件帖の第0作「にごりえ殺人事件」が嬉しい
ところ。これで5作揃ったぞ。で、これ1アイテムで「血風」ものは、言うまでも
なく「東欧SF傑作集(上・下)」!!今や「ロシアSF」と並んで創元SF
文庫の効き目中の効き目。いやあ、善行を積めば古本の神様も微笑んでくれる
ようじゃわい。揃っていなかっただけに喜びもひとしお。うーむ、ダサコン3
に向けてSFの風が吹いているかも。

◆「宇宙探査機 迷惑一番」神林長平(光文社文庫)読了
神林初心者に格好の入門書なのだそうである。先ずは、意思を持った機械が出て
きて、舞台は戦場で、登場人物達は軍人、しかも「世界」を弄ぶはちゃはちゃぶり
が過不足なく神林長平!との事である。で、とりあえず読んでみた。
うーん、正直に申しましょう。「よくわからん」。これをイヒイヒ笑いながら
読み飛ばせるほど、私はSF読みではない。
とにかく、場面毎に微妙に「世界」がズレていくため、物語の背景が掴みがたい。
その多元宇宙の中心にあるべき<座標0>には、脳天気なアホダラメカが一機。
その正体がまた「世界」ごとに異なるものだから、最後にはどうでもよくなって
しまう。このやっかいな時空おちょくり探査機に不幸にも遭遇してしまった5人
の戦闘パイロットが、歪んだ時空に絡め取られ、彼等の本来いた世界とは似て非
なる世界で脳天気な扱いを受けて途方にくれる。そして、一つの世界から脱出を
図るたびに、爆発!大惨事!!気がつくと、「偶然、幸運にも生き延びた」事象
に飛び込んでいる自分達を発見するという繰り返し。行く先々で「生きた死人」
扱いを受ける彼等にとって、それは「脳天気な地獄巡り」に他ならないのであった。
というわけで物語はさしたる盛り上がりもないままに、だらだらと終ってしまう。
「起承転結」という物語の基本を意識的に外す事でメタっぽさを出しているのか
もしれないのだが、起承転消・起承転消・起承転・・・というダウナーなリフレ
インは、予定調和に慣らされ過ぎたミステリ読みには辛いものがあった。それが
また読み解きを要求する文体とは程遠い軽やかなすちゃらか文体で描かれるもの
だから、全くもって途方にくれてしまうのであった。読み手を選ぶハード脳天気
SFとでも呼べばいいのか?とりあえず、火浦功の後書きは傑作なので、ここだ
けは安心して「読みなさい」。


2000年3月25日(土)

◆新小岩・小岩定点観測。先週「Mystery's Realm」に参加した鬼どもに荒ら
されぺんぺん草一本残っていまいと思ったが、ダメモトで攻めてみる。
「大冒険(上・下)」朝松健(中公NV)各200円
「ボイド−星の方舟」Fハーバート(小学館)800円
「アシモフの科学者列伝」Iアシモフ(小学館:帯)700円
「探偵キムと仲間たち」IKホルム(評論社)200円
「ポセンドン・アドベンチャー」Pギャリコ(早川書房)500円
「魔界剣士タケル」宮崎惇(ソノラマ文庫)100円
「森村誠一氏推理小説の間違い探し」秋庭俊孝(アロー出版社)100円
「暗いルアンヌの旅」Aエドワーズ(講談社)100円
「キングコングは死んだ」石上三登志(フィルムアート社)200円
「ホワイト・チャペルの恐怖(上・下)」EBハナ(扶桑社文庫)各100円
「蒼ざめた肌」戸川昌子(ポケット文春)50円
「憎悪の化石:鮎川哲也長篇推理小説全集2」鮎川哲也(立風書房)250円
「新宿警察:新宿広場」藤原伸爾(報知新聞社)100円
「スター狩り」Bマルツバーグ(三笠書房)200円
うーむ、何事も諦めず、とりあえず行ってみるものである。なんといっても「新宿
警察」クエストがまた一歩進んだのが嬉しい。これも「活字探偵団」のリスト外
の作品集。報知新聞社版は2冊目である。14編収録。「新宿製人魚」「新宿西口
ビル街殺人事件」などの見知らぬ題名が踊っている。ミステリではないが、ゲテモノ
ではマルツバーグの「スター狩り」が当り。何も星を狩るSFではない。ハリウッド
の有名女優との情事を夢想する男を描いた「ポルノ版:虹をつかむ男」だそうな。
ここ半年のゲテモノ漁の中でも特筆すべき釣果でありましょう。こんな本出てる事
すら知らんかったわい。半信半疑であったが、家に帰って検索すると海外SF総
リストのマルツバーグの項に(原題の「SCREEN」で)リストアップされていた。
世間的には、どうかしらんが、ワタクシ的には「ミニ血風」な一日。むふふ。
◆お詫び。私、kashibaは、昨日まで和久峻三の乱歩賞作品を勘違いしておりました。
「暗黒告知」は小林久三だよね。和久峻三の受賞作は「仮面法廷」であります。
ああ、お恥ずかしい。

◆「忘られぬ死」Aクリスティー(ポケミス)読了
未読のクリスティーで本格推理に属するのはとうとうこれだけになってしまった。
元になった短編の印象が強いので何となく後回しにしているうちに27年ものの
積読になっていた作品。クリスティの毒殺トリックの中でも有名な話なので、初読
ながらも再読であるかのような印象があった。華やかな姉ローズマリーがパーティの
最中に青酸カリで服毒「自殺」を遂げて1年。主人公アイリスは姉の遺産を相続
していた。彼女に言い寄るジゴロめいたアメリカ人トニー。一方ローズマリーの
夫ジョージのもとには「ローズマリーの死は自殺ではない」という謎の手紙が届け
られる。ローズマリーの浮気相手であった下院議員スティーヴ、その彼を献身的に
愛する名家出の妻アレキサンドラ、ジョージの忠実な女秘書ルス、1年前の事件
に居合わせた人々を同じレストランに招待するジョージ。彼にはある企みがあった。
しかしその席で新たな「自殺」が起きる事は誰にも予想できなかった。ただ一人
犯人を除いては。
巧い、実に巧い。トリックやミスディレクションは承知の上で読んだのだが、
それでも実に楽しめた。幕が開いた段階では既に死んでいるローズマリーなる女性
の姿が、関係者の内面を描く事で鮮やかに浮き彫りにされていく。贅沢で、気まま
で、一時の快楽に忠実に行動して周囲の人間を振り回す奔放な大金持ちの美女。
再演される死の舞台にむけて徐々に紡がれていく緊張感。そして唐突にして意表
を突く展開。準レギュラー探偵であるレイス大佐の使い方も見事で、最後まで読者
を翻弄しつづける作者の技にはほとほと感心せざるを得ない。昨年来、読み残しの
クリスティー作品を何冊か読んできたが、いずれも冒険系の作品ばかりであり、
正直なところ左程は感心しなかった。しかし、この脂の乗り切った頃(1945年
作品)の本格推理はやはり格が違う。ハーレクイン風の人間関係、圧倒的なリーダ
ビリティ、シンプルなトリック、意外な犯人。どこを切っても初心者からマニア
までを満足させる作品。改めてクリスティの強さを認識させられた。皆さん、
紛い物のクリスティーの後継者の作品読んでいる暇があったら、とりあえず本家
の本格作品だけは眼を通しておかれた方がいいですよ。はい。


2000年3月24日(金)

◆給料日。うかれてちょっと遠方のブックオフを覗くも、収獲なし。むむむ。
悔しいので、並んでいた「ベルセルク」を3巻から18巻まで一気買いの一気
読み。疲れた。2巻までは読んでいたが、なかなか古本屋で揃っていないので
数年間ほったらかしにしていた大河バイオレンス・ホラー・「剣と魔法」漫画。
全然終ってねえー。
2巻までの印象では、このまま敵のボスキャラをやっつけながら進むのかと思い
きや、なんと過去の因縁話に14巻までかけている!!これは凄い!なんたる掟破り!!
うーん、よくぞこのゆったりとした展開に読者がついていったものである。で、
19巻は出ているのだろうか?でも、また10巻ぐらい貯まるまで放っておくのが、
正しい読み方なんだろうがなあ。
◆無理矢理、文字の本で拾ったのはこんなところ。
「学校の怪談」岡崎弘明(集英社文庫)100円
「都立特捜隊T3」早見裕司(エニックス文庫)100円
d「いさましいちびのトースター」TMデッシュ(早川書房:帯)100円
「英雄ラファシ伝」岡崎弘明(新潮社:帯)100円
「『銀河英雄伝説』読本」らいとすたっふ編(徳間書店)700円
「忍法甲州路」山田風太郎(講談社大衆文学館)550円
銀英伝に単行本未収録作があるとは知らなかった。岡崎弘明のファンタジーノベル
大賞優秀賞作は2刷。「ちびのトースター」は文庫が現役だが、吾妻マニアのため
に押える。あとはマンガで、
「ゼリー・ビーンズ」ふくやまけいこ(徳間書店)
おお、この頃って「リュウ」買ってたんだよなあ。懐かし過ぎ。

◆「末枯れの花守り」菅浩江(角川書店)読了
らじ丼に乗せられて虎の子の菅浩江を取り出す。作者の日本趣味が横溢した植物
テーマの華麗系連作ファンタジー。5編収録。「いずれの御時にか、花愛ずる姫君
ふたかたおわし候。名を永世と常世。時の泡沫に漂いつつ物狂おしき乙女の心を
花に変じては、たはむれる事幾千度。而して姫君方に仇なす鬼あり。時津帝日照間
の臣下なる青葉時実、侍従が五郎十郎ともに主命なる為すがままの時之理を果たさん
とす。彼の者どもを<花守り>といふ。」てな感じの話。改めて梗概を書くと、一種
のタイムパトロールものであった事がわかる。そう本作は純和風幻想譚のような
顔をしているが、その実「スガヒロエ調」タイムボカン・シリーズなのである。
山場の活劇シーンになると歌舞伎や日舞の背景が広がり、永世と常世は長刀奥女中
軍団を繰り出し「やあやあ」と時実達と立ち回りを演じたうえで、「おのれー、
今度こそみておれーー」とか言いながら逃げ去っていく。これをタイムボカン
と言わずして何をタイムボカンと申しましょうや?いや、勿論、これは天下の
暴論で、普通に読めば、日本を彩る小道具を縦横に操り、切々たる乙女心を花に
託して、流麗にして歯切れのよい文体で綴った一級のエンタテイメントである。
さはさりながら、なぜかBGMには雅楽ではなくて山本正之が流れている気が
してしまうのはアニメおたくの哀しい性か。以下、ミニコメ。
「朝顔」メンバー、背景紹介編。典型的いじけ少女漫画のプロットを借景して
壮大なドラマを感じさせる技はさすがである。結語もツボ。
「曼殊沙華」「さあ!泣け」といわんばかりの子供と動物と戦争哀歌。しかも
第2話にして「悪」が勝ってしまう。そのパターン破りの潔さに脱帽。泣ける。
「寒牡丹」女優ネタ。色彩的にも絢爛さが光る話。主人公の啖呵が勇ましい。
どことなく姫川亜弓やお蝶夫人がダブってみえる。
「山百合」花言葉ネタから植物学方面に振ったところがいかにもスガヒロエ。
少々理が勝ち過ぎている感もあるが、これは女性でなければ書けない話。
「老松」元気のいいおばあちゃんが印象に残る。プロットも冴えており、終わり
でありながら終らないという演出が心憎い。
総論:幾らでも話を作れそうな設定を準備しておきながら、敢えて掟破りの回を
中心に構成した「選集」という印象。もう少しパターンの話も楽しませて欲しかった
が、これはこれで良し。それにしても自分の日本の文物に関する知識のなさには
うんざりする。

◆「本当にミステリ系なのか?このサイト」という一日ですのう。明日は頑張るぞ!!


2000年3月23日(木)

◆花粉症爆発。人間廃業して南極でペンギンになってエンクミに遊んでもらいたい
と願う今日この頃。「使い物にならないよう」と思っていたら職場異動発令。
うがあうがあ。気力もめげて早めに家に帰って薬飲んで寝る。それでも薬屋の隣で
古本買う。
d「あどけない女優」戸板康二(文春文庫)150円
「マリー事件簿の女たち」中津文彦(実業之日本社)200円
「虚数の眼」湯川薫(徳間NV:帯)350円
うーん、どうも見かけない本だと中津文彦まで買ってしまうよな。
◆「暗い鏡の中で」に要望が2通。うーん、さすがマクロイ!早川書房はとっとと
再刊するように。で、今回は松本さんに嫁がせます。中村さんごめんなさい。
◆ROM氏から手紙を頂く。不用意にこの場所に書いた「違和感」発言に対する
ご確認。週末に時間をとって返信致しますが、「違和感」は何だか特定はできない
ところが「違和感」なのでありまして、一つには「同人誌」に対するスタンスの
部分でしょうか?同人誌活動を長らくやってきたものとして、やはりインターネット
の普及というのものは、衝撃でありました。情報発信の容易性、圧倒的な伝播力、
そしてなによりレスポンスの速さ。さすがにまだ画像については紙媒体には引けを
取るものの、文章であれば、これでよろしいのでは?というのが素直な実感である
わけです。だから紙媒体の編集で苦労されているのであれば、こういう便利な
ものもありますよ、という事が1点。ROM氏やMK氏、小林晋氏がネット上で
原書レビューをされて、塚田・真田両氏の往復書簡がリアルタイムで掲示板を賑わし、
横で私が古本市場を開いてる、そんなブックマークの集合がネット上でバーチャルに
ROMという同人誌を構成する、というのが一つの理想かな、などと夢想して
しまうのでありました。以上は媒体の問題。
次にスタンスの話でいえば、「同人誌」活動は楽しいものであるべきである、って
事でしょうか。
「楽しいからやる、楽しくなくなったからやめる」というのが私の同人誌活動に
対するスタンスであり、それはこのサイトについても同様です。ROM108号
のROM氏の発言を読んでいて、その辺りが良く見えないまま、氏のミステリに
対するスタンス部分が立ってきたものですから、「なんとなく『違和感』」に
なったのだと思います。今回頂いたお手紙でその辺りの事は、理解できましたの
で、そんな線でご返信するつもりでおります。

◆「夢の咲く街」森下一仁(コバルト文庫)読了
先日まで出ている事すらしらなかった森下一仁3冊目のコバルト文庫。更に驚いた
事には、なんとショート・ショート集!!角川の「バラエティー」に連載された
ショート・ショート全21編をマクラのエッセイ込みで完全収録。いやあ、これ
は参った。ショート・ショート偏愛主義者として、この本を知らなかったという
のは、実にお恥ずかしい限り。中身は多少ハチャハチャ領域に踏み込んでしまった
ものもあるが、叙情派森下一仁の面目躍如たるびいどろ細工の如きどこか懐かしい
イマジネーション溢れる作品も多く、非常に楽しめた。もし、コバルト文庫の
コーナーでみかけたら、即押えられる事をお勧めする。これは、買いです。
ショート・ショートにコメントをつけるのは野暮の極致なので、印象に残った
作品のみをピック・アップしておく。
タルホっぽい不条理が嬉しい「デイジュした午後」、美しい食べ物ネタ「スープ
の中の嵐」、アタゴオル物語を彷彿とさせる音楽もの「その気じゃないのに」、
郷愁の作家森下一仁の真骨頂「無意識クラブ」、嫌味なく不思議なセックスを描い
た「魚の雨」、文字でしか表現できない冷たい炎の舞「燃える頭」、イメージが
満ちてシアワセな大団円へと連なる「海、満ちる」といったあたりが「らしい」
作品群。あとは堂々たる馬鹿噺の傑作「キノコの道徳」、ショート・ショートとして
非の打ち所のない「ヒンセイの問題」が宜しい。
1982年から84年まで書き継がれた作品という事もあって、マクラの部分
ではとんでもなく陳腐化してしまったものもあり、「新しいところから腐る」
という世の真実をみせつけられる思いがした。なお、マクラで2頁のエッセイ
がつくという意味では、21編のエッセイと21編の小説が楽しめるわけで、
このアシモフ調というか、眉村卓調というかは、なんともお買い得感である。


2000年3月22日(水)

◆会社の近くの古本屋の百均棚で大量捕獲。
d「殺人者なき六つの殺人」Pボワロー(講談社文庫:帯)100円
d「ペトロフ事件」鮎川哲也(角川文庫)100円
d「準急”ながら”」鮎川哲也(角川文庫)100円
d「エアロビクス殺人事件」エドワーズ&ペンズラー(早川ミステリ文庫)100円
d「トレント最後の事件」ECベイリイ(早川ミステリ文庫)100円
d「細い線」Eアタイア(早川ミステリ文庫)100円
d「暗い鏡の中に」Hマクロイ(早川ミステリ文庫)100円
d「俺たちには今日がある」Tケンリック(早川ミステリ文庫)100円
d「槍作りのラン」Cネヴィル(早川ミステリ文庫)100円
d「ロボット物語」Sレム(早川ミステリ文庫)100円
d「恋人たち」PJファーマー(早川ミステリ文庫)100円
まあ、マクロイが当たりでしょう。昔は結構拾ったものだが、ここの所みかけなく
なっていた。shakaさん用にケンリック捕獲モードに入る。
◆DASACON3に滑り込み参加。今回は客に徹するもんね。よし!サイン
もらってまわるぞ!本の準備はいいかあ?とはいえ、山尾悠子さんの本って、
古本でしか買えてないなあ。どーしましょう。あ、いや確か「オットーと魔術師」
は新刊だ。うっふっふ。後は「忌まわしき匣」に、「オルガニスト」に、「玩具
修理者」に、「水霊」に、、、一体何冊要るんだよう。
その他、オークション用に10アイテムばかりピックアップ。百均用ならば本日
捕獲レベルの本は百冊程度は準備できるのだが、まあ濃い人が多そうだし、荷物
は増やしたくないなあ。で、朝市はやらないのでショッカー?
参加者一覧を見ているとうちの掲示板を挙げている人がいるではないか?おお、
眞明さんではないかいな!お会いできるのを楽しみにしております。MYSCON
の面子も多いなあ。フクさんに楽志さんにらじ丼、橋詰さんもいるよ。あ、この
人は旦那さんだな。なにせ、SF関係のコンベンションは生まれて初めてなもの
で、SFが薄い者としてはドキドキである。ま、おとなしくしてよっと。
で、替え歌部屋とかはないのでショッカー?(<誰か殴れ)

◆「殺意の葬列」笠原卓(文華新書)読了
昨日入手したばかりの本書をカバンに突っ込んでいく。11編収録の犯人当て
小説集、というよりは藤原宰太郎ばりのミステリ・クイズ集という印象の本。
質はまさに玉石混淆。斉藤栄も赤面するようなダイイング・メッセージものが
あるかと思えば、そのまま長篇のメイントリックに使えそうなアリバイトリック
まで入り交じり状態。長篇作品では、ひねくれた本格者という印象を漂わせる作
者だが、さすがに20頁前後の短編ではあっさりめ。児玉一郎なる元刑事の私立
探偵と彼のいきつけの店のウエイトレス鯉渕百合といったあたりがレギュラー
解答者、もとい、探偵を務める。各編とも律義に「読者への挑戦」があって笑える。
以下、ミニコメント
「脅迫の部屋」とんでもダイイング・メッセージものだが、それ以外での犯人特定
に至る推論は宜しい。
「冷たい死角」毒殺トリックだが犯人が余りにも不自然な行動をとり過ぎ。
「奇妙な手紙」暗号ものだが、何通りにも読める仕掛を施した根性は認めよう。
しかし、鍵になる言葉の解法には思わず赤面したぞ。
「仕組まれた遊戯」盗難トリック。あまりにも基本的で、今更これをやられても。
「八人の容疑者」消去法のよる犯人当て。読み始めて直ぐに犯人の見当がつく。
伏線の違和感たるや、思わず笑うよ。
「黒枠の招待状」一体何が謎なのか、読み終わるまで分からなかった。ああ、そう
言う事?これが解けない人っているのだろうか?
「瀕死の密室」古典的密室トリック。初心者でも犯人が当たる事、請け合い。
「死体が消えた」堂々たるアリバイトリックもの。この1作を読むまではゴミ
揃いかと思っていた。宜しいのではないでしょうか。
「ひき裂いた夜」見え見えの犯人当て。
「証拠がいっぱい」犯人特定に至る推論が迷走している。少し笠原長篇の混乱
ぶりを思わせる。いや、面白いわけではないので勘違いしないように。
「隠された醜聞」いかにも作り物。さすがに作者も恥ずかしいのか自分の分身
の書いた<犯人当て小説>という体裁をとって、言い訳に務めている。
総論:昨日の日記で、この本を「当り」と書きましたが、あれは誤りです。
立派な「外れ」でした。


2000年3月21日(火)

◆南砂町定点観測
d「夜霧のマンハッタン」Mオーウェンス(近映文庫)50円
「こちら魔法探偵社」Rアスプリン(早川FT文庫)50円
d「南海の秘境」ERバローズ(創元推理文庫)150円
「フレームシフト」RJソウヤー(早川SF文庫)440円
「殺意の葬列」笠原卓(文華新書)100円
「筒井康隆の世界」(新評社:帯)300円
笠原卓が当り。ごく最近まで出ている事すら知らなかった本。児玉一郎なる私立
探偵を主人公にした犯人当て小説集らしい。出版は昭和52年かあ。「ゼロのある
死角」の存在は知ってはいたが、笠原卓に対する思い入れはなかった頃だなあ。
その本の出版案内で西東登に「けもの道」という本があった事を初めて知る。
うーん、世の中は知らん本ばっかりじゃわい。
◆19日のラフ・オフのレポートが各所で立ちあがっておりますが、いやあ皆さん
詳細に書かれるものですなあ。思わずその瞬間瞬間が甦ってきまする。で、何人かの
方が「果してkashibaは楽しかったのか?」という疑問を呈されておられましたので、
改めて申し上げますが「楽しかった!」であります。ご安心下さい。宴会野郎としては
参加された皆さんが盛り上がってくれているのを見るのが何よりの喜びでありまする。
はい。

◆「検事出廷す」ESガードナー(ポケミス)読了
青年検事ダグラス・セルビイものの第3作。ガードナーの巧さを改めて確認できた。
体制への挑戦であるメイスンやクール&ラムと異なって、体制側にいるセルビイ・
シリーズは盛り上げに一工夫必要となる。つまり、メイスンの場合であれば、とりあえず
メイスンの依頼人以外に犯人を割り振ればよいのだが、セルビイ・シリーズの場合は、
セルビイが起訴した容疑者が犯人でなければならない。そこで、起訴に持ち込むまでに
山場を設定しなければならない。しかしそうなると法廷場面の入れ方が難しい。さすがは
ガードナー、そこを、かつてマジソン郡を牛耳っていた腐敗に満ちたローバー前検事に
肩入れする大陪審、という仕掛けを施してクリアした。しかも、被告側の弁護士に、
セルビイが弁護士時代付き合いがあり、今なおセルビイに恋心を抱いている女性アイネズ
を配してショウアップに努める。十年一日の如き「勝利の方程式を支える不変の人間関係」
を誇るメイスンものと異なり登場人物たちの歴史が刻まれていくのがセルビイものの特徴
である。以前にも書いた事ではあるが、その工夫を凝らす事に疲れたのがセルビイものが
が全9作という(ガードナーにしては)短命なシリーズで終った原因ではなかろうか。
どの順番で読んでも素直に楽しめるメイスンものと異なり、書かれた順に読まないと
少々損をするというのは、ガードナーの美学には反したのかもしれない。
この作品は、鉄道事故によって死んだと思われた浮浪者の正体が、使い込みを行って
失踪しようとしていた製材会社の会計係ではないかという疑惑が持ち上がり、その妻の
不審な行動から彼女とその前夫に容疑が掛けられる。浮浪者の身元を巡って、指紋を
題材にした迷宮を構築し、しかもアイネズの機略によって一旦はセルビイを絶体絶命の
窮地に追い込んでいく作者のストーリーテイリングは見事の一言。本作では特にセルビイ
を応援する論陣を張るクラリオン新聞の女性記者シルビアの活躍が光る。真犯人は、
かなり意外な人物であり、伏線を張っているとはいえ反則すれすれのトリックが用いられて
いる。ここの手際が悪ければ本格マニアの不興を買うところだが、ラスト10頁に凝縮
された真相解明部分の鮮やかさは、さすがにガードナー。少なくとも読んでいる間は
幸せな気分になれる。